説明

液体用紙容器

【課題】充填した薬品等の内容物への微粒子の移行が少なく、バリア性の高い液体用紙容器を提供する。
【解決手段】表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、シーラント層として、オレフィン系樹脂をインフレーション法により200℃以下の押出温度で製膜したフィルムを用い、接着層を介して、バリア層に積層した。あるいは、シーラント層として、オレフィン系樹脂をT型ダイスで製膜し、インラインで接着層を介して、バリア層に積層した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や非食品の液体内容物に使用される液体用紙容器は、果汁飲料、ジュース、お茶、コーヒー、乳飲料、スープ等の液体飲料、日本酒、焼酎等の酒類に広く用いられている。この液体用紙容器は、紙層と紙層の内面に熱可塑性樹脂によるシーラント層が設けられた積層材料からなり、紙層とシーラント層の間にアルミ箔やアルミ蒸着フィルム、ないしは、無機酸化物蒸着フィルムなどのバリア性のある層を設けたものなどがある(例えば特許文献1)。
【0003】
また、天部にスパウトとキャップからなる口栓を設け、注ぎ易さや、開封容易性と再封性を持たせた液体用紙容器も一般的に用いられるようになってきている(例えば特許文献2)。
【0004】
一方、薬品等を保存する容器としてガラス容器が、一般に用いられているが、近年、軽い、割れにくいなどの点から、樹脂製の成型容器が用いられる様になってきた。これら薬品などは、保存中の変質が極端に嫌われる分野であり、ガスバリアー性などの要求もあるが、特に、容器を形成している樹脂組成物から薬品中への微粒子の移行があると使用できない。そのため、少なくとも、薬品などに接する内表面の樹脂を、特別に設計された樹脂組成とした成型容器があった(特許文献3)。
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335362号公報
【特許文献2】実開平6−42655号公報
【特許文献3】特開平7−257540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製の成型容器は、軽くて割れにくいという点では、改良されているが、使用後の廃棄の点で問題がある。そこで廃棄の点から優位な液体用紙容器の薬品容器が望ましいが、薬品中への微粒子の移行があることは好ましくない。特に血液検査の試薬や血液検体の希釈剤では、これらの薬品中への微粒子の移行の多少が重要である。
【0007】
本発明は、充填した薬品等の内容物への微粒子の移行が少なく、バリア性の高い液体用紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をインフレーション法により200℃以下の押出温度で製膜したフィルムを用い、前記接着層のドライラミネーション用接着剤を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器である。
【0009】
本発明の請求項2の発明は、表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をインフレーション法により200℃以下の押出温度で製膜したフィルムを用い、前記接着層の溶融樹脂を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器である。
【0010】
本発明の請求項3の発明は、表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をT型ダイスより300℃未満の押出温度で製膜し、インラインで前記接着層のドライラミネーション用接着剤を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器である。
【0011】
本発明の請求項4の発明は、前記バリア層が、樹脂フィルムの片面に蒸着層を設けた蒸着フィルムであって、該蒸着フィルムの蒸着層側に前記接着層を介し、前記シーラント層を積層したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充填した薬品等の内容物への微粒子の移行が少なく、酸素や水蒸気などのバリア性の高い液体用紙容器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液体用紙容器の実施形態1の積層体の層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の液体用紙容器の形状例を模式的に示す斜視図である。(A)本発明の液体用紙容器のゲーベルトップ型(屋根型)の形状例を模式的に示す斜視図である。(B)本発明の液体用紙容器のブリック型(レンガ型)の形状例を模式的に示す斜視図である。(C)本発明の液体用紙容器の天部の前方が傾斜部で後方が平らな形状例を模式的に示す斜視図である。(D)本発明の液体用紙容器の紙カップの形状例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
