説明

液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品

【課題】液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースの液垂れを防止することのできる液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品を提供する。
【解決手段】液垂れ防止機構は、液状グリースGが内部に充填されたスプレー容器2の押下操作される操作ボタン7に設けられたノズル装着部8に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズル3に対して着脱自在に取り付けられる液垂れ防止用ブラシ4、およびスプレー容器32の内部に設けられた液垂れ防止用定量バルブ34の少なくとも一方とする。エアゾール製品1、31は、液垂れ防止用ブラシ4および液垂れ防止用定量バルブ34の少なくとも一方を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースの液垂れを防止するのに好適な液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のブレーキ装置、例えばディスクブレーキ装置は、車輪と一体回転するディスクロータと、このディスクロータを挟み込むように配置された1対のディスクパッドと、このディスクパッドを支持するキャリパとを有している。このディスクブレーキ装置は、キャリパに設けられた油圧シリンダの駆動によって、ブレーキパッドの摩擦材をディスクロータに押し付けることにより発生するディスクロータと摩擦材との摩擦力によって制動力を得るように構成されている。
【0003】
ところが、この制動時に、ブレーキ装置の使用状態、ディスクロータおよび/または摩擦材の摩耗状態、摩擦材の形状などの多くの要因によって、乗員に不快感を与えるブレーキ鳴き音(ブレーキノイズ(異音):以下、単に、「ブレーキ鳴き」と記す。)が発生することがある。このブレーキ鳴きは、制動時に、摩擦材をディスクに押し付ける際に発生するノイズや振動が、パッド支持部(パッドサポート)などの他の構成部品と共振して発生すると考えられており、その周波数は1.5〜十数kHz程度のものである。
【0004】
従来、ブレーキ鳴きを消す方策の1つとして、車両の製造時や整備時に、ディスクパッドの裏金の裏面、ディスクパッドの裏金の裏面に配置されたブレーキ鳴き防止用のシムとキャリパに配置された油圧シリンダのピストンとの当接面、シムとパッドクリップ(クリッパ)との当接面などの塗布対象部に対してグリースを塗布することが広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このグリースとしては、例えば、耐熱性を有するシリコーン系オイルを基油とし、この基油に吸音効果が高くかつ潤滑性の高い黒鉛などの固体物質を配合したものが使用されている。
【0006】
ここで、塗布対象部に対してグリースを塗布する場合、作業者がグリースをそのまま塗布対象部に塗布するより、グリースを噴射可能な状態としてスプレー容器(エアゾール容器)に入れて、スプレーノズルから霧状に噴射して塗布対象部に塗布するというスプレー塗布が、作業者が手を汚さずに簡単に作業することができることや、グリースを広い範囲に短時間で塗布することができるので、作業性がよいという利点がある。
【0007】
なお、グリースのような半固体状の粘ちょうな物質(ペースト状の物質)を霧状に噴射可能なスプレー液(エアゾール液)の如く状態にするためには、グリースに揮発性を有する溶剤を混合して、グリースを溶剤で希釈してスプレーに適する粘性にした液状グリース(グリース液)が使用されている。
【0008】
また、液状グリースを霧状に噴射(スプレー)するエアゾール製品(スプレー装置)としては、液状グリースおよび気化した液化ガスや圧縮ガスなどからなる噴射剤が内容物として内部に充填された耐圧缶(耐圧容器)および耐圧缶に充填された内容物を噴射するために耐圧缶の頭頂部に装着され押し下げるように押下操作される操作ボタン(アクチュエータ)を有するスプレー容器と、基端部が操作ボタンに設けられたノズル装着部に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズル(長尺ノズル)とを備えたものが広く用いられている。このようなエアゾール製品は、使用者が操作ボタンを押下操作することにより、スプレーノズルの先端から噴射剤とともに液状グリースを霧状、すなわちエアゾール(エアロゾル)に変えて噴射し、塗布対象部に液状グリースをスプレー塗布することができるにようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−226687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、従来の液状グリースをスプレーするエアゾール製品において、液状グリースを広い範囲の塗布対象部に塗布する場合には、スプレーノズルの先端を塗布対象部から離した状態で使用することにより、液状グリースが塗布対象部に到達する前に液状グリースに含まれている揮発性の溶剤を十分に気化させることができるので、塗布対象部には溶剤が気化した液状グリース、すなわちグリースのみが塗布されることになるから、なんら問題ない。
【0011】
しかしながら、液状グリースをシムとパッドクリップとの当接面などの塗布対象部にピンポイントで塗布するという点付け塗布する場合には、塗布対象部に塗布した液状グリースが塗布対象部から垂れ落ちるという液垂れを起こしてしまい点付け塗布することができない場合があるという問題点があった。
