説明

液体薬品の分配装置及び分配方法

【課題】廉価製造できる液体薬品用のペール缶と簡易構成のディスペンサからなる液体薬品の分配装置を提供する。
【解決手段】液体薬品用のペール缶10は、耐薬合成樹脂製の筒状の内側容器1と、内側容器1の外殻を構成する金属製の外側容器2を備える。内側容器1は液体薬品を注入可能に開口する口部11を有する。ディスペンサ40は、プラグ本体41と通気手段42と液出しパイプ43を備える。プラグ本体41は口部11に密封可能に締結する。通気手段42は、プラグ本体41に貫通する開口42bを有し、内側容器1の内部に圧縮流体を通気できる。液出しパイプ43は、一端が内側容器1の底面に到達し、他端がプラグ本体41から突出し、プラグ本体41に密封可能に装着される。通気手段42を介して、内側容器1の空気層に圧縮流体が加圧され、液体薬品が液出しパイプ43の他端から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬品の分配装置及び分配方法に関する。特に、本発明は、電子工業用薬品などの流体を貯蔵し、運搬し、かつ分配する液体薬品の分配装置及び分配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホトレジストなどの電子工業用薬品は、運搬用の薬品容器に貯蔵されて製造工場に納入される。このような薬品容器は、同じ容器を繰返し使用するリンク方式と、毎回新しい容器を使用するワンウェイ方式がある。特に、高純度薬品の純度に影響を与えぬためには、ワンウェイ方式の容器を使用することが好ましいが、経済的ではないという欠点がある。近年では、前記両方式を複合した複式格納型の容器が普及している。
【0003】
一般に、複式格納型の容器は、予め洗浄された可撓性フィルムからなるバッグ(袋体)を有している。このフィルム・バッグは、不活性材料から形成され、外側容器の中に設けられている。フィルム・バッグから薬品を排出した後に、このフィルム・バッグは廃棄され、新たなフィルム・バッグに薬品が充填される。そして、継手などを含む外側容器は繰返し使用される。
【0004】
このような複式格納型の容器として、安全、確実に液体薬品を排出できる液体薬品用容器、及びディスペンサからなる液体薬品の分配装置が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−100087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11は、特許文献1による容器及びディスペンサからなる液体薬品の分配装置の正面図であり、要部を断面としている。本願の図11は、特許文献1の図1に相当している。
【0006】
図11において、特許文献1による液体薬品の分配装置は、容器7及びディスペンサ8を備えている。容器7は、外側容器716と、ポート(以下、取付体という)718と、リテーナ719を備えている。又、容器7は、可撓性のバッグ720と、液出しチューブ722と、カップリング724と、を備えている。更に、容器7は、蓋726と、破断可能なシール膜727と、キャップ728と、を備えている。
【0007】
図11において、外側容器716は、雄ねじを形成する口部730を有し、口部730の中には、リテーナ719及び取付体718が取り付けられている。バッグ720は、取付体718に取り付けられ、外側容器716の中に設けられている。又、カップリング724は、取付体718の中に設けられ、バッグ720の内部の中へ下がっている液出しチューブ722に接続されている。
【0008】
図11において、蓋726は、取付体718、カップリング724及び外側容器716の口部730を包囲すると共に、破断可能なシール膜727によって取付体718及び外側容器716を封止している。そして、キャップ728は、蓋726の頂部をねじ止めしている。
【0009】
図11において、外側容器716は、スチール製のドラム缶であって、地板732、胴体734、傾斜した天板736を備えている。又、外側容器716は、天板736に口部730を有し、胴体734は、成形された一対のハンドル738を有している。
【0010】
図11において、ディスペンサ8は、下部コネクタ842と、リテーナ844と、プローブ846と、上部コネクタ848と、を備えている。リテーナ844は、下部コネクタ842の中に入れ子式に収容されている。プローブ846は、リテーナ844を貫通し、リテーナ844によって支持されている。上部コネクタ848は、リテーナ844及び下部コネクタ842に接続され、プローブ846を包囲している。
【0011】
図11において、バッグ720が装着された取付体718を口部730に取り付けた後に、バッグ720に液体薬品が充填される前に、好ましくは窒素によって膨張される。その後、バッグ720は取付体718を介して液体薬品で充填される。次に、液出しチューブ722及びカップリング724を取付体718に挿入する。蓋726は、破断可能なシール膜727を取付体718の頂端部上に置き、空所776を封止する。又、容器7の口部730にキャップ728を設けて破断可能なシール膜727を覆うことができる。
【0012】
容器7を運搬及びハンドリングの間に、可撓性のバッグ720の中に発生した気体は全て、液出しチューブ722のカップリング724によって形成された気体通路を通って流れ、液出しチューブ722のカップリング724の上端に設けられた空所776に溜まることができる。
【0013】
特許文献1による容器7は、破断可能なシール膜727を備えており、ディスペンサ8に設けられるプローブ846がシール膜727を突き破ることにより、プローブ846は空所790の中に挿入することができる。容器7にディスペンサ8を接続し、ディスペンサ8及び空所782を介して、バッグ720内を窒素で加圧することにより、プローブ846から液体薬品を排出できる。
