液体試料の流路を有する分析用媒体及び液体試料を流動させる方法
【課題】 合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易な構造で行うことができる分析用媒体と、この分析用媒体を用いて合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易に行う方法を提案する。
【解決手段】 分析用媒体1は、回転可能に形成された基板2に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部4と該液体貯留部4から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路5とで構成される分析部3が形成されている。
【解決手段】 分析用媒体1は、回転可能に形成された基板2に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部4と該液体貯留部4から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路5とで構成される分析部3が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面または内部に液体試料の流路を設けた回転可能な構造を有する分析用媒体並びに、この分析用媒体を用いて液体試料の処理を行うために、流路で液体試料を流動させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特表2000−514928号公報には、ミクロ流体工学システムでの流動運動を駆動するために向心的加速を使用する装置及び装置が開示されている。このような装置を医学分野、生物学分野及び化学分野における微量分析または微量合成分析に用いることが提案されてきている。
【0003】
このような装置は、微細な毛細管状の流路を形成したディスクを用い、この流路に液体試料を流動させ、その間に合成反応、分析、測定を行うもので、液体試料を流動させる方法としてディスクの回転によって生じる遠心力を利用するものである。
【0004】
また、遠心力によって生じた液体試料の流れを合成反応や混合等の処理に適するように制御するため、流路の形状が設計されている。また、流路中の液体試料の流れをスムーズにするために、流路の終端部には空気抜き用の穴が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特表2000−514928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような装置においては、遠心力によって生じた液の流れのみを利用するため、合成反応や混合等の処理に適するように液体試料の流れを制御するための流路の形状が複雑になり、設計が煩雑になる傾向があった。このため、液体試料の混合、遠心分離等を簡易に行うことが困難であった。
【0007】
本発明は、合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易な構造で行うことができる分析用媒体と、この分析用媒体を用いて合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易に行う方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では第一の解決手段として、回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びる流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体において、前記流路の終端は閉塞されており、液体試料を前記液体貯留部に注入した時に、前記流路の終端に気体を貯留する気体貯留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。またさらに、前記分析部は複数形成されており、各分析部の液体貯留部が液体供給路で連結されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第一の解決手段によれば、前記気体貯留部の気体が前記流路中の液体試料を押し返す作用を有するので、遠心力によって発生する液体試料の流れを押し留め、さらには逆流させることができる。この作用によって液体試料の流れを制御することができる。また、分析部を複数形成して、各分析部の液体貯留部を液体供給路で連結することにより、同一の液体試料で複数の分析処理を一度に行うことができる。
【0009】
また第二の解決手段として、前記気体貯留部が前記流路より幅広の空間で形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第二の解決手段によれば、気体貯留部に貯留する気体の量が増えるので、液体試料の流れ込む量を多くすることができ、さらには逆流させる液体試料の体積がより大きくなる。また、液体試料を最終的に貯留することも可能になる。
【0010】
また第三の解決手段として、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に、液体試料を滞留させる滞留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第三の解決手段によれば、滞留部で合成反応、混合等の処理ができるようになり、各種測定をここで行うことが可能となる。また、試薬注入部を設けることによって、液体試料と試薬とを混合させることができるようになる。
【0011】
また第四の解決手段として、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に屈曲部が設けられていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第四の解決手段によれば、屈曲部によって遠心力の方向と液流の方向が変化するので、気体貯留部に達した液体試料を流路近傍に押し留め、さらには逆流させるときに気体貯留部に入った液体試料も流路に戻すことができる。
