説明

液体濃度計

【課題】 発光部及び受光部が液体中の浮遊物で汚染されることのない、簡単な構造の液体濃度計を提供することである。
【解決手段】 浮遊及び/又は溶解している固形物を含んだ液体の濃度を測定する液体濃度計であって、該液体を供給する供給経路と該液体が規定量以上となった際に該液体を廃棄するオーバーフロー経路とを備えた該液体を貯留する貯留部と、該貯留部の下方に配設された測定室と、該貯留部と該測定室を仕切る仕切り壁に貫通して設けられ、該貯留部内の液体を該測定室内で液柱に形成して落下させる液体導入路と、該液柱と所定距離離れた位置から測定光を照射する該測定室に臨んで配設された発光部と、該液柱と所定距離離れた位置で該測定光を受光する該測定室に臨んで配設された受光部と、を具備し、該発光部及び該受光部は、該液柱に直交して交差する直線上で対向して配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体濃度計に関し、特に、懸濁水に直接光線を照射して減衰した透過光を受光器で受光することにより液体の濃度を測定する液体濃度計に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に対する貢献が重要な課題となっている現在、製造業者が排出する産業廃棄物を削減することは各企業の重要な課題となっている。産業廃棄物には各種排水が含まれ、半導体製造業においては、加工したシリコンの微細な加工屑が含まれる排水等がこれにあたる。
【0003】
例えば、半導体デバイスの製造プロセスでは、半導体ウエーハの表面にICやLSI等の回路素子を複数形成した後、ウエーハの裏面を研削装置で研削して所定の厚みへと薄化し、薄化したウエーハを切削装置で切削することで個々の半導体デバイスを製造している。
【0004】
これらの研削装置や切削装置では、加工によって生じる加工屑を除去する目的や、加工で生じた加工熱を冷却する目的等のために、加工水を供給しつつ加工が遂行される。半導体デバイス上に極微量でも不純物が残っていると半導体デバイスの品質に重大な影響を及ぼす。そのため、これらの研削装置や切削装置では純水が加工水として用いられている。
【0005】
純水は、市水をフィルター、活性炭フィルター、イオン交換樹脂や逆浸透膜に通過させることで生成され、例えば特開平9−2924号公報で開示されるような純水製造装置を用いて生成される。
【0006】
一般に純水は高価であるため、加工装置等で使用された使用後の純水は回収されリサイクルされて使用されている。ところが、加工装置で使用された使用後の純水には大量の加工屑が混入されており、これらの加工屑を除去して再度純水を生成しようとすると、純水製造装置のフィルターやイオン交換樹脂、逆浸透膜等がすぐに詰まってしまうという問題がある。
【0007】
そこで本出願人は、これらの純水製造装置における純水の生成を補助するために、加工によって生じた加工廃液をフィルターで濾過して加工廃液から加工屑を除去する加工廃液処理装置を特開2009−95941号公報で提案した。
【0008】
こうした加工廃液処理装置では、濾過前後の液体の濃度を測定する必要があり、例えば、特開2009−168702号公報に開示されたような液体濃度計を用いて液体の濃度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−95941号公報
【特許文献2】特開2009−168702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、特許文献2に開示された浮遊固形物濃度計では、液体が通過する検出部に設けられた発光窓及び受光窓が直接液体に接している。このように発光窓及び受光窓が液体に接していると、発光窓及び受光窓が液体中の浮遊物で汚染されてしまい、徐々に正確な濃度測定ができなくなるという問題がある。
【0011】
