説明

液体浄化装置

【課題】廃水中に含まれるリンを除去する液体浄化装置を提供する。
【解決手段】被浄化液2中のリン濃度と同等以上の鉄イオン3を添加して、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させ、このフロックが形成された被浄化液2aを、マグネシュウムの水酸化物からなる粉末状体もしくは顆粒状体あるいはペレット状体の吸着剤18,28の相互間隙中に通過させることにより、フロックを凝集させて約300倍の大きな塊にし、フロック自体の大きさの、約100倍の目の粗さのフイルタ21,31で捕捉させるようにしたものであり、添加する鉄イオン3の濃度を、リンの含有濃度とほぼ同等の、非常に少ない量の添加に留めることが出来、反応時間も瞬時に対応することが出来るため、装置も非常に小型で、廉価に製作でき、ランニングコストも大幅に安くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、飲料水工場等の廃水中に含まれるリンを除去する液体浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲料水工場等において使用される、例えば、洗剤中にリンが混入しており、このリンが工場廃水中に混入し、その除去が問題となっている。
現在、廃水中のリンを除去する装置としては、ポリ塩化アルミニウムを凝集剤として用いた凝集沈殿法が主流である。この他として、バクテリアを用いた嫌気好気法、鉄電極を用いた鉄電解処理法がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
凝集剤を用いた凝集沈殿法は、リンを抱き込み凝集沈殿させるために多量の凝集剤を必要とし、かつ、凝集沈殿した多量の沈殿物を処理する必要があった。さらに、凝集沈殿させるために長時間を要するため、大面積の凝集沈殿槽を必要とする課題が有った。また、鉄を凝集剤として用いる試みもなされたが、余り効果が認められず、現在は、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムが用いられている。
また、バクテリアを用いた嫌気好気法にあっては、バクテリアがリンを吸収するに長時間を要するため、装置が膨大なものとなる課題があった。
さらに、鉄電極を用いた鉄電解処理法にあっては、処理能力が低く、大流量処理が出来ない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、被浄化液中のリン濃度と同等以上の鉄イオンを添加して、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させ、このフロックが形成された被浄化液を、マグネシュウムの水酸化物からなる粉末状体もしくは顆粒状体あるいはペレット状体の吸着剤の相互間隙中に通過させることにより、吸着剤の電荷0ポイントにより+電位となった吸着剤の表面にフロックを吸引して、フロックの相互間距離をお互いに引力が作用する距離以下にすることにより、フロックを凝集させて約300倍の大きな塊にした後、フロック自体の大きさの、約100倍の目の粗さのフイルタで捕捉させるか、または、沈殿槽で沈殿除去するようにしたものであり、添加する鉄イオン濃度を、リンの含有濃度とほぼ同等の、非常に少ない量の添加に留めることが出来、反応時間も瞬時に対応することが出来るため、装置も非常に小型で、廉価に製作でき、ランニングコストも大幅に安くなる。
【0005】
図1から図13は、この発明の説明図である。
図1において、容器1内に、図2の写真に示すリン:3ppm未満を含有する被浄化液2を10l入れる。
続いて、図3において、容器1内の被浄化液2に、例えば、硫酸第二鉄である鉄イオン3を10ppm添加して、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させ、図4の写真に示す如く、極薄い茶褐色に着色した状態の被浄化液2aとする。
鉄イオン3の添加量は非常に少ないため、図4の写真から明らかなように、被浄化液2aは極薄い茶褐色に着色した状態であり、従来の凝集沈殿法の如く、凝集剤を多量に投入して、リンを凝集剤と共に凝集沈殿させる必要はない。
図5は、被浄化液2aを浄化するフローを示す図で、容器1内に入れられた被浄化液2aを、リキッドコンサンド社製のSAフイルタ:K150N25型で浄化する状態を示し、図6は、そのテスト状況を示す写真である。
