説明

液剤用バッグ

【課題】 遮光性を損なうことなく、液剤の量を簡単に知ることができる安価な液剤用バッグを提供すること。
【解決手段】 遮光性および柔軟性を有し、流動性のある医療剤を収容するバッグ本体2と、バッグ本体2から医療剤を注出するための注出部材3とを備える薬液バッグ1において、バッグ表面12における幅方向略中央部に、帯状のホログラムフィルム24を、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びるように貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光によって変質しやすい成分を含む液剤を収容する遮光性の液剤用バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミンや脂質など光によって変質しやすい成分を含む医療剤の保存には、遮光性の薬液バッグが用いられている。遮光性の薬液バッグは、たとえば、プラスチックフィルム(透明層)とアルミニウムフィルム(遮光層)とが積層されてなる柔軟性のある遮光性フィルムを用いて形成されている。
このため、バッグの外側からバッグ内部を目視で観察できないため、薬液バッグに収容された医療剤が投与者に投与される場合、内容量を確認することが困難である。
【0003】
そこで、PANフィルム(ポリアクリロニトリル系フィルム)と、アルミニウム蒸着フィルムと、ポリプロピレンフィルムとが積層された積層フィルムを用いて形成され、その一部において、アルミニウム蒸着フィルムが切欠きされることにより、小さい透明窓が形成された包装材が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
また、PE(ポリエチレン)フィルムとPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムとが積層されてなる透明層、アルミニウム箔からなる遮光層、およびガスシールド性を有するPETフィルムからなる外層が順次積層された積層フィルムを用いて形成され、外層および遮光層が、透明層に対して剥離可能に接着されている薬液バッグが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−15066号公報
【特許文献2】特開昭64−86972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の包装材では、内容物の量を、透明窓を介して目視で確認できることが期待される。しかし、積層フィルムを一旦形成した後にアルミニウム蒸着フィルムを切欠きしなければならないため、製造工程が複雑になってコストが増加してしまう。また、多少であっても、透明窓を介して光が通過するため、その光により内容物が変質するおそれがある。
【0005】
一方、特許文献2に記載の薬液バッグでは、使用時まで遮光層が接着されていることにより遮光性が維持され、使用時には、外層および遮光層を引き剥がすことにより透明層だけを残し、透明層を介して輸液の量を確認できることが期待される。しかし、外層および遮光層を引き剥がすときに、これらに釣られて透明層が破損するおそれがある。また、このような構造の薬液バッグを作製するには、透明層と、遮光層および外層とを別体で作製した後、これらを剥離可能に熱融着しなければならない。そのため、製造工程が複雑になってコストが増加してしまう。
【0006】
本発明の主たる目的は、遮光性を損なうことなく、液剤の量を簡単に知ることができる液剤用バッグを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、液剤の量を知ることができて安価な液剤用バッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、遮光性および柔軟性を有し、流動性のある液剤を収容する液剤用バッグであって、液剤用バッグの表面に、その表面形状に応じて表示態様が変化する特定フィルムが貼着されていることを特徴とする、液剤用バッグである。
請求項2に記載の発明は、遮光性および柔軟性を有し、流動性のある液剤を収容する液剤用バッグであって、液剤用バッグの少なくとも一方表面には、その表面形状に応じて表示態様が変化する特定フィルムの領域が含まれていることを特徴とする、液剤用バッグである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記特定フィルムは、前記液剤用バッグに収容された液剤の量の変化に応じて、液剤用バッグ表面の膨らみ具合が変化することに伴い、その表示態様が変化することを特徴とする、請求項1または2に記載の液剤用バッグである。
請求項4に記載の発明は、前記特定フィルムは、前記液剤用バッグの幅方向略中央部において、上辺側から下辺側へ延びて貼着されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液剤用バッグである。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記特定フィルムが、ホログラムフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液剤用バッグである。
