説明

液体現像剤、液体現像剤の製造方法、画像形成方法、および画像形成装置

【課題】記録媒体へのトナー粒子の定着強度、トナー画像の転写性、現像性に優れ、かつ形成したトナー画像の解像度が優れた画像を形成することができる液体現像剤、その製造方法およびそれを用いた画像形成方法、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、前記絶縁性液体が、一価のアルコールと脂肪酸とがエステル結合した脂肪酸モノエステルおよび不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合において累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像剤の製造方法、画像形成方法および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(例えば、特許文献1参照)を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
ところで、液体現像剤で用いられるトナー粒子の粒度分布が狭いと一般的に定着後の記録媒体に付着した画像解像度、画像濃度が優れているとされる。また、現像剤容器から塗布ローラに液体現像剤をくみ出した場合において、トナー粒子が均一であるためにトナー粒子間に空隙が多くでき、多量の絶縁性液体がトナー粒子間に存在するため、トナー画像の現像、転写が効率的に行われる。
【0005】
しかしながら、通常、液体現像剤を用いた画像形成を行うと、定着の際にトナー粒子の表面に絶縁性液体が付着している。従来の炭化水素系やシリコーン系の不揮発性絶縁性液体を用いて画像形成を行った場合、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が定着強度を低下させる。このため、従来の絶縁性液体を用いた場合には、粒度分布の狭いトナー粒子を用いると記録媒体上のトナー粒子に比較的多量の絶縁性液体が付着し、定着強度が低下する問題が顕著に表れていた。
【0006】
一方で、粒度分布の広いトナー粒子を用いると定着強度の低下を抑制することができる。粒度分布の広いトナー粒子はその平均粒径と比べて微小な粒子を多量に有している。このため、粒度分布の広いトナー粒子を液体現像剤に用いると、記録媒体上のトナー画像にて大きなトナー粒子間の空隙に小さなトナー粒子が入り込み、トナー粒子間の隙間が少なくなるため、絶縁性液体はトナー粒子に少量しか付着しない。結果として、記録媒体上でのトナー粒子に付着した絶縁性液体も少なくなり、定着強度の低下は起こりにくくなる。しかしながら、現像、転写時においても、トナー粒子に絶縁性液体が少量しか付着していないため、トナー画像の現像、転写が効率的に行われず、高い解像度、画像濃度のトナー画像の形成も困難であるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−152256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、記録媒体へのトナー粒子の定着強度、トナー画像の転写性、現像性に優れ、かつ形成したトナー画像の解像度が優れた画像を形成することができる液体現像剤、その製造方法およびそれを用いた画像形成方法、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、
下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、
前記絶縁性液体が、一価のアルコールと脂肪酸とがエステル結合した脂肪酸モノエステルおよび不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合において累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
これにより、トナー粒子の粒度分布が狭く、記録媒体へのトナー粒子の定着強度が優れ、形成したトナー画像の解像度が優れた画像を形成することができる液体現像剤を提供できる。
【0010】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体の粘度は、5〜1000mPa・sであることが好ましい。
これにより、定着時に適量の絶縁性液体を記録媒体上に供給でき、記録媒体とトナー粒子の定着を特に優れたものにしつつ、鮮明なトナー画像を得ることができる。
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体のヨウ素価は、100〜200であることが好ましい。
これにより、記録媒体とトナー粒子の定着強度を特に優れたものにすることができる。
【0011】
本発明の液体現像剤では、前記不飽和脂肪酸のグリセリドは、構成する不飽和脂肪酸成分としてリノール酸を含むものであることが好ましい。
これにより、記録媒体とトナー粒子の定着強度、液体現像剤の保存性を特に優れたものにし、鮮明なトナー画像を得ることができる。
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体における脂肪酸モノエステルの含有率が5〜55wt%であることが好ましい。
これにより、記録媒体とトナー粒子の定着強度を特に優れたものにすることができ、鮮明なトナー画像が得ることができる。
【0012】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体中における前記不飽和脂肪酸のグリセリドの含有率をA[wt%]、前記絶縁性液体中における前記脂肪酸モノエステルの含有率をB[wt%]としたとき、0.6≦A/B≦8.0の関係を満足することが好ましい。
これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明の液体現像剤では、前記脂肪酸モノエステルは、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものであることが好ましい。
これにより、記録媒体とトナー粒子の定着強度を特に優れたものにすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記トナー粒子の表面付近には前記脂肪酸モノエステルが偏在していることが好ましい。
これにより、液体現像剤の保存性を特に優れたものにすることができる。
本発明の液体現像剤では、前記トナー粒子を構成する樹脂材料は、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
これにより、記録媒体とトナー粒子の定着強度、液体現像剤の保存性を特に優れたものにし、鮮明なトナー画像を得ることができる。
【0014】
本発明の液体現像剤の製造方法は、本発明の液体現像剤を得る方法であって、
主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
前記絶縁性液体の一部を用いて、前記会合粒子を解砕し、前記トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、前記不飽和脂肪酸のグリセリドを含む液体に分散させる分散工程とを有することを特徴とする。
これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着強度、液体現像剤の保存性を特に優れたものとすることができ、トナー粒子の粒度分布が特に狭く、形成したトナー画像の解像度が特に優れた画像を形成することができる液体現像剤の製造方法を提供できる。
【0015】
本発明の画像形成方法は、トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることにより前記トナー粒子を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、本発明の液体現像剤を用いることを特徴とする。
これにより、液体現像剤の転写性および現像性に優れ、かつ定着強度、画像解像度が優れたトナー画像が得られる画像形成方法を提供できる。
【0016】
本発明の画像形成方法では、前記記録媒体への前記トナー粒子の定着時にトナー画像に対して紫外線を照射することが好ましい。
これにより、定着速度、定着強度が特に優れたトナー画像が得られる画像形成方法を提供できる。
本発明の画像形成装置は、トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることにより前記トナー粒子を前記記録媒体に定着させる画像形成装置において、本発明の液体現像剤を用いることを特徴とする。
これにより、液体現像剤の転写性および現像性に優れ、定着強度、画像解像度が優れたトナー画像が得られる画像形成装置を提供できる。
本発明の画像形成装置では、前記記録媒体への前記トナー粒子の定着時にトナー画像に対して紫外線を照射する紫外線照射手段を有することが好ましい。
これにより、定着速度、定着強度が特に優れたトナー画像が得られる画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
≪液体現像剤≫
まず、本発明の液体現像剤について説明する。本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
<絶縁性液体>
絶縁性液体について説明する。本発明において、絶縁性液体は、不飽和脂肪酸グリセリドおよび脂肪酸モノエステルを含むものである。
【0018】
まず、不飽和脂肪酸グリセリドについて説明する。不飽和脂肪酸グリセリドは、脂肪酸とグリセリンとのエステル(グリセリド)であり、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものである。
不飽和脂肪酸成分は、トナー粒子の記録媒体への定着強度向上に寄与することができる成分である。より詳しく説明すると、不飽和脂肪酸成分は、酸化されることにより(定着時における定着温度で酸化されることにより)、それ自体が硬化し、トナー粒子の定着強度を向上させる機能を有する成分である。これにより、本発明によれば、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を優れたものとすることができる。また、不飽和脂肪酸グリセリドは、定着時にトナー粒子を可塑化させる効果(可塑剤効果)がある。トナー粒子は定着時に、記録媒体上で熱、圧力をかけられた場合において、トナー粒子表面付近にある不飽和脂肪酸グリセリドによって効果的に可塑化する。可塑化したトナー粒子同士が接触して溶融し合うことで、目的とする画像の色調をより確実に得ることが可能となる。また、トナー画像が平滑になることから優れた光沢を得ることができる。加えて、不飽和脂肪酸グリセリドは環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。また、不飽和脂肪酸成分が硬化することにより、定着したトナー画像に対して、水性ボールペンでの追記を容易かつ確実に行うことができる。
【0019】
グリセリドを構成する不飽和脂肪酸としては特に限定されないが、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸やこれらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
この中でも、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた場合、トナー粒子の記録媒体への定着強度が特に優れている。加えて定着時にトナー粒子との親和性が高く、トナー同士の溶融を妨げにくいため目的とする色調の画像を容易に得ることができる。また、トナー粒子との親和性が高いため、液体現像剤中にトナー粒子が安定して分散でき、液体現像剤の保存性を特に優れたものにすることができる。
【0021】
また、リノール酸成分としては、例えば、共役二重結合を有する共役リノール酸で構成されたものを用いてもよい。これにより、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
不飽和脂肪酸グリセリド全脂肪酸成分に対するリノール酸の含有率は、特に限定されないが、15mol%以上であることが好ましく、25mol%以上であることがより好ましく、45mol%以上であることがさらに好ましい。リノール酸の含有率が前記下限値未満であると、トナー粒子の記録媒体への定着強度が低下する可能性があり、液体現像剤の保存性が劣る場合がある。
【0022】
このような不飽和脂肪酸グリセリドは、例えば、紅花油、米油、米ぬか油、菜種油、オリーブ油、カノーラ油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等の植物由来の油脂、牛油等の各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
