液剤塗布具
【課題】長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供する。
【解決手段】液剤塗布具は、カテーテル等の挿入管16の生体組織への挿入部を被覆するための液剤が充填される貯液部22bを有するシリンジ12と、該シリンジ12先端の流出口22aに接続されるノズル14とを備える。ノズル14は、挿入管16の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部32を有すると共に、貯液部22bに充填される液剤Lを挿入管16の外周面に向けて吐出する吐出孔36を前記アーム部32に設けたノズル14とを備える。
【解決手段】液剤塗布具は、カテーテル等の挿入管16の生体組織への挿入部を被覆するための液剤が充填される貯液部22bを有するシリンジ12と、該シリンジ12先端の流出口22aに接続されるノズル14とを備える。ノズル14は、挿入管16の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部32を有すると共に、貯液部22bに充填される液剤Lを挿入管16の外周面に向けて吐出する吐出孔36を前記アーム部32に設けたノズル14とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等の長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部を被覆する液剤を塗布するための液剤塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の長尺状の挿入体、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、気管切開カニューレ等(以下、挿入管という)を体内に挿入し留置する際には、当該挿入管の生体組織(例えば、体表面)への挿入部に隙間を生じることがあり、この隙間に菌(例えば、皮膚に常在する菌)や汚れが侵入し、感染症や炎症を生じる可能性がある。
【0003】
そこで、一般的には、上記の感染症や炎症を予防するために、挿入部周辺をドレッシング剤で被覆する処置や、抗菌剤を含浸させたパッチを挿入部周辺に貼り付ける処置等が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94299号公報
【特許文献2】特許第3046623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなドレッシング剤やパッチを挿入部及びその周辺に貼り付ける処置を行うことにより、感染症や炎症の予防に対して一定の効果を得ることができる。しかしながら、このようなドレッシング剤やパッチを貼り付ける方法は、挿入管と生体組織との挿入部周辺を上方からカバーするだけの処置であるため、挿入部に生じる隙間を完全に塞ぐことは難しい。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液剤塗布具は、生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部を有し、前記アーム部に、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、前記液剤をアーム部に設けた吐出孔から、該アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。
【0009】
また、前記液剤が充填される貯液部と、前記アーム部を有し、該アーム部に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルとを備え、貯液部内に充填された液剤をノズルの吐出孔から吐出する構成としてもよい。
【0010】
この場合、前記吐出孔が複数設けられていると、前記液剤を挿入体の外周面に対してより均等に且つ迅速に吐出することができる。
【0011】
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であると、挿入体を該リング形状の内側に位置決め保持した状態で液剤を塗布することができ、当該液剤塗布具の操作性が一層向上する。
【0012】
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有するとよい。そうすると、該開口部を介して挿入体をアーム部の内側に容易に配置することができる。
【0013】
前記開口部は、前記アーム部の内面側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面であるとよい。これにより、開口部からアーム部により囲繞される領域内へと挿入体を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部により囲繞される領域内に配置された挿入体の開口部からの抜け止め機能も付与することができる。
【0014】
また、前記開口部を開閉可能なロック機構を備えると、アーム部により囲繞される領域内に配置した挿入体の開口部からの確実な抜け止めが可能となり、より確実に且つ安定して液剤の塗布を行うことが可能となる。
【0015】
前記吐出孔は、前記アーム部の前記挿入体の外周面に対向する内面に設けられるか、又は、前記アーム部の前記挿入部の方向を指向する下面に設けられる構成としてもよい。アーム部の内面に吐出孔を設けると、該アーム部により囲繞される領域内に位置決め保持した挿入体の外周面に対し、液剤を一層円滑に且つ確実に吐出することができる。一方、アーム部の下面に吐出孔を設けた場合、液剤の吐出方向としてはアーム部に垂直な方向(例えば、図10B参照)でもよく、挿入体の生体組織への挿入部に向ける方向(例えば、図12参照)でもよい。挿入部近傍に焦点を持つように角度付けされたものであれば、挿入部及びその周囲への液剤の塗布を一層容易に行うことができる。
【0016】
前記アーム部には、前記生体組織の表面に着地して、該アーム部の前記挿入部から高さ位置を規定する脚部が設けられていると、一層簡便な操作感を得ることができ、しかも、使用者に当該液剤塗布具の適正な使用位置を明示することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、挿入体の生体組織への挿入部を被覆するための液剤をアーム部に設けた吐出孔から、該アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入体の生体組織への挿入部及びその周辺に液剤を円滑に塗布することができ、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図2】図1に示す液剤塗布具の先端側を拡大した部分断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す塗布具によって挿入管の生体組織への挿入部に対して液剤の塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤の塗布を行い、挿入部周辺を液剤によって被覆した状態を示す説明図である。
【図4】図4Aは、シリンジとノズルの接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図4Bは、図4Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【図5】図5Aは、第1変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図5Bは、第2変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図6】図6Aは、第3変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図6Bは、第4変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図7】第5変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図8】第6変形例に係るノズルの一部省略部分断面である。
【図9】第7変形例に係るノズルの一部省略部分断面である。
【図10】図10Aは、第8変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図10Bは、図10Aに示すノズルを用いて液剤の塗布を行う様子を示す説明図である。
【図11】図11Aは、先端に脚部を設けたノズルを挿入部に対して位置決めした様子を示す説明図であり、図11Bは、先端に他の構成の脚部を設けたノズルを挿入部に対して位置決めした様子を示す説明図である。
【図12】図12Aは、第9変形例に係るノズルの一部省略底面図であり、図12Bは、図12A中のXIIB−XIIB線に沿う一部省略断面図である。
【図13】図13Aは、第10変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図13Bは、第11変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図13Cは、第12変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図14】図14Aは、ロック機構を有するノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図14Bは、図14Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図15】図15Aは、ロック機構を有するノズルの第1変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図15Bは、図15Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図16】図16Aは、ロック機構を有するノズルの第2変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図16Bは、図16Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図17】ロック機構を有するノズルの第3変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図18】図18Aは、ロック機構を有するノズルの第4変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図18Bは、図18Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図19】図19Aは、ロック機構を有するノズルの第5変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図19Bは、図19Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図20】図20Aは、ロック機構を有するノズルの第6変形例に係るノズルのアンロック状態での一部省略平面図であり、図20Bは、図20Aに示すノズルのロック状態での一部省略平面図である。
【図21】図21Aは、ロック機構を有するノズルの第7変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図21Bは、図21Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図であり、図21Cは、図21Aに示すロック状態での一部省略斜視図である。
【図22】図1に示す液剤塗布具の別の構成例に係る液剤塗布具の斜視図である。
【図23】図23Aは、図1に示す液剤塗布具のさらに別の構成例に係る液剤塗布具の平面図であり、図23Bは、図23Aに示す液剤塗布具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液剤塗布具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る液剤塗布具10の一部分解斜視図であり、図2は、図1に示す液剤塗布具10の先端側を拡大した部分断面図である。
【0021】
本実施形態に係る液剤塗布具10(以下、単に「塗布具10」ともいう)は、液剤Lが充填されたシリンジ12と、シリンジ12の先端に接続されるノズル14とを有し、液剤Lをノズル14から目的部位へと塗布(投与、吐出、注入)するための器具である。液剤Lは、カテーテル、ドレーン又はケーブル等からなる長尺状の挿入体である挿入管16の生体組織18(例えば、体表面)への挿入部20を被覆するための薬剤等であり(図3A〜図3C参照)、すなわち、塗布具10は、先端のノズル14から前記挿入部20及びその周辺に、液剤Lを塗布するための医療用器具である。挿入管16の生体組織18への挿入部20とは、体表面以外、例えば、体内にあるものであってもよい。
【0022】
液剤Lとしては、例えば、シアノアクリレートを含有するシーラント(封止材、接着剤)や、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いるとよい。該液剤は、吐出後に硬化するものがよく、生体組織と適度な接着性を有するものが望ましい。具体的な材料の一例としては、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲルがあり、2液を混合させるなどして硬化させる方法でもよい。
【0023】