請求項6に記載の発明は、前記液剤用バッグは、液剤を自重により注出する吊り下げ使用可能な液剤用バッグであり、前記液剤用バッグの吊り下げ状態において、液剤が自重で下方へ移動することにより、前記液剤用バッグ表面は、液剤上面よりも下方において外方へ凸湾曲する外湾曲面と、液剤上面よりも上方において内方へ凸湾曲する内湾曲面とが表われるように変形し、前記特定フィルムの表示態様は、前記液剤用バッグ表面の変形に伴い、前記外湾曲面に対する接線の外接点と前記内湾曲面に対する接線の内接点との間における部分が、前記外接点の下方および前内接点の上方における部分とは異なるように変化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液剤用バッグである。
【0010】
請求項7に記載の発明は、前記液剤が、薬剤または食品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液剤用バッグである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、液剤用バッグの外側から、特定フィルムの表示態様を目視することにより、柔軟性のバッグの表面形状を変化させる液剤の様態を知ることができる。したがって、この特定フィルムの表示態様により、液剤の量を知ることができる。そして、特定フィルムは、バッグ表面に貼着されているものなので、特定フィルムにより液剤用バッグの遮光性を損なうことがない。つまり、この発明によれば、遮光性を損なうことなく、液剤の量を簡単に知ることができる。
【0012】
また、遮光性および柔軟性を有するバッグの表面に特定フィルムを貼着すればよいので、この液剤用バッグは安価に作製可能である。
請求項2に記載の発明によれば、液剤用バッグの外側から、特定フィルムの表示態様を目視することにより、柔軟性のバッグの表面形状を変化させる液剤の様態を知ることができる。したがって、この特定フィルムの表示態様により、液剤の量を知ることができる。そして、特定フィルムは、遮光性を有するバッグの表面に含まれている領域であるので、特定フィルムにより液剤用バッグの遮光性を損なうことがない。つまり、この発明によれば、遮光性を損なうことなく、液剤の量を簡単に知ることができる。
【0013】
また、遮光性および柔軟性を有するバッグの表面に特定フィルムの領域を形成すればよいので、この液剤用バッグは安価に作製可能である。
請求項3に記載の発明によれば、特定フィルムの表示態様を目視することにより、バッグ表面の膨らみ具合を知ることができる。この膨らみ具合によって、液剤の量が相対的に多くて大きく膨らんだ部分と、液剤の量が相対的に少なくて小さく膨らんだ部分とを知ることができて、液剤の量を知ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、上辺側から下辺側へ延びて貼着されているので、液剤の量を、ほぼ満タンの状態からほぼ空っぽの状態まで知ることができる。
請求項5に記載の発明によれば、特定フィルムがホログラムフィルムであるので、フィルムに映し出される(再生される)像の態様を目視することにより、液剤の量を知ることができる。また、液剤用バッグをより安価に作製することもできる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、バッグ表面の外接点と内接点との間の部分における特定フィルムの表示態様を目視することにより、液剤上面の位置、つまり、バッグ内の液剤の量を知ることができる。たとえば、液剤が輸液の場合、輸液が供給されることに伴い変化(減少)する輸液面の位置の低下を把握し、残液量を知ることができる。
請求項7に記載の発明によれば、特定フィルムの表示態様により、薬剤または食品の量を知ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下には、図面を参照して、本発明の実施形態について具体的に説明をする。
A.薬液バッグの全体構成および使用方法
図1は、本発明の一実施形態に係る薬液バッグの(a)正面図(b)側面図である。
薬液バッグ1は、流動性のある医療剤を収容する部屋を1つ持つ単室バッグであって、医療剤を収容するバッグ本体2と、バッグ本体2から医療剤を注出するための注出部材3とを備えている。
【0017】
バッグ本体2は、矩形袋状に形成され、その周縁部4がヒートシールにより閉じられている。バッグ本体2の長さLは、たとえば、100〜500mmであり、幅Wは、たとえば、50〜300mmである。バッグ本体2は、遮光性および柔軟性を有する多層フィルムからなり、たとえば、一方側の表層と、中間層と、他方側の表層とが積層されてなる3層フィルムからなる。
【0018】
3層フィルムにおける表層としては、たとえば、透明性および熱溶着性(ヒートシール性)を有するフィルムが用いられる。
このようなフィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、エチレン−テトラシクロドデセンなどのポリ環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどのビニル系重合体樹脂、ナイロン−6、ナイロン−12、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂などの汎用樹脂が挙げられる。
【0019】
一方、3層フィルムにおける中間層としては、たとえば、遮光性を有するフィルムが用いられる。
このようなフィルムとしては、たとえば、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、上記汎用樹脂に顔料(アゾ縮合系顔料などの有機顔料や、酸化鉄などの無機顔料)を含有した着色フィルム、上記汎用樹脂フィルムに着色塗装(印刷)を施したフィルムなどが挙げられる。
【0020】
そして、バッグ本体2は、たとえば、2枚の3層フィルムの表層同士が向かい合うように重ね合わせられた後、これらフィルム同士が略矩形環状にヒートシールされることにより袋状にされる。そして、袋状フィルムのヒートシール部分が分断されることにより、バッグ本体2の外郭をなす、ヒートシールされた状態の周縁部4が形成されて作製される。
なお、バッグ本体2は、たとえば、3層フィルムをインフレーション法などの公知の方法によって袋状またはチューブ状に形成し、得られた袋状またはチューブ状のフィルムの周縁部をヒートシールすることによっても作製することができる。
【0021】
このようにして作製されるバッグ本体2に収容される医療剤13とは、たとえば、医療現場や在宅療養者を持つ家庭などにおいて、経静脈投与あるいは経腸投与される液剤、具体的には、血清などの薬剤や、経静脈栄養剤、経口栄養剤、経管栄養剤などの食品が挙げられる。なお、医療剤13は、流動性を有するものであれば、液体であっても、ゲルであってもよい。
【0022】
バッグ本体2の長手方向に向かい合う周縁部4のうち、一方側の周縁部4に設けられた注出部材3の反対側(他方側)の周縁部4には、バッグ本体2をフックなどに吊り下げるための円形の吊り下げ孔5が開口している。
注出部材3は、バッグ本体2に固定されるベース部材6と、ノズル7とを備えている。
ベース部材6は、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのプラスチックからなる。ベース部材6は、バッグ本体2の作製時に、2枚の3層フィルムにより挟まれた状態でヒートシールされることにより、3層フィルムに密着してバッグ本体2に固定される。また、ベース部材6には、バッグ本体2の内側に、折り切り可能な封止部材(図示せず)が設けられている。
【0023】
ノズル7は、ベース部材6と同様の材料からなり、たとえば、ベース部材6に対して、ねじなどにより着脱自在に取り付けられている。
図2は、薬液バッグの医療剤の流出(投与)に伴う、バッグ表面の変化具合を示す図である。
図1に示す薬液バッグ1に収容された医療剤13を患者に投与するには、まず、吊り下げ孔5に吊り下げ用フック8が引っ掛けられて、バッグ本体2が吊り下げ状態にされる。この状態では、バッグ本体2は、図2(a)に示すように、その表面12(バッグ表面)が下辺側(一方側)から上辺側(他方側)へ向かって滑らかな弧状になるように、全体的に膨らんでいる。
【0024】
次いで、ノズル7が取り外される。その後、ノズル7が取り付けられていたねじに、患者に投与するための投与キット9(ねじを有するアダプタ10にチューブ11が接続されたもの)のアダプタ10が螺着される。そして、ベース部材6の封止部材(図示せず)が、バッグ本体2の外側から折り切られる。これにより、バッグ本体2内部とチューブ11とが連通状態(通液状態)になり、バッグ本体2内の医療剤13が、その自重によりチューブ11内に流出する。
【0025】
そして、医療剤13の流出に伴ってバッグ本体2内の医療剤13の量が減少し(変化し)、医療剤13の流出量に応じて、図2(a)から図2(d)へと順に、全体的に膨らんでいたバッグ表面12の膨らみが上辺側から下辺側へ向かって徐々に小さくなっていく(変化していく)。バッグ本体2内の医療剤13が使い切られたとき、バッグ表面12の膨らみ具合は、ほぼ全体的に平らな状態(向かい合うフィルム同士がほぼ接触する状態)になる。
【0026】
このようなバッグ表面12の膨らみ具合の変化は、バッグ表面12の要部を拡大して示す図3を用いて詳細に説明される。
すなわち、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、バッグ本体2を構成する2枚の3層フィルムの間には、医療剤13が介在される部分と介在されない部分とが生じる。そのため、バッグ表面12には、医療剤13の液面21よりもやや下方において外方へ凸湾曲する(外側へ膨らむ)外湾曲面14と、液面21よりもやや上方において内方へ凸湾曲する(内側へ凹む)内湾曲面15とが表われる。
【0027】
