説明

液体調味料

【課題】 食塩含有量が低いにもかかわらず十分に塩味を感じる液体調味料の提供。
【解決手段】 次の成分(A)〜(C):
(A)食塩9質量%以下、
(B)カリウム0.5〜4.2質量%、
(C)価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス、及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質を含有する液体調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油に代表される液体調味料は、日本料理だけでなく、各種の料理になくてはならない調味料として広く使用されている。一方、食塩の過多な摂取は、腎臓病、心臓病、高血圧症に悪影響を及ぼすことから、あらゆる飲食品が低食塩化されており、代表的なものとして減塩醤油が挙げられる。そして、減塩醤油は食塩含有量が9w/w%以下と定められている。
【0003】
このように食塩の摂取量を制限するには減塩された液体調味料の使用が望ましい。しかし、減塩された液体調味料は、食塩含有量が低いことから、いわゆる塩味が十分感じられず、味がもの足りないと感じる人が多い。そのため食塩の摂取量制限が勧められている割には、減塩された液体調味料は普及しておらず、減塩醤油は使用量が増加していない。
【0004】
液体調味料の味のもの足りなさを改良する手段としては、様々な取り組みがなされている。例えば、減塩醤油においては、食塩代替物として塩化カリウムを使用する方法があるが(特許文献1及び2)、同時に使用するクエン酸塩の味の影響や、糖アルコールにより塩味もマスキングされてしまうという問題点がある。また、減塩醤油にトレハロースを添加する方法(特許文献3)、カプサイシンを添加する方法(特許文献4)、シソ葉エキスを添加する方法(特許文献5)では、それら添加物の風味を異味として感じてしまうという問題点がある。低塩・淡色・高窒素にする方法(特許文献6)では、コク味の増強がみられるが塩味については言及されていない。更に、減塩醤油の技術ではないが、食塩を低減させた場合に塩味を増強する方法として、特定の有機酸、アミノ酸等を組み合わせて添加するという技術もある(特許文献7)。
【0005】
【特許文献1】特許第2675254号公報
【特許文献2】特公平06−97972号公報
【特許文献3】特開平10−66540号公報
【特許文献4】特開2001−245627号公報
【特許文献5】特開2002−165577号公報
【特許文献6】特公平05−007987号公報
【特許文献7】特開平11−187841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら従来の減塩された食品の風味を改良する取り組みは、それぞれ一定の効果を上げているが、未だ十分とはいえない。特に食塩含有量の低下と塩味の両立という点で十分とはいえない。
本発明の目的は、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味のある、液体調味料を提供することにある。
【0007】
なお、本願における「減塩醤油類」とは、製品100g中のナトリウム量が3550mg(食塩として9g)以下の「しょうゆ」、および「しょうゆ加工品」をいい、栄養改善法の病者用の特別用途食品に限定されるものではない。「しょうゆ」とは、日本農林規格に定めるところの液体調味料であり、「しょうゆ加工品」とは、日本農林規格に適合する「しょうゆ」に調味料、酸味料、香料、だし、エキス類等を添加した、「しょうゆ」と同様の用途で用いられる液体調味料をいう。ここで、本願で記載する「醤油」は、日本農林規格の「しょうゆ」と同一概念である。また、本願で記載する「液体調味料」は、減塩醤油類、及び減塩醤油の規格からは外れるが本願の要件を備えた調味料を含める概念とする。なお、液体調味料の業界においては、配合物質の含有量は、通常w/v%にて表記するが、本願においては、各成分の配合量は液体調味料全体中の質量%で記載した。この場合、例えば醤油の窒素分の場合、「1.6質量%」は、「1.9w/v%」に相当する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、食塩含有量を9質量%以下にしても塩味を感じさせる手段について検討してきた結果、食塩含有量を9質量%以下と低くし、かつカリウムを0.5〜4.2質量%とした系で、特定の風味改良成分を含有させることにより、塩味がより強く感じられ、味の良好な液体調味料が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C):
(A)食塩9質量%以下、
(B)カリウム0.5〜4.2質量%、
(C)価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質を含有する液体調味料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食塩含有量が9質量%以下であるにもかかわらず、塩味を十分に感じることのできる液体調味料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の液体調味料の(A)食塩の含有量は9質量%以下であるが、更に7〜9質量%、特に8〜9質量%であることが血圧降下作用及び風味(塩味を十分に感じる)の点から好ましい。なお、本発明における「含有量」とは、以下特に記載がない場合は、液体調味料全体中の割合をいう。
【0012】
本発明の液体調味料の(B)カリウムの含有量は0.5〜4.2質量%であるが、好ましくは1〜3.6質量%、更に1.5〜3.1質量%であることが、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味を増強させ、かつ苦味を生じない点から好ましい。また、カリウムは塩味があり、かつ異味が少ない点から塩化カリウムであることが好ましい。塩化カリウムを用いる場合は1〜7質量%、更に2〜6質量%、特に3〜5質量%配合することが好ましい。
