液体滴下用中栓
【課題】押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着され、液体を所定量だけ滴下でき、また液だれが起こり難い液体滴下用中栓を提供する。
【解決手段】押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器Cの開口部に装着される液体滴下用中栓を、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部1と、液溜め部1の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部1側の径より大きな径を有さない絞り部2と、絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面3aを有する肩部3とから構成させ、肩部3の内面3aに絞り部2から肩部3の後端へ向けて放射状に同形状の溝部4を複数形成する。
【解決手段】押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器Cの開口部に装着される液体滴下用中栓を、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部1と、液溜め部1の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部1側の径より大きな径を有さない絞り部2と、絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面3aを有する肩部3とから構成させ、肩部3の内面3aに絞り部2から肩部3の後端へ向けて放射状に同形状の溝部4を複数形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、液体を所定量だけ滴下でき、また液だれが起こり難い液体滴下用中栓に関する。
【背景技術】
【0002】
目薬等の薬剤や化粧品等の液体が収納された容器のように、収納された液体を所定量だけ滴下させて使用する容器では、液体が注出されるノズルの途中に小径の絞り部(規制通路)を設けてノズルの先端側に液溜め部(液溜り)を形成させた中栓がしばしば利用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようにノズルの途中で小径の絞り部を設けることによって、一度に大量の液体が注出されることを防ぐことができ、また小径の絞り部の先端側に液溜め部を設けることによって容器を逆さにして滴下しようとした際に不意に液体が滴下するようなことがないのである。しかしながら、このような容器ではノズルの途中に形成された小径の絞り部によって、使用後の液引きが悪く、逆さにして使用していた容器を元に戻す際に液だれが発生し易いという問題がある。
【0003】
液だれを防止するために工夫された容器としては、ノズルの先端外周縁部にリング状フランジ体を外側方に向けて突設した液体用容器がある(例えば、特許文献2参照。)。この液体用容器ではノズルの先端外周縁部に突設されたリング状フランジ体によって液切れがよく、その結果液だれが起こり難くなっている。しかしながら、収納された液体が比較的粘性の高い液体の場合には、外側方に向けて突設されたフランジ体に液体が付着して、液だれがより一層悪化する場合がある。
【0004】
またノズルの注出口からそれに続く部分の全内壁に溝を条設して、液体とノズル内部の内面との吸着性を高めて液だれを防止するように工夫された液体用容器がある(例えば、特許文献3参照。)。このように溝を条設してノズル内面の表面積を大きくすれば、液体の表面張力が大きくなりノズル内に液体が強く吸着して液だれが防止できる。しかしながら、ノズルの途中に小径の絞り部等がないため一度に注出される液体量を制御することができないのである。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−182247号公報
【特許文献2】実開平3−23065号公報
【特許文献3】特開平10−211950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の問題に鑑み、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、液体を所定量だけ滴下でき、また液だれが起こり難い液体滴下用中栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓を、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とから構成させれば、肩部の内面が絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状となっているから、肩部の内面が絞り部より大きく開いた形状となっているので液溜め部の残留液が絞り部を通って容器内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良くなり、また肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部を複数形成させれば、使用後容器を正立させた時に溝部の影響で肩部の内面に液体が付着して残り、この液体が液溜め部内の残留液と連なった状態で肩部の内面に沿って流れ落ちていくことによって、液溜め部の残留液が速やかに絞り部内に吸い込まれ、液だれを起こり難くすることができることを究明して本発明を完成したのである。
【0008】
即ち本発明は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とが先端側から容器の開口部に向けて順次設けられており、肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部が複数形成されていることを特徴とする液体滴下用中栓である。
【0009】
