説明

液体漂白洗浄剤組成物

【課題】 過酸化水素及び漂白活性化剤の安定性を阻害せず、液感が良好で、漂白性能、硬度成分捕捉能、再汚染防止能及び汚れの分散能に優れる液体漂白洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物、(b)漂白活性化剤、及び(c)ポリエーテル化合物に、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含むモノエチレン性不飽和単量体を重合させた高分子化合物を含有し、組成物中の(c)成分の含有量が0.1〜15質量%であり、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体漂白洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体洗浄剤は、粉末洗浄剤と比べ水への溶け残りがほとんどなく、汚れ部分に直接塗布できるといった簡便性の点で優れているが、粉末洗浄剤と比べ保存による分離や沈殿を抑制するために配合条件において多くの規制がある。
【0003】
洗浄剤には通常、ビルダー成分が添加されているが、粉末洗浄剤に使用されているゼオライトは、水不溶性であるため液体洗浄剤に安定に配合することは困難である。一般的に液体洗浄剤に使用されるビルダー成分としては、クエン酸(塩)等のポリカルボン酸型のキレート剤が挙げられるが、安定性の点から多量に配合する際は注意を有するなどの多くの規制がある。
【0004】
その他、洗浄剤に使用される重要なビルダー成分としては、カルボン酸系ポリマーが挙げられる。カルボン酸系ポリマーは泥汚れなどを洗濯液中に分散させる分散能に優れており、遊離した汚れの繊維への再付着を防ぐ役割をする。一般的なカルボン酸系ポリマーとしては、アクリル酸、マレイン酸もしくはフマル酸などの不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマーが開示されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、上記ビルダー成分を含有した組成物は、従来から粉末又は液体の洗浄剤組成物に限られており、漂白剤入りの洗浄剤組成物には用いられてこなかった。なぜなら、上記ビルダー成分を含有した液体漂白洗浄剤組成物は、過酸化水素及び漂白活性化剤の安定性が著しく低下することから効果的な量を配合することが非常に困難であったからである。
【0006】
特許文献2〜8には、過酸化水素及び漂白活性化剤の前駆体を含有する液体酸素系漂白剤が開示されており、食べこぼしやシミ汚れの除去に効果を発揮することが知られている。しかし、これらの特許文献2〜8は全て、液体漂白剤についての記載に限られる。
【特許文献1】特開平10−60476号公報
【特許文献2】特開平6−207196号公報
【特許文献3】特開平7−216390号公報
【特許文献4】特開平7−228893号公報
【特許文献5】特開平7−305094号公報
【特許文献6】特開平8−35170号公報
【特許文献7】特開平11−80794号公報
【特許文献8】特開平11−172288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、過酸化水素及び漂白活性化剤の安定性を阻害せず、液感が良好で、漂白性能、硬度成分捕捉能、再汚染防止能及び汚れの分散能に優れる液体漂白洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の高分子化合物を特定割合で含有する液体漂白洗浄剤組成物が、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、組成物中の(c)成分の含有量が0.1〜15質量%であり、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物を提供する。
(a)過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物
(b)漂白活性化剤
(c)ポリエーテル化合物に、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含むモノエチレン性不飽和単量体を重合させた高分子化合物
また本発明は、更に、(d)成分としてホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(e)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有し、(e)成分/(d)成分のモル比が1.5〜2.7である上記液体漂白洗浄剤組成物を提供する。
【0010】
また本発明は、更に、(f)成分としてホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有する、上記液体漂白洗浄剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、過酸化水素及び漂白活性化剤の安定性を阻害せず、液感が良好で、漂白性能、硬度成分捕捉能、再汚染防止能及び汚れの分散能に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[(a)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(a)成分として過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物を含有する。水中で過酸化水素を生成する化合物としては、過炭酸塩及び過ホウ酸塩等が挙げられる。
【0013】
[(b)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(b)成分として漂白活性化剤を含有する。(b)成分の漂白活性化剤としては、アルカノイル基の炭素数が8〜14のアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、良好な貯蔵安定性を得る観点から、炭素数8〜14の分岐アルカノイルオキシ基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩が好ましく、アルカノイルオキシ基のエステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸又はアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸あるいはそれらの塩が更に好ましい。
