説明

液体炭化水素の合成方法及び液体炭化水素の合成システム

【課題】低コスト化を実現可能な液体炭化水素の合成方法及び液体炭化水素の合成システムを提供すること。
【解決手段】フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから液体炭化水素を合成する液体炭化水素の合成方法であって、前記合成反応によって副生されるFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収工程と、前記合成ガスに含まれる前記炭酸ガスを前記第1吸収工程で用いた前記吸収剤に吸収させる第2吸収工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体炭化水素の合成方法及び液体炭化水素の合成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスから液体燃料を合成する方法の一つとして、GTL(Gas To Liquids:液体燃料合成)技術が知られている。GTL技術は、天然ガスを改質して一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H2)とを主成分とする合成ガスを生成する工程、この合成ガスを原料としてフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により炭化水素化合物(FT合成炭化水素)を合成する工程、このFT合成炭化水素を水素化および分留する工程を経て、ナフサ(粗ガソリン)、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品を製造する技術である。FT合成炭化水素を原料とした液体燃料製品は、パラフィン含有量が多く、硫黄分を含まないため、例えば特許文献1に示すように、環境対応燃料として注目されている。
【0003】
天然ガスを改質する技術として、例えば水蒸気・炭酸ガス改質法や炭酸ガス改質法など、炭酸ガスを用いた改質法が知られている。炭酸ガスを用いて天然ガスを改質する場合、未反応の炭酸ガスが合成ガスに比較的高濃度で混入するため、FT合成反応の前に合成ガスから炭酸ガスを分離する工程が導入されることがある。分離された炭酸ガスは、天然ガスの改質に再度利用される。
【0004】
FT合成反応では、炭素数が比較的多い重質のFT合成炭化水素が液体として製出されるとともに、各種のガスが副生される。副生されるガスには、例えば炭酸ガス、水蒸気、炭素数2以下の炭化水素、炭素数が3以上の炭化水素等が含まれている。副生されたガスは、未反応の合成ガスとともに、FTガスとして放出される。FTガスは分離器に投入されて凝縮した軽質液体炭化水素が分離され、必要に応じて再利用される。例えば未反応の合成ガスは再度FT合成反応に用いられ、炭酸ガスは天然ガスの改質に用いられる。
【0005】
合成ガスやFTガスから炭酸ガスを分離する際には、例えば常温では炭酸ガスを吸収し、加熱すると炭酸ガスを放出する吸収剤などを用いて行うことができる。例えば常温の吸収剤内に合成ガス又はFTガスを通過させることで炭酸ガスを吸収させ、当該吸収剤を加熱することで炭酸ガスを放出する。炭酸ガスを放出した吸収剤は、再び合成ガス又はFTガスからの炭酸ガス分離に用いられる。従来、合成ガスから炭酸ガスを分離する工程及びFTガスから炭酸ガスを分離する工程では、上記の吸収剤の循環系を個別に設けて行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−323626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、GTL技術では、合成ガス製造、FT合成反応、水素化・分留の各工程を含めて、各工程を低コストで実現させることが望まれている。このため、上記の炭酸ガスの分離工程においても、極力低コスト化することが好ましいと考えられる。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明は、低コスト化を実現可能な液体炭化水素の合成方法及び液体炭化水素の合成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液体炭化水素の合成方法は、フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから液体炭化水素を合成する液体炭化水素の合成方法であって、前記合成反応によって副生されるFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収工程と、前記合成ガスに含まれる前記炭酸ガスを前記第1吸収工程で用いた前記吸収剤に吸収させる第2吸収工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、FTガスに含まれる炭酸ガス濃度が低いことを利用して、FTガスに含まれる炭酸ガスの吸収と、合成ガスに含まれる炭酸ガスの吸収との間で共通の吸収剤を用いることとしたので、吸収剤を個別に循環させて用いる場合に比べて、コストを低減させることができる。
【0011】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記第1吸収工程後の前記FTガスを、前記第2吸収工程後であって前記合成反応を行う前の前記合成ガスに合流させる合流工程を更に含むことを特徴とする。
FTガスには、FT合成反応において未反応の合成ガスが含まれている。本発明によれば、炭酸ガスが分離された状態のFTガスをFT合成反応に再利用することができるので、合成ガスを無駄なく使用することができる。
【0012】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記第2吸収工程後の前記吸収剤を加熱し、前記吸収剤から前記炭酸ガスを放出して吸収剤を再生する再生工程を更に含むことを特徴とする。
本発明によれば、第1吸収工程及び第2吸収工程で吸収させた炭酸ガスを再生工程においてまとめて放出するので、個別に放出させる場合に比べて、再生塔などを共有することができ、装置コストを低減させることができる。
【0013】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記第1吸収工程では、前記再生工程により前記炭酸ガスを放出させ、再生した前記吸収剤を用いることを特徴とする。
本発明によれば、炭酸ガスを放出させ、再生した吸収剤を再利用することができるので、吸収剤を無駄なく使用することができる。
【0014】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記第2吸収工程では、前記再生工程により前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤の一部を直接導入し用いることを特徴とする。