特許文献2に開示された浮遊固形物濃度計では、発光窓及び受光窓を洗浄することでこのような問題を解決している。しかしながら、汚れるという根本的な問題は解決しておらず、洗浄するための新たな機構を備える必要があるため、装置がコスト高になるという問題がある。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発光部及び受光部が液体中の浮遊物で汚染されることのない、簡単な構造の液体濃度計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、浮遊及び/又は溶解している固形物を含んだ液体の濃度を測定する液体濃度計であって、該液体を供給する供給経路と該液体が規定量以上となった際に該液体を廃棄するオーバーフロー経路とを備えた該液体を貯留する貯留部と、該貯留部の下方に配設された測定室と、該貯留部と該測定室を仕切る仕切り壁に貫通して設けられ、該貯留部内の液体を該測定室内で液柱に形成して落下させる液体導入路と、該液柱と所定距離離れた位置から測定光を照射する該測定室に臨んで配設された発光部と、該液柱と所定距離離れた位置で該測定光を受光する該測定室に臨んで配設された受光部と、を具備し、該発光部及び該受光部は、該液柱に直交して交差する直線上で対向して配設されていることを特徴とする液体濃度計が提供される。
【0014】
好ましくは、発光部と受光部とを結ぶ直線上を通過する液柱の幅は液体の濃度に応じて設定される。好ましくは、液体導入路が形成する液柱は円柱形状或いは測定室内を横断するカーテン状を呈している。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液体濃度計によると、測定室内に液体導入路から落下することで形成された液柱を測定対象とすることで、発光部及び受光部を液柱から所定距離離間させて液柱の透過光量により液体の濃度を測定するようにしたため、洗浄の必要がなく常に正確な測定結果が得られるという効果を奏する。また、構造もシンプルになるため安価に作成でき、故障もしにくいという効果もある。
【0016】
更に、液体の濃度に応じて発光部からの光が透過する液柱の厚さを変更することで、光ファイバー光源のような照度の高くない発光部を用いても、正確な濃度の測定が可能となるという効果もある。
【0017】
また、液柱をコスト的に安価に実現し易い円柱状にすることで、発光部と受光部を所定の間隔を持って円柱状液柱から離間させることができ、発光部及び受光部の汚れによる測定誤差を排除することができる。
【0018】
一方、液柱の形状を測定室を横断するカーテン形状に形成することで、測定光が測定室内を拡散しても、受光する測定光の全てが液柱を通過するため、精度の高い濃度測定が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施形態に係る液体濃度計の縦断面図である。
【図2】第1実施形態の図1のA−A線断面図である。
【図3】第2実施形態の図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る液体濃度計10の縦断面図が示されている。液体濃度計10はポリカーボネート等の透明樹脂から形成された貯留部12を含んでいる。
【0021】
貯留部12は、濃度測定すべき液体14を貯留部12内に供給する供給経路16と、貯留部12内の液体14が規定量以上となった際に液体14を廃棄するオーバーフロー経路18とを備えている。
【0022】
貯留部12の下方には測定部20が配設されている。測定部20は例えば黒色に着色されたポリアセタールから形成され、内部に測定室22を画成している。測定部20が黒色に着色されているのは、光による濃度測定の正確性を確保するためである。
【0023】
貯留部12と測定室22とを仕切る仕切り壁24には、貯留部12内の液体14を落下させて測定室22内で液柱28を形成する液体導入路26が仕切り壁24を貫通して設けられている。液体導入路26は液柱28を所望の形状に形成するために、測定室22内へ所定距離突出している。
【0024】
測定部20の側壁にはその一端30aが測定室22内に突出し、他端が発光素子に接続された光ファイバ30が側壁を貫通するように配設されている。光ファイバ30の一端30aが発光部34を形成する。
【0025】
光ファイバ30に対向するように、液柱28に直交して交差する直線上に測定部20の側壁を貫通して光ファイバ32が配設されている。光ファイバ32の一端32aは測定室22内に突出し、受光部36を形成する。光ファイバ32の他端は受光素子に接続されている。光ファイバ30,32とも、例えばマルチモードのプラスチック光ファイバから構成される。
【0026】
図2を参照すると、第1実施形態に係る図1のA−A線断面図が示されている。第1実施形態では、液体導入路26は円筒形状をしている。よって、液体導入路26から落下して形成される液柱28は円柱形状となる。
【0027】
このような円柱形状の液柱28は円筒状液体導入路26を仕切り壁24に打ち込んで形成することができ、コスト的に安価に実現し易い。例えば、円柱状液柱28の直径は1〜2mm程度である。
【0028】