以下、図1及び図2における左側(シリンジ12側)を「基端(後端)」側、右側(ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、シリンジ12は、先細りテーパ形状で突出する流出口22aを先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動し、内部に液剤Lが充填される貯液部22bを画成するガスケット24が先端に装着され、前後方向(軸方向)に移動可能な押し子(プランジャロッド)26とを備える。
【0025】
ノズル14は、シリンジ12の流出口22aにテーパ嵌合する注入口28を基端面に有した略円筒状のベース部30と、ベース部30の先端から平面視(図2参照)で挿入管16を囲繞するために一部に開放部分があり、例えばCリング状、V字状、U字状(図2ではCリング状の構成を例示)に形成されるアーム部(リング部)32とを有する。ベース部30の内部には、注入口28から連通して軸方向に延びたノズル流路34が形成され、該ノズル流路34は、アーム部32の内部にも延在している(図2参照)。さらに、略円形状に形成されたアーム部32の内面(内周面)32aには、ノズル流路34から分岐した複数(本実施形態では、9個)の吐出孔36が開口形成されている。
【0026】
図2に示すように、このノズル14における各吐出孔36は、全てアーム部32を構成する円の中心を指向する吐出方向に形成され、アーム部32の周方向に沿って等間隔に設けられているが、吐出孔36の吐出方向や配置間隔等は適宜変更可能であることは勿論である。
【0027】
図1及び図2に示すように、アーム部32には、ベース部30の軸方向先端側に、挿入管16の外径が通過可能な開口部(切欠部、スリット)38が設けられている。このアーム部32では、開口部38は、先端方向に向かって幅(内面間距離)が拡がる傾斜形状に構成される。
【0028】
ノズル14の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ポリアミド等の樹脂を用いるとよく、シリンジ12の外筒22及び押し子26についても同様である。ガスケット24には、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。また、ノズル14は、例えば、ベース部30の基端からアーム部32の先端までの長さが10mm〜50mm程度、好ましくは20mm〜30mm程度であり、アーム部32の内面32aの内径、つまり、アーム部32により囲繞される領域の外径は、挿入管16の外径にもよるが、例えば、5mm〜30mm程度、好ましくは10mm〜20mm程度であり、開口部38の幅(間隔)は、3mm〜30mm程度、好ましくは3mm〜20mm程度であり、吐出孔36は、口径が0.5mm〜3mm程度、好ましくは1mm〜2mm程度であるとよい。これらの各寸法や材質は、当該塗布具10の用途や仕様、液剤Lの種類等によって適宜最適に設定可能であることは勿論である。
【0029】
次に、以上のように構成される塗布具10を用いた液剤塗布方法の一例について、図3A〜図3Cを参照して説明する。図3Aは、図1に示す塗布具10によって挿入管16の生体組織18への挿入部20に対して液剤Lの塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具10の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤Lの塗布を行い、挿入部20周辺を液剤Lによって被覆した状態を示す説明図である。
【0030】
長尺状の挿入体である挿入管16としては、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、切開カニューレ等を挙げることができる。このような挿入管16が生体組織18(例えば、体表面)に挿入された状態では、図3Aに示すように、挿入部20において挿入管16と生体組織18との間に、該挿入管16の外周面に沿った隙間Gが生じることになる。なお、図3A〜図3Cでは、理解の容易のため、隙間Gをやや誇張して図示しているが、実際の隙間Gは、図3A〜図3Cに図示したものよりも幅の狭い、より微小な間隔である。
【0031】
このように挿入部20に生じる隙間Gには、生体組織18の表面(皮膚表面等)に常在する菌や汚れが侵入する可能性があり、感染症や炎症を防止するためには、この隙間Gをより確実に塞ぐことが好ましい。ところが、上記した従来のドレッシング剤は、フィルムを挿入部周辺に貼り付けるだけの構成であるため、挿入部で生じる前記隙間Gを完全に塞ぐことは難しい。しかも、貼り付けたフィルムにしわ等が生じることがあり、そうすると、しわ等によって生じた隙間(空間)を通して菌が移動し、前記隙間Gへと侵入する可能性もある。
【0032】
そこで、本実施形態では、上記の隙間Gを確実に閉塞し、しわ等に起因する前記隙間の発生を防止するため、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用い、これらを単独で又は混合したものを液剤Lとして、シリンジ12の貯液部22b内に予め充填しておくか、又は手技の直前に充填しておく。
【0033】
次に、シリンジ12の流出口22aのキャップ39(図1参照)を取り外して該流出口22aを開通してからノズル14を装着し(図2参照)、プライミングを行った後、図3A及び図3Bに示すように、開口部38を通してアーム部32の内側に挿入管16を挿入し、該アーム部32の内面32aで挿入管16を囲繞するように配置する。すなわち、アーム部32のリング内側に挿入管16を挿通させた状態とする。
【0034】
なお、キャップ39に代えて、例えば、流出口22aの出口に図示しない樹脂製の膜を設けておき、使用開始時に、該膜を図示しない穿刺針等によって開通するか、又はノズル14のノズル流路34内に設けた流路が形成された穿刺針によって開通するように構成してもよい。
【0035】
ノズル14の挿入管16への設置位置は、挿入管16や塗布具10の種類や寸法、挿入部20での隙間Gの大きさ等にもよるが、例えば、生体組織18の表面から5mm〜20mm、好ましくは10mm程度の高さ位置(図3A中のh=10mm)に設定するとよい。また、開口部38の幅(最小幅)は、例えば、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、数%〜数10%程度大きく設定することが好ましく、同様に、アーム部32の内面32aの内径は、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、1.3倍〜2倍程度に設定することが好ましい。また、開口部38が弾性部材からなり、拡張することができる場合はこの限りではない。
【0036】
続いて、シリンジ12の押し子26を押し込むことにより、図3B及び図3Cに示すように、液剤Lがノズル14の各吐出孔36から一挙に挿入管16に向けて吐出され、該吐出された液剤Lは、挿入管16の外周面を伝いながら下降して挿入部20に到達する。これにより、液剤Lが挿入部20及びその周辺に適切に塗布され、隙間Gが確実に被覆され塞がれる。また、当該塗布具10の液剤Lは、例えば、上記のドレッシング剤と併用することもでき、そうするとドレッシング剤に生じるしわがあった場合でも菌が隙間Gから体内に侵入することが確実に防止される。
【0037】
例えば、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントを用いると、挿入部20及びその周辺部で該シーラントが固化するため、隙間Gを確実に塞ぐことができ、しかも挿入管16を挿入部20に対して固定することもできる。一方、液剤Lとして、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いると、挿入部20及びその周辺部に該液剤Lが保持され、隙間Gを確実に塞ぐことができる。なお、該液剤を用いる場合には、上記のシーラントのように挿入部20周辺で固化することはないが、一般に、挿入管16と生体組織18との間に生じる隙間Gの幅は極めて狭いことから、所定の粘度からなる液剤Lであれば、固化しなくてもその表面張力によって確実に隙間Gを塞ぐことは可能である。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る塗布具10では、シリンジ12の貯液部22b内に充填された液剤Lをアーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて吐出し、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布することにより、隙間Gを確実に被覆し、塞ぐことができる。従って、カテーテル等の挿入管16と生体組織18との間の挿入部20に形成される隙間Gに菌や汚れが侵入することを確実に防ぐことができ、該挿入部20での感染症や炎症の発生を予防することができる。
【0039】
ノズル14は、挿入管16を囲繞可能なアーム部32を有し、このアーム部32の内面32aに液剤Lの吐出孔36が形成されている。従って、液剤Lの塗布時、アーム部32の内側で挿入管16を保持しつつ、吐出孔36から液剤Lを確実に挿入管16の外周面に一挙に吐出することができ、高い操作性と確実な塗布とが可能となる。
【0040】
各吐出孔36がアーム部32の内面32aに形成されていることにより、該アーム部32の内側(内部)に挿入管16を保持(配置)しておくだけで、液剤Lを挿入管16の外周面に略均等に確実に吐出することができる。
【0041】
なお、吐出孔36は、上記のように複数設けず、例えば、ある程度の大きさを持つ1つの吐出孔36のみであってもよいが、挿入管16の外周面に対してより均等に液剤Lを塗布するためには、アーム部32の周方向に略等間隔で均等配置された3つ以上の吐出孔36を設けることが好ましい。
【0042】
図2に示すように、ノズル14は、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内に挿入するための開口部38を有し、この開口部38を、当該塗布具10の先端方向、つまり軸線上に開口形成している。これにより、使用者は、当該塗布具10を挿入管16にセットする際、例えば、片手でシリンジ12部分を把持したまま、開口部38へと容易に挿入管16を通過させることができ、高い操作性を得ることができる。
【0043】
しかも、ノズル14では、開口部38を、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面で形成している。これにより、開口部38からアーム部32により囲繞される領域内へと挿入管16を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部32の内側に配置された挿入管16の開口部38からの抜け止め機能も付与することができる。
【0044】
ところで、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、ノズル14とシリンジ12との接続部について、図2に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図4A及び図4Bに示されるルアーロック21を備えたルアーロック構造とすることも有効である。
【0045】
図4A及び図4Bに示すように、ルアーロック21は、シリンジ12の流出口22aの外周側に隙間23を有して配置された筒部25の内周面に形成された雌ねじ27と、ベース部30の基端側外周面に形成された雄ねじ29とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ27に対し、ノズル14側の雄ねじ29が螺合されることにより、シリンジ12とノズル14とをより確実に嵌合・締結することができる。
【0046】
次に、上記のように構成される塗布具10におけるノズル14の変形例について順に説明する。以下の各変形例において、図1〜図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0047】
図5Aに示すように、ノズル14に代えて、V字状の内面40aに吐出孔36を設けたアーム部40からなるノズル14aや、図5Bに示すように、略菱形状の内面42aに吐出孔36を設けたアーム部42からなるノズル14bとして構成することもできる。すなわち、塗布具10において、アーム部の形状は上記アーム部32のリング形状(Cリング形状)や、アーム部40、42のV字状や菱形状以外であっても勿論よく、要は、挿入管16を適切に位置決め保持し、挿入部20に対して液剤Lを適切に塗布可能な構成であればよい。換言すれば、アーム部としては、挿入管16の少なくとも一部を囲繞でき、この挿入管16に対して液剤Lを円滑に吐出することができる構成であればよい。
【0048】
図6Aに示すように、ノズル14に代えて、幅が略平行に形成された開口部44を有するノズル14cや、図6Bに示すように、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が狭まる傾斜面からなる開口部46を有するノズル14dとして構成することも可能である。図6Aに示す開口部44では、該開口部44を介した挿入管16のアーム部32により囲繞される領域内への挿脱がいずれも同程度に容易となる。また、図6Bに示す開口部46では、挿入管16のアーム部32により囲繞される領域内への挿入は多少難しくなるが、挿入管16のアーム部32の内側からの取り出しが容易となる。勿論、これら開口部44、46は、図5A及び図5Bに示すノズル14a、14bに適用してもよい。
