液処理用放電ユニット、及び調湿装置
【課題】液中で放電を行う液処理用放電ユニット、及びこの液処理用放電ユニットを備えた調湿装置において、対象となる液の浄化効率を向上させる放電ユニットを提供する。
【解決手段】液中に放電電極52と対向電極53とが設けられ、電源部60から放電電極と対向電極とに電位差が付与されると、放電電極から対向電極に向かって放電が生起し、この放電に伴い、液中に活性種が生成することによって、液中の溶解物質が分解されるとともに殺菌が行われる。
【解決手段】液中に放電電極52と対向電極53とが設けられ、電源部60から放電電極と対向電極とに電位差が付与されると、放電電極から対向電極に向かって放電が生起し、この放電に伴い、液中に活性種が生成することによって、液中の溶解物質が分解されるとともに殺菌が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中で放電を行って液を浄化する液処理用放電ユニットと、この液処理用放電ユニットを備えた調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液中の不純物等を除去して液を浄化する液浄化技術が広く知られている。この種の液浄化技術として、特許文献1には、放電を行って液を浄化する放電ユニットを備えた液処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の液処理装置は、水が流れる経路に放電電極と対向電極とを有する放電ユニットが設けられている。つまり、放電電極と対向電極とは液中に浸漬されている。放電電極は、基板とこの基板から突出する複数の突起とを有しており、いわゆる鋸歯状の電極を構成している。対向電極は、平板状に形成され、放電電極の複数の突起と対向するように配置されている。
【0004】
放電ユニットでは、電源から両者の電極へ電圧が印加されることで、放電電極の突起部から対向電極に向かって放電が生起する。液中では、放電に伴ってOHラジカル等の活性種が生成する。液中では、この活性種により、溶解物質(例えば窒素系化合物や有機系化合物等の有害物質)の分解や殺菌が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−252665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示のように、液中で放電を行う液処理用放電ユニットでは、放電電極が液中に浸かっている。つまり、放電電極の周囲の液は、空気と比較して導電し易くなっている。従って、放電電極と対向電極とに電圧が印加されると、放電電極の突起部先端だけでなく、突起部の周囲(突起部の根本部分や突起部を支持する基板等)からも対向電極に向かって放電が生じてしまう。即ち、液中に設けられた放電電極では、放電時において放電電流が分散してしまう。このように放電電流が分散すると、放電電極と対向電極との間の電界強度が小さくなってしまい、放電に伴って生成される活性種の量も少なくなる。その結果、液処理用放電ユニットによる液の浄化性能が損なわれるという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液中で放電を行う液処理用放電ユニット、及びこの液処理用放電ユニットを備えた調湿装置において、対象となる液の浄化効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、液中に設けられる放電電極(52)及び対向電極(53)と、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かって放電を生起するように両者の電極(52,53)に電位差を付与する電源部(60)とを有する液処理用放電ユニットを対象とする。そして、この液処理用放電ユニットは、上記放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)を備えていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明の液処理用放電ユニットでは、液中に放電電極(52)と対向電極(53)とが設けられる。電源部(60)から放電電極(52)と対向電極(53)とに電位差が付与されると、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって放電が生起する。この放電に伴い、液中ではOHラジカル、高速電子、励起分子等の活性種が生成する。この活性種により、液中の溶解物質(窒素系化合物や有機系化合物等の有害物質)が酸化分解されて除去される。また、この活性種により、液中の殺菌も行われる。
【0010】
本発明では、放電電極(52)の一部が絶縁部材(55)によって覆われる。このため、放電電極(52)の放電電流が液中で分散してしまうことが、この絶縁部材(55)によって抑制される。このため、放電電極(52)と対向電極(52)との間の電界強度が増大する。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)と接触しながら該放電電極(52)の一部を覆うように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、放電電極(52)の一部と絶縁部材(55)とが接触状態となる。これにより、放電電極(52)と液との間の接触面積は、従来例のものよりも小さくなる。このため、放電時において、放電電極(52)の表面から液中へ漏れてしまう放電電流が少なくなる。一方、放電電極(52)の表面のうち液中に露出された部分(露出部)からは、対向電極(53)へ向かって放電が行われる。つまり、放電電極(52)では、放電の基端となる部位の面積が従来例のものよりも小さくなる。このため、放電時には、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度が増大する。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記絶縁部材(55)には、上記放電電極(52)の一部を露出させるための少なくとも1つの開口(56)が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)に少なくとも1つの開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の表面の一部が開口(56)を通じて液中に露出される。放電時には、放電電極(52)での露出部から対向電極(53)に向かって放電が進展する。その結果、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度が増大する。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも内側に位置していることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも内側に凹むように位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって放電が生起されると、放電に伴う電気力線が絶縁部材(55)の開口(56)内壁に沿うように形成される。これにより、放電時の電界強度が更に大きくなり、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0017】
第5の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面と略同一平面上に位置していることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)の端面と概ね同じ平面上に位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)と液との接触面積が最小限に抑えられる。これにより、放電電流が分散してしまうことを回避でき、放電時の電界強度が更に大きくなる。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0019】
第6の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも外側に位置していることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)の端面よりも外側に突出するように位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって進展する放電の影響により、絶縁部材(55)における開口(56)近傍の部位が劣化してしまうことが抑制される。
【0021】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記絶縁部材(55)には、複数の開口(56)が形成されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、絶縁部材(55)に複数の開口(56)が形成される。これにより、放電時には、放電電極(52)における複数の開口(56)の各露出部位から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界の高い多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0023】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、放電電極(52)が棒状ないし線状に形成される。この放電電極(52)は、外周面が外周被覆部(55a)で覆われ、先端面が先端被覆部(55b)で覆われる。そして、この先端被覆部(55b)には、複数の開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の先端面が、複数の開口(56)を通じて液中に露出される。このため、放電時には、この先端面の複数の露出部(52a)から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界の高い多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0025】
第9の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、放電電極(52)が棒状ないし線状に形成され、外周面が外周被覆部(55a)で覆われ、先端面が先端被覆部(55b)で覆われる。そして、先端被覆部(55b)には、複数の開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の外周面が、複数の開口(56)を通じて液中に露出される。このため、放電時には、この外周面の複数の露出部(52a)から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界強度の大きな多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0027】
第10の発明では、第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記電源部(60)は、上記放電電極(52)が上記対向電極(53)よりも低電位となるように両者の電極(52,53)に電位差を付与することを特徴とする。
【0028】
第10の発明では、放電電極(52)が対向電極(53)よりも低電位となることで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電が行われる。これにより、放電時には、高電位となる対向電極(53)に向かって電子が飛び込むが、この電子が放電電極(52)に飛び込むことはない。このようにすると、放電電極(52)の表面のうち対向電極(53)に向かって露出する部位に電子が集中して衝突してしまうことを確実に回避できる。即ち、放電電極(52)は絶縁部材(55)に覆われて一部しか露出されないため、仮に放電電極(52)から対向電極(53)へプラス放電を行うようにすると、放電電極(52)の露出部に電子が集中して衝突してしまい、この露出部が比較的早い期間において損耗/劣化してしまう。これにより、放電電極(52)から所望とする放電を継続して安定的に行うことができないという問題が生じる。これに対し、本発明では、放電電極(52)の露出部に電子が飛び込まないため、露出部の損耗/劣化を防止して安定的な放電を継続して行うことができる。
【0029】
第11の発明は、第1乃至第10のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かってストリーマ放電を生起するように構成されていることを特徴とする。
【0030】
第11の発明では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってストリーマ放電が行われる。このストリーマ放電は、いわゆる電子なだれを伴う放電であり、例えばコロナ放電等と比較して、比較的低い電力で高密度の活性種を生成することができる。
【0031】
第12の発明は、水を貯留する貯留部(41)と、該貯留部(41)の水を空気中へ付与する加湿部(43)と、該貯留部(41)の水を浄化する液処理用放電ユニット(50)とを備えた調湿装置であって、上記液処理用放電ユニット(50)は、第1乃至第11のいずれか1つの液処理用放電ユニットで構成されていることを特徴とする。
【0032】
第12の発明の調湿装置では、貯留部(41)に貯留された水が加湿部(43)によって空気中へ付与され、室内空間等の加湿が行われる。また、液処理用放電ユニット(50)で放電が行われると、放電に伴って生成される活性種によって貯留部(41)内の水が浄化される。
【0033】
ここで、本発明の液処理用放電ユニット(50)の放電電極(52)は、その一部が露出されながら絶縁部材(55)で覆われている。このため、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、比較的高い密度の電気力線を伴う放電を生起することができ、貯留部(41)内の水中に多量の活性種を生成できる。従って、貯留部(41)内の水を確実に清浄化でき、清浄化した水を室内へ供給することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、放電電極(52)の表面の一部を絶縁部材(55)によって覆うことで、放電電極(52)の放電電流が水中で分散してしまうのを防止している。これにより、放電電極(52)と対向電極(53)との間で比較的電界強度の大きな放電を行うことができ、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。その結果、液中の溶解物質の分解効率や殺菌効率を向上でき、ひいてはこの液処理用放電ユニットによる液の浄化能力を向上できる。