【0014】
エステル結合を形成する炭素原子のα位又はβ位に側鎖を有するアルカノイルオキシ基としては、2−エチルヘキサノイル基、2−プロピルヘプタノイル基、3,5,5−トリメチルヘキサノイル基等が挙げられ、これら分岐アルカノイルオキシ基を有するベンゼンスルホン酸又はベンゼンカルボン酸(安息香酸)あるいはその塩が特に好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0015】
(b)成分の具体例としては、下記式(b−1)〜(b−4)で表される化合物が挙げられ、式(b−1)〜(b−2)で表される化合物が好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
[(c)成分]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(c)成分として、ポリエーテル化合物に、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含むモノエチレン性不飽和単量体を重合させた高分子化合物を含有する。
【0018】
ポリエーテル化合物としては、次の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0019】
Y−O(CH2CH2O)nH (1)
(式中、Yは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基であり、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す2〜200の数である。)
式(1)において、Yはメチル基又はフェニル基が好ましい。nは2〜50の数が好ましい。
【0020】
ポリエーテル化合物に、グラフトさせるモノエチレン性不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含むものである。アクリル酸又はメタクリル酸の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられ、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩が好ましい。アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩以外のモノエチレン性不飽和単量体としては、不飽和カルボン酸又はその塩が好ましく、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びそれらの塩、無水マレイン酸等が挙げられる。モノエチレン性不飽和単量体中のアクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の割合は、10〜100質量%が好ましく、20〜70質量%が更に好ましい。
【0021】
(c)成分の高分子化合物としては、ポリエーテル化合物とモノエチレン性不飽和単量体の質量比(ポリエーテル化合物/モノエチレン性不飽和単量体)が0.25以上となる割合で重合させたものが好ましく、ポリエーテル化合物/モノエチレン性不飽和単量体の質量比は0.25〜1がより好ましく、0.3〜0.7が更に好ましい。
【0022】
重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。具体的な本発明の高分子化合物の製造方法は、窒素気流下で、90℃以上、好ましくは100〜200℃でポリエーテル化合物中に攪拌しながら、モノエチレン性不飽和単量体と重合開始剤を別々に、且つゆっくりと滴下することによって、酸型の本発明の高分子化合物を得ることができる。塩型の高分子化合物は、上記のようにして得られた酸型の高分子化合物を冷却後、水酸化ナトリウム等のアルカリ剤で中和することによって、容易に得ることができ、また、酸型のままで組成物中に添加し、組成物中で中和して塩型にしてもよい。
【0023】
本発明の(c)成分の高分子化合物の重量平均分子量は、漂白活性化剤の安定性の観点から、2,500〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましい。尚、本発明において、高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリオキシエチレングリコール)にて測定した値である。
【0024】
[液体漂白洗浄剤組成物]
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、必須成分として、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する。本発明の組成物中の(a)成分の含有量は、過酸化水素として、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましく、1〜4.5質量%が更に好ましい。このような範囲において優れた漂白効果を得ることができる。本発明の組成物中の(b)成分の含有量は、優れた漂白効果を発現させる観点から、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.2〜2質量%が更に好ましい。本発明の組成物中の(c)成分の含有量は、過酸化水素及び漂白活性化剤の安定性を阻害せずに本発明の効果を得る観点から、0.1〜15質量%であり、0.5〜10質量%が好ましい。
【0025】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、pHジャンプ効果を賦与するため、即ち、保存時の組成物のpH を低く維持し、使用場面での希釈時にはpH値を高めるために、(d)成分として、ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(e)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を、(e)成分/(d)成分のモル比が1.5〜2.7となる割合で含有することが好ましい。
【0026】
(d)成分のホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
(e)成分の具体例としては下記(1)〜(4)の化合物が挙げられる。
【0028】