【0049】
図7に示すように、ノズル14に代えて、当該塗布具10の軸方向に交差する方向(図7では軸方向に略直交する方向)を向いて開口する位置に開口部38を設けたノズル14eとして構成してもよい。このノズル14eによれば、シリンジ12での押し子26の押し込み方向(つまりシリンジ12の軸方向)と、開口部38の開口方向とが交差しているため、一旦アーム部32により囲繞される領域内に挿入配置された挿入管16が、押し子26の押し込み操作時等に、誤って開口部38から抜け出すことを確実に防止することができる。
【0050】
図2に示すノズル14では、各吐出孔36での吐出方向を、全てアーム部32を構成する円の中心を指向するものとして説明したが、勿論これ以外であってもよい。例えば、図8に示すように、開口部38近傍に、アーム部32を構成する円の中心ではなく、開口部38側に多少寄った吐出方向に設定された一対の吐出孔36a、36aを設けたノズル14fとして構成することもできる。
【0051】
そうすると、各吐出孔36aから吐出された液剤Lは、図8中の矢印Aに示されるように、開口部38に対向する部分に位置した挿入管16の外周面にも適切に塗布されることになる。このため、開口部38によって吐出孔36が設置できない部分に対しても、吐出孔36aによって確実に液剤Lを塗布することが可能となり、挿入管16の外周面に対し、液剤Lを一層均等に塗布することが可能となる。勿論、吐出孔36aは、1個又は3個以上としてもよく、その配置も適宜変更可能である。
【0052】
図9に示すように、吐出孔36に代えて、その吐出方向に向かって拡径するテーパ形状の吐出孔48を設けたノズル14gとして構成することもできる。このような吐出孔48を設けることにより、ノズル14gでは、挿入管16の外周面に対して一層確実に且つ均一に液剤Lを塗布することが可能となる。
【0053】
図2に示すノズル14では、吐出孔36をアーム部32の内面32aに設ける構成を例示したが、例えば、図10Aに示すように、吐出孔36をアーム部32の下面32b(挿入部20の方向を指向する面)に設けたノズル14hとして構成してもよい。
【0054】
図10Bに示すように、このノズル14hによれば、挿入部20側を向いた下面32bに吐出孔36が設けられることにより、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を保持した状態とすれば、挿入管16、挿入部20及びその周辺に液剤Lを確実に塗布することができる。
【0055】
図11Aに示すように、例えば、ノズル14hについて、アーム部32の先端側(開口部38の近傍)に、生体組織18の表面に着地して、該アーム部32の挿入部20(生体組織18の表面)からの高さhを規定する脚部47を設けてもよい。脚部47を設けることにより、ノズル14hの挿入管16への設置に最適な高さ位置、つまり生体組織18の表面からの高さhを明確に規定することができ、一層簡便な操作感を得ることができる。しかも、使用者に当該塗布具10の適正な使用位置を明示することも可能となる。なお、脚部47の形状は、例えば、カメラ等で用いられる一般的な3脚(2脚)構造や、平板を立設した構造等、各種の形状をとることができ、要は、シリンジ12の先端に接続されたノズル14hと生体組織18の表面との間に介在し、ノズル14hの生体組織18からの設置高さhを規定し得るものであればよい。
【0056】
同様に、図11Bに示すように、アーム部32の先端側(開口部38の近傍)に、アーム部32の延在方向から傾斜する側面視で略三角形状の脚部49を設けてもよい。脚部49を設けることにより、該脚部49を生体組織18の表面上に当接させるだけで、ノズル14hの挿入部20に対する位置決めを容易に行うことができる。なお、これら脚部47、49は、上記のノズル14a〜14gや後述するノズル14i、14jに設置してもよいことは勿論である。
【0057】
図12A及び図12Bに示すように、ノズル14hに代えて、吐出孔36からの液剤Lの吐出方向を、アーム部32の内側を指向する斜め下方に設定した吐出孔50を下面32bに設けたノズル14iとして構成することもできる。このノズル14iによれば、吐出孔50から斜め下方内側寄りに液剤Lが吐出されるため、挿入管16及び挿入部20に対して一層確実に液剤Lを塗布することができる。なお、吐出孔50は、アーム部32の下面32bに設ける以外にも、例えば、下面32bと内面32aの角部に設けてもよい。
【0058】
上記したように、ノズル14では、Cリング形状のアーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を挿入・配置して、該アーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて液剤Lを吐出することにより、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布する。従って、より均一且つ確実な液剤L塗布を可能とするためには、その塗布中、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を略一定に保持しておくことが望ましく、他のノズル14a〜14iについても同様である。
【0059】
そこで、図13Aに示すように、ノズル14(14a〜14i)に代えて、アーム部32の上面(及び下面)に、該アーム部32の内円の中心を指示するマーク(目印)52を設けたノズル14jとして構成することもできる。該マーク52は、例えばその指示方向に延在する仮想線の交点が、アーム部32の内円の中心に位置するように複数位置(図13では3点)に設置することが好ましい。このノズル14jによれば、3つのマーク52を目安として挿入管16を配置・保持することができ、液剤Lの塗布時、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を、例えば中心位置に容易に保持することができる。マーク52は、例えば印刷や成形による凹凸等によって形成すればよく、勿論、その設置数や形状は適宜変更可能である。なお、図13Aでは、理解の容易のため、軸方向に直交する断面で示された挿入管16の断面ハッチングを省略して図示しており、図13B及び図13Cについても同様とする。
【0060】
図13Bに示すように、ノズル14(14a〜14j)に代えて、アーム部32の内面32aの対向面間に細径の糸54を設け、該糸54の略中央にマーク56を設置したノズル14kとして構成することもできる(図1中の2点鎖線も参照)。糸54としては、例えば、ノズル14と同様な樹脂等による合成繊維等の線材を用いるとよく、また、マーク56としては、糸54の一部を着色したものや、糸54よりも多少大径の部材を固着したもの等とするとよい。このノズル14kによれば、マーク56を目安として糸54に挿入管16を当接させた状態で配置・保持することにより、液剤Lの塗布時、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を一層確実に且つ容易に保持することができる。
【0061】
図13Bに示すように、糸54は、開口部38側の開口方向に直交する方向で設置すると、開口部38を介してアーム部32の内側に挿入された挿入管16を容易に位置決め保持することができて好ましい。また、糸54は、図13Bに示すように、マーク56がアーム部32の内円の略中心に配置されるように設置してもよいが、例えば、図13B中に2点鎖線で示すように、マーク56がアーム部32の内円の中心から多少後方にオフセットした位置となるように設置すると、挿入管16の外面を該糸54に当接させた状態で、該挿入管16をアーム部32の内円の中心に配置することが可能となる。勿論、マーク56を省略し、糸54を架橋させた構成としても、挿入管16の位置決め保持機能は十分に確保することができる。
【0062】
図13Cに示すように、上記のノズル14kに代えて、糸54を1本ではなく複数本(図13Cでは2本)設置したノズル14lとして構成してもよい。このノズル14lでは、2本の糸54を互いに交差するように設置し、その交点にマーク56を設置すると共に、該マーク56がアーム部32の内円の略中心となるように設置している。これにより、ノズル14lのアーム部32の内側には、2本の糸54が交差したことにより、所定の角度θを持って開口部38側を指向した凹状部分(谷部)が形成されることとなり、該凹状部分で一層安定して挿入管16を位置決め保持することができる。当該ノズル14lについても、挿入管16の外面を糸54(前記凹状部分)に当接させた状態で、該挿入管16をアーム部32の内円の中心に配置とするため、図13C中に2点鎖線で示すようなオフセット位置に糸54及びマーク56を設置してもよく、またマーク56を省略することも勿論可能である。
【0063】
次に、ノズル14、14a〜14lの変形例として、挿入管16の開口部にロック機構を設けることにより、アーム部からの挿入管16の抜け止め機構を付与したノズル15及びその変形例について説明する。
【0064】
上記したように、ノズル14等では、アーム部32の内部に挿入管16を設置した状態で液剤Lを吐出する構成であることから、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を設置した後は、液剤Lの塗布が完了するまでの間、挿入管16が開口部38から誤って抜け出さないことが望ましい。以下、挿入管16の抜け止め機能を果たすロック機構を備えたノズルの構成例を順に説明する。
【0065】
図14Aは、ロック機構を有するノズル15のロック状態での平面図であり、図14Bは、図14Aに示すノズル15のアンロック状態での平面図である。
【0066】
図14A及び図14Bに示すように、ノズル15は、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70を有するアーム部74を備える。ロック機構70は、開口部38を構成する一方の端面から進退可能な湾曲棒状のスライドバー72を有し、該スライドバー72は、アーム部74の一端側で周方向に沿って形成された内腔内に挿入・配置されている。スライドバー72の基端には、把持突起75が突設され、該把持突起75がアーム部74の上面に開口形成されたスライド孔76から突出している。アーム部74の内腔内でスライドバー72の基端には、該スライドバー72を前進方向、つまり開口部38を閉じる方向(図15A参照)に付勢するばね78が配設されている。
【0067】
従って、ノズル15では、通常時、ばね78の付勢力により、スライドバー72が前進して他方の開口部38を構成する端面に当接又は近接して該開口部38を閉塞した状態にあり、つまりロック機構70がロック状態にある(図15A参照)。一方、アーム部74により囲繞される領域内に挿入管16を挿脱する際には、把持突起75をスライド孔76に沿って後退させる。これにより、スライドバー72がばね78の付勢力に抗して後退するため、開口部38が開成され、ロック機構70をアンロックすることができる(図15B参照)。勿論、このようなロック機構を有するアーム部は、上記各構成に係るノズル14a〜14lに適用してもよく、以下の各変形例に係るノズル15a〜15gについても同様である。
【0068】
図15Aは、ロック機構を有するノズル15の第1変形例に係るノズル15aのロック状態での平面図であり、図15Bは、図15Aに示すノズル15aのアンロック状態での平面図である。
【0069】
図15A及び図15Bに示すように、ノズル15aは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70aを有するアーム部74aを備える。ロック機構70aは、開口部38を構成するアーム部74aの一方の端面に固着され、該端面から伸縮可能な伸縮部材80を有する。伸縮部材80は、例えば蛇腹状の伸縮チューブで形成されることにより、図16Aに示す伸張した状態で開口部38を閉塞してロック状態となり、図16Bに示す収縮した状態で開口部38を開成してアンロック状態となる。
【0070】
図16Aは、ロック機構を有するノズル15の第2変形例に係るノズル15bのロック状態での平面図であり、図16Bは、図16Aに示すノズル15bのアンロック状態での平面図である。
【0071】
図16A及び図16Bに示すように、ノズル15bは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70bを有するアーム部74bを備える。ロック機構70bは、開口部38を構成するアーム部74bの一方の端面に固着された円柱状の固定部(ボルト部)82と、該固定部82の外周面に形成された雄ねじ82aに螺合する雌ねじ84aを内腔に設けた可動部(ナット部)84とを有する。
【0072】
従って、ロック機構70bでは、可動部84を固定部82に対して螺回・前進させ、該可動部84の先端が他方の開口部38を構成する端面に当接又は近接した位置にすることで開口部38を閉塞したロック状態となり(図16A参照)、可動部84を固定部82に対して逆方向に螺回・後退させることにより、開口部38を開成したアンロック状態となる(図16B参照)。
【0073】
図17は、ロック機構を有するノズル15の第3変形例に係るノズル15cの平面図である。
【0074】
図17に示すように、ノズル15cは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70cを有するアーム部74cを備える。ロック機構70cは、開口部38を構成するアーム部74cの一方の端部に回転軸86で軸支された湾曲棒状の揺動部材88を有する。
【0075】