【0014】
特許文献1による容器7は、液出しチューブ722付きカップリング724を内蔵して運搬される構成となっている。液出しチューブをディスペンサ側に配置する構成とすれば、液体薬品用容器の製造原価を引き下げることも可能である。
【0015】
又、特許文献1による容器7は、完全密封容器である、いわゆるキャニスター缶であり、厚肉の金属板を成形加工した堅牢な構造であるが、製造原価が高価であるという問題がある。高価なキャニスター缶に換えて、薄肉の金属板を成形加工することにより、廉価に製造できる液体薬品用のペール缶が求められる。
【0016】
更に、特許文献1による容器7は、液体薬品が排出された可撓性のバッグ720は廃棄され、液出しチューブ722が洗浄された後に、新たなバッグ720に装着される。ワンウェイ方式のペール缶であれば、液出しチューブ722の洗浄の手間や、外側容器716へのバッグ720の詰め替えの手間が省け、総合的にはむしろ経済的であるといえる。
【0017】
例えば、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造の液体薬品用のペール缶とすることにより、特許文献1による容器と比較して、廉価であり簡易な構成の液体薬品用容器を提供できる。又、特許文献1によるディスペンサは、複雑な流体通路を経由して液体薬品を分配しているが、液体薬品をペール缶に収容することにより、このペール缶を直接加圧して液体薬品を分配できる。すなわち、ディスペンサの構成も簡易にできる。このような液体薬品用のペール缶、及びこの液体薬品用のペール缶に接続可能な簡易な構成のディスペンサが組み合わされる液体薬品の分配装置が求められる。
【0018】
又、特許文献1によるキャニスター缶は、底面が外部に向かって突出する曲面を形成しており、かつ、液出しチューブがこの底面の中心に位置するように組み立て可能である。したがって、特許文献1によるキャニスター缶は、液体薬品が容器内部に殆ど残らない、いわゆる残液特性に優れた容器となっている。一方、ペール缶は、底面が平らであり、液出しチューブがこの底面の周縁に位置するように組み立てられるので、液体薬品が容器内部に残り易いという問題がある。液体薬品用のペール缶に液体薬品が残り難い、残液特性に優れた液体薬品の分配装置が求められる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、廉価に製造できる液体薬品用のペール缶、この液体薬品用のペール缶に接続可能な簡易な構成のディスペンサからなる残液特性に優れた液体薬品の分配装置及び分配方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、液体薬品用の容器を成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造のペール缶とすることにより、ディスペンサが簡易に構成されることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな液体薬品の分配装置及び分配方法を発明するに至った。
【0021】
(1) 筒状に形成されて液体薬品を注入可能に開口する口部を有する耐薬合成樹脂製の内側容器、及びこの内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器、を備える液体薬品用のペール缶と、前記ペール缶の前記口部に接続するディスペンサと、備える液体薬品の分配装置であって、前記ディスペンサは、前記口部に密封可能に締結する円筒状のプラグ本体と、前記プラグ本体の外部から前記口部に向かって貫通する開口を有し、前記内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、一端は前記内側容器の底面に到達し、他端は前記プラグ本体から突出し、前記プラグ本体に密封可能に装着される液出しパイプと、を備え、前記通気手段を介して前記内側容器の空気層に前記圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が前記液出しパイプの他端から排出される液体薬品の分配装置。
【0022】
(1)の発明による液体薬品の分配装置は、液体薬品用のペール缶とディスペンサを備えている。液体薬品用のペール缶は、耐薬合成樹脂製の内側容器と金属製の外側容器を備えている。内側容器は、筒状に形成されており、液体薬品を注入可能に開口する口部を有している。外側容器は、内側容器の外殻を構成している。ディスペンサは、ペール缶の口部に接続する。
【0023】
又、(1)の発明による液体薬品の分配装置は、ディスペンサが、円筒状のプラグ本体と、通気手段と、液出しパイプと、を備えている。プラグ本体は、口部に密封可能に締結する。通気手段は、プラグ本体の外部から口部に向かって貫通する開口を有し、内側容器の内部に圧縮流体を通気可能である。液出しパイプは、一端が内側容器の底面に到達し、他端がプラグ本体から突出し、プラグ本体に密封可能に装着される。そして、通気手段を介して、内側容器の空気層に圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が液出しパイプの他端から排出される。
【0024】
ここで、液体薬品用のペール缶の外側容器は、天板と胴体と地板を有している。天板は、口部が突出する穴を有している。胴体は、内側容器の外周を囲っている。地板は、内側容器の底面に当接している。そして、外側容器は、内側容器に加わる内圧に対して、内側容器の変形を防止するように剛性を有している。
【0025】