【0012】
また、本発明では、回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体を用い、遠心力によって前記液体試料を流動させる方法において、前記流路中の液体試料を、前記分析用媒体の回転速度を減速させることによって逆流させることを特徴とする液体試料の流動方法を提案する。これによって、従来実現できなかった液体試料の逆流が可能になり、複雑な流路を形成した分析用媒体を用いなくても、簡易な方法で合成反応、混合や遠心分離などの処理を行うことが可能になる。
【0013】
また、さらに本発明では前記分析用媒体の回転速度の加速と減速を交互に繰返すことを特徴とする液体試料の流動方法を提案する。これによって繰り返し処理が必要な合成反応等を、簡易な構造の分析用媒体で行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易な構造で行うことができる分析用媒体を得ることができ、さらにこの分析用媒体を用いて合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易に行う方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の分析用媒体及び液体試料の流動方法に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の分析用媒体の第一の実施形態を模式的に表した平面図である。分析用媒体1は、回転可能に形成された基板2に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部4と該液体貯留部4から遠心方向すなわち回転軸から遠ざかる方向に延びかつその終端が閉塞されている流路5とで構成される分析部3が形成されている。この分析部3は一つあればよいが、分析用媒体1の回転時のバランスを考慮して複数好ましくは3つ以上形成される。図1においてはこの分析部3が回転方向に複数並べて形成され、それぞれの分析部の液体貯留部は液体供給路9で連結されている。前記液体供給路9の両端には、それぞれ液体試料注入口7、空気抜き口8が設けられている。このような構成により、同一の液体試料で複数の分析処理を一度に行うことができる。
【0016】
基板2は、ポリカーボネート(PC)等の透光性樹脂で形成されている。基板2は1枚の板体で形成しても良いし、二枚以上の板体を貼り合せて形成しても良い。また、形状については本実施形態においては直径12cm程度のディスク状であるが、回転可能であれば特に限定はない。なお、ここで「回転可能に形成」とは、基板2の平面に対して垂直に延びる軸を回転軸として回転可能に形成されていることを言う。
【0017】
分析部3及び液体供給路9は基板2の表面または内部に形成されている。分析部3及び液体供給路9を基板2の表面に形成する場合は、基板面にスクリーン印刷やメタルマスク印刷等の方法で紫外線硬化樹脂等を塗布してパターンを形成し、このパターン上に樹脂フィルム等を貼り付けることにより形成できる。分析部3及び液体供給路9を基板2の内部に形成する場合は、パターンを形成した金型を用いてPC等の樹脂を射出成形して、パターン形状の凹部を形成した基板2を形成し、この凹部を樹脂フィルムまたはもう一枚の基板を貼り付けて塞ぐことにより形成できる。分析部3の流路5の内径は50〜500μm程度で、用いる液体試料の表面張力等を考慮して適宜設定可能である。液体試料注入口7及び空気抜き口8は液体供給路9の両端に穴あけ加工または金型により形成される。回転中に液体試料が噴出さないように、液体試料注入口7及び空気抜き口8は分析部3及び液体供給路9よりも内周側の位置に形成されることが望ましい。
【0018】
ここで本発明の分析用媒体の作用について、図2に基づいて説明する。図2は図1の分析部3(点線部分)の拡大図である。液体試料注入口7から注入された液体試料LSは、液体貯留部4に注入される。液体貯留部4に注入された液体試料LSは流路5に若干入り込む。しかし流路5は終端が閉塞されており、空気が存在するので、気体貯留部6が形成される。液体試料注入口7から注入された液体試料LSは液体供給路9を通って別の液体貯留部に注入される。なお、ここでは気体貯留部6に貯留される気体は空気であるが、例えば窒素雰囲気等で行われる場合には、窒素が貯留される場合もある。
【0019】
次に、液体試料LSを注入し終えた分析用媒体1を回転させ、遠心力を発生させる。すると液体貯留部4中の液体試料LSが遠心力によって発生した駆動力LFにより流路5内を流れる。一方気体貯留部6内の空気は液体試料LSによって圧縮される。これにより液体試料LSを押し返す力EFが発生し、駆動力LFと押し返す力EFが拮抗した所で液体試料LSの流れが止まる。
【0020】
ここで、分析用媒体の回転速度を加速すると、遠心力の増大に伴って駆動力LFが大きくなり、液体試料LSが流路5の更に奥まで流れ込む。しかし、回転速度を減速すると、遠心力が減少して駆動力LFが弱まるため、押し返す力EFによって液体試料LSが液体貯留部4の方へ逆流する。
【0021】
上記のような作用効果を用いた処理の例としては遠心分離がある。例えば液体試料LSとして血液を用い、これを液体貯留部4に注入する。分析用媒体を回転させて血液を流路5に流れ込ませる。一定の回転速度で遠心分離を行い血球と血漿に分離する。次に回転速度を徐々に減速させ、血漿を液体貯留部4の方へ逆流させる。重い血球は流路5内に残るため、血球と血漿とを分けることができる。
【0022】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。図3は本発明の分析用媒体の第二の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1aにおいて、第一の実施形態と異なる点は、流路5の終端に該流路5よりも幅広に形成された気体貯留部6aを有する分析部3aが形成されている点である。気体貯留部6aは流路5よりも幅広に形成されているので、貯留する空気の量が多くなり、液体試料の流れによる圧縮の余地が大きくなるので、より多く液体試料を流動させることができ、さらに逆流させる液体試料の体積をその分大きくすることができる。