従って、ロック機構70cでは、回転軸86を軸心として揺動部材88を回動させて図17中に実線で示す閉じ位置に設定することにより、開口部38を閉塞したロック状態となり、揺動部材88を回動させて図17中に2点鎖線で示す開き位置に設定することにより、開口部38を開成したアンロック状態となる。なお、ロック機構70cでは、回転軸86に図示しないトーションばね等を設け、該トーションばねの付勢力により、通常時には揺動部材88が図17中に実線で示す閉じ位置に自動的に設定されるように構成してもよい。
【0076】
図18Aは、ロック機構を有するノズル15の第4変形例に係るノズル15dのロック状態での平面図であり、図18Bは、図18Aに示すノズル15dのアンロック状態での平面図である。
【0077】
図18A及び図18Bに示すように、ノズル15dは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70dを有するアーム部74dを備える。ロック機構70dは、開口部38を構成するアーム部74dの対向する両端面に、互いに近接する方向に拡張(伸張)可能且つ互いに離間する方向に収縮(折り畳み)可能な一対のバルーン90、90を備える。
【0078】
バルーン90は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能であり、収縮された状態(図18B参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路92を介して内部に液剤Lが圧送されることで筒状(円筒状)に拡張する(図18A参照)。バルーン90は、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。
【0079】
上記したように、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは、バルーン90を十分に拡張可能な所定の高い圧力(液圧)を持っている。従って、ロック機構70dでは、シリンジ12(図1参照)から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン90が収縮して開口部38が開成されたアンロック状態にあり(図18B参照)、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路92を介して供給されることにより、各バルーン90が拡張して開口部38が閉塞されたロック状態となる(図18A参照)。つまり、ロック機構70dでは、当該塗布具10の使用者がロック機構70dを特別に操作しなくても、アーム部74dの内側に挿入管16を配置してシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lの液圧によってバルーン90が拡張し、自動的にノズル15dをロック状態とすることができる。なお、バルーン90は、アーム部74dの一方の端面にのみ設置してもよいことも勿論である。
【0080】
図19Aは、ロック機構を有するノズル15の第5変形例に係るノズル15eのロック状態での平面図であり、図19Bは、図19Aに示すノズル15eのアンロック状態での平面図である。
【0081】
図19A及び図19Bに示すように、ノズル15eは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70eを有するアーム部74eを備える。ロック機構70eは、開口部38を構成するアーム部74eの一方の端部近傍に、他方の端部近傍に向かって拡張(延伸)可能且つ離間する方向に収縮(巻き取り)可能な舌状の扁平バルーン94を備える。扁平バルーン94は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能であり、収縮された状態(図19B参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路92を介して内部に液剤Lが圧送されることで旋回しながら舌型板状に拡張し、伸張する(図19A参照)。扁平バルーン94についても、上記したバルーン90と略同様に、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。
【0082】
従って、ロック機構70eでは、シリンジ12(図1参照)から液剤Lが供給されていない状態では、扁平バルーン94が収縮・巻回され、開口部38が開成されたアンロック状態にあり(図19B参照)、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路92を介して供給されることにより、扁平バルーン94が拡張・伸張して開口部38が閉塞されたロック状態となる(図19A参照)。つまり、ロック機構70eにおいても、上記のロック機構70dと略同様に、当該塗布具10の使用者がロック機構70eを特別に操作しなくても、アーム部74eの内側に挿入管16を配置した状態でシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lによって扁平バルーン94が拡張し、自動的にノズル15eをロック状態とすることができる。なお、扁平バルーン94は、アーム部74eの対向する両方の端部に設置してもよいことも勿論である。
【0083】
図20Aは、ロック機構を有するノズル15の第6変形例に係るノズル15fのアンロック状態での平面図であり、図20Bは、図20Aに示すノズル15fのロック状態での平面図である。
【0084】
図20A及び図20Bに示すように、ノズル15fは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70fを有するアーム部74fを備える。アーム部74fは、例えば略半円状のリングとして形成されており、ロック機構70fは、該アーム部74fの開口側に沿って径方向に進退可能なラック部材96を備える。ラック部材96は、その内側面にラック歯車96aを有し、該ラック歯車96aが、ノズル流路34を開閉する活栓(バルブ)98に形成されたピニオン歯車98aと噛み合いしている。ラック部材96は、アーム部74fの一端部に形成されたガイド孔100に挿通されることによりガイドされ、ピニオン歯車98aの回転に伴って進退し、開口部38を開閉することができる。
【0085】
従って、ロック機構70fでは、図20Aに示すように、活栓98を閉じ位置にしてノズル流路34を閉じた状態では、ラック部材96が後退位置に設定されて開口部38が開成されたアンロック状態にある。一方、活栓98を開き位置にしてノズル流路34を開く際には、該活栓98の開き動作と連動してピニオン歯車98aが回転し、これに連動してラック部材96が前進駆動される。そして、図20Bに示すように、活栓98が全開位置になると、ラック部材96も所定の前進位置となり、開口部38が閉塞されたロック状態となる。つまり、ロック機構70fでは、シリンジ12から液剤Lを供給する際に、活栓98を開き操作(ノズル流路34の開放)に連動して、ラック部材96が前進駆動され、これにより開口部38が自動的に閉塞され、ロック状態となる。
【0086】
図21Aは、ロック機構を有するノズル15の第7変形例に係るノズル15gのロック状態での平面図であり、図21Bは、図21Aに示すノズル15gのアンロック状態での平面図であり、図21Cは、図21Aに示すロック状態での斜視図である。
【0087】
図21A〜図21Cに示すように、ノズル15gは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、互いに開閉することで開口部38を開閉可能なロック機構70gを有する一対のアーム部74g、74hを備える。各アーム部74g、74hは、それぞれ略半円状のリングとして構成されており、一方のアーム部74gはベース部30に固定され、他方のアーム部74hは回転軸102により、アーム部74gに対して回動可能である。回転軸102は、各アーム部74gの各ノズル流路34にそれぞれ分岐する分岐流路を有する。そして、図21A及び図21Cに示すように、各アーム部74g、74hが閉じ位置に設定されると、その先端部同士が重なる位置にあり、これにより開口部38を確実に閉塞することができる。
【0088】
従って、ロック機構70gでは、回転軸102を軸心としてアーム部74hを回動させて図21A及び図21Cに示す閉じ位置に設定することにより、開口部38が閉塞されたロック状態となり、アーム部74hを回動させて図21Bに示す開き位置に設定することにより、開口部38が開成されたアンロック状態となる。なお、ロック機構70gでは、回転軸102に図示しないトーションばね等を設け、該トーションばねの付勢力により、通常時にはアーム部74hが図21A及び図21Cに示す閉じ位置に自動的に設定されるように構成してもよい。
【0089】
次に、上記のように構成される塗布具10の他の構成例について説明する。
【0090】
図22は、図1に示す液剤塗布具10の別の構成例に係る液剤塗布具10aの斜視図である。
【0091】
上記のノズル14(14a〜14l)、15(15a〜15g)を備える液剤塗布具10では、ノズル14等をシリンジ12に対して着脱可能に構成していたが、図22に示すように、シリンジ12aの先端に、例えばノズル14と略構造からなるノズル14mを一体的に設けた液剤塗布具10aとして構成することもできる。これにより、塗布具10aでは、ノズル14mをシリンジ12aに装着する工程が不要となり、取り扱いが一層容易となる。さらに、ノズル14mをシリンジ12aに一体化したことにより、当該塗布具10aの製造コストを低減することができる。なお、図22では、ノズル14mとしてノズル14と略同様な構成を例示しているが、当該塗布具10aには、他のノズル14a〜14l、15、15a〜15gと略同様な構成からなるものを用いても勿論よく、次の塗布具10bについても同様である。
【0092】
図23Aは、図1に示す液剤塗布具10のさらに別の構成例に係る液剤塗布具10bの平面図であり、図23Bは、図23Aに示す液剤塗布具10bの側面図である。
【0093】
図23A及び図23Bに示すように、液剤塗布具10bは、図22に示す塗布具10aのシリンジ12aに代えて、貯液部62aを有する小型扁平な本体部62を有し、該本体部62の先端に貯液部62aから連通するノズル流路34を設けたノズル14nが一体的に備えられている。本体部62の略中央部には、その上下面に扁平半球状に膨出形成された膨出部62bが設けられ、この膨出部62bの内側が貯液部62aとなっている。本体部62は、少なくとも貯液部62aを構成する膨出部62bが可撓性を有する樹脂製材料等によって形成される。
【0094】
従って、当該塗布具10bでは、使用者が本体部62を片手で把持した状態で、例えば親指と人差指とで図23B中の矢印Pに示すように、膨出部62b(貯液部62a)を押し潰す方向に押圧することにより、ノズル14nの吐出孔36から液剤Lを吐出することができる。このように、塗布具10bではシリンジが不要となることから、全体として一層コンパクト且つ低コストな構造とすることができ、取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0095】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0096】
例えば、液剤塗布具10によって吐出・塗布する液剤Lとしては、上記したシアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し且つ十分な粘度を有した液剤以外であっても勿論よく、要は挿入部20周辺に塗布されることで固化し又は適度な粘度によって隙間Gを被覆し塞ぐことができるものであればよく、例えば、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲル等を用いてもよい。なお、当該塗布具によって塗布される液剤とは、塗布される状態で液体のものをいい、塗布された後、シーラントのように固化するものも当然に含むものとする。
【符号の説明】
【0097】
10、10a、10b…液剤塗布具 12、12a…シリンジ
14、14a〜14n、15、15a〜15g…ノズル
16…挿入管 18…生体組織
20…挿入部
32、40、42、74、74a〜74h…アーム部
36、36a、48、50…吐出孔 38、44、46…開口部
47、49…脚部 70、70a〜70g…ロック機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等の長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部を被覆する液剤を塗布するための液剤塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の長尺状の挿入体、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、気管切開カニューレ等(以下、挿入管という)を体内に挿入し留置する際には、当該挿入管の生体組織(例えば、体表面)への挿入部に隙間を生じることがあり、この隙間に菌(例えば、皮膚に常在する菌)や汚れが侵入し、感染症や炎症を生じる可能性がある。
【0003】
そこで、一般的には、上記の感染症や炎症を予防するために、挿入部周辺をドレッシング剤で被覆する処置や、抗菌剤を含浸させたパッチを挿入部周辺に貼り付ける処置等が行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−94299号公報