またこの本発明に係る液体滴下用中栓において、肩部の内面に形成された各溝部の幅を絞り部の後端の径より小さくすれば、径の小さい絞り部内の液体と各溝部で生じる表面張力により残留する液体との縁が切れることがなくなるため、液溜め部内の液体が絞り部で留まることがなく液引きが向上して好ましく、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、肩部の内面の傾斜が緩やかで液引きに時間がかかったり、肩部の内面の傾斜が急で肩部の内面に付着した液体が急激に流れて液溜め部内の残留液と縁が切れたりすることがなく、残留液をスムーズに容器内に戻すことができて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体滴下用中栓は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とから構成されているから、肩部の内面が、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状となっていて、絞り部より大きく開いた形状となっているので液溜め部の残留液が絞り部を通って容器内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良く、また肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部が複数形成されているので、使用後容器を正立させた時に溝部の影響で肩部の内面の溝部内に液体が付着して残り、この液体が液溜め部内の残留液と連なった状態で肩部の内面に沿って流れ落ちていくことによって、液溜め部の残留液が速やかに絞り部内に吸い込まれ、液だれを起こり難くすることができるのである。
【0011】
またこのような本発明に係る液体滴下用中栓において、肩部の内面に形成された各溝部の幅が絞り部の後端の径より小さい場合には、使用後容器を正立させた時に径の小さい絞り部内の液体と表面張力により各溝部内に残留する液体との縁が切れないので液溜め部内の液体が絞り部で留まることがなく液引きが向上し、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6〜3.7である場合には、残留液をスムーズに容器内に戻すことができて好ましいのである。なお、肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6未満の場合には、肩部の内面の傾斜が急で液溜め部内の液体が絞り部で滞っている間に、肩部の内面に付着した液体が容器内部へと素早く引き込まれるので、液溜め部内の残留液と肩部の内面に付着した液体との間の縁が切れ易くなり、液溜め部内の液体の液引きが悪くなる場合があり、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が3.7を超える場合には、肩部の内面の傾斜が緩やかで、肩部の内面に付着した液体が肩部の内面を伝わって容器内部へと引き込まれ難く、液溜め部内の液体が容器内に戻るのに時間を要し扱い難いのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明に係る液体滴下用中栓について詳細に説明する。
図1は本発明に係る液体滴下用中栓の一実施例を示す正面図、図2は図1の液体滴下用中栓の底面図、図3は図2におけるA−A線断面図、図4は図2におけるB−B線断面図、図5は本発明に係る液体滴下用中栓の他の実施例を示す正面図、図6は図5の液体滴下用中栓の底面図、図7は図6におけるC−C線断面図、図8は本発明に係る液体滴下用中栓の更に他の実施例を示す正面図、図9は図8の液体滴下用中栓の底面図、図10は図9におけるD−D線断面図、図11は図1の液体滴下用中栓が容器の開口部に装着されている状態を示す断面説明図である。
【0013】
図面中、Cは押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器であり、その開口部に本発明に係る液体滴下用中栓が装着される。この容器Cは人の手や指の押圧によって容易に変形し、使用後に弾性復元すればよく、材質は内部に収納される液体と反応しなければ特に限定はない。
【0014】
1は内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部である。この液溜め部1は本発明に係る液体滴下用中栓の先端側に位置するノズル状の部位に形成されていて、容器C内部に収納された液体はこの液溜め部1から所定量だけ滴下される。また本発明に係る液体滴下用中栓は容器C内部に収納された液体を滴下するためのものであるから、液溜め部1は、例えば1滴〜数滴程度の液体が収納される大きさである。
【0015】
2は液溜め部1の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部1側の径より大きな径を有さない絞り部である。この絞り部2は液溜め部1の後端側に形成されていて、絞り部2の径は液溜め部1の後端側の径よりも小さく、同一径か又は液溜め部1側に位置する径が最も大きくなるように形成されていて、一度に大量の液体が液溜め部1へ向けて流れないようにする役目をなす。
【0016】
3は絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面3aを有する肩部である。この肩部3の内面3aは絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状をなしているので、絞り部2より大きく開いた形状となっていて液溜め部1の残留液が絞り部2を通って容器C内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良いのである。
また、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、残留液をスムーズに容器C内に戻すことができて好ましい。なお、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の側面上の母線との角度が約30°の場合に前記割合は0.6となり、約75°の場合に3.7となる。