これにより、バッグ表面12は、外湾曲面14に対する外側接線16の外接点17と、内湾曲面15に対する内側接線18の内接点19とを変曲点とする曲面形状となり、医療剤13の液面21は変曲点を繋ぐ傾斜面20に位置することとなる。
つまり、バッグ表面12は、傾斜面20と、2つの変曲点(外接点17および内接点19)を介してこの傾斜面20と上下に連続し、傾斜面20とは傾斜角度(たとえば、垂直方向に対する傾斜角度)の異なる2つの面(下側面22および上側面23)とが連続する曲面形状となる。
【0028】
そして、医療剤13の流出に伴って液面21の位置が下辺側へ下がるので、それに伴って外側に膨らんだ外湾曲面14および内湾曲面15は、上辺側から下辺側へ向かって移動していき、傾斜面20が下がる。このようにして、バッグ表面12の膨らみ具合が小さくなっていく(変化していく)。
そこで、本発明では、バッグ表面12に、バッグ本体2の柔軟性を阻害しない特定フィルムを貼着しておき、傾斜面20における特定フィルムの反射光が、下側面22および上側面23における特定フィルムの反射光と異なる態様を示すことから、特定フィルムの表示態様(反射光の態様)によって、傾斜面20に対応する位置にある医療剤13の液面21を確認できるようにしたものである。
B.特定フィルムの貼着態様および本実施形態の作用効果
本実施形態において、以上説明した構成の薬液バッグ1には、たとえば、下記に複数示す態様で特定フィルム(たとえば、ホログラムフィルム)を貼着することができる。
【0029】
図4は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第1の態様を示す正面図である。
この第1の態様では、バッグ表面12における幅方向略中央部には、帯状のホログラムフィルム24が、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びて貼着されている。
ホログラムフィルム24は、光の入射方向に応じて、予め記録された像を映し出す(再生する)フィルムであって、薬液バッグ1に貼着された状態では、医療剤13の量の変化に応じて膨らみ具合が変化するバッグ表面12の各部に、それぞれ異なった像を映し出す。
【0030】
このようなホログラムフィルム24としては、たとえば、レインボーホログラム、リップマンホログラムなどが用いられ、好ましくは、リップマンホログラムが用いられる。リップマンホログラムであれば、たとえば、蛍光灯などの白色光の照射に対して、像が単色化されて映し出されるので、レインボーホログラムよりもフィルムの表示態様を確認し易い。
【0031】
また、ホログラムフィルム24には、たとえば、格子状パターンが記録されている。
ホログラムフィルム24のバッグ表面12への貼着方法としては、たとえば、ホログラムフィルム24をシールとして作製して直接貼る方法、接着剤を用いて貼る方法、ヒートシールにより貼る方法などが挙げられる。なお、レインボーホログラムが貼着される場合、レインボーホログラムとバッグ表面12との間に、照射光を反射させる金属箔などを介在させた状態で、ホログラムが貼着される。
【0032】
そして、第1の態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23との傾斜角度が異なり、これらの面に照射される光の入射角度が異なることから、帯状のホログラムフィルム24には、上記面毎にそれぞれ異なった像が映し出される。
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができるので、バッグ本体2内の医療剤13の量を知ることができる。
【0033】
また、ホログラムフィルム24は、バッグ表面12に貼着されているものなので、ホログラムフィルム24により薬液バッグ1の遮光性を損なうことがない。つまり、この薬液バッグ1によれば、遮光性を損なうことなく、医療剤の量を簡単に知ることができる。
また、バッグ表面12にホログラムフィルム24を貼着するだけでよいので、この薬液バッグ1は安価に作製可能である。
【0034】
また、ホログラムフィルム24が、上辺側から下辺側へ延びて貼着されているので、医療剤13の量を、ほぼ満タンの状態からほぼ空っぽの状態まで知ることができる。
さらに、ホログラムフィルム24からの光を偏光する偏光具(たとえば、偏光めがね、カメラレンズなど)を介して傾斜面20を見ることにより、傾斜面20と、下側面22および上側面23との表示態様の違いを、一層明確に確認することができる。
【0035】
また、ホログラムフィルム24の表面に偏光フィルムを貼着することによっても、ホログラムフィルム24における表示態様の違いを一層明確に確認することができる。さらに、ホログラムフィルム24が層構造である場合には、その表面側に偏光性を有する偏光層を設けることによって、ホログラムフィルム24における表示態様の違いを一層明確に確認することができる。
【0036】
図5は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第2の態様を示す正面図である。
この第2の態様では、バッグ表面12には、3枚の帯状のホログラムフィルム25が、下辺側から上辺側へ向かう長手方向に所定の間隔を空けて貼着されている。