内側容器が筒形に形成されているとは、内側容器が直円柱状に形成される形状を含み、内側容器が上面の面積が底面の面積より大きい直円すい台状に形成される形状を含んでいる。又、内側容器が筒形に形成されているとは、内側容器の上面に口部が突出することを排除しない。液体薬品用のペール缶は、内側容器が角筒形に形成されることを必ずしも排除しない。しかし、内側容器の製作の容易性や、内部圧力による膨張などの変形に抗するためには、内側容器は角筒よりも円筒が好ましい。
【0026】
耐薬合成樹脂製の内側容器とは、内側容器が耐薬合成樹脂で製造されることであってよく、内側容器がプラスチック成形されることにより大量生産できる。更に、耐薬合成樹脂製の内側容器とは、この内側容器に収容される薬品、すなわち化学物質が内側容器と接触して化学反応、例えばイオンによる汚染が困難である合成樹脂から成る内側容器を意味している。耐薬合成樹脂は、耐酸合成樹脂を含み、耐アルカリ合成樹脂を含み、耐腐蝕合成樹脂を含み、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などを含むポリオレフィンが好ましい。
【0027】
外側容器は、内側容器を覆うべく金属板が製缶されてよく、内側容器の外殻を構成している。外側容器は、内側容器を保護し、又は、内側容器の力学的強度を補強し、吊手やつる状の取っ手など必要な付属品が取り付けられる構造を有している。
【0028】
外側容器は内側容器の外殻を構成するとは、内側容器の外周全てに亘り、外側容器が当接することを必ずしも意味しない。外側容器自体の力学的強度を増加させるために、内側容器の外周を囲う胴体に輪帯を設けてよく、天板に同心円状に輪帯を設けてよく、これらの輪帯が内側容器と部分的に当接又は離反してもよい。又、口部が突出する穴を天板に設けてよく、この穴に引張り応力が集中して亀裂が生じないように、この穴の周囲に円環状の段差を設けて補強してもよい。
【0029】
そして、内側容器は、液体薬品を注入可能に開口する口部を有しており、この口部から液体薬品が排出することができる。口部は、筒状に形成された内側容器の本体と一体に成形されてよく、別体の口部を内側容器の本体に溶着してもよい。又、口部の根元と外側容器との間に輪環状のパッキンを介装してよく、内側容器と外側容器との間に液体薬品が侵入しないように防水できる。
【0030】
例えば、外側容器は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体を製作し、天板及び地板を巻締めにより胴体に固着する、いわゆる天板固着式のペール缶であってよく、天板がバンドにより胴体に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式バンドタイプのペール缶であってもよく、天板は周縁に複数の爪を有し、この天板が複数の爪により胴体に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式ラグタイプのペール缶であってもよい。又、天板、及び/又は地板は、必要に応じて胴体の終端にシーム溶接されてもよい。
【0031】
このように、薄肉の鋼板が成形加工されたペール缶は、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0032】
液体薬品用のペール缶は、口部の外周に雄ねじを設けてよく、口部の開口をキャップで封止し、更に口部を蓋で螺合することにより、液体薬品用のペール缶が密閉される。そして、液体薬品をこぼすことなく搬送できる。又、外周に雄ねじを設ける口部を利用して、ディスペンサを着脱容易に取り付けることができる。
【0033】
ディスペンサのプラグ本体は、一端が円形に開口されてよく、この開口の内周に雌めじを形成することにより、プラグ本体を液体薬品用のペール缶の口部にねじ結合できる。プラグ本体の外周に筋目ローレットを形成してもよく、プラグ本体を口部に確実にねじ結合できる。又、プラグ本体の開口にシールリングを内装してよく、プラグ本体を口部に締結することにより口部を密封できる。
【0034】
例えば、通気手段は、プラグ本体の外部から口部に向かって貫通する開口を含み、このプラグ本体の開口に接続するL字形(エルボ形)の合成樹脂製の第2ジョイントを含むことができる。そして、第2ジョイントをプラグ本体の開口に接続して、内側容器の内部に圧縮流体を通気できる。
【0035】
液出しパイプは、一端が内側容器の底面に到達し、他端がプラグ本体から突出し、プラグ本体に密封可能に装着される。液出しパイプの一端は斜めにカットされてよく、液出しパイプの他端にL字形のジョイント(継手)を接続してもよい。
【0036】
例えば、プラグ本体は、カップリングリングとプラグシェルとシールリングを備えて構成することもできる。カップリングリングは、口部の外周に螺合する。プラグシェルは、カップリングリングと回転可能に連結する。シールリングは、カップリングリングの内部に保持され、口部の端面に密着してカップリングリングとプラグシェルとの境界の通気を封止する。そして、プラグシェルは、通気手段と、液出しパイプを着脱自在に固定する合成樹脂製の第1ジョイントと、を配置してよく、プラグシェルがカップリングリングと回転可能に連結しているので、通気手段の供給口、又は液出しパイプの排出口を任意の向きに配置できる。又、プラグ本体及び液出しパイプはポリオレフィンで構成されることが好ましい。
【0037】
第1ジョイントは、市販のストレートタイプのホルダを利用できる。このホルダは、液出しパイプをプラグ本体にスライド自在に保持できる。又、このホルダは、液出しパイプを着脱自在に固定できる。例えば、このホルダは、ボルト状の中空の本体と、中心が開口された袋ナットと、で構成されている。ボルト状の本体は、液出しパイプをスライド自在に保持でき、プラグ本体に締結可能な雄ねじ部を一端側に有し、円錐状のスリーブを他端側に有している。そして、袋ナットをボルト状の本体の他端側に締結すると、スリーブが縮径して、液出しパイプをホルダに固定できる。袋ナットをボルト状の本体の他端側から開放すると、スリーブが復帰して、液出しパイプを引き抜くことができる。