本発明によれば、炭酸ガスを放出させ、再生した吸収剤の一部を第2吸収工程において直接導入し用いることとしたので、第2吸収工程においても清浄な吸収剤を用いることができる。
【0015】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記再生工程後の前記吸収剤の投入位置は、前記第1吸収工程で用いた前記吸収剤の投入位置よりも、前記合成ガスの流通方向の下流側であることを特徴とする。
本発明によれば、合成ガスの流通方向の下流側により清浄な吸収剤が投入されるため、炭酸ガスを確実に吸収させることができる。
【0016】
上記の液体炭化水素の合成方法は、前記第2吸収工程では、前記合成ガスの流通方向の下流側から上流側へ前記吸収剤を流通させることを特徴とする。
本発明によれば、吸収剤の流通方向と合成ガスの流通方向とを対向させることとしたので、より効率的に炭酸ガスを吸収することができる。
【0017】
本発明に係る液体炭化水素の合成システムは、フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから液体炭化水素を合成する液体炭化水素の合成システムであって、前記合成反応によって副生されるFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収塔と、前記合成ガスに含まれる前記炭酸ガスを前記第1吸収塔で用いた前記吸収剤に吸収させる第2吸収塔とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、FTガスに含まれる炭酸ガスを吸収する第1吸収塔と、合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収する第2吸収塔との間で共通の吸収剤を用いることとしたので、吸収剤を第1吸収塔及び第2吸収塔で個別に循環させて用いる場合に比べて、再生塔などを共有することができ、装置コストを低減させることができる。
【0019】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記第1吸収塔からの前記FTガスを、前記第2吸収塔からの前記合成ガスに合流させる合流機構を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭酸ガスが分離された状態の前記FTガスに含まれる未反応の合成ガス成分をFT合成反応に再利用することができるので、炭酸ガスの濃縮回避によるFT合成反応の圧力低下が可能となり、反応器コストを低減させることができる。
【0020】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記第2吸収塔で用いた前記吸収剤を加熱し、前記吸収剤から前記炭酸ガスを放出し、吸収剤を再生する再生塔を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1吸収塔及び第2吸収塔で吸収させた炭酸ガスを再生塔においてまとめて放出するので、個別に放出させる場合に比べて、再生塔などを共有することができ、装置コストを低減させることができる。
【0021】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記再生塔で前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤を前記第1吸収塔に供給する供給機構を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭酸ガスを放出させた吸収剤を再利用することができるので、吸収剤を無駄なく使用することができる。
【0022】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記再生塔で前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤の一部を前記第2吸収塔に直接供給する第2供給機構を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭酸ガスを放出させた吸収剤の一部が第2吸収塔に直接導入されて用いられるので、第2吸収塔においても清浄な吸収剤を用いて炭酸ガスを吸収させることができる。
【0023】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記第2供給機構による前記吸収剤の供給位置は、前記供給機構による前記吸収剤の供給位置よりも、前記合成ガスの流通方向の下流側であることを特徴とする。
本発明によれば、合成ガスの流通方向の下流側により清浄な吸収剤が供給されるため、炭酸ガスを確実に吸収させることができる。
【0024】
上記の液体炭化水素の合成システムは、前記第2吸収塔では、前記吸収剤が前記合成ガスの流通方向の下流側から上流側へ供給されることを特徴とする。
本発明によれば、吸収剤の流通方向と合成ガスの流通方向とを対向させることとしたので、より効率的に炭酸ガスを吸収することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低コスト化が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭化水素合成システムの構成を示す全体概略図。
【図2】炭化水素合成システムの構成を示す部分概略図。
【図3】炭化水素の合成過程の一部の工程を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る炭化水素合成システムの他の構成を示す部分概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