ホログラムフィルム25としては、上記とホログラムフィルム24と同様のものが挙げられる。
【0037】
そして、第2の態様では、医療剤13の流出に伴って下辺側へ下がる傾斜面20が一ホログラムフィルム25に達したとき、当該一ホログラムフィルム25および他のホログラムフィルム25には、それぞれ異なった像が映し出される。
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。その結果、バッグ本体2内の医療剤13の量を知ることができる。
【0038】
図6は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第3の態様を示す正面図である。
この第3の態様では、バッグ表面12における幅方向一方側(図6の左右方向右側)に、液量表示26が印字されている。液量表示26は、たとえば、100ml〜400mlまで100ml刻みで配置されており、薬液バッグ1の吊り下げ状態において、医療剤13の液面21が当該位置にきたときのバッグ本体2内の医療剤13の量を示すものである。
【0039】
この液量表示26の側方、つまり、第1の態様と同様、バッグ表面12の幅方向略中央部には、帯状をなすホログラムフィルム27が、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びて貼着されている。
ホログラムフィルム27としては、上記とホログラムフィルム24と同様のものが挙げられる。
【0040】
そして、第3の態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23とに照射される光の入射角度が異なることから、帯状のホログラムフィルム27には、上記面毎に、それぞれ異なった像が映し出される。
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができる。そして、この液面21の位置(傾斜面20の位置)と、液量表示26とを比較することにより、バッグ本体2内の医療剤13の量を細かく知ることができる。
【0041】
図7は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第4の態様を示す正面図である。
この第4の態様では、第3の態様と同様、バッグ表面12における幅方向一方側(図7の左右方向右側)に、液量表示28が印字されている。液量表示28は、液量表示26(図7参照)と同様、たとえば、100ml〜400mlまで100ml刻みで配置されており、薬液バッグ1の吊り下げ状態において、医療剤13の液面21が当該位置にきたときのバッグ本体2内の医療剤13の量を示すものである。
【0042】
バッグ表面12における、各液量表示28それぞれの側方には、各液量表示28に対応する帯状のホログラムフィルム29が貼着されている。
ホログラムフィルム29としては、上記とホログラムフィルム24と同様のものが挙げられる。
そして、第4の態様では、医療剤13の流出に伴って下辺側へ下がる傾斜面20が各ホログラムフィルム29に達したとき、当該ホログラムフィルム29および他のホログラムフィルム29には、それぞれ異なった像が映し出される。
【0043】
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができる。そして、この液面21の位置(傾斜面20の位置)と、液量表示28とを比較することにより、バッグ本体2内の医療剤13の量を細かく知ることができる。
【0044】
図8は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第5の態様を示す正面図である。
この第5の態様では、バッグ表面12には、幅方向一方側(右側)から他方側(左側)に跨る帯状のホログラムフィルム30が、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びて貼着されている。
【0045】
ホログラムフィルム30には、たとえば、幅方向略中央部に液量表示31が記録されている。液量表示31は、たとえば、100ml〜400mlまで100ml刻みで配置されており、薬液バッグ1の吊り下げ状態において、医療剤13の液面21が当該位置にきたときのバッグ本体2内の医療剤13の量を示すものである。
そして、第5の態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23とに照射される光の入射角度が異なることから、傾斜面20が帯状のホログラムフィルム30における各液量表示31に達したとき、当該液量表示31が映し出される。
【0046】
そのため、映し出される液量表示31を目視することにより、バッグ本体2内の医療剤13の量を細かく知ることができる。
図9は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第6の態様を示す正面図である。