【特許文献2】特許第3046623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなドレッシング剤やパッチを挿入部及びその周辺に貼り付ける処置を行うことにより、感染症や炎症の予防に対して一定の効果を得ることができる。しかしながら、このようなドレッシング剤やパッチを貼り付ける方法は、挿入管と生体組織との挿入部周辺を上方からカバーするだけの処置であるため、挿入部に生じる隙間を完全に塞ぐことは難しい。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を考慮してなされたものであり、長尺状の挿入体と生体組織との間の挿入部に生じる隙間を一層確実に塞ぐことを可能とする液剤塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液剤塗布具は、生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部を有し、前記アーム部に、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、前記液剤をアーム部に設けた吐出孔から、該アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入部及びその周辺に液剤を塗布し、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。
【0009】
また、前記液剤が充填される貯液部と、前記アーム部を有し、該アーム部に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルとを備え、貯液部内に充填された液剤をノズルの吐出孔から吐出する構成としてもよい。
【0010】
この場合、前記吐出孔が複数設けられていると、前記液剤を挿入体の外周面に対してより均等に且つ迅速に吐出することができる。
【0011】
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であると、挿入体を該リング形状の内側に位置決め保持した状態で液剤を塗布することができ、当該液剤塗布具の操作性が一層向上する。
【0012】
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有するとよい。そうすると、該開口部を介して挿入体をアーム部の内側に容易に配置することができる。
【0013】
前記開口部は、前記アーム部の内面側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面であるとよい。これにより、開口部からアーム部により囲繞される領域内へと挿入体を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部により囲繞される領域内に配置された挿入体の開口部からの抜け止め機能も付与することができる。
【0014】
また、前記開口部を開閉可能なロック機構を備えると、アーム部により囲繞される領域内に配置した挿入体の開口部からの確実な抜け止めが可能となり、より確実に且つ安定して液剤の塗布を行うことが可能となる。
【0015】
前記吐出孔は、前記アーム部の前記挿入体の外周面に対向する内面に設けられるか、又は、前記アーム部の前記挿入部の方向を指向する下面に設けられる構成としてもよい。アーム部の内面に吐出孔を設けると、該アーム部により囲繞される領域内に位置決め保持した挿入体の外周面に対し、液剤を一層円滑に且つ確実に吐出することができる。一方、アーム部の下面に吐出孔を設けた場合、液剤の吐出方向としてはアーム部に垂直な方向(例えば、図10B参照)でもよく、挿入体の生体組織への挿入部に向ける方向(例えば、図12参照)でもよい。挿入部近傍に焦点を持つように角度付けされたものであれば、挿入部及びその周囲への液剤の塗布を一層容易に行うことができる。
【0016】
前記アーム部には、前記生体組織の表面に着地して、該アーム部の前記挿入部から高さ位置を規定する脚部が設けられていると、一層簡便な操作感を得ることができ、しかも、使用者に当該液剤塗布具の適正な使用位置を明示することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、挿入体の生体組織への挿入部を被覆するための液剤をアーム部に設けた吐出孔から、該アーム部で囲繞した挿入体の外周面に向けて吐出することにより、挿入体の生体組織への挿入部及びその周辺に液剤を円滑に塗布することができ、該挿入部に生じる隙間を確実に被覆し塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る液剤塗布具の一部分解斜視図である。
【図2】図1に示す液剤塗布具の先端側を拡大した部分断面図である。
【図3】図3Aは、図1に示す塗布具によって挿入管の生体組織への挿入部に対して液剤の塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤の塗布を行い、挿入部周辺を液剤によって被覆した状態を示す説明図である。
【図4】図4Aは、シリンジとノズルの接続部にロック機構を設けた構成例の側面断面図であり、図4Bは、図4Aに示すロック機構をロック状態とした側面断面図である。
【図5】図5Aは、第1変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図5Bは、第2変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図6】図6Aは、第3変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図6Bは、第4変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図7】第5変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図8】第6変形例に係るノズルの一部省略部分断面である。
【図9】第7変形例に係るノズルの一部省略部分断面である。
【図10】図10Aは、第8変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図10Bは、図10Aに示すノズルを用いて液剤の塗布を行う様子を示す説明図である。
【図11】図11Aは、先端に脚部を設けたノズルを挿入部に対して位置決めした様子を示す説明図であり、図11Bは、先端に他の構成の脚部を設けたノズルを挿入部に対して位置決めした様子を示す説明図である。
【図12】図12Aは、第9変形例に係るノズルの一部省略底面図であり、図12Bは、図12A中のXIIB−XIIB線に沿う一部省略断面図である。
【図13】図13Aは、第10変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図13Bは、第11変形例に係るノズルの一部省略平面図であり、図13Cは、第12変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図14】図14Aは、ロック機構を有するノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図14Bは、図14Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図15】図15Aは、ロック機構を有するノズルの第1変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図15Bは、図15Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図16】図16Aは、ロック機構を有するノズルの第2変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図16Bは、図16Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図17】ロック機構を有するノズルの第3変形例に係るノズルの一部省略平面図である。
【図18】図18Aは、ロック機構を有するノズルの第4変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図18Bは、図18Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図19】図19Aは、ロック機構を有するノズルの第5変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図19Bは、図19Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図である。
【図20】図20Aは、ロック機構を有するノズルの第6変形例に係るノズルのアンロック状態での一部省略平面図であり、図20Bは、図20Aに示すノズルのロック状態での一部省略平面図である。
【図21】図21Aは、ロック機構を有するノズルの第7変形例に係るノズルのロック状態での一部省略平面図であり、図21Bは、図21Aに示すノズルのアンロック状態での一部省略平面図であり、図21Cは、図21Aに示すロック状態での一部省略斜視図である。
【図22】図1に示す液剤塗布具の別の構成例に係る液剤塗布具の斜視図である。
【図23】図23Aは、図1に示す液剤塗布具のさらに別の構成例に係る液剤塗布具の平面図であり、図23Bは、図23Aに示す液剤塗布具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る液剤塗布具について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る液剤塗布具10の一部分解斜視図であり、図2は、図1に示す液剤塗布具10の先端側を拡大した部分断面図である。
【0021】
本実施形態に係る液剤塗布具10(以下、単に「塗布具10」ともいう)は、液剤Lが充填されたシリンジ12と、シリンジ12の先端に接続されるノズル14とを有し、液剤Lをノズル14から目的部位へと塗布(投与、吐出、注入)するための器具である。液剤Lは、カテーテル、ドレーン又はケーブル等からなる長尺状の挿入体である挿入管16の生体組織18(例えば、体表面)への挿入部20を被覆するための薬剤等であり(図3A〜図3C参照)、すなわち、塗布具10は、先端のノズル14から前記挿入部20及びその周辺に、液剤Lを塗布するための医療用器具である。挿入管16の生体組織18への挿入部20とは、体表面以外、例えば、体内にあるものであってもよい。
【0022】
液剤Lとしては、例えば、シアノアクリレートを含有するシーラント(封止材、接着剤)や、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いるとよい。該液剤は、吐出後に硬化するものがよく、生体組織と適度な接着性を有するものが望ましい。具体的な材料の一例としては、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲルがあり、2液を混合させるなどして硬化させる方法でもよい。
【0023】
以下、図1及び図2における左側(シリンジ12側)を「基端(後端)」側、右側(ノズル14側)を「先端」側と呼んで説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、シリンジ12は、先細りテーパ形状で突出する流出口22aを先端に設けた外筒(シリンダ)22と、外筒22内で液密に摺動し、内部に液剤Lが充填される貯液部22bを画成するガスケット24が先端に装着され、前後方向(軸方向)に移動可能な押し子(プランジャロッド)26とを備える。
【0025】
ノズル14は、シリンジ12の流出口22aにテーパ嵌合する注入口28を基端面に有した略円筒状のベース部30と、ベース部30の先端から平面視(図2参照)で挿入管16を囲繞するために一部に開放部分があり、例えばCリング状、V字状、U字状(図2ではCリング状の構成を例示)に形成されるアーム部(リング部)32とを有する。ベース部30の内部には、注入口28から連通して軸方向に延びたノズル流路34が形成され、該ノズル流路34は、アーム部32の内部にも延在している(図2参照)。さらに、略円形状に形成されたアーム部32の内面(内周面)32aには、ノズル流路34から分岐した複数(本実施形態では、9個)の吐出孔36が開口形成されている。
【0026】
図2に示すように、このノズル14における各吐出孔36は、全てアーム部32を構成する円の中心を指向する吐出方向に形成され、アーム部32の周方向に沿って等間隔に設けられているが、吐出孔36の吐出方向や配置間隔等は適宜変更可能であることは勿論である。
【0027】
図1及び図2に示すように、アーム部32には、ベース部30の軸方向先端側に、挿入管16の外径が通過可能な開口部(切欠部、スリット)38が設けられている。このアーム部32では、開口部38は、先端方向に向かって幅(内面間距離)が拡がる傾斜形状に構成される。
【0028】
ノズル14の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ポリアミド等の樹脂を用いるとよく、シリンジ12の外筒22及び押し子26についても同様である。ガスケット24には、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマーを用いるとよい。また、ノズル14は、例えば、ベース部30の基端からアーム部32の先端までの長さが10mm〜50mm程度、好ましくは20mm〜30mm程度であり、アーム部32の内面32aの内径、つまり、アーム部32により囲繞される領域の外径は、挿入管16の外径にもよるが、例えば、5mm〜30mm程度、好ましくは10mm〜20mm程度であり、開口部38の幅(間隔)は、3mm〜30mm程度、好ましくは3mm〜20mm程度であり、吐出孔36は、口径が0.5mm〜3mm程度、好ましくは1mm〜2mm程度であるとよい。これらの各寸法や材質は、当該塗布具10の用途や仕様、液剤Lの種類等によって適宜最適に設定可能であることは勿論である。