まず、図1を参照して、本実施形態に係るGTL(Gas To Liquids)プロセスを実行する液体燃料合成システム1の全体構成及び工程について説明する。図1は、本実施形態にかかる液体燃料合成システム1の全体構成を示す概略図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る液体燃料合成システム1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット5と、製品精製ユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを生成する。FT合成ユニット5は、生成された合成ガスからフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により液体炭化水素を生成する。製品精製ユニット7は、FT合成反応により生成された液体炭化水素を水素化・精製して液体燃料製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0030】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16および18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水添脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分として含む合成ガスを生成する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、気液分離器18から供給された合成ガスから吸収液を用いて炭酸ガスを除去する吸収塔22と、当該炭酸ガスを含む吸収液から炭酸ガスを放散させて再生する再生塔24とを有する。吸収塔22は、本発明における第2吸収塔である。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0031】
このうち、改質器12は、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを生成する。なお、この改質器12における改質法は、上記水蒸気・炭酸ガス改質法の例に限定されず、例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0032】
CH+HO→CO+3H ・・・(1)
CH+CO→2CO+2H ・・・(2)
【0033】
また、水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管28から分岐した分岐ライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有しており、各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0034】
なお、水素分離装置26における水素ガス分離方法としては、上記水素PSA装置のような圧力変動吸着法の例に限定されず、例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどであってもよい。
【0035】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi、TiFe0.7〜0.9Mn0.3〜0.1、又はTiMn1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔を設け、各吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とを交互に繰り返すことで、合成ガス内の水素ガスを分離・回収することができる。
【0036】
また、膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガス中から膜透過性に優れた水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、相変化を伴わないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが安い。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0037】
次に、FT合成ユニット5について説明する。FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器30と、気液分離器34と、吸収塔35と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40とを主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で生成された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとをFT合成反応させて液体炭化水素を生成する。気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を流通して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素生成物を分離処理する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の上部に接続され、未反応合成ガスを含むFTガス及び気体炭化水素生成物を冷却処理する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素を蒸留し、沸点に応じて各留分に分留する。吸収塔35は、気液分離器38によって分離されたFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収する。吸収塔35は、本発明における第1吸収塔である。
【0038】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスを液体炭化水素に合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に触媒と媒体油とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから液体炭化水素を生成する。詳細には、気泡塔型反応器30に供給された合成ガスは、触媒と媒体油からなるスラリー内を通過し、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように水素ガスと一酸化炭素ガスとが合成反応を起こす。
【0039】
2nH+nCO→−(CH)n−+nHO ・・・(3)
【0040】
このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は内部に伝熱管32が配設された熱交換器型になっており、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)を供給し、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0041】
最後に、製品精製ユニット7について説明する。製品精製ユニット7は、例えば、ワックス分水素化分解反応器50と、中間留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサスタビライザー72とを備える。ワックス分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の下部に接続されている。中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の上部に接続されている。気液分離器56,58,60は、これら水素化反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素を沸点に応じて分留する。ナフサスタビライザー72は、気液分離器60及び第2精留塔70から分留されたナフサ留分の液体炭化水素を精留して、ブタンより軽い成分はオフガス側へ排出し、炭素数5以上の成分は製品のナフサとして分留される。