本発明における絶縁性液体中の不飽和脂肪酸グリセリドの含有量は、20〜80wt%であることが好ましく、30〜70wt%であることがより好ましく、40〜70wt%であることがさらに好ましい。絶縁性液体中の不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記範囲内にあると、定着時において、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応が適度に起こり、結果として、トナー画像の記録媒体への定着強度を特に優れたものにでき、目的とする色調の画像を得るのがより容易になる。
【0023】
不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記下限値未満であると定着時において不飽和脂肪酸の酸化重合反応起きにくいため、トナー粒子の記録媒体への定着強度が低下する可能性がある。一方、不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記上限値を超えると定着時において多量の不飽和脂肪酸による酸化重合反応が必要以上に起こりトナー粒子の周囲で固化が起こるため、不飽和脂肪酸成分の種類によってはトナー粒子の記録媒体への定着時にトナー粒子同士の溶融ができず、目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。
【0024】
また、不飽和脂肪酸グリセリド中に飽和脂肪酸成分が含まれていてもよい。飽和脂肪酸成分を含むことにより、液体現像剤の化学的安定性や絶縁性液体の電気絶縁性をさらに高く保つことが可能になる。
このような飽和脂肪酸成分を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミスチリン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような飽和脂肪酸の中でも、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸で構成された飽和脂肪酸成分を含むことにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0025】
上述のように、不飽和脂肪酸グリセリドは定着時においてトナー粒子の付近で酸化重合し、固化する結果、トナー画像の定着強度を高くすることができる。しかしながら、不飽和脂肪酸グリセリドは記録媒体に対する浸透性が低いため、単に、不飽和脂肪酸グリセリドを含む絶縁性液体を用いた場合、記録媒体とトナー粒子間の十分な定着強度を得るのが困難であった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、液体現像剤として、不飽和脂肪酸グリセリドと脂肪酸モノエステルに含むことで、記録媒体にトナー粒子を強固に定着させることができることを見出した。
【0026】
以下、脂肪酸モノエステルについて説明する。脂肪酸モノエステルは、脂肪酸と一価のアルコールとのエステルである。
脂肪酸モノエステルは記録媒体に浸透しやすい成分であるため、トナー粒子の表面付近に付着した脂肪酸モノエステルは、定着時にトナー粒子と記録媒体とが接触した際に、記録媒体に速やかに浸透する。そして、この脂肪酸モノエステルの浸透と共に、定着時の熱で溶融したトナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)の一部が記録媒体の内部に浸透し、アンカー効果が働き、定着強度が向上する。さらに、脂肪酸モノエステルの浸透と共に、トナー粒子の表面付近に存在する不飽和脂肪酸グリセリドの一部も浸透し、この状態で酸化重合することにより、トナー粒子はより強固に定着される。また、脂肪酸モノエステルにも不飽和脂肪酸グリセリドと同様の可塑剤効果がある。脂肪酸モノエステルは、不飽和脂肪酸グリセリドよりも低分子量であるため、トナー粒子に浸透しやすく、可塑剤効果がより高い。このため、脂肪酸モノエステルが絶縁性液体に存在する場合、定着時にトナー同士が溶融し合い、目的とする画像の色調をより確実に得ることが可能となる。加えて、脂肪酸モノエステルは、比較的粘度が低いため、後述する液体現像剤製造方法において、所望の粒径、粒度分布のトナー粒子の製造を容易にする。さらに、脂肪酸モノエステルは環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0027】
上述したような脂肪酸モノエステルは、トナー粒子表面に偏在していることが好ましい。脂肪酸モノエステルは、不飽和脂肪酸グリセリドとの親和性が高いため、表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在させたトナー粒子を用いることにより、トナー粒子の分散性を向上させることができ、その結果、保存時等において、トナー粒子の沈降や凝集等をより効果的に防止することができる。すなわち、液体現像剤は、高い保存性を有するものとなる。また、トナー粒子表面に脂肪酸モノエステルが偏在することで定着時におけるトナー粒子の可塑化が容易に起きやすくなる。
【0028】
なお、脂肪酸モノエステルは、トナー粒子の表面に偏在しているだけでなく、トナー粒子の内部に含まれていてもよいし、絶縁性液体中に含まれていてもよい。脂肪酸モノエステルがトナー粒子の内部に含まれている場合、定着の際にトナー粒子が可塑化するあるいは潰れると同時に、外部に染み出すことができ、溶融したトナー粒子の記録媒体への浸透をより効果的に促進することができる。
【0029】
また、上記脂肪酸モノエステルの、後述する樹脂材料(トナーを構成する樹脂材料)に対する界面張力は、35mN/m以下であるのが好ましく、32mN/m以下であるのがより好ましい。これにより、トナー粒子の表面付近により確実に偏在させることができ、記録媒体にトナー粒子をより強固に定着させることができる。
加えて、脂肪酸モノエステルの粘度は、10mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、記録媒体により好適に浸透するとともに、定着時の熱で溶融したトナー粒子や不飽和脂肪酸グリセリドの記録媒体への浸透をより確実に促すことができる。また、例えば、後述するような方法で液体現像剤を製造する際に、粒径の揃ったトナー粒子を好適に得ることができる。ただし、本明細書における粘度とは25℃において測定した値を指すものとする。
【0030】
絶縁性液体における脂肪酸モノエステルの含有率は、5〜55wt%であることが好ましく、10〜50wt%であることがより好ましく、20〜50wt%であることがさらに好ましい。脂肪酸モノエステルの含有率が前記範囲内であると、脂肪酸モノエステルがトナー粒子に付着しやすくなり、また絶縁性液体を好適に記録媒体へ浸透させることが可能となり、結果として特に優れた定着強度が得られる。さらに、定着時にトナー粒子が可塑化するのに十分な脂肪酸モノエステルがトナー粒子表面に付着し、トナー粒子同士が可塑化、溶融する結果として目的とする色調で特に優れた光沢の画像がより確実に得られる。
【0031】
これに対し、脂肪酸モノエステルの含有率が前記下限値未満の場合、脂肪酸エステルを加えても絶縁性液体の記録媒体への浸透効果、トナー粒子への可塑剤効果を十分に得られない場合がある。一方、脂肪酸モノエステルの含有率が前記上限値を超えると、絶縁性液体の粘度が低いものとなり、記録媒体上に形成した画像のトナー粒子した絶縁性液体が少量となり、十分な定着強度を得られにくくなる。また、保存時においても脂肪酸モノエステルがトナー粒子に対して浸透し、トナー粒子を可塑化させ、保存性が劣る場合がある。
【0032】
本発明の液体現像剤に使用できる脂肪酸モノエステルとしては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等に代表される不飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等に代表される飽和脂肪酸のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)モノエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
なお、脂肪酸モノエステルとして、脂肪酸成分に不飽和脂肪酸を持った不飽和脂肪酸モノエステルを用いることが好ましい。不飽和脂肪酸成分はトナー粒子の記録媒体への定着性向上に寄与することができる成分である。より詳しく説明すると、不飽和脂肪酸モノエステルは、定着時に酸化重合することにより、それ自体が硬化し、トナー粒子と記録媒体の定着強度を特に向上させることができる。これにより、記録媒体に浸透した不飽和脂肪酸グリセリドだけではなく、不飽和脂肪酸モノエステルも酸化重合に寄与することができるため、上述したアンカー効果を特に効果的にすることができ、特に優れた定着強度を得ることができる。
【0034】
脂肪酸モノエステルにおける全脂肪酸成分中の不飽和脂肪酸成分の含有率は50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上であることがより好ましい。これにより、上述した効果が特に確かなものとなり、特に強い定着強度を得ることができる。
また、脂肪酸モノエステルの脂肪酸成分は、主として不飽和脂肪酸が好ましいが、一部に飽和脂肪酸を含んでいてもよい。これにより、絶縁性液体の保存性、長期安定性はさらに優れたものとなる。
【0035】
また、脂肪酸モノエステルは脂肪酸と一価のアルコールとのエステルであるが、このアルコールは、炭素数が1〜4のアルキルアルコールであるのが好ましい。これにより、液体現像剤の化学的安定性は優れたものとなり、液体現像剤の保存性、長期安定性はさらに優れたものとなる。また、絶縁性液体の粘度を好適なものとし、記録媒体への液体現像剤の浸透をより好適なものとすることができる。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。
【0036】
また、絶縁性液体を構成する脂肪酸モノエステルは、脂肪酸グリセリドと炭素数が1〜4であるモノアルコールとのエステル交換反応により生成されたものであるのが好ましい。これにより、脂肪酸モノエステルと脂肪酸グリセリドとの親和性が、さらに高くなるため、絶縁性液体の粘度は好適なものとなり、記録媒体中への液体現像剤の浸透を、より優れたものとする。これにより、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を優れたものとし、高速での画像形成に適応した液体現像剤として、好適に適用することができる。
【0037】
前述したように、本発明においては、絶縁性液体中に、不飽和脂肪酸グリセリドと、脂肪酸モノエステルとを含む点に特徴を有し、これにより、優れた効果が得られる。これに対し、絶縁性液体中に、脂肪酸グリセリド、脂肪酸モノエステルのうちのいずれか一方のみしか含まれていない場合には、本発明の効果は得られない。
すなわち、絶縁性液体中に脂肪酸モノエステルが含まれない場合には、定着時のおいて絶縁性液体のトナー粒子に対する可塑剤効果が不十分となり、トナー粒子が記録媒体繊維中に入り込みづらくなる。さらに、絶縁性液体の粘度が高くなるので、キャリア液(絶縁性液体)の記録媒体への浸透が遅れ、結果として、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を十分なものとすることができない。
【0038】
一方、絶縁性液体中に不飽和脂肪酸グリセリドが含まれない場合には、定着時における絶縁性液体による可塑剤効果は十分に作用し、トナー粒子、絶縁性液体の記録媒体への浸透も速やかに起こる。しかし、定着時において記録媒体とトナー粒子間にある絶縁性液体が十分に固化できず、結果として記録媒体へのトナー粒子の定着強度を十分なものとすることができない。加えて、一般的に、脂肪酸モノエステルの分子量は、不飽和脂肪酸グリセリドの分子量よりも低いため、絶縁性液体が現像ローラ、ブレード等の各種部材に浸透し、膨潤あるいは浸食をしやすくなってしまう。また、粘度が低くなりすぎてしまい、画像形成装置において、液体現像剤を、現像剤容器より塗布ローラで汲み出すことが困難となり、得られる画像がムラのあるものとなってしまう。このような画像のムラにより、高速での画像形成が困難となる可能性がある。
【0039】
絶縁性液体中における不飽和脂肪酸グリセリドの含有率をA[wt%]、絶縁性液体中における脂肪酸モノエステルの含有率をB[wt%]としたとき、0.6≦A/B≦8.0の関係が好ましく、1.1≦A/B≦6.0の関係がより好ましく、1.1≦A/B≦3.0の関係がさらに好ましい。このような関係を満足することにより、液体現像剤の保存性をさらに優れたものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度は特に優れたものとすることができる。
【0040】
また、本発明の液体現像剤では、脂肪酸モノエステルは絶縁性液体に含まれている。脂肪酸モノエステルが絶縁性液体中に存在する場合には、脂肪酸モノエステルによるトナー粒子に対しての可塑剤効果は比較的小さく、保存時におけるトナー粒子の安定性を高く保つことができる。単に、脂肪酸モノエステルがトナー粒子の構成材料として含まれている場合、脂肪酸モノエステルの可塑剤効果によりトナー粒子が容易に可塑化し、結果として保存時におけるトナー粒子の安定性が劣る。