【0029】
次に、以上のように構成される塗布具10を用いた液剤塗布方法の一例について、図3A〜図3Cを参照して説明する。図3Aは、図1に示す塗布具10によって挿入管16の生体組織18への挿入部20に対して液剤Lの塗布を行う様子を示す説明図であり、図3Bは、図3Aに示す塗布具10の平面図であり、図3Cは、図3Aに示す状態から液剤Lの塗布を行い、挿入部20周辺を液剤Lによって被覆した状態を示す説明図である。
【0030】
長尺状の挿入体である挿入管16としては、例えば、血管カテーテル、導尿カテーテル及び硬膜外カテーテル等の各種カテーテル、又は、留置ドレーン、又は、腹膜透析チューブ、又は、ヒューバー針の挿入部、又は、生体埋込型医療機器のケーブル、又は、切開カニューレ等を挙げることができる。このような挿入管16が生体組織18(例えば、体表面)に挿入された状態では、図3Aに示すように、挿入部20において挿入管16と生体組織18との間に、該挿入管16の外周面に沿った隙間Gが生じることになる。なお、図3A〜図3Cでは、理解の容易のため、隙間Gをやや誇張して図示しているが、実際の隙間Gは、図3A〜図3Cに図示したものよりも幅の狭い、より微小な間隔である。
【0031】
このように挿入部20に生じる隙間Gには、生体組織18の表面(皮膚表面等)に常在する菌や汚れが侵入する可能性があり、感染症や炎症を防止するためには、この隙間Gをより確実に塞ぐことが好ましい。ところが、上記した従来のドレッシング剤は、フィルムを挿入部周辺に貼り付けるだけの構成であるため、挿入部で生じる前記隙間Gを完全に塞ぐことは難しい。しかも、貼り付けたフィルムにしわ等が生じることがあり、そうすると、しわ等によって生じた隙間(空間)を通して菌が移動し、前記隙間Gへと侵入する可能性もある。
【0032】
そこで、本実施形態では、上記の隙間Gを確実に閉塞し、しわ等に起因する前記隙間の発生を防止するため、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用い、これらを単独で又は混合したものを液剤Lとして、シリンジ12の貯液部22b内に予め充填しておくか、又は手技の直前に充填しておく。
【0033】
次に、シリンジ12の流出口22aのキャップ39(図1参照)を取り外して該流出口22aを開通してからノズル14を装着し(図2参照)、プライミングを行った後、図3A及び図3Bに示すように、開口部38を通してアーム部32の内側に挿入管16を挿入し、該アーム部32の内面32aで挿入管16を囲繞するように配置する。すなわち、アーム部32のリング内側に挿入管16を挿通させた状態とする。
【0034】
なお、キャップ39に代えて、例えば、流出口22aの出口に図示しない樹脂製の膜を設けておき、使用開始時に、該膜を図示しない穿刺針等によって開通するか、又はノズル14のノズル流路34内に設けた流路が形成された穿刺針によって開通するように構成してもよい。
【0035】
ノズル14の挿入管16への設置位置は、挿入管16や塗布具10の種類や寸法、挿入部20での隙間Gの大きさ等にもよるが、例えば、生体組織18の表面から5mm〜20mm、好ましくは10mm程度の高さ位置(図3A中のh=10mm)に設定するとよい。また、開口部38の幅(最小幅)は、例えば、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、数%〜数10%程度大きく設定することが好ましく、同様に、アーム部32の内面32aの内径は、対象となる挿入管16の外径よりも多少大きく、例えば、1.3倍〜2倍程度に設定することが好ましい。また、開口部38が弾性部材からなり、拡張することができる場合はこの限りではない。
【0036】
続いて、シリンジ12の押し子26を押し込むことにより、図3B及び図3Cに示すように、液剤Lがノズル14の各吐出孔36から一挙に挿入管16に向けて吐出され、該吐出された液剤Lは、挿入管16の外周面を伝いながら下降して挿入部20に到達する。これにより、液剤Lが挿入部20及びその周辺に適切に塗布され、隙間Gが確実に被覆され塞がれる。また、当該塗布具10の液剤Lは、例えば、上記のドレッシング剤と併用することもでき、そうするとドレッシング剤に生じるしわがあった場合でも菌が隙間Gから体内に侵入することが確実に防止される。
【0037】
例えば、液剤Lとして、シアノアクリレートを含有するシーラントを用いると、挿入部20及びその周辺部で該シーラントが固化するため、隙間Gを確実に塞ぐことができ、しかも挿入管16を挿入部20に対して固定することもできる。一方、液剤Lとして、例えば、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し、且つ十分な粘度を有した液剤を用いると、挿入部20及びその周辺部に該液剤Lが保持され、隙間Gを確実に塞ぐことができる。なお、該液剤を用いる場合には、上記のシーラントのように挿入部20周辺で固化することはないが、一般に、挿入管16と生体組織18との間に生じる隙間Gの幅は極めて狭いことから、所定の粘度からなる液剤Lであれば、固化しなくてもその表面張力によって確実に隙間Gを塞ぐことは可能である。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る塗布具10では、シリンジ12の貯液部22b内に充填された液剤Lをアーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて吐出し、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布することにより、隙間Gを確実に被覆し、塞ぐことができる。従って、カテーテル等の挿入管16と生体組織18との間の挿入部20に形成される隙間Gに菌や汚れが侵入することを確実に防ぐことができ、該挿入部20での感染症や炎症の発生を予防することができる。
【0039】
ノズル14は、挿入管16を囲繞可能なアーム部32を有し、このアーム部32の内面32aに液剤Lの吐出孔36が形成されている。従って、液剤Lの塗布時、アーム部32の内側で挿入管16を保持しつつ、吐出孔36から液剤Lを確実に挿入管16の外周面に一挙に吐出することができ、高い操作性と確実な塗布とが可能となる。
【0040】
各吐出孔36がアーム部32の内面32aに形成されていることにより、該アーム部32の内側(内部)に挿入管16を保持(配置)しておくだけで、液剤Lを挿入管16の外周面に略均等に確実に吐出することができる。
【0041】
なお、吐出孔36は、上記のように複数設けず、例えば、ある程度の大きさを持つ1つの吐出孔36のみであってもよいが、挿入管16の外周面に対してより均等に液剤Lを塗布するためには、アーム部32の周方向に略等間隔で均等配置された3つ以上の吐出孔36を設けることが好ましい。
【0042】
図2に示すように、ノズル14は、挿入管16をアーム部32により囲繞される領域内に挿入するための開口部38を有し、この開口部38を、当該塗布具10の先端方向、つまり軸線上に開口形成している。これにより、使用者は、当該塗布具10を挿入管16にセットする際、例えば、片手でシリンジ12部分を把持したまま、開口部38へと容易に挿入管16を通過させることができ、高い操作性を得ることができる。
【0043】
しかも、ノズル14では、開口部38を、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面で形成している。これにより、開口部38からアーム部32により囲繞される領域内へと挿入管16を一層容易に挿入することが可能となると共に、一旦アーム部32の内側に配置された挿入管16の開口部38からの抜け止め機能も付与することができる。
【0044】
ところで、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは所定の高い圧力(抵抗)を発生することになる。そこで、ノズル14とシリンジ12との接続部について、図2に示される通常のテーパ嵌合構造(ルアーテーパ嵌合構造)以外にも、例えば、図4A及び図4Bに示されるルアーロック21を備えたルアーロック構造とすることも有効である。
【0045】
図4A及び図4Bに示すように、ルアーロック21は、シリンジ12の流出口22aの外周側に隙間23を有して配置された筒部25の内周面に形成された雌ねじ27と、ベース部30の基端側外周面に形成された雄ねじ29とから構成されている。シリンジ12側の雌ねじ27に対し、ノズル14側の雄ねじ29が螺合されることにより、シリンジ12とノズル14とをより確実に嵌合・締結することができる。
【0046】
次に、上記のように構成される塗布具10におけるノズル14の変形例について順に説明する。以下の各変形例において、図1〜図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0047】
図5Aに示すように、ノズル14に代えて、V字状の内面40aに吐出孔36を設けたアーム部40からなるノズル14aや、図5Bに示すように、略菱形状の内面42aに吐出孔36を設けたアーム部42からなるノズル14bとして構成することもできる。すなわち、塗布具10において、アーム部の形状は上記アーム部32のリング形状(Cリング形状)や、アーム部40、42のV字状や菱形状以外であっても勿論よく、要は、挿入管16を適切に位置決め保持し、挿入部20に対して液剤Lを適切に塗布可能な構成であればよい。換言すれば、アーム部としては、挿入管16の少なくとも一部を囲繞でき、この挿入管16に対して液剤Lを円滑に吐出することができる構成であればよい。
【0048】
図6Aに示すように、ノズル14に代えて、幅が略平行に形成された開口部44を有するノズル14cや、図6Bに示すように、アーム部32の内面32a側から外面側に向けて幅が狭まる傾斜面からなる開口部46を有するノズル14dとして構成することも可能である。図6Aに示す開口部44では、該開口部44を介した挿入管16のアーム部32により囲繞される領域内への挿脱がいずれも同程度に容易となる。また、図6Bに示す開口部46では、挿入管16のアーム部32により囲繞される領域内への挿入は多少難しくなるが、挿入管16のアーム部32の内側からの取り出しが容易となる。勿論、これら開口部44、46は、図5A及び図5Bに示すノズル14a、14bに適用してもよい。
【0049】
図7に示すように、ノズル14に代えて、当該塗布具10の軸方向に交差する方向(図7では軸方向に略直交する方向)を向いて開口する位置に開口部38を設けたノズル14eとして構成してもよい。このノズル14eによれば、シリンジ12での押し子26の押し込み方向(つまりシリンジ12の軸方向)と、開口部38の開口方向とが交差しているため、一旦アーム部32により囲繞される領域内に挿入配置された挿入管16が、押し子26の押し込み操作時等に、誤って開口部38から抜け出すことを確実に防止することができる。
【0050】
図2に示すノズル14では、各吐出孔36での吐出方向を、全てアーム部32を構成する円の中心を指向するものとして説明したが、勿論これ以外であってもよい。例えば、図8に示すように、開口部38近傍に、アーム部32を構成する円の中心ではなく、開口部38側に多少寄った吐出方向に設定された一対の吐出孔36a、36aを設けたノズル14fとして構成することもできる。
【0051】
そうすると、各吐出孔36aから吐出された液剤Lは、図8中の矢印Aに示されるように、開口部38に対向する部分に位置した挿入管16の外周面にも適切に塗布されることになる。このため、開口部38によって吐出孔36が設置できない部分に対しても、吐出孔36aによって確実に液剤Lを塗布することが可能となり、挿入管16の外周面に対し、液剤Lを一層均等に塗布することが可能となる。勿論、吐出孔36aは、1個又は3個以上としてもよく、その配置も適宜変更可能である。
【0052】
図9に示すように、吐出孔36に代えて、その吐出方向に向かって拡径するテーパ形状の吐出孔48を設けたノズル14gとして構成することもできる。このような吐出孔48を設けることにより、ノズル14gでは、挿入管16の外周面に対して一層確実に且つ均一に液剤Lを塗布することが可能となる。
【0053】
図2に示すノズル14では、吐出孔36をアーム部32の内面32aに設ける構成を例示したが、例えば、図10Aに示すように、吐出孔36をアーム部32の下面32b(挿入部20の方向を指向する面)に設けたノズル14hとして構成してもよい。
【0054】
図10Bに示すように、このノズル14hによれば、挿入部20側を向いた下面32bに吐出孔36が設けられることにより、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を保持した状態とすれば、挿入管16、挿入部20及びその周辺に液剤Lを確実に塗布することができる。
【0055】