【0013】
食塩含有量とカリウム含有量を前記範囲に調整するには、例えば仕込水として食塩と例えば塩化カリウムの混合溶液を用いて醤油を製造する方法;塩化カリウム単独の溶液を仕込水として用いて得た醤油と食塩水を単独で仕込水として用いて得た醤油とを混合する方法;食塩水を仕込水として用いた通常の醤油を電気透析、膜処理等によって食塩を除去した脱塩醤油に塩化カリウムを添加する方法等が挙げられる。
【0014】
本発明の液体調味料の成分(C)は風味改良剤として作用するものであり、価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質である。
【0015】
価数が2以下の有機酸又はその塩としては、乳酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、グルコン酸、パントテン酸、又は飽和脂肪族モノカルボン酸並びにこれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、又はカルシウム等のアルカリ土類金属の塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、アスコルビン酸も同様の作用を有するものとして用いられる。中でも乳酸、コハク酸、リンゴ酸又はその塩が好ましく、本発明の液体調味料中の含有量は、それぞれ遊離の酸に換算した場合、乳酸は0.9〜3質量%、更に1.3〜3質量%、特に1.5〜2.5質量%、コハク酸は0.004〜2質量%、更に0.06〜1.5質量%、特に0.1〜1質量%、リンゴ酸は0.05〜2質量%、更に0.1〜1.5質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。飽和脂肪族モノカルボン酸(炭素数6以上)は、本発明の液体調味料に1〜100質量ppm含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。その他のものは、本発明の液体調味料中に0.01〜3質量%、好ましくは0.02〜2質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0016】
リン酸のアルカリ金属塩には、リン酸二水素ナトリウム塩、リン酸水素二ナトリウム塩、リン酸三ナトリウム塩、リン酸二水素カリウム塩、リン酸水素二カリウム塩、リン酸三カリウム塩、トリポリリン酸ナトリウム塩、トリポリリン酸カリウム塩、メタリン酸ナトリウム塩、又はメタリン酸カリウム塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0017】
無機炭酸塩としては、炭酸のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、炭酸マグネシウム塩、重曹等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0018】
無機アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0019】
澱粉分解物には、デキストリン、酸分解澱粉、酸化澱粉、シクロデキストリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0020】
蛋白分解物としては、ゼラチン部分分解物、大豆ペプチド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0021】
甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等の人工甘味料、タマリンド莢エキス等の抽出甘味料、またショ糖、乳糖等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%、含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0022】
植物抽出エキスとしては、しそ抽出物、唐辛子抽出物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。しそ抽出物は、本発明の液体調味料中に0.01〜5質量%、好ましくは0.02〜3質量%含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。唐辛子抽出物は、本発明の液体調味料中に0.01〜5質量ppm、好ましくは0.02〜1質量ppm含有することが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。多糖類としては、カラギーナン、グアガム等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これらは、本発明の液体調味料中に0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%含有されることが、塩味の増強、また異味、苦味の低減等、醤油の風味を向上させる点から好ましい。
【0023】
本発明の液体調味料においては、成分(C)を除いた部分の液体調味料中の(D)窒素含有量が、成分(C)以外の物質により1.6質量%以上としたものであることが、食塩含有量が低いにもかかわらず塩味を増強させ、かつ苦味を生じない点から好ましい。また、窒素の含有量は1.6〜2質量%であることがより好ましい。通常、醤油においては窒素含有量を高くするとまろやかな味になり、塩味が低下するといわれているところ、食塩含有量が低く、カリウムが含まれている醤油であって、窒素含有量を上記範囲とすることにより、塩味が向上することは全く予想外であった。
【0024】
通常の醤油の窒素含有量は1.2〜1.6質量%であるが、窒素含有量を1.6質量%以上とするには、通常の方法で醸造した醤油に、アミノ酸等の窒素を含有する物質を本発明の規定範囲の量となるように添加すること、又は濃縮及び脱塩の工程を施すことにより達成できる。例えば、減塩濃縮法によって食塩を除去するとともに、水を主成分とする揮発成分での希釈率を調整する方法や、電気透析装置によって食塩を除去する際に起こるイオンの水和水の移動を利用して、窒素分も同時に濃縮する方法等がある。また、通常より食塩分の低い減塩醤油をRO膜や減圧濃縮により、窒素含有量を高める方法や、逆に、たまり醤油、再仕込み醤油のような窒素含有量の高い醤油から脱塩することによる方法等がある。
【0025】
本発明の液体調味料においては、窒素含有量を高める方法として、成分(C)以外の窒素を含有する物質を添加することが好ましい。窒素含有物質の中でも、アミノ酸、特に酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸が塩味の増強、及び持続性の点から好ましい。液体調味料中の含有量は、酸性アミノ酸が2質量%超、及び/又は塩基性アミノ酸が1質量%超であることが好ましい。また、酸性アミノ酸は2質量%超5質量%以下、更に2.4〜4.5質量%、特に2.5〜3.8質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましく、塩基性アミノ酸は1質量%超3質量%以下、更に1.2〜2.5質量%、特に1.5〜2質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。なお、本発明の液体調味料は、醸造調味料をベースとしたものが塩味の持続性、風味等の点から好ましいが、この場合には、アミノ酸は原料醤油由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には酸性アミノ酸、又は塩基性アミノ酸塩等を別添することが好ましい。なお、本発明にいう「酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸」は、遊離(フリー)のアミノ酸又はアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
【0026】
また、本発明の液体調味料においては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸の中でも酸性アミノ酸であるアスパラギン酸、グルタミン酸が塩味の持続性の点から好ましく、更に、アスパラギン酸とグルタミン酸を併用することが、塩味の持続性の点から好ましい。この場合、アスパラギン酸の含有量は1〜3質量%が好ましく、更に1.2〜2.5質量%、特に1.2〜2質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。アスパラギン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合にはL−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム等を別添することが好ましい。また、グルタミン酸の含有量は1〜2質量%が好ましく、更に1.2〜2質量%、特に1.3〜1.8質量%であることが、塩味の持続性の点から好ましい。グルタミン酸は、醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合にはL−グルタミン酸、L−グルタミン酸ナトリウム等を別添することが好ましい。
【0027】
塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びオルニチンが挙げられるが、中でもリジン、ヒスチジンが好ましく、特にヒスチジンが好ましい。リジンの含有量は0.5〜1質量%であることが塩味の刺激感の点で好ましく、ヒスチジンの含有量は0.2〜2質量%、更に0.5〜1質量%であることが、塩味の増強及び持続性の点から好ましい。これらの塩基性アミノ酸も醸造調味料をベースとした場合には原料由来のものも含み、上記範囲に満たない場合には、別添することが好ましい。
【0028】
本発明の液体調味料においては、特にアスパラギン酸/(B)カリウムの質量比が0.25以上であることが好ましく、更に0.3以上、特に0.46以上、殊更0.5以上であることが、塩化カリウム由来の苦味を消失させる点から好ましい。
【0029】
また、本発明の液体調味料においては、成分(C)を除いた部分の液体調味料中のアスパラギン酸/(D)窒素の含有量の質量比を0.5以上とすることが好ましい。当該質量比は、更に0.6以上、特に0.7以上であることが塩味を強くし、シャープさを向上させる点から好ましい。
【0030】
更に、本発明の液体調味料においては、更に、(E)核酸系調味料、及び他のアミノ酸系調味料等を含有することが相乗的に塩味を増強できる点、及び塩味のみならず、苦味の低減、醤油感の増強等の点から好ましい。
具体的には、核酸系調味料としては、5′−グアニル酸、5′−イノシン酸等のナトリウム、カリウムあるいはカルシウム塩等が挙げられる。核酸系調味料の含有量は00.005〜0.2質量%が好ましく、0.01〜0.1質量%が特に好ましい。
【0031】
他のアミノ酸系調味料としては酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、及びこれらの塩以外のもの、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、シスチン、スレオニン、チロシン、イソロイシンあるいはこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等が挙げられ、これらを1種又は2種以上配合することができる。アミノ酸系調味料の含有量は、それぞれ遊離のアミノ酸に換算した場合、グリシンは0.3質量%超、アラニンは0.7質量%超、フェニルアラニンは0.5質量%超、シスチンは質量%超、スレオニンは0質量%超、チロシンは0.2質量%超、イソロイシンは0.5質量%超であり、かつそれぞれ上限は1.5質量%以下が好ましい。中でもイソロイシンが塩味の持続性の点で好ましく、含有量は0.5質量%超1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の液体調味料においては、pHが3〜6.5、更に4〜6、特に4.5〜5.5であることが、風味が劣化しない点から好ましい。更に、塩素量4〜9質量%、固形分量20〜45質量%の特数値を有することが好ましい。