【0041】
また、絶縁性液体は、上述した以外の成分を含むものであってもよい。例えば、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン化学社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業)等の鉱物油、飽和脂肪酸グリセリド、中鎖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸等の脂肪酸グリセリドの分解物、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、不飽和脂肪酸成分の酸化を防止・抑制する機能を有する酸化防止剤が含まれていてもよい。これにより、液体現像剤中における不飽和脂肪酸成分の不本意な酸化を防止することができる。その結果、液体現像剤(絶縁性液体)の経時的な劣化等を防止することができ、長期間にわたって、トナー粒子の分散性、記録媒体に対する定着強度等を、特に優れたものとすることができる。すなわち、液体現像剤の長期安定性(保存性)を特に優れたものとすることができる。
【0043】
上述したような酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、d−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、酢酸−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、α−トコフェロール等のビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩類、アスコルビン酸ステアリン酸エステル等のビタミンC、緑茶抽出物、生コーヒー抽出物、セサモール、セサミノール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上述した中でも、ビタミンEを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、ビタミンEは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンEは、前述したような不飽和脂肪酸成分および飽和脂肪酸成分を含む液体(特に、グリセリド)への分散性が高いことから、酸化防止剤として好適に用いることができる。また、ビタミンEと前述したようなグリセリドとを併用することにより、絶縁性液体とトナー粒子との親和性をさらに向上させることができる。その結果、液体現像剤の保存性、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度等が特に優れたものとなる。
【0045】
また、上述した中でも、ビタミンCを用いた場合、以下のような効果が得られる。すなわち、前述したビタミンEと同様に、ビタミンCは、環境に優しい成分であるとともに、それ自身が酸化されて生じる物質の液体現像剤へ与える影響が小さい成分であるから、液体現像剤をより環境に優しいものとすることができる。また、ビタミンCは、熱分解温度が比較的低いため、液体現像剤の保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、酸化防止剤としての機能を十分に発揮させることができるとともに、定着時においては、酸化防止剤としての機能を低下させ、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進させることができる。
【0046】
酸化防止剤の熱分解温度は、定着時における定着温度以下であるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等において、絶縁性液体の劣化を効果的に防止するとともに、定着時においては、トナー粒子の表面に付着した絶縁性液体中の酸化防止剤を熱分解させ、不飽和脂肪酸成分を効果的に硬化(酸化重合反応)させることができ、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を十分に優れたものとすることができる。
【0047】
酸化防止剤の熱分解温度は、具体的には、200℃以下であるのが好ましく、180℃以下であるのがより好ましい。これにより、酸化防止剤としての機能を十分に保持しつつ、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。
絶縁性液体中における前記酸化防止剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量部であるのが好ましく、0.1〜7重量部であるのがより好ましく、1〜7重量部であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等における不飽和脂肪酸成分の酸化による劣化をより確実に防止しつつ、必要時(定着時)においては不飽和脂肪酸成分の硬化(酸化重合反応)を効率良く進行させることができる。
【0048】
また、液体現像剤中には、上述した不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する酸化重合促進剤(硬化促進剤)が含まれていてもよい。これにより、必要時(定着時)において、不飽和脂肪酸成分を効果的に酸化重合(硬化)させることができる。その結果、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合、当該酸化重合促進剤は、特に限定されないが、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時(定着時)において不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものであるのが好ましい。これにより、液体現像剤の保存性(長期安定性)を優れたものとしつつ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0049】
このような酸化重合促進剤としては、例えば、加熱条件下で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有し、室温付近では実質的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)を促進する機能を有さない物質、すなわち、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応(硬化反応)における活性化エネルギーが比較的高い物質を用いることができる。
【0050】
このような物質(酸化重合促進剤)としては、例えば、各種の脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような物質(酸化重合促進剤)を用いることにより、保存時等における液体現像剤の安定性を保持しつつ、定着の際に効果的に不飽和脂肪酸成分の酸化重合を進行させることができる。特に、脂肪酸金属塩は、定着時に酸素を供給することにより、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を促進することができるため、定着時等の加熱時において酸化重合反応を効果的に促進することができる。したがって、保存時等においては酸化重合反応が生じるのをより確実に防止しつつ、定着時等において酸化重合反応をより効果的に促進することができる。また、脂肪酸金属塩は、前述したような不飽和脂肪酸成分および飽和脂肪酸成分を含む液体(特に、グリセリド)への分散性が高いから、絶縁性液体中において均一に分散させることができ、その結果、定着時において、酸化重合反応を全体的に効率良く進行させることができる。
【0051】
このような脂肪酸金属塩としては、例えば、樹脂酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩等)、オクチル酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩、カルシウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、亜鉛塩、カルシウム塩等)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、酸化重合促進剤は、カプセル化された状態で、絶縁性液体中に含まれるものであってもよい。これにより、上記と同様に、酸化重合促進剤を、保存時等(画像形成装置のアイドリング時等を含む)においては、実質的に、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与せず、必要時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合(硬化)反応に寄与するものとすることができる。すなわち、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応をより確実に防止するとともに、定着時においては、カプセルが定着時の圧力等によって潰れることにより、酸化重合促進剤と不飽和脂肪酸成分とが接触し、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応を確実に進行させることができる。また、このような構成であると、酸化重合促進剤の材料の選択の幅が広がる。言い換えると、反応性の高い酸化重合促進剤(比較的低温で不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応に寄与する酸化重合促進剤)であっても好適に用いることができ、記録媒体へのトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
【0053】
絶縁性液体中における酸化重合促進剤の含有量は、絶縁性液体100重量部に対して、0.01〜15重量であるのが好ましく、0.05〜7重量部であるのがより好ましく、0.1〜5重量部であるのがより好ましい。これにより、液体現像剤の保存時等における酸化重合反応を十分に防止しつつ、定着時において不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応をより確実に進行させることができる。
【0054】
本発明での絶縁性液体のヨウ素価は、100〜200であることが好ましく、100〜180であることがより好ましく、110〜170であることがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の記録媒体への定着を優れたものとしつつ、目的とする色調の画像を容易に得ることができる。これに対し、絶縁性液体のヨウ素価が前記下限値未満だと不飽和脂肪酸の酸化重合反応起きにくいため、トナー粒子の記録媒体への定着強度が劣る場合がある。一方、絶縁性液体のヨウ素価が前記上限値を超えると多量の不飽和脂肪酸による酸化重合反応が必要以上に起こりトナー粒子の周囲で固化が起こるため、トナー粒子の記録媒体への定着時にトナー粒子同士の溶融ができず、目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。
【0055】
絶縁性液体の粘度は、特に限定されないが、5〜1000mPa・sであるのが好ましく、10〜800mPa・sであるのがより好ましく、100〜500mPa・sであるのがさらに好ましい。絶縁性液体の粘度が前記範囲内の値であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、トナー画像の現像性、転写性を特に優れたものにできる。また、記録媒体上にあるトナー粒子に適度の絶縁性液体が付着しているので、形成したトナー画像の定着強度を特に優れたものにできるとともに、可塑剤効果によりトナー粒子同士が溶融し、目的とする色調の画像を非常に容易に得ることができる。加えて、トナー粒子の凝集、沈降を防止でき、分散性をより高いものとすることができる。このため、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができ、また、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等をより効果的に防止することができる。
【0056】
これに対し、絶縁性液体の粘度が前記下限値未満であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、トナー粒子に付着する絶縁性液体が少量となり、トナー画像の転写性、現像性を優れたものにできない場合がある。また、記録媒体上にあるトナー粒子に付着している絶縁性液体が少量であるため、定着時に絶縁性液体の酸化重合反応が十分に起きず、十分な定着強度を得られにくくなる。加えて、後述するような画像形成装置において、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等の問題が起こる可能性がある。
【0057】
