説明

液体用濃度測定装置

【課題】液体の濃度を測定するにあたり、検知電極の間に生じるリーク抵抗の影響を排除可能な液体用濃度測定装置を提供する。
【解決手段】第1発振部20および第2発振部25を備える構成とし、2つの異なる周波数f1、f2のパルス波でスイッチsw1、sw2を切り換える。一方のスイッチsw1がオンとなり他方のスイッチsw2がオフとなった場合、検知電極41は充電される。反対に、一方のスイッチsw1がオフとなり他方のスイッチsw2がオンとなった場合、充電されていた検知電極41は、放電する。このような充放電によって得られるオペアンプ43の出力電圧V(f1)、V(f2)の差を取る。しかも、同一の論理回路を用いて、各スイッチsw1、sw2を排他的に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール濃度などを測定する液体用濃度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料として、低公害なアルコール混合ガソリンが注目されている。このような混合ガソリンは、ガソリンのみの場合と比べ、最適な空燃比が異なっている。そのため、混合ガソリンが最適な空燃比となるように制御するため、混合ガソリン中のアルコールの含有量、すなわちアルコール濃度を測定することが重要となってくる。
【0003】
アルコール濃度を精度よく測定するためには、変化比率の比較的高い物理定数を用いることが望ましい。そのため、従来、比誘電率の変化を検出する方法が開示されている。例えば、比誘電率は静電容量の変化から求められるため、一対の電極を対向配置して静電容量を測定する液体用濃度計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここに開示される液体用濃度計は、制御回路により一定周期で切り換えられる切換スイッチを介して濃度センサの充放電を繰り返し、測定対象となる流体の濃度に比例した出力電圧を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一対の電極を対向配置して静電容量を求める場合、不純物が多いと、すなわちガソリンが粗悪であると、当該電極間の抵抗(以下「リーク抵抗」という)が比較的小さくなってしまうという問題がある。すなわち、不純物の含まれないガソリンであれば絶縁状態(リーク抵抗が無限大)となって電極間の導電率はほぼ「0」となるのであるが、不純物が多くなると、導電率が比較的大きくなってしまう。
【0006】
そのため、精度よくアルコール濃度を測定するためには、リーク抵抗の影響を排除する測定装置が必要になってくる。この点、上記特許文献1に記載の液体用濃度計では、リーク抵抗の影響を受けてしまい、アルコール濃度を精度よく測定することが困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、液体の濃度を測定するにあたり、検知電極の間に生じるリーク抵抗の影響を排除可能な液体用濃度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明では、スイッチ手段にて、検知電極の充電及び放電が切り換えられる。検知電極は、電極が対向して配置されてなる。スイッチ手段に対しては、動作信号出力手段によって、スイッチ手段の切り換えを第1の周期で行うための第1周波数の動作信号、及び、スイッチ手段の切り換えを第2の周期で行うための第2周波数の動作信号が出力される。これらの動作信号に基づき、スイッチ手段への切換信号を出力するのが論理回路である。測定値出力手段は、検知電極の静電容量に応じた電圧を測定値として出力可能であり、第1周波数による第1測定値及び第2周波数による第2測定値を出力可能である。
【0009】
リーク抵抗をRpとした場合、測定値としての電圧の計算式には、(1/Rp)を含む定数項が表れる。そのため、単一の周波数で測定した場合には、リーク抵抗Rpが小さくなると、その影響が比較的大きくなって、測定値がばらつくことになる。これに対し、本発明では、第1周波数による第1測定値および第2周波数による第2測定値を出力するため、これら2つの測定値の差分をとれば、(1/Rp)を含む定数項を消去することができ、リーク抵抗の影響を排除することができる。
【0010】