【0017】
4は肩部3の内面3aに絞り部2から肩部3の後端へ向けて放射状に複数形成された同形状の溝部である。この溝部4の幅を絞り部2の径より小さくすれば、使用後容器Cを正立させた時に径の小さい絞り部2内の液体と表面張力により各溝部4内に残留する液体との縁が切れないので液溜め部1内の液体が絞り部2で留まることがなく液引きが向上して好ましいのである。
【0018】
本発明に係る液体滴下用中栓では、肩部3の内面3aに溝部4が形成されていることが特徴であり、この溝部4は、液体の単位体積当たりの接触面が大きくなるように幅が狭く、肩部3の内面3aに均等に多数形成されているとよい。例えば各実施例(図2,図6及び図9)では、絞り部2の径よりも幅の狭い同形状の溝部4が絞り部2から放射状に等間隔に6本形成されている。
【0019】
そしてこの溝部4を絞り部2から放射状に形成することにより、溝部4は絞り部2近傍において密な状態になり、その結果、絞り部2近傍の液体に特に大きな表面張力が働き、液溜め部1内の残留液を容器C内に強く引き入れることができる。
【0020】
また、残留液が液溜め部1から絞り部2を通って容器C内に戻る際に、径の小さい絞り部2が大きな抵抗となって残留液の戻りが良くない。そのため図示していないが、例えば肩部3の内面3aの形状が縦断面が外側に凹の曲線の回転体形状等になっている場合には、絞り部2に続く肩部3の内面3aが狭く、より大きな抵抗となり液引きが更に悪化し液だれの原因となる。
そこで本発明に係る液体滴下用中栓では、図1や図5の各実施例の断面図である図3,図4及び図7の如く、肩部3の内面3aは絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状としたり、図8の実施例の断面図である図9の如く、縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状とすることによって、肩部3の内面3aを絞り部2より大きく開いた状態にして液溜め部1内の残留液の液引きが良くなるようにしているのである。
【0021】
また本発明に係る液体滴下用中栓は容器Cの開口部に装着されるために、例えば、液体滴下用中栓の下方側に、図1〜図4に示す態様の液体滴下用中栓を容器Cの開口部に装着した図11のように、容器Cの開口部の外側面に係止させる装着部を形成させたり、図5〜図7に示す態様のように、容器Cの開口部の内側面に螺入させる装着部を形成させたり、図8〜図10に示す態様のように、容器Cの開口部の内側面に圧着させる装着部を形成させたりすればよい。
【0022】
また液溜め部1は、先端側に向かって狭くなっていると滴下し難いため、例えば図1〜図4に示す態様のように先端側に向けて拡径しているか又は図5〜図7に示す態様や図8〜図10に示す態様のように同一径とする。
【0023】
次に図1〜図4に示す実施例では、は約1.7であり、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の側面上の母線との角度は約60°となっていて比較的大きく開いた緩やかな傾斜となっている。また図5〜図7に示す実施例では、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合は約1であり、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の傾斜面との角度は約45°となっている。
このように、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、肩部3の内面3aの傾斜が緩やかで液引きに時間がかかったり、肩部3の内面3aの傾斜が急で肩部3の内面3aに付着した液体が急激に流れて液溜め部1内の残留液と縁が切れたりすることがなく、残留液をスムーズに容器C内に戻すことができて好ましいのである。なお、図8〜図10に示す実施例では、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合は図1〜図4に示す実施例と同様に約1.7であるが、この割合は肩部3の内面3aの平均傾斜であるから、肩部3の内面3aが縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状である場合も、この割合によって他の実施例と同様に液体の流れ易さが判断できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る液体滴下用中栓の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の液体滴下用中栓の底面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図2におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る液体滴下用中栓の他の実施例を示す正面図である。
【図6】図5の液体滴下用中栓の底面図である。
【図7】図6におけるC−C線断面図である。
【図8】本発明に係る液体滴下用中栓の更に他の実施例を示す正面図である。
【図9】図8の液体滴下用中栓の底面図である。
【図10】図9におけるD−D線断面図である。
【図11】図1の液体滴下用中栓が容器の開口部に装着されている状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 液溜め部
2 絞り部
3 肩部
3a 内面
4 溝部
C 容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、液体を所定量だけ滴下でき、また液だれが起こり難い液体滴下用中栓に関する。
【背景技術】
【0002】