一方、絶縁性液体の粘度が前記上限値を超えると、多量の絶縁性液体が記録媒体上にトナー粒子に付着し、定着時にトナー粒子同士の溶融が起きず目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。また、トナー粒子の分散性を十分高くできず、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができない場合がある。ただし、本明細書における粘度とは25℃において測定した値を指すものとする。
上述したような絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は、1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0058】
<トナー粒子>
次にトナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
【0059】
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
この中でも、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂は化学構造の類似から、脂肪酸モノエステルおよび不飽和脂肪酸グリセリドとの親和性が非常に高い。このため、ポリエステル樹脂を用いた場合、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、脂肪酸モノエステルが付着した場合の可塑剤効果が高いため、定着時において可塑化したトナー粒子が記録媒体に浸透しやすく、トナー粒子同士が溶融しやすくなる。結果として、ポリエステル樹脂を樹脂として用いた場合、液体現像剤の保存性を特に優れたものにし、形成して得られた画像の定着強度を特に優れたものにすることができるとともに、目的とする画像の色調を得ることが特に容易になる。
【0061】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましく、60〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0062】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、トナー粒子の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
【0065】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成された本発明でのトナー粒子の平均粒径は、0.7〜3μmである。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとしつつ、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとできる。
【0066】
これに対し、トナー粒子の平均粒径が前記下限値未満であると、各トナー粒子間での特性のばらつきが大きくなり、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとできなくなる結果、優れた現像性、転写性が得られない。また、保存時にトナー粒子の凝集が起こる可能性があり、液体現像剤の保存性を十分なものとできない。一方、トナー粒子の平均粒径が前記上限値を超えると形成されるトナー画像の解像度を十分に高くできない。また、液体現像剤の保存時において、沈降が起こりやすくなり、液体現像剤の保存性を十分なものとできない。
前記トナー粒子の平均粒径は0.8〜2.5μmであるのが好ましく、0.8〜2μmであるのがより好ましく顕著な効果を得ることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0067】
また、本発明において下記式(I)で表されるトナー粒子の粒度分布の幅Sは1.4以下である。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合において累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
【0068】
トナー粒子の粒度分布が上記上限値よりも小さいと、各トナー粒子間での粒径のばらつきが少なくなり、現像容器から塗布ローラ等に液体現像剤をくみ出した場合においてトナー粒子間の隙間が大きくなるため、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、効率的な転写、現像が可能となる。また、定着時においてトナー粒子間に適度の絶縁性液体が存在していることによって、優れた定着強度を得ることができる。加えて、各トナー粒子間での粒径のばらつきが少ないため、定着時に圧力および熱がトナー粒子に対して均一にかかりやすくなり、トナー粒子が均一に溶融することによって目的とする色調の画像を得ることができる。さらにトナー粒子が均一に溶融することで、トナー画像の平滑性が優れたものとなり、結果としてトナー画像の光沢が高いものとなる。
【0069】
トナー粒子の粒度分布の幅Sが上記上限値より大きいと各トナー粒子間での粒径のばらつきが大きくなり、現像容器から塗布ローラ等に液体現像剤をくみ出した場合においてトナー粒子間の隙間が小さくなるため、トナー粒子に付着する絶縁性液体の量が足りず、効率的な転写、現像が困難になる。また、定着時に圧力および熱がトナー粒子に対して均一にかからず、トナー粒子が均一に溶融できないため、目的とする色調の画像を得ることができない。さらにトナー画像の平滑性が悪くなり、結果としてトナー画像の光沢が低いものとなる。
前記トナー粒子の粒度分布の幅Sは1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、顕著な効果を得ることができる。
【0070】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(II)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.92〜0.99であるのがさらに好ましい。
R=L/L・・・(II)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
【0071】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での平均円形度の標準偏差は、0.15以下であるのが好ましく、0.001〜0.10であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着強度等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
また、本発明の液体現像剤に適用されるトナー粒子としては、その表面に微小の凹凸を有するものを用いるのが好ましい。このように微小の凹凸を有することにより、より多くの絶縁性液体を粒子表面に保持することができる。この結果として、保存時には前記トナー粒子の絶縁性液体への分散を容易にし、前記トナー粒子を含む液体現像剤の保存性を特に優れたものにできる。また、トナー粒子に微小の凹凸があると、トナー粒子の体積あたりの表面積が大きく、トナー粒子表面が絶縁性液体に接する面積が大きい。このため、定着時に絶縁性液体が可塑剤としてより効果的に作用し、トナー粒子が特に容易に可塑化する。加えて、トナー粒子が微小の凹凸を有することで、記録媒体上にてトナー粒子同士の接触面積が増え、定着時にトナー粒子同士が溶融しやすくなる。結果として、形成された画像の定着強度を特に優れたものにできる。また、特に高い光沢を得ることでき、目的とする色調の画像を特に容易に得ることが可能になる。このような効果は前述した脂肪酸モノエステルがトナー粒子の表面付近に偏在(付着)している場合にはより顕著に現れる。
【0072】
本発明で用いるトナー粒子は、前記粒径と粒度分布を満たすものであれば特に限定されず、例えば樹脂と着色材料を含む微粒子を凝集させてなる粒子、樹脂と着色材料を含む微粒子を会合させてなる粒子(以下、会合粒子という。)、モノマー成分を絶縁体性中で重合させることにより絶縁性液体に不溶な樹脂微粒子を形成する重合法等で得られる球状の粒子、樹脂と着色材料を含む水乳化液を噴霧乾燥させて得られる粒子、およびそれらを絶縁体性液体中で粉砕または解砕させて得られる粒子、粉砕法にて得られる粒子等を用いることができる。
このなかでも会合粒子を絶縁性液体中で解砕して得られる粒子(以下、会合解砕粒子という。)は容易に前記粒径と粒度分布を満たすことができるため好ましい。また、会合解砕粒子は会合によって粒子表面に微小の凹凸を有しており、上述の効果を容易に得ることができる。
【0073】
≪液体現像剤の製造方法≫
液体現像剤の製造方法の一例として、会合解砕粒子を用いた場合について説明する。説明する製造方法は主として、樹脂材料で構成された樹脂微粒子を会合させ、会合粒子を得る会合粒子形成工程と、絶縁性液体中において会合粒子を解砕してトナー粒子を得る工程とを有する。
【0074】
<会合粒子の調製>
まず、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子が会合した会合粒子の調製方法の一例について説明する。
会合粒子の調製は、いかなる方法を用いるものであってもよいが、本実施形態では、水系液体で構成された水系分散媒中に、主として樹脂材料(トナー構成材料)で構成された分散質(微粒子)が分散した水系乳化液を得、当該水系乳化液中の分散質を会合させることにより、会合粒子を得る。
【0075】
[水系乳化液]
本実施形態で用いる水系乳化液について説明する。
後述する水系乳化液調製工程で得られる水系乳化液は、水系液体で構成された水系分散媒中に、分散質(微粒子)が微分散した構成となっている。
(水系分散媒(水系液体))
水系分散媒は、水系液体で構成されている。
【0076】
本発明において、「水系液体」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系液体は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有率が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。このようなものを用いることにより、例えば、水系分散媒中における分散質の分散性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0077】
また、水系分散媒(水系液体)は、後述する高絶縁性液体との相溶性が低いもの(例えば、25℃における高絶縁性液体100gに対する溶解度が0.01g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、後述する混合液調製工程で得られる混合液中において、分散質の形状を好適に保持することができ、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子の形状をより均一なものとすることができる。
【0078】
水系液体の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0079】
(分散質(微粒子))
分散質は、液体現像剤中のトナー粒子を構成する成分を含むものであり、少なくとも、主成分としての樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む材料で構成されている。樹脂の前駆体としては、例えば、当該樹脂のモノマー、ダイマー、オリゴマー、プレポリマー等が挙げられる。
【0080】
以下、分散質の構成材料について説明する。
1.樹脂(樹脂材料)
分散質は、主成分としての樹脂を含む材料で構成されている。
樹脂は、特に限定されず、前述のトナー粒子を構成する樹脂およびその前駆体を用いることができる。なお、前述した樹脂には、必要に応じて硬化剤等が含まれていてもよい。
【0081】
2.溶媒
分散質中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、水系乳化液中における分散質の流動性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0082】
溶媒としては、分散質を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、前述した水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。これにより、溶媒を容易に除去することができる。
また、溶媒は、前述した水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、分散質を安定した状態で微分散させることができる。
【0083】
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
例えば、溶媒としては、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0084】
