説明

液剤供給装置

【課題】複数の液剤を交互又は順次に投入して混合しながら供給する装置において、複数の液剤を適正な混合比で混合する。
【解決手段】液剤供給装置は、主剤と硬化剤が交互投入される共用流路10の上流端10Pに接続された2つの専用流路25A,25Bと、各専用流路25A,25Bに設けたギヤポンプ28(容積型ポンプ)と、専用流路25A,25Bにおける一次側圧力が双方の専用流路25A,25Bにおいて同じ圧力となるように制御する液剤用レギュレータ27A,27Bと、一次側圧力と共用流路10における二次側圧力とを比較し、その比較結果に応じて、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力となるようにギヤポンプ28の駆動を制御する制御バルブ13(ポンプ制御手段)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液剤を混合して供給するための液剤供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの液剤を共用流路に同時に投入して混合しながら供給するための装置が開示されている。この装置では、2つの液剤を個別に供給する2つの専用流路と、2つの専用流路の下流端に接続された共用流路と、各専用流路に設けたギヤポンプとを備え、一方の専用流路側に設けた背圧弁によって2つの専用流路の下流端の圧力が一致するようになっているので、2つの専用流路の下流端における圧力差に起因する混合不良を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−67349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置は、2つの液剤を同時に共用流路に投入する供給形態においては十分な効果を発揮する。しかし、この上記装置を複数の液剤を交互又は順次に投入する供給形態に適用した場合には、共用流路と専用流路との間に圧力差が生じて、その圧力差が経時的に変動すると、液剤の投入量が不安定となり、適正な混合比が得られなくなることが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、複数の液剤を交互又は順次に投入して混合しながら供給する装置において、複数の液剤を適正な混合比で混合できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、複数の液剤を交互又は順次に共用流路に投入して混合しながら供給するための液剤供給装置であって、前記共用流路の上流端に接続され、前記複数の液剤を個別に供給する複数の専用流路と、前記複数の専用流路に個別に設けた複数の容積型ポンプと、前記複数の専用流路における一次側圧力が、全ての前記専用流路において同じ圧力となるように制御する液剤用レギュレータと、前記一次側圧力と前記共用流路における二次側圧力とを比較し、その比較結果に応じて、前記一次側圧力と前記二次側圧力とが同じ圧力となるように前記複数の容積型ポンプの駆動を制御するポンプ制御手段とを備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記液剤用レギュレータに供給する調圧用エアと、前記一次側圧力と前記二次側圧力とを比較するために前記ポンプ制御手段に供給する比較用エアとを同じ圧力にするための共用のエア用レギュレータを備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のものにおいて、前記容積型ポンプを変速又は停止させるためのポンプ駆動手段としてエアモータが設けられ、前記ポンプ制御手段は、前記検知用エアと前記二次側圧力との圧力差に応じて前記エアモータに対する駆動エアの供給量を制御するようになっており、前記駆動エアの流路が、前記調圧用エア及び前記比較用エアと共通のエア供給源に接続されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記複数の専用流路には、前記共用流路に対する複数の液剤の投入動作及び投入停止動作を制御するための複数の開閉弁が設けられ、前記複数の容積型ポンプは、共用のポンプ駆動手段によって同じサイクルで駆動されるようになっており、前記複数の容積型ポンプの1サイクル当たりの吐出量は、全ての前記容積型ポンプにおいて同じ量とされているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記ポンプ駆動手段には、前記容積型ポンプが1サイクル駆動される毎に検知信号を出力するポンプ用センサが設けられ、前記ポンプ用センサからの検知信号に基づいて前記複数の開閉弁を開閉させることで、前記複数の液剤の投入量を個別に制御するようになっているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4又は請求項5に記載のものにおいて、前記専用流路には、その専用流路から前記共用流路への液剤の投入が停止している状態において、その液剤を前記容積型ポンプよりも上流側へ環流させる環流路が設けられているところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のものにおいて、前記共用流路には、前記ポンプ制御手段よりも上流側に位置し、前記共用流路に投入された前記複数の液剤を撹拌するためのミキサが設けられているところに特徴を有する。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のものにおいて、前記専用流路における下流側の位置には、前記液剤が流動しているか否かを検知するための液剤用センサが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
<請求項1の発明>
共用流路における二次側圧力が変動しても、ポンプ制御手段が容積型ポンプの駆動を制御することにより、専用流路の一次側圧力と共用流路の二次側圧力とが同じ圧力となる。したがって、一次側圧力と二次側圧力との圧力差に起因して液剤の投入量が不正に変動するということがなく、適正な混合比が得られる。
【0015】
<請求項2の発明>
一次側圧力は調圧用エアの圧力値と対応し、二次側圧力は比較用エアの圧力値と対応する。調圧用エアと比較用エアを同圧にする手段として、共用のエア用レギュレータを用いたので、一次側圧力と二次側圧力との圧力差を極少に抑えることができる。
【0016】
<請求項3の発明>
駆動エアと調圧用エアと比較用エアのエア供給源を共通としたので、装置全体の構造の簡素化が図られる。
【0017】
<請求項4の発明>
複数の容積型ポンプの1サイクル当たりの吐出量が、全ての容積型ポンプにおいて同じ量であり、複数の容積型ポンプを共用のポンプ駆動手段で駆動するようにしたので、複数の専用流路における一次側圧力を、全ての専用流路において高い精度で一致させることができる。
【0018】
<請求項5の発明>
各液剤の投入量は容積型ポンプの吐出サイクルに比例するので、ポンプ用センサからの検知信号に基づいて複数の開閉弁を開閉することにより、複数の液剤の投入量を正確に制御して高い精度の混合比を得ることができるとともに、混合比を任意に変更することが可能である。
【0019】
<請求項6の発明>
開閉弁が閉弁して共用流路への投入が停止している状態では、液剤を容積型ポンプより上流側へ環流させるようにしたので、専用流路のうち開閉弁よりも上流側の圧力が不正に高圧となることを回避できる。
【0020】
<請求項7の発明>
共用流路に投入された複数の液剤は、ミキサにより撹拌されて混合が進むので、複数の液剤間における粘度の差が大きくても、ポンプ制御手段に到達した時点における混合液剤の粘度が安定する。これにより、粘度の相違に起因する二次側圧力の変動を回避することができる。
【0021】
<請求項8の発明>
液剤用センサを設けたことにより、専用流路における液剤の流動状態の異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1の供給装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1を参照して説明する。本実施形態の液剤供給装置は、主剤(本発明の構成要件である液剤)と硬化剤(本発明の構成要件である液剤)を、交互に共用流路10に投入して混合しながら二液塗料として塗装ガン11に供給するものである。以下に、その構成を説明する。