ところで、複数のスイッチ手段にて充放電を実現する場合、図9(a)に示すように、一方のスイッチsw1にはNOT回路35を介して切換信号を入力し、他方のスイッチsw2には切換信号を直接入力する構成が考えられる。
【0011】
しかしながら、この場合、NOT回路35からの反転信号の出力タイミングが遅延する虞がある。すなわち、スイッチsw1への切換信号が、スイッチsw2への切換信号と比べて遅延する虞がある。そして、NOT回路35からの反転信号の出力タイミングが遅延すると、スイッチsw1の切換タイミングが遅延し、結果として、排他的に制御されるべき2つのスイッチsw1、sw2が同時にON、あるいは、同時にOFFとなる期間が生じてしまう(図9(b)参照)。このような期間が生じると、上記第1及び第2測定値に測定誤差が発生し、測定精度が低下することになる。
【0012】
この点、本発明では、論理回路を、各スイッチ手段に対応させて配置される同一構成の回路とした。例えば、図2(a)及び(b)に示すように、EXOR回路33、34で構成するという具合である。このように各スイッチ手段に対応させて同一構成の論理回路を配置すれば、当該論理回路による遅延時間も同一となるため、各スイッチ手段の切換タイミングが相互にずれることがない。その結果、上記第1及び第2測定値に測定誤差が発生することを抑止でき、測定精度が低下することを抑制できる。
【0013】
なお、複数のスイッチ手段としたのは、例えばクロール接続などの構成で、合計4つのスイッチで構成されることが考えられるためである。この場合、所定の2つのスイッチと残りの2つのスイッチとが排他的に制御されるという具合である。
【0014】
請求項2によれば、増幅手段によって第1測定値および第2測定値が増幅されるため、測定値の差分を好適に取り出すことが可能となる。
請求項3によれば、基準電圧生成手段にて生成された基準電圧を基準として第1測定値および第2測定値が増幅されるため、測定可能範囲での測定値の増幅に寄与する。
【0015】
請求項4によれば、基準電圧生成手段にて生成される基準電圧に基づくAC結合が行われているため、測定値の変動が基準電圧を中心とするものとなり、測定可能範囲での測定値の増幅に寄与する。
なお、第1測定値および第2測定値を出力する構成とし、両測定値の差分は外部の演算手段にて演算することも考えられる。これに対し、請求項5に示すように、第1測定値と第2測定値との差分を測定結果として出力するようにしてもよい。また、AD変換などを行う構成としてもよい。
請求項6では、測定値出力手段が第1測定値および第2測定値を平滑化する平滑化手段を有している。このようにすれば、出力電圧がなまされるため、その後の測定値の処理が比較的簡単になる。
【0016】
ところで、上述したように第1測定値および第2測定値の差分をとることによりリーク抵抗の影響を排除することができるが、各測定値自体は、リーク抵抗の影響があると、比較的大きくなってしまう。測定値としての電圧の計算式には、(1/Rp)を含む定数項が表れるためである。したがって、リーク抵抗の影響が大きくなると、測定可能範囲を越えてしまい、測定不可となってしまうことが懸念される。
この点、請求項7によれば、検知電極のプラス側端子にカップリングコンデンサが接続されているため、検知電極に流れるリーク電流を半分にすることが可能となる。これによって、各測定値に現れるリーク抵抗の影響を半分にすることができる。その結果、測定可能範囲を越えてしまうことが抑制され、測定不可となってしまう事態を回避できる可能性が高くなる。また、カップリングコンデンサを接続することにより、検知電極の両方の電極に交互に電荷が溜まるため、電食(検知電極の電気分解)の抑制に寄与する。
【0017】
請求項8によれば、検知電極のマイナス側端子が直接接地されているため、静電気による影響を受けにくくなるという点で有利である。例えば、スイッチ手段を構成するスイッチが静電気によって損傷を受けることを抑制できる。また例えば、電磁波によってスイッチが誤作動したりすることを抑制できる。さらに、このようにすれば、スイッチ手段の構成が比較的簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態のアルコール濃度センサの構成を示す回路図である。
【図2】アルコール濃度センサの基本動作を説明するための回路図である。
【図3】検知電極およびリーク抵抗に発生する電流を示す説明図である。
【図4】出力電圧Vaを示す説明図である。