【0033】
また、本発明の液体調味料には、好み等に応じてエタノール、みりん、醸造酢等を添加することができ、つゆ、たれ等、種々の醤油加工品に応用できる。
【実施例】
【0034】
(1)試験品1及び2の調製法
カリウム含有量の異なる減塩醤油2種を、それぞれ減塩醤油A、及びBとした。これらの醤油をベース醤油として、それぞれ塩化カリウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L−グルタミン酸ナトリウム、各種風味改良剤を添加し、表1及び表2に示す配合量とした。
【0035】
(2)食塩含有量の測定法
食塩の含有量はナトリウム含有量を測定し、これを食塩の含有量に換算することにより求めた。ナトリウム含有量は原子吸光光度計(Z−6100形日立偏光ゼーマン原子吸光光度計)により測定した。
【0036】
(3)カリウム及び塩化カリウム含有量の測定法
カリウムの含有量は上述のナトリウム含有量測定のものと同じもので測定した。
【0037】
(4)窒素含有量の測定法
窒素濃度は全窒素分析装置(三菱化成TN−05型)により測定した。
【0038】
(5)遊離アミノ酸含有量の測定法
全系中の遊離アミノ酸含有量は、アミノ酸分析計(日立L−8800)により測定した。
【0039】
(6)評価方法
得られた液体調味料について、パネラー20名による2点識別試験法で塩味及び苦味を官能評価した。また、醤油としての風味の好ましさを総合評価として行った。なお、試験品1の対照は減塩醤油A、試験品2の対照は減塩醤油Bとした。総合評価は、下記の基準により行った。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0040】
〔総合評価の判断基準〕
5:非常に好ましい塩味を持ち、かつ、味の調和に優れている。
4:非常に好ましい塩味を持ち、味の調和がとれている。
3:良好な塩味を持ち、味の調和がとれている。
2:味の調和に若干欠ける。
1:味の調和に欠け、苦味や異味を感じる。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、減塩醤油Aに風味改良剤であるコハク酸二ナトリウムを0〜2%の範囲で添加した。この場合、塩化カリウムを4質量%となるように配合した。その結果、添加量が0.2質量%程度で良好な塩味が得られた(試験品1−1〜8)。
また、減塩醤油Aにコハク酸二ナトリウムを添加した系において、塩化カリウムを含有量を変化させた。この場合、コハク酸二ナトリウムは0.05質量%となるように配合した。その結果、液体調味料中に塩化カリウムを1〜7質量%の範囲で添加した場合に良好な塩味が得られ、さらに、2〜6質量%の範囲、特に3〜5質量%の範囲で非常に良好な塩味が得られた(試験品1−9〜17)。
更に、コハク酸二ナトリウム0.05質量%、塩化カリウム4質量%を減塩醤油Bに配合した場合には、減塩醤油Aの場合と比較してより塩味が強く、好ましい風味となった(試験品1−18)。
また、減塩醤油AにL−コハク酸二ナトリウム0.05%及び塩化カリウム4質量%を配合し、さらにL−アスパラギン酸ナトリウム1質量%及びL-グルタミン酸ナトリウム0.5質量%を添加した系では、より塩味が強く、好ましい風味となった(試験品1−19)。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示すように、ベース醤油を減塩醤油Bとし、種々の風味改良剤を添加した。この場合、塩化カリウムを4質量%、L−アスパラギン酸ナトリウム1質量%、L−グルタミン酸ナトリウム0.5質量%となるように配合した(試験品2−1〜22)。この結果、種々の風味改良剤の添加により、塩味が増強し、カリウムの苦味が抑制され、好ましい風味となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C):
(A)食塩9質量%以下、
(B)カリウム0.5〜4.2質量%、
(C)価数が2以下の有機酸又はその塩、リン酸のアルカリ金属塩、無機炭酸塩、無機アンモニウム塩、澱粉分解物、蛋白分解物、甘味料、植物抽出エキス及び多糖類から選択される1種又は2種以上の物質
を含有する液体調味料。
【請求項2】
成分(C)を除いた部分の液体調味料中の(D)窒素の含有量が、成分(C)以外の物質により1.6質量%以上としたものである請求項1記載の液体調味料。
【請求項3】
成分(C)を除いた部分の液体調味料中の(D)窒素の含有量を1.6質量%以上とするための、成分(C)以外の物質がアミノ酸を含むものである請求項2記載の液体調味料。
【請求項4】
液体調味料中に酸性アミノ酸2質量%超及び/又は塩基性アミノ酸1質量%超を含有するものである請求項1〜3に記載の液体調味料。
【請求項5】
液体調味料中にアスパラギン酸を1〜3質量%、グルタミン酸を1〜2質量%含有し、かつアスパラギン酸/(B)カリウム≧0.25(質量比)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体調味料。
【請求項6】
液体調味料が減塩醤油類である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体調味料。

【公開番号】特開2006−141223(P2006−141223A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332366(P2004−332366)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】