説明

液体成分測定装置、基準液、液体成分測定方法

【課題】 糖濃度と塩分濃度の両方を測定する液体成分測定装置を提供する。
【解決手段】 複数の電極を使って液体に印加した電流を測定する電流測定手段と、電流測定手段の複数の電極の一部又はすべてを共通に使い前記液体の電気伝導度を測定する電気伝導度測定手段とを備える。また、電流測定手段は、糖濃度を測定する糖濃度測定手段であり、電気伝導度測定手段は、塩分測定手段である。この測定する液体としては、尿又は基準液を用いる。また、糖濃度測定手段と塩分測定手段との切換手段を更に備える。加えて、糖濃度測定手段は複数の電極として対極及び作用極を具備して糖濃度を測定する。更に、塩分測定手段は、切換手段により、糖濃度測定手段の前記対極と前記作用極を共通に使用して尿中塩分を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液体成分測定装置、基準液、液体成分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化の進展に伴って、食習慣等を含む生活習慣が発症・進行に関与する疾患群である、生活習慣病の予防と進行防止の重要性が増してきている。
【0003】
この生活習慣病の一種である、インスリン非依存性糖尿病(2型糖尿病)の罹患率が増加している。2型糖尿病を含む糖尿病は、糖代謝の異常があり、血中のグルコース濃度が高くなりすぎるために、数々の合併症を引き起こす深刻な疾病である。日本では、潜在的に680万人以上の患者がいるとされている。
【0004】
この糖尿病の早期発見、合併症への進展を抑制するために、尿に含まれる糖分(尿糖)を測定する器具が存在する。
例えば、特許文献1を参照すると、ビタミンC等の干渉物質の影響を排除したバイオセンサを使用して尿糖を精度よく測定できる尿糖計が記載されている(以下、従来技術1とする。)。
【0005】
また、生活習慣病の別の一種として、高血圧症が存在する。高血圧症とは、心臓が血液を送りだすときの圧力が高い状態をいう。この圧力が高いと、血管が傷つく可能性が高い。脳や心臓等の重要な部分の血管に傷がつくと、生命の維持について危険な状態になる可能性がある。
【0006】
この高血圧症になる原因の1つとして、継続的に塩分の濃度が高い食事を取ることが挙げられる。
よって、日々の健康管理の一環として、どれだけ塩分の高い食事を取っているかを、尿中の塩分量を測定することで食事中の塩分量について推定することができる。
例えば、特許文献2を参照すると、便座に固定した機構により、尿中に含まれる塩分である尿中塩分を測定する尿中塩分測定装置が記載されている(以下、従来技術2とする。)。
【特許文献1】特開2006−153849号公報
【特許文献2】特開2000−88845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術1の尿糖計は、尿糖については正確に計ることができるものの、他の尿成分である尿中塩分については計測することができなかった。このため、糖尿病と高血圧を併発している測定者の場合、尿糖計と尿中塩分計を別々に用意して測定する必要があるため、手間がかかった。
また、尿糖測定時に飽和塩化カリウム溶液等の内部液に銀・塩化銀からなる参照電極を浸した液絡部を持たない構成を用いる場合には、尿中塩素濃度の影響を受けることがあった。
さらに、従来技術2の尿中塩分測定装置は、尿糖を測定することはできなかった。このため、尿糖を検出するためには、別の尿糖検出装置を用意せねばならず、同じ便座に尿糖計を内蔵するとポンプ等を増設する必要があるため、構成が複雑化するという問題があった。よって、実装に費用がかかり、故障率も高くなるという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題点を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体成分測定装置は、複数の電極を使って液体に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段の前記複数の電極の一部又はすべてを共通に使い前記液体の電気伝導度を測定する電気伝導度測定手段とを備えることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記電流測定手段は、糖濃度を測定する糖濃度測定手段であり、前記電気伝導度測定手段は、塩分測定手段であることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記液体は尿又は基準液であり、前記糖濃度測定手段と前記塩分測定手段との切換手段を更に備え、前記糖濃度測定手段は、前記複数の電極として対極及び作用極を具備して糖濃度を測定する糖濃度測定手段であり、前記塩分測定手段