最初に本発明の液体用紙容器の実施形態1について説明する。
図1は、本発明の液体用紙容器の実施形態1の積層体の層構成を模式的に示す断面図である。
【0015】
本例の液体用紙容器に用いる積層体101は、液体用紙容器の外側から、表面樹脂層1、紙層2、接着樹脂層3、バリア層4、接着層5、シーラント層6が順次積層されている。
【0016】
表面樹脂層1には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、エチレン−α−オレフィン共重合体などエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン− エチレンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などの選択が可能であり、また、これらのオレフィン系樹脂をグラフト重合などにより酸変性した変性ポリオレフィン樹脂も使用可能である。
【0017】
図示しないが、表面樹脂層1の外側に印刷インキによる印刷層を設けても良い。このと
き、表面樹脂層1の表面にコロナ処理をして、印刷インキとの密着性を向上させておくことができる。
【0018】
印刷インキにはグラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、オフセットインキが使用でき、それぞれの印刷方式で印刷層を設ければよい。グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキは、着色料(有機顔料、無機顔料、染料など)と、ビヒクル(合成樹脂からなるバインダーをアルコール、エステル、ケトン、アルコール誘導体、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの有機溶剤に溶解したもの)と助剤(安定剤、スリップ剤など)から構成されている。
【0019】
また。オフセットインキは、着色料(有機顔料、無機顔料)と、ビヒクル(合成樹脂、乾性油、有機溶剤)と助剤(粘度調整剤、乾燥調整剤など)から構成させている。
【0020】
紙層2に用いる紙は、液体用紙容器の形状や容量などによって異なってくるが、液体用紙容器の成形性、保型性、強度などを保持できるものから適宜選択すればよい。具体的には、坪量200〜500g/m程度の板紙を使用することができる。
【0021】
接着樹脂層3は、紙層2とバリア層4をサンドイッチラミネーションで貼り合わせるときには、熱溶融性樹脂を用いる。用いる熱溶融性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレ(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0022】
厚さは用途によって適宜決められるが、好ましくは3〜70μm程度である。必要に応じて、バリア層4側にアンカーコート層を設けて、熱溶融性樹脂を押出して貼り合わせる。アンカーコート剤としては、有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。
【0023】
また、紙層2とバリア層4をドライラミネーションで貼り合わせても良い。この場合の接着樹脂層3には、ドライラミネーション用の接着剤を用いる。ドライラミネーション用の接着剤としては、適宜選択すればよいが、主剤にポリエステルポリオールあるいはポリエステルポリウレタンポリオールを用いて、硬化剤にイソシアネート系の硬化剤を用いたウレタン系の接着剤が好ましく用いられる。ドライラミネーション用の接着剤の塗布量としては、乾燥硬化後で1〜6g/mが好ましい。
【0024】
バリア層4としては、バリア性樹脂フィルムや基材フィルムにバリア層を設けたバリア性積層フィルム、或いはアルミニウムなどの金属箔を使用することができる。
【0025】
バリア性樹脂フィルムは、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートや2軸延伸ナイロンフィルムとエチレン−ビニルアルコール共重合体の積層フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ケン化物などのフィルム、またこれらのフィルムの1種、または2種以上を組み合わせた積層フィルムを用いても良い。
【0026】
バリア性積層フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムにポリ塩化ビニリデンを塗工した塗工フィルムや、アルミニウム箔をラミネートしたアルミ箔ラミネートフィルムや、アルミニウム金属、無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を真空蒸着法、スパッタリング法などにより、設けたアルミ蒸着フィルムや無機酸化物蒸着フィルム、またこれらフィルムの1種、または2種以上を組み合わせた積層フィルムなどを用いることができる。