【0024】
共用流路10には、上流側から下流側に向かって順に、第1ミキサ12(本発明の構成要件であるミキサ)と、制御バルブ13(本発明の構成要件であるポンプ制御手段)と、第2ミキサ14とが設けられ、共用流路10の下流端には塗装ガン11が接続されている。制御バルブ13よりも上流側に配置された第1ミキサ12は、共用流路10に交互投入された主剤と硬化剤を、通過させながら十分に撹拌、混合するものであり、主剤と硬化剤の粘度が大きく相違する場合でも、第1ミキサ12を通過した主剤と硬化剤の混合液剤(二液塗料)の粘度が安定するようになっている。したがって、制御バルブ13に流入する二液塗料の粘度が大きく変動する虞はない。尚、塗装ガン11よりも上流側に配置された第2ミキサ14は、制御バルブ13を通過した二液塗料を更に撹拌するためのものであり、この第2ミキサ14を通過させることにより、良質の二液塗料が塗装ガン11に供給されるようになっている。
【0025】
制御バルブ13は、後述する主剤用専用流路25A及び硬化剤用専用流路25Bにおける一次側圧力と、共用流路10における二次側圧力とを比較し、その比較結果に応じて、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力となるように後述するギヤポンプ28(本発明の構成要件である容積型ポンプ)の駆動を制御するためのものである。制御バルブ13は、共用流路10に臨む可動受圧部材(ダイアフラムやピストン等)と、可動受圧部材と一体に移動する弁体と、比較用エア流入路18の下流端に接続された比較用エア流入口15と、駆動エア流入路19の下流端に接続された駆動エア流入口16と、駆動エア流出路20の上流端に接続された駆動エア流出口17とを備えている。比較用エア流入口15と駆動エア流入口16は、常時、開口されており、駆動エア流出口17は弁体によって開閉される。
【0026】
比較用エア流入路18の上流端はエア供給源21に接続されている。比較用エア流入路18の途中には、比較用エア流入路18内を流れる比較用エアの圧力及び後述する調圧用エアの圧力を一定に保つとともに、比較用エアと調圧用エアとを同じ圧力に保つためのエア用レギュレータ22が設けられている。駆動エア流入路19の上流端は、エア用レギュレータ22を介さずに直接エア供給源21に接続されている。駆動エア流出路20の下流端は、ギヤポンプ28を駆動するためのエアモータ23に接続されている。エアモータ23には、エアモータ23からのエアの吐出量を調整するためのモータ用レギュレータ24が接続されている。
【0027】
共用流路10の上流端には、主剤用専用流路25Aの下流端と硬化剤用専用流路25Bの下流端とが接続されている。したがって、共用流路10の上流端は、主剤用専用流路25Aと硬化剤用専用流路25Bの合流点10Pとなっている。主剤用専用流路25Aの上流端は主剤供給源26Aに接続され、硬化剤用専用流路25Bの上流端は硬化剤供給源26Bに接続されている。
【0028】
主剤用専用流路25Aには、上流側から下流側に向かって順に、主剤用レギュレータ27A(本発明の構成要件である液剤用レギュレータ)と、ギヤポンプ28と、主剤用開閉弁29A(本発明の構成要件である開閉弁)と、主剤用センサ30A(本発明の構成要件である液剤用センサ)と、逆止弁31が設けられている。硬化剤用専用流路25Bには、上流側から下流側に向かって順に、硬化剤用レギュレータ27B(本発明の構成要件である液剤用レギュレータ)と、ギヤポンプ28と、硬化剤用開閉弁29B(本発明の構成要件である開閉弁)と、硬化剤用センサ30B(本発明の構成要件である液剤用センサ)と、逆止弁31が設けられている。
【0029】
主剤用レギュレータ27Aと硬化剤用レギュレータ27Bは、主剤用専用流路25A内のうち主剤用レギュレータ27Aよりも下流側における主剤の一次側圧力と、硬化剤用専用流路25B内のうち硬化剤用レギュレータ27Bよりも下流側における硬化剤の一次側圧力とを、同じ圧力に維持するためのものである。また、主剤用専用流路25A内及び硬化剤用専用流路25B内は、設定した一次側圧力よりも高い圧力にはならないようになっている。