図3を参照すると、本発明第2実施形態の図1のA−A線断面図が示されている。本実施形態では、液体導入路26Aは測定室22を横断する長方形状に形成されている。よって、液体導入路26Aを通して落下する液体により形成される液柱28は測定室22を横断するカーテン形状(壁形状)をしている。
【0029】
このように、液柱28の形状を測定室22を横断するカーテン形状にすることで、発光部34から出射された測定光が測定室22内で拡散しても、受光部36で受光する測定光の全てが液柱28を通過しているため、精度の高い液体濃度の測定が可能となる。
【0030】
研削装置又は切削装置の加工廃液の濃度を測定するために、本実施形態に係る液体濃度計10は、加工廃液処理装置のフィルターの上流側及び下流側にそれぞれ設置されるのが好ましい。
【0031】
加工廃液は供給経路16を介して液体濃度計10の貯留部12内に導入される。切替弁を切り替えることにより、加工廃液が廃液処理装置内を流れる経路と、液体濃度計10に導入される経路とに選択的に切り替えられる。
【0032】
加工廃液の濃度が高ければ液柱28を透過する光量が少ないため、液柱28の厚さを薄くするのが好ましい。反対に、加工廃液の濃度が低ければ液柱28を透過する光量が多くなるので、液柱28の厚さを厚くするのが好ましい。液柱28の厚さをこのように調整することにより、光ファイバ32に接続された受光素子で受光する光量を所定範囲内に収めることができる。
【0033】
上述した実施形態では、光ファイバ30,32の先端30a,32aは測定室22内に突出しているが、光ファイバ30,32の先端30a,32aを測定室22内に必ずしも突出させる必要はない。先端30a,32aが測定室22に臨むように光ファイバ30,32が測定部20の側壁に取り付けられていればよい。
【0034】
本実施形態の液体濃度計10によると、TS濃度(全蒸発残留物の量)及びSS濃度(液柱に浮遊している固形物の量)のどちらも測定可能である。
【0035】
上述した実施形態の液体濃度計10によると、測定室22内に液体導入路26から落下することで形成された液柱28を測定対象とすることで、測定対象から所定距離離間して発光部34及び受光部36を配設することができるため、発光部34及び受光部36に加工屑の汚れが付着することがなく、常に正確な濃度の測定結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 濃度計
12 貯留部
14 液体
16 供給経路
18 オーバーフロー経路
20 測定部
22 測定室
24 仕切り壁
26 液体導入路
28 液柱
30,32 光ファイバ
34 発光部
36 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊及び/又は溶解している固形物を含んだ液体の濃度を測定する液体濃度計であって、
該液体を供給する供給経路と該液体が規定量以上となった際に該液体を廃棄するオーバーフロー経路とを備えた該液体を貯留する貯留部と、
該貯留部の下方に配設された測定室と、
該貯留部と該測定室を仕切る仕切り壁に貫通して設けられ、該貯留部内の液体を該測定室内で液柱に形成して落下させる液体導入路と、
該液柱と所定距離離れた位置から測定光を照射する該測定室に臨んで配設された発光部と、
該液柱と所定距離離れた位置で該測定光を受光する該測定室に臨んで配設された受光部と、を具備し、
該発光部及び該受光部は、該液柱に直交して交差する直線上で対向して配設されていることを特徴とする液体濃度計。
【請求項2】
前記発光部と前記受光部とを結ぶ直線上を通過する前記液柱の幅は、前記液体の濃度に応じて設定されることを特徴とする請求項1記載の液体濃度計。
【請求項3】
前記液体導入路が形成する前記液柱は円柱形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の液体濃度計。
【請求項4】
前記液体導入路が形成する前記液柱は前記測定室内を横断するカーテン状を呈し、前記受光部が受光する前記測定光の全てが前記液柱を通過することを特徴とする請求項1記載の液体濃度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108928(P2013−108928A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255998(P2011−255998)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】