【0027】
なお、バリア性積層フィルムに用いる基材フィルムには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムが使用できる。
【0028】
さらに、基材フィルムと蒸着薄膜層との間に熱架橋性プライマーコート層を設けて、基材フィルムと蒸着薄膜層との間の密着性を高めたガスバリア性積層フィルムとしてもよい。
【0029】
シーラント層6を設けるには、200℃以下の押出温度で製膜できるインフレーション法による樹脂フィルムを用いて、接着層5を介して、バリア層4に積層するか、あるいは、T型ダイスより300℃未満の押出温度で製膜し、インラインで接着層5を介して、バリア層4に貼り合わせるニーラム法で、樹脂フィルムを設けることが好ましい。
【0030】
T型ダイスより押出した溶融樹脂を接着層5を介して、バリア層4に積層する押出ラミネーションや、T型ダイスより押出した溶融樹脂を製膜したキャストフィルムでは、押出温度が、300℃以上の高温になるので好ましくない。前記の方法でシーラント層6を設けることが、樹脂の押出温度を300℃以下にすることができるので、樹脂の劣化物の発生が起きにくく、劣化物が異物となってシーラント層6の表面に残ることがなくなり、充填した薬品等の内容物への微粒子の移行が少なくなる。
【0031】
シーラント層6のインフレーション法による樹脂フィルム、あるいは、ニーラム法で設ける樹脂フィルムに用いる熱溶融性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレ(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などの樹脂を使用することができる。厚さは好ましくは20〜70μm程度である。
【0032】
特に低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。そして、無添加低密度ポリエチレンを用いるのがさらに好ましく、この、無添加低密度ポリエチレンは、スリップ剤や、アンチブロッキング剤、酸化防止剤などの添加剤が添加されていない樹脂である。
【0033】
特に低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることが好ましい。そして、無添加低密度ポリエチレンを用いるのがさらに好ましく、この、無添加低密度ポリエチレンは、スリッ
プ剤や、アンチブロッキング剤、酸化防止剤などの添加剤が添加されていない樹脂である。
【0034】
シーラント層6としてインフレーション法による樹脂フィルムを用いる場合、サンドイッチラミネーションで貼り合わせることができる。このときは、接着層5として熱溶融性樹脂を用いる。用いる熱溶融性樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレ(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0035】
厚さは用途によって適宜決められるが、好ましくは3〜70μm程度である。必要に応じて、バリア層4側にアンカーコート層を設けて、熱溶融性樹脂を押出して貼り合わせる。アンカーコート剤としては、有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤、その他の水性または油性の各種のアンカーコート剤を使用することができる。
【0036】
また、インフレーション法による樹脂フィルムを用いて、ドライラミネーションで貼り合わせても良い。ドライラミネーションで貼り合わせる場合は、接着層5には、ドライラミネーション用の接着剤を用いる。ドライラミネーション用の接着剤としては、適宜選択すればよいが、主剤にポリエステルポリオールあるいはポリエステルポリウレタンポリオールを用いて、硬化剤にイソシアネート系の硬化剤を用いたウレタン系の接着剤が好ましく用いられる。ドライラミネーション用の接着剤の塗布量としては、乾燥硬化後で1〜6g/mが好ましい。
【0037】
シーラント層6として、T型ダイスより300℃未満の押出温度で製膜し、インラインで接着層5を介して、バリアー層4に貼り合わせるニーラム法で設けるときに用いる接着層5としては、ドライラミネーション用の接着剤を用いる。ドライラミネーション用の接着剤としては、適宜選択すればよいが、主剤にポリエステルポリオールあるいはポリエステルポリウレタンポリオールを用いて、硬化剤にイソシアネート系の硬化剤を用いたウレタン系の接着剤が好ましく用いられる。ドライラミネーション用の接着剤の塗布量としては、乾燥硬化後で1〜6g/mが好ましい。
【0038】
以上のような、積層体101を用い製函して、液体用紙容器を得ることができる。図2は、本発明の液体用紙容器の形状例を模式的に示す斜視図である。(A)は、本発明の液体用紙容器のゲーベルトップ型(屋根型)の形状例を模式的に示す斜視図である。(B)は、本発明の液体用紙容器のブリック型(レンガ型)の形状例を模式的に示す斜視図である。(C)は、本発明の液体用紙容器の天部の前方が傾斜部で後方が平らな形状例を模式的に示す斜視図である。(D)は、本発明の液体用紙容器の紙カップの形状例を模式的に示す斜視図である。