【0038】
このように、ホルダを用いて、液出しパイプの一端が内側容器の底面に到達するように位置調整できる。そして、通気手段を介して、内側容器の空気層に圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が液出しパイプの他端から排出される。
【0039】
(1)の発明による液体薬品の分配装置は、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造のペール缶とすることにより、液体薬品用の容器を廉価に提供できる。又、ディスペンサは、円筒状のプラグ本体、通気手段、及び液出しパイプからなる、簡易な構成であり、ディスペンサに備わる通気手段を介して、液体薬品用のペール缶を直接加圧することにより液体薬品を分配できる。更に、傾斜台を用いて、液体薬品用のペール缶を傾斜配置することにより、液体薬品用のペール缶に液体薬品が残り難くできる。
【0040】
(2) 前記口部を当該内側容器の周縁近傍に配置し、前記液出しパイプの一端を当該口部に対向する当該内側容器の底面の部位に到達させ、前記口部に対向する部位が下方になるように当該ペール缶を傾斜配置する(1)記載の液体薬品の分配装置。
【0041】
(2)の発明による液体薬品の分配装置は、液体薬品用のペール缶を傾斜配置することにより、液体薬品用のペール缶に液体薬品が残り難い、残液特性に優れた液体薬品の分配装置となっている。
【0042】
(3) 斜面を形成する本体と、この斜面の低い方に立設する一対の転倒防止ポールと、を備える傾斜台を更に備え、前記ペール缶を傾斜配置する(2)記載の液体薬品の分配装置。
【0043】
傾斜台の本体は、展開された金属板の四周囲が折り曲げられた略台形の箱状に形成されてよく、展開された金属板の三周囲が折り曲げられた略三角体の箱状に形成されてもよい。箱状に形成される本体の内部にリブを設けて、斜面を補強してもよい。又、傾斜台の本体は、上面に斜面を形成するブロック体でもよい。
【0044】
転倒防止ポールは、中空の丸パイプでもよく、丸棒でもよい。転倒防止ポールの一端は、傾斜台の本体に溶接されてもよく、傾斜台の本体にねじ止めされてもよい。転倒防止ポールの一端に雄ねじを設け、傾斜台の本体の雌ねじを設け、転倒防止ポールと傾斜台の本体を結合してよく、転倒防止ポールの一端に雌ねじを設け、傾斜台の本体のねじ部材の入る穴を設け、このねじ部材で転倒防止ポールと傾斜台の本体を結合してもよい。
【0045】
一対の転倒防止ポールは、液体薬品用のペール缶の直径より小さい距離に離間されて配置されることが好ましく、本体の斜面に載置された液体薬品用のペール缶の転倒が防止される。一対の転倒防止ポールは、液体薬品用のペール缶の高さより低いことが好ましく、液体薬品が充填されたペール缶の重心より高いことが好ましい。
【0046】
(4) 前記ペール缶は、水平面に対して12度以上、30度以下に傾斜配置される(2)又は(3)記載の液体薬品の分配装置。
【0047】
12度未満にペール缶を傾斜配置すると、液体薬品がペール缶の内部に残り易いなり、30度を超えてペール缶を傾斜配置すると、傾斜配置の当初に液体薬品が口部から溢れる可能性がある。
【0048】
(5) 筒状に形成されて液体薬品を注入可能に開口する口部を有する耐薬合成樹脂製の内側容器、及びこの内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器、を備える液体薬品用のペール缶と、前記ペール缶の前記口部に接続するディスペンサと、を用いて、前記液体薬品を分配する方法であって、前記ディスペンサは、前記口部に密封可能に締結する円筒状のプラグ本体と、前記プラグ本体の外部から前記口部に向かって貫通する開口を有し、前記内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、一端は前記内側容器の底面に到達し、他端は前記プラグ本体から突出し、前記プラグ本体に密封可能に装着される液出しパイプと、を備え、前記通気手段を介して前記内側容器の空気層に前記圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が前記液出しパイプの他端から排出される液体薬品の分配方法。
【0049】
(6) 前記口部を当該内側容器の周縁近傍に配置し、前記液出しパイプの一端を当該口部に対向する当該内側容器の底面の部位に到達させ、前記口部に対向する部位が下方になるように当該ペール缶を傾斜配置する(5)記載の液体薬品の分配方法。
【0050】
(7) 斜面を形成する本体と、この斜面の低い方に立設する一対の転倒防止ポールと、を備える傾斜台を用いて、前記ペール缶を傾斜配置する(6)記載の液体薬品の分配方法。
【0051】
(8) 前記ペール缶は、水平面に対して12度以上、30度以下に傾斜配置される(6)又は(7)記載の液体薬品の分配方法。
【発明の効果】
【0052】
本発明による液体薬品の分配装置は、液体薬品用のペール缶と、このペール缶の口部に接続されるディスペンサで構成されている。液体薬品用のペール缶は、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造としており、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0053】
又、ディスペンサは、円筒状のプラグ本体、通気手段、及び液出しパイプからなる、簡易な構成であり、ディスペンサに備わる通気手段を介して、液体薬品用のペール缶を直接加圧することにより液体薬品を分配できる。更に、傾斜台を用いて、液体薬品用のペール缶を傾斜配置することにより、液体薬品用のペール缶に液体薬品が残り難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0055】