目薬等の薬剤や化粧品等の液体が収納された容器のように、収納された液体を所定量だけ滴下させて使用する容器では、液体が注出されるノズルの途中に小径の絞り部(規制通路)を設けてノズルの先端側に液溜め部(液溜り)を形成させた中栓がしばしば利用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようにノズルの途中で小径の絞り部を設けることによって、一度に大量の液体が注出されることを防ぐことができ、また小径の絞り部の先端側に液溜め部を設けることによって容器を逆さにして滴下しようとした際に不意に液体が滴下するようなことがないのである。しかしながら、このような容器ではノズルの途中に形成された小径の絞り部によって、使用後の液引きが悪く、逆さにして使用していた容器を元に戻す際に液だれが発生し易いという問題がある。
【0003】
液だれを防止するために工夫された容器としては、ノズルの先端外周縁部にリング状フランジ体を外側方に向けて突設した液体用容器がある(例えば、特許文献2参照。)。この液体用容器ではノズルの先端外周縁部に突設されたリング状フランジ体によって液切れがよく、その結果液だれが起こり難くなっている。しかしながら、収納された液体が比較的粘性の高い液体の場合には、外側方に向けて突設されたフランジ体に液体が付着して、液だれがより一層悪化する場合がある。
【0004】
またノズルの注出口からそれに続く部分の全内壁に溝を条設して、液体とノズル内部の内面との吸着性を高めて液だれを防止するように工夫された液体用容器がある(例えば、特許文献3参照。)。このように溝を条設してノズル内面の表面積を大きくすれば、液体の表面張力が大きくなりノズル内に液体が強く吸着して液だれが防止できる。しかしながら、ノズルの途中に小径の絞り部等がないため一度に注出される液体量を制御することができないのである。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−182247号公報
【特許文献2】実開平3−23065号公報
【特許文献3】特開平10−211950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の問題に鑑み、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、液体を所定量だけ滴下でき、また液だれが起こり難い液体滴下用中栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓を、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とから構成させれば、肩部の内面が絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状となっているから、肩部の内面が絞り部より大きく開いた形状となっているので液溜め部の残留液が絞り部を通って容器内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良くなり、また肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部を複数形成させれば、使用後容器を正立させた時に溝部の影響で肩部の内面に液体が付着して残り、この液体が液溜め部内の残留液と連なった状態で肩部の内面に沿って流れ落ちていくことによって、液溜め部の残留液が速やかに絞り部内に吸い込まれ、液だれを起こり難くすることができることを究明して本発明を完成したのである。
【0008】
即ち本発明は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とが先端側から容器の開口部に向けて順次設けられており、肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部が複数形成されていることを特徴とする液体滴下用中栓である。
【0009】
またこの本発明に係る液体滴下用中栓において、肩部の内面に形成された各溝部の幅を絞り部の後端の径より小さくすれば、径の小さい絞り部内の液体と各溝部で生じる表面張力により残留する液体との縁が切れることがなくなるため、液溜め部内の液体が絞り部で留まることがなく液引きが向上して好ましく、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、肩部の内面の傾斜が緩やかで液引きに時間がかかったり、肩部の内面の傾斜が急で肩部の内面に付着した液体が急激に流れて液溜め部内の残留液と縁が切れたりすることがなく、残留液をスムーズに容器内に戻すことができて好ましいことも究明したのである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液体滴下用中栓は、押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部と、液溜め部の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部側の径より大きな径を有さない絞り部と、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面を有する肩部とから構成されているから、肩部の内面が、絞り部から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状となっていて、絞り部より大きく開いた形状となっているので液溜め部の残留液が絞り部を通って容器内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良く、また肩部の内面に絞り部から肩部の後端へ向けて放射状に同形状の溝部が複数形成されているので、使用後容器を正立させた時に溝部の影響で肩部の内面の溝部内に液体が付着して残り、この液体が液溜め部内の残留液と連なった状態で肩部の内面に沿って流れ落ちていくことによって、液溜め部の残留液が速やかに絞り部内に吸い込まれ、液だれを起こり難くすることができるのである。
【0011】