【0035】
また、第2の発明では、放電電極(52)の一部に絶縁部材(55)を接触させることで、放電電極(52)から液中への漏れ電流を防止できるので、比較的低い電位差により放電を生起することが可能となる。従って、電源部(60)の電源電圧を小さくでき、電源部(60)の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、電源部(60)での消費電力も低減できる。
【0036】
上記第3の発明によれば、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)に開口(56)を形成することで、比較的単純な構造により、絶縁部材(55)の一部を液中に露出させることができる。
【0037】
ここで、第4の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも放電電極(52)の露出部(52a)が内側に位置しているため、開口(56)の内壁に沿うようにして比較的高密度の電気力線を形成しながら放電を行うことができる。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かう電界の強度が大きくなり、多量の活性種を高密度に生成できる。
【0038】
また、第5の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面と放電電極(52)の露出部(52a)とが同一平面上に位置しているため、放電電極(52)と液との接触面積を最小限に抑えることができる。このため、放電電極(52)から液中への漏れ電流を最小限に抑えることができる。従って、電界強度を増大させて液の浄化能力を更に向上でき、且つ漏れ電流の抑制に伴って電源部(60)の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0039】
第6の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも放電電極(52)の露出部(52a)が外側に位置しているため、露出部(52a)からの放電に伴ってその周囲の絶縁部材(55)が劣化してしまうことを抑制できる。また、絶縁部材(55)から放電電極(52)を突出させることで、突出先端部での電界の密度を高めることができ、活性種の生成を更に促すことができる。
【0040】
第7の発明では、放電電極(52)から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0041】
第8の発明では、棒状の放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)に複数の開口(56)を形成している。これにより、放電電極(52)の先端面から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0042】
同様に、第9の発明では、棒状の放電電極(52)の外周を覆う外周被覆部(55a)に複数の開口(56)を形成している。これにより、放電電極(52)の外周面から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0043】
第10の発明によれば、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電を行うようにしているので、電子が放電電極(52)の露出部に集中して叩き込まれてしまうことを確実に防止できる。従って、放電電極(52)の露出部の損耗/劣化を確実に回避して安定した放電を継続して行うことができる。
【0044】
第11の発明によれば、ストリーマ放電を行うことで消費電力が比較的小さく、且つ液浄化効率の高い液処理用放電ユニットを提供できる。
【0045】
第12の発明によれば、貯留部(41)の水(即ち、加湿水)を効率良く浄化できる調湿装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施形態に係る調湿装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る調湿装置の内部構造を表した概略の構成図である。
【図3】図3は、実施形態に係る放電ユニットの概略の構成図である。
【図4】図4は、変形例1の放電ユニットの概略の構成図である。
【図5】図5は、変形例2の放電ユニットの概略の構成図である。
【図6】図6は、変形例3の放電電極の概略の構成図であり、図6(A)は放電電極の縦断面図であり、図6(B)は放電電極を対向電極側から視た側面図である。
【図7】図7は、変形例4の放電電極の概略の構成図であり、図7(A)は放電電極の縦断面図であり、図7(B)は放電電極を対向電極側から視た側面図である。
【図8】図8は、変形例5の放電ユニットの概略の構成図である。
【図9】図9は、変形例5の放電電極の概略構成を示す斜視図である。
【図10】図10は、変形例6の放電ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、変形例7の放電ユニットの概略の構成図である。
【図12】図12は、その他の実施形態に係る第1の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【図13】図13は、その他の実施形態に係る第2の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【図14】図14は、その他の実施形態に係る第3の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0048】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る調湿装置(10)は、空気を加湿する加湿運転が可能に構成されている。また、上記調湿装置(10)は、空気を浄化するための種々の空気浄化手段を有している。
【0049】
図1及び図2に示すように、調湿装置(10)は、樹脂製のケーシング(11)内に加湿運転や空気浄化を行うための各種の構成機器が収納されたものである。このケーシング(11)は、幅方向寸法が前後方向の寸法よりも大きく、且つ高さ寸法が該幅方向や前後方向の寸法よりも大きい直方体状に形成されている。上記ケーシング(11)には、その前面及び側面の少なくとも一方に、ケーシング(11)内に空気を導入するための吸込口(12)が形成されている。また、上記ケーシング(11)には、その上部後方寄りの部位にケーシング(11)内の空気を室内へ吹き出すための吹出口(13)が形成されている。そして、上記ケーシング(11)の内部には、上記吸込口(12)から吹出口(13)に亘って、空気が流れる空気通路(14)が形成されている。なお、図1に示す調湿装置(10)では、上記ケーシング(11)の前面が、前面パネル(11a)によって覆われている。
【0050】
図2に示すように、空気通路(14)内には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、空気浄化手段(20)、加湿ユニット(40)(加湿機構)及び遠心ファン(15)が配設されている。
【0051】
〈空気浄化手段の構成〉
図2に示すように、空気浄化手段(20)は、空気通路(14)内を流れる空気を浄化するためのものであり、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)を有している。
【0052】
上記プレフィルタ(21)は、空気中に含まれる比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する集塵用のフィルタを構成している。
【0053】
上記イオン化部(22)は、空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電手段を構成している。このイオン化部(22)には、例えば線状の電極と、この線状の電極に対向する板状の電極とが設けられている。上記イオン化部(22)では、両電極に電源から電圧が印加されることで、両電極の間でコロナ放電が行われる。このコロナ放電により、空気中の塵埃が所定の電荷(正又は負の電荷)に帯電される。
【0054】
上記プリーツフィルタ(23)は、波板状の静電フィルタを構成している。つまり、プリーツフィルタ(23)では、上記イオン化部(22)で帯電された塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。なお、上記プリーツフィルタ(23)に光触媒等の脱臭用の材料を担持させても良い。
【0055】
〈加湿ユニットの構成〉
図2に示すように、加湿ユニット(40)は、液体としての加湿水を貯留する貯留部としての水タンク(41)と、該水タンク(41)内の水を汲み上げるための水車(42)と、該水車(42)によって汲み上げられた水を空気中へ付与するための加湿部としての加湿ロータ(43)と、該加湿ロータ(43)を回転駆動するための駆動モータ(44)とを備えている。また、加湿ユニット(40)は、加湿ロータ(43)を加熱するためのヒータ(48)も備えている。
【0056】
水タンク(41)は、図1にも示すように、上側が開口する横長の箱部材(45)と該箱部材(45)の上側を覆う蓋部材(46)とによって構成されている。この水タンク(41)は、ケーシング(11)の下部の空間内に、該水タンク(41)の長手方向がケーシング(11)の幅方向になるように設置され、該ケーシング(11)の側面に形成された引出口(11b)に対して出し入れ可能(スライド可能)に構成されている。即ち、水タンク(41)は、ケーシング(11)内に着脱自在に収容されている。これにより、水タンク(41)をケーシング(11)から引き出した状態で、該水タンク(41)内に加湿用の水を適宜補充することができる。
【0057】
水車(42)は、略円盤状に形成され、その軸心部に両面から厚み方向外方に突出するように回転軸(42a)が設けられている。この回転軸(42a)は、上記水タンク(41)の底面に立設された軸受部(図示省略)の上端に枢支されており、これにより、水車(42)は水タンク(41)内に回転自在に支持されている。また、上記水車(42)は、その下端部を含む所定部位が水タンク(41)内の水中に浸漬される高さ位置になるように、上記軸受部に支持されている。
【0058】
水車(42)には、ケーシング後方側に位置する側面(上記加湿ロータ(43)に面する側面)に複数の凹部(42b)が形成されている。これらの凹部(42b)は、加湿水を上記加湿ロータ(43)側へ汲み上げるための加湿用凹部を構成している。上記凹部(42b)は、上記水車(42)の径方向外側端部において周方向に等間隔になるように形成されている。また、上記凹部(42b)は、水車(42)の回転動作によって、水タンク(41)の水中に浸積する位置と、水中から引き出される位置との間を交互に変位する。これにより、水車(42)では、水中に浸漬する位置の凹部(42b)内に浸入した水を、液面の上方まで汲み上げることが可能となる。
【0059】
また、水車(42)の後側の側面上には、該水車(42)と同軸状に中間歯車(42d)が配設されていて、該中間歯車(42d)の外周面上には歯部(42c)が一体的に形成されている。この中間歯車(42d)の歯部(42c)は、後述する加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と噛み合うように構成されている。
【0060】
加湿ロータ(43)は、環状の従動歯車(43a)と、この従動歯車(43a)に内嵌して保持される円盤状の吸着部材(43b)とを有している。この吸着部材(43b)は、吸水性を有する不織布によって構成されている。上記加湿ロータ(43)は、上記水タンク(41)の満水時の水位よりも高い位置において、回転軸を介して回転自在に保持されている。また、上記加湿ロータ(43)は、その下端を含む所定部位が上記水車(42)と実質的に接触するように配置されている。つまり、上記加湿ロータ(43)は、水車(42)の凹部(42b)と軸方向(前後方向)に重なる部位を有している。これにより、上記加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)には、水車の凹部(42b)によって汲み上げられた水が吸収される。
【0061】
駆動モータ(44)は、ピニオン等を介して加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)を回転駆動するように構成されている。そして、駆動モータ(44)によって従動歯車(43a)が回転すると、該従動歯車(43a)と歯合する水車(42)が回転する。これにより、上記駆動モータ(44)によって、加湿ロータ(43)及び水車(42)を回転させることができる。
【0062】
ヒータ(48)は、加湿ロータ(43)の上流側の側面の上端部に近接するように配置されている。このヒータ(48)を設けることによって、上記加湿ロータ(43)に流入する空気を加熱することができ、その熱によって該加湿ロータ(43)の水を気化させて空気を加湿することができる。
【0063】
〈液処理用放電ユニットの構成〉
図2及び図3に示すように、調湿装置(10)は、水タンク(41)内に貯留される水を浄化するための液処理用放電ユニットとしての放電ユニット(50)を備えている。放電ユニット(50)は、水を浄化するための放電が行われる放電部(51)と、この放電部(51)の電源回路を構成する電源部(60)とを有している。
【0064】
放電部(51)は、水タンク(41)の内部において、水タンク(41)の底面寄りに配設されている。放電部(51)は、放電電極(52)と対向電極(53)とを有している。放電電極(52)は、水タンク(41)内の水中に浸漬されるように設けられている。放電電極(52)は、金属製であり、対向電極(53)側に向かって延びる棒状ないし線状に構成されている。この放電電極(52)は、軸直角断面が円形状に形成されているが、その軸直角断面を三角形状、四角形状、楕円形状等の他の形状としても良い。
【0065】
対向電極(53)は、水タンク(41)内の水中に浸漬されるように設けられている。対向電極(53)は、放電電極(52)の軸方向端部(先端)に対向するようにして、放電電極(52)と所定の間隔を介して配設されている。対向電極(53)は、金属製であり、その外形が平板形状をしており、複数の孔が開口する網目状ないし格子状に形成されている。対向電極(53)は、その一方の面が放電電極(52)の先端を向いている。
【0066】
電源部(60)は、直流高圧電源(61)とスイッチング機構(62)とを有している。スイッチング機構(62)は、直流電圧を所定周期で変動する所定波形の電圧に変換するものである。なお、スイッチング機構(62)の方式としては、例えば半導体スイッチング素子をON/OFFさせる方式や、回転する導体によって離間する2つの端子を周期的に導通させる、いわゆるロータリースパークギャップ方式や、離間する2つの端子の間隔を調整することで、両者の端子間で周期的に放電を行う放電ギャップ方式等を採用することができる。