【0030】
比較用エア流入路18には、エア用レギュレータ22よりも下流側の位置から分岐した形態の調圧用エア流入路32の上流端が接続されている。調圧用エア流入路32は、途中で2股に分岐しており、その一方の分岐路の下流端は主剤用レギュレータ27Aに接続され、他方の分岐路の下流端は硬化剤用レギュレータ27Bに接続されている。これにより、主剤用レギュレータ27Aと硬化剤用レギュレータ27Bには、制御バルブ13に供給される比較用エアと同じ圧力の調圧用エアが供給されるようになっている。そして、調圧用エアの供給により、主剤用専用流路25A内の主剤の圧力と、硬化剤用専用流路25B内の硬化剤の圧力が、同じ圧力となるように調整される。
【0031】
主剤用専用流路25Aのギヤポンプ28と硬化剤用専用流路25Bのギヤポンプ28は、いずれも駆動軸33を介することによりエアモータ23に対して機械的に連結され、エアモータ23に駆動エアが供給されると、駆動軸33を介して主剤用と硬化剤用の双方のギヤポンプ28が、同一のサイクルで駆動されるようになっている。また、主剤用のギヤポンプ28と硬化剤用のギヤポンプ28は、1サイクル当たりの吐出量が同じ量である。したがって、主剤用のギヤポンプ28と硬化剤用のギヤポンプ28は、互いに同じタイミングで同じ量だけ主剤と硬化剤の吐出を行うようになっている。エアモータ23には、駆動軸33の回転数を1サイクル毎に検出して検知信号(パルス信号)を出力するポンプ用センサ34が設けられている。
【0032】
主剤用開閉弁29Aは、1つの液剤流入口と2つの液剤流出口とを有する三方バルブと称されるものであり、2つの液剤流出口のうち一方は、主剤用専用流路25Aに接続され、他方の液剤流出口には、環流路35の上流端が接続されている。環流路35の下流端は、主剤用レギュレータ27Aに接続されている。後述する制御装置36から主剤用開閉弁29Aに開閉用エアが供給されると、2つの液剤流出口が交互に開閉し、主剤用開閉弁29Aは、ギヤポンプ28から吐出された主剤を主剤用専用流路25Aよりも下流側へ流出させて共用流路10に投入する投入状態と、ギヤポンプ28から吐出された主剤を共用流路10には投入せずに主剤用レギュレータ27Aに環流させる環流状態とに切り替わる。
【0033】
硬化剤用開閉弁29Bは、主剤用開閉弁29Aと同じ構成であるため、詳しい説明は省略する。制御装置36から硬化剤用開閉弁29Bに開閉用エアが供給されると、2つの液剤流出口が交互に開閉し、硬化剤用開閉弁29Bは、ギヤポンプ28から吐出された硬化剤を硬化剤用専用流路25Bよりも下流側へ流出させて共用流路10に投入する投入状態と、ギヤポンプ28から吐出された硬化剤を共用流路10には投入せずに硬化剤用レギュレータ27Bに環流させる環流状態とに切り替わる。
【0034】
主剤用センサ30Aは、主剤用専用流路25Aにおいて主剤が流動しているか否かを検知するためのものであり、主剤用センサ30Aからの検知信号は、制御装置36に入力される。また、硬化剤用センサ30Bは、硬化剤用専用流路25Bにおいて硬化剤が流動しているか否かを検知するためのものであり、硬化剤用センサ30Bからの検知信号は、主剤用センサ30Aからの検知信号と同様、制御装置36に入力される。また、制御装置36には、エアモータ23の駆動軸33の回転数を検出するためのポンプ用センサ34からの検知信号(パルス信号)が入力される。
【0035】
制御装置36においては、共用流路10に対する主剤の1回当たりの投入流量と対応する主剤用設定値と、共用流路10に対する硬化剤の1回当たりの投入流量と対応する硬化剤用設定値とが記憶されており、主剤用設定値と硬化剤用設定値の比は、主剤と硬化剤の混合比と同じ値である。そして、これらの設定値は、ポンプ用センサ34からの検知信号(パルス信号)の数と比較され、この比較結果と、主剤用センサ30A及び硬化剤用センサ30Bからの検知信号とに基づき、制御装置36からは、主剤用開閉弁29Aに対し投入状態と環流状態とに切り換えるための制御信号が出力されるとともに、硬化剤用開閉弁29Bに対し投入状態と環流状態とに切り換えるための制御信号が出力される。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。塗装ガン11からの二液塗料の噴射が正常に行われている状態では、制御装置36からの制御信号により、主剤用開閉弁29Aが投入状態になって硬化剤用開閉弁29Bが環流状態になることで主剤が共用流路10に投入される主剤投入行程と、主剤用開閉弁29Aが環流状態になって硬化剤用開閉弁29Bが投入状態になることで硬化剤が共用流路10に投入される硬化剤投入行程とが、交互に繰り返される。