は、前記切換手段により、前記糖濃度測定手段の前記対極と前記作用極を共通に使用して尿中塩分を測定する塩分測定手段であることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記糖濃度測定手段は、前記複数の電極として参照極を含むことを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記糖濃度測定手段は、前記参照極が内部液に電極が浸された液絡部を持たない電極であるときには、前記塩分測定手段の測定値により糖濃度の補正をする糖濃度測定手段であることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記塩分測定手段は、前記糖濃度測定手段の前記基準液の検出も行う塩分測定手段であることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記塩分測定手段は、所定の閾値より高い塩分濃度を検出することで、測定する液体が前記基準液であると検出する塩分測定手段であることを特徴とする。
本発明の液体成分測定装置は、前記糖濃度測定手段は、直流電圧で尿糖を測定し、前記塩分測定手段は、交流電圧で塩分を測定することを特徴とする。
本発明の基準液は、5重量%から10重量%の塩分を含むことを特徴とする液体成分測定装置の糖濃度測定手段の基準液。
本発明の液体成分測定方法は、測定する液体の塩分を測定し、前記測定する液体が基準液か尿かを判定し、前記基準液と判定した場合は基準合わせをし、前記尿と判定した場合は尿糖を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、糖濃度と塩分濃度を一度に測定することができる液体成分検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施の形態>
(作動原理)
本発明の実施の形態に係る測定装置1は、尿中のぶどう糖(グルコース)である尿糖と尿中の電解質の濃度である尿中塩分の測定を行うことができる。
【0012】
図1と図2を参照すると、本発明の実施の形態に係る測定装置1は、糖濃度測定手段であり、塩分測定手段でもあり、尿中糖濃度と塩分を電気化学的に検出するセンサカートリッジ11と、センサカートリッジ11による検出に基づいて尿中糖濃度と塩分濃度の測定・表示を行いかつ測定の際に保持をする部分となる本体21とによって全体を概略構成する。なお、本発明に係わる測定装置1は、使用しない時には、図2に示すように磁石52を有するスタンド51に挿入設置することにより保管可能である。
まずは、本発明の実施の形態に係る測定装置1の作動原理について、図を参照して説明する。
【0013】
(尿糖の測定)
図3を参照して、まず、尿糖を測定する場合について説明する。なお、図3は原理的な図であり、実際の回路を簡略化して示している。例えば、演算増幅器opの詳細は省略して記載している。
尿糖を測定するためには、従来技術1の尿糖計と同等のバイオセンサであるセンサの酵素反応と電極反応を利用する。
この反応としては、まず、尿にセンサ13が触れると、尿にグルコースが含まれていた場合、酵素(グルコース酸化酵素)の作用によりグルコースが酸化され過酸化水素が生成される。

グルコース(C6H12O6) + 酸素(O2)
→ グルコノラクトン(C6H10O6) + 過酸化水素(H2O2)

過酸化水素が電極上で酸化されると、電子が生成する。

過酸化水素(H2O2)
→ 水素イオン(2H+) + 酸素(O2) + 電子(2e-)
【0014】
〔電極反応〕
この過酸化水素により生じた電子を電流として測定することにより、グルコースの濃度を測定することができる。
ここでは、作用極W上での過酸化水素の電極反応において、電圧と発生する電流には関係があり、最適な電圧を選択することができる。
過酸化水素を検出する電極は作用極W、対極C及び参照極Rから構成され、作用極Wと対極Cは電極反応の場であり、対極C及び参照極Rによって、溶液の電位を−Eとする。
溶液の電位として一定の電圧E(例えばE<1.0V)を印加すると、作用極上Wで過酸化水素の酸化反応がおこり、酸化電流iが発生し、作用極Wから対極Cに電流iが流れる。このとき常に作用極W−参照極R間の電位(−E)を一定に保つように対極Cの電位が制御される。
【0015】
ここで、従来技術1の尿糖計は、上述のように酵素を用いたバイオセンサを用いて電流iを測定している。
このバイオセンサは、タンパク質である酵素を使用しており、使用開始後、次第にグルコースを分解する活性が低下してゆく場合がある。
このため、測定した電流とグルコース濃度の関係を測定するためには、基準となる濃度(例えば500mg/dL)の基準液であるグルコース溶液について適時測定し、基準となる電流値を得る必要がある(キャリブレーション、基準合わせ)。