図1は、本発明による液体薬品の分配装置に備わる液体薬品用のペール缶の一実施形態を示す斜視外観図である。図2は、前記実施形態による液体薬品用のペール缶に接続するディスペンサの一実施形態を示す正面図であり、要部を断面で示している。図3は、前記実施形態によるディスペンサの分解組立図であり、液体薬品用のペール缶が接続された状態図である。
【0056】
図4は、前記実施形態によるディスペンサを液体薬品用のペール缶に接続する直前の状態を示す斜視外観図である。図5は、前記実施形態によるディスペンサのプラグ本体を液体薬品用のペール缶の口部に締結している状態を示す斜視外観図である。図6は、前記実施形態によるディスペンサを液体薬品用のペール缶に接続した状態を示す斜視外観図である。
【0057】
図7は、前記実施形態による液体薬品用のペール缶を12度に傾斜配置する第1実施例による傾斜台の斜視外観図である。図8は、前記実施形態による液体薬品用のペール缶を30度に傾斜配置する第2実施例による傾斜台の斜視外観図である。図9は、前記第1実施例による傾斜台に液体薬品用のペール缶を配置した斜視外観図である。図10は、前記第2実施例による傾斜台に液体薬品用のペール缶を配置した斜視外観図である。
【0058】
最初に、本発明による液体薬品の分配装置に備わる液体薬品用のペール缶の構成を説明する。図1において、液体薬品用のペール缶10(以下、容器10という)は、耐薬合成樹脂製の内側容器1と金属製の外側容器2を備えている。内側容器1は、筒状に形成されている。外側容器2は、内側容器1の外殻を構成している。内側容器1は、液体薬品を注入可能に開口する口部11を有している。
【0059】
図1において、外側容器2は、天板21と胴体22と地板23を有している。天板21は、口部11が突出する穴2aを有している。胴体22は、内側容器1の外周を囲っている。地板23は、内側容器1の底面に当接している。
【0060】
図1に示された内側容器1は、上面の面積が底面の面積より大きい直円すい台状に形成されている。内側容器1は、耐薬合成樹脂で成形されている。内側容器1は、口部11が一体でプラスチック成形されている。
【0061】
図1において、外側容器2は、内側容器1を覆うべく金属板が製缶されており、内側容器1の外殻を構成している。外側容器2は、内側容器1の外周全てに亘り、必ずしも当接していない。図1において、内側容器1の外周を囲う胴体22に輪帯(図示せず)が設けられてもよく、外側容器2自体の力学的強度を増加できる。例えば、前記輪帯は、内側容器1と部分的に離反している。
【0062】
図1において、天板21には、同心円状に複数の輪帯21aが設けられおり、外側容器2自体の力学的強度を増加させている。輪帯21aは、内側容器1と部分的に当接している。又、穴2aの周囲に円環状の段差21bが設けられ、穴2aに引張り応力が集中して亀裂が生じないように補強されている(図2参照)。
【0063】
図1において、口部11の外周には雄ねじ11aが形成されている(図2参照)。口部11の開口をキャップ31で封止し、更に口部11を蓋32で螺合することにより、容器10が密閉される。そして、液体薬品をこぼすことなく運搬できる。
【0064】
図1に示された外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21及び地板23を巻締めにより胴体に固着する、いわゆる天板固着式のペール缶となっている。又、図1に示された外側容器2は、天板21に吊手24を備えている。そして、吊手24を回動自在に支持する取付金具24aは、天板21にスポット溶接で接合されている。吊手24は、天板21の略中心に配置されている。
【0065】
外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21がバンド(図示せず)により胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式バンドタイプのペール缶としてもよい。この天板取り外し式バンドタイプのペール缶は、胴体22の天板21側に一対のイヤー(図示せず)を設け、一対のイヤーと回動可能に連結するつる状の取っ手(図示せず)を備えてもよい。
【0066】
又、外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21が複数の爪(図示せず)により胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式ラグタイプのペール缶としてもよい。そして、天板取り外し式ラグタイプのペール缶につる状の取っ手を備えることもできる。
【0067】
図1に示されるように、胴体22は、天板21側の面積が地板23側の面積より大きい直円すい台状に形成されている。しかし、胴体22は、直円柱状に形成されてもよい。このように、薄肉の鋼板が成形加工されたペール缶は、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して、製造が容易であり、廉価に製造できる。
【0068】
次に、本発明による液体薬品の分配装置に備わるディスペンサの構成を説明する。図2又は図3において、外周に雄ねじ11aを設ける口部11を利用して、ディスペンサ40を容器10に着脱容易に取り付けることができる。そして、ディスペンサ40は、円筒状のプラグ本体41と、内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段42と、液出しパイプ43と、を備えている。
【0069】