【0037】
主剤投入行程では、制御装置36においてポンプ用センサ34からの検知信号のパルス数が主剤用設定値と比較され、入力されるパルスの数が主剤用設定値に達すると、主剤用開閉弁29Aが投入状態から環流状態に切り替わると同時に硬化剤用開閉弁29Bが環流状態から投入状態に切り替わり、投入動作が硬化剤投入行程となる。硬化剤投入行程では、ポンプ用センサ34からの検知信号のパルス数が硬化剤用設定値と比較され、パルス数が硬化剤用設定値に達すると、硬化剤用開閉弁29Bが投入状態から環流状態に切り替わると同時に主剤剤用開閉弁が環流状態から投入状態に切り替わり、投入動作が主剤投入行程となる。以上の動作が交互に行われることで、主剤と硬化剤が適正な混合比で共用流路10に投入され、二液塗料が塗装ガン11に供給される。
【0038】
塗装ガン11からの二液塗料の供給が行われている間、共用流路10内における二次側圧力は、制御バルブ13に供給される比較用エアの圧力よりも少し小さくなるので、制御バルブ13の駆動エア流出口17が開口し、エア供給源21から駆動エア流入路19を通って制御バルブ13に圧送されている駆動エアが、駆動エア流出路20を通ってエアモータ23に供給され続け、主剤用と硬化剤用の2つのギヤポンプ28は安定した駆動を継続する。
【0039】
主剤と硬化剤が適正な混合比で共用流路10に安定して投入されている状態では、共用流路10内における二次側圧力の圧力値は、比較用エアの圧力と対応する値であり、主剤用レギュレータ27A及び硬化剤用レギュレータ27Bにより調圧された一次側圧力と同じ値である。制御バルブ13に供給される比較用エアと各レギュレータ27A,27Bに供給される調圧用エアは同じ圧力であるから、主剤用専用流路25A及び硬化剤用専用流路25B内における一次側圧力の圧力値は、調圧用エアの圧力と対応する値(調圧用エアの圧力よりも小さい値)である。
【0040】
また、塗装中に、塗装ガン11からの二液塗料の吐出量が減少した場合には、二次側圧力の値が上昇するので、制御バルブ13の駆動エア流出口17の開度が減少し、エアモータ23に対する駆動エアの供給量も減少する。これにより、エアモータ23の回転速度が低下してギヤポンプ28からの吐出量が減少するので、共用流路10に対する主剤と硬化剤の投入量が減少し、その結果、二次側圧力が、正常な値(つまり、一次側圧力と同じ値)まで下降する。
【0041】
また、塗装ガン11からの二液塗料の吐出(即ち、塗装)が停止した場合も、二次側圧力が上昇するが、このとき、駆動エア流出口17が閉じられ、エアモータ23への駆動エアの供給が停止し、エアモータ23が停止する。これにより、ギヤポンプ28からの主剤と硬化剤の吐出(即ち、共用流路10に対する主剤と硬化剤の投入)が停止するので、二次側圧力は、異常に上昇する虞がない。また、塗装ガン11からの二液塗料の吐出が停止したときには、主剤用と硬化剤用のいずれか一方の専用流路25A,25Bが共用流路10と連通しているのであるが、専用流路25A,25Bは、レギュレータ27A,27Bによって所定の一次側圧力に保たれているので、二次側圧力は一次側圧力と同じ値となる。
【0042】
したがって、塗装ガン11からの二液塗料の吐出を再開したときには、二次側圧力が一次側圧力よりも高くなることに起因する共用流路10への投入不良(主剤又は硬化剤の投入量が適正な量よりも少なくなること)が生じる虞はない。また、二次側圧力が異常に上昇すること起因する共用流路10の破損も、防止される。
【0043】