またこのような本発明に係る液体滴下用中栓において、肩部の内面に形成された各溝部の幅が絞り部の後端の径より小さい場合には、使用後容器を正立させた時に径の小さい絞り部内の液体と表面張力により各溝部内に残留する液体との縁が切れないので液溜め部内の液体が絞り部で留まることがなく液引きが向上し、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6〜3.7である場合には、残留液をスムーズに容器内に戻すことができて好ましいのである。なお、肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が0.6未満の場合には、肩部の内面の傾斜が急で液溜め部内の液体が絞り部で滞っている間に、肩部の内面に付着した液体が容器内部へと素早く引き込まれるので、液溜め部内の残留液と肩部の内面に付着した液体との間の縁が切れ易くなり、液溜め部内の液体の液引きが悪くなる場合があり、また肩部の内面の高さに対する肩部の内面の後端の半径の割合が3.7を超える場合には、肩部の内面の傾斜が緩やかで、肩部の内面に付着した液体が肩部の内面を伝わって容器内部へと引き込まれ難く、液溜め部内の液体が容器内に戻るのに時間を要し扱い難いのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明に係る液体滴下用中栓について詳細に説明する。
図1は本発明に係る液体滴下用中栓の一実施例を示す正面図、図2は図1の液体滴下用中栓の底面図、図3は図2におけるA−A線断面図、図4は図2におけるB−B線断面図、図5は本発明に係る液体滴下用中栓の他の実施例を示す正面図、図6は図5の液体滴下用中栓の底面図、図7は図6におけるC−C線断面図、図8は本発明に係る液体滴下用中栓の更に他の実施例を示す正面図、図9は図8の液体滴下用中栓の底面図、図10は図9におけるD−D線断面図、図11は図1の液体滴下用中栓が容器の開口部に装着されている状態を示す断面説明図である。
【0013】
図面中、Cは押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器であり、その開口部に本発明に係る液体滴下用中栓が装着される。この容器Cは人の手や指の押圧によって容易に変形し、使用後に弾性復元すればよく、材質は内部に収納される液体と反応しなければ特に限定はない。
【0014】
1は内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部である。この液溜め部1は本発明に係る液体滴下用中栓の先端側に位置するノズル状の部位に形成されていて、容器C内部に収納された液体はこの液溜め部1から所定量だけ滴下される。また本発明に係る液体滴下用中栓は容器C内部に収納された液体を滴下するためのものであるから、液溜め部1は、例えば1滴〜数滴程度の液体が収納される大きさである。
【0015】
2は液溜め部1の後端側の径よりも径が小さく且つ液溜め部1側の径より大きな径を有さない絞り部である。この絞り部2は液溜め部1の後端側に形成されていて、絞り部2の径は液溜め部1の後端側の径よりも小さく、同一径か又は液溜め部1側に位置する径が最も大きくなるように形成されていて、一度に大量の液体が液溜め部1へ向けて流れないようにする役目をなす。
【0016】
3は絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面3aを有する肩部である。この肩部3の内面3aは絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状をなしているので、絞り部2より大きく開いた形状となっていて液溜め部1の残留液が絞り部2を通って容器C内に戻る際に抵抗が小さく液引きが良いのである。
また、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、残留液をスムーズに容器C内に戻すことができて好ましい。なお、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の側面上の母線との角度が約30°の場合に前記割合は0.6となり、約75°の場合に3.7となる。
【0017】
4は肩部3の内面3aに絞り部2から肩部3の後端へ向けて放射状に複数形成された同形状の溝部である。この溝部4の幅を絞り部2の径より小さくすれば、使用後容器Cを正立させた時に径の小さい絞り部2内の液体と表面張力により各溝部4内に残留する液体との縁が切れないので液溜め部1内の液体が絞り部2で留まることがなく液引きが向上して好ましいのである。
【0018】
本発明に係る液体滴下用中栓では、肩部3の内面3aに溝部4が形成されていることが特徴であり、この溝部4は、液体の単位体積当たりの接触面が大きくなるように幅が狭く、肩部3の内面3aに均等に多数形成されているとよい。例えば各実施例(図2,図6及び図9)では、絞り部2の径よりも幅の狭い同形状の溝部4が絞り部2から放射状に等間隔に6本形成されている。
【0019】
そしてこの溝部4を絞り部2から放射状に形成することにより、溝部4は絞り部2近傍において密な状態になり、その結果、絞り部2近傍の液体に特に大きな表面張力が働き、液溜め部1内の残留液を容器C内に強く引き入れることができる。
【0020】
また、残留液が液溜め部1から絞り部2を通って容器C内に戻る際に、径の小さい絞り部2が大きな抵抗となって残留液の戻りが良くない。そのため図示していないが、例えば肩部3の内面3aの形状が縦断面が外側に凹の曲線の回転体形状等になっている場合には、絞り部2に続く肩部3の内面3aが狭く、より大きな抵抗となり液引きが更に悪化し液だれの原因となる。
そこで本発明に係る液体滴下用中栓では、図1や図5の各実施例の断面図である図3,図4及び図7の如く、肩部3の内面3aは絞り部2から内径が順次大きくなる円錐形状としたり、図8の実施例の断面図である図9の如く、縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状とすることによって、肩部3の内面3aを絞り部2より大きく開いた状態にして液溜め部1内の残留液の液引きが良くなるようにしているのである。
【0021】