【0067】
本実施形態では、放電電極(52)が直流高圧電源(61)の負極側と導通し、対向電極(53)は直流高圧電源(61)の正極側と導通している。また、直流高圧電源(61)の正極側は接地されており、対向電極(53)は実質的にはアース電位となっている。以上のようにして、電源部(60)は、放電電極(52)が対向電極(53)よりも低電位となるように、両者の電極(52,53)に電位差を付与する。これにより、本実施形態では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電が行われる(詳細は後述する)。
【0068】
放電ユニット(50)は、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)を有している。本実施形態の絶縁部材(55)は、棒状の放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)を含んでいる。つまり、外周被覆部(55a)は、円筒状に形成されており、放電電極(52)の外周全域を覆っている。即ち、本実施形態の絶縁部材(55)は、放電電極(52)における対向電極(53)側の端部を露出させるように、円形の開口(56)が形成されている。そして、放電電極(52)では、この開口(56)を通じて対向電極(53)に臨む部位が、露出部(52a)を構成している。なお、本実施形態の絶縁部材(55)では、対向電極(53)と反対側の端部にも開口が形成されている。しかしながら、絶縁部材(55)では、この開口を必ずしも形成しなくても良い。即ち、絶縁部材(55)は、対向電極(53)側の端部のみが開口する有底筒状であっても良い。
【0069】
また、本実施形態では、放電電極(52)の露出部(52a)の端面と、絶縁部材(55)の開口(56)の端面とが略同一面状となるように、放電電極(52)と絶縁部材(55)との相対的な位置関係が設定されている。換言すると、放電ユニット(50)では、放電電極(52)の露出部(52a)の端面と絶縁部材(55)の軸方向における対向電極(53)側の端面とによって、フラットな円形状の面が形成されており、この円形状の面が対向電極(53)と概ね平行になっている。
【0070】
以上のようにして、本実施形態では、放電電極(52)の表面の一部(先端部)が対向電極(53)に向かって露出され、放電電極(52)の外周面が絶縁部材(55)によって覆われている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0071】
−運転動作−
次に調湿装置(10)の運転動作について説明する。調湿装置(10)は、室内空気を浄化すると共に、この室内空気を加湿する加湿運転を行う。また、調湿装置(10)は、この加湿運転時や停止時において、水タンク(41)内の水を浄化する水浄化動作を行う(詳細は後述する)。
【0072】
〈加湿運転〉
加湿運転では、遠心ファン(15)が運転されるとともに、加湿ロータ(43)が駆動モータ(44)によって回転駆動される。また、イオン化部(22)の電極に電圧が印加されるとともに、ヒータ(48)が通電状態となる。
【0073】
遠心ファン(15)が運転されると、室内空気(図1及び図2の白抜きの矢印)が吸込口(12)からケーシング(11)内の空気通路(14)に導入される。空気通路(14)に導入された空気は、プレフィルタ(21)を通過して該プレフィルタ(21)で塵埃が捕捉された後、イオン化部(22)を通過する。イオン化部(22)では、対となる電極の間でコロナ放電が行われており、このコロナ放電により空気中の塵埃が帯電される。イオン化部(22)を通過した空気は、プリーツフィルタ(23)を通過する。プリーツフィルタ(23)では、イオン化部(22)で帯電した塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。プリーツフィルタ(23)を通過した空気は、ヒータ(48)で加熱された後、加湿ロータ(43)を通過する。
【0074】
加湿ユニット(40)では、水車(42)が回転することで、水タンク(41)内の水(加湿水)が加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に適宜供給される。
【0075】
具体的には、水車(42)が回転して該水車(42)の凹部(42b)が水タンク(41)内の加湿水中に浸漬することにより、凹部(42b)内に加湿水が浸入し、該凹部(42b)内に保持される。水車(42)がさらに回転すると、加湿水を保持した状態の凹部(42b)は、加湿水中から引き上げられて上方へ変位する。そして、上述のように、水車(42)の回転に伴って凹部(42b)が上方へ移動すると、該凹部(42b)は加湿ロータ(43)に徐々に近接するとともに、該凹部(42b)内に保持されている加湿水は自重によって徐々に該凹部(42b)から流出する。これにより、凹部(42b)内の加湿水は、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸着される。このような動作によって、加湿ユニット(40)において、加湿ロータ(43)に連続的に加湿水が供給される。
【0076】
なお、凹部(42b)は、水車(42)の回転によって最上端位置まで到達すると、該凹部(42b)内の加湿水が概ね全量流出するように構成されている。
【0077】
以上のようにして加湿水が吸着された加湿ロータ(43)を空気が通過すると、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸着された水分が空気中へ放出される。これにより、加湿水が空気中に付与されて、この空気の加湿が行われる。
【0078】
以上のようにして、清浄化及び加湿された空気は、吹出口(13)から室内へ供給される。なお、この加湿運転では、電源からイオン化部(22)への電圧の供給を停止することで、イオン化部(22)による空気の浄化を休止させながら室内を加湿する運転も可能である。
【0079】
〈水浄化動作〉
水タンク(41)内に加湿水が長期間に亘って貯留されると、水中でカビや雑菌等が繁殖することにより、水タンク(41)内の加湿水が汚染される場合がある。また、例えば空気通路(14)内を流れる空気中にアンモニア等の物質(有害物質や臭気物質)が含まれている場合、この物質が水中に溶解して水タンク(41)内の加湿水が汚染されることもある。従って、このように汚染された加湿水が上述のようにして室内へ供給されると、室内に雑菌や有害物質等を付与することになり、室内の清浄度を損なう虞がある。そこで、調湿装置(10)では、放電ユニット(50)によって水タンク(41)内の水を浄化する水浄化動作を行うようにしている。
【0080】
水浄化動作時には、電源部(60)から放電部(51)に対して所定の電位差が付与される。具体的には、電源部(60)では、直流高圧電源(61)の直流電圧が、スイッチング機構(62)によって周期的に変動する電圧となり、この変動した電圧が放電電極(52)と対向電極(53)とに印加される。これにより、放電部(51)では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってストリーマ放電が生起する。なお、本実施形態の放電部(51)では、放電電極(52)がマイナス電位となり、対向電極(53)がプラス電位となる、いわゆるマイナス放電が行われる。
【0081】
ここで、放電ユニット(50)の放電電極(52)は、その外周面が絶縁部材(55)の外周被覆部(55a)によって覆われており、水タンク(41)内の水と遮蔽されている。これに対し、放電電極(52)の先端の表面は、絶縁部材(55)によって覆われておらず、対向電極(53)を向くように露出する露出部(52a)を構成している。このため、放電部(51)でストリーマ放電が行われると、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって比較的高い密度の電気力線が形成されながら、放電が行われる。即ち、本実施形態の放電電極(52)は、一部が絶縁部材(55)によって覆われることで、放電電流が水中で分散してしまうことが抑制される。このため、放電電極(52)と対向電極(53)との間では、比較的高い電界強度で放電が行われる。その結果、放電電極(52)と対向電極(53)との間では、高濃度の活性種が多量に生成される。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とが接触することで、放電電極(52)と水との接触面積が小さくなっている。このため、放電電極(52)から水への漏れ電流も少なくなる。
【0082】
以上のようにして水中で生成された活性種は、水中の細菌や溶解物質等と接触する。これにより、水浄化動作では、活性種によって殺菌がなされ且つこの活性種によって溶解物質等が酸化分解される。その結果、水タンク(41)内の水が浄化されるので、その後の加湿動作では、清浄な水を室内に供給することができる。
【0083】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、放電電極(52)の表面の一部を対向電極(53)に向かって露出させながら、この放電電極(52)を絶縁部材(55)によって覆っている。このため、この絶縁部材(55)によって、放電電極(52)の放電電流が分散してしまうことを防止できる。これにより、放電電極(52)と対向電極(53)との間で電界強度の大きな放電を行うことができ、水タンク(41)内の水中において、高濃度の活性種を多量に生成できる。その結果、液中の溶解物質の分解効率や殺菌効率を向上でき、加湿水の浄化性能を高めることができる。従って、室内へ清浄な加湿水を供給できる調湿装置(10)を提供することができる。
【0084】
また、放電電極(52)と水との接触面積が小さくなることで、放電電極(52)の漏れ電流が少なくなる。従って、ストリーマ放電に要する電位差を低減できる。従って、電源部(60)の直流高圧電源(61)の電源電圧を低くすることができ、この直流高圧電源(61)の小型化、低コスト化を図ることができる。また、水浄化動作に要する消費電力も低減できる。
【0085】
また、放電電極(52)は、対向電極(53)を指向する棒状に形成され、この放電電極(52)の外周を外周被覆部(55a)によって覆うようにしている。このため、比較的簡素な構造により、放電電極(52)の露出部(52a)を対向電極(53)に対向させながら、放電電極(52)と水との接触面積を小さくできる。なお、実施形態1の放電電極(52)及び絶縁部材(55)を安易に成形する方法としては、軸周りの周囲が絶縁材(ビニール等)で覆われた電線(リード線)の先端を切断することで、線状の放電電極(52)の先端だけを水中に露出させることができる。
【0086】
また、本実施形態の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の露出部(52a)と絶縁部材(55)の開口(56)の端面とが同一平面(図3に示す平面P)上に位置している。これにより、放電電極(52)の露出部(52a)において、対向電極(53)に実質的に露出する面積は、絶縁部材(55)の開口(56)の面積のみとなる。このため、放電電極(52)の露出部(52a)の露出面積を最小限に抑えることができ、放電電流の分散を効果的に防止することができる。
【0087】
また、放電ユニット(50)では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かっていわゆるマイナス放電を行うようにしている。これにより、放電時には、高電位となる対向電極(53)に向かって電子が飛び込む。つまり、マイナス放電では、放電電極(52)に電子が飛び込むことがない。このようにすると、放電電極(52)の露出部(52a)に電子が集中して衝突してしまうことを確実に回避できる。その結果、電子の衝突に起因して露出部(52a)が損耗/劣化してしまうことを確実に回避でき、所望とする放電を安定的に継続して行うことができる。
【0088】
一方、本実施形態では、対向電極(53)に向かって電子が飛び込んでしまうが、放電電極(52)の露出部(52a)と比較すると、対向電極(53)の対向面積(対向電極(53)のうち放電電極(52)側の表面積)が極めて大きくなっている。このため、対向電極(53)には、電子が分散して衝突するため、対向電極(53)が損耗/劣化してしまうことはほとんどない。
【0089】
−実施形態の変形例−
上記実施形態の放電ユニット(50)については、以下のような各変形例の構成としても良い。
【0090】
〈変形例1〉
図4に示す変形例1では、上記実施形態の放電ユニット(50)において、棒状の放電電極(52)の露出部(52a)の端面が、絶縁部材(55)の開口(56)の端面(即ち、図4に示す平面P)よりも内側に位置している。つまり、棒状の放電電極(52)は、その先端が絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも凹むように配設されている。換言すると、放電電極(52)の露出部(52a)は、絶縁部材(55)の開口(56)内部において、対向電極(53)と対峙している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。変形例1のそれ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0091】
変形例1の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を形成しながらストリーマ放電が行われる。ここで、露出部(52a)の表面から放電が生起すると、この放電は円形の開口(56)の内周面に沿うようにして開口(56)の外側へ案内される。これにより、放電時の電気力線が対向電極(53)を指向するように高密度に形成され、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度を増大できる。その結果、変形例1の水タンク(41)内の水中において、高濃度の活性種を多量に生成できる。
【0092】
〈変形例2〉
図5に示す変形例2では、上記実施形態の放電ユニット(50)において、棒状の放電電極(52)の露出部(52a)の端面が、絶縁部材(55)の開口(56)の端面(即ち、図5に示す平面P)よりも外側に位置している。つまり、棒状の放電電極(52)は、その先端が絶縁部材(55)の開口(56)の端面から突出するように配設されている。換言すると、放電電極(52)の露出部(52a)は、絶縁部材(55)の開口(56)の外部において、対向電極(53)と対峙している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。変形例2のそれ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0093】