【0023】
また、この構造による別の作用効果について、図4に基づいて説明する。図4は図3の分析部3a(点線部分)の拡大図である。分析用媒体1aを回転させて遠心力を発生させ、液体試料LSを流路5内に流し込む。液体試料LSが気体貯留部6aに達したとき、液体試料LSの一部が気体貯留部6a内に入り込む。分析用媒体1aの回転速度を減速させて流路5内の液体試料LSを逆流させても、気体貯留部6a内に入り込んだ液体試料LSの一部は逆流せずそのまま気体貯留部6a内に残る。このようにして、液体試料LSの一部を残すことができる。
【0024】
上記の作用効果を応用した処理としては、例えば遠心分離したものが溶液の状態で存在するものを分ける場合がある。遠心分離により流路5内で液体試料LSを重い物質の溶液と軽い物質の溶液とに分離する。さらに分析用媒体1aの回転速度を上げて重い物質の溶液を気体貯留部6aに達するようにする。重い物質の溶液が全部気体貯留部6aに入り込んだら回転速度を減速させて軽い物質の溶液を液体貯留部4の方へ逆流させる。これにより溶液を分離することができる。
【0025】
次に本発明の第三の実施形態について説明する。図5は本発明の分析用媒体の第三の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1bにおいて、第二の実施形態と異なる点は、液体貯留部4と気体貯留部6aとの間に液体試料を滞留させる滞留部10が形成されている点である。滞留部10は流路5よりも幅広に形成されているので、ここに入り込んだ液体試料を逆流させないようにして留めておくことができる。また、この滞留部10に液体試料を留めておくことで各種反応を行うこともできる。また、反応させた試料について、この滞留部10において測定を行うこともできる。なお、この滞留部10は、図面では一箇所設けられているが、必要に応じて複数箇所設けても良い。
【0026】
上記のような構成を応用した分析処理を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を例にとって説明する。PCR法は試料中に微量に存在する特定のDNAを選択的に増幅する方法であり、それによって増幅されたDNAは化学的に単一な物質として分析し、利用することができるものである。PCRの反応プロセスは、その一過程を(a)目的となる鋳型DNAの一本鎖DNAへの解離段階、(b)その一本鎖DNAと鋳型DNA上に選択される特定配列に二重鎖形成能を有するオリゴヌクレオチド(プライマーDNA)との二重鎖形成段階、及び(c)二重鎖形成したプライマーDNAの末端部分を開始点とするDNA伸長反応段階の3段階に分けられ、この一過程を複数回繰返し行う。このうち、(a)の段階は加熱された比較的高温下で行われ、(b)及び(c)の段階は非加熱の比較的低温下で行われる。そのため、PCR法では試料溶液を、高温と低温とを交互に繰返す温度サイクル下にさらすことが必要である。従来の分析用媒体では、例えば特開2005−295877号公報にあるように、蛇行形状に形成された流路を用い、試料溶液を高温領域と低温領域とを交互に通すようにしていた。
【0027】
ここで、本発明の分析用媒体を用いたPCR法によるDNA増幅の例を、図6に基づいて説明する。図6は図5の分析部3b(点線部分)の拡大図である。液体試料LSとして鋳型DNA、プライマリーDNA、熱抵抗性DNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチドを混合した水溶液を用意し、これを液体貯留部4に注入する。次に分析用媒体を回転させ、液体試料LSを流路5に流し込み、さらに滞留部10まで流し込む。ここで滞留部10に液体試料LSを充填させる。
【0028】
次に分析用媒体の回転速度をさらに加速して、液体試料LSを加熱領域HPまで流し込む。この加熱領域HPは、レーザー照射またはこの領域を加熱できるように分析装置に設置されたヒーター等の加熱手段によって局部的に加熱されている領域である。加熱領域HPで液体試料LSを加熱することによって、液体試料LS中の鋳型DNAが一本鎖DNAに解離する。
【0029】
次に分析用媒体の回転速度を減速して、液体試料LSを滞留部10まで逆流させる。これにより一本鎖DNAが滞留部10に送り込まれる。滞留部10は非加熱領域なので、低温下で行われるプライマーDNAとの二重鎖形成及びDNA伸長反応が起こる。こうして滞留部10内で鋳型DNAが複製される。
【0030】
次に再び回転速度を加速して、滞留部10中の液体試料LSを加熱領域HPまで流し込む。このように分析用媒体の回転の加速減速を繰返すことによって、液体試料LSを加熱領域と非加熱領域との間を交互に通すことができるので、温度サイクルを形成することができる。この温度サイクルは、従来においては流路の蛇行回数によって回数が制限されていたが、本発明では加速減速を繰返すことで温度サイクルが繰り返されるので、理論上無限回数繰返すことができる。また、温度サイクルの周期に関しても、従来の方法では液体試料を流路に流す速度で制御する必要があったが、本発明では加速減速の周期で制御することが可能になるので、従来よりも簡易な方法でPCR法を行うことができる。
【0031】
なお、滞留部10については、図7に示すように試薬注入部11を設けても良い。この試薬注入部11は、各分析部で異なる試薬を用いた反応を行う場合に有効であり、例えば先のPCR法の場合では、試薬注入部11からプライマリーDNAを注入することによって、各分析部で増幅するDNAの種類を変えることができ、一度に複数種類のDNAを増幅することができる。試薬注入部11は、試薬を注入したのち、レーザー照射による溶融またはシール等による封印などで塞いでも良い。また、この試薬注入部11は、試薬の注入の他に、滞留部10に溜まった反応後の液体試料LSを採取するための採取口として利用してもよい。
【0032】