図11Aに示すように、例えば、ノズル14hについて、アーム部32の先端側(開口部38の近傍)に、生体組織18の表面に着地して、該アーム部32の挿入部20(生体組織18の表面)からの高さhを規定する脚部47を設けてもよい。脚部47を設けることにより、ノズル14hの挿入管16への設置に最適な高さ位置、つまり生体組織18の表面からの高さhを明確に規定することができ、一層簡便な操作感を得ることができる。しかも、使用者に当該塗布具10の適正な使用位置を明示することも可能となる。なお、脚部47の形状は、例えば、カメラ等で用いられる一般的な3脚(2脚)構造や、平板を立設した構造等、各種の形状をとることができ、要は、シリンジ12の先端に接続されたノズル14hと生体組織18の表面との間に介在し、ノズル14hの生体組織18からの設置高さhを規定し得るものであればよい。
【0056】
同様に、図11Bに示すように、アーム部32の先端側(開口部38の近傍)に、アーム部32の延在方向から傾斜する側面視で略三角形状の脚部49を設けてもよい。脚部49を設けることにより、該脚部49を生体組織18の表面上に当接させるだけで、ノズル14hの挿入部20に対する位置決めを容易に行うことができる。なお、これら脚部47、49は、上記のノズル14a〜14gや後述するノズル14i、14jに設置してもよいことは勿論である。
【0057】
図12A及び図12Bに示すように、ノズル14hに代えて、吐出孔36からの液剤Lの吐出方向を、アーム部32の内側を指向する斜め下方に設定した吐出孔50を下面32bに設けたノズル14iとして構成することもできる。このノズル14iによれば、吐出孔50から斜め下方内側寄りに液剤Lが吐出されるため、挿入管16及び挿入部20に対して一層確実に液剤Lを塗布することができる。なお、吐出孔50は、アーム部32の下面32bに設ける以外にも、例えば、下面32bと内面32aの角部に設けてもよい。
【0058】
上記したように、ノズル14では、Cリング形状のアーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を挿入・配置して、該アーム部32の内面32aに開口する吐出孔36から挿入管16の外周面に向けて液剤Lを吐出することにより、挿入部20及びその周辺に液剤Lを塗布する。従って、より均一且つ確実な液剤L塗布を可能とするためには、その塗布中、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を略一定に保持しておくことが望ましく、他のノズル14a〜14iについても同様である。
【0059】
そこで、図13Aに示すように、ノズル14(14a〜14i)に代えて、アーム部32の上面(及び下面)に、該アーム部32の内円の中心を指示するマーク(目印)52を設けたノズル14jとして構成することもできる。該マーク52は、例えばその指示方向に延在する仮想線の交点が、アーム部32の内円の中心に位置するように複数位置(図13では3点)に設置することが好ましい。このノズル14jによれば、3つのマーク52を目安として挿入管16を配置・保持することができ、液剤Lの塗布時、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を、例えば中心位置に容易に保持することができる。マーク52は、例えば印刷や成形による凹凸等によって形成すればよく、勿論、その設置数や形状は適宜変更可能である。なお、図13Aでは、理解の容易のため、軸方向に直交する断面で示された挿入管16の断面ハッチングを省略して図示しており、図13B及び図13Cについても同様とする。
【0060】
図13Bに示すように、ノズル14(14a〜14j)に代えて、アーム部32の内面32aの対向面間に細径の糸54を設け、該糸54の略中央にマーク56を設置したノズル14kとして構成することもできる(図1中の2点鎖線も参照)。糸54としては、例えば、ノズル14と同様な樹脂等による合成繊維等の線材を用いるとよく、また、マーク56としては、糸54の一部を着色したものや、糸54よりも多少大径の部材を固着したもの等とするとよい。このノズル14kによれば、マーク56を目安として糸54に挿入管16を当接させた状態で配置・保持することにより、液剤Lの塗布時、アーム部32により囲繞される領域内での挿入管16の設置位置を一層確実に且つ容易に保持することができる。
【0061】
図13Bに示すように、糸54は、開口部38側の開口方向に直交する方向で設置すると、開口部38を介してアーム部32の内側に挿入された挿入管16を容易に位置決め保持することができて好ましい。また、糸54は、図13Bに示すように、マーク56がアーム部32の内円の略中心に配置されるように設置してもよいが、例えば、図13B中に2点鎖線で示すように、マーク56がアーム部32の内円の中心から多少後方にオフセットした位置となるように設置すると、挿入管16の外面を該糸54に当接させた状態で、該挿入管16をアーム部32の内円の中心に配置することが可能となる。勿論、マーク56を省略し、糸54を架橋させた構成としても、挿入管16の位置決め保持機能は十分に確保することができる。
【0062】
図13Cに示すように、上記のノズル14kに代えて、糸54を1本ではなく複数本(図13Cでは2本)設置したノズル14lとして構成してもよい。このノズル14lでは、2本の糸54を互いに交差するように設置し、その交点にマーク56を設置すると共に、該マーク56がアーム部32の内円の略中心となるように設置している。これにより、ノズル14lのアーム部32の内側には、2本の糸54が交差したことにより、所定の角度θを持って開口部38側を指向した凹状部分(谷部)が形成されることとなり、該凹状部分で一層安定して挿入管16を位置決め保持することができる。当該ノズル14lについても、挿入管16の外面を糸54(前記凹状部分)に当接させた状態で、該挿入管16をアーム部32の内円の中心に配置とするため、図13C中に2点鎖線で示すようなオフセット位置に糸54及びマーク56を設置してもよく、またマーク56を省略することも勿論可能である。
【0063】
次に、ノズル14、14a〜14lの変形例として、挿入管16の開口部にロック機構を設けることにより、アーム部からの挿入管16の抜け止め機構を付与したノズル15及びその変形例について説明する。
【0064】
上記したように、ノズル14等では、アーム部32の内部に挿入管16を設置した状態で液剤Lを吐出する構成であることから、アーム部32により囲繞される領域内に挿入管16を設置した後は、液剤Lの塗布が完了するまでの間、挿入管16が開口部38から誤って抜け出さないことが望ましい。以下、挿入管16の抜け止め機能を果たすロック機構を備えたノズルの構成例を順に説明する。
【0065】
図14Aは、ロック機構を有するノズル15のロック状態での平面図であり、図14Bは、図14Aに示すノズル15のアンロック状態での平面図である。
【0066】
図14A及び図14Bに示すように、ノズル15は、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70を有するアーム部74を備える。ロック機構70は、開口部38を構成する一方の端面から進退可能な湾曲棒状のスライドバー72を有し、該スライドバー72は、アーム部74の一端側で周方向に沿って形成された内腔内に挿入・配置されている。スライドバー72の基端には、把持突起75が突設され、該把持突起75がアーム部74の上面に開口形成されたスライド孔76から突出している。アーム部74の内腔内でスライドバー72の基端には、該スライドバー72を前進方向、つまり開口部38を閉じる方向(図15A参照)に付勢するばね78が配設されている。
【0067】
従って、ノズル15では、通常時、ばね78の付勢力により、スライドバー72が前進して他方の開口部38を構成する端面に当接又は近接して該開口部38を閉塞した状態にあり、つまりロック機構70がロック状態にある(図15A参照)。一方、アーム部74により囲繞される領域内に挿入管16を挿脱する際には、把持突起75をスライド孔76に沿って後退させる。これにより、スライドバー72がばね78の付勢力に抗して後退するため、開口部38が開成され、ロック機構70をアンロックすることができる(図15B参照)。勿論、このようなロック機構を有するアーム部は、上記各構成に係るノズル14a〜14lに適用してもよく、以下の各変形例に係るノズル15a〜15gについても同様である。
【0068】
図15Aは、ロック機構を有するノズル15の第1変形例に係るノズル15aのロック状態での平面図であり、図15Bは、図15Aに示すノズル15aのアンロック状態での平面図である。
【0069】
図15A及び図15Bに示すように、ノズル15aは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70aを有するアーム部74aを備える。ロック機構70aは、開口部38を構成するアーム部74aの一方の端面に固着され、該端面から伸縮可能な伸縮部材80を有する。伸縮部材80は、例えば蛇腹状の伸縮チューブで形成されることにより、図16Aに示す伸張した状態で開口部38を閉塞してロック状態となり、図16Bに示す収縮した状態で開口部38を開成してアンロック状態となる。
【0070】
図16Aは、ロック機構を有するノズル15の第2変形例に係るノズル15bのロック状態での平面図であり、図16Bは、図16Aに示すノズル15bのアンロック状態での平面図である。
【0071】
図16A及び図16Bに示すように、ノズル15bは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70bを有するアーム部74bを備える。ロック機構70bは、開口部38を構成するアーム部74bの一方の端面に固着された円柱状の固定部(ボルト部)82と、該固定部82の外周面に形成された雄ねじ82aに螺合する雌ねじ84aを内腔に設けた可動部(ナット部)84とを有する。
【0072】
従って、ロック機構70bでは、可動部84を固定部82に対して螺回・前進させ、該可動部84の先端が他方の開口部38を構成する端面に当接又は近接した位置にすることで開口部38を閉塞したロック状態となり(図16A参照)、可動部84を固定部82に対して逆方向に螺回・後退させることにより、開口部38を開成したアンロック状態となる(図16B参照)。
【0073】
図17は、ロック機構を有するノズル15の第3変形例に係るノズル15cの平面図である。
【0074】
図17に示すように、ノズル15cは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70cを有するアーム部74cを備える。ロック機構70cは、開口部38を構成するアーム部74cの一方の端部に回転軸86で軸支された湾曲棒状の揺動部材88を有する。
【0075】
従って、ロック機構70cでは、回転軸86を軸心として揺動部材88を回動させて図17中に実線で示す閉じ位置に設定することにより、開口部38を閉塞したロック状態となり、揺動部材88を回動させて図17中に2点鎖線で示す開き位置に設定することにより、開口部38を開成したアンロック状態となる。なお、ロック機構70cでは、回転軸86に図示しないトーションばね等を設け、該トーションばねの付勢力により、通常時には揺動部材88が図17中に実線で示す閉じ位置に自動的に設定されるように構成してもよい。
【0076】
図18Aは、ロック機構を有するノズル15の第4変形例に係るノズル15dのロック状態での平面図であり、図18Bは、図18Aに示すノズル15dのアンロック状態での平面図である。
【0077】
図18A及び図18Bに示すように、ノズル15dは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70dを有するアーム部74dを備える。ロック機構70dは、開口部38を構成するアーム部74dの対向する両端面に、互いに近接する方向に拡張(伸張)可能且つ互いに離間する方向に収縮(折り畳み)可能な一対のバルーン90、90を備える。
【0078】
バルーン90は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能であり、収縮された状態(図18B参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路92を介して内部に液剤Lが圧送されることで筒状(円筒状)に拡張する(図18A参照)。バルーン90は、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。
【0079】
上記したように、当該塗布具10では、例えば、十分な粘度を持った液剤Lを塗布するため、シリンジ12から吐出される液剤Lは、バルーン90を十分に拡張可能な所定の高い圧力(液圧)を持っている。従って、ロック機構70dでは、シリンジ12(図1参照)から液剤Lが供給されていない状態では、各バルーン90が収縮して開口部38が開成されたアンロック状態にあり(図18B参照)、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路92を介して供給されることにより、各バルーン90が拡張して開口部38が閉塞されたロック状態となる(図18A参照)。つまり、ロック機構70dでは、当該塗布具10の使用者がロック機構70dを特別に操作しなくても、アーム部74dの内側に挿入管16を配置してシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lの液圧によってバルーン90が拡張し、自動的にノズル15dをロック状態とすることができる。なお、バルーン90は、アーム部74dの一方の端面にのみ設置してもよいことも勿論である。
【0080】
図19Aは、ロック機構を有するノズル15の第5変形例に係るノズル15eのロック状態での平面図であり、図19Bは、図19Aに示すノズル15eのアンロック状態での平面図である。