実際に尿糖を測定する際には、基準液の濃度に対応する電流値を基にして、グルコース濃度を測定することで、精度の高い測定を行うことができる。
なお、本発明の実施の形態に係る基準液においては、ヒトの尿の濃度ではあり得ない量の塩分を加えている(たとえば、5重量%のNaCl)。これについては後述する。
【0016】
(尿中塩分の測定)
本発明の発明者が鋭意研究と実験を行ったところ、尿糖を計測するセンサ13によって、尿中塩分の測定を行うことが可能であることを見いだした。
具体的には、作用極Wと対極Cの間に交流定電圧を印加し、尿中のインピーダンスを測定する。インピーダンスは、電気伝導度と逆数の関係にあるので、インピーダンスを測定することで、電気伝導度も測定することができる。
この電気伝導度より、電気抵抗値を求めて、塩濃度を測定することができる。これは、イオンとなる塩化ナトリウム等の塩が含まれていると、この塩の量に相関して尿の電気抵抗が低くなるためである。
本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置の場合、後述する回路の工夫により尿糖計のセンサの電極の構造については従来技術1の尿糖計のセンサからまったく変更する必要がないために、尿中塩分を測定する機能を安価に尿糖計へ付加することができる。
【0017】
(液体成分測定装置の構成)
次に、図1、図2、及び図4のブロック図を参照して、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置1の詳細構成について説明する。
上述したように、本発明に係わる測定装置1は、センサカートリッジ11と、本体21とによって全体を概略構成する。
【0018】
センサカートリッジ11は、センサ13、サーミスタ14、スタンド・コネクタ検出回路15、及びコネクタ16を外体12に備える。
【0019】
センサ13は、尿中の夾雑物質の影響を排除して、低中高の広範囲に渡る尿中糖濃度と、尿中塩分又は基準液の塩分について検出する。
サーミスタ14は、測定の際における尿の温度を検出し、センサ13の温度特性を補正するためのものである。
スタンド・コネクタ検出回路15は、ICチップと磁気センサ等から構成し、スタンド51から測定装置1を取り出した際に、磁石52における磁場の強さの変動を検出し、モード設定、基準合わせ、尿中塩分測定及び尿中糖濃度の測定等を可能とする。
【0020】
本体21は、操作ボタンである6aと6bを備える入力部6、表示部7を外体22に備える。また、内部には、電源8、切替器20、演算制御装置25、コネクタ26、電圧印加回路31、電流検出回路32、交流定電流回路40、差動電圧検出回路42、半波整流器43、フィルタ44、及び通信部60を備える。
【0021】
入力部6(6a、6b)は、電気接点等を持つボタンであり、押されたことを検出し、モードや食事内容を選択して設定登録したり、校正したりするためのものである。
表示部7は、ドットマトリクスLCDや有機EL表示装置等であり、演算制御装置25からの信号に基づいて、測定の状況、基準合わせの状況、センサ交換の告知、電池交換の告知、選択モードの状況、次の測定の予告、糖濃度(尿糖)測定結果及び塩分濃度の測定結果を表示する。
電源8は、電池であり、測定装置1の電気系統各部に電力を供給する。
切換器20(切換手段)は、電子的なスイッチやリレー等であり、演算制御装置25のI/O29の指令により尿糖測定と塩分測定に係る回路を切り替える。
また、本体21は、演算制御装置25のI/O29でオン・オフのコントロールができる、図示しないブザーを備えている。
【0022】
演算制御装置25は、各種尿糖値や各種可否判定等を演算し、かつ、各種を制御する演算及び制御装置、制御及び演算用プログラム等を記憶するROM、演算結果・外部より読み込んだプログラム等を一時的に記憶するRAM、各種報知のために計時する時計、選択されたモードや食事内容・演算した各種尿糖値・判定した判定結果等を更新されるまで記憶するフラッシュメモリやバッテリバックアップSRAM等である記憶部24、電気系統各部につながるI/OポートであるI/O29、A/D変換部35、45等を備え、尿糖と尿中塩分等の尿成分の演算、及びこれら演算・判定結果の出力に係わる制御等の処理を行う。
【0023】
電圧印加回路31は、尿糖を検出する際に参照極Rで電圧を検出し、オペアンプ(OP)は対極Cが−Eとなるように作用し、作用極Wと対極Cに最適な電圧を印加する。
電流検出回路32は、尿糖を検出する際に作用極Wと対極Cの間に流れる電流を検出する。
この電流検出回路32の詳細を示す概念図である図5を参照すると、電流検出回路32には抵抗rが回路のアースに接続されており、尿中を流れる電流を検出することができる。ただし、抵抗rは無視できる程度に小さい値であるとする。また、電流検出回路32には、増幅器AMPを備えている。