【0042】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0043】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0044】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に供給される。脱硫反応器10は、当該水素ガスを用いて天然ガスに含まれる硫黄分を例えばZnO触媒で水添脱硫する。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0045】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12は、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とを用いて天然ガスを改質して、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスを生成する。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気とが供給されており、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0046】
このようにして改質器12で生成された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を流通する水との熱交換により冷却(例えば400℃)されて、排熱回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給され、この気液分離器16から気体分が高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)として改質器12または他の外部装置に供給され、液体分の水が排熱ボイラー14に戻される。
【0047】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮液分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22は、貯留している吸収液内に、合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収することで、当該合成ガスから炭酸ガスを除去する。この吸収塔22内の炭酸ガスを含む吸収液は、再生塔24に送出され、当該炭酸ガスを含む吸収液は例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、放散された炭酸ガスは、再生塔24から改質器12に送られて、上記改質反応に再利用される。
【0048】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で生成された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮器(図示せず。)により、FT合成反応に適切な圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0049】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26は、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスを分離する。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、ワックス分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給する。
【0050】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって生成された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素を合成する。
【0051】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスを分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30に流入され、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒スラリー内を通過する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素が生成される。さらに、この合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32内に水を流通させることで、FT合成反応の反応熱を除去し、この熱交換により加熱された水が気化して水蒸気となる。この水蒸気は、気液分離器34で液化した水が伝熱管32に戻されて、気体分が中圧スチーム(例えば1.0〜2.5MPaG)として外部装置に供給される。
【0052】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素(重質FT炭化水素)は、気泡塔型反応器30の中央部から取り出されて、分離器36に送出される。分離器36は、取り出されたスラリー中の触媒(固形分)と、液体炭化水素生成物を含んだ液体分とに分離する。分離された触媒は、その一部を気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に供給される。また、気泡塔型反応器30の塔頂からは、未反応の合成ガスと、合成された炭化水素のガス分とが気液分離器38に導入される。気液分離器38は、これらのガスを冷却して、一部の凝縮分の液体炭化水素(軽質FT炭化水素)を分離して第1精留塔40に導入する。一方、気液分離器38で分離されたFTガスのうち炭酸ガスは吸収塔35によって除去される。FTガスのうち未反応の合成ガス(COとH)は、気泡塔型反応器30に再投入されてFT合成反応に再利用される。また、製品対象外である炭素数が少ない(C以下)炭化水素ガスを主成分とするオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、LPG(液化石油ガス)相当の燃料が回収されたりする。
【0053】
