説明

液体洗浄剤組成物

【課題】AESの原料アルコールとして直鎖アルコール、例えば天然アルコールを使用しながら、高い洗浄力を有し、且つ低温における貯蔵安定性に優れる、液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)プロピレンオキシド基及びエチレンオキシド基を含むポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩を含有する混合物であって、当該混合物におけるプロピレンオキシドの平均付加モル数m及びエチレンオキシドの平均付加モル数nが、それぞれ0<m<1、0<n≦3である混合物を4〜50質量%、(b)炭素数8〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンオキシド型界面活性剤を1〜30質量%、ハイドロトロープ剤及び有機溶剤から選ばれる相安定化剤、並びに水を含有し、(a)/(b)が質量比として20/1〜1/1である液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体洗浄剤組成物、特に天然由来の原料から製造した陰イオン界面活性剤を主界面活性剤とする液体洗浄剤組成物に関する。具体的には台所周り等の硬質表面、中でも食器や調理器具等の洗浄に適した液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷軽減の観点から、界面活性剤の濃度を高め、容器の樹脂量を低減させた濃縮タイプの液体洗浄剤が好まれて使用されている。また、身体洗浄剤や食器洗浄用液体洗浄剤などは洗浄力や手荒れ防止性の観点から、陰イオン界面活性剤であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩型界面活性剤(以下、AESという場合がある)を主成分として用いているものが多く、特に食器洗浄用洗浄剤は、洗浄時の泡立ち性および泡持ち性の観点から、アミンオキシド型界面活性剤(以下、AOという場合がある)を増泡剤として併用することが一般に行われている。しかしながら、AESとAOを組み合わせた液体洗浄剤は、特許文献1、2に記載されているように貯蔵中の増粘や、AES/AOのコンプレックスが低温貯蔵において沈殿を形成するなどの安定性上の課題があるため、これら公報には分岐構造を有するAESなどを用いる技術が開示されている。
【0003】
一方、特許文献3にはポリオキシプロピレンアルキルエーテルサルフェートが、起泡性に優れ、低温安定性が良好な組成物を提供しえることが記載されている。また、特許文献4にはエチレンオキシド及び又はプロピレンオキシドが0.01〜30モル付加したアルキルアルコキシ化サルフェートが開示されている。さらには特許文献5、6、7には、プロピレンオキシド、及びエチレンオキシドが付加したアルコールのサルフェートを含有する衣料用洗浄剤組成物が記載されている。特に、特許文献6には、牛脂誘導高級アルコールやヤシ油誘導高級アルコール由来のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を用いる洗剤が記載されている。
【特許文献1】特開2002−194388号公報、
【特許文献2】特開2007−23211号公報
【特許文献3】特開平5−97633号公報
【特許文献4】特表平11−507955号公報
【特許文献5】特開昭55−84399号公報
【特許文献6】特開昭56−72092号公報
【特許文献7】特開昭56−5895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようにAESを含有する濃縮タイプの液体洗浄剤は、低温時における貯蔵安定性の課題からアルキル基に分岐構造を有する合成系のAESを用いているのが現状である。しかしながら、近年地球温暖化の問題から、CO2排出量削減の数値化目標が課せられるなど、CO2排出量削減の機運が高まってきており、CO2排出に最も寄与度が高い化石燃料使用量の削減や、カーボンニュートラルという概念から天然原料使用への切替えが推奨されている。
【0005】
このような状況の中で、工業的に用いられる合成系の界面活性剤について考えてみると、製造方法の関係上、分岐鎖アルキル基のアルコールを約20質量%含有するアルコール混合物からの誘導体、或いは2級アルコールからの誘導体が主である。これは、アルコールを界面活性剤の原材料として使用する場合、分岐鎖アルコール又は2級アルコール由来の界面活性剤と直鎖アルコール由来の界面活性剤との混合物として使用する方が、水と混合したときのゲル化特性を考慮する上で扱い易く、直鎖アルコール由来の界面活性剤のみからなる場合と比べて安定な洗浄剤を設計することが容易になるという理由による。一方で、天然油脂原料に由来する界面活性剤、いわゆる天然系界面活性剤は、直鎖のアルキル基のみで構成されており、天然系界面活性剤を主基剤とする場合に、低温における貯蔵安定性(以下、低温安定性ということがある)を保つことが難しい。特に天然アルコールから製造されたAESを配合する洗浄剤において、AESとコンプレックスを作るAOを併用する場合に、低温安定性が非常に厳しくなる。なお天然原料起源の直鎖アルキル基を有するAESを濃縮タイプの液体洗浄剤に応用するためにはエチレンオキシドの付加モル数を増加させることで安定性上の課題を解決しえるが、その結果、親水性が高められることになり油に対する優れた洗浄力が損なわれる。
【0006】