次に本発明の第四の実施形態について説明する。図8は本発明の分析用媒体の第四の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1cにおいて、第三の実施形態と異なる点は、液体貯留部4と気体貯留部6aとの間に屈曲部12が設けられた流路5aを有している点である。
【0033】
この屈曲部12の作用は、図9(a)に示すように、気体貯留部6aに入り込んだ液体試料LSを、遠心力によって気体貯留部6aの入り口付近に留めておくことができることである。このように液体試料LSを入り口付近に留めておくことで、逆流させた時に気体貯留部6a内の液体試料LSも逆流させることができる。なお、気体貯留部6aの内部が液体試料LSに対してぬれ性が良い場合は、気体貯留部6aの内部表面に沿って液体試料LSが入り込んで入り口から離れることがある。このような場合は、図9(b)のように気体貯留部6a内部に仕切PTを設けることによって液体試料LSを入り口付近に留めておくことができる。なお、ここでは気体貯留部6aについて説明しているが、気体貯留部6aを滞留部10に置き換えても同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に本発明の第五の実施形態について説明する。図10は本発明の分析用媒体の第五の実施形態を模式的に表した平面図である。また、図11は図10のX−X線における分析用媒体1dの模式断面図である。図10に示された分析用媒体1dは、分析部3が形成されていない領域に、情報記録部13が形成されているものである。この情報記録部13は、CD−R等と同様に、レーザー光によって情報を記録できるもので、図11に示すように、色素等で構成される記録層14及び光を反射する反射層15を備えている。また図示していないが適宜保護層が形成される。また、図10では、分析部3より外周側に情報記録部13を形成しているが、内周側でも良い。
【0035】
この情報記録部13には、分析用媒体1dを用いて測定、分析した結果を記録するために用いられる。また、本発明の分析用媒体を用いる分析装置の回転速度の加速減速のタイミングや加速度の大きさ等を予め決められた手順で動作させるためのプログラムを、この情報記録部13に書き込んでおくこともできる。
【0036】
なお、この分析用媒体の別の形態として、図12に示すような、分析部3を形成した基板2と、情報記録部となる記録層14及び反射層15を形成した基板2aを貼り合せた分析用媒体がある。これはDVD±Rと同様の構造であり、記録装置や記録方法等、同様のものを用いることができる。情報記録部は、分析部と反対側の面にあるので、分析部と干渉することがない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、医学分野、生物学分野及び化学分野における微量分析または微量合成分析に用いることができる。なお、本発明の実施形態の説明にて例示した用途に限定されることは無く、様々な測定や分析に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の分析用媒体の第一の実施形態を示す模式平面図である。
【図2】分析部3の拡大図である。
【図3】本発明の分析用媒体の第二の実施形態を示す模式平面図である。
【図4】分析部3aの拡大図である。
【図5】本発明の分析用媒体の第三の実施形態を示す模式平面図である。
【図6】分析部3bの拡大図である。
【図7】分析部3bの別例を示す拡大図である。
【図8】本発明の分析用媒体の第四の実施形態を示す模式平面図である。
【図9】(a)は屈曲部による作用を示す図、(b)は気体貯留部に仕切を設けた場合を示す図である。
【図10】本発明の分析用媒体の第五の実施形態を示す模式平面図である。
【図11】図10のX−X線における模式断面図である。
【図12】本発明の分析用媒体の第五の実施形態の別の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、1a、1b、1c、1d 分析用媒体
2 基板
3、3a、3b、3c 分析部
4 液体貯留部
5、5a 流路
6、6a 気体貯留部
7 液体試料注入口
8 空気抜き口
9 液体供給路
10 滞留部
11 試薬注入部
12 屈曲部
13 情報記録部
14 記録層
15 反射層
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面または内部に液体試料の流路を設けた回転可能な構造を有する分析用媒体並びに、この分析用媒体を用いて液体試料の処理を行うために、流路で液体試料を流動させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特表2000−514928号公報には、ミクロ流体工学システムでの流動運動を駆動するために向心的加速を使用する装置及び装置が開示されている。このような装置を医学分野、生物学分野及び化学分野における微量分析または微量合成分析に用いることが提案されてきている。
【0003】
このような装置は、微細な毛細管状の流路を形成したディスクを用い、この流路に液体試料を流動させ、その間に合成反応、分析、測定を行うもので、液体試料を流動させる方法としてディスクの回転によって生じる遠心力を利用するものである。
【0004】
また、遠心力によって生じた液体試料の流れを合成反応や混合等の処理に適するように制御するため、流路の形状が設計されている。また、流路中の液体試料の流れをスムーズにするために、流路の終端部には空気抜き用の穴が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特表2000−514928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような装置においては、遠心力によって生じた液の流れのみを利用するため、合成反応や混合等の処理に適するように液体試料の流れを制御するための流路の形状が複雑になり、設計が煩雑になる傾向があった。このため、液体試料の混合、遠心分離等を簡易に行うことが困難であった。