次いで、第1精留塔40は、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素(炭素数は多様)を加熱して、沸点の違いを利用して分留し、ナフサ留分(沸点が約150℃未満)と、中間留分(沸点が約150〜360℃)と、ワックス分(沸点が約360℃より大)とに分留する。この第1精留塔40の底部から取り出されるワックス分の液体炭化水素(主としてC21以上)は、ワックス分水素化分解反応器50に移送され、第1精留塔40の中央部から取り出される灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素(主としてC11〜C20)は、中間留分水素化精製反応器52に移送され、第1精留塔40の上部から取り出されるナフサ留分の液体炭化水素(主としてC〜C10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0054】
ワックス分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の下部から分留された炭素数の多いワックス分の液体炭化水素(概ねC21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数をC20以下に低減する。この水素化分解反応では、触媒と熱を利用して、炭素数の多い炭化水素のC−C結合を切断して、炭素数の少ない低分子量の炭化水素を生成する。このワックス分水素化分解反応器50により、水素化分解された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器56で気体と液体とに分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に移送される。
【0055】
中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部から分留された炭素数が中程度である灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素(概ねC11〜C20)を、水素分離装置26からワックス分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この水素化精製反応は、上記液体炭化水素の不飽和結合に水素を付加して飽和させ、飽和炭化水素を生成するとともに、直鎖状飽和炭化水素を異性化する反応である。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、第2精留塔70に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0056】
ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の上部から分留された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素(概ねC10以下)を、水素分離装置26からワックス分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスを用いて、水素化精製する。この結果、水素化精製された液体炭化水素を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離され、そのうち液体炭化水素は、ナフサスタビライザー72に移送され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0057】
次いで、第2精留塔70は、上記のようにしてワックス分水素化分解反応器50及び中間留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素を蒸留して、炭素数がC10以下の炭化水素(沸点が約150℃未満)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜360℃)と、ワックス分水素化分解反応器50からの未分解ワックス分(沸点約360℃より大)とに分留する。第2精留塔70の塔底からは未分解のワックス分が得られ、これはワックス分水素化分解反応器50の前にリサイクルされる。第2精留塔70の中央部からは灯油及び軽油が取り出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、炭素数がC10以下の炭化水素ガスが取り出されて、ナフサスタビライザー72に供給される。
【0058】
さらに、ナフサスタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54及び第2精留塔70から分留された炭素数がC10以下の炭化水素を蒸留して、製品としてのナフサ(C〜C10)を分留する。これにより、ナフサスタビライザー72の下部からは、高純度のナフサが取り出される。一方、ナフサスタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C以下)の炭化水素を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、LPG相当の燃料が回収されたりする。
【0059】
以上、液体燃料合成システム1の工程(GTLプロセス)について説明した。かかるGTLプロセスにより、天然ガスを、高純度のナフサ(C〜C10:粗ガソリン)、灯油(C11〜C15:ケロシン)及び軽油(C16〜C20:ガスオイル)等のクリーンな液体燃料に、容易且つ経済的に転換することができる。
【0060】
次に、図2を参照して、合成ガス及びFTガスから炭酸ガスを除去する構成を説明する。本実施形態では、常温で炭酸ガスを吸収すると共に加熱すると炭酸ガスを放出する性質を有する吸収剤を用いて当該炭酸ガスを除去する構成を例に挙げて説明する。図2においては、実線の矢印で示した経路が気体の流路であり、破線の矢印で示した経路が吸収剤の流路である。なお、上記吸収剤としては、例えば下記一般式(4)〜(6)で示されるアミン化合物などの水溶液が挙げられる。
【0061】
N(CHOH・・・(4)
N((CHOH) ・・・(5)
N((CHOH) ・・・(6)
【0062】
ここで、(4)〜(6)式中、Rは水素またはC〜C10のアルキル基であり、Rは水素またはC〜Cのアルキル基である。また、n=1〜5である。さらに、式(5)、式(6)のアルコール基については、アルキル基の炭素数が異なる場合も含むものとする。
このような物質としては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール、2−エチルアミノエタノール、2−プロピルアミノエタノール、n−ブチルアミノエタノール、2−(イソプロピルアミノ)エタノール、3−エチルアミノプロパノール、ジプロパノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。水溶液中のアミン化合物の濃度は、20質量%以上80質量%以下とされ、さらに好ましくは、30質量%以上50質量%以下とされる。