また、分散質中には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
水系乳化液中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜15wt%であるのが好ましく、0.3〜10wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着強度や帯電特性が低下する可能性がある。
【0085】
また、分散質中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
水系乳化液中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子からワックスが遊離し、粗大化して、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
【0086】
ワックスの軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましい。
また、水系乳化液中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。この中でも、乳化分散剤を用いた場合、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさの揃ったトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、乳化剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。
【0087】
分散剤としては、例えば、粘土鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシステアリン酸エステル等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。この中でも、非イオン性有機分散剤またはアニオン性有機分散剤が特に好ましい。
【0088】
水系乳化液中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
また、分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。水系乳化液が分散剤を含むものである場合、水系乳化液中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0089】
前記帯電制御剤および前記磁性粉末としては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
また、水系乳化液中には、分散質以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、水系乳化液中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0090】
以上説明したような本発明に用いる水系乳化液においては、分散質が液状であるため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中の分散質(液状の分散質)の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.1〜2μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。
【0091】
[水系乳化液調製工程]
上述したような水系乳化液は、例えば、以下のようにして調製することができる(水系乳化液調製工程)。
まず、前述した水系液体に、必要に応じて分散剤を添加した水性溶液を用意する。
一方、前述したようなトナーの主成分となる樹脂またはその前駆体(樹脂材料)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。また、樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料、着色剤等のトナー用材料を混練して得られた混練物を用いてもよい。このような混練物を用いることにより、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、前述したような溶媒に対する分散性が比較的低い顔料(着色剤)を用いた場合、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、前述した水系乳化液の水系分散媒に対する分散性に劣る成分や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0092】
次に、上記樹脂液を、撹拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水系分散媒中に、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。このような方法で、水系乳化液を調製することにより、水系乳化液中における分散質の円形度をさらに高めることができる。その結果、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱しておいてもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた水系乳化液を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
また、上記の操作の代わりに、攪拌した状態の樹脂液中に水溶性溶液を徐々に滴下しながら加えていってもよい。水溶性溶液を加えられることで、樹脂液が転相乳化し、上記の操作で得られる水系乳化液と同様の、水系分散媒中に、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。
【0093】
[会合粒子形成工程]
次に、上記のようにして得られた水系乳化液に、電解質を添加し、分散質を会合させ、会合粒子を形成する(会合粒子形成工程)。
添加する電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウム等の1価のカチオンの硫酸塩は、均一な会合を進める上で好適に用いることができる。
【0094】
なお、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤や、イオン性、非イオン性界面活性剤を分散安定剤として添加してもよい。分散安定剤(乳化剤)の存在下で電解質を添加することにより、不均一な会合を防止することができる。
このような分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、各種プルロニック系等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。中でも、アニオン性、非イオン性の界面活性剤は、少量の添加量であっても分散安定性に効果があり、好適に用いることができる。非イオン性界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。
【0095】
添加する電解質の量は、水系乳化液中の固形分100重量部に対し、0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜12重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。電解質の添加量が前記下限値未満であると、分散質の会合が十分に進行しない場合がある。また、電解質の添加量が前記上限値を超えると、分散質の会合が不均一となり、粗大粒子が発生する可能性があり、最終的に得られるトナー粒子の大きさにばらつきが生じる可能性がある。
【0096】
そして、会合させた後、濾過・乾燥を行うことにより、会合粒子を得る。
得られる会合粒子の平均粒径は、1〜10μmであるのが好ましく、1〜7μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。また、会合粒子の平均粒径がこのような範囲のものであると、乾燥の際に、乾燥が容易であるとともに、乾燥の際に、会合粒子が凝集し、粒子が粗大化するのを防止することができる。
【0097】
<解砕工程>
次に、上記のようにして得られた会合粒子を、液体現像剤を構成する絶縁性液体中で解砕する(解砕工程)。これにより、絶縁性液体中に十分に小さい大きさのトナー粒子が安定して分散し、トナー粒子の粒度分布の幅が十分に狭い液体現像剤を提供することができる。
【0098】
より詳しく説明すると、解砕して比較的小さいトナー粒子とした場合であっても、絶縁性液体中で解砕しているので、凝集等によって粗大化したトナー粒子が発生するのを防止することができる。また、微粒子(分散質)に由来するトナー粒子の表面の凹凸に絶縁性液体を保持することができ、その結果、トナー粒子の分散性を高いものとすることができる。
【0099】
また、会合粒子を解砕することによりトナー粒子を得るので、従来の粉砕法や湿式粉砕法と比較して、微粉(目的の大きさの粒子よりも極端に小さい粒子)の発生を効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤の帯電特性等の特性の低下を効果的に防止することができる。
なお、比較的小さい会合粒子を調製して、該会合粒子を解砕せずにトナー粒子として絶縁性液体に分散し、液体現像剤とすることも考えられるが、この場合、会合粒子を乾燥させる際に、粒子が小さいため、凝集等を起こしやすく、トナー粒子の大きさにばらつきが生じてしまう。
【0100】
また、絶縁性液体の一部を用いて解砕する場合、解砕した後に、解砕に用いた液体と同じ液体を絶縁性液体として添加するものであってもよいし、また、解砕した後に、解砕に用いた液体とは異なる液体を絶縁性液体として添加するものであってもよい。後者の場合、最終的に得られる液体現像剤の粘度等の特性を容易に調整することができる。
また、絶縁性液体の一部を用いて解砕する場合、脂肪酸モノエステルを含む液体で会合粒子を解砕するのが好ましい。脂肪酸モノエステルは比較的粘度が低く、樹脂との親和性に優れるため、会合粒子を構成する微粒子(分散質)の間に侵入しやすく、好適に会合粒子を解砕することができる。また、脂肪酸モノエステルは樹脂との親和性が高いため会合解砕粒子の分散性に優れており、解砕中あるいは解砕後において、凝集等によって粗大化したトナー粒子が発生するのを防止することができる。加えて、解砕によって会合粒子に大きな剪断力をかけることにより、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子は、その表面付近に脂肪酸モノエステルを偏在(吸着)させることができる。
【0101】
以上、本発明の液体現像剤の実施形態としてトナー粒子に会合解砕粒子を用いた場合について説明したが、樹脂と着色材料を含んだ分散質の分散液を吐出させ、吐出液を乾燥させて粒子を得る方法でトナー粒子を製造してもよい。この方法では、分散液中には製造されるトナー粒子よりも微小な分散質を分散させることができる。したがって、各分散質の大きさおよび特性にばらつきがあったとしても分散液を吐出、乾燥させたときに、複数の分散質を結合させることができ、大きさおよび特性のばらつきの少ないトナー粒子を得ることができる。また、圧電パルス等で吐出する分散液量を調節することにより、吐出する液滴の大きさを調節することができ、容易に大きさ、形状の均一なトナー粒子を得ることができる。トナー粒子の形状は凹凸のある微粒子の結合体としても得ることができるし、また微粒子の結合体に熱処理等を施して凹凸のない球状の形状としても得ることもできる。この分散液を吐出する方法を用いた場合、得られる液体現像剤は粒度分布の幅が狭く、粒子同士のばらつきが少ないため、現像性、転写性を優れたものにできる。
【0102】
≪画像形成方法および画像形成装置≫
次に、上述したような液体現像剤を用いる本発明の画像形成方法および画像形成装置の好適な実施形態について説明する。本発明の画像形成装置は上述したような液体現像剤を用いるものであり、トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることによりトナー粒子を記録媒体に定着させる機構を有する。
【0103】
<第1実施形態>
まず、本発明の画像形成装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示すものであり、図2は図1に示す画像形成装置が有する定着装置の断面を示す図である。なお、図1では定着装置を省略して画像形成装置を図示した。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
【0104】
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0105】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0106】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から情報記録媒体P20へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