【0007】
本発明は、合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易な構造で行うことができる分析用媒体と、この分析用媒体を用いて合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易に行う方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では第一の解決手段として、回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びる流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体において、前記流路の終端は閉塞されており、液体試料を前記液体貯留部に注入した時に、前記流路の終端に気体を貯留する気体貯留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。またさらに、前記分析部は複数形成されており、各分析部の液体貯留部が液体供給路で連結されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第一の解決手段によれば、前記気体貯留部の気体が前記流路中の液体試料を押し返す作用を有するので、遠心力によって発生する液体試料の流れを押し留め、さらには逆流させることができる。この作用によって液体試料の流れを制御することができる。また、分析部を複数形成して、各分析部の液体貯留部を液体供給路で連結することにより、同一の液体試料で複数の分析処理を一度に行うことができる。
【0009】
また第二の解決手段として、前記気体貯留部が前記流路より幅広の空間で形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第二の解決手段によれば、気体貯留部に貯留する気体の量が増えるので、液体試料の流れ込む量を多くすることができ、さらには逆流させる液体試料の体積がより大きくなる。また、液体試料を最終的に貯留することも可能になる。
【0010】
また第三の解決手段として、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に、液体試料を滞留させる滞留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第三の解決手段によれば、滞留部で合成反応、混合等の処理ができるようになり、各種測定をここで行うことが可能となる。また、試薬注入部を設けることによって、液体試料と試薬とを混合させることができるようになる。
【0011】
また第四の解決手段として、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に屈曲部が設けられていることを特徴とする分析用媒体を提案する。前記第四の解決手段によれば、屈曲部によって遠心力の方向と液流の方向が変化するので、気体貯留部に達した液体試料を流路近傍に押し留め、さらには逆流させるときに気体貯留部に入った液体試料も流路に戻すことができる。
【0012】
また、本発明では、回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体を用い、遠心力によって前記液体試料を流動させる方法において、前記流路中の液体試料を、前記分析用媒体の回転速度を減速させることによって逆流させることを特徴とする液体試料の流動方法を提案する。これによって、従来実現できなかった液体試料の逆流が可能になり、複雑な流路を形成した分析用媒体を用いなくても、簡易な方法で合成反応、混合や遠心分離などの処理を行うことが可能になる。
【0013】
また、さらに本発明では前記分析用媒体の回転速度の加速と減速を交互に繰返すことを特徴とする液体試料の流動方法を提案する。これによって繰り返し処理が必要な合成反応等を、簡易な構造の分析用媒体で行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易な構造で行うことができる分析用媒体を得ることができ、さらにこの分析用媒体を用いて合成反応、混合や遠心分離などの処理を簡易に行う方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の分析用媒体及び液体試料の流動方法に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の分析用媒体の第一の実施形態を模式的に表した平面図である。分析用媒体1は、回転可能に形成された基板2に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部4と該液体貯留部4から遠心方向すなわち回転軸から遠ざかる方向に延びかつその終端が閉塞されている流路5とで構成される分析部3が形成されている。この分析部3は一つあればよいが、分析用媒体1の回転時のバランスを考慮して複数好ましくは3つ以上形成される。図1においてはこの分析部3が回転方向に複数並べて形成され、それぞれの分析部の液体貯留部は液体供給路9で連結されている。前記液体供給路9の両端には、それぞれ液体試料注入口7、空気抜き口8が設けられている。このような構成により、同一の液体試料で複数の分析処理を一度に行うことができる。
【0016】
基板2は、ポリカーボネート(PC)等の透光性樹脂で形成されている。基板2は1枚の板体で形成しても良いし、二枚以上の板体を貼り合せて形成しても良い。また、形状については本実施形態においては直径12cm程度のディスク状であるが、回転可能であれば特に限定はない。なお、ここで「回転可能に形成」とは、基板2の平面に対して垂直に延びる軸を回転軸として回転可能に形成されていることを言う。
【0017】