変形例2の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を形成しながらストリーマ放電が行われる。ここで、このように露出部(52a)を開口(56)よりも外側に突出させると、露出部(52a)から進展する放電の影響により、絶縁部材(55)が劣化、あるいは溶融してしまうことを防止できる。従って、このような絶縁部材(55)の劣化等に伴い放電電極(52)の露出面積が大きくなってしまうことも防止でき、これにより、絶縁部材(55)による漏れ電流の防止効果が低下してしまうことも回避できる。
【0094】
〈変形例3〉
図6(A)及び(B)に示す変形例3では、棒状の放電電極(52)の外周面が外周被覆部(55a)によって覆われるとともに、この放電電極(52)の先端面が先端被覆部(55b)によって覆われている。つまり、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)は、外周被覆部(55a)と先端被覆部(55b)とを有している。そして、放電電極(52)は、その先端面(先端被覆部(55b))が対向電極(53)を指向するように配設されている。
【0095】
先端被覆部(55b)には、比較的小径となる複数の開口(56)が形成されている。これらの複数の開口(56)は、例えば先端被覆部(55b)の軸心部に形成される中央側開口(56a)と、この中央側開口(56a)の周囲に放射状に配列される複数の外側開口(56b)とで構成されている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0096】
以上のように先端被覆部(55b)に複数の開口(56)が形成されることで、放電電極(52)の先端面には、各開口(56)に対応する複数の円形の露出部(52a)が形成される。そして、これらの複数の露出部(52a)が対向電極(53)を向くように水中に露出されている。
【0097】
変形例3の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の各露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、それぞれストリーマ放電が行われる。これにより、放電電極(52)からは、比較的高密度の電気力線を伴う複数の放電が同時に進展する。その結果、変形例3の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0098】
〈変形例4〉
図7(A)及び(B)に示す変形例4では、棒状の放電電極(52)の外周面が外周被覆部(55a)によって覆われるとともに、この放電電極(52)の端面が先端被覆部(55b)によって覆われている。つまり、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)は、外周被覆部(55a)と先端被覆部(55b)とを有している。そして、放電電極(52)は、棒状の放電電極(52)の外周面の一部が対向電極(53)を向くように配設されている。つまり、変形例4では、棒状の放電電極(52)の軸心と、面状ないし平板状の対向電極(53)とが実質的に平行に配置されている。
【0099】
変形例4の絶縁部材(55)では、外周被覆部(55a)のうち対向電極(53)側寄りの部位に、比較的小径となる複数の開口(56)が形成されている。これらの複数の開口(56)は、放電電極(52)の軸方向に所定の間隔をおいて配列されている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0100】
以上のように外周被覆部(55a)に複数の開口(56)が形成されることで、放電電極(52)の外周面には、各開口(56)に対応する複数の円形の露出部(52a)が形成されている。そして、これら複数の露出部(52a)が対向電極(53)を向くように水中に露出されている。
【0101】
変形例4の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の各露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、それぞれストリーマ放電が行われる。これにより、放電電極(52)からは、比較的高密度の電気力線を伴う複数の放電が同時に進展する。その結果、変形例4の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0102】
〈変形例5〉
図8及び図9に示す放電ユニット(50)は、上記実施形態と放電電極(52)の構成が異なっている。変形例5の放電電極(52)は、基部(52b)と複数の突起部(52c)とを有している。基部(52b)は、平板状に形成されており、対向電極(53)と平行となるように該対向電極(53)と向かい合っている。複数の突起部(52c)は、基部(52b)の厚さ方向の両端面のうち、対向電極(53)側の面に形成されている。各突起部(52c)は、円錐状に形成されており、その頂部が対向電極(53)を指向するように突出している。また、基部(52b)では、各突起部(52c)が高さ方向及び幅方向において、互いに所定の間隔を置くように配列されている(図9を参照)。
【0103】
変形例5では、絶縁部材(55)が放電電極(52)の基部(52b)の全域を覆うように形成されている。また、絶縁部材(55)には、各突起部(52c)に対応するように複数の開口(56)が形成されている。つまり、絶縁部材(55)には、各突起部(52c)が貫通するように複数の開口(56)が形成されている。これらの開口(56)により、放電電極(52)の各突起部(52c)の先端側部位が、対向電極(53)を向くように水中に露出している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0104】
変形例5の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の各突起部(52c)の先端から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を伴う放電が同時に進展する。特に、各突起部(52c)では、その先端において放電が集中するため、電気力線の密度を更に高めることができる。その結果、変形例4の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0105】
〈変形例6〉
図10に示す変形例6の放電ユニット(50)は、上記実施形態と放電電極(52)の構成が異なっている。変形例6の放電電極(52)は、薄板状に形成されている。そして、放電電極(52)の厚さ方向の両端面には、それぞれ薄膜状の絶縁部材(55c,55c)が形成されている。つまり、変形例6では、薄膜状の2枚の絶縁部材(55c,55c)の間に放電電極(52)が挟み込まれている。放電電極(52)と絶縁部材(55c,55c)とは実質的に接触している。なお、板状の放電電極(52)の両面にそれぞれ絶縁部材(55)を形成する方法としては、例えばセラミック等の絶縁部材を放電電極(52)の両面にそれぞれ吹き付けたり、貼り付けたりする方法が挙げられる。また、薄膜状の絶縁部材(55c,55c)の膜厚は、数μm以下であることが好ましい。
【0106】
変形例6の放電電極(52)では、絶縁部材(55c,55c)の間に露出部(52a)が形成され、この露出部(52a)が対向電極(53)を向いて水中に露出している。このため、放電時には、この露出部(52a)と対向電極(53)との間に、比較的高い高密度の電界を形成でき、水中に高密度の活性種を多量に生成することができる。
【0107】
〈変形例7〉
図11に示す変形例7の放電ユニット(50)は、上記実施形態と対向電極(53)の構成が異なっている。変形例7の対向電極(53)は、その外形がお椀状ないし略半球状に形成され、且つ複数の孔が外交する網目状ないし格子状に形成されている。対向電極(53)は、棒状の放電電極(52)の長手方向の延長線上において、その中心の頂部が位置するように配設されている。これにより、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)までの距離は、対向電極(53)の内壁全域に亘って概ね等しくなっている。
【0108】
変形例7の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の先端(露出部(52a))から対向電極(53)の内壁に向かって放射状ないしフレア状に進展する。このため、活性種を高濃度且つ広範囲に生成でき、水タンク(41)内の水浄化効率を高めることができる。
【0109】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0110】
上記実施形態(各変形例も含む)では、放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)が、放電電極(52)と接触している。しかしながら、例えば図12〜14に示すように、放電電極(52)と絶縁部材(55)との間に僅かな隙間を形成しつつ、放電電極(52)の一部を絶縁部材(55)で覆うようにしても良い。
【0111】
また、上記実施形態の絶縁部材(55)は、放電電極(52)の露出部(52a)が対向電極(53)に対向するように放電電極(52)の一部を覆っている。しかしながら、例えば図15に示すように、放電電極(52)から対向電極(53)に向かう放電が許容されるのであれば、放電電極(52)の露出部(52a)を必ずしも対向電極(53)に対向させる配置としなくても良い。なお、図15の例の対向電極(53)は、筒状の絶縁部材(55)の外周側に設けられたリング状に形成されている。
【0112】
上記実施形態では、放電電極(52)をマイナス電位として対向電極(53)をプラス電位とすることで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってマイナス放電を行うようにしている。しかしながら、放電電極(52)をプラス電位として対向電極(53)をマイナス電位とするように電源部(60)を構成することで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってプラス放電を行うようにしても良い。
【0113】
また、上記実施形態では、放電ユニット(50)に放電電極(52)が1つだけ設けられているが、放電ユニット(50)に複数の放電電極(52)を設けるようにしても良い。また、上記実施形態では、対向電極(53)の外形が略板状に形成されているが、例えば対向電極(53)を線状ないし棒状としても良いし、対向電極(53)を点形状としても良い。同様に、放電電極(52)を点状、あるいは板状に形成しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、放電電極(52)側にだけ絶縁部材(55)を設けるようにしているが、対向電極(53)側においても、対向電極(53)の一部を露出させるように絶縁部材(55)を設けても良い。この場合には、対向電極(53)の露出部を放電電極(52)側に露出させることで、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度を増大できる。
【0115】
また、上記実施形態の放電ユニット(50)では、放電電極(52)と対向電極(53)との間でストリーマ放電を行うようにしているが、例えばコロナ放電やグロー放電等の他の放電が生起されるように放電ユニット(50)を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明したように、本発明は、液中で放電を行って液を浄化する液処理用放電ユニットと、この液処理用放電ユニットを備えた調湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 調湿装置
41 水タンク(貯留部)
43 加湿ロータ(加湿部)
50 放電ユニット(液処理用放電ユニット)
52 放電電極
52a 露出部
53 対向電極
55 絶縁部材
55a 外周被覆部
55b 先端被覆部
56 開口
60 電極部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中で放電を行って液を浄化する液処理用放電ユニットと、この液処理用放電ユニットを備えた調湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液中の不純物等を除去して液を浄化する液浄化技術が広く知られている。この種の液浄化技術として、特許文献1には、放電を行って液を浄化する放電ユニットを備えた液処理装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の液処理装置は、水が流れる経路に放電電極と対向電極とを有する放電ユニットが設けられている。つまり、放電電極と対向電極とは液中に浸漬されている。放電電極は、基板とこの基板から突出する複数の突起とを有しており、いわゆる鋸歯状の電極を構成している。対向電極は、平板状に形成され、放電電極の複数の突起と対向するように配置されている。
【0004】
放電ユニットでは、電源から両者の電極へ電圧が印加されることで、放電電極の突起部から対向電極に向かって放電が生起する。液中では、放電に伴ってOHラジカル等の活性種が生成する。液中では、この活性種により、溶解物質(例えば窒素系化合物や有機系化合物等の有害物質)の分解や殺菌が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−252665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示のように、液中で放電を行う液処理用放電ユニットでは、放電電極が液中に浸かっている。つまり、放電電極の周囲の液は、空気と比較して導電し易くなっている。従って、放電電極と対向電極とに電圧が印加されると、放電電極の突起部先端だけでなく、突起部の周囲(突起部の根本部分や突起部を支持する基板等)からも対向電極に向かって放電が生じてしまう。即ち、液中に設けられた放電電極では、放電時において放電電流が分散してしまう。このように放電電流が分散すると、放電電極と対向電極との間の電界強度が小さくなってしまい、放電に伴って生成される活性種の量も少なくなる。その結果、液処理用放電ユニットによる液の浄化性能が損なわれるという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液中で放電を行う液処理用放電ユニット、及びこの液処理用放電ユニットを備えた調湿装置において、対象となる液の浄化効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、液中に設けられる放電電極(52)及び対向電極(53)と、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かって放電を生起するように両者の電極(52,53)に電位差を付与する電源部(60)とを有する液処理用放電ユニットを対象とする。そして、この液処理用放電ユニットは、上記放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)を備えていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明の液処理用放電ユニットでは、液中に放電電極(52)と対向電極(53)とが設けられる。電源部(60)から放電電極(52)と対向電極(53)とに電位差が付与されると、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって放電が生起する。この放電に伴い、液中ではOHラジカル、高速電子、励起分子等の活性種が生成する。この活性種により、液中の溶解物質(窒素系化合物や有機系化合物等の有害物質)が酸化分解されて除去される。また、この活性種により、液中の殺菌も行われる。