従って本発明の課題は、AESの原料アルコールとして直鎖アルコール、例えば天然アルコールを使用しながら、高い洗浄力を有し、且つ低温における貯蔵安定性に優れる、液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、天然原料起源の直鎖アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩型界面活性剤(AES)を液体洗浄剤に応用する目的から、直鎖アルキル基を有するAESの洗浄挙動を詳細に検討した。その結果、アミンオキシド型界面活性剤と併用した場合、アルコールにエチレンオキシドが1モル付加した構造(付加モル数分布が単一である)のAES型界面活性剤、及びアルコールにエチレンオキシドが2モル付加した構造(付加モル数分布が単一である)のAES型界面活性剤が最も洗浄力が高いことを見出した。一方で、アルコールにエチレンオキシドを付加する反応は、生成物におけるエチレンオキシドの付加モル数が幅広い分布を持つことが知られており、例えば平均2モル付加させた場合には、目的とする2モル付加物は15〜20質量%しか得られず、未反応のアルコールが反応生成物中に約30質量%存在する。このようなエチレンオキシド付加物を硫酸化して得られたAESは、アルキル硫酸エステル塩(ASという場合がある)が約30質量%存在し、ASとAOとのコンプレックスが低温で析出し、安定性を損なうことを見出した。このことは、直鎖のアルキル基を有するAESにおいて特に問題である。なお、前記したように、エチレンオキシドの平均付加モル数を増加することで硫酸化後のASの量を減少させ安定性上の改善を図ることができるが、一方で洗浄力に効果的な1モル付加体、及び2モル付加体までもが減少してしまい、結果、洗浄力が低下することが判明した。本発明者らは、オキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩の製造において、プロピレンオキシドを最初にアルコールに少量付加させることで、未反応のアルコールを低減させ、その後にエチレンオキシドを付加させることで、優れた安定性と洗浄力が得られることを見出した。これは、アルコールに最初にプロピレンオキシドが付加することにより、エチレンオキシドが1モルの付加体、及び2モルの付加体の割合を減少させることなく反応が進行するためと推察される。また、アルコールに最初にプロピレンオキシドが付加することにより、アルキル基及びこれに結合するオキシプロピレン基により擬似的分岐構造が形成され、界面活性剤間のパッキング性を適度に緩めることで安定性に寄与すると考えられ、本発明に至った。
【0008】
本発明は、(a)下記一般式(1)で表される化合物を含有する混合物であって、当該混合物におけるプロピレンオキシドの平均付加モル数m及びエチレンオキシドの平均付加モル数nが、それぞれ0<m<1、0<n≦3である混合物〔以下、(a)成分という〕を4〜50質量%、(b)炭素数8〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基とを有するアミンオキシド型界面活性剤〔以下、(b)成分という〕を1〜30質量%、ハイドロトロープ剤及び有機溶剤から選ばれる相安定化剤、並びに水を含有し、(a)/(b)が質量比として20/1〜1/1である液体洗浄剤組成物に関する。
1aO−(PO)m1(EO)n1SO3M (1)
(式中、R1aは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、且つ酸素原子と結合している炭素原子は第1炭素原子であって、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m1、n1はPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0以上の整数である。Mは陽イオンである。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体洗浄剤組成物は、AESの原料アルコールとして天然原料、すなわち原料アルコールが直鎖アルキル基を有する化合物で占められるような原料を使用しながら、高い洗浄力と優れた低温貯蔵安定性を発現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の液体洗浄剤組成物に含有される各成分について説明する。
本発明の(a)成分は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する混合物であって、当該混合物におけるプロピレンオキシドの平均付加モル数m及びエチレンオキシドの平均付加モル数nが、それぞれ0<m<1、0<n≦3である混合物である。
1aO−(PO)m1(EO)n1SO3M (1)
(式中、R1aは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、且つ酸素原子と結合している炭素原子は第1炭素原子であって、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m1、n1はPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0以上の整数である。Mは陽イオンである。)
【0011】
本発明の(a)成分は天然系のアルコールから誘導される界面活性剤を用いることができ、従ってR1aは直鎖であり、且つ天然由来のアルコールは末端がヒドロキシ基であるため、そこにプロピレンオキシドやエチレンオキシドが付加することから、プロピレンオキシド又はエチレンオキシドの酸素原子と結合しているR1aの炭素原子は、第1炭素原子である。もちろんアルキル硫酸エステル又は塩の場合は、R1aの末端のヒドロキシ基が硫酸化されたものであり、これも同様に第1炭素原子になる。
【0012】