【図5】カップリングコンデンサを設けた場合の基本構成を示す回路図である。
【図6】カップリングコンデンサを設けた場合の検知電極およびリーク抵抗に発生する電流を示す回路図である。
【図7】カップリングコンデンサを設けた場合の出力電圧Vaを示す説明図である。
【図8】出力電圧の基準電圧を基準とする増幅を示す説明図である。
【図9】(a)は比較例の構成を示す回路図であり、(b)は切換信号の遅延を示す説明図である。
【図10】本実施形態における切換信号の出力タイミングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本形態のアルコール濃度センサは、車両に搭載して用いられる。車両燃料としての混合ガソリン中のエタノール濃度を測定するセンサである。
図1は、本形態のアルコール濃度センサ1の回路構成を示す回路図である。
アルコール濃度センサ1は、図1中の左端に示すバッテリ10を電源電圧Vcc(本形態では5V)とし、図1中の右端に示す端子11に測定結果を出力する。電源電圧Vccは、図1中左上の定電圧IC(三端子レギュレータ)12によって安定的に供給される。
【0020】
アルコール濃度センサ1は、破線で示す第1発振部20、第2発振部25、検知部40、基準電圧生成部50、AC結合部60、及び、増幅部70、さらには、マイコン80を備えている。
第1発振部20は、判定動作にヒステリシスを設けたシュミットトリガ21、シュミットトリガ21に並列に接続された抵抗器22、および、シュミットトリガ21の入力側と接地電位との間に接続されたコンデンサ23で構成されている。かかる構成により、第1発振部20は、周波数f1のパルス波(動作クロック)を出力する。同様に、第2発振部25は、シュミットトリガ26、抵抗器27、および、コンデンサ28で構成されている。かかる構成により、第2発振部25は、周波数f2のパルス波(動作クロック)を出力する。なお、本形態では、シュミットトリガ21、26を採用して回路構成しているが、同様の出力を得られるのであれば他の構成を採用してもよい。例えば、マイコン80を用いて、周波数f1及び周波数f2のパルス波を出力するようにしてもよい。
【0021】
ここで、第1発振部20および第2発振部25からの出力端子はそれぞれ、周波数切換スイッチ31、32に接続されている。これら2つの周波数切換スイッチ31、32は、交互にオンとなるように、マイコン80によって制御される。つまり、これら周波数切換スイッチ31、32がマイコン80によって制御されることにより、後述する回路が周波数f1または周波数f2のパルス波で動作することになる。
【0022】
第1発振部20および第2発振部25からのパルス波は、2つのスイッチsw1およびスイッチsw2を切り換える。ここで一方のスイッチsw1と周波数切換スイッチ31、32との間には、EXOR回路33が接続されている。また、他方のスイッチsw2と周波数切換スイッチ31、32の間には、EXOR回路34が接続されている。一方のスイッチsw1に対応するEXOR回路33には、電源電圧Vccが入力されるようになっており、他方のスイッチsw2に対応するEXOR回路34は、その入力端子が接地されている。かかる構成により、周波数切換スイッチ31がオンの状態では、第1発振部20によって出力される周波数f1のパルス波によって、スイッチsw1、sw2が互い違いにオン/オフを繰り返すことになる。同様に、周波数切換スイッチ32がオンの状態では、第2発振部25によって出力される周波数f2のパルス波によって、スイッチsw1、sw2が互い違いにオン/オフを繰り返すことになる。
【0023】
検知部40は、検知電極41を備えている。この検知電極41が車両の燃料経路に設置される。検知電極41は、対向して配置されることでいわゆるコンデンサを構成している。本形態では、検知電極41の静電容量を測定することにより、エタノール濃度を測定する。このとき、測定を阻害する要因として、リーク抵抗Rpが存在する。すなわち、検知部40に示す抵抗Rpは、不純物の混入によって変わってくるものである。このリーク抵抗Rpは、検知電極41と並列に接続されるものとして考えることができる。本形態の特徴の一つは、このリーク抵抗Rpの影響を受けることなくエタノール濃度を測定可能な点にある。
【0024】