【0107】
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の情報記録媒体P20に画像が転写され、紙等の情報記録媒体P20上でのトナー画像は図2に示す定着装置使用して定着が行われる。なお、一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
【0108】
図2は本発明の画像形成装置が有する定着装置の断面図である。
図2に示すように、定着装置F40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールとも言う)F1、加圧ロールF2、耐熱ベルトF3、ベルト張架部材F4、およびクリーニング部材F6を備えている。
熱定着ロールF1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体F1cを被覆して形成され、ロール基材F1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプF1aが内蔵されており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロールF2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F2bとして、その外周に厚み0. 2mm程度の弾性体F2cを被覆して形成し、熱定着ロールF1と加圧ロールF2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロールF1に対向して配置し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0109】
このように、熱定着ロールF1および加圧ロールF2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材F5が熱定着ロールF1または耐熱ベルトF3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロールF1の弾性体F1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロールF1の周速に対して耐熱ベルトF3またはシート材F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0110】
また、熱定着ロールF1の内部に、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0111】
耐熱ベルトF3は、加圧ロールF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルトF3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材F5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロールF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0112】
ベルト張架部材F4は、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との定着ニップ部よりもシート材F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロールF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材F4は、シート材F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架するように構成されている。シート材F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材F5の進入がスムーズに行われるシート材F5の導入口部が形成でき、安定したシート材F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0113】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ロールF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1と加圧ロールF2との押圧部接線Lより熱定着ロールF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ロールF1と反対側の端部とフレームF7との間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ロールF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接して位置決めされる。
【0114】
耐熱ベルトF3を加圧ロールF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ロールF2で安定して駆動するには、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0115】
そこで、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロールF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ロールF2で安定して駆動することができるようになる。
【0116】
更に、クリーニング部材F6が加圧ロールF2とベルト張架部材F4との間に配置されており、このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、この凹部F4fは、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0117】
ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロールF1に加圧ロールF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材F5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ロールF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材F5上に形成された未定着トナー像F5aが定着され、その後、熱定着ロールF1への加圧ロールF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0118】
未定着トナー画像を定着する際の定着温度は、100〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。このような定着温度であると、酸化防止剤として前述したようなものが含まれる場合には、酸化防止剤の分解が容易となり、トナー粒子の定着強度をより効果的に向上させることができる。また、このような定着温度が前記範囲内の値であると、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応をより効果的に進行させることができる。このような傾向は、液体現像剤中に酸化重合促進剤が含まれる場合において、より顕著に発揮される。
【0119】
また、紫外線照射手段F8のように、上記のようにして排出されたシート材F5のトナー画像が形成されている面に対して、紫外線を照射する装置を設置することが好ましい。
記録媒体上の未定着のトナー画像を熱定着ローラで加熱し、その後紫外線照射することにより、記録媒体に染み込んだ不飽和脂肪酸成分が確実に酸化重合して、定着に寄与することができる。これにより、染み込んだ絶縁性液体中の不飽和脂肪酸成分を熱と紫外線照射により固化させて、アンカー効果を起こし、トナー粒子を記録媒体上に強固に定着させることができる。加えて、不飽和脂肪酸成分の酸化重合を利用することにより、熱定着ローラによって特に高い温度に加熱しなくても、トナー粒子を記録媒体上に強固に定着させることができる。さらに、定着に大きな熱量を必要としないため、前述した定着ニップ部を通過する時間を比較的短いものとしても、紫外線照射によって十分にトナー粒子を記録媒体上に定着させることができる。すなわち、定着に時間がかからないため、印刷速度のさらなる高速化を図ることができる。また、定着に大きい熱量を必要としないため、省エネルギー化も図ることができ、環境に優しいトナー定着を行える。
【0120】
<第2実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
図3は、本発明の非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
【0121】
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図1を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
上述のような方法、装置を用いて画像形成を行った場合、未定着トナー画像を定着する際に熱あるいは紫外線等のエネルギーを未定着トナー画像に加えることにより、トナー粒子表面に付着した不飽和脂肪酸グリセリドの酸化重合反応が起こり、トナー間の絶縁性液体の固化反応が起こる結果、定着強度が特に優れ、画像解像度が特に優れたトナー画像が得られる。
【0122】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置、定着装置に適用されるものに限定されない。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような製造方法により製造されたものに限定されない。
【0123】
また、前述した実施形態では、水系乳化液を得、該水系乳化液に電解質を添加することにより会合粒子を得るものとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、会合粒子は、水系液体に、着色剤とモノマーと界面活性剤と重合開始剤とを分散させ、乳化重合により、水系乳化液を調製し、該水系乳化液に電解質を添加して会合させる乳化重合会合法を用いて調製されたものであってもよい。
【実施例】
【0124】
[1] 液体現像剤の製造
(実施例1)
<絶縁性液体を構成する液体の調製>
絶縁性液体として用いる、主として不飽和脂肪酸グリセリドを含む液体および主として不飽和脂肪酸メチルエステルを含む液体を以下のようにして調製した。
【0125】
まず、粗大豆油を以下のようにして精製し、精製した大豆油を得た。
はじめに、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により粗大豆油を粗精製した。
次に、粗精製した粗大豆油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0126】
次に、フラスコを振り、上記の粗大豆油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
【0127】
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
【0128】
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、精製した大豆油(以下、単に大豆油という。)を得た。なお、大豆油には主にリノール酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、大豆油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうち53mol%であった。
【0129】
次に、この大豆油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の大豆油脂肪酸メチルエステルを得た。このようにして得られた脂肪酸モノエステルは、主にオレイン酸メチル、リノール酸メチル、α−リノレン酸メチル等の不飽和脂肪酸モノエステルと、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル等の飽和脂肪酸モノエステルとを主として構成されたものており、不飽和脂肪酸脂肪酸モノエステルはこのうち84%であった。
【0130】
<着色剤マスター溶液の調製>
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:125℃、ガラス転移点:60.5℃、酸価:7.7)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0131】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0132】
<樹脂液の調製>