mとnは、一般式(1)で示される化合物のm1及びn1より計算される、該化合物の混合物における平均付加モル数である。ところで(a)成分の化合物を製造する上で、本発明では、まずプロピレンオキシドを付加させることが重要である。エチレンオキシドとプロピレンオキシドのアルコールへの付加のしやすさを調べると、プロピレンオキシドのほうが付加しやすいことが分かる。つまり、プロピレンオキシドを最初に付加させることで、未反応アルコールの割合を低下させることが可能となるため、最終的に未反応アルコールが硫酸化されてなる、アルキル硫酸エステル又はその塩の含有量は低減する。なおプロピレンオキシドの付加率を高めると、プロピレンオキシドによる擬似的分岐構造をもつ界面活性剤の割合が高くなり、その結果、活性剤間のパッキング性が立体障害のために悪くなり洗浄力が低下する。従ってmで示されるプロピレンオキシドの平均付加モル数は1未満に限定され、好ましくは下限値が0.1以上、すなわち0.1≦mであり、より好ましくは0.15以上、すなわち0.15≦mであり、上限値が好ましくは0.8以下、すなわち、m≦0.8であり、より好ましくは0.6以下、すなわちm≦0.6である。
【0013】
本発明の(a)成分は、プロピレンオキシド(以下POという場合がある。)付加させた後、次にエチレンオキシド(以下EOと言う場合がある。)を付加するが、その付加モル数はEO1モル及び2モル付加したもの、すなわち一般式(1)で示される化合物のうちn1=1及びn1=2の化合物が最も洗浄性能の上で効果的である。そのため、1モル、2モルの比率が高くなるように、エチレンオキシドを付加することが望ましい。従って本発明では、EOの平均付加モル数nは好ましくは2.5以下、すなわちn≦2.5であり、より好ましくは2.3以下、すなわちn≦2.3であり、最も好ましくは2以下、すなわちn≦2である。またnの下限値は好ましくは0.5以上、すなわち0.5≦nであり、より好ましくは1以上、すなわち1≦nである。
【0014】
以下、一般式(1)のm1及びn1について説明する。本発明では、(a)成分は0<m<1、0<n≦3であり、これを満たすように、m1=0及びn1=0で示される化合物の割合が制限されることで低温安定性が向上し、アミンオキシド型界面活性剤と併用し高濃度界面活性剤のような組成であっても、十分な洗浄力を得ることができる。更にn1=0以外の化合物(ただしm1≠0)において、オキシプロピレン基がアルキル鎖の擬似分岐的要素をもつことからも、合成アルコールの分岐鎖のような役割でもって低温安定性を改善すると考えられる。
【0015】
本発明では(a)成分中の、m1=n1=0の化合物、すなわちアルキル硫酸エステル又はその塩の割合が、好ましくは28質量%以下であり、より好ましくは26質量%以下、最も好ましくは24質量%以下である。
【0016】
また、本発明の(a)成分は、m1≧2の化合物の含有量が、好ましくは(a)成分中に15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。m1≧2の化合物は洗浄力を低下させる。
【0017】
アルコールにプロピレンオキシドを反応させる場合、プロピレンオキシドは、一度アルコールと反応したPOの後に続いて反応するよりは、未反応アルコールに反応し易い傾向を示す。従ってm<1の割合でプロピレンオキシドを反応させる場合、m1=1の化合物が多く生成され、m1≧2の化合物の生成は少ない。特にm≦0.6の割合でプロピレンオキシドを反応させる場合、m1≧2の化合物の生成を15質量%以下、特には10質量%以下に抑制しやすくなる。m1≧2の化合物を制限するためには触媒の選定に注意する。なおm1≧2の化合物の生成を確実に抑制する方法としては、過剰のアルコール存在下でプロピレンオキシドを添加する方法が考えられる。この場合エチレンオキシドを反応させる前に蒸留により余分な未反応のアルコールを除去する必要がある。
【0018】
(a)成分を構成している化合物として、オキシプロピレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、すなわちm1=1且つn1=0の化合物は(a)成分中に好ましくは4〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0019】
更には、本発明では(a)成分を構成している化合物として、エチレンオキシド基が1又は2の化合物が多いことが好ましいことは先に述べたとおりである。従ってn1=1及びn1=2の化合物は、(a)成分中、好ましくは25〜45質量%、より好ましくは28〜40質量%である。残りの(a)成分中の化合物は、n1が3以上の化合物である。
【0020】
m1の上限は、好ましくは3以下であり、従って(a)成分は0≦m1≦3の化合物からなることが好ましい。また、n1の上限は、好ましくは10以下であり、従って(a)成分は0≦n1≦10の化合物からなることが好ましく、特には本発明では洗浄力の上で0≦n1≦5の化合物が(a)成分中の85質量%以上を占める混合物であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)中のMは、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属イオン、−N+4(アンモニウムイオン)、およびモノエタノールアンモニウム基等のアルカノールアンモニウム基等が挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウムなどが挙げられるが、これらの中でナトリウム、カリウムがより好ましい。
【0022】
なお、本発明では、(a)成分に係る質量に関する記述(質量%や質量比)は、(a)成分の一般式(1)中のMを水素原子と仮定したときの質量(酸換算での比率)に基づくものとする。
【0023】
(a)成分は、その製造において、硫酸化されない化合物を含む場合があるが、本発明では該化合物は非イオン性界面活性剤として扱うものとする。
【0024】
(a)成分は次のようにして製造することができる。
工程(I):直鎖1級アルコールにプロピレンオキサイドを付加させる工程
工程(II):上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを付加させる工程