検知電極41のプラス側端子は、カップリングコンデンサ42およびスイッチsw1を順に経由してオペアンプ(演算増幅器)43の反転入力端子に接続されている。また、オペアンプ43の出力端子と反転入力端子との間には、コンデンサ44とゲイン抵抗Rgとが並列に接続されている。さらにまた、電源電圧Vccと接地電位との間には抵抗器45、46が順次接続されており、2つの抵抗器45、46の接続点がオペアンプ43の非反転入力端子に接続されている。また、検知電極41のプラス側端子はスイッチsw2を経由して接地されており、マイナス側端子は直接接地されている。
【0025】
オペアンプ43の出力端子は、抵抗器47を経由してオペアンプ48の非反転入力端子に接続されている。また、この非反転入力端子は、コンデンサ49を経由して接地されている。かかる構成により、オペアンプ43の出力電圧は、平滑化された出力電圧Vaとしてオペアンプ48の非反転入力端子へ入力されることになる。オペアンプ48の出力端子と反転入力端子とは、共通接続されている。オペアンプ48の出力は、AC結合部60への入力となっている。
【0026】
基準電圧生成部50は、基準電圧を生成するものであり、抵抗器51、52、53と、オペアンプ54とから構成されている。
抵抗器51、52は、電源電圧Vcc(本形態では5V)と接地電位(=0V)との間に順次接続されて、電源電圧Vccを分圧することにより基準電圧Vr(本形態では2.5V)を生成する。この抵抗器51、52同士の接続点には、オペアンプ54の非反転入力端子が接続されている。オペアンプ54の反転入力端子と出力端子とは共通接続されており、出力端子は、抵抗器53を介して接地されている。かかる構成により、オペアンプ54は、上記基準電圧Vrを出力するバッファとして機能する。
【0027】
AC結合部60は、カップリングコンデンサ61および抵抗器62によって、AC結合を構成している。オペアンプ48の出力端子は、コンデンサ61を経由してオペアンプ71の非反転入力端子に接続されている。また、コンデンサ61とオペアンプ71の非反転入力端子との接続点が抵抗器62を経由して、上記オペアンプ54の出力端子に接続されている。
【0028】
増幅部70は、オペアンプ71および抵抗器72、73から構成されている。オペアンプ71の出力端子は、抵抗器72を経由して反転入力端子に接続されている。また、反転入力端子には、抵抗器73を経由して、上記オペアンプ54の出力端子が接続されている。かかる構成により、増幅部70は、基準電圧を基準として電圧Vbを増幅し、電圧Vcをマイコン80へ出力する。
【0029】
マイコン80は、その端子VCCに、電源電圧Vccを接続して構成されている。マイコン80の端子A/D2には、増幅部70からの出力電圧Vcが入力される。マイコン80は、この出力電圧VcをAD変換するとともに差分をとって、端子11に出力する。この端子11は、図示しないECUに接続される。マイコン80の端子AD1には、オペアンプ48の出力端子が接続されており、出力電圧の異常を検知可能となっている。例えば、測定可能範囲を上回る電圧が端子AD1に入力されると、マイコン80がそれを検知して警告処理を行うことが考えられる。
【0030】
次に、アルコール濃度センサ1の基本部分の動作を説明する。
第1発振部20および第2発振部25からのパルス波(動作クロック)によって、スイッチsw1、sw2が互い違いにオン/オフを繰り返すことは既に述べた(図1参照)。ここでは、図2に基づき、周波数fのパルス波が入力されてスイッチsw1、sw2がオン/オフされる場合の電流の流れを説明する。また、この電流の変化を、図3に基づき説明する。なお、図2は、図1の回路の一部を示すものである。
【0031】
パルス波がlowレベルの場合、図2(a)に示すように、一方のスイッチsw1がオンとなり、他方のスイッチsw2がオフとなる。これは、一方のスイッチsw1に対応するEXOR回路33への入力が「1」(電源電圧E)及び「0」(パルス波)となり、スイッチsw1へ切換信号「1」が出力されるためである。また、他方のスイッチsw2に対応するEXOR回路34への入力が「0」(パルス波)及び「0」(接地電圧)となり、スイッチsw2への切換信号「0」が出力されるためである。
【0032】
この場合、オペアンプ43は、非反転入力端子および反転入力端子の電位を同じにするように動作し、図2(a)に示すように、結果的に、電源電圧Eによって、ゲイン抵抗Rgに電流が発生する。ここでは、検知電極41に発生する電流をi1とし、リーク抵抗Rpに発生する電流をi2として示した。