A/D変換部35は、電流検出回路32で検出した電流である尿糖に係るアナログ信号をデジタル信号(尿糖検出信号)に変換して出力する。
【0024】
交流定電流回路40は、尿中塩分を検出する際に、センサ13の作用極Wと対極Cに所定の周波数の交流電流を印加する。
交流定電流回路40により通電された交流定電流に応じて作用極Wと対極C間に交流電圧が生じるので、作動電圧検出回路42は、この電圧又はこれに比例する電圧を検出する。
半波整流器43は、検出した電圧を扱いやすいように整流し、直流電圧に変換する。
フィルタ44は、ローパスフィルタ等のフィルタであり、整流した直流電圧のうち、リップル成分等を除いて平滑化して出力する。
A/D変換部45はフィルタ44で平滑化した直流電圧である液体成分に係るアナログ信号を、デジタル信号(尿中塩分検出信号)に変換して出力する。
【0025】
通信部60は、パーソナルコンピュータ等の外部機器と各種データ(外部機器からの入力データや測定装置1からの尿糖測定結果・判定結果等の出力データ)の通信を行う、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等の端子又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、ワイヤレスUSB等の接続装置である。通信部60がUSB端子等である場合、生活防水機能を実現するため、シリコーンゴム等のカバーに覆われているのが好適である。
【0026】
コネクタ16、26は、センサカートリッジ11と本体21との間の電気的な通信を可能に接続する。
この電気的な通信については、コネクタ16とコネクタ26とが接続しているかについても、スタンド・コネクタ検出回路15が検出する。これにより、センサカートリッジ11を本体21に装着しているかを検出可能である。
【0027】
(液体成分測定の処理の流れ)
次に、図6に示すフローチャートを用いて、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置の取扱、操作及び動作について説明する。
【0028】
(ステップS101)
まず、スタンド51に挿入設置されている状態では、演算制御装置25の時計とI/O29にのみ電源8から電力が供給されている省電力状態になっている。
ここで、測定者が測定装置1をスタンド51から取り外すと、スタンド・コネクタ検出回路15が作動する。スタンド・コネクタ検出回路からの信号を演算制御装置25のI/O29が受信すると、演算制御装置25は電源8を起動する。これにより、電源8が電気系統各部に電力を供給し、測定装置1は動作状態となる。
【0029】
続いて、演算制御装置25は、記憶部24のROM内に記憶したファームウェアを実行し、本体21の各部に異常がないかのチェックを行う。
次に、演算制御装置25は、センサカートリッジ11が使用可能であるかどうかをチェックする。具体的には、フラッシュメモリに記憶しているセンサカートリッジ11の使用開始日から所定の日数が経過しているか、又は使用回数が所定の回数に達しているかについてチェックする。さらに、前回の基準合わせでセンサが使用可能であったかについてもチェックする。
チェックにより、センサカートリッジ11が使用可能でないと判断した場合、演算制御装置25は「センサを交換して下さい」というメッセージを表示部7に表示する。
【0030】
また、演算制御装置25は、センサカートリッジ11が使い始めで基準合わせをしていないか、又は数回使用して基準合わせを行う使用回数に達しているかをチェックする。
このチェックで基準合わせを行う必要がある場合、演算制御装置25は「基準合わせをしてください」というメッセージを表示部7に表示する。
【0031】
ここで、測定者がセンサカートリッジ11に、基準液又は測定者の尿をかけるか、容器内にセンサ部位を没入すると、センサ13が変化を捉え、自動的に測定を開始する。なお、入力部6の6aボタンを押下することにより測定を開始してもよい。
尿糖の測定は、測定者がトイレで直接かけることも、紙コップ等に入れた尿に没入することもできるが、体外に排泄した直後であることが望ましい。
【0032】
演算制御装置25が、入力部6(6a、6b)から、入力に係る測定を行う旨の測定者の入力を検知すると、測定を開始する。この際に、測定者は、食前の尿糖を測定するモードや、食後の尿糖を測定するモード等のモードを選択することができる。
【0033】
(ステップS102)
次に、ステップS102においては、演算制御装置25が塩分濃度の測定を行う。
具体的には、演算制御装置25の指示により、センサ13の作用極Wと対極Cに、交流定電流回路40が所定の周波数の交流電流を印加する。
そして、作用極Wと対極Cの間に発生した交流電圧を、差動電圧検出回路42が検出する。