分析部3及び液体供給路9は基板2の表面または内部に形成されている。分析部3及び液体供給路9を基板2の表面に形成する場合は、基板面にスクリーン印刷やメタルマスク印刷等の方法で紫外線硬化樹脂等を塗布してパターンを形成し、このパターン上に樹脂フィルム等を貼り付けることにより形成できる。分析部3及び液体供給路9を基板2の内部に形成する場合は、パターンを形成した金型を用いてPC等の樹脂を射出成形して、パターン形状の凹部を形成した基板2を形成し、この凹部を樹脂フィルムまたはもう一枚の基板を貼り付けて塞ぐことにより形成できる。分析部3の流路5の内径は50〜500μm程度で、用いる液体試料の表面張力等を考慮して適宜設定可能である。液体試料注入口7及び空気抜き口8は液体供給路9の両端に穴あけ加工または金型により形成される。回転中に液体試料が噴出さないように、液体試料注入口7及び空気抜き口8は分析部3及び液体供給路9よりも内周側の位置に形成されることが望ましい。
【0018】
ここで本発明の分析用媒体の作用について、図2に基づいて説明する。図2は図1の分析部3(点線部分)の拡大図である。液体試料注入口7から注入された液体試料LSは、液体貯留部4に注入される。液体貯留部4に注入された液体試料LSは流路5に若干入り込む。しかし流路5は終端が閉塞されており、空気が存在するので、気体貯留部6が形成される。液体試料注入口7から注入された液体試料LSは液体供給路9を通って別の液体貯留部に注入される。なお、ここでは気体貯留部6に貯留される気体は空気であるが、例えば窒素雰囲気等で行われる場合には、窒素が貯留される場合もある。
【0019】
次に、液体試料LSを注入し終えた分析用媒体1を回転させ、遠心力を発生させる。すると液体貯留部4中の液体試料LSが遠心力によって発生した駆動力LFにより流路5内を流れる。一方気体貯留部6内の空気は液体試料LSによって圧縮される。これにより液体試料LSを押し返す力EFが発生し、駆動力LFと押し返す力EFが拮抗した所で液体試料LSの流れが止まる。
【0020】
ここで、分析用媒体の回転速度を加速すると、遠心力の増大に伴って駆動力LFが大きくなり、液体試料LSが流路5の更に奥まで流れ込む。しかし、回転速度を減速すると、遠心力が減少して駆動力LFが弱まるため、押し返す力EFによって液体試料LSが液体貯留部4の方へ逆流する。
【0021】
上記のような作用効果を用いた処理の例としては遠心分離がある。例えば液体試料LSとして血液を用い、これを液体貯留部4に注入する。分析用媒体を回転させて血液を流路5に流れ込ませる。一定の回転速度で遠心分離を行い血球と血漿に分離する。次に回転速度を徐々に減速させ、血漿を液体貯留部4の方へ逆流させる。重い血球は流路5内に残るため、血球と血漿とを分けることができる。
【0022】
次に本発明の第二の実施形態について説明する。図3は本発明の分析用媒体の第二の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1aにおいて、第一の実施形態と異なる点は、流路5の終端に該流路5よりも幅広に形成された気体貯留部6aを有する分析部3aが形成されている点である。気体貯留部6aは流路5よりも幅広に形成されているので、貯留する空気の量が多くなり、液体試料の流れによる圧縮の余地が大きくなるので、より多く液体試料を流動させることができ、さらに逆流させる液体試料の体積をその分大きくすることができる。
【0023】
また、この構造による別の作用効果について、図4に基づいて説明する。図4は図3の分析部3a(点線部分)の拡大図である。分析用媒体1aを回転させて遠心力を発生させ、液体試料LSを流路5内に流し込む。液体試料LSが気体貯留部6aに達したとき、液体試料LSの一部が気体貯留部6a内に入り込む。分析用媒体1aの回転速度を減速させて流路5内の液体試料LSを逆流させても、気体貯留部6a内に入り込んだ液体試料LSの一部は逆流せずそのまま気体貯留部6a内に残る。このようにして、液体試料LSの一部を残すことができる。
【0024】
上記の作用効果を応用した処理としては、例えば遠心分離したものが溶液の状態で存在するものを分ける場合がある。遠心分離により流路5内で液体試料LSを重い物質の溶液と軽い物質の溶液とに分離する。さらに分析用媒体1aの回転速度を上げて重い物質の溶液を気体貯留部6aに達するようにする。重い物質の溶液が全部気体貯留部6aに入り込んだら回転速度を減速させて軽い物質の溶液を液体貯留部4の方へ逆流させる。これにより溶液を分離することができる。
【0025】
次に本発明の第三の実施形態について説明する。図5は本発明の分析用媒体の第三の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1bにおいて、第二の実施形態と異なる点は、液体貯留部4と気体貯留部6aとの間に液体試料を滞留させる滞留部10が形成されている点である。滞留部10は流路5よりも幅広に形成されているので、ここに入り込んだ液体試料を逆流させないようにして留めておくことができる。また、この滞留部10に液体試料を留めておくことで各種反応を行うこともできる。また、反応させた試料について、この滞留部10において測定を行うこともできる。なお、この滞留部10は、図面では一箇所設けられているが、必要に応じて複数箇所設けても良い。
【0026】
上記のような構成を応用した分析処理を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を例にとって説明する。PCR法は試料中に微量に存在する特定のDNAを選択的に増幅する方法であり、それによって増幅されたDNAは化学的に単一な物質として分析し、利用することができるものである。PCRの反応プロセスは、その一過程を(a)目的となる鋳型DNAの一本鎖DNAへの解離段階、(b)その一本鎖DNAと鋳型DNA上に選択される特定配列に二重鎖形成能を有するオリゴヌクレオチド(プライマーDNA)との二重鎖形成段階、及び(c)二重鎖形成したプライマーDNAの末端部分を開始点とするDNA伸長反応段階の3段階に分けられ、この一過程を複数回繰返し行う。このうち、(a)の段階は加熱された比較的高温下で行われ、(b)及び(c)の段階は非加熱の比較的低温下で行われる。そのため、PCR法では試料溶液を、高温と低温とを交互に繰返す温度サイクル下にさらすことが必要である。従来の分析用媒体では、例えば特開2005−295877号公報にあるように、蛇行形状に形成された流路を用い、試料溶液を高温領域と低温領域とを交互に通すようにしていた。