上記着色剤マスター溶液:133重量部にメチルエチルケトン:140重量部および前記ポリエステル樹脂:60重量部を加えて、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0133】
<水系乳化液の調製>
マックスブレンド攪拌翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに上述の樹脂液を500重量部、メチルエチルケトンを45.5重量部入れ、樹脂液の固形分含有量を55%とした。
次いでフラスコ内の樹脂液に1規定アンモニア水:41.7重量部(前記ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の総量に対するモル当量比は1.1)を加えて、スリーワンモーター(新東科学社製)により、攪拌羽の回転数を210rpm(攪拌翼の周速:0.71m/s)として十分に攪拌し、その後攪拌を維持しながら、脱イオン水:133重量部を加えた。フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して133重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こし、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液を得た。
【0134】
<会合による会合粒子の製造>
次に、フラスコ内の攪拌を継続しつつ、水系乳化液に1規定アンモニア水と水との総量が593重量部となるように脱イオン水:285重量部を加えた。次いで、水系乳化液に対して、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製):2.6重量部を脱イオン水:30重量部に希釈して添加した。
【0135】
その後、水系乳化液の温度を25℃に保ちつつ、攪拌の回転数を150rpm(攪拌翼の周速:0.54m/s)として、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の会合体の粒径を3.5μmとした。滴下後、分散質の会合体の粒径が5.0μmに成長するまで攪拌を続け会合操作を終了した。
得られた会合体分散液に対して、減圧下で有機溶剤を留去することにより乾燥し、会合粒子を得た。
なお、各実施例、比較例でのそれぞれの粒子の平均粒径は体積基準平均粒径であり、これらの粒子の平均粒径および粒度分布はMastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0136】
<液体現像剤の調製>
上記の方法で得られた会合粒子:40g、大豆油脂肪酸メチルエステル:60g、大豆油:100g、ポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1g及びステアリン酸アルミニウム(日本油脂製):0.5gをセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:3mm)を体積充填率30%になるようにセラミック製ポットに入れた。卓上ポットミルにて回転速度220rpmで200時間解砕を行い、ポット内の分散液をジルコニアボールと分離して取り出し液体現像剤を得た。
【0137】
(実施例2)
粗菜種油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製した菜種油(以下、単に菜種油という。)を得た。なお、菜種油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、菜種油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、52mol%、24mol%であった。
【0138】
次に、この菜種油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の菜種油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、菜種油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、菜種油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0139】
(実施例3)
粗ヒマシ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したヒマシ油(以下、単にヒマシ油という。)を得た。なお、ヒマシ油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、ヒマシ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、92mol%、3mol%であった。
【0140】
次に、このヒマシ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のヒマシ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、ヒマシ油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0141】
(実施例4)
卓上ポットミルでの解砕時間を80時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例5)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を240時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0142】
(実施例6)
粗アマニ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したアマニ油(以下、単にアマニ油という。)を得た。なお、アマニ油には主にα−リノレン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、アマニ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、α−リノレン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、18mol%、15mol%であった。
【0143】
次に、このアマニ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のアマニ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:80gと大豆油:20gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例7)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0144】
(実施例8)
粗ヤシ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したヤシ油(以下、単にヤシ油という。)を得た。なお、ヤシ油には主にラウリン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれていた。また、ラウリン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、47mol%、1mol%であった。
【0145】
次に、このヤシ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のヤシ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、ヤシ油脂肪酸メチルエステル:60gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0146】
(実施例9)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:96g、大豆油:64gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例10)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:6.5g、大豆油:50g、流動パラフィン:103.5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0147】
(実施例11)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:23g、大豆油:137gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例12)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:50g、大豆油:30g、流動パラフィン:80gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0148】
(実施例13)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:120g、大豆油:40gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例14)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:15g、大豆油:130g、流動パラフィン:15gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0149】
(実施例15)
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に多数の−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃、軟化温度:123℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0150】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0151】
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
この水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整しながら攪拌した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が0.2μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
【0152】
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は30.5wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は0.15μmであった。
【0153】
上記のようにして得られた懸濁液を吐出口から圧電パルスで吐出量を調節しながら吐出し、液滴の分散媒を除去した後に、引き続き熱処理を行うことで、凹凸のなく球状で、粒子径のばらつきのないトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子:40gと、絶縁性液体としての大豆油脂肪酸メチルエステル:60gおよび大豆油:100gと、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1gと、帯電制御剤としてのステアリン酸マグネシウム:0.5gとを用意した。
これらの成分を乳化分散機(エム・テクニック社製)を用いて回転数10000rpmで液温が樹脂のガラス転移温度以上にならないよう注意しながら分散させた。
なお、得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.03μmであった。
(実施例16)
トナー樹脂としてポリエステル樹脂の代わりにエポキシ樹脂(軟化温度:80.5℃、ガラス転移点:55℃、酸価:12)とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0154】
(比較例1)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油の代わりに、流動パラフィン:160gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例2)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:160gを用い、大豆油を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0155】
(比較例3)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルを用いず、大豆油の量を160gとした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例4)