この第6の態様では、バッグ表面12には、4枚の帯状のホログラムフィルム32が、下辺側から上辺側へ向かう長手方向に所定の間隔を空けて貼着されている。
【0047】
ホログラムフィルム32には、下辺側から順にそれぞれ100ml、200ml、300mlおよび400mlの液量表示33が記録されている。
そして、第6の態様では、医療剤13の流出に伴って下辺側へ下がる傾斜面20が各ホログラムフィルム32に達したとき、当該ホログラムフィルム32に記録された液量表示33が映し出される。
【0048】
そのため、映し出される液量表示33を目視することにより、バッグ本体2内の医療剤13の量を細かく知ることができる。
図10は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第7の態様を示す正面図である。
この第7の態様では、バッグ表面12における幅方向略中央部には、長手方向中央部が幅広な帯状のホログラムフィルム34が、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びて貼着されている。
【0049】
ホログラムフィルム34としては、上記とホログラムフィルム24と同様のものが挙げられる。
そして、第7の態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23とに照射される光の入射角度が異なることから、帯状のホログラムフィルム34には、上記各面毎に、それぞれ異なった像が映し出される。
【0050】
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができるので、それによってバッグ本体2内の医療剤13の量を知ることができる。
また、ホログラムフィルム34の長手方向中央部が幅広であるため、傾斜面20の位置を確認し易い。そのため、医療剤13の減り具合を簡単に知ることができる。
【0051】
図11は、ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第8の態様を示す正面図である。
この第8の態様では、バッグ表面12における幅方向略中央部には、長手方向中央部が括れた帯状のホログラムフィルム35が、上辺側(他方側)から下辺側(一方側)へ延びて貼着されている。
【0052】
ホログラムフィルム35としては、上記とホログラムフィルム24と同様のものが挙げられる。
そして、第8の態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23とに照射される光の入射角度が異なることから、帯状のホログラムフィルム34には、上記各面毎に、それぞれ異なった像が映し出される。
【0053】
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができるので、それによってバッグ本体2内の医療剤13の量を知ることができる。
図12は、ホログラム層を備えた薬液バッグの一態様を示す正面図である。
【0054】
この一態様では、バッグ本体2は、遮光性および柔軟性を有する多層フィルムからなり、たとえば、一方側の表層と、中間層と、他方側の表層と、さらに中間層と一方側および/または他方側の表層との間に介在されたホログラム層36とが積層されてなる多層フィルムからなる。
ホログラム層36としては、たとえば、上記ホログラムフィルム24と同様のホログラムフィルムなどを適用することができる。
【0055】
したがって、この薬液バッグ1のバッグ表面12の一方側および/または他方側の全域には、その少なくとも一方表面に、その表面形状に応じて表示態様が変化するホログラムフィルムの領域が表われることとなる。
そして、この一態様では、薬液バッグ1の吊り下げ使用時、傾斜面20と、下側面22および上側面23とに照射される光の入射角度が異なることから、ホログラム層36には、上記各面毎に、それぞれ異なった像が映し出される。
【0056】
そのため、各面に映し出される像を目視することにより、それらの像の相違を確認でき、傾斜面20の位置を確認することができる。この傾斜面20の位置により、傾斜面20に対応する液面21の位置を知ることができるので、それによってバッグ本体2内の医療剤13の量を知ることができる。
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
【0057】
たとえば、バッグ表面12の膨らみ具合などによって変化するバッグ表面12の形状に応じて、表示態様が変化する特定フィルムをホログラムフィルムに代えて、バッグ表面12に貼着することができる。
また、ホログラムフィルムおよびホログラム層は、バッグ表面12の一方側の面だけに設けられてもよいし、両方の面に設けられていてもよい。
【0058】
また、本発明は、医療剤を収容する薬液バッグに限らず、栄養剤などの食品を収容する輸液バッグなど、遮光保存の必要な液剤を収容する液剤用バッグとして好適に用いられる。
また、ホログラム層が表れる領域は、バッグ表面12全域である必要はなく、たとえば、図4〜図11に示される、ホログラムフィルムが貼着される領域であってもよい。
【0059】