【0039】
液体用紙容器の形状としては、角柱形の胴部と平らな底部からなり、天部がゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器100、あるいは、天部も平らなブリック型(レンガ型)の液体用紙容器200、また、天部の前方が傾斜部で後方が平らな液体用紙容器300でも良い。また、円筒形あるいは円錐台形の胴部と、底部に脚部を持つ紙カップ形状の液体用紙容器400でも良い。
【0040】
液体用紙容器は、口栓7付きや開口部が端部保護されたプルタブ8付きであることが望ましい。口栓付きや開口部が端部保護されたプルタブ付きでないと、内容物を注ぎだすときに、紙層の端面が内容物に触れるので、紙粉などが内容物に混ざって注ぎだされる恐れがある。口栓付きや開口部が端部保護されたプルタブ付きにすることによって、紙層の端面に内容物が触れずに注ぎだすことができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
無添加の低密度ポリエチレンをインフレーション法で190℃の押出温度で製膜し、低密度ポリエチレンフィルム40μmをシーラント層6として作成した。バリア層4となるアルミナ蒸着ポリエステルフィルム12μmの蒸着面側に、接着層5のウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で積層し、内装フィルムを作成した。接着層5のウレタン系接着剤には、三井ポリウレタン工業の主剤A616、硬化剤A65を使用し、乾燥硬化後の塗布量が3g/mになるようにした。
【0043】
別途、紙層2のカップ原紙(350g/m、密度0.78g/cm)を用意し、このカップ原紙の片面に内装フィルムのバリア層4の面を、サンドイッチラミネーション法によって、接着樹脂層3の低密度ポリエチレン20μmを介して、貼り合わせた。
【0044】
また、カップ原紙の反対面にも、表面樹脂層1となる低密度ポリエチレン20μmを押出ラミネーションにより設けた。接着樹脂層3と表面樹脂層1の低密度ポリエチレンには、日本ポリエチレンのLC600Aを用いた。
【0045】
この表面樹脂層1の低密度ポリエチレン20μmの表面をコロナ処理して、このコロナ処理面に印刷インキでグラビア印刷を行い、印刷層を設け、積層体101を得た。これをゲーベルトップ型の液体用紙容器のブランクに打ち抜き、同時に折罫を押罫により設けた。
【0046】
このブランクを、スカイブ−ヘミング法によって端部を保護し、筒状に折り曲げて端部を重ね合わせてスリーブ状にし、底部を形成して、天部に口栓を取り付け、75mm角の容量1Lの実施例1の液体用紙容器を作成した。
【0047】
<実施例2>
無添加の低密度ポリエチレンをインフレーション法で190℃の押出温度で製膜し、低密度ポリエチレンフィルム40μmをシーラント層6として作成した。バリア層4となるアルミナ蒸着ポリエステルフィルム12μmの蒸着面側と、シーラント層6の低密度ポリエチレンフィルム40μmを、接着層5の低密度ポリエチレン20μmを介して、サンドイッチラミネーション法によって積層し、内装フィルムを作成した。尚、バリア層4のアルミナ蒸着ポリエステルフィルム12μmの蒸着面側には、アンカーコート剤として、ウレタン系アンカーコート剤(塗布量が1g/m)を塗布して積層した。
【0048】
この内装フィルム用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液体用紙容器を作成した。
【0049】
<実施例3>
T型ダイスの押出機と冷却ロールと、貼り合わせ基材用巻き出し装置と、貼り合わせ基材に接着剤を塗布する、塗布装置と、塗布した接着剤を乾燥させる乾燥が、インラインで備
えるニーラム法のラミネーション機を用いて、無添加の低密度ポリエチレン290℃の押出温度でT型ダイスより押出し、冷却ロールで冷却してシーラント層6の40μmの低密度ポリエチレンを製膜し、貼り合わせ基材用巻き出し装置より巻き出したアルミナ蒸着ポリエステルフィルム12μmの蒸着面側に、接着層5のウレタン系ドライラミネーション用接着剤を塗布乾燥させて、冷却ロールで冷却したシーラント層6の40μmの低密度ポリエチレンを貼りあわせ、内装フィルムを作成した。接着層5のウレタン系ドライラミネーション用接着剤には、三井ポリウレタン工業の主剤A616、硬化剤A65を使用し、乾燥硬化後の塗布量が3g/mになるようにした。
【0050】
この内装フィルム用いる以外は、実施例1と同様にして、実施例3の液体用紙容器を作成した。
【0051】
以下に本発明の比較例について説明する。
【0052】
<比較例1>