【0027】
ここで、本発明の分析用媒体を用いたPCR法によるDNA増幅の例を、図6に基づいて説明する。図6は図5の分析部3b(点線部分)の拡大図である。液体試料LSとして鋳型DNA、プライマリーDNA、熱抵抗性DNAポリメラーゼ及びDNAポリメラーゼの基質となるヌクレオチドを混合した水溶液を用意し、これを液体貯留部4に注入する。次に分析用媒体を回転させ、液体試料LSを流路5に流し込み、さらに滞留部10まで流し込む。ここで滞留部10に液体試料LSを充填させる。
【0028】
次に分析用媒体の回転速度をさらに加速して、液体試料LSを加熱領域HPまで流し込む。この加熱領域HPは、レーザー照射またはこの領域を加熱できるように分析装置に設置されたヒーター等の加熱手段によって局部的に加熱されている領域である。加熱領域HPで液体試料LSを加熱することによって、液体試料LS中の鋳型DNAが一本鎖DNAに解離する。
【0029】
次に分析用媒体の回転速度を減速して、液体試料LSを滞留部10まで逆流させる。これにより一本鎖DNAが滞留部10に送り込まれる。滞留部10は非加熱領域なので、低温下で行われるプライマーDNAとの二重鎖形成及びDNA伸長反応が起こる。こうして滞留部10内で鋳型DNAが複製される。
【0030】
次に再び回転速度を加速して、滞留部10中の液体試料LSを加熱領域HPまで流し込む。このように分析用媒体の回転の加速減速を繰返すことによって、液体試料LSを加熱領域と非加熱領域との間を交互に通すことができるので、温度サイクルを形成することができる。この温度サイクルは、従来においては流路の蛇行回数によって回数が制限されていたが、本発明では加速減速を繰返すことで温度サイクルが繰り返されるので、理論上無限回数繰返すことができる。また、温度サイクルの周期に関しても、従来の方法では液体試料を流路に流す速度で制御する必要があったが、本発明では加速減速の周期で制御することが可能になるので、従来よりも簡易な方法でPCR法を行うことができる。
【0031】
なお、滞留部10については、図7に示すように試薬注入部11を設けても良い。この試薬注入部11は、各分析部で異なる試薬を用いた反応を行う場合に有効であり、例えば先のPCR法の場合では、試薬注入部11からプライマリーDNAを注入することによって、各分析部で増幅するDNAの種類を変えることができ、一度に複数種類のDNAを増幅することができる。試薬注入部11は、試薬を注入したのち、レーザー照射による溶融またはシール等による封印などで塞いでも良い。また、この試薬注入部11は、試薬の注入の他に、滞留部10に溜まった反応後の液体試料LSを採取するための採取口として利用してもよい。
【0032】
次に本発明の第四の実施形態について説明する。図8は本発明の分析用媒体の第四の実施形態を模式的に表した平面図である。これに示された分析用媒体1cにおいて、第三の実施形態と異なる点は、液体貯留部4と気体貯留部6aとの間に屈曲部12が設けられた流路5aを有している点である。
【0033】
この屈曲部12の作用は、図9(a)に示すように、気体貯留部6aに入り込んだ液体試料LSを、遠心力によって気体貯留部6aの入り口付近に留めておくことができることである。このように液体試料LSを入り口付近に留めておくことで、逆流させた時に気体貯留部6a内の液体試料LSも逆流させることができる。なお、気体貯留部6aの内部が液体試料LSに対してぬれ性が良い場合は、気体貯留部6aの内部表面に沿って液体試料LSが入り込んで入り口から離れることがある。このような場合は、図9(b)のように気体貯留部6a内部に仕切PTを設けることによって液体試料LSを入り口付近に留めておくことができる。なお、ここでは気体貯留部6aについて説明しているが、気体貯留部6aを滞留部10に置き換えても同様の効果を得ることができる。
【0034】
次に本発明の第五の実施形態について説明する。図10は本発明の分析用媒体の第五の実施形態を模式的に表した平面図である。また、図11は図10のX−X線における分析用媒体1dの模式断面図である。図10に示された分析用媒体1dは、分析部3が形成されていない領域に、情報記録部13が形成されているものである。この情報記録部13は、CD−R等と同様に、レーザー光によって情報を記録できるもので、図11に示すように、色素等で構成される記録層14及び光を反射する反射層15を備えている。また図示していないが適宜保護層が形成される。また、図10では、分析部3より外周側に情報記録部13を形成しているが、内周側でも良い。
【0035】
この情報記録部13には、分析用媒体1dを用いて測定、分析した結果を記録するために用いられる。また、本発明の分析用媒体を用いる分析装置の回転速度の加速減速のタイミングや加速度の大きさ等を予め決められた手順で動作させるためのプログラムを、この情報記録部13に書き込んでおくこともできる。
【0036】
なお、この分析用媒体の別の形態として、図12に示すような、分析部3を形成した基板2と、情報記録部となる記録層14及び反射層15を形成した基板2aを貼り合せた分析用媒体がある。これはDVD±Rと同様の構造であり、記録装置や記録方法等、同様のものを用いることができる。情報記録部は、分析部と反対側の面にあるので、分析部と干渉することがない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、医学分野、生物学分野及び化学分野における微量分析または微量合成分析に用いることができる。なお、本発明の実施形態の説明にて例示した用途に限定されることは無く、様々な測定や分析に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の分析用媒体の第一の実施形態を示す模式平面図である。
【図2】分析部3の拡大図である。
【図3】本発明の分析用媒体の第二の実施形態を示す模式平面図である。
【図4】分析部3aの拡大図である。