【0081】
図19A及び図19Bに示すように、ノズル15eは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70eを有するアーム部74eを備える。ロック機構70eは、開口部38を構成するアーム部74eの一方の端部近傍に、他方の端部近傍に向かって拡張(延伸)可能且つ離間する方向に収縮(巻き取り)可能な舌状の扁平バルーン94を備える。扁平バルーン94は、内圧の変化により収縮及び拡張が可能であり、収縮された状態(図19B参照)から、ノズル流路34に連通する拡張流路92を介して内部に液剤Lが圧送されることで旋回しながら舌型板状に拡張し、伸張する(図19A参照)。扁平バルーン94についても、上記したバルーン90と略同様に、例えば、一般的なバルーンカテーテルに使用されるバルーンと同様な材質、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等で形成するとよく、好ましくは、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマーで形成するとよい。
【0082】
従って、ロック機構70eでは、シリンジ12(図1参照)から液剤Lが供給されていない状態では、扁平バルーン94が収縮・巻回され、開口部38が開成されたアンロック状態にあり(図19B参照)、液剤Lがノズル流路34及び拡張流路92を介して供給されることにより、扁平バルーン94が拡張・伸張して開口部38が閉塞されたロック状態となる(図19A参照)。つまり、ロック機構70eにおいても、上記のロック機構70dと略同様に、当該塗布具10の使用者がロック機構70eを特別に操作しなくても、アーム部74eの内側に挿入管16を配置した状態でシリンジ12の押し子26を押し込むだけで、該シリンジ12から供給される液剤Lによって扁平バルーン94が拡張し、自動的にノズル15eをロック状態とすることができる。なお、扁平バルーン94は、アーム部74eの対向する両方の端部に設置してもよいことも勿論である。
【0083】
図20Aは、ロック機構を有するノズル15の第6変形例に係るノズル15fのアンロック状態での平面図であり、図20Bは、図20Aに示すノズル15fのロック状態での平面図である。
【0084】
図20A及び図20Bに示すように、ノズル15fは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、開口部38を開閉可能なロック機構70fを有するアーム部74fを備える。アーム部74fは、例えば略半円状のリングとして形成されており、ロック機構70fは、該アーム部74fの開口側に沿って径方向に進退可能なラック部材96を備える。ラック部材96は、その内側面にラック歯車96aを有し、該ラック歯車96aが、ノズル流路34を開閉する活栓(バルブ)98に形成されたピニオン歯車98aと噛み合いしている。ラック部材96は、アーム部74fの一端部に形成されたガイド孔100に挿通されることによりガイドされ、ピニオン歯車98aの回転に伴って進退し、開口部38を開閉することができる。
【0085】
従って、ロック機構70fでは、図20Aに示すように、活栓98を閉じ位置にしてノズル流路34を閉じた状態では、ラック部材96が後退位置に設定されて開口部38が開成されたアンロック状態にある。一方、活栓98を開き位置にしてノズル流路34を開く際には、該活栓98の開き動作と連動してピニオン歯車98aが回転し、これに連動してラック部材96が前進駆動される。そして、図20Bに示すように、活栓98が全開位置になると、ラック部材96も所定の前進位置となり、開口部38が閉塞されたロック状態となる。つまり、ロック機構70fでは、シリンジ12から液剤Lを供給する際に、活栓98を開き操作(ノズル流路34の開放)に連動して、ラック部材96が前進駆動され、これにより開口部38が自動的に閉塞され、ロック状態となる。
【0086】
図21Aは、ロック機構を有するノズル15の第7変形例に係るノズル15gのロック状態での平面図であり、図21Bは、図21Aに示すノズル15gのアンロック状態での平面図であり、図21Cは、図21Aに示すロック状態での斜視図である。
【0087】
図21A〜図21Cに示すように、ノズル15gは、図2に示すノズル14のアーム部32に代えて、互いに開閉することで開口部38を開閉可能なロック機構70gを有する一対のアーム部74g、74hを備える。各アーム部74g、74hは、それぞれ略半円状のリングとして構成されており、一方のアーム部74gはベース部30に固定され、他方のアーム部74hは回転軸102により、アーム部74gに対して回動可能である。回転軸102は、各アーム部74gの各ノズル流路34にそれぞれ分岐する分岐流路を有する。そして、図21A及び図21Cに示すように、各アーム部74g、74hが閉じ位置に設定されると、その先端部同士が重なる位置にあり、これにより開口部38を確実に閉塞することができる。
【0088】
従って、ロック機構70gでは、回転軸102を軸心としてアーム部74hを回動させて図21A及び図21Cに示す閉じ位置に設定することにより、開口部38が閉塞されたロック状態となり、アーム部74hを回動させて図21Bに示す開き位置に設定することにより、開口部38が開成されたアンロック状態となる。なお、ロック機構70gでは、回転軸102に図示しないトーションばね等を設け、該トーションばねの付勢力により、通常時にはアーム部74hが図21A及び図21Cに示す閉じ位置に自動的に設定されるように構成してもよい。
【0089】
次に、上記のように構成される塗布具10の他の構成例について説明する。
【0090】
図22は、図1に示す液剤塗布具10の別の構成例に係る液剤塗布具10aの斜視図である。
【0091】
上記のノズル14(14a〜14l)、15(15a〜15g)を備える液剤塗布具10では、ノズル14等をシリンジ12に対して着脱可能に構成していたが、図22に示すように、シリンジ12aの先端に、例えばノズル14と略構造からなるノズル14mを一体的に設けた液剤塗布具10aとして構成することもできる。これにより、塗布具10aでは、ノズル14mをシリンジ12aに装着する工程が不要となり、取り扱いが一層容易となる。さらに、ノズル14mをシリンジ12aに一体化したことにより、当該塗布具10aの製造コストを低減することができる。なお、図22では、ノズル14mとしてノズル14と略同様な構成を例示しているが、当該塗布具10aには、他のノズル14a〜14l、15、15a〜15gと略同様な構成からなるものを用いても勿論よく、次の塗布具10bについても同様である。
【0092】
図23Aは、図1に示す液剤塗布具10のさらに別の構成例に係る液剤塗布具10bの平面図であり、図23Bは、図23Aに示す液剤塗布具10bの側面図である。
【0093】
図23A及び図23Bに示すように、液剤塗布具10bは、図22に示す塗布具10aのシリンジ12aに代えて、貯液部62aを有する小型扁平な本体部62を有し、該本体部62の先端に貯液部62aから連通するノズル流路34を設けたノズル14nが一体的に備えられている。本体部62の略中央部には、その上下面に扁平半球状に膨出形成された膨出部62bが設けられ、この膨出部62bの内側が貯液部62aとなっている。本体部62は、少なくとも貯液部62aを構成する膨出部62bが可撓性を有する樹脂製材料等によって形成される。
【0094】
従って、当該塗布具10bでは、使用者が本体部62を片手で把持した状態で、例えば親指と人差指とで図23B中の矢印Pに示すように、膨出部62b(貯液部62a)を押し潰す方向に押圧することにより、ノズル14nの吐出孔36から液剤Lを吐出することができる。このように、塗布具10bではシリンジが不要となることから、全体として一層コンパクト且つ低コストな構造とすることができ、取り扱い性をより一層向上させることができる。
【0095】
本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【0096】
例えば、液剤塗布具10によって吐出・塗布する液剤Lとしては、上記したシアノアクリレートを含有するシーラントや、クロルヘキシジン等の抗菌剤を含有し且つ十分な粘度を有した液剤以外であっても勿論よく、要は挿入部20周辺に塗布されることで固化し又は適度な粘度によって隙間Gを被覆し塞ぐことができるものであればよく、例えば、ポリエチレングリコールを主としたゲルや多糖ゲル等を用いてもよい。なお、当該塗布具によって塗布される液剤とは、塗布される状態で液体のものをいい、塗布された後、シーラントのように固化するものも当然に含むものとする。
【符号の説明】
【0097】
10、10a、10b…液剤塗布具 12、12a…シリンジ
14、14a〜14n、15、15a〜15g…ノズル
16…挿入管 18…生体組織
20…挿入部
32、40、42、74、74a〜74h…アーム部
36、36a、48、50…吐出孔 38、44、46…開口部
47、49…脚部 70、70a〜70g…ロック機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部を有し、
前記アーム部に、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔を設けたことを特徴とする液剤塗布具。
【請求項2】
請求項1記載の液剤塗布具において、
前記液剤が充填される貯液部と、
前記アーム部を有し、該アーム部に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルと、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、複数設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項6】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記開口部は、前記アーム部の内面側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面であることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項7】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記開口部を開閉可能なロック機構を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、前記アーム部の前記挿入体の外周面に対向する内面に設けられるか、又は、前記アーム部の前記挿入部の方向を指向する下面に設けられることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部には、前記生体組織の表面に着地して、該アーム部の前記挿入部から高さ位置を規定する脚部が設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項1】
生体組織に挿入する長尺状の挿入体の外周面の少なくとも一部を囲繞可能なアーム部を有し、
前記アーム部に、前記挿入体の前記生体組織への挿入部を被覆するための液剤を前記挿入体の外周面に向けて吐出する吐出孔を設けたことを特徴とする液剤塗布具。
【請求項2】
請求項1記載の液剤塗布具において、
前記液剤が充填される貯液部と、
前記アーム部を有し、該アーム部に前記貯液部からの前記液剤を流通可能なノズルと、
を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、複数設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体の外径より大きな内径を有するリング形状であることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部は、前記挿入体を囲繞する方向の一部に、前記挿入体の外径が通過可能な開口部を有することを特徴とする液剤塗布具。
【請求項6】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記開口部は、前記アーム部の内面側から外面側に向けて幅が拡がる傾斜面であることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項7】
請求項5記載の液剤塗布具において、
前記開口部を開閉可能なロック機構を備えることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記吐出孔は、前記アーム部の前記挿入体の外周面に対向する内面に設けられるか、又は、前記アーム部の前記挿入部の方向を指向する下面に設けられることを特徴とする液剤塗布具。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の液剤塗布具において、
前記アーム部には、前記生体組織の表面に着地して、該アーム部の前記挿入部から高さ位置を規定する脚部が設けられていることを特徴とする液剤塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−65980(P2012−65980A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215195(P2010−215195)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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