【0033】
このときは、図3中に期間T1、T3で示すごとく、検知電極41に発生する電流i1は、最初に立ち上がり、検知電極41が充電されると「0」になる。一方、検知電極41と並列に接続されたものとされるリーク抵抗Rpに発生する電流i2は一定値となる。なお、厳密には、電流(i1+i2)が一定となるため電流i1、i2が同時に立ち上がることはないが(電流i2の立ち上がりが遅れるが)、ここでは便宜上、電流i2を一定値として説明している。
【0034】
パルス波がhighレベルの場合、図2(b)に示すように、一方のスイッチsw1がオフとなり、他方のスイッチsw2がオンとなる。これは、一方のスイッチsw1に対応するEXOR回路33への入力が「1」(電源電圧E)及び「1」(パルス波)となり、スイッチsw1へ切換信号「0」が出力されるためである。また、他方のスイッチsw2に対応するEXOR回路34への入力が「1」(パルス波)及び「0」(接地電圧)となり、スイッチsw2への切換信号「1」が出力されるためである。
【0035】
この場合、図2(b)に示すように、検知電極41のプラス側が接地されるため、充電されていた検知電極41は、放電する。そのため、検知電極41には、パルス波がlowレベルの場合と反対方向の電流i1が発生する。
【0036】
このときは、図3中に期間T2、T4で示すごとく、検知電極41に流れる電流i1は、反対方向へ立ち上がり、検知電極41の放電が終了すると「0」になる。一方、検知電極41と並列に接続されたものとされるリーク抵抗Rpに流れる電流i2は、「0」になる。
【0037】
次に、このように周波数fのパルス波でスイッチsw1、sw2が切り換えられた場合のオペアンプ43の出力電圧について説明する。
まず図3から、電流i2の平均は、次の式1で示すごとくとなる。
【0038】
【数1】

【0039】
また、検知電極41に溜まる電荷は、検知電極41の静電容量をCpとすると、電源電圧Eであるため、次の式2で示すごとくとなる。
【0040】
【数2】

【0041】
電流i1の平均は、電荷の時間微分であるため、式2を用いて、次の式3で示すごとくとなる。ここでは、周期T0(=1/f)とした(図3参照)。
【0042】
【数3】

【0043】
したがって、出力電圧Vは、式1、式3を用いて、次の式4で示すごとくとなる。
【0044】
【数4】

【0045】
この式4によれば、リーク抵抗Rpが無限大に近い場合、出力電圧Vにばらつきは生じない。つまり、精度よくエタノール濃度が測定できることになる。しかしながら、リーク抵抗Rpが小さくなった場合、すなわち不純物が多く含まれているような場合には、測定誤差が大きくなってしまう。
【0046】
そこで、本形態では、図1に示したように、第1発振部20および第2発振部25を備える構成とし、2つの異なる周波数f1、f2のパルス波でスイッチsw1、sw2を切り換え、このときのオペアンプ43の出力電圧V(f1)、V(f2)の差を取ることにした。すなわち、次の式5に示すごとくである。
【0047】
【数5】

【0048】
このようにすれば、リーク抵抗Rpの影響を受けず、検知電極41の静電容量Cpを出力電圧Vの差分として測定することができる。
【0049】
図4は、電圧Vを平滑化した電圧Vaの変化を示す説明図である。
オペアンプ43からの出力電圧Vは、図1および図2に示した抵抗器47およびコンデンサ49によって平滑化される。図4では最初に周波数f2のパルス波でスイッチsw1、sw2の切り換えを行っているが、時刻t1までにほぼ収束している。また、時刻t1から周波数f1のパルス波でスイッチsw1、sw2の切り換えを行っているが、時刻t2までにほぼ収束している。したがって、周波数f1、f2の切り換えタイミングは、このような電圧Vaの変化に基づいて、マイコン80によって制御すればよい。
【0050】
ところで、電圧Vaは、上記式4から分かるように、リーク抵抗Rpが小さくなると、大きな値となる。図4中には、リーク抵抗Rpが無限大の場合と、1kオームの場合とを比較して示した。つまり、出力電圧V(f1)、V(f2)の差分はリーク抵抗Rpに影響を受けないものとなるが、出力電圧Va自体は、リーク抵抗Rpの影響で大きくなってしまうのである。そして、極端な場合、出力電圧Vaが測定可能範囲を越えてしまうおそれがある。
【0051】