図5,図6において、容器1内の被浄化液2aを、ポンプ4で流量:10l/minでSAフイルタ5に送り込み循環濾過する。
SAフイルタ5は、容器6と、容器6内にセットされた吸着剤カセット7とからなり、吸着剤カセット7は、中心軸にセットされた円筒状の1μmの糸巻状のフイルタ8と、最外周に設けられた200μmの濾紙9と、フイルタ8と濾紙9との間に充填された水酸化マグネシュウムを主成分とする吸着剤10とで構成されている。
即ち、容器1内の被浄化液2aをポンプ4で吸着剤10に送り込み、吸着剤10の相互間隙とフイルタ8と介して循環濾過する。
【0006】
次に、吸着剤10の凝集作用を、図7,図8を用いて説明する。
図7は、水酸化マグネシュウムの電荷0ポイント特性を示す図で、横軸にpH値を、縦軸に濃度Dを取っている。被浄化液2aのpH値が吸着剤10の電荷0ポイントより低いpH領域の場合、吸着剤10から負に帯電する水酸基OHが被浄化液2a中に溶解し、吸着剤10の表面が正に帯電する性状を利用する。
【0007】
即ち、吸着剤10が水酸化マグネシュウムの場合、その電荷0ポイントはpH12で、pH領域がpH6〜pH12の被浄化液2a中にあっては、水酸化マグネシュウムから水酸基OHが被浄化液2a中へ溶解して、水酸化マグネシュウムの表面は正に帯電する。
一方、被浄化液2a中のリンと鉄イオンとが結合して形成されたフロックは、pH6〜pH12の領域の水溶液中にあっては負に帯電する。
例えば、被浄化液2中の微粒子が鉄粉の場合、被浄化液2中では鉄粉は酸化鉄となり、その電荷0ポイントはpH4で、pH6〜pH12の被浄化液2中では負に帯電する。
【0008】
図8は、粒子間距離とポテンシャルエネルギーの特性曲線で、横軸に微粒子A,B間の距離Lを、縦軸に反発力Pと、吸引力Pとを取っている。
図7において、負に帯電しているフロックは、正に帯電している吸着剤10の表面に吸引されて、フロックA,Bの相互間距離Lが、図8における、互いに吸引力Pが働く距離Lまで狭くなり、互いに凝集して大きな塊となる。
即ち、図5において、吸着剤8の相互間隙を被浄化液2aが通過すると、被浄化液2a中のフロックは互いに凝集して、約300倍の大きな塊となる。この大きな塊となったフロックは、目の粗い、例えば、メーカー公称1μmのフイルタ8で捕捉される。
現時点で知られているあらゆる物質の電荷0ポイントは、水酸化マグネシュウムが一番高い。このため、pH6〜pH12の領域の水溶液中にあっては殆どの物質が凝集する。
【0009】
図5,図6において、ポンプ4は、流量:10l/minであり、容器1内の被浄化液2は1分間で、1パス濾過されることになる。
図9は、被浄化液2aを1パス:濾過時間1分間、濾過した被浄化液2aを示す写真、図10は、被浄化液2aを2パス:濾過時間2分間、濾過した被浄化液2aを示す写真、図11は、被浄化液2aを3パス:濾過時間3分間、濾過した被浄化液2aを示す写真、図12は、被浄化液2aを5パス:濾過時間5分間、濾過した被浄化液2aを示す写真である。
図13は、図2の写真に示す被浄化液2と、図10の写真に示す2パス濾過した被浄化液2aとの、リンの含有濃度を簡易分析している状況を示す写真である。
表1に、それぞれのリンの含有濃度の分析データーを示す。
【表1】

なお、簡易分析器としては、共立化学研究所製、デジタルパックテスト・マッチ:DPM−MT型を使用した。
【00010】
また、表2に、モリブデン青吸光光度測定法による正式な分析データーを示す。
【表2】

表1及び表2から明らかな如く、リンの含有濃度は、所望の値まで十分低減している。
【0011】
次に、この発明の一実施例を図14に示す。
図14において、例えば、図2の写真に示すリンを含有する被浄化液2と、例えば、硫酸第二鉄である鉄イオン3とを、容器11内に投入して撹拌し、図4の写真に示すように、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させる。なお、鉄イオン3の投入量は、リンの含有量と同等以上であればよい。
フロックが形成された被浄化液2aは、浄化槽12の第一槽に注ぎ込まれ、第一槽内の被浄化液2aは、ポンプ13によって、SAフイルタ14と後処理フイルタ19とを介して第二槽内に送り込まれ、一次濾過されて後、第三槽にオーバーフローで流入する。
【0012】