また、アミン化合物の水溶液以外の他の吸収剤が用いられる場合であっても勿論構わない。
【0063】
まず、気液分離器38によって分離されたFTガスの流通経路を説明する。気液分離器38は、FTガス流通管35b、第1吸収塔35、合流管35cを介して主配管28に接続されている。FTガス流通管35bには、例えばコンプレッサ35aなどが設けられている。第1吸収塔35はFTガス流通管35bに接続されており、FTガスに含まれる炭酸ガスを上記吸収剤に吸収させる第1吸収塔である。合流管35cは第1吸収塔35の上部に接続されており、炭酸ガスの除去されたFTガスを主配管28に合流させる合流機構である。
【0064】
次に、吸収剤の流通経路を説明する。吸収剤は、再生塔24、第1吸収塔35及び第2吸収塔22を循環して流通するようになっている。再生塔24は、第1配管(第1供給機構)24bを介して第1吸収塔35の上部に接続されている。第1配管24bには、ポンプ24a、熱交換器24c及び冷却器25aが設けられている。再生塔24の底部には、吸収剤の循環経路が設けられている。当該循環経路上には、吸収剤を加熱する加熱部25bが設けられている。
【0065】
第1吸収塔35は、第2配管24dを介して第2吸収塔22に接続されている。第2配管(第2供給機構)24dは、第1吸収塔35側の端部が当該第1吸収塔35の下部に接続され、第2吸収塔22側の端部が当該第2吸収塔22の上部に接続されている。第2吸収塔22は、第3配管24eを介して再生塔24に接続されている。第3配管24eは、第2吸収塔22側の端部が当該第2吸収塔22の下部に接続されており、上記の熱交換器24cを介して再生塔24に接続されている。
【0066】
次に、上記のFTガスの流通経路及び吸収剤の流通経路を用いて炭酸ガスを吸収する工程を説明する。
気液分離器38によって分離されたFTガスは、FTガス流通管35bを介して第1吸収塔35の下部に供給される。第1吸収塔35に供給されたFTガスは、第1吸収塔35内を下部から上部へと移動する。一方、吸収剤は、再生塔24から第1配管24bを介して第1吸収塔35の上部に供給される。吸収剤は、第1配管24b内を流通する過程で、冷却器25aによって冷却される。第1吸収塔35の上部に供給された吸収剤は、第1吸収塔35内を上部から下部へと移動する。
【0067】
第1吸収塔35では、第1吸収塔35内を上部から下部へと移動する吸収剤によって、当該第1吸収塔35内を下部から上部へと移動するFTガス中の炭酸ガスが吸収される(ST1:第1吸収工程)。このように第1吸収塔35は、FTガスの移動方向とは逆方向に吸収剤を流通させてFTガス中の炭酸ガスを吸収させる。
【0068】
炭酸ガスが吸収されたFTガスは、第1吸収塔35から合流管35cへと排出される。一方、炭酸ガスを吸収した吸収剤は、第1吸収塔35の下部から第2配管24dへと排出される。
【0069】
FTガス中の炭酸ガスの含有体積量は、FTガス全体に対して例えば0.5%程度であり、比較的低濃度である。このため、FTガス中の炭酸ガスを吸収した状態においては、吸収剤の炭酸ガス吸収容量は十分に残った状態となっている。第1吸収塔35からは、このように吸収容量を十分に残した吸収剤が排出される。
【0070】
第1吸収塔35から排出された吸収剤は、第2配管24dを介して第2吸収塔22の上部に供給される。第2吸収塔22の上部に供給された吸収剤は、第2吸収塔22内を上部から下部へと移動する。一方、当該第2吸収塔22の下部には、気液分離器18から合成ガスが供給される。第2吸収塔22内に供給された合成ガスは、第2吸収塔22内を下部から上部へと移動する。
【0071】
第2吸収塔22では、第2吸収塔22内を上部から下部へと移動する吸収剤によって、当該第1吸収塔35内を下部から上部へと移動する合成ガス中の炭酸ガスが吸収される(ST2:第2吸収工程)。このように、第2吸収塔22は、合成ガスの移動方向とは逆方向に吸収剤を移動させて合成ガス中の炭酸ガスを吸収させる。
【0072】
第2吸収塔22で用いられる吸収剤は、第1吸収塔35においてFTガス中の炭酸ガスを吸収させた吸収剤である。すなわち、第1吸収塔35及び第2吸収塔22においては、共通の吸収剤を用いている。当該吸収剤は、FTガス中の炭酸ガスを吸収させた状態であっても十分な吸収容量を残している。このため、当該吸収剤を第2吸収塔22で用いても、合成ガス中の炭酸ガスを十分に吸収する。合成ガス中の炭酸ガスの含有体積量は、合成ガス全体の例えば5.8%程度であり、比較的高濃度である。吸収剤の炭酸ガス吸収容量が十分に残っているため、第2吸収塔22では高濃度の炭酸ガスであっても十分に吸収されることになる。
【0073】
炭酸ガスが吸収された合成ガスは、主配管28へと排出される。主配管28では、第1吸収塔35から排出されたFTガスが合流管35cを介して当該合成ガスに合流する(ST3:合流工程)。合成ガス及び当該合成ガスに合流したFTガスは、主配管28を介して気泡塔型反応器30へと供給される。合成ガス、及び、FTガスのうち未反応の合成ガス成分は、気泡塔型反応器30においてFT合成反応に用いられる。
【0074】
一方、炭酸ガスを吸収した吸収剤は、第2吸収塔22の下部から第3配管24eへと排出される。第2吸収塔22から排出された吸収剤は、第3配管24eを介して再生塔24へ供給される。再生塔24では、第2吸収塔22で用いた吸収剤が加熱部25bによって加熱され、当該吸収剤から炭酸ガスが放出され、吸収剤が再生される(ST4:再生工程)。炭酸ガスが放出され、再生した吸収剤は、再度第1配管24bを介して第1吸収塔35に供給される。第1吸収塔35では、再生工程によって炭酸ガスの放出された吸収剤が用いられ、当該吸収剤によってFTガス中の炭酸ガスが吸収される(ST1:第1吸収工程)。この後、上記同様に吸収剤を循環させることにより、FTガス及び合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収させる。
【0075】
本実施形態によれば、FTガスに含まれる炭酸ガス濃度が低いことに注目して、FTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収工程と、合成ガスに含まれる炭酸ガスを第1吸収工程で用いた吸収剤に吸収させる第2吸収工程とを含むこととしたので、FTガスに含まれる炭酸ガスの吸収と、合成ガスに含まれる炭酸ガスの吸収との間で共通の吸収剤を用いて炭酸ガスを吸収させることができる。これにより、吸収剤を個別に循環させて用いる場合に比べて、コストを低減させることができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、第1吸収塔35からのFTガスを、吸収塔33からの合成ガスに合流させることとしたので、炭酸ガスが分離された状態のFTガスをFT合成反応に再利用することができる。これにより、合成ガスを無駄なく使用することができる。さらに、第2吸収工程後の吸収剤を加熱し、吸収剤から炭酸ガスを放出し、吸収剤を再生する再生工程を更に含むこととしたので、第1吸収工程及び第2吸収工程で吸収させた炭酸ガスを再生工程においてまとめて放出することができる。これにより、個別に放出させる場合に比べて、再生塔などを共有することができ、装置コストを低減させることができる。