工程(III):上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和する工程
【0025】
工程(I)では、炭素数8〜18の直鎖1級アルコールにプロピレンオキサイドを付加させるが、付加の割合は、アルコールに1モル当たり、一般式(1)中のmで示される割合のプロピレンオキシドを付加させる。
【0026】
工程(II)では、上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを平均で付加させる。アルコールに対して一般式(1)中のnで示される割合のエチレンオキシドの割合で反応させる。
【0027】
工程(I)、(II)を実施する方法としては、従来公知の方法が使用可能である。すなわち、オートクレーブにアルコールとアルコールに対し0.5〜1モル%のKOHを触媒として仕込み、昇温・脱水し、約120〜160℃の温度で、それぞれ所定量のプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドを付加反応させることにより製造できる。このとき、付加形態はブロック付加であり、かつプロピレンオキサイド付加〔工程(I)〕、エチレンオキサイド付加〔工程(II)〕の順に行う。使用するオートクレーブには攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えられていることが望ましい。
【0028】
工程(III)は、上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和させる工程である。硫酸化の方法としては、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸等を用いる方法が挙げられるが、特に、廃硫酸及び廃塩酸等の発生を防止する観点から、三酸化硫黄をアルコキシレートと同時にガス状又は液状で連続的に供給する方法が好ましい。
【0029】
硫酸化物の中和方法としては、所定量の中和剤へ硫酸化物を添加・攪拌しながら中和を行うバッチ式と、硫酸化物と中和剤を配管内へ連続的に供給し、攪拌混合機にて中和を行うループ式などが挙げられるが、本発明では中和方法に限定はない。ここで使用される中和剤としてはアルカリ金属水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミンなどが挙げられるが、アルカリ金属水溶液が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0030】
本発明の(b)成分は、炭素数10〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を有するアミンオキシド型界面活性剤である。アミンオキシド型界面活性剤は、(a)成分のAESと併用することで、優れた油汚れ洗浄力を発揮する。アミンオキシド型界面活性剤としては、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、R2aは炭素数10〜18の炭化水素基であり、R2bは炭素数1〜3のアルキレン基であり、R2c、R2dは炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、Xは―COO−、−CONH−、−O−から選ばれる基であり、oは0又は1の数である。)
【0033】
上記一般式(2)で示される化合物のうち、R2aは好ましくは炭素数10〜16 、より好ましくは10〜14のアルキル基又はアルケニル基である。具体的に好ましい化合物としては、R2aがラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)であり、R2c及びR2dが共にメチル基であり、o=0である化合物、並びに、R2aがラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)であり、R2c及びR2dが共にメチル基であり、o=1であり、Xが−CONH−又は−O−であり、且つR2bがプロピレン基又はヒドロキシプロピレン基の化合物である。
【0034】
本発明ではR2aは単独のアルキル(又はアルケニル)鎖でもよく、異なるアルキル(又はアルケニル)鎖を有する混合アルキル基(又はアルケニル基)であってもよい。後者の場合には、ヤシ油、パーム核油から選ばれる植物油から誘導される混合アルキル(又はアルケニル)鎖を有するものが好適である。具体的にはラウリル基(又はラウリン酸残基)/ミリスチル基(又はミリスチン酸残基) のモル比が95/5〜20/80、好ましくは90/10〜30/70であることが洗浄効果の点から好ましい。
【0035】
本発明の液体洗浄剤組成物は、その他の成分として、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び(a)成分以外の陰イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤[以下、(c)成分とする。]を併用することが、安定性の上で及び洗浄性の上で併用することが好ましい。
【0036】
好ましい非イオン性界面活性剤として、分岐鎖を有する炭素数6〜12のアルキル基を有するモノアルキル(ポリ)グリセリルエーテルをあげることができる。特に下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
3−O−X (3)
〔式中、R3は分岐鎖を有する総炭素数8〜12のアルキル基、好ましくは2−エチルヘキシル、イソノニル、イソデシルから選ばれる基であり、XはCH2CH(OH)CH2OHである。〕
【0037】
好ましい非イオン性界面活性剤として、炭素数8〜20の分岐鎖又は直鎖の一級又は二級アルコールにエチレンオキシドを付加させたポリオキシエチレンアルキルエーテルをあげることができる。特に下記一般式(4)で示されるものが好ましい。