検出した電圧は交流なので扱いにくいため、半波整流器43が、検出した電圧を扱いやすいように整流し、直流電圧に変換する。
さらに、フィルタ44が、整流した直流電圧のリップル成分等を除いて平滑化して出力する。
A/D変換部45はこの平滑化した直流電圧である液体成分に係るアナログ信号を、デジタル信号(尿中塩分検出信号)に変換して出力する。
演算制御装置25は、このデジタル信号をROM内にあるテーブルにある基準値に加えて、フラッシュメモリ内にある基準合わせの結果と比較し、塩分濃度を求める。
【0034】
(ステップS103)
次に、ステップS103においては、演算制御装置25が、測定した溶液が、基準合わせ用の溶液であるかについて判定する。
ここで、上述のように、本発明の実施の形態に係る基準液には、ヒトの尿の濃度ではあり得ない量の塩分を加えている。
これにより、演算制御装置25は、ステップS102で測定した塩分濃度が所定の閾値よりも塩分濃度が高かった場合、測定しているのは基準液であると判定する。
基準液である場合、すなわち「Yes」の場合は、演算制御装置25は処理をステップS104に進める。
基準液でない場合、すなわち測定しているのが測定者の尿であった場合は、「No」と判定し、処理をステップS106に進める。
【0035】
(ステップS104)
次に、ステップS104においては、演算制御装置25が糖濃度の測定を行う。
具体的には、電圧印加回路31は参照極Rで電圧を検出し、作用極Wと対極Cに、基準合わせ用の所定の電圧を印加する。
そして、電流検出回路32は、参照極Rで電圧を検出し、作用極Wと対極Cの間に流れる電流を検出する。
A/D変換部35は、検出した電流を、電流検出回路32から入力しデジタル信号(尿糖検出信号)に変換して出力する。
【0036】
(ステップS105)
ステップS105においては、演算制御装置25が、基準合わせ処理を行う。
具体的には、演算制御装置25が、記憶部24のROMに記憶した基準合わせプログラムにより、基準液に比べて検出した尿糖検出信号がどの程度高いか低いかを補正する補正式のパラメータを求める計算を行う。この計算により求めたパラメータは、記憶部24のフラッシュメモリに記憶する。
【0037】
ここで、例えば、センサカートリッジ11が測定限界である日数や回数を超えている場合や測定者が測定装置1を直射日光下で放置してセンサ13が劣化した場合等で、基準合わせで得た出力が、基準合わせプログラムで定めた閾値を超え、かつ基準合わせのやり直し(再確認)の回数が所定値に満たない場合には、再確認とフラッシュメモリに記憶し、「もう一度、基準合わせを行ってください。」という表示を表示部7により行う。
また、基準合わせプログラムで定めた閾値を超え、かつ基準合わせのやり直し(再確認)の回数が所定値に達した場合には、センサカートリッジ11を使用不可能とフラッシュメモリに記憶し、「このセンサは使用不可能です。センサを交換してください。」という表示を表示部7により行う。
【0038】
基準合わせが終了すると、演算制御装置25は、「基準合わせを終了しました。洗浄して、スタンドに収納して下さい」という表示を表示部7に表示し、基準合わせの処理を終了する。
【0039】
(ステップS106)
ステップS106においては、演算制御装置25が糖濃度(尿糖)の測定を行う。
具体的には、電圧印加回路31は、尿糖を検出する際に参照極Rで電圧を検出し、オペアンプ(OP)は対極Cが−Eとなるように作用し、作用極Wと対極Cに最適な電圧を印加する。
電流検出回路32は、尿糖を検出する際に作用極Wと対極Cの間に流れる電流を検出する。
A/D変換部35は、検出した電流を、電流検出回路32から入力しデジタル信号(尿糖検出信号)に変換して出力する。
演算制御装置25は、このデジタル信号をROM内にあるテーブルにある基準値に加えて、フラッシュメモリ内にある基準合わせの結果と比較し、この場合は尿糖の濃度である糖濃度(尿糖)を求める。
【0040】
(ステップS107)
次に、ステップS107においては、演算制御装置25が、測定および演算終了の通知を行う。
具体的には、表示部7に「測定終了しました」というメッセージを表示し、ブザーを鳴らす。
さらに、記憶部24のフラッシュメモリに、測定値を記憶する。
【0041】
(ステップS108)
次に、ステップS108においては、演算制御装置25が、測定結果およびアドバイスを表示する。
具体的には、記憶部24のROMに記憶した、尿糖や尿中塩分の標準値と比較して、病的な値であった場合に、表示部7に警告表示を行う。また、尿糖と尿中塩分の双方が高い場合は、より強い警告表示を行う。
【0042】
また、測定時にモードを設定して指定した食前の尿糖及び食後の尿糖の測定の値から、食事が適正であったかについても同様にROM内の値と比較・演算して表示することができる。
さらに、一日に摂取可能な塩分の量を尿中塩分から推定して表示することができる。