無添加の低密度ポリエチレンをキャスト法で320℃の押出温度で製膜し、低密度ポリエチレンフィルム40μmをシーラント層6として作成した。バリア層4となるアルミナ蒸着ポリエステルフィルム12μmの蒸着面側に、接着層5のウレタン系接着剤を用いてドライラミネーション法で積層し、内装フィルムを作成した。接着層5のウレタン系接着剤には、三井ポリウレタン工業の主剤A616、硬化剤A65を使用し、乾燥硬化後の塗布量が3g/mになるようにした。
【0053】
この内装フィルム用いる以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液体用紙容器を作成した。
【0054】
実施例1から3および比較例1の液体用紙容器に蒸留水1Lを充填して、天部を融着させ密封し、60℃で4週間保存後、口栓より、内容物の蒸留水を取り出し、パーティクルカウンターで微粒子の濃度(単位:個/ml)を測定した。
【0055】
測定器は、リオン株式会社製のパーティクルカウンターを使用し、(センサー:KS−70、カウンター:KF−10A、サンプラー:KL−03)1〜100μmのパーティクル濃度を測定した。ブランクとして、充填前の蒸留水の微粒子の濃度を測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

以下に実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0057】
<比較結果>
キャスト法で製膜したフィルムをシーラント層6に用いて、ドライラミネーションで貼りあわせた比較例1の液体用紙容器では、60℃で4週間保存後の蒸留水の1〜100μmのパーティクル濃度は、771個/mlとなっていて、ブランクの濃度を考慮しても、望ましいパーティクル濃度の100個/ml以下を大きく越えていて、微粒子の移行が問題となる用途には使用できない。
【0058】
実施例1から3の液体用紙容器については、60℃で4週間保存後の蒸留水の1〜100μmのパーティクル濃度は、39から53個/mlであり、いずれも、望ましいパーティクル濃度の100個/ml以下であり、微粒子の移行が問題となる用途にも使用できる。
【0059】
インフレーション法により低温で製膜したフィルムをシーラント層6に用いて、ドライ
ラミネーションで貼りあわせた実施例1の液体用紙容器と、同じくインフレーション法で製膜したフィルムをシーラント層6に用いて、サンドイッチラミネーション法で貼りあわせた実施例2の液体用紙容器とでは、実施例1の液体用紙容器より、実施例2の液体用紙容器の方が、パーティクル濃度が小さく、ドライラミネーションの接着剤の影響か、ドライラミネーションの工程での影響があるものと思われる。
【0060】
比較的低温で製膜されたニーラム法(T型ダイスより押出し製膜し、インラインで接着剤を介して貼りあわせる方法)で、シーラント層6を設けた実施例3の液体用紙容器は、実施例1と実施例2の液体用紙容器のパーティクル濃度と大きな差は無く、その中間に位置するものと考えられる。
【符号の説明】
【0061】
100・・・ゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器
200・・・ブリック型(レンガ型)の液体用紙容器
300・・・天部の前方が傾斜部で後方が平らな液体用紙容器
400・・・紙カップ形状の液体用紙容器
101・・・積層体
1・・・表面樹脂層
2・・・紙層
3・・・接着樹脂層
4・・・バリア層
5・・・接着層
6・・・シーラント層
7・・・口栓
8・・・プルタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をインフレーション法により200℃以下の押出温度で製膜したフィルムを用い、前記接着層のドライラミネーション用接着剤を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をインフレーション法により200℃以下の押出温度で製膜したフィルムを用い、前記接着層の溶融樹脂を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項3】
表面樹脂層、紙層、接着樹脂層、バリア層、接着層、シーラント層が順次積層された積層体を製函してなる液体用紙容器であって、
前記シーラント層として、オレフィン系樹脂をT型ダイスより300℃未満の押出温度で製膜し、インラインで前記接着層のドライラミネーション用接着剤を介して、前記バリア層に積層したことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項4】
前記バリア層が、樹脂フィルムの片面に蒸着層を設けた蒸着フィルムであって、該蒸着フィルムの蒸着層側に前記接着層を介し、前記シーラント層を積層したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−76807(P2012−76807A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224663(P2010−224663)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】