また、専用流路25A,25Bにおいて、主剤や硬化剤が目詰まりする等の原因で、主剤や硬化剤の流動が停止した場合は、主剤用センサ30Aや硬化剤センサ30Bからの検知信号に基づき、異常が知らされるとともに、エアモータ23、ギヤポンプ28の駆動が停止される。
【0044】
上述のように、本実施形態の液剤供給装置は、共用流路10の上流端(合流点10P)に、主剤と硬化剤を個別に供給する主剤用専用流路25Aと硬化剤用専用流路25Bを接続し、各専用流路25A,25Bにギヤポンプ28を個別に設け、主剤用専用流路25A及び硬化剤用専用流路25Bにおける一次側圧力を、主剤用レギュレータ27A及び硬化剤用レギュレータ27Bにより、双方の専用流路25A,25Bにおいて互いに同じ圧力となるように制御し、さらに、一次側圧力と共用流路10における二次側圧力とを比較し、その比較結果に応じて、一次側圧力と二次側圧力とが同じ圧力となるようにギヤポンプ28の駆動を制御する制御バルブ13を設けた構成となっている。
【0045】
この構成によれば、共用流路10における二次側圧力が変動しても、制御バルブ13がギヤポンプ28の駆動を制御することにより、専用流路25A,25Bの一次側圧力と共用流路10の二次側圧力とが同じ圧力となるので、一次側圧力と二次側圧力との圧力差に起因して主剤と硬化剤の投入量が不正に変動するということがなく、適正な混合比が得られる。
【0046】
また、本実施形態の液剤供給装置は、主剤用レギュレータ27Aと硬化剤用レギュレータ27Bに供給する調圧用エアと、一次側圧力と二次側圧力とを比較するために制御バルブ13に供給する比較用エアとを同じ圧力にするための共用のエア用レギュレータ22を備えており、一次側圧力が調圧用エアの圧力値と対応し、二次側圧力が比較用エアの圧力値と対応するようになっている。この構成によれば、調圧用エアと比較用エアを同圧にする手段として、共用のエア用レギュレータ22を用いたので、一次側圧力と二次側圧力との圧力差を極少に抑えることができる。
【0047】
また、ギヤポンプ28を変速又は停止させるためのポンプ駆動手段としてエアモータ23が設けられ、このエアモータ23は、検知用エアと二次側圧力との圧力差に応じてエアモータ23に対する駆動エアの供給量を制御するようになっており、駆動エア流入路19が、調圧用エア及び比較用エアと共通のエア供給源21に接続されている。このように、駆動エアと調圧用エアと比較用エアのエア供給源21を共通としたことにより、装置全体の構造の簡素化が図られている。
【0048】
また、各専用流路25A,25Bには、共用流路10に対する主剤と硬化剤の投入動作及び投入停止動作を制御するための主剤用開閉弁29Aと硬化剤用開閉弁29Bが設けられ、主剤用と硬化剤用のギヤポンプ28の1サイクル当たりの吐出量を、双方のギヤポンプ28において同じ量とした上で、双方のギヤポンプ28を、共用のエアモータ23(ポンプ駆動手段)によって同じサイクルで駆動するようになっている。この構成によれば、2つの専用流路25A,25Bにおける一次側圧力を、高い精度で一致させることができる。
【0049】
また、エアモータ23に、ギヤポンプ28が1サイクル駆動される毎に検知信号を出力するポンプ用センサ34を設け、ポンプ用センサ34からの検知信号に基づいて主剤用開閉弁29Aと硬化剤用開閉弁29Bを開閉させることで、主剤と硬化剤の投入量を個別に制御するようになっている。主剤と硬化剤の投入量はギヤポンプ28の吐出サイクルに比例するので、ポンプ用センサ34からの検知信号に基づいて主剤用開閉弁29Aと硬化剤用開閉弁29Bを開閉することにより、主剤と硬化剤の投入量を正確に制御して高い精度の混合比を得ることができる。また、混合比を任意に変更することが可能である。
【0050】
また、主剤用専用流路25Aと硬化剤用専用流路25Bには、その専用流路25A,25Bから共用流路10への液剤(主剤又は硬化剤)の投入が停止している状態において、その液剤(主剤又は硬化剤)をギヤポンプ28よりも上流側へ環流させる環流路35が設けられている。この構成によれば、専用流路25A,25Bのうち開閉弁29A,29Bよりも上流側の圧力が不正に(異常に)高圧となることを回避できる。
【0051】