また、一日に摂取した塩分量の合計を尿中塩分及び尿量から推定して表示することができる。
加えて、塩分を減らす際の、目安となる料理への塩分添加量や、糖分を減らす際の目安となる摂取量についても表示することができる。
【0043】
これらの測定結果とアドバイスは、演算制御装置25が表示部7に表示したメニューに従って、測定者が入力部6(6a、6b)のボタンを操作することで、測定結果について閲覧することができる。
また、通信部60を用いて、他のコンピュータへの送信を行うことができる。この場合、他のコンピュータの画面上で、測定結果について確認することが可能である。
【0044】
測定終了後、測定者により測定装置1をスタンド51に挿入設置されない状態にあると、センサの乾燥を防ぐため、演算制御装置25がブザーを鳴らして「スタンドに収納してください」と表示部7に警告表示する。
ここで、スタンド・コネクタ検出回路15がスタンド51に挿入設置されたことを検出するか、一定時間を経過した場合、演算制御装置25は、電源8を制御して、省電力状態に移行する。
【0045】
(センサカートリッジ11の交換と装着)
センサカートリッジ11の交換又は装着の際に行う処理について説明する。
上述のように、センサ13が劣化等で使用不可能の状態になった場合、又は本体21にセンサカートリッジが装着されていないことをスタンド・コネクタ検出回路15が検出した場合、演算制御装置25は、センサカートリッジ11の交換又は装着を促すメッセージを表示部7に表示する。
ここで、測定者又は他のユーザにより、ラミネートパウチ等の手段により保存されていた新しいセンサカートリッジ11が取り出され、本体21に装着される。
【0046】
まず、スタンド・コネクタ検出回路15は、新しいセンサカートリッジ11を装着したことを検知する。
この検知した信号は、演算制御装置25のI/O29が受信する。これにより、演算制御装置25は、省電力状態から起動し、記憶部24のROMに記憶しているセンサカートリッジ交換プログラムを実行する。
ここで、装着したセンサを単に一度外して取り替えただけでないことを検出するために、スタンド・コネクタ検出回路15には個別番号(ID)等を記憶しており、このIDを演算制御装置25に送信することができる。
演算制御装置25は、IDが異なっていた場合、センサカートリッジ11が交換されたと判断する。
【0047】
次に、演算制御装置25は、IDが異なっていた場合、センサの使用回数を0とし、使用開始日として、交換した日付を記憶する。その上で、「センサを交換しました。使用日は×月×日です。○日まで又は▽回使用できます」というメッセージを表示部7に表示する。
測定者により測定装置1がスタンド51に挿入設置されると、スタンド・コネクタ検出回路15がこれを検出して、演算制御装置25が電源8を制御して、省電力状態に移行する。
以上により、交換又は装着の際に行う処理を終了する。
【0048】
上述のように構成することで、次のような効果を得ることができる。
まず、従来技術1の尿糖計では尿糖以外の液体成分について測定することができなかった。このため、従来技術1のような尿糖計と尿中塩分計を別々に用意する必要があったので、手間がかかった。
これに対して、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置の場合は、一つの測定装置により糖濃度と塩分濃度(尿糖と尿中塩分の濃度)の両方を測定できるため、測定者の使い勝手が良くなるという効果が得られる。
【0049】
また、従来技術2の尿中塩分測定装置は、尿糖を測定することはできない。よって、同じ便座に尿糖計を内蔵するとポンプ等を増設する必要があるため、実装に費用がかかり、故障率も高くなるという問題点があった。
これに対し、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置の場合は、同一の尿糖測定用のセンサを用いて尿中塩分を測定するため、実装費用が少なく、複数のセンサを搭載することによる感度のばらつきや故障率の増加を抑えることが可能になるという効果が得られる。
加えて、便座に尿糖計を別に備える際には必要なポンプ等がいらないため、小型化が可能である。これにより、尿糖の検査時に手軽に尿の塩分データを計ることが可能になり、罹患者の多い糖尿病患者が、高血圧症を併発しているかについての手がかりを手軽に得ることが可能になる。
【0050】
また、従来技術1の尿糖計においては、基準合わせ(キャリブレーション)が面倒であるという問題があった。
従来技術1の尿糖計では、基準合わせは、1週間ごと又は20回測定するごとに行う必要がある。しかし、従来技術1の尿糖計で基準合わせをする際には、ボタンによる操作を行って特別な基準合わせのモードとしてから、基準液をセンサにかける必要があり、機械の操作に慣れていない高齢者にとっては、特に使い勝手が悪かった。