また、薬液バッグ1は、医療剤13の含有成分を、使用時まで個別に収容可能な複室バッグであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬液バッグの(a)正面図(b)側面図である。
【図2】薬液バッグの医療剤の流出に伴う、バッグ表面の変化具合を示す図である。
【図3】バッグ表面の膨らみ具合の変化を詳細に説明するための、バッグ表面の要部拡大図である。
【図4】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第1の態様を示す正面図である。
【図5】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第2の態様を示す正面図である。
【図6】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第3の態様を示す正面図である。
【図7】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第4の態様を示す正面図である。
【図8】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第5の態様を示す正面図である。
【図9】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第6の態様を示す正面図である。
【図10】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第7の態様を示す正面図である。
【図11】ホログラムフィルムが貼着された薬液バッグの第8の態様を示す正面図である。
【図12】ホログラム層を備えた薬液バッグの一態様を示す正面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 薬液バッグ(液剤用バッグ)
2 バッグ本体
4 周縁部
12 バッグ表面
13 医療剤
14 外湾曲面
15 内湾曲面
16 外側接線
17 外接点
18 内側接線
19 内接点
21 液面(液剤上面)
24 ホログラムフィルム
25 ホログラムフィルム
27 ホログラムフィルム
29 ホログラムフィルム
30 ホログラムフィルム
32 ホログラムフィルム
34 ホログラムフィルム
35 ホログラムフィルム
36 ホログラム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光性および柔軟性を有し、流動性のある液剤を収容する液剤用バッグであって、
液剤用バッグの表面に、その表面形状に応じて表示態様が変化する特定フィルムが貼着されていることを特徴とする、液剤用バッグ。
【請求項2】
遮光性および柔軟性を有し、流動性のある液剤を収容する液剤用バッグであって、
液剤用バッグの少なくとも一方表面には、その表面形状に応じて表示態様が変化する特定フィルムの領域が含まれていることを特徴とする、液剤用バッグ。
【請求項3】
前記特定フィルムは、前記液剤用バッグに収容された液剤の量の変化に応じて、液剤用バッグ表面の膨らみ具合が変化することに伴い、その表示態様が変化することを特徴とする、請求項1または2に記載の液剤用バッグ。
【請求項4】
前記特定フィルムは、前記液剤用バッグの幅方向略中央部において、上辺側から下辺側へ延びて貼着されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の液剤用バッグ。
【請求項5】
前記特定フィルムが、ホログラムフィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の液剤用バッグ。
【請求項6】
前記液剤用バッグは、液剤を自重により注出する吊り下げ使用可能な液剤用バッグであり、
前記液剤用バッグの吊り下げ状態において、液剤が自重で下方へ移動することにより、前記液剤用バッグ表面は、液剤上面よりも下方において外方へ凸湾曲する外湾曲面と、液剤上面よりも上方において内方へ凸湾曲する内湾曲面とが表われるように変形し、
前記特定フィルムの表示態様は、前記液剤用バッグ表面の変形に伴い、前記外湾曲面に対する接線の外接点と前記内湾曲面に対する接線の内接点との間における部分が、前記外接点の下方および前内接点の上方における部分とは異なるように変化することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液剤用バッグ。
【請求項7】
前記液剤が、薬剤または食品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の液剤用バッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−58795(P2010−58795A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223890(P2008−223890)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】