卓上ポットミルでの解砕時間を40時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0156】
(比較例5)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を300時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例6)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:5mmのジルコニアボールを用いて解砕した以外は前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件および物性を表1に示した。なお、表中、不飽和脂肪酸の種類の項目においてオレイン酸をOL、リノール酸をLN、α−リノレン酸をLLと示す。
【0157】
【表1】

【0158】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤を用いて形成したトナー画像について定着強度、転写効率、現像効率および解像力の評価を行った。
[2.1]定着強度
図1に示すような画像形成装置から定着装置を取り外して、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、記録紙上に形成された画像について、オーブンによる熱定着を行った。この熱定着は、110℃×20分間という条件で行った。
【0159】
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:画像濃度残存率が95%以上。
◎ :画像濃度残存率が90%以上95%未満。
○ :画像濃度残存率が80%以上90%未満。
△ :画像濃度残存率が70%以上80%未満。
× :画像濃度残存率が70%未満。
【0160】
[2.2]転写効率
図1に示すような画像形成装置から、二次転写ローラP19および図2のような定着装置を取り外し、中間転写ローラP18に画像形成を行った。感光体P2上の残存トナーおよび中間転写ローラP18上に付着したトナーをそれぞれメンディングテープにより採取した。各メンディングテープ上のトナー画像の画像濃度をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、下記式より転写効率を求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0161】
転写効率(%)=D/(C+D)×100
(C:感光体P2上の残存トナーを採取したメンディングテープ上にあるトナー画像の画像濃度。D:中間転写ローラP18上のトナーを採取したメンディングテープ上にあるトナー画像の画像濃度。)
◎ :転写効率が95%以上。
○ :転写効率が85%以上95%未満。
△ :転写効率が75%以上85%未満。
× :転写効率が75%未満。
【0162】
[2.3]現像効率
図1に示すような画像形成装置から、中間転写ローラP18、二次転写ローラP19および図2のような定着装置を取り外し、感光体P2に現像を行った。感光体P2上の残存トナーおよび現像ローラP13上に付着したトナーをそれぞれメンディングテープにより採取した。各メンディングテープ上のトナー画像の画像濃度をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、下記式より現像効率を求め、以下の4段階の基準に従い評価した。
【0163】
現像効率(%)=F/(E+F)×100
(E:現像ローラP13の残存トナーを採取したメンディングテープ上にあるトナー画像の画像濃度。F:感光体P2上のトナーを採取したメンディングテープ上にあるトナー画像の画像濃度。)
◎◎:現像効率が98%以上。
◎ :現像効率が95%以上98%未満。
○ :現像効率が90%以上95%未満。
△ :現像効率が80%以上90%未満。
× :現像効率が80%未満。
【0164】
[2.4]解像力
図1に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙上に形成し、目視にて解像力を調べた。
[2.5]光沢度
図1に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙上に形成し、鏡面光沢度をJIS規格による測定法(JIS Z 8741−1997)に従い測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎◎:光沢度が55%以上。
◎ :光沢度が50%以上55%未満。
○ :光沢度が45%以上50%未満。
△ :光沢度が40%以上45%未満。
× :光沢度が40%未満。
【0165】
[2.6]保存性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜25℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
◎◎:トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
◎ :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
○ :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤とし
て問題の無い範囲である。
△ :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
× :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
【0166】
[2.7]高速印刷適性
各実施例および各比較例で得られた液体現像剤を用いて、画像形成装置の定着温度を160℃、定着ロールのニップ時間を0.06秒に設定して紫外線照射手段F8にて紫外線照射を行わずに、画像形成を行い、得られた画像についてムラ、にじみ等の画質等の不良を以下の4段階の基準に従い評価した。(条件1)
◎ :ムラ、にじみ等の画質等に不良はまったく認められない。
○ :ムラ、にじみ等の画質等に不良はわずかに認められる。
△ :ムラ、にじみ等の画質等に不良ははっきりと認められる。
× :ムラ、にじみ等の画質等に不良は顕著に認められる。
また、各実施例および各比較例で得られた液体現像剤を用いて、画像形成装置の定着温度を140℃、定着ロールのニップ時間を0.03秒に設定して紫外線照射手段F8にて紫外線照射を行いながら画像形成を行い、上記と同様にして得られた画像について画質の不良を評価した。(条件2)
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0167】
【表2】

【0168】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、トナー画像の転写効率、現像効率に優れており、なおかつ、形成した画像の解像力、光沢度および定着強度、また液体現像剤の保存性に優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
また、各実施例では紫外線照射手段にて紫外線を照射した場合には、短時間かつ低温での定着にて良好な画像品質が得られたのに対し、比較例では良好な画像品質が得られなかった。
さらに、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】本発明の接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置が有する定着装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0170】
P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P20…情報記録媒体 P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ロール(加熱ロール) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ロール F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…シート材 F5a…未定着トナー像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F8…紫外線照射手段 F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤であって、
前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、
下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、
前記絶縁性液体が、一価のアルコールと脂肪酸とがエステル結合した脂肪酸モノエステルおよび不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする液体現像剤。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合において累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
【請求項2】
前記絶縁性液体の粘度は、5〜1000mPa・sである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記絶縁性液体のヨウ素価は、100〜200である請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸のグリセリドは、構成する不飽和脂肪酸成分としてリノール酸を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項5】
前記絶縁性液体における脂肪酸モノエステルの含有率が5〜55wt%である請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項6】
前記絶縁性液体中における前記不飽和脂肪酸のグリセリドの含有率をA[wt%]、前記絶縁性液体中における前記脂肪酸モノエステルの含有率をB[wt%]としたとき、0.6≦A/B≦8.0の関係を満足する請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項7】
前記脂肪酸モノエステルは、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項8】
前記トナー粒子の表面付近には前記脂肪酸モノエステルが偏在している請求項1ないし7のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項9】
前記トナー粒子を構成する樹脂材料は、ポリエステル樹脂である請求項1ないし8のいずれかに記載の液体現像剤。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体現像剤を得る方法であって、
主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
前記絶縁性液体の一部を用いて、前記会合粒子を解砕し、前記トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、前記不飽和脂肪酸のグリセリドを含む液体に分散させる分散工程とを有することを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項11】
トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることにより前記トナー粒子を前記記録媒体に定着させる画像形成方法において、請求項1ないし9のいずれかに記載の液体現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
前記記録媒体への前記トナー粒子の定着時にトナー画像に対して紫外線を照射する請求項11に記載の画像形成方法。
【請求項13】
トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることにより前記トナー粒子を前記記録媒体に定着させる画像形成装置において、請求項1ないし9のいずれかに記載の液体現像剤を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記記録媒体への前記トナー粒子の定着時にトナー画像に対して紫外線を照射する紫外線照射手段を有する請求項13に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−20861(P2008−20861A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194911(P2006−194911)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】