しかし、本発明の実施の形態に係る測定装置1は、塩分測定を行うことができるため、基準液にヒトの尿ではあり得ない量の塩分を追加しておくことにより、センサにかけた液体がヒトの尿であるか基準液であるか自動的に判別して、尿中成分の測定又は基準合わせを行うことができる。よって、視力の衰えた高齢者や糖尿病の患者が、表示部の表示に従ってボタンを操作して基準合わせのモードを選択する必要がない。このため、使い勝手がよくなるという効果が得られる。
【0051】
以上のように、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置は、生活習慣病において罹患率が高い糖尿病と高血圧症の両方を予防と進行防止について効果があり、高年齢者のクオリティー・オヴ・ライフの向上の役に立つ。
【0052】
なお、上述の測定装置1においては、尿糖と尿中塩分の測定について説明したが、本発明の実施の形態に係る液体成分測定装置は、血液中の糖分である血糖値や塩濃度、食物中の糖分と塩分等を測定することも可能である。
また、センサカートリッジを交換することで、測定する液体の種類を変更するように構成してもよい。
この場合、IDを記憶部24に複数個記憶しておいて、接続したセンサカートリッジ11の種類により、交換を検出するようにしてもよい。さらに、IDにセンサカートリッジ11のセンサの種類を記憶し、この種類ごとに測定時に記憶部24のROMから呼び出される測定プログラムを変更することで対応することが可能である。
また、インピーダンスと電流値に対応するセンサカートリッジであれば、他の値についても測定することができる。たとえば、果物の酸度等を測定することも可能である。
【0053】
また、参照極については、飽和塩化カリウム溶液等の内部液と銀・塩化銀からなる電極とをガラス等に封入した液絡部を持つような参照極の構成が一般的である。しかし、このような構成を持たない簡略化した参照極も存在する。
【0054】
このような簡略化した参照極を用いて糖濃度(尿糖)を測定した場合、尿中塩分濃度の影響を受ける可能性があった。
図7は、このような構成の参照極を有し、補正をしない場合における液体成分測定装置における尿中塩分濃度と糖濃度(尿糖)との関係を示す。この図7で示されるように、尿中塩分濃度が高くとなるほど、糖濃度(尿糖)がみかけ上、低くなる。例えば、尿中塩分濃度が1%で糖濃度(尿糖)が500mg/dLである試料について、尿中塩分濃度を1%増やして2%にすると、糖濃度(尿糖)が400mg/dLと表示される。
【0055】
そこで、このような構成の参照極を有する液体成分測定装置においては、図8で示されるような塩分濃度と補正係数(=基準液の塩分濃度を変化させたときの糖濃度の表示値/基準液の糖濃度の表示値)の関係と、補正後の糖濃度の表示値=1/補正係数×補正前の糖濃度の表示値で表される補正式とを記憶部24に予め記憶しておく。
この塩分濃度と補正係数との関係及び補正式により、演算制御装置25により塩分濃度と補正係数(=基準液の塩分濃度を変化させたときの糖濃度の表示値/基準液の糖濃度の表示値)の関係を用い、測定された塩分濃度を塩分濃度軸に当てはめて、それに対応する補正係数を求め、この求めた補正係数を補正式に代入することによって、補正後の糖濃度の表示値を算出する。
【0056】
ここで、図8を参照すると、基準合わせ(較正)に用いる基準液の塩分濃度と塩分濃度を変化させたときの補正係数(=基準液の塩分濃度を変化させたときの糖濃度の表示値/基準液の糖濃度の表示値)の関係は、例えば、図7の表に示すように、基準合わせ(較正)に用いた塩分濃度1%、糖濃度500mg/dLの糖濃度表示500mg/dLに対し、図7の表に示す塩分濃度0.5%、2%、3%、糖濃度500mg/dLの糖濃度表示は、600mg/dL、400mg/dL、380mg/dLとなり、基準液の表示との比が補正係数となる。
この場合、塩分濃度0.5%ときの補正係数が1.2(=600mg/dL÷500mg/dL)、塩分濃度2%のときの補正係数が0,8(=400mg/dL÷500mg/dL)、塩分濃度3%のときの補正係数が0.76(=380mg/dL÷500mg/dL)となり、これを縦軸として、塩分濃度を横軸としたものである。
【0057】
このような補正を行うことにより、飽和塩化カリウム溶液等の内部液と銀・塩化銀の電極が浸された液絡部を持たない構成の参照極を有する液体成分測定装置でも、精度の高い糖濃度(尿糖)測定の結果(表示値)を得ることが可能になる。