SAフイルタ14は、吸着剤カセット15を備えており、吸着剤カセット15は、中心軸にセットされた100μmの糸巻状のフイルタ16と、最外周に設けられた200μmの濾紙17と、フイルタ16と濾紙17との間に充填された水酸化マグネシュウムを主成分とする体積比50%の吸着剤、並びに、この吸着剤の相互間隙を広げる役目をする体積比50%の珪藻土を焼き固めたスペーサーとからなる吸着剤18とか構成されている。後処理フイルタ19は、容器20と、容器20内にセットされた1μmの糸巻状のフイルタ21からなっている。レベルスイッチ22は、第一槽の液面によりポンプ13の運転を制御するものである。
【0013】
第一槽内の被浄化液2aは、ポンプ13によってSAフイルタ14内に送り込まれ、濾紙17を介して吸着剤18の相互間隙を通過する。
吸着剤16は、水酸化マグネシュウムを主成分とする吸着剤50%を備えており、被浄化液2aがその相互間隙を通過すると、被浄化液2a中のリンと鉄イオンとの結合で形成されたフロックは、吸着剤18の+電位の表面に吸引されて、互いに引力が働く距離まで近づき、凝集して約300倍の大きな塊になる。この大きな塊は中心軸にセットされた100μmのフイルタ16を通過して、後段に設けられた後処理フイルタ19にセットされた1μmのフイルタ21で捕捉除去され、一次濾過された一次濾過液は第二槽に送り込まれ、オーバーフローで第三槽に流入する。
なお、吸着剤18を構成するスペーサーは、水酸化マグネシュウムを主成分とする吸着剤の相互間隙での目詰まりを防止するためのものである。また、中心軸にセットされた100μmのフイルタ16は、吸着剤カセット15の強度補強のために設けてある。
【0014】
第三槽内に流入した一次濾過液は、ポンプ23によって、SAフイルタ24と後処理フイルタ29とを介して、第四槽内に送り込まれ、精密濾過されて後、第五槽にオーバーフローで流入し、さらに、浄化槽11外に流出する。
【0015】
SAフイルタ24は、吸着剤カセット25を備えており、吸着剤カセット25は、中心軸にセットされた100μmの糸巻状のフイルタ26と、最外周に設けられた200μmの濾紙27と、フイルタ26と濾紙27との間に充填された水酸化マグネシュウムを主成分とする体積比100%の吸着剤28とか構成されている。後処理フイルタ29は、容器30と、容器30内にセットされた1μmの糸巻状のフイルタ31からなっている。レベルスイッチ32は、第三槽の液面によりポンプ23の運転を制御するものである。
【0016】
即ち、第三槽内の一次濾過液は、ポンプ23によってSAフイルタ24内に送り込まれ、濾紙27を介して吸着剤28の相互間隙を通過する。
吸着剤28は、水酸化マグネシュウムを主成分とする吸着剤100%を備えており、一次濾過液がその相互間隙を通過すると、一次濾過液中に残存しているフロックは、再度凝集して約300倍の大きな塊になる。この大きな塊は、中心軸にセットされた100μmのフイルタ26を通過して、後段に設けられた後処理フイルタ29の1μmのフイルタ31で捕捉除去され精密濾過されて第四槽に送り込まれ、オーバーフローで第五槽に流入して後、浄化槽12外に流出する。
なお、中心軸にセットされたフイルタ26は、吸着剤カセット25の強度補強のためのものである。
【0017】
なお、上記実施例では、廃水2中のリン含有濃度が最大10ppm程度とのことであったため、鉄イオンの投入量を10ppmとした。しかしながら、実際には、廃水2中のリン含有濃度は3ppm未満であり、鉄イオンの投入量は最小量に比較して若干多くなった。
実際には、リン含有濃度とほぼ同等の3ppmの鉄イオンの投入でよい。
即ち、リン含有濃度と同等以上の鉄イオンの投入であればよく、既存の凝集剤の如く、鉄イオンの多量の投入により鉄イオン自体が凝集沈殿しない程度の投入量であれば良い。
なお、鉄イオンの投入量は、リン含有濃度と同等〜5倍が最適であり、極薄く着色する程度が目安となる。
このため、従来の如く多量の凝集剤を投入して、リンを凝集剤に抱き込み、凝集剤と共に沈殿させる必要がなく、極僅かに薄く茶褐色に着色する程度の鉄イオンの投入でリンを除去することが出来る。
【0018】
また、上記実施例では、SAフイルタ14と、SAフイルタ24と二段に分けて設けている。
これは被浄化液2のリン含有濃度が、例えば、100ppmと高く、かつ、処理流量が、例えば、流量:10トン/minの如く大量の場合、吸着剤18を水酸化マグネシュウムを主成分とする体積比100%とすると、水酸化マグネシュウムの相互間隙は30μm程度のため、相互間隙が直ぐに目詰まりを起こし、ランニングコストの面で使用できなくなる。