【0010】
本発明では、放電電極(52)の一部が絶縁部材(55)によって覆われる。このため、放電電極(52)の放電電流が液中で分散してしまうことが、この絶縁部材(55)によって抑制される。このため、放電電極(52)と対向電極(52)との間の電界強度が増大する。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)と接触しながら該放電電極(52)の一部を覆うように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、放電電極(52)の一部と絶縁部材(55)とが接触状態となる。これにより、放電電極(52)と液との間の接触面積は、従来例のものよりも小さくなる。このため、放電時において、放電電極(52)の表面から液中へ漏れてしまう放電電流が少なくなる。一方、放電電極(52)の表面のうち液中に露出された部分(露出部)からは、対向電極(53)へ向かって放電が行われる。つまり、放電電極(52)では、放電の基端となる部位の面積が従来例のものよりも小さくなる。このため、放電時には、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度が増大する。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記絶縁部材(55)には、上記放電電極(52)の一部を露出させるための少なくとも1つの開口(56)が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明では、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)に少なくとも1つの開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の表面の一部が開口(56)を通じて液中に露出される。放電時には、放電電極(52)での露出部から対向電極(53)に向かって放電が進展する。その結果、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度が増大する。
【0015】
第4の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも内側に位置していることを特徴とする。
【0016】
第4の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも内側に凹むように位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって放電が生起されると、放電に伴う電気力線が絶縁部材(55)の開口(56)内壁に沿うように形成される。これにより、放電時の電界強度が更に大きくなり、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0017】
第5の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面と略同一平面上に位置していることを特徴とする。
【0018】
第5の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)の端面と概ね同じ平面上に位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)と液との接触面積が最小限に抑えられる。これにより、放電電流が分散してしまうことを回避でき、放電時の電界強度が更に大きくなる。その結果、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0019】
第6の発明は、第3の発明において、上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも外側に位置していることを特徴とする。
【0020】
第6の発明では、放電電極(52)の露出部(52a)が絶縁部材(55)の開口(56)の端面よりも外側に突出するように位置する。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって進展する放電の影響により、絶縁部材(55)における開口(56)近傍の部位が劣化してしまうことが抑制される。
【0021】
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記絶縁部材(55)には、複数の開口(56)が形成されていることを特徴とする。
【0022】
第7の発明では、絶縁部材(55)に複数の開口(56)が形成される。これにより、放電時には、放電電極(52)における複数の開口(56)の各露出部位から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界の高い多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0023】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする。
【0024】
第8の発明では、放電電極(52)が棒状ないし線状に形成される。この放電電極(52)は、外周面が外周被覆部(55a)で覆われ、先端面が先端被覆部(55b)で覆われる。そして、この先端被覆部(55b)には、複数の開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の先端面が、複数の開口(56)を通じて液中に露出される。このため、放電時には、この先端面の複数の露出部(52a)から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界の高い多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0025】
第9の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする。
【0026】
第9の発明では、放電電極(52)が棒状ないし線状に形成され、外周面が外周被覆部(55a)で覆われ、先端面が先端被覆部(55b)で覆われる。そして、先端被覆部(55b)には、複数の開口(56)が形成される。これにより、放電電極(52)の外周面が、複数の開口(56)を通じて液中に露出される。このため、放電時には、この外周面の複数の露出部(52a)から対向電極(53)へ向かってそれぞれ放電が生起する。その結果、電界強度の大きな多数の放電を同時に生起することができ、放電に伴って生成される活性種の量も増大する。
【0027】
第10の発明では、第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記電源部(60)は、上記放電電極(52)が上記対向電極(53)よりも低電位となるように両者の電極(52,53)に電位差を付与することを特徴とする。
【0028】
第10の発明では、放電電極(52)が対向電極(53)よりも低電位となることで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電が行われる。これにより、放電時には、高電位となる対向電極(53)に向かって電子が飛び込むが、この電子が放電電極(52)に飛び込むことはない。このようにすると、放電電極(52)の表面のうち対向電極(53)に向かって露出する部位に電子が集中して衝突してしまうことを確実に回避できる。即ち、放電電極(52)は絶縁部材(55)に覆われて一部しか露出されないため、仮に放電電極(52)から対向電極(53)へプラス放電を行うようにすると、放電電極(52)の露出部に電子が集中して衝突してしまい、この露出部が比較的早い期間において損耗/劣化してしまう。これにより、放電電極(52)から所望とする放電を継続して安定的に行うことができないという問題が生じる。これに対し、本発明では、放電電極(52)の露出部に電子が飛び込まないため、露出部の損耗/劣化を防止して安定的な放電を継続して行うことができる。
【0029】
第11の発明は、第1乃至第10のいずれか1つの発明において、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かってストリーマ放電を生起するように構成されていることを特徴とする。
【0030】
第11の発明では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってストリーマ放電が行われる。このストリーマ放電は、いわゆる電子なだれを伴う放電であり、例えばコロナ放電等と比較して、比較的低い電力で高密度の活性種を生成することができる。
【0031】
第12の発明は、水を貯留する貯留部(41)と、該貯留部(41)の水を空気中へ付与する加湿部(43)と、該貯留部(41)の水を浄化する液処理用放電ユニット(50)とを備えた調湿装置であって、上記液処理用放電ユニット(50)は、第1乃至第11のいずれか1つの液処理用放電ユニットで構成されていることを特徴とする。
【0032】
第12の発明の調湿装置では、貯留部(41)に貯留された水が加湿部(43)によって空気中へ付与され、室内空間等の加湿が行われる。また、液処理用放電ユニット(50)で放電が行われると、放電に伴って生成される活性種によって貯留部(41)内の水が浄化される。
【0033】
ここで、本発明の液処理用放電ユニット(50)の放電電極(52)は、その一部が露出されながら絶縁部材(55)で覆われている。このため、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、比較的高い密度の電気力線を伴う放電を生起することができ、貯留部(41)内の水中に多量の活性種を生成できる。従って、貯留部(41)内の水を確実に清浄化でき、清浄化した水を室内へ供給することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、放電電極(52)の表面の一部を絶縁部材(55)によって覆うことで、放電電極(52)の放電電流が水中で分散してしまうのを防止している。これにより、放電電極(52)と対向電極(53)との間で比較的電界強度の大きな放電を行うことができ、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。その結果、液中の溶解物質の分解効率や殺菌効率を向上でき、ひいてはこの液処理用放電ユニットによる液の浄化能力を向上できる。
【0035】
また、第2の発明では、放電電極(52)の一部に絶縁部材(55)を接触させることで、放電電極(52)から液中への漏れ電流を防止できるので、比較的低い電位差により放電を生起することが可能となる。従って、電源部(60)の電源電圧を小さくでき、電源部(60)の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、電源部(60)での消費電力も低減できる。
【0036】
上記第3の発明によれば、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)に開口(56)を形成することで、比較的単純な構造により、絶縁部材(55)の一部を液中に露出させることができる。
【0037】
ここで、第4の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも放電電極(52)の露出部(52a)が内側に位置しているため、開口(56)の内壁に沿うようにして比較的高密度の電気力線を形成しながら放電を行うことができる。このため、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かう電界の強度が大きくなり、多量の活性種を高密度に生成できる。
【0038】
また、第5の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面と放電電極(52)の露出部(52a)とが同一平面上に位置しているため、放電電極(52)と液との接触面積を最小限に抑えることができる。このため、放電電極(52)から液中への漏れ電流を最小限に抑えることができる。従って、電界強度を増大させて液の浄化能力を更に向上でき、且つ漏れ電流の抑制に伴って電源部(60)の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0039】
第6の発明によれば、絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも放電電極(52)の露出部(52a)が外側に位置しているため、露出部(52a)からの放電に伴ってその周囲の絶縁部材(55)が劣化してしまうことを抑制できる。また、絶縁部材(55)から放電電極(52)を突出させることで、突出先端部での電界の密度を高めることができ、活性種の生成を更に促すことができる。
【0040】
第7の発明では、放電電極(52)から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0041】
第8の発明では、棒状の放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)に複数の開口(56)を形成している。これにより、放電電極(52)の先端面から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0042】
同様に、第9の発明では、棒状の放電電極(52)の外周を覆う外周被覆部(55a)に複数の開口(56)を形成している。これにより、放電電極(52)の外周面から複数の開口(56)を通じて多数の放電を同時に生起できる。しかも、これらの放電は電界が集中しているため、液中に多量の活性種を高密度に生成できる。