【0077】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、再生塔24から供給される吸収剤を第1吸収塔35のみに供給する構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば図4に示すように、再生塔24から供給される吸収剤の一部を第2吸収塔である第2吸収塔22に供給する構成としても構わない。
【0078】
図4に示すように、吸収剤の流通経路において、第1配管24bから第4配管24fが分岐されている。第4配管24fは、第2吸収塔22の上部の位置Qに接続されている。第4配管24fの接続位置Qは、第2配管24dの接続位置Pよりも第2吸収塔22の上部に配置されている。このため、清浄な吸収剤が合成ガスの流通方向のより下流側に供給されることとなる。
【0079】
このように構成することで、炭酸ガスを放出させ、再生した吸収剤の一部を第2吸収工程において用いることができるので、第2吸収工程においても清浄な吸収剤を用いることができる。また、合成ガスの流通方向の下流側により清浄な吸収剤が投入されるため、炭酸ガスを確実に吸収させることができる。さらに、吸収剤の流通方向と合成ガスの流通方向とを対向させることとしたので、より効率的に炭酸ガスを吸収することができる。
【符号の説明】
【0080】
30…気泡塔型反応器 22…第2吸収塔 24…再生塔 24b…第1配管 24d…第2配管 35…第1吸収塔 35c…合流配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから液体炭化水素を合成する液体炭化水素の合成方法であって、
前記合成反応によって副生されるFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収工程と、
前記合成ガスに含まれる前記炭酸ガスを前記第1吸収工程で用いた前記吸収剤に吸収させる第2吸収工程と
を含むことを特徴とする液体炭化水素の合成方法。
【請求項2】
前記第1吸収工程後の前記FTガスを、前記第2吸収工程後であって前記合成反応を行う前の前記合成ガスに合流させる合流工程を更に含む
ことを特徴とする請求項1に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項3】
前記第2吸収工程後の前記吸収剤を加熱し、前記吸収剤から前記炭酸ガスを放出し、吸収剤を再生する再生工程を更に含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項4】
前記第1吸収工程では、前記再生工程により前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤を用いる
ことを特徴とする請求項3に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項5】
前記第2吸収工程では、前記再生工程により前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤の一部を用いる
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項6】
前記再生工程後の前記吸収剤の投入位置は、前記第1吸収工程で用いた前記吸収剤の投入位置よりも、前記合成ガスの流通方向の下流側である
ことを特徴とする請求項5に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項7】
前記第2吸収工程では、前記合成ガスの流通方向の下流側から上流側へ前記吸収剤を流通させる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の液体炭化水素の合成方法。
【請求項8】
フィッシャー・トロプシュ合成反応によって合成ガスから液体炭化水素を合成する液体炭化水素の合成システムであって、
前記合成反応によって副生されるFTガスに含まれる炭酸ガスを吸収剤に吸収させる第1吸収塔と、
前記合成ガスに含まれる前記炭酸ガスを前記第1吸収塔で用いた前記吸収剤に吸収させる第2吸収塔と
を備えることを特徴とする液体炭化水素の合成システム。
【請求項9】
前記第1吸収塔からの前記FTガスを、前記第2吸収塔からの前記合成ガスに合流させる合流機構を更に備える
ことを特徴とする請求項8に記載の液体炭化水素の合成システム。
【請求項10】
前記第2吸収塔で用いた前記吸収剤を加熱し、前記吸収剤から前記炭酸ガスを放出させ、吸収剤を再生する再生塔を更に備える
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の液体炭化水素の合成システム。
【請求項11】
前記再生塔で前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤を前記第1吸収塔に供給する供給機構を更に備える
ことを特徴とする請求項10に記載の液体炭化水素の合成システム。
【請求項12】
前記再生塔で前記炭酸ガスを放出させた前記吸収剤の一部を前記第2吸収塔に供給する第2供給機構を更に備える
ことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の液体炭化水素の合成システム。
【請求項13】
前記第2供給機構による前記吸収剤の供給位置は、前記供給機構による前記吸収剤の供給位置よりも、前記合成ガスの流通方向の下流側である
ことを特徴とする請求項12に記載の液体炭化水素の合成システム。
【請求項14】
前記第2吸収塔では、前記吸収剤が前記合成ガスの流通方向の下流側から上流側へ供給される
ことを特徴とする請求項8から請求項13のうちいずれか一項に記載の液体炭化水素の合成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229360(P2010−229360A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80490(P2009−80490)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】