このため、SAフイルタ14の吸着剤18として、水酸化マグネシュウムを主成分とする体積比50%の吸着剤、並びに、この吸着剤の相互間隙を広げる役目をする体積比50%の珪藻土を焼き固めたスペーサーとで構成することにより、水酸化マグネシュウムを主成分とする吸着剤の相互間隙を広げ、目詰まりを軽減して、ランニングコストの低減を図っている。
【0019】
また、上記実施例では、吸着剤カセット15,25の中心軸にセットするフイルタ16,26を、それぞれ100μmとして、後段に設けられた1μmのフイルタ21,31で大きな塊になったフロックを捕捉するようにしているが、これはランニングコスト低減のためである。
即ち、フイルタ16,26を、それぞれ1μmとして、大きな塊となったフロックを捕捉するようにすると、価格の高い吸着剤カセット15,25事態の目詰まりが速くなり、ランニングコストが高くなる。
このため、吸着剤カセット15,25のフイルタ16,26を、それぞれ100μmとして、吸着剤カセット15,25自体は凝集効果のみの作用とし、ランニングコストの安い1μmのフイルタ21,31で大きな塊になったフロックを捕捉するようにしている。
【0020】
なお、上記実施例では、捕捉手段として後処理フイルタ19,29を用いたが、後処理フイルタの代わりに凝集沈殿槽を用いても良い。
【発明の効果】
本発明は、被浄化液中のリン濃度と同等以上の鉄イオンを添加して、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させ、このフロックが形成された被浄化液を、マグネシュウムの水酸化物からなる粉末状体もしくは顆粒状体あるいはペレット状体の吸着剤の相互間隙中を通過させることにより、フロックを凝集させて約300倍の大きな塊にした後、目の粗いフイルタで捕捉するか、または、凝集沈殿槽で沈殿させるようにしているため、添加する鉄イオン濃度を、リンの含有濃度とほぼ同等の、非常に少ない量の添加に留めることが出来、反応時間も瞬時に対応することが出来るため、装置も非常に小型で、廉価に製作でき、ランニングコストも大幅に安くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 容器内に被浄化液を入れた状態を示す図。
【図2】 図1における被浄化液を示す写真。
【図3】 容器内の被浄化液に、鉄イオンを添加する状態を示す図。
【図4】 図3における被浄化液を示す写真。
【図5】 被浄化液2aを浄化するフローを示す図。
【図6】 図5のフローを示す写真。
【図7】 水酸化マグネシュウムの電荷0ポイント特性を示す図。
【図8】 粒子間距離とポテンシャルエネルギーの特性曲線。
【図9】 被浄化液を1パス濾過した被浄化液を示す写真。
【図10】 被浄化液を2パス濾過した被浄化液を示す写真。
【図11】 被浄化液を3パス濾過した被浄化液を示す写真。
【図12】 被浄化液を5パス濾過した被浄化液を示す写真。
【図13】 図2の写真に示す被浄化液と、図10の写真に示す被浄化液との、リンの含有濃度の簡易分析している状況を示す写真。
【図14】 この発明の一実施例を示すフロー。
【符号の説明】
1,11 :容器
2,2a :被浄化液
3 :鉄イオン
12 :浄化槽
18,28:吸着剤
21,31:フイルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含有する被浄化液に、リンの含有濃度と同等以上の鉄イオンを添加し、リンと鉄イオンとを結合させてフロックを形成させる第一の工程と、
前記フロックが形成された被浄化液を、マグネシュウムの水酸化物からなる粉末状体もしくは顆粒状体あるいはペレット状体の吸着剤の相互間隙中に通過させて、前記フロックを凝集させ捕捉することを特徴とする液体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−62680(P2011−62680A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237738(P2009−237738)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000122601)
【出願人】(509284967)アクテス株式会社 (1)
【出願人】(598174923)大阪サニタリー金属工業協同組合 (6)
【Fターム(参考)】