【0058】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定装置1の外観を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る測定装置1をスタンド51に装着した際の構成を示す外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る測定装置1の尿糖測定の概要を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る測定装置1の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る測定装置1の電流検出に係る回路の概要を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る測定装置1の測定手順および動作の概要を示すフローチャートである。
【図7】飽和塩化カリウム溶液等の内部液に銀・塩化銀からなる電極が浸された液絡部を持たない構成の参照電極を有する測定装置に係る塩分濃度の補正を行わなかった時の糖濃度表示値を示す図である。
【図8】塩分濃度と補正係数の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 測定装置
6 入力部
6a、6b 操作ボタン
7 表示部
8 電源
11 センサカートリッジ
12、22 外体
13 センサ
14 サーミスタ
15 スタンド・コネクタ検出回路
20 切換器
21 本体
24 記憶部
25 演算制御装置
29 I/O
31 電圧印加回路
32 電流検出回路
35、45 A/D変換部
40 交流定電流回路
42 差動電圧検出回路
43 半波整流器
44 フィルタ
51 スタンド
52 磁石
60 通信部
C 対極
R 参照極
W 作用極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を使って液体に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段の前記複数の電極の一部又はすべてを共通に使い前記液体の電気伝導度を測定する電気伝導度測定手段とを備える
ことを特徴とする液体成分測定装置。
【請求項2】
前記電流測定手段は、糖濃度を測定する糖濃度測定手段であり、
前記電気伝導度測定手段は、塩分測定手段である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体成分測定装置。
【請求項3】
前記液体は尿又は基準液であり、
前記糖濃度測定手段と前記塩分測定手段との切換手段を更に備え、
前記糖濃度測定手段は、前記複数の電極として対極及び作用極を具備して糖濃度を測定する糖濃度測定手段であり、
前記塩分測定手段は、前記切換手段により、前記糖濃度測定手段の前記対極と前記作用極を共通に使用して尿中塩分を測定する塩分測定手段である
ことを特徴とする請求項2に記載の液体成分測定装置。
【請求項4】
前記糖濃度測定手段は、前記複数の電極として参照極を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の液体成分測定装置。
【請求項5】
前記糖濃度測定手段は、
前記参照極が内部液に電極が浸された液絡部を持たない電極であるときには、前記塩分測定手段の測定値により糖濃度の補正をする糖濃度測定手段である
ことを特徴とする請求項4に記載の液体成分測定装置。
【請求項6】
前記塩分測定手段は、前記糖濃度測定手段の前記基準液の検出も行う塩分測定手段である
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の液体成分測定装置。
【請求項7】
前記塩分測定手段は、所定の閾値より高い塩分濃度を検出することで、測定する液体が前記基準液であると検出する塩分測定手段である
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の液体成分測定装置。
【請求項8】
前記糖濃度測定手段は、直流電圧で尿糖を測定し、
前記塩分測定手段は、交流電圧で塩分を測定する
ことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の液体成分測定装置。
【請求項9】
5重量%から10重量%の塩分を含むことを特徴とする液体成分測定装置の糖濃度測定手段の基準液。
【請求項10】
測定する液体の塩分を測定し、
前記測定する液体が基準液か尿かを判定し、
前記基準液と判定した場合は基準合わせをし、
前記尿と判定した場合は尿糖を測定する
ことを特徴とする液体成分測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−30981(P2009−30981A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191981(P2007−191981)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】