【図5】本発明の分析用媒体の第三の実施形態を示す模式平面図である。
【図6】分析部3bの拡大図である。
【図7】分析部3bの別例を示す拡大図である。
【図8】本発明の分析用媒体の第四の実施形態を示す模式平面図である。
【図9】(a)は屈曲部による作用を示す図、(b)は気体貯留部に仕切を設けた場合を示す図である。
【図10】本発明の分析用媒体の第五の実施形態を示す模式平面図である。
【図11】図10のX−X線における模式断面図である。
【図12】本発明の分析用媒体の第五の実施形態の別の例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、1a、1b、1c、1d 分析用媒体
2 基板
3、3a、3b、3c 分析部
4 液体貯留部
5、5a 流路
6、6a 気体貯留部
7 液体試料注入口
8 空気抜き口
9 液体供給路
10 滞留部
11 試薬注入部
12 屈曲部
13 情報記録部
14 記録層
15 反射層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びる流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体において、
前記流路の終端は閉塞されており、液体試料を前記液体貯留部に注入した時に、前記流路の終端に気体を貯留する気体貯留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体。
【請求項2】
前記分析部は複数形成されており、各分析部の液体貯留部が液体供給路で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の分析用媒体。
【請求項3】
前記気体貯留部は、前記流路より幅広の空間で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項4】
前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に、液体試料を滞留させる滞留部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項5】
前記滞留部には、試薬注入部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の分析用媒体。
【請求項6】
前記流路は、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項7】
前記基板の、前記分析部が形成されていない領域に、情報記録部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項8】
回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体を用い、遠心力によって前記液体試料を流動させる方法において、
前記流路中の液体試料を、前記分析用媒体の回転速度を減速させることによって逆流させることを特徴とする液体試料の流動方法。
【請求項9】
前記分析用媒体の回転速度の加速と減速を交互に繰返すことを特徴とする請求項8に記載の液体試料の流動方法。
【請求項1】
回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びる流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体において、
前記流路の終端は閉塞されており、液体試料を前記液体貯留部に注入した時に、前記流路の終端に気体を貯留する気体貯留部が形成されていることを特徴とする分析用媒体。
【請求項2】
前記分析部は複数形成されており、各分析部の液体貯留部が液体供給路で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の分析用媒体。
【請求項3】
前記気体貯留部は、前記流路より幅広の空間で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項4】
前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に、液体試料を滞留させる滞留部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項5】
前記滞留部には、試薬注入部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の分析用媒体。
【請求項6】
前記流路は、前記液体貯留部と前記気体貯留部との間に屈曲部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項7】
前記基板の、前記分析部が形成されていない領域に、情報記録部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の分析用媒体。
【請求項8】
回転可能に形成された基板の表面または内部に、液体試料を貯留し供給する液体貯留部と該液体貯留部から遠心方向に延びかつその終端が閉塞されている流路とを有する一つ以上の分析部が形成されている分析用媒体を用い、遠心力によって前記液体試料を流動させる方法において、
前記流路中の液体試料を、前記分析用媒体の回転速度を減速させることによって逆流させることを特徴とする液体試料の流動方法。
【請求項9】
前記分析用媒体の回転速度の加速と減速を交互に繰返すことを特徴とする請求項8に記載の液体試料の流動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−83017(P2008−83017A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289224(P2006−289224)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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