また、共用流路10には、制御バルブ13よりも上流側に位置して、共用流路10に投入された主剤と硬化剤を撹拌するための第1ミキサ12を設けている。こり構成によれば、共用流路10に投入された主剤と硬化剤は、第1ミキサ12により撹拌されて混合が進むので、主剤と硬化剤との間における粘度の差が大きくても、制御バルブ13に到達した時点における混合液剤(二液塗料)の粘度が安定する。これにより、粘度の相違に起因する二次側圧力の変動を回避することができる。
【0052】
また、主剤用専用流路25Aと硬化剤用専用流路25Bにおける下流側の位置(下流端である合流点10Pに近い位置)には、夫々、主剤と硬化剤が流動しているか否かを検知するための主剤用センサ30Aと硬化剤用センサ30Bが設けられているので、各専用流路25A,25Bにおける主剤又は硬化剤の流動状態の異常を検知することができる。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、容積型ポンプとして回転型のギヤポンプを用いたが、本発明によれば、容積型ポンプとしては、ねじポンプやベーンポンプ等のギヤポンプ以外の回転型のポンプや、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、プランジャポンプ等の往復型のポンプを用いてもよい。
(2)上記実施形態では、2つのギヤポンプの回転数を1サイクル毎に検出して各液体の共用流路への投入量を制御することで、混合比の変更に対応できるようにしたが、2つの液体の混合比を変える必要がない場合には、吐出量の比率が液体の混合比と対応する2種類のギヤポンプを用い、1回の投入時の回転数を2種類のギヤポンプで同じ数に設定してもよい。
(3)上記実施形態では、2つのギヤポンプの1サイクル当たりの吐出量を同じとしたが、吐出量の異なる2種類のギヤポンプを用いてもよい。
(4)上記実施形態では、2種類の液体を共用流路に交互投入して混合する場合について説明したが、本発明は、3種類以上の液体を共用流路に順次投入して混合する場合にも適用できる。
(5)上記実施形態では、液剤用レギュレータを専用流路における容積型ポンプ(ギヤポンプ)よりも上流側の位置に配置したが、液剤用レギュレータは、専用流路における容積型ポンプよりも下流側の位置に配置してもよい。
(6)上記実施形態では、2つの容積型ポンプを共用のポンプ駆動手段(エアモータ)により同じサイクルで駆動するようにしたが、2つの容積型ポンプは、互いに別々の専用のポンプ駆動手段で駆動してもよい。
(7)上記実施形態では、液剤用レギュレータに供給する調圧用エアと、ポンプ制御手段に供給する比較用エアを、1つの共用のエア用レギュレータによって同じ圧力にしたが、調圧用エアと比較用エアは、夫々、専用のエア用レギュレータによって同じ圧力にしてもよい。
(8)上記実施形態では、容積型ポンプ(ギヤポンプ)をエアモータによって駆動するようにしたが、容積型ポンプは、エアモータ以外の駆動手段で駆動してもよい。
(9)上記実施形態では、駆動エアと調圧用エアと比較用エアのエア駆動源を共通としたが、これら3種のエアの駆動源は、互いに異なっていもよい。
(10)上記実施形態では、複数の専用流路のうち共用流路への投入が停止している専用流路においては、投入停止の間、その液剤を専用流路に環流させるようにしたが、投入が停止されている液剤は、専用流路にではなく、その液剤の供給源に戻してもよい。
(11)上記実施形態では、共用流路におけるポンプ制御手段(制御バルブ)よりも上流側の位置に、共用流路に投入された複数の液剤を撹拌するためのミキサを設けたが、このようにミキサを設けない構成としてもよい。
(12)上記実施形態では、主剤と硬化剤を混合して得られた二液塗料を塗装ガンに供給する塗装用の液剤供給装置に適用した場合について説明したが、本発明は、塗装以外の用途に用いられる液剤供給装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
10…共用流路
12…第1ミキサ(ミキサ)
13…制御バルブ(ポンプ制御手段)
18…比較用エア流入路(比較用エアの流路)
19…駆動エア流入路(駆動エアの流路)
21…エア供給源
22…エア用レギュレータ
23…エアモータ(ポンプ駆動手段)