図2又は図3において、プラグ本体41は、一端が円形に開口されており、この開口の内周に雌めじ411を形成することにより、プラグ本体41を口部11にねじ結合できる。プラグ本体41の外周には、筋目ローレット412が形成されており、プラグ本体41を口部11に確実にねじ結合できる。又、プラグ本体41の開口には、シールリング41aが内装されており、プラグ本体41を口部11に締結することにより口部11を密封できる。
【0070】
図2又は図3において、通気手段42は、プラグ本体41の外部から口部11に向かって貫通する開口42bを含み、開口42bに接続するL字形(エルボ形)の合成樹脂製の第2ジョイント42aを含むことができる。第2ジョイント42aは、市販のエルボ形クイック継手を使用できる。そして、第2ジョイント42aをプラグ本体41の開口42bに接続して、内側容器1の内部に圧縮流体を通気できる。
【0071】
図2において、液出しパイプ43は、一端が内側容器1の底面に到達し、他端がプラグ本体41から突出し、プラグ本体41に密封可能に装着される。液出しパイプ43の一端431は斜めにカットされており、液出しパイプ43の他端432にL字形のジョイント(継手)45が接続されている。ジョイント45は、市販のエルボ形クイック継手を使用できる。
【0072】
図2又は図3において、ジョイント45は、ジョイント本体45aと、中心が開口された袋ナット45bと、で構成されている。液出しパイプ43の他端432は、円錐体状の段差が形成され、袋ナット45bをジョイント本体45aに締結することにより、シール接続できる。
【0073】
図2又は図3において、プラグ本体41は、カップリングリング41rとプラグシェル41sとシールリング41aで構成されている。カップリングリング41rは、口部11の外周に螺合できる。プラグシェル41sは、カップリングリング41rと回転可能に連結している。
【0074】
図2又は図3において、プラグシェル41sは、一端側にフランジを形成しており、カップリングリング41rの他端側の開口から離脱困難となっている。プラグシェル41sは、カップリングリング41rの一端側の開口から挿入されて組み込まれるが、シールリング41aに阻止されて、カップリングリング41rの一端側の開口からも離脱困難となっている。
【0075】
図2又は図3において、シールリング41aは、カップリングリング41rの内部に保持され、口部11の端面に密着して、カップリングリング41rとプラグシェル41sとの境界の通気を封止する。そして、プラグシェル41sは、通気手段42と、液出しパイプ43を着脱自在に固定する合成樹脂製の第1ジョイント44と、を配置している。
【0076】
図2又は図3において、第1ジョイント44は、市販のストレートタイプのホルダを利用できる。第1ジョイント44は、液出しパイプ43をプラグ本体41にスライド自在に保持できる。又、第1ジョイント44は、液出しパイプ43を着脱自在に固定できる。
【0077】
図2又は図3において、第1ジョイント44は、ボルト状の中空の本体44aと、中心が開口された袋ナット44bと、で構成されている。ボルト状の本体44aは、液出しパイプ43をスライド自在に保持でき、プラグシェル41sに締結可能な雄ねじ部441を一端側に有し、円錐状のスリーブ442を他端側に有している。袋ナット44bをボルト状の本体44aの他端側に締結すると、スリーブ442が縮径して、液出しパイプ43を第1ジョイント44に固定できる。袋ナット44bをボルト状の本体44aの他端側から開放すると、スリーブ442が復帰して、液出しパイプ43を引き抜くことができる。
【0078】
このように、第1ジョイント44を用いて、液出しパイプ43の一端が内側容器1の底面に到達するように位置調整できる。そして、通気手段42を介して、内側容器1の空気層に圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が液出しパイプ43の他端から排出される。
【0079】
次に、本発明による液体薬品の分配装置に備わる傾斜台の構成を説明する。図7において、第1実施例による傾斜台50は、本体51と一対の転倒防止ポール52・52を備えている。本体51は、水平面となる床面に対して12度に傾斜する斜面51aを形成している。一対の転倒防止ポール52・52は、斜面51aの低い方に立設している。
【0080】
図7において、本体51は、ステンレス板などの金属板からなり、展開された金属板の四周囲が折り曲げられて、斜面51aの対向面が開口された略台形の箱状に形成されている。転倒防止ポール52は、ステンレスなどの金属製丸棒からなり、転倒防止ポール52の一端に雌ねじ(図示せず)が設けられている。一方、本体51には、ボルトなどのねじ部材の入る穴(図示せず)が設けられている。そして、転倒防止ポール52が本体51にこのボルト(図示せず)で固定されている。
【0081】
図8において、第2実施例による傾斜台60は、本体61と一対の転倒防止ポール62・62を備えている。本体61は、水平面となる床面に対して30度に傾斜する斜面61aを形成している。一対の転倒防止ポール62・62は、斜面61aの低い方に立設している。
【0082】
図8において、本体61は、ステンレス板などの金属板からなり、展開された金属板の三周囲が折り曲げられて、斜面61aの対向面が開口された三角体の箱状に形成されている。転倒防止ポール62は、ステンレスなどの金属製丸棒からなり、転倒防止ポール62の一端に雌ねじ(図示せず)が設けられている。一方、本体61には、ボルトなどのねじ部材の入る穴(図示せず)が設けられている。そして、転倒防止ポール62が本体61にこのボルト(図示せず)で固定されている。
【0083】
次に、本発明による液体薬品の分配装置に備わる液体薬品用のペール缶の作用を説明する。
【0084】
本発明による容器10は、内側容器1が窒素などの圧縮流体で加圧されて、液体薬品が排出される。外側容器2は、内側容器1に加わる内圧に対して、内側容器1の変形を防止するように剛性を有している。剛性を有しているとは、外側容器2が剛性を有する金属板で形成されていることを含んでよく、内側容器1が膨張などで変形しないように、外側容器2が力学的構造を備えていることを含むことができる。