(1)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、アルキル基の炭素数1〜10のアルキルグリセリルエーテル、アルキルジグリセリルエーテル、アルキルトリグリセリルエーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールから選ばれるグリセロール類又はグリコール類
(2)ソルビトール、マンニトール、マルチトース、イノシトール、フィチン酸から選ばれる糖アルコール類
(3)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース、フルクトースから選ばれる還元糖類
(4)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース、セルロースから選ばれる多糖類。
【0029】
本発明では、特に上記(2)の糖アルコール類が好適であり、特にソルビトールが安定性及び漂白/洗浄効果の点から好適である。なお、(3)の還元糖類については、過酸化水素の安定性に影響を及ぼす還元性のアルデヒド基が分子中に存在するために使用する場合には注意を要する。
【0030】
本発明においては、保存時の液体漂白洗浄剤組成物の20℃におけるpHを4.0〜7.0にする一方、使用時に水に希釈することでpHを上昇させることが好ましく、液体漂白洗浄剤組成物に対して1000容積倍の水により希釈した場合の希釈液の20℃におけるpHが、8.5以上10.5未満、更に9以上9.5未満になることが良好な漂白/洗浄効果を得る観点から好ましい。このようなpHジャンプ効果を得るために、本発明の組成物中に(d)成分と(e)成分を上記の割合で配合することが好ましい。
【0031】
ここで、(d)成分と(e)成分との間には下記のような平衡反応が存在する。
【0032】
【化2】

【0033】
本発明においてはジ体がpHジャンプ系の主要成分であることが希釈溶液のpHを8.5以上10.5未満にするために好適であり、液体漂白洗浄剤組成物中において、(d)成分の70〜100モル%がジ体となっていることが好ましい。また十分なpHジャンプ効果、及び漂白/洗浄効果を得る観点から、モノ体となっている(d)成分の割合は0〜5モル%が好ましく、(d)成分中、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸塩として単独で存在する割合は0〜25モル%が好適である。
【0034】
また、(e)成分が過剰に存在すると過酸化水素の安定性を損なうおそれがあるため、(d)成分と(e)成分の比率には注意が必要である。従って本発明では(e)成分/(d)成分のモル比(ただし、ホウ砂及び4ホウ酸ナトリウムの場合はホウ素原子を4個含むため、4当量と考える)が、好ましくは1.5〜2.7、より好ましくは2.0〜2.7、更に好ましくは2.2〜2.7の割合で混合することで、本発明の優れたpHジャンプ効果及び過酸化水素の安定性の両方を得ることができる。
【0035】
なお、本発明では(d)成分及び(e)成分を液体漂白洗浄剤組成物に配合する場合には、液体漂白洗浄剤組成物中では上記モノ体及びジ体の化合物に変換されているため、本発明でいう(d)成分及び(e)成分の含有量とは、単独で存在する(d)成分及び(e)成分の含有量に、上記モノ体、ジ体の含有量から(d)成分及び(e)成分の量を換算した量を加えた量の合計を意味する。本発明の組成物中の(d)成分の含有量は、ホウ素原子として、好ましくは0.05〜1質量%、より好ましくは0.15〜0.5質量%、更に好ましくは0.2〜0.4質量%である。本発明の組成物中の(e)成分の含有量は、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0036】
なお、変換されたモノ体、ジ体の含有量は、ホウ素(11B)のNMRを用いることで算出することができる。
【0037】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、(f)成分として、ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有することが好ましい。ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸から選ばれるホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸から選ばれるホスホノカルボン酸又はこれらのアルカリ金属塩もしくはアルカノールアミン塩を挙げることができ、好ましくはホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩であり、特にエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸又はこれらのアルカリ金属塩が好ましい。
【0038】
本発明の組成物中の(f)成分の含有量は、より好ましいpHジャンプ効果を得る観点及び過酸化水素の安定性を得る観点から、0.05質量%以上0.3質量%未満が好ましく、0.1〜0.25質量%がより好ましく、0.15〜0.2質量%が更に好ましい。
【0039】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、更に(g)成分として界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。本発明の組成物中の(g)成分の含有量は、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%、特に好ましくは20〜35質量%である。このような範囲において優れた漂白洗浄効果を得ることができる。
【0040】
(g)成分としては、特に、漂白活性化剤の貯蔵安定性及び漂白洗浄効果の点から、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましく、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が更に好ましい。
【0041】
上記非イオン性界面活性剤としては、漂白活性化剤の貯蔵安定性の観点から、下記一般式(2)で表される化合物が特に好ましい。
【0042】
1−O−(C24O)p−(C36O)q−(C24O)rH (2)
〔式中、R1は炭素数8〜18の炭化水素基であり、p、q及びrはそれぞれ独立に1〜10の数である。〕