25A…主剤用専用流路(専用流路)
25B…硬化剤用専用流路(専用流路)
27A…主剤用レギュレータ(液剤用レギュレータ)
27B…硬化剤用レギュレータ(液剤用レギュレータ)
28…ギヤポンプ(容積型ポンプ)
29A…主剤用開閉弁(開閉弁)
28B…硬化剤用開閉弁(開閉弁)
30A…主剤用センサ(液剤用センサ)
30B…硬化剤用センサ(液剤用センサ)
32…調圧用エア流入路(調圧用エアの流路)
34…ポンプ用センサ
35…環流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液剤を交互又は順次に共用流路に投入して混合しながら供給するための液剤供給装置であって、
前記共用流路の上流端に接続され、前記複数の液剤を個別に供給する複数の専用流路と、
前記複数の専用流路に個別に設けた複数の容積型ポンプと、
前記複数の専用流路における一次側圧力が、全ての前記専用流路において同じ圧力となるように制御する液剤用レギュレータと、
前記一次側圧力と前記共用流路における二次側圧力とを比較し、その比較結果に応じて、前記一次側圧力と前記二次側圧力とが同じ圧力となるように前記複数の容積型ポンプの駆動を制御するポンプ制御手段とを備えていることを特徴とする液剤供給装置。
【請求項2】
前記液剤用レギュレータに供給する調圧用エアと、前記一次側圧力と前記二次側圧力とを比較するために前記ポンプ制御手段に供給する比較用エアとを同じ圧力にするための共用のエア用レギュレータを備えていることを特徴とする請求項1記載の液剤供給装置。
【請求項3】
前記容積型ポンプを変速又は停止させるためのポンプ駆動手段としてエアモータが設けられ、
前記ポンプ制御手段は、前記検知用エアと前記二次側圧力との圧力差に応じて前記エアモータに対する駆動エアの供給量を制御するようになっており、
前記駆動エアの流路が、前記調圧用エア及び前記比較用エアと共通のエア供給源に接続されていることを特徴とする請求項2記載の液剤供給装置。
【請求項4】
前記複数の専用流路には、前記共用流路に対する複数の液剤の投入動作及び投入停止動作を制御するための複数の開閉弁が設けられ、
前記複数の容積型ポンプは、共用のポンプ駆動手段によって同じサイクルで駆動されるようになっており、
前記複数の容積型ポンプの1サイクル当たりの吐出量は、全ての前記容積型ポンプにおいて同じ量とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の液剤供給装置。
【請求項5】
前記ポンプ駆動手段には、前記容積型ポンプが1サイクル駆動される毎に検知信号を出力するポンプ用センサが設けられ、
前記ポンプ用センサからの検知信号に基づいて前記複数の開閉弁を開閉させることで、前記複数の液剤の投入量を個別に制御するようになっていることを特徴とする請求項4記載の液剤供給装置。
【請求項6】
前記専用流路には、その専用流路から前記共用流路への液剤の投入が停止している状態において、その液剤を前記容積型ポンプよりも上流側へ環流させる環流路が設けられていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の液剤供給装置。
【請求項7】
前記共用流路には、前記ポンプ制御手段よりも上流側に位置し、前記共用流路に投入された前記複数の液剤を撹拌するためのミキサが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の液剤供給装置。
【請求項8】
前記専用流路における下流側の位置には、前記液剤が流動しているか否かを検知するための液剤用センサが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液剤供給装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−161413(P2011−161413A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29940(P2010−29940)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】