4−O(EO)rH (4)
〔式中、R4は平均炭素数8〜20、好ましくは8〜18の一級の直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基又は二級のアルキル基である。EOはエチレンオキシ基であり、rは平均付加モル数として5〜20である。〕
【0038】
好ましい非イオン性界面活性剤として、炭素数8〜20の分岐鎖または直鎖の一級又は二級アルコールにプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを付加させたポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルをあげることができる。なおオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロックでもランダムでもよく、順序も問わない。特に下記一般式(5)で示されるものが好ましい。
5−O[(EO)p/(PO)q]H (5)
〔式中、R5は炭素数8〜20、好ましくは8〜18の一級のアルキル基である。EOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドを示す。pは平均付加モル数として3〜15、qは平均付加モル数として1〜5である。EOとPOはランダム付加又はEOを付加した後、POを付加してもよく、またその逆のようなブロック付加体でもよい。〕
【0039】
その他併用可能な非イオン性界面活性剤として、アルキルグリコシドを挙げることができる。なお一般式(4)化合物及び(5)の化合物のうちプロピレンオキシドが先に付加した化合物は、(a)成分の硫酸化が不十分な場合は未反応の化合物として少量含有される場合がある。本発明では特に、モノアルキルグリセリルエーテル、具体的には一般式(3)で示される化合物を併用することで、洗浄性は特に向上し、濯ぎ性も向上する。
【0040】
両性界面活性剤としては、スルホベタイン、カルボベタインを用いることができる。
【0041】
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数が10〜20のアルキル基を有し、且つ硫酸基またはスルホン酸基を有する陰イオン性界面活性剤が好ましい。具体的には直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩を挙げることができる。なお(a)成分で示されたRa1を満たさないポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を配合しても差し支えなく、それは合成アルコール由来のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩であってもよい。しかしながらポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を配合する場合、(a)成分の要件を満たす化合物、すなわちRa1についての条件を満たす化合物が混ざっている場合は(a)成分の条件の範囲内で配合されなければならない。
【0042】
なお、本発明の(a)成分のR1aは100%天然起源のアルキル基、すなわちR1aが直鎖であり、且つ酸素原子と繋がる炭素原子が第1炭素原子であることを条件とすることで特徴を出すことができるが、前記したように、他の合成系AESとの併用は(a)成分の条件を乱さない限り配合することができる。しかしながらその場合、合成起源のAESであっても、製造によってはRa1を満たすものが幾分か含まれてくるため、合成起源100%のAESとの違いが明確でなくなる可能性がある。
【0043】
本発明では、本発明の特徴を明確にし、従来の合成アルコール起源のAESとの相違を明確にするために、合成アルコール起源のAESの特徴である、分岐鎖アルキル基を有するAES、及び直鎖アルキル基であってアルキル基と結合している酸素原子がアルキル基の第1炭素原子以外の炭素原子と結合しているAESの割合、換言すれば分岐鎖アルキル基を有するAES及び直鎖2級アルコール由来のAESの割合を限定することで、天然系AESと合成系AESとの間の違いを明確にすることができる。具体的には、一般的な合成系アルコールの製造条件で、前記分岐鎖アルコール由来又は2級アルコール由来のAESが、全AES中に約20〜100質量%であることから、本発明の液体洗浄剤組成物において、(1)分岐鎖アルキル基を有するAES、及び(2)直鎖アルキル基であってアルキル基と結合している酸素原子が、アルキル基の第2炭素原子と結合しているAES、の合計の割合を液体洗浄剤組成物中に含まれる全AES中の20質量%未満、更には15質量%以下、特には10質量%以下、本質的には実質含まないとすることで合成系との違いを示すことができる。
【0044】
本発明の液体洗浄剤組成物は、ハイドロトロープ剤〔以下、(d)成分という場合がある〕及び有機溶剤〔以下、(e)成分という場合がある〕から選ばれる相安定化剤を含有する。
【0045】
(d)成分のハイドロトロープ剤としては、最大炭素数が3以下のアルキル基を1〜3有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、具体的にはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、及びクメンスルホン酸、並びにこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸が良好である。
【0046】