一般式(2)において、R1は炭素数8〜18、好ましくは10〜14の炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはアルキル基である。p、q、rはそれぞれ独立に1〜10の数であり、2〜8の数が好ましい。
【0043】
また、本発明の組成物は、過酸化水素の安定性の点から、(h)成分として過酸化水素安定化剤(ラジカルトラップ剤)を含有することが好ましい。ラジカルトラップ剤としては、一般的にフェノール誘導体が知られており、特開平11−181492号公報等に開示されている。本発明では、フェノール誘導体としてフェノール性水酸基を有する化合物又はフェノール性水酸基のエステル誘導体、エーテル誘導体を好ましく用いることができる。このような化合物としては、具体的にクレゾール、チモール、クロロフェノール、ブロモフェノール、メトキシフェノール、ニトロフェノール、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、ナフトール、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノキシエタノール等が挙げられる。この中で好ましい化合物は、G.E.Penketh,J.Appl.Chem.,Vol 7,512〜521頁(1957)に記載されている酸化還元電位(O.P.)0(25℃)が0.3〜1.25Vの化合物であり、より好ましくは0.6〜0.75Vの化合物である。更に、配合のしやすさの点から、溶解度の高いラジカルトラップ剤がより効果的であり、前述した溶解性を示す疎水性パラメーターlogP値で3以下のものが好ましい。上述した酸化還元電位及び溶解性の点から、4−メトキシフェノール、4−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキノン、カテコールが好ましい。これらフェノール系ラジカルトラップ剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。本発明の組成物中の(h)成分の配合量は0.01〜2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0044】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物の20℃におけるpHは4.0〜7.0、好ましくは4.2〜6.5、より好ましくは4.5〜5.5である。このようなpHに調整するためのpH調整剤としては、塩酸や硫酸から選ばれる無機酸、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムから選ばれる無機塩基を用いることが好ましい。
【0045】
本発明の液体漂白洗浄剤組成物は、水に希釈して漂白/洗浄を行う方法に供され、希釈する水は液体漂白洗浄剤組成物に対して600〜2000質量倍、好ましくは700〜1500質量倍である。また、このような倍率で希釈された溶液の20℃におけるpHが8.5以上10.5未満、特に8.5以上9.5未満になることが好ましい。このような洗浄液を用いることにより優れた漂白/洗浄効果を得ることができる。
【実施例】
【0046】
合成例1:高分子化合物(1)の合成
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量1500のフェノキシポリエチレングリコール100質量部、マレイン酸5質量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶解させ、撹拌下150℃まで昇温した。次に、温度を150〜151℃に保ちながら、アクリル酸30質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド4.5質量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後40分間撹拌を続けた。冷却後、純水135質量部を加え、高分子化合物(1)を得た。
【0047】
合成例2:高分子化合物(2)の合成
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量2000のフェノキシポリエチレングリコール100質量部、マレイン酸10質量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶解させ、撹拌下145℃まで昇温した。次に、温度を145〜147℃に保ちながら、アクリル酸50質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド2.5質量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後80分間撹拌を続けた。冷却後、純水150質量部を加え、高分子化合物(2)を得た。
【0048】
合成例3:高分子化合物(3)の合成
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量1500のモノメトキシポリエチレングリコール100質量部、マレイン酸10質量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶解させ、撹拌下145℃まで昇温した。次に、温度を145〜147℃に保ちながら、アクリル酸15質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド1.0質量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後100分間撹拌を続けた。冷却後、純水125質量部を加え、高分子化合物(3)を得た。
【0049】
合成例4:高分子化合物(4)の合成
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、平均分子量2000のモノメトキシポリエチレングリコール100質量部、マレイン酸10質量部を仕込んで、窒素気流下、加熱して溶解させ、撹拌下145℃まで昇温した。次に、温度を145〜147℃に保ちながら、アクリル酸50質量部、ジ−t−ブチルパーオキシド2.5質量部を別々に、1時間にわたって連続的に滴下し、その後60分間撹拌を続けた。冷却後、純水150質量部を加え、高分子化合物(4)を得た。
【0050】
実施例1