【0043】
第10の発明によれば、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電を行うようにしているので、電子が放電電極(52)の露出部に集中して叩き込まれてしまうことを確実に防止できる。従って、放電電極(52)の露出部の損耗/劣化を確実に回避して安定した放電を継続して行うことができる。
【0044】
第11の発明によれば、ストリーマ放電を行うことで消費電力が比較的小さく、且つ液浄化効率の高い液処理用放電ユニットを提供できる。
【0045】
第12の発明によれば、貯留部(41)の水(即ち、加湿水)を効率良く浄化できる調湿装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、実施形態に係る調湿装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る調湿装置の内部構造を表した概略の構成図である。
【図3】図3は、実施形態に係る放電ユニットの概略の構成図である。
【図4】図4は、変形例1の放電ユニットの概略の構成図である。
【図5】図5は、変形例2の放電ユニットの概略の構成図である。
【図6】図6は、変形例3の放電電極の概略の構成図であり、図6(A)は放電電極の縦断面図であり、図6(B)は放電電極を対向電極側から視た側面図である。
【図7】図7は、変形例4の放電電極の概略の構成図であり、図7(A)は放電電極の縦断面図であり、図7(B)は放電電極を対向電極側から視た側面図である。
【図8】図8は、変形例5の放電ユニットの概略の構成図である。
【図9】図9は、変形例5の放電電極の概略構成を示す斜視図である。
【図10】図10は、変形例6の放電ユニットの概略構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、変形例7の放電ユニットの概略の構成図である。
【図12】図12は、その他の実施形態に係る第1の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【図13】図13は、その他の実施形態に係る第2の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【図14】図14は、その他の実施形態に係る第3の例の放電ユニットの概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0048】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る調湿装置(10)は、空気を加湿する加湿運転が可能に構成されている。また、上記調湿装置(10)は、空気を浄化するための種々の空気浄化手段を有している。
【0049】
図1及び図2に示すように、調湿装置(10)は、樹脂製のケーシング(11)内に加湿運転や空気浄化を行うための各種の構成機器が収納されたものである。このケーシング(11)は、幅方向寸法が前後方向の寸法よりも大きく、且つ高さ寸法が該幅方向や前後方向の寸法よりも大きい直方体状に形成されている。上記ケーシング(11)には、その前面及び側面の少なくとも一方に、ケーシング(11)内に空気を導入するための吸込口(12)が形成されている。また、上記ケーシング(11)には、その上部後方寄りの部位にケーシング(11)内の空気を室内へ吹き出すための吹出口(13)が形成されている。そして、上記ケーシング(11)の内部には、上記吸込口(12)から吹出口(13)に亘って、空気が流れる空気通路(14)が形成されている。なお、図1に示す調湿装置(10)では、上記ケーシング(11)の前面が、前面パネル(11a)によって覆われている。
【0050】
図2に示すように、空気通路(14)内には、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、空気浄化手段(20)、加湿ユニット(40)(加湿機構)及び遠心ファン(15)が配設されている。
【0051】
〈空気浄化手段の構成〉
図2に示すように、空気浄化手段(20)は、空気通路(14)内を流れる空気を浄化するためのものであり、空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(21)、イオン化部(22)、プリーツフィルタ(23)を有している。
【0052】
上記プレフィルタ(21)は、空気中に含まれる比較的大きな塵埃を物理的に捕捉する集塵用のフィルタを構成している。
【0053】
上記イオン化部(22)は、空気中の塵埃を帯電させる塵埃荷電手段を構成している。このイオン化部(22)には、例えば線状の電極と、この線状の電極に対向する板状の電極とが設けられている。上記イオン化部(22)では、両電極に電源から電圧が印加されることで、両電極の間でコロナ放電が行われる。このコロナ放電により、空気中の塵埃が所定の電荷(正又は負の電荷)に帯電される。
【0054】
上記プリーツフィルタ(23)は、波板状の静電フィルタを構成している。つまり、プリーツフィルタ(23)では、上記イオン化部(22)で帯電された塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。なお、上記プリーツフィルタ(23)に光触媒等の脱臭用の材料を担持させても良い。
【0055】
〈加湿ユニットの構成〉
図2に示すように、加湿ユニット(40)は、液体としての加湿水を貯留する貯留部としての水タンク(41)と、該水タンク(41)内の水を汲み上げるための水車(42)と、該水車(42)によって汲み上げられた水を空気中へ付与するための加湿部としての加湿ロータ(43)と、該加湿ロータ(43)を回転駆動するための駆動モータ(44)とを備えている。また、加湿ユニット(40)は、加湿ロータ(43)を加熱するためのヒータ(48)も備えている。
【0056】
水タンク(41)は、図1にも示すように、上側が開口する横長の箱部材(45)と該箱部材(45)の上側を覆う蓋部材(46)とによって構成されている。この水タンク(41)は、ケーシング(11)の下部の空間内に、該水タンク(41)の長手方向がケーシング(11)の幅方向になるように設置され、該ケーシング(11)の側面に形成された引出口(11b)に対して出し入れ可能(スライド可能)に構成されている。即ち、水タンク(41)は、ケーシング(11)内に着脱自在に収容されている。これにより、水タンク(41)をケーシング(11)から引き出した状態で、該水タンク(41)内に加湿用の水を適宜補充することができる。
【0057】
水車(42)は、略円盤状に形成され、その軸心部に両面から厚み方向外方に突出するように回転軸(42a)が設けられている。この回転軸(42a)は、上記水タンク(41)の底面に立設された軸受部(図示省略)の上端に枢支されており、これにより、水車(42)は水タンク(41)内に回転自在に支持されている。また、上記水車(42)は、その下端部を含む所定部位が水タンク(41)内の水中に浸漬される高さ位置になるように、上記軸受部に支持されている。
【0058】
水車(42)には、ケーシング後方側に位置する側面(上記加湿ロータ(43)に面する側面)に複数の凹部(42b)が形成されている。これらの凹部(42b)は、加湿水を上記加湿ロータ(43)側へ汲み上げるための加湿用凹部を構成している。上記凹部(42b)は、上記水車(42)の径方向外側端部において周方向に等間隔になるように形成されている。また、上記凹部(42b)は、水車(42)の回転動作によって、水タンク(41)の水中に浸積する位置と、水中から引き出される位置との間を交互に変位する。これにより、水車(42)では、水中に浸漬する位置の凹部(42b)内に浸入した水を、液面の上方まで汲み上げることが可能となる。
【0059】
また、水車(42)の後側の側面上には、該水車(42)と同軸状に中間歯車(42d)が配設されていて、該中間歯車(42d)の外周面上には歯部(42c)が一体的に形成されている。この中間歯車(42d)の歯部(42c)は、後述する加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)と噛み合うように構成されている。
【0060】
加湿ロータ(43)は、環状の従動歯車(43a)と、この従動歯車(43a)に内嵌して保持される円盤状の吸着部材(43b)とを有している。この吸着部材(43b)は、吸水性を有する不織布によって構成されている。上記加湿ロータ(43)は、上記水タンク(41)の満水時の水位よりも高い位置において、回転軸を介して回転自在に保持されている。また、上記加湿ロータ(43)は、その下端を含む所定部位が上記水車(42)と実質的に接触するように配置されている。つまり、上記加湿ロータ(43)は、水車(42)の凹部(42b)と軸方向(前後方向)に重なる部位を有している。これにより、上記加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)には、水車の凹部(42b)によって汲み上げられた水が吸収される。
【0061】
駆動モータ(44)は、ピニオン等を介して加湿ロータ(43)の従動歯車(43a)を回転駆動するように構成されている。そして、駆動モータ(44)によって従動歯車(43a)が回転すると、該従動歯車(43a)と歯合する水車(42)が回転する。これにより、上記駆動モータ(44)によって、加湿ロータ(43)及び水車(42)を回転させることができる。
【0062】
ヒータ(48)は、加湿ロータ(43)の上流側の側面の上端部に近接するように配置されている。このヒータ(48)を設けることによって、上記加湿ロータ(43)に流入する空気を加熱することができ、その熱によって該加湿ロータ(43)の水を気化させて空気を加湿することができる。
【0063】
〈液処理用放電ユニットの構成〉
図2及び図3に示すように、調湿装置(10)は、水タンク(41)内に貯留される水を浄化するための液処理用放電ユニットとしての放電ユニット(50)を備えている。放電ユニット(50)は、水を浄化するための放電が行われる放電部(51)と、この放電部(51)の電源回路を構成する電源部(60)とを有している。
【0064】
放電部(51)は、水タンク(41)の内部において、水タンク(41)の底面寄りに配設されている。放電部(51)は、放電電極(52)と対向電極(53)とを有している。放電電極(52)は、水タンク(41)内の水中に浸漬されるように設けられている。放電電極(52)は、金属製であり、対向電極(53)側に向かって延びる棒状ないし線状に構成されている。この放電電極(52)は、軸直角断面が円形状に形成されているが、その軸直角断面を三角形状、四角形状、楕円形状等の他の形状としても良い。
【0065】
対向電極(53)は、水タンク(41)内の水中に浸漬されるように設けられている。対向電極(53)は、放電電極(52)の軸方向端部(先端)に対向するようにして、放電電極(52)と所定の間隔を介して配設されている。対向電極(53)は、金属製であり、その外形が平板形状をしており、複数の孔が開口する網目状ないし格子状に形成されている。対向電極(53)は、その一方の面が放電電極(52)の先端を向いている。
【0066】
電源部(60)は、直流高圧電源(61)とスイッチング機構(62)とを有している。スイッチング機構(62)は、直流電圧を所定周期で変動する所定波形の電圧に変換するものである。なお、スイッチング機構(62)の方式としては、例えば半導体スイッチング素子をON/OFFさせる方式や、回転する導体によって離間する2つの端子を周期的に導通させる、いわゆるロータリースパークギャップ方式や、離間する2つの端子の間隔を調整することで、両者の端子間で周期的に放電を行う放電ギャップ方式等を採用することができる。
【0067】
本実施形態では、放電電極(52)が直流高圧電源(61)の負極側と導通し、対向電極(53)は直流高圧電源(61)の正極側と導通している。また、直流高圧電源(61)の正極側は接地されており、対向電極(53)は実質的にはアース電位となっている。以上のようにして、電源部(60)は、放電電極(52)が対向電極(53)よりも低電位となるように、両者の電極(52,53)に電位差を付与する。これにより、本実施形態では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かって、いわゆるマイナス放電が行われる(詳細は後述する)。
【0068】
放電ユニット(50)は、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)を有している。本実施形態の絶縁部材(55)は、棒状の放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)を含んでいる。つまり、外周被覆部(55a)は、円筒状に形成されており、放電電極(52)の外周全域を覆っている。即ち、本実施形態の絶縁部材(55)は、放電電極(52)における対向電極(53)側の端部を露出させるように、円形の開口(56)が形成されている。そして、放電電極(52)では、この開口(56)を通じて対向電極(53)に臨む部位が、露出部(52a)を構成している。なお、本実施形態の絶縁部材(55)では、対向電極(53)と反対側の端部にも開口が形成されている。しかしながら、絶縁部材(55)では、この開口を必ずしも形成しなくても良い。即ち、絶縁部材(55)は、対向電極(53)側の端部のみが開口する有底筒状であっても良い。
【0069】
また、本実施形態では、放電電極(52)の露出部(52a)の端面と、絶縁部材(55)の開口(56)の端面とが略同一面状となるように、放電電極(52)と絶縁部材(55)との相対的な位置関係が設定されている。換言すると、放電ユニット(50)では、放電電極(52)の露出部(52a)の端面と絶縁部材(55)の軸方向における対向電極(53)側の端面とによって、フラットな円形状の面が形成されており、この円形状の面が対向電極(53)と概ね平行になっている。
【0070】
以上のようにして、本実施形態では、放電電極(52)の表面の一部(先端部)が対向電極(53)に向かって露出され、放電電極(52)の外周面が絶縁部材(55)によって覆われている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0071】
−運転動作−
次に調湿装置(10)の運転動作について説明する。調湿装置(10)は、室内空気を浄化すると共に、この室内空気を加湿する加湿運転を行う。また、調湿装置(10)は、この加湿運転時や停止時において、水タンク(41)内の水を浄化する水浄化動作を行う(詳細は後述する)。
【0072】
〈加湿運転〉