(e)成分の、有機溶剤としては、まず(i)炭素数1〜3のアルコール、(ii)炭素数2〜4のグリコールやグリセリン、(iii)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のジまたはトリアルキレングリコール、(iv)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のジないしテトラアルキレングリコールのモノアルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、フェノキシ又はベンゾオキシエーテル、をあげることができる。
具体的には(i)として、エタノール、イソプロピルアルコール、(ii)として、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、(iii)として、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、(iv)として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジグリコールモノブチルエーテル、フェノキシエタノール、フェノキシトリエチレングリコール、フェノキシイソプロパノールがあり、これらから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。特にはエタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノールが好ましい。
【0047】
また、有機溶剤としてポリアルキレングリコールを用いることができる。ポリアルキレングリコールは、ゲル化防止剤[以下、(e−1)成分というときがある]として有用であり、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体、とりわけポリプロピレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ポリプロピレングリコールは、重量平均分子量が600〜5000、更には1000〜4000のものが好ましく、重量平均分子量は光散乱法を用いて決定することができ、ダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ、大塚電子株式会社製など)により測定することができる。
【0048】
また、洗浄剤組成物の気液界面に出来る、活性剤の重合膜の形成抑制を目的に、グリセリンのエチレンオキシド付加物を(e)成分として配合してもよい。
【0049】
本発明の液体洗浄剤組成物は、金属イオン封鎖剤[以下(f)成分とする]として、クエン酸、リンゴ酸、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、酒石酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸化合物の窒素原子にカルボキシメチル基が1つ以上結合したアミノポリカルボン酸〔例えば、MGDA(メチルグリシン二酢酸)〕並びにそれらの塩を配合してもよい。塩はナトリウム、カリウム、アルカノールアミンを挙げることができるが、別成分アルカリ剤として配合してもよい
【0050】
本発明の液体洗浄剤組成物には、その他成分として、例えばプロキセルやケーソンなどの商品名で知られている防菌・防黴剤、亜鉛塩、銀塩、ポリリジン、フェノキシエタノールなどの殺菌剤、硫酸マグネシウムなどの水溶性無機塩、亜硫酸塩などの還元剤、BHT、アスコルビン酸、などの酸化防止剤、キサンタンガム、グァーガム、カラギーナンなどの増粘性高分子、ポリアクリル酸系ポリマーなどの高分子分散剤、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどの酵素、増泡剤、着色剤、香料、などの液体洗浄剤に配合することが知られている化合物を配合することができる。
【0051】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物は残部は水であり、実質的に必須成分である。水は液体安定性の上で、蒸留水又はイオン交換水を用いることが好ましい。
【0052】
次に本発明の液体洗浄剤組成物における前記成分の配合割合について説明する。本発明の(a)成分は、組成物中に4〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%含有される。洗浄性の観点から下限値以上であり、低温安定性の観点から上限値以下である。なお前記(a)成分の含有量は一般式(1)におけるMを水素原子と仮定した場合の濃度とする。
【0053】
(b)成分は、組成物中に1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜15質量%含有される。洗浄性の上で下限値以上であり、低温安定性の上で上限値以下である。
【0054】
(a)成分は(b)成分と併用することでコンプレックスを形成し特に高濃度では効果が強くなる。そのためには(a)成分と(b)成分は、(b)成分に対する(a)成分の割合が、質量比として、(a)/(b)=20/1〜1/1、好ましくは10/1〜1/1、より好ましくは10/1〜2/1である。低温安定性の観点から下限値以上であり、洗浄力の観点から上限値以下である。
【0055】
(c)成分は、組成物中に好ましくは5〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%含有され、更に(b)成分以外の非イオン性界面活性剤を組成物中に0.5〜15質量%含有することが乳化力・起泡力の点で好ましく、両性界面活性剤を2〜15質量%含有することが起泡力・低温安定性の点で好ましい。(a)成分以外の陰イオン性界面活性剤を配合することができるが、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩やアルカンスルホン酸塩などのスルホン酸系界面活性剤は、その殆どが合成系の界面活性剤であり、本発明の天然系のAESの使いこなしの技術的観点からすると、その配合量は制限することが好ましく、具体的には組成物中5質量%未満、更には3質量%以下、特には2.5質量%以下であることが好ましい。