下記成分を用い、表1及び表2に示す組成の液体漂白洗浄剤組成物を調製した。得られた液体漂白洗浄剤組成物について、漂白活性剤及び過酸化水素の貯蔵安定性、漂白性能、再汚染防止性能及び液感を以下の方法により評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0051】
<配合成分>
(a)成分
(a)−1;過酸化水素
(b)成分
(b)−1;前記式(b−2)で表される化合物
(b)−2;前記式(b−1)で表される化合物
(c)成分
(c)−1;高分子化合物(1)
(c)−2;高分子化合物(2)
(c)−3;高分子化合物(3)
(c)−4;高分子化合物(4)
比較の高分子化合物
(c’)−1;ポリアクリル酸Na(平均分子量5,000)
(d)成分
(d)−1;ホウ酸
(e)成分
(e)−1;ソルビトール
(f)成分
(f)−1;エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸
(g)成分
(g)−1;CH3(CH2)11-O-(C24O)8-H
(g)−2;CH3(CH2)11-O-(C24O)7-(C36O)2-(C24O)3
(h)成分
(h)−1;4−メトキシフェノール
(h)−2;4−ヒドロキシ安息香酸
<漂白活性化剤の貯蔵安定性の評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃で1週間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白洗浄剤組成物中の漂白活性化剤含有量を高速液体クロマトグラフィーで測定し、下式により漂白活性化剤残存率を求めた。
【0052】
【数1】

【0053】
<過酸化水素の貯蔵安定性の評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、30℃で1週間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白洗浄剤組成物を1/10N過マンガン酸標準液で滴定し、有効酸素を求め下式により過酸化水素残存率を測定した。
【0054】
【数2】

【0055】
<漂白性能の評価法>
4°DHを液体漂白洗浄剤組成物1mLと混合し1000mLに調製した後、そこに以下で調製したミートソース汚染布(4枚)を加え、次いで、ターゴトメータを用いて20℃、80rpmで漂白洗浄処理を行った。処理前後の布表面の反射率を測定し、下式により漂白率を求めた。
【0056】
・汚染布の調製
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2007年5月27日賞味期限、ロット番号:D5527JF)/内容量259gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、15分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、10×10cmの試験布として実験に供した。
【0057】
【数3】

【0058】
<再汚染防止性能の評価法>
カーボン0.25gを20℃に調整した4°DH 800mLと混合し、超音波発振機(国際電気エルテック社製 ULTRASONIC GENERATOR、U0600PB-Y(600W、AC200V、6A、発振周波数26±1.5KHz))で5分間分散させた。その後、液体漂白洗浄剤組成物1mLを添加し、6cm×6cmに裁断した木綿平織り布及びT/C混(65/35)の試験布をそれぞれ3枚ずつ加えた後、ターゴトメータを用いて20℃、80rpmで漂白洗浄処理を行った。処理前後の布表面の反射率を測定し、下式により再汚染防止率を求めた。
【0059】
【数4】

【0060】
<液感の評価法>
液体漂白洗浄剤組成物を100mLガラス製サンプルビンに80g入れ、50℃で4週間貯蔵した。貯蔵前後の溶液の外観を目視により下記基準で判定した。
【0061】
〇;無色透明
×;沈殿又は濁り
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有し、組成物中の(c)成分の含有量が0.1〜15質量%であり、20℃におけるpHが4.0〜7.0である液体漂白洗浄剤組成物。
(a)過酸化水素又は水中で過酸化水素を生成する化合物
(b)漂白活性化剤
(c)ポリエーテル化合物に、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含むモノエチレン性不飽和単量体を重合させた高分子化合物
【請求項2】
(c)成分を構成するポリエーテル化合物が、一般式(1)で表される化合物である請求項1記載の液体漂白洗浄剤組成物。
Y−O(CH2CH2O)nH (1)
(式中、Yは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基であり、nはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す2〜200の数である。)
【請求項3】
(c)成分の高分子化合物が、ポリエーテル化合物とモノエチレン性不飽和単量体の質量比(ポリエーテル化合物/モノエチレン性不飽和単量体)が0.25以上となる割合で重合させたものである請求項1又は2記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(d)成分としてホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、並びに(e)成分として隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有し、(e)成分/(d)成分のモル比が1.5〜2.7である請求項1〜3何れか記載の液体漂白洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、(f)成分としてホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有する請求項1〜4何れか記載の液体漂白洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−39593(P2007−39593A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227363(P2005−227363)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】