加湿運転では、遠心ファン(15)が運転されるとともに、加湿ロータ(43)が駆動モータ(44)によって回転駆動される。また、イオン化部(22)の電極に電圧が印加されるとともに、ヒータ(48)が通電状態となる。
【0073】
遠心ファン(15)が運転されると、室内空気(図1及び図2の白抜きの矢印)が吸込口(12)からケーシング(11)内の空気通路(14)に導入される。空気通路(14)に導入された空気は、プレフィルタ(21)を通過して該プレフィルタ(21)で塵埃が捕捉された後、イオン化部(22)を通過する。イオン化部(22)では、対となる電極の間でコロナ放電が行われており、このコロナ放電により空気中の塵埃が帯電される。イオン化部(22)を通過した空気は、プリーツフィルタ(23)を通過する。プリーツフィルタ(23)では、イオン化部(22)で帯電した塵埃が電気的に誘引されて捕捉される。プリーツフィルタ(23)を通過した空気は、ヒータ(48)で加熱された後、加湿ロータ(43)を通過する。
【0074】
加湿ユニット(40)では、水車(42)が回転することで、水タンク(41)内の水(加湿水)が加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に適宜供給される。
【0075】
具体的には、水車(42)が回転して該水車(42)の凹部(42b)が水タンク(41)内の加湿水中に浸漬することにより、凹部(42b)内に加湿水が浸入し、該凹部(42b)内に保持される。水車(42)がさらに回転すると、加湿水を保持した状態の凹部(42b)は、加湿水中から引き上げられて上方へ変位する。そして、上述のように、水車(42)の回転に伴って凹部(42b)が上方へ移動すると、該凹部(42b)は加湿ロータ(43)に徐々に近接するとともに、該凹部(42b)内に保持されている加湿水は自重によって徐々に該凹部(42b)から流出する。これにより、凹部(42b)内の加湿水は、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸着される。このような動作によって、加湿ユニット(40)において、加湿ロータ(43)に連続的に加湿水が供給される。
【0076】
なお、凹部(42b)は、水車(42)の回転によって最上端位置まで到達すると、該凹部(42b)内の加湿水が概ね全量流出するように構成されている。
【0077】
以上のようにして加湿水が吸着された加湿ロータ(43)を空気が通過すると、加湿ロータ(43)の吸着部材(43b)に吸着された水分が空気中へ放出される。これにより、加湿水が空気中に付与されて、この空気の加湿が行われる。
【0078】
以上のようにして、清浄化及び加湿された空気は、吹出口(13)から室内へ供給される。なお、この加湿運転では、電源からイオン化部(22)への電圧の供給を停止することで、イオン化部(22)による空気の浄化を休止させながら室内を加湿する運転も可能である。
【0079】
〈水浄化動作〉
水タンク(41)内に加湿水が長期間に亘って貯留されると、水中でカビや雑菌等が繁殖することにより、水タンク(41)内の加湿水が汚染される場合がある。また、例えば空気通路(14)内を流れる空気中にアンモニア等の物質(有害物質や臭気物質)が含まれている場合、この物質が水中に溶解して水タンク(41)内の加湿水が汚染されることもある。従って、このように汚染された加湿水が上述のようにして室内へ供給されると、室内に雑菌や有害物質等を付与することになり、室内の清浄度を損なう虞がある。そこで、調湿装置(10)では、放電ユニット(50)によって水タンク(41)内の水を浄化する水浄化動作を行うようにしている。
【0080】
水浄化動作時には、電源部(60)から放電部(51)に対して所定の電位差が付与される。具体的には、電源部(60)では、直流高圧電源(61)の直流電圧が、スイッチング機構(62)によって周期的に変動する電圧となり、この変動した電圧が放電電極(52)と対向電極(53)とに印加される。これにより、放電部(51)では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってストリーマ放電が生起する。なお、本実施形態の放電部(51)では、放電電極(52)がマイナス電位となり、対向電極(53)がプラス電位となる、いわゆるマイナス放電が行われる。
【0081】
ここで、放電ユニット(50)の放電電極(52)は、その外周面が絶縁部材(55)の外周被覆部(55a)によって覆われており、水タンク(41)内の水と遮蔽されている。これに対し、放電電極(52)の先端の表面は、絶縁部材(55)によって覆われておらず、対向電極(53)を向くように露出する露出部(52a)を構成している。このため、放電部(51)でストリーマ放電が行われると、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって比較的高い密度の電気力線が形成されながら、放電が行われる。即ち、本実施形態の放電電極(52)は、一部が絶縁部材(55)によって覆われることで、放電電流が水中で分散してしまうことが抑制される。このため、放電電極(52)と対向電極(53)との間では、比較的高い電界強度で放電が行われる。その結果、放電電極(52)と対向電極(53)との間では、高濃度の活性種が多量に生成される。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とが接触することで、放電電極(52)と水との接触面積が小さくなっている。このため、放電電極(52)から水への漏れ電流も少なくなる。
【0082】
以上のようにして水中で生成された活性種は、水中の細菌や溶解物質等と接触する。これにより、水浄化動作では、活性種によって殺菌がなされ且つこの活性種によって溶解物質等が酸化分解される。その結果、水タンク(41)内の水が浄化されるので、その後の加湿動作では、清浄な水を室内に供給することができる。
【0083】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、放電電極(52)の表面の一部を対向電極(53)に向かって露出させながら、この放電電極(52)を絶縁部材(55)によって覆っている。このため、この絶縁部材(55)によって、放電電極(52)の放電電流が分散してしまうことを防止できる。これにより、放電電極(52)と対向電極(53)との間で電界強度の大きな放電を行うことができ、水タンク(41)内の水中において、高濃度の活性種を多量に生成できる。その結果、液中の溶解物質の分解効率や殺菌効率を向上でき、加湿水の浄化性能を高めることができる。従って、室内へ清浄な加湿水を供給できる調湿装置(10)を提供することができる。
【0084】
また、放電電極(52)と水との接触面積が小さくなることで、放電電極(52)の漏れ電流が少なくなる。従って、ストリーマ放電に要する電位差を低減できる。従って、電源部(60)の直流高圧電源(61)の電源電圧を低くすることができ、この直流高圧電源(61)の小型化、低コスト化を図ることができる。また、水浄化動作に要する消費電力も低減できる。
【0085】
また、放電電極(52)は、対向電極(53)を指向する棒状に形成され、この放電電極(52)の外周を外周被覆部(55a)によって覆うようにしている。このため、比較的簡素な構造により、放電電極(52)の露出部(52a)を対向電極(53)に対向させながら、放電電極(52)と水との接触面積を小さくできる。なお、実施形態1の放電電極(52)及び絶縁部材(55)を安易に成形する方法としては、軸周りの周囲が絶縁材(ビニール等)で覆われた電線(リード線)の先端を切断することで、線状の放電電極(52)の先端だけを水中に露出させることができる。
【0086】
また、本実施形態の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の露出部(52a)と絶縁部材(55)の開口(56)の端面とが同一平面(図3に示す平面P)上に位置している。これにより、放電電極(52)の露出部(52a)において、対向電極(53)に実質的に露出する面積は、絶縁部材(55)の開口(56)の面積のみとなる。このため、放電電極(52)の露出部(52a)の露出面積を最小限に抑えることができ、放電電流の分散を効果的に防止することができる。
【0087】
また、放電ユニット(50)では、放電電極(52)から対向電極(53)に向かっていわゆるマイナス放電を行うようにしている。これにより、放電時には、高電位となる対向電極(53)に向かって電子が飛び込む。つまり、マイナス放電では、放電電極(52)に電子が飛び込むことがない。このようにすると、放電電極(52)の露出部(52a)に電子が集中して衝突してしまうことを確実に回避できる。その結果、電子の衝突に起因して露出部(52a)が損耗/劣化してしまうことを確実に回避でき、所望とする放電を安定的に継続して行うことができる。
【0088】
一方、本実施形態では、対向電極(53)に向かって電子が飛び込んでしまうが、放電電極(52)の露出部(52a)と比較すると、対向電極(53)の対向面積(対向電極(53)のうち放電電極(52)側の表面積)が極めて大きくなっている。このため、対向電極(53)には、電子が分散して衝突するため、対向電極(53)が損耗/劣化してしまうことはほとんどない。
【0089】
−実施形態の変形例−
上記実施形態の放電ユニット(50)については、以下のような各変形例の構成としても良い。
【0090】
〈変形例1〉
図4に示す変形例1では、上記実施形態の放電ユニット(50)において、棒状の放電電極(52)の露出部(52a)の端面が、絶縁部材(55)の開口(56)の端面(即ち、図4に示す平面P)よりも内側に位置している。つまり、棒状の放電電極(52)は、その先端が絶縁部材(55)の開口(56)端面よりも凹むように配設されている。換言すると、放電電極(52)の露出部(52a)は、絶縁部材(55)の開口(56)内部において、対向電極(53)と対峙している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。変形例1のそれ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0091】
変形例1の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を形成しながらストリーマ放電が行われる。ここで、露出部(52a)の表面から放電が生起すると、この放電は円形の開口(56)の内周面に沿うようにして開口(56)の外側へ案内される。これにより、放電時の電気力線が対向電極(53)を指向するように高密度に形成され、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度を増大できる。その結果、変形例1の水タンク(41)内の水中において、高濃度の活性種を多量に生成できる。
【0092】
〈変形例2〉
図5に示す変形例2では、上記実施形態の放電ユニット(50)において、棒状の放電電極(52)の露出部(52a)の端面が、絶縁部材(55)の開口(56)の端面(即ち、図5に示す平面P)よりも外側に位置している。つまり、棒状の放電電極(52)は、その先端が絶縁部材(55)の開口(56)の端面から突出するように配設されている。換言すると、放電電極(52)の露出部(52a)は、絶縁部材(55)の開口(56)の外部において、対向電極(53)と対峙している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。変形例2のそれ以外の構成は、上記実施形態1と同様である。
【0093】
変形例2の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を形成しながらストリーマ放電が行われる。ここで、このように露出部(52a)を開口(56)よりも外側に突出させると、露出部(52a)から進展する放電の影響により、絶縁部材(55)が劣化、あるいは溶融してしまうことを防止できる。従って、このような絶縁部材(55)の劣化等に伴い放電電極(52)の露出面積が大きくなってしまうことも防止でき、これにより、絶縁部材(55)による漏れ電流の防止効果が低下してしまうことも回避できる。
【0094】
〈変形例3〉
図6(A)及び(B)に示す変形例3では、棒状の放電電極(52)の外周面が外周被覆部(55a)によって覆われるとともに、この放電電極(52)の先端面が先端被覆部(55b)によって覆われている。つまり、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)は、外周被覆部(55a)と先端被覆部(55b)とを有している。そして、放電電極(52)は、その先端面(先端被覆部(55b))が対向電極(53)を指向するように配設されている。
【0095】
先端被覆部(55b)には、比較的小径となる複数の開口(56)が形成されている。これらの複数の開口(56)は、例えば先端被覆部(55b)の軸心部に形成される中央側開口(56a)と、この中央側開口(56a)の周囲に放射状に配列される複数の外側開口(56b)とで構成されている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0096】
以上のように先端被覆部(55b)に複数の開口(56)が形成されることで、放電電極(52)の先端面には、各開口(56)に対応する複数の円形の露出部(52a)が形成される。そして、これらの複数の露出部(52a)が対向電極(53)を向くように水中に露出されている。
【0097】
変形例3の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の各露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、それぞれストリーマ放電が行われる。これにより、放電電極(52)からは、比較的高密度の電気力線を伴う複数の放電が同時に進展する。その結果、変形例3の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0098】
〈変形例4〉
図7(A)及び(B)に示す変形例4では、棒状の放電電極(52)の外周面が外周被覆部(55a)によって覆われるとともに、この放電電極(52)の端面が先端被覆部(55b)によって覆われている。つまり、放電電極(52)を覆う絶縁部材(55)は、外周被覆部(55a)と先端被覆部(55b)とを有している。そして、放電電極(52)は、棒状の放電電極(52)の外周面の一部が対向電極(53)を向くように配設されている。つまり、変形例4では、棒状の放電電極(52)の軸心と、面状ないし平板状の対向電極(53)とが実質的に平行に配置されている。
【0099】
変形例4の絶縁部材(55)では、外周被覆部(55a)のうち対向電極(53)側寄りの部位に、比較的小径となる複数の開口(56)が形成されている。これらの複数の開口(56)は、放電電極(52)の軸方向に所定の間隔をおいて配列されている。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0100】