そこで、本形態では、図5に示したように、検知電極41のプラス側端子が、カップリングコンデンサ42によってAC結合されるようにした。この場合、基本的な動作は、図2で説明したものと同様になる。そして、このときは、図6に示すように、電流i2の平均が、カップリングコンデンサ42を挿入しない場合と比較して、1/2となる。これによって、上記式4から分かるように、リーク抵抗Rpの影響を1/2とすることができる。すなわち、図7に示すように、カップリングコンデンサ42を挿入しない場合は破線で示すような出力電圧Vaとなるが、カップリングコンデンサ42を設けることによって、リーク抵抗Rpが同じ1kオームの場合でも、実線で示すように出力電圧Vaを小さくすることができる。また、このようにすることで、検知電極41の片方の電極だけに電荷が溜まることを抑制できるため、検知電極41の電食を抑制することができる。
【0052】
上述したような出力電圧Vaは、オペアンプ48、基準電圧生成部50、および、AC結合部60により、基準電圧(本形態では2.5V)を基準とする出力電圧Vbとなる(図1参照)。図8中に、記号Aで示すごとくである。さらに、出力電圧Vbは、増幅部70によって増幅されて、出力電圧Vcとなる。図8中に記号Bで示すごとくである。これによって、測定結果を好適に取り出すことができる。
【0053】
なお、本形態におけるスイッチsw1、sw2が「スイッチ手段」を構成し、第1発振部20、第2発振部25、周波数切換スイッチ31、32およびマイコン80が「動作信号出力手段」を構成する。また、2つのEXOR回路33、34が「論理回路」を構成し、オペアンプ43、ゲイン抵抗Rg、コンデンサ44、抵抗器45、46、47、およびコンデンサ49が「測定値出力手段」を構成し、ここで抵抗器47およびコンデンサ49が「平滑化手段」を構成する。また、基準電圧生成部50が「基準電圧生成手段」を構成し、AC結合部60が「AC結合手段」を構成し、増幅部70が「増幅手段」を構成し、マイコン80が「差分演算手段」を構成する。
【0054】
以上詳述したように、本形態のアルコール濃度センサ1によれば、リーク抵抗Rpに影響されることなく、エタノール濃度を精度よく測定することができる。
【0055】
ところで、2つのスイッチsw1、sw2は、一方がオンならば他方がオフ、あるいは、一方がオフならば他方がオンという具合に、排他的に制御されている。
例えば図2に示した構成と同様の回路は、図9(a)のように、NOT回路35を用いて設計することが考えられる。この場合、一方のスイッチsw1に対する切換信号のみがNOT回路35によって反転されるようになっており、他方のスイッチsw2に対する切換信号は、直接入力されている。
【0056】
しかしながら、図9(a)に示すような回路構成では、NOT回路35からの反転信号の出力タイミングが遅延する虞がある。つまり、図9(b)に示すように、駆動パルスに対してスイッチsw1への切換信号だけが期間T1だけ遅延する虞がある。NOT回路35からの切換信号の出力タイミングが遅延すると、スイッチsw1の切換タイミングが遅延し、結果として、排他的に制御されるべき2つのスイッチsw1、sw2が同時にON、あるいは、同時にOFFとなる期間が生じてしまう。このような期間が生じると、測定誤差が発生し、測定精度が低下することが否めない。
【0057】
この点、本形態では、図2(a)及び(b)に示すように、2つのスイッチsw1、sw2に対応させ、同一のEXOR回路33、34を設け、このEXOR33、34の出力が各スイッチsw1、sw2に入力されるようにした。このようにすれば、図10に示すように、駆動パルスに対する遅延期間T2は、2つのスイッチsw1、sw2で同一となる。したがって、2つのスイッチsw1、sw2を完全に排他的に制御することが可能となり、測定精度が低下することを抑制できる。
【0058】
また、カップリングコンデンサ42を設けることによって、出力電圧Vaを小さくすることができるため(図7参照)、測定可能範囲を比較的大きくすることができる。しかも、検知電極41の両方の電極に電荷が交互に溜まるため、検知電極41の電食を抑制することができる。
【0059】
さらにまた、検知電極41のマイナス側端子を直接接地していることによって、2つのスイッチsw1、sw2で回路を構成することができ、その回路構成が比較的簡単になる。加えて、静電気によりスイッチsw1、sw2が損傷を受けることを抑制でき、また、電磁波によるスイッチsw1、sw2の誤作動を抑制することができる。