【0085】
例えば、図1に示された容器10は、定格容量が20リットルのペール缶であり、耐力が0.5kgf/cmとなっている。内側容器1は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンで成形されてよく、感光性樹脂組成物を含む液体薬品を収容することができる。
【0086】
本発明による液体薬品用のペール缶は、外側容器が薄肉の鋼板で成形加工されたペール缶となっており、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0087】
本発明による液体薬品用のペール缶は、液出しチューブ付きカップリングを内蔵して運搬される構成となっておらず、ディスペンサ側に液出しチューブを備える構成となっているので、液体薬品用容器の製造原価を引き下げることも可能である。
【0088】
又、本発明による液体薬品用のペール缶は、液体薬品が排出された後に廃棄されるワンウェイ方式の容器であるが、液出しチューブの洗浄の手間や、外側容器へのバッグの詰め替えの手間が省け、複式格納型の液体薬品用容器と比較して、総合的には経済的であるというメリットがある。
【0089】
次に、本発明による液体薬品の分配装置に備わるディスペンサの作用を説明する。
【0090】
図4に示されるように、ディスペンサ40は、第1ジョイント44、液出しパイプ43、及び第2ジョイント42aが予めプラグ本体41に組み込まれている。又、液出しパイプ43には、ジョイント45が接続されている。このように、各要素が一体となったディスペンサ40は、液出しパイプ43を先頭に容器10の口部11に挿入される(図4参照)。
【0091】
次に、図5に示されるように、プラグ本体41を回転して、容器10の口部11に締結することにより、ディスペンサ40を容器10に固定できる(図4参照)。図6に示された接続状態では、袋ナット44bを弛めることにより、液出しパイプ43の先端位置を調整することもできる。又、カップリングリング41r(図2参照)を弛めることにより、プラグシェル41s(図2参照)を任意の角度に回転できる。
【0092】
図6において、第2ジョイント42aにチューブ42cを接続し、チューブ42cの縁端から窒素ガスなどの不活性ガスを供給することにより、通気手段を介して、内側容器1の空気層に圧縮流体が加圧され、液体薬品が液出しパイプ43を介してジョイント45から排出される(図2参照)。
【0093】
本発明によるディスペンサは、円筒状のプラグ本体、通気手段、及び液出しパイプからなる、簡易な構成であり、ディスペンサに備わる通気手段を介して、液体薬品用のペール缶を直接加圧することにより液体薬品を分配できる。
【0094】
又、本発明によるディスペンサは、プラグ本体及び液出しパイプをポリオレフィンで構成し、液体薬品の品質に影響を与えないように考慮している。各種のジョイントも同様にポリオレフィンで構成している。
【0095】
次に、本発明による液体薬品の分配装置に備わる傾斜台の作用を説明する。
【0096】
図11において、特許文献1によるキャニスター缶となる外側容器716は、底面が外部に向かって突出する曲面を形成しており、かつ、液出しチューブ722がこの底面の中心に位置するように組み立て可能である。したがって、特許文献1による外側容器716は、液体薬品が容器内部に殆ど残らない、いわゆる残液特性に優れた容器となっている。
【0097】
一方、図1に示されたペール缶となる容器10は、内側容器1の底面及び地板23が平らであり、液出しパイプ43が内側容器1の底面の周縁に位置するように組み立てられる(図2参照)。したがって、容器10を床面に設置しただけでは、液体薬品が容器内部に残り易くなっている。内側容器1は、底面が外部に向かって突出する曲面を成形することは容易であるが、この内側容器1に密着するように、外側容器2を製缶することは困難であるという製造上の事情もある。
【0098】
ここで、容器10を傾斜配置することにより、残液特性の改善を試みた。図9は、水平面に対して12度に傾斜する斜面51aを形成する傾斜台50を用いて、容器10を傾斜配置している(図7参照)。図9において、容器10を傾斜配置した当初に液体薬品が口部11から溢れないことが確認された(図2参照)。そして、ディスペンサ40を容器10に接続して(図6参照)、容器10に充填された水溶液を分配した結果、残液は約100gとなり、特許文献1によるキャニスター缶の残液と略同じの残液特性となった。12度未満にペール缶を傾斜配置すると、液体薬品がペール缶の内部に残り易くなる。なお、図9において、容器10は直円錐台状に形成されている。
【0099】
図10は、水平面に対して30度に傾斜する斜面61aを形成する傾斜台60を用いて、容器10を傾斜配置している(図8参照)。図10において、30度を超えて容器10を傾斜配置すると、傾斜配置の当初に液体薬品が口部11から溢れる可能性があることが確認された(図2参照)。そして、ディスペンサ40を容器10に接続して(図6参照)、容器10に充填された水溶液を分配した結果、残液は約100gとなり、特許文献1によるキャニスター缶の残液と略同じの残液特性となった。なお、図10において、容器10は直円柱状に形成されている。
【0100】
本発明による液体薬品の分配装置は、液体薬品用のペール缶と、このペール缶の口部に接続されるディスペンサで構成されている。液体薬品用のペール缶は、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造としており、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0101】