【0056】
本発明では、(a)成分、(b)成分、(c)成分等を含めた界面活性剤の総量が10〜60質量%、更に10〜50質量であることが好ましい。また全界面活性剤に対する(a)成分及び(b)成分の合計の割合が、40〜90質量%、更に40〜85質量であることが好ましい。
【0057】
本発明の(d)成分であるハイドロトロープ剤の組成物中の含有量は、好ましくは1.5〜10質量%、より好ましくは2〜7.5質量%である。
【0058】
本発明の(e)成分である有機溶剤の組成物中の含有量は、後述する(e−1)を除いた量として、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは1.5〜15質量%である。エタノールの組成物中の含有量は0〜7.5質量%が好ましく、その他溶剤としてはプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノールから選ばれる1種または2種以上を配合することが好ましいが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノールから選ばれる1種または2種以上の溶剤の総量は組成物中0〜25質量%とすることができる。
【0059】
また、(e)成分の中でも(e−1)成分であるゲル化防止重合体の組成物中の含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%である。ポリプロピレングリコールの場合、組成物中に0〜2質量%配合することが好ましい。
【0060】
本発明の水は残部であるが、組成物中85質量%以下、他の成分を考慮した場合、80〜30質量%配合される。
【0061】
なお本発明の液体洗浄剤組成物のpHは25℃で4.5〜9、好ましくは5.5〜8である。(b)成分のアミンオキシドはpHによりカチオン化度が変化すること、(a)成分は酸性で不安定であること等を考慮して、且つ低温安定性の点で下限値が決められ、洗浄性の点で上限値が決められる。pH調整は、酸性に調整する場合は、塩酸、硫酸などの無機酸の他に、クエン酸などのキレート剤をやハイドロトロープ剤を用いてもよく、アルカリ剤としてはアルカノールアミンの他に、アルカリ金属水酸化物を用いてもよい。なお、pHは後述の実施例の方法で測定されたものである。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物の粘度は液の吐出性の観点から好ましくは10〜1000mPa・s、より好ましくは25〜500mPa・sである。粘度の測定方法は、20℃にてブルックフィールド型粘度計により測定する。ローターはNo.2のものを用い、回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【実施例】
【0063】
<実施例1〜6及び比較例1〜6>
下記(a)成分及び表2に示す成分を用いて液体洗浄剤組成物を調製した。その際、pHは48%水酸化ナトリウムを用いて調整した(表1中は「+」表示)。pHの測定方法は以下の通りである。調整後、これら組成物の洗浄力を下記の方法で評価した。結果を表2に併記する。なお、用いた(a)成分〔一部比較の化合物を含む〕は次の通りである。なお、以下の天然アルコールは、直鎖アルキル基を有する化合物のみで構成されている。
・ES1:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを0.4モル付加、EOを1.5モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES2:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを0.5モル付加、EOを1.5モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES3:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを0.6モル付加、EOを1.5モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES4:アルキル鎖がC12の天然アルコールに、POを0.4モル付加、EOを2.0モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES5:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、EOを2.0モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES6:アルキル鎖がC12の天然アルコールに、EOを4.0モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES7:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを0.5モル付加、EOを3.5モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES8:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを2.0モル付加、EOを1.0モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
・ES9:アルキル鎖がC12:C14=73:27(質量比)の天然アルコールに、POを2.0モル付加、EOを2.0モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)。