【0060】
以上、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々なる形態で実施可能である。
(イ)上記形態は2つのスイッチsw1、sw2を用いた構成であったが、いわゆるクロール接続と呼ばれるような4つのスイッチを用いる構成であっても同様に本発明を適用することができる。
(ロ)上記形態はエタノール濃度を測定するセンサであったが、メタノール濃度なども同様の方法で測定することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:アルコール濃度センサ(液体用濃度測定装置)、10:バッテリ、11:端子、20:第1発振部、25:第2発振部、31、32:周波数切換スイッチ、33、34:EXOR回路(論理回路)、35:NOT回路、40:検知部、41:検知電極、42:カップリングコンデンサ、43:オペアンプ、44:コンデンサ、45:抵抗器、47:抵抗器、49:コンデンサ、50:基準電圧生成部(基準電圧生成手段)、60:AC結合部(AC結合手段)、61:カップリングコンデンサ、62:抵抗器、70:増幅部(増幅手段)、80:マイコン(差分演算手段)、Rg:ゲイン抵抗、Rp:リーク抵抗、sw1、sw2:スイッチ(スイッチ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が対向して配置されてなる検知電極と、
前記検知電極の充電および放電を切り換えるための複数のスイッチ手段と、
前記スイッチ手段の切り換えを第1の周期で行うための第1周波数の動作信号、及び、前記スイッチ手段の切り換えを第2の周期で行うための第2周波数の動作信号を出力可能な動作信号出力手段と、
前記動作信号出力手段からの動作信号に基づき、前記スイッチ手段への切換信号を出力する論理回路と、
前記検知電極の静電容量に応じた電圧を測定値として出力可能であり、前記第1周波数による第1測定値及び前記第2周波数による第2測定値を出力可能な測定値出力手段と、を備え、
前記論理回路を、前記各スイッチ手段に対応させて配置される同一構成の回路としたことを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体用濃度測定装置において、
前記第1測定値および前記第2測定値を増幅する増幅手段を備えていることを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体用濃度測定装置において、
基準電圧を生成する基準電圧生成手段を備え、
前記増幅手段は、前記基準電圧生成手段にて生成された基準電圧を基準とし、前記第1測定値および第2測定値を増幅することを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体用濃度測定装置において、
前記基準電圧生成手段にて生成される基準電圧に基づくAC結合を行うAC結合手段を備えていることを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体用濃度測定装置において、
前記第1測定値と前記第2測定値との差分を、測定結果として出力する差分演算手段を備えていることを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体用濃度測定装置において、
前記測定値出力手段は、前記第1測定値および前記第2測定値を平滑化する平滑化手段を有していることを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体用濃度測定装置において、
前記検知電極は、そのプラス側端子にカップリングコンデンサが接続されて構成されていることを特徴とする液体用濃度測定装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体用濃度測定装置において、
前記検知電極は、そのマイナス側端子が直接接地されていることを特徴とする液体用濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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