又、ディスペンサは、円筒状のプラグ本体、通気手段、及び液出しパイプからなる、簡易な構成であり、ディスペンサに備わる通気手段を介して、液体薬品用のペール缶を直接加圧することにより液体薬品を分配できる。更に、傾斜台を用いて、液体薬品用のペール缶を傾斜配置することにより、液体薬品用のペール缶に液体薬品が残り難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明による液体薬品の分配装置に備わる液体薬品用のペール缶の一実施形態を示す斜視外観図である。
【図2】前記実施形態による液体薬品用のペール缶に接続するディスペンサの一実施形態を示す正面図であり、要部を断面で示している。
【図3】前記実施形態によるディスペンサの分解組立図であり、液体薬品用のペール缶が接続された状態図である。
【図4】前記実施形態によるディスペンサを液体薬品用のペール缶に接続する直前の状態を示す斜視外観図である。
【図5】前記実施形態によるディスペンサのプラグ本体を液体薬品用のペール缶の口部に締結している状態を示す斜視外観図である。
【図6】前記実施形態によるディスペンサを液体薬品用のペール缶に接続した状態を示す斜視外観図である。
【図7】前記実施形態による液体薬品用のペール缶を12度に傾斜配置する第1実施例による傾斜台の斜視外観図である。
【図8】前記実施形態による液体薬品用のペール缶を30度に傾斜配置する第2実施例による傾斜台の斜視外観図である。
【図9】前記第1実施例による傾斜台に液体薬品用のペール缶を配置した斜視外観図である。
【図10】前記第2実施例による傾斜台に液体薬品用のペール缶を配置した斜視外観図である。
【図11】従来技術による容器及びディスペンサからなる液体薬品の分配装置の正面図であり、要部を断面としている。
【符号の説明】
【0103】
1 内側容器
2 外側容器
10 液体薬品用のペール缶(容器)
11 口部
40 ディスペンサ
41 プラグ本体
42 通気手段
42b 開口
43 液出しパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて液体薬品を注入可能に開口する口部を有する耐薬合成樹脂製の内側容器、及びこの内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器、を備える液体薬品用のペール缶と、前記ペール缶の前記口部に接続するディスペンサと、備える液体薬品の分配装置であって、
前記ディスペンサは、前記口部に密封可能に締結する円筒状のプラグ本体と、前記プラグ本体の外部から前記口部に向かって貫通する開口を有し、前記内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、一端は前記内側容器の底面に到達し、他端は前記プラグ本体から突出し、前記プラグ本体に密封可能に装着される液出しパイプと、を備え、
前記通気手段を介して前記内側容器の空気層に前記圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が前記液出しパイプの他端から排出される液体薬品の分配装置。
【請求項2】
前記口部を当該内側容器の周縁近傍に配置し、前記液出しパイプの一端を当該口部に対向する当該内側容器の底面の部位に到達させ、前記口部に対向する部位が下方になるように当該ペール缶を傾斜配置する請求項1記載の液体薬品の分配装置。
【請求項3】
斜面を形成する本体と、この斜面の低い方に立設する一対の転倒防止ポールと、を備える傾斜台を更に備え、前記ペール缶を傾斜配置する請求項2記載の液体薬品の分配装置。
【請求項4】
前記ペール缶は、水平面に対して12度以上、30度以下に傾斜配置される請求項2又は3記載の液体薬品の分配装置。
【請求項5】
筒状に形成されて液体薬品を注入可能に開口する口部を有する耐薬合成樹脂製の内側容器、及びこの内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器、を備える液体薬品用のペール缶と、前記ペール缶の前記口部に接続するディスペンサと、を用いて、前記液体薬品を分配する方法であって、
前記ディスペンサは、前記口部に密封可能に締結する円筒状のプラグ本体と、前記プラグ本体の外部から前記口部に向かって貫通する開口を有し、前記内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、一端は前記内側容器の底面に到達し、他端は前記プラグ本体から突出し、前記プラグ本体に密封可能に装着される液出しパイプと、を備え、
前記通気手段を介して前記内側容器の空気層に前記圧縮流体が加圧されることにより、液体薬品が前記液出しパイプの他端から排出される液体薬品の分配方法。
【請求項6】
前記口部を当該内側容器の周縁近傍に配置し、前記液出しパイプの一端を当該口部に対向する当該内側容器の底面の部位に到達させ、前記口部に対向する部位が下方になるように当該ペール缶を傾斜配置する請求項5記載の液体薬品の分配方法。
【請求項7】
斜面を形成する本体と、この斜面の低い方に立設する一対の転倒防止ポールと、を備える傾斜台を用いて、前記ペール缶を傾斜配置する請求項6記載の液体薬品の分配方法。
【請求項8】
前記ペール缶は、水平面に対して12度以上、30度以下に傾斜配置される請求項6又は7記載の液体薬品の分配方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−100713(P2008−100713A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284010(P2006−284010)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】