また本発明に係る液体滴下用中栓は容器Cの開口部に装着されるために、例えば、液体滴下用中栓の下方側に、図1〜図4に示す態様の液体滴下用中栓を容器Cの開口部に装着した図11のように、容器Cの開口部の外側面に係止させる装着部を形成させたり、図5〜図7に示す態様のように、容器Cの開口部の内側面に螺入させる装着部を形成させたり、図8〜図10に示す態様のように、容器Cの開口部の内側面に圧着させる装着部を形成させたりすればよい。
【0022】
また液溜め部1は、先端側に向かって狭くなっていると滴下し難いため、例えば図1〜図4に示す態様のように先端側に向けて拡径しているか又は図5〜図7に示す態様や図8〜図10に示す態様のように同一径とする。
【0023】
次に図1〜図4に示す実施例では、は約1.7であり、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の側面上の母線との角度は約60°となっていて比較的大きく開いた緩やかな傾斜となっている。また図5〜図7に示す実施例では、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合は約1であり、円錐の頂点から底面の中心に向かう軸線と円錐の傾斜面との角度は約45°となっている。
このように、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合が0.6〜3.7であれば、肩部3の内面3aの傾斜が緩やかで液引きに時間がかかったり、肩部3の内面3aの傾斜が急で肩部3の内面3aに付着した液体が急激に流れて液溜め部1内の残留液と縁が切れたりすることがなく、残留液をスムーズに容器C内に戻すことができて好ましいのである。なお、図8〜図10に示す実施例では、肩部3の内面3aの高さに対する肩部3の内面3aの後端の半径の割合は図1〜図4に示す実施例と同様に約1.7であるが、この割合は肩部3の内面3aの平均傾斜であるから、肩部3の内面3aが縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状である場合も、この割合によって他の実施例と同様に液体の流れ易さが判断できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る液体滴下用中栓の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1の液体滴下用中栓の底面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図2におけるB−B線断面図である。
【図5】本発明に係る液体滴下用中栓の他の実施例を示す正面図である。
【図6】図5の液体滴下用中栓の底面図である。
【図7】図6におけるC−C線断面図である。
【図8】本発明に係る液体滴下用中栓の更に他の実施例を示す正面図である。
【図9】図8の液体滴下用中栓の底面図である。
【図10】図9におけるD−D線断面図である。
【図11】図1の液体滴下用中栓が容器の開口部に装着されている状態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 液溜め部
2 絞り部
3 肩部
3a 内面
4 溝部
C 容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器(C)の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、
内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部(1)と、該液溜め部(1)の後端側の径よりも径が小さく且つ該液溜め部(1)側の径より大きな径を有さない絞り部(2)と、該絞り部(2)から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面(3a)を有する肩部(3)とが先端側から容器(C)の開口部に向けて順次設けられており、該肩部(3)の内面(3a)に該絞り部(2)から該肩部(3)の後端へ向けて放射状に同形状の溝部(4)が複数形成されていることを特徴とする液体滴下用中栓。
【請求項2】
肩部(3)の内面(3a)に形成された各溝部(4)の幅が絞り部(2)の後端の径より小さい請求項1に記載の液体滴下用中栓。
【請求項3】
肩部(3)の内面(3a)の高さに対する肩部(3)の内面(3a)の後端の半径の割合が0.6〜3.7である請求項1又は2に記載の液体滴下用中栓。
【請求項1】
押圧によって変形可能で弾性復元性を有する容器(C)の開口部に装着される液体滴下用中栓であって、
内径が先端側に向けて拡径しているか又は同一径の液溜め部(1)と、該液溜め部(1)の後端側の径よりも径が小さく且つ該液溜め部(1)側の径より大きな径を有さない絞り部(2)と、該絞り部(2)から内径が順次大きくなる円錐形状又は縦断面が外側に凸の曲線の回転体形状の内面(3a)を有する肩部(3)とが先端側から容器(C)の開口部に向けて順次設けられており、該肩部(3)の内面(3a)に該絞り部(2)から該肩部(3)の後端へ向けて放射状に同形状の溝部(4)が複数形成されていることを特徴とする液体滴下用中栓。
【請求項2】
肩部(3)の内面(3a)に形成された各溝部(4)の幅が絞り部(2)の後端の径より小さい請求項1に記載の液体滴下用中栓。
【請求項3】
肩部(3)の内面(3a)の高さに対する肩部(3)の内面(3a)の後端の半径の割合が0.6〜3.7である請求項1又は2に記載の液体滴下用中栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−227329(P2009−227329A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78387(P2008−78387)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
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