以上のように外周被覆部(55a)に複数の開口(56)が形成されることで、放電電極(52)の外周面には、各開口(56)に対応する複数の円形の露出部(52a)が形成されている。そして、これら複数の露出部(52a)が対向電極(53)を向くように水中に露出されている。
【0101】
変形例4の放電ユニット(50)においても、放電電極(52)の各露出部(52a)から対向電極(53)に向かって、それぞれストリーマ放電が行われる。これにより、放電電極(52)からは、比較的高密度の電気力線を伴う複数の放電が同時に進展する。その結果、変形例4の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0102】
〈変形例5〉
図8及び図9に示す放電ユニット(50)は、上記実施形態と放電電極(52)の構成が異なっている。変形例5の放電電極(52)は、基部(52b)と複数の突起部(52c)とを有している。基部(52b)は、平板状に形成されており、対向電極(53)と平行となるように該対向電極(53)と向かい合っている。複数の突起部(52c)は、基部(52b)の厚さ方向の両端面のうち、対向電極(53)側の面に形成されている。各突起部(52c)は、円錐状に形成されており、その頂部が対向電極(53)を指向するように突出している。また、基部(52b)では、各突起部(52c)が高さ方向及び幅方向において、互いに所定の間隔を置くように配列されている(図9を参照)。
【0103】
変形例5では、絶縁部材(55)が放電電極(52)の基部(52b)の全域を覆うように形成されている。また、絶縁部材(55)には、各突起部(52c)に対応するように複数の開口(56)が形成されている。つまり、絶縁部材(55)には、各突起部(52c)が貫通するように複数の開口(56)が形成されている。これらの開口(56)により、放電電極(52)の各突起部(52c)の先端側部位が、対向電極(53)を向くように水中に露出している。また、放電電極(52)と絶縁部材(55)とは実質的に接触している。
【0104】
変形例5の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の各突起部(52c)の先端から対向電極(53)に向かって、比較的高密度の電気力線を伴う放電が同時に進展する。特に、各突起部(52c)では、その先端において放電が集中するため、電気力線の密度を更に高めることができる。その結果、変形例4の水タンク(41)内の水中では、高濃度の活性種を多量且つ比較的広範囲に生成できるので、水タンク(41)の水の浄化効率を向上できる。
【0105】
〈変形例6〉
図10に示す変形例6の放電ユニット(50)は、上記実施形態と放電電極(52)の構成が異なっている。変形例6の放電電極(52)は、薄板状に形成されている。そして、放電電極(52)の厚さ方向の両端面には、それぞれ薄膜状の絶縁部材(55c,55c)が形成されている。つまり、変形例6では、薄膜状の2枚の絶縁部材(55c,55c)の間に放電電極(52)が挟み込まれている。放電電極(52)と絶縁部材(55c,55c)とは実質的に接触している。なお、板状の放電電極(52)の両面にそれぞれ絶縁部材(55)を形成する方法としては、例えばセラミック等の絶縁部材を放電電極(52)の両面にそれぞれ吹き付けたり、貼り付けたりする方法が挙げられる。また、薄膜状の絶縁部材(55c,55c)の膜厚は、数μm以下であることが好ましい。
【0106】
変形例6の放電電極(52)では、絶縁部材(55c,55c)の間に露出部(52a)が形成され、この露出部(52a)が対向電極(53)を向いて水中に露出している。このため、放電時には、この露出部(52a)と対向電極(53)との間に、比較的高い高密度の電界を形成でき、水中に高密度の活性種を多量に生成することができる。
【0107】
〈変形例7〉
図11に示す変形例7の放電ユニット(50)は、上記実施形態と対向電極(53)の構成が異なっている。変形例7の対向電極(53)は、その外形がお椀状ないし略半球状に形成され、且つ複数の孔が外交する網目状ないし格子状に形成されている。対向電極(53)は、棒状の放電電極(52)の長手方向の延長線上において、その中心の頂部が位置するように配設されている。これにより、放電電極(52)の露出部(52a)から対向電極(53)までの距離は、対向電極(53)の内壁全域に亘って概ね等しくなっている。
【0108】
変形例7の放電ユニット(50)では、放電電極(52)の先端(露出部(52a))から対向電極(53)の内壁に向かって放射状ないしフレア状に進展する。このため、活性種を高濃度且つ広範囲に生成でき、水タンク(41)内の水浄化効率を高めることができる。
【0109】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0110】
上記実施形態(各変形例も含む)では、放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)が、放電電極(52)と接触している。しかしながら、例えば図12〜14に示すように、放電電極(52)と絶縁部材(55)との間に僅かな隙間を形成しつつ、放電電極(52)の一部を絶縁部材(55)で覆うようにしても良い。
【0111】
また、上記実施形態の絶縁部材(55)は、放電電極(52)の露出部(52a)が対向電極(53)に対向するように放電電極(52)の一部を覆っている。しかしながら、例えば図15に示すように、放電電極(52)から対向電極(53)に向かう放電が許容されるのであれば、放電電極(52)の露出部(52a)を必ずしも対向電極(53)に対向させる配置としなくても良い。なお、図15の例の対向電極(53)は、筒状の絶縁部材(55)の外周側に設けられたリング状に形成されている。
【0112】
上記実施形態では、放電電極(52)をマイナス電位として対向電極(53)をプラス電位とすることで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってマイナス放電を行うようにしている。しかしながら、放電電極(52)をプラス電位として対向電極(53)をマイナス電位とするように電源部(60)を構成することで、放電電極(52)から対向電極(53)に向かってプラス放電を行うようにしても良い。
【0113】
また、上記実施形態では、放電ユニット(50)に放電電極(52)が1つだけ設けられているが、放電ユニット(50)に複数の放電電極(52)を設けるようにしても良い。また、上記実施形態では、対向電極(53)の外形が略板状に形成されているが、例えば対向電極(53)を線状ないし棒状としても良いし、対向電極(53)を点形状としても良い。同様に、放電電極(52)を点状、あるいは板状に形成しても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、放電電極(52)側にだけ絶縁部材(55)を設けるようにしているが、対向電極(53)側においても、対向電極(53)の一部を露出させるように絶縁部材(55)を設けても良い。この場合には、対向電極(53)の露出部を放電電極(52)側に露出させることで、放電電極(52)と対向電極(53)との間の電界強度を増大できる。
【0115】
また、上記実施形態の放電ユニット(50)では、放電電極(52)と対向電極(53)との間でストリーマ放電を行うようにしているが、例えばコロナ放電やグロー放電等の他の放電が生起されるように放電ユニット(50)を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上説明したように、本発明は、液中で放電を行って液を浄化する液処理用放電ユニットと、この液処理用放電ユニットを備えた調湿装置について有用である。
【符号の説明】
【0117】
10 調湿装置
41 水タンク(貯留部)
43 加湿ロータ(加湿部)
50 放電ユニット(液処理用放電ユニット)
52 放電電極
52a 露出部
53 対向電極
55 絶縁部材
55a 外周被覆部
55b 先端被覆部
56 開口
60 電極部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液中に設けられる放電電極(52)及び対向電極(53)と、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かって放電を生起するように両者の電極(52,53)に電位差を付与する電源部(60)とを有する液処理用放電ユニットであって、
上記放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)を備えていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)と接触しながら該放電電極(52)の一部を覆うように構成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記絶縁部材(55)には、上記放電電極(52)の一部を露出させるための少なくとも1つの開口(56)が形成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項4】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも内側に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項5】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面と略同一平面上に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項6】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも外側に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
上記絶縁部材(55)には、複数の開口(56)が形成されることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つにおいて、
上記電源部(60)は、上記放電電極(52)よりも上記対向電極(53)が低電位となるように両者の電極(52,53)に電位差を付与することを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かってストリーマ放電を生起するように構成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項12】
水を貯留する貯留部(41)と、該貯留部(41)の水を空気中へ付与する加湿部(43)と、該貯留部(41)の水を浄化する液処理用放電ユニット(50)とを備えた調湿装置であって、
上記液処理用放電ユニット(50)は、請求項1乃至11のいずれか1つの液処理用放電ユニットで構成されていることを特徴とする調湿装置。
【請求項1】
液中に設けられる放電電極(52)及び対向電極(53)と、上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かって放電を生起するように両者の電極(52,53)に電位差を付与する電源部(60)とを有する液処理用放電ユニットであって、
上記放電電極(52)の一部を覆う絶縁部材(55)を備えていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)と接触しながら該放電電極(52)の一部を覆うように構成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記絶縁部材(55)には、上記放電電極(52)の一部を露出させるための少なくとも1つの開口(56)が形成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項4】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも内側に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項5】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面と略同一平面上に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項6】
請求項3において、
上記放電電極(52)の露出部(52a)は、上記絶縁部材(55)の上記開口(56)の端面よりも外側に位置していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つにおいて、
上記絶縁部材(55)には、複数の開口(56)が形成されることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆う外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)は、棒状ないし線状に形成され、
上記絶縁部材(55)は、上記放電電極(52)の外周面を覆うと共に複数の上記開口(56)が形成される外周被覆部(55a)と、上記放電電極(52)の先端面を覆う先端被覆部(55b)とを有していることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つにおいて、
上記電源部(60)は、上記放電電極(52)よりも上記対向電極(53)が低電位となるように両者の電極(52,53)に電位差を付与することを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つにおいて、
上記放電電極(52)から上記対向電極(53)に向かってストリーマ放電を生起するように構成されていることを特徴とする液処理用放電ユニット。
【請求項12】
水を貯留する貯留部(41)と、該貯留部(41)の水を空気中へ付与する加湿部(43)と、該貯留部(41)の水を浄化する液処理用放電ユニット(50)とを備えた調湿装置であって、
上記液処理用放電ユニット(50)は、請求項1乃至11のいずれか1つの液処理用放電ユニットで構成されていることを特徴とする調湿装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−284635(P2010−284635A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233138(P2009−233138)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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