ES1〜ES9の詳細を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
<pHの測定方法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F−23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入した。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
【0066】
次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行った。
【0067】
試料(液体洗浄剤組成物)を100mlビーカーに充填し、25℃の恒温槽内にて25℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、pHを測定した。
【0068】
<洗浄力試験>
菜種油/牛脂を1/1の質量比で混合し、さらに0.1質量%の色素(スタンレッド)を均一に混ぜ込んだモデル油汚れ1gを陶器製の皿に均一に塗り広げたものをモデル汚染食器とした。市販のスポンジ(住友3M社製:スコッチブライト)に表2の組成物1g及び水道水30gを染み込ませ2〜3回手でもみ泡立たせた。これを用いてモデル汚染食器を擦り洗いし、洗浄(食器に付着した色が消えることにより確認)できた皿の枚数を求めた。
【0069】
<低温安定性(1)>
表1の液体洗浄剤組成物を食器用洗剤専用のPET製ボトルに250ml入れ、−5℃で20日の保存を行い、液の外観の変化を調製直後の透明、均一な状態と比較して下記の基準で評価した。
外観に変化がみられない……○
ゲル化、分離、沈殿形成などの外観の変化がみられる……×
【0070】
【表2】

【0071】
表中の成分は以下のものである。
・APAO:ラウリン酸アミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・AO1:N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキシド
・AO2:N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミンオキシド/N−ミリスチル−N,N−ジメチルアミンオキシド=2/3(質量比)
・スルホベタイン:ラウリルジメチルスルホベタイン
・アルケニルコハク酸カリウム:アルケニル基の炭素数12
・ノニオン1:アルキル基の組成がC12/C14=60/40(質量比)の混合アルキルでグルコシド平均縮合度1.5のアルキルグルコシド
・ノニオン2:ソフタノール70H(日本触媒株式会社製)
・GE−2EH:2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテル(モノグリセリルエーテル99質量%)
・ポリプロピレングリコール:平均分子量1000のもの
・PhG−30:ポリオキシエチレンモノフェニルエーテル(日本乳化剤株式会社製、EO平均付加モル数3.0モル)
・防腐剤:プロキセルBDN(アビシア株式会社製)
【0072】
<実施例7及び比較例7>
表3の液体洗浄剤組成物(配合成分は表2と同じものである)を作製し、食器用洗剤専用のPET製ボトルに250ml入れ、−5℃で1日の保存を行い、液の外観の変化を調製直後の透明、均一な状態と比較して評価した。評価基準は先の低温安定性(1)と同じである。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)で表される化合物を含有する混合物であって、当該混合物におけるプロピレンオキシドの平均付加モル数m及びエチレンオキシドの平均付加モル数nが、それぞれ0<m<1、0<n≦3である混合物を4〜50質量%、(b)炭素数8〜18の炭化水素基と、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基とを有するアミンオキシド型界面活性剤を1〜30質量%、ハイドロトロープ剤及び有機溶剤から選ばれる相安定化剤、並びに水を含有し、(a)/(b)が質量比として20/1〜1/1である液体洗浄剤組成物。
1aO−(PO)m1(EO)n1SO3M (1)
(式中、R1aは炭素数8〜18の直鎖アルキル基であり、且つ酸素原子と結合している炭素原子は第1炭素原子であって、POとEOは夫々プロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m1、n1はPO又はEOの付加モル数を示し、それぞれ0以上の整数である。Mは陽イオンである。)
【請求項2】
(a)成分中、一般式(1)中のm1及びn1が共に0である化合物の割合が28質量%以下である、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに(c)成分として、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び(a)成分以外の陰イオン性界面活性剤を含有し、界面活性剤の総量が10〜60質量%である、請求項1又は2に記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
全界面活性剤に対する(a)成分及び(b)成分の合計の割合が40〜90質量%である、請求項1〜3何れかに記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−132823(P2009−132823A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310893(P2007−310893)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】