【0012】
なお、ブレーキ鳴きを消すために液状グリースをピンポイントで点付け塗布する塗布対象部としては、シムとピストンとの当接面、ディスクパッドの裏金の裏面、シムの裏面などの広範囲に塗布する場合における塗布範囲の端部(縁部)などが挙げられる。
【0013】
ここで、上述した液状グリースの液垂れに対処するには、液状グリースに含まれる揮発性の溶剤の含有量を少なくすることが考えられるが、溶剤の含有量を少なくすると、液状グリースの粘性が高くなり、液状グリースがスプレーノズルの先端から霧状に噴射されずに噴射剤の気体が多量に混ざって噴射されるような状況や、噴射後に、スプレーノズルの先端にグリースが付着して残留するような状態になるという不都合が発生する。
【0014】
そこで、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースの液垂れを防止することのできる液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品が求められている。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースの液垂れを防止することのできる液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するため特許請求の範囲の請求項1に記載の本発明の液垂れ防止機構の特徴は、塗布対象部に霧状に噴射した液状グリースの液垂れを防止するための液垂れ防止機構であって、前記液垂れ防止機構は、液状グリースが内部に充填されたスプレー容器の押下操作される操作ボタンに設けられたノズル装着部に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズルに対して着脱自在に取り付けられる液垂れ防止用ブラシ、およびスプレー容器の内部に設けられた液垂れ防止用定量バルブの少なくとも一方である点にある。
【0017】
そして、このような構成を採用したことにより、液垂れ防止用ブラシは、その先端を液状グリースを少量スプレーした塗布対象部に接触させて擦るように押し付けることで、塗布対象部に塗布した液状グリースが塗布対象部から液垂れするのを防止することができる。また、液垂れ防止用定量バルブは、液状グリースの1回の噴射量を容易かつ確実に液垂れが発生しない量とすることができる。したがって、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースが液垂れするのを防止することができる。
【0018】
特許請求の範囲の請求項2に記載の本発明の液垂れ防止機構の特徴は、請求項1において、前記液垂れ防止用ブラシは、前記スプレーノズルに対して着脱自在に取り付けられる筒状のキャップと、一端が前記キャップの先端面に取り付けられたブラシ部とを有し、前記ブラシ部は、直線状に形成された弾性変形可能な多数のブラシ片を有しているとともに、前記多数のブラシ片は、その長手方向が前記キャップの軸線方向に沿って配置され、かつ、前記キャップの先端面に設けられた開口を囲繞するように全体として筒状をなすように配置されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、ブラシ部が全体として筒状に形成されているから、液状グリースを広い範囲の塗布対象部にスプレー塗布することができるとともに、ブラシ部の先端を塗布対象部に接触させて少量のスプレーをすることにより、液状グリースがブラシ部の外側に垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分が形成されるので、ブラシ部の先端をその接触部に擦るように押し付けることで、塗布対象部に塗布した液状グリースが塗布対象部から垂れるのを防止することができる。したがって、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースが液垂れするのを防止することができる。また、液状グリースを広い範囲の塗布対象部にスプレー塗布すること、および、液状グリースをピンポイントで塗布対象部に点付け塗布すること、との両者を容易に行うことができるので、使い勝手がよい。
【0019】
特許請求の範囲の請求項3に記載の本発明の液垂れ防止機構の特徴は、請求項2において、前記キャップは、プラスチックあるいはゴム様弾性体を材料として形成されており、前記キャップの内径は前記スプレーノズルの外径と同等あるいは若干小さく形成されており、前記キャップは、手動操作によって前記スプレーノズルの長手方向に沿って移動可能に形成されているとともに、その材料が有する弾性力によって前記スプレーノズルの外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定可能に形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、液状グリースの噴射状態に応じてスプレーノズルの外周面の長手方向に対する取付位置を調節することができる。すなわち、スプレー用ブラシのブラシ部が霧状の液状グリースの拡散を阻害する阻害要因となるのを、キャップの取付位置を調節することにより防止することができる。
【0020】
特許請求の範囲の請求項4に記載の本発明の液垂れ防止機構の特徴は、請求項1において、前記液垂れ防止用定量バルブは、その噴出量が0.01−1.0ミリリットルの範囲のものである点にある。そして、このような構成を採用したことにより、液状グリースの1回の噴射量をより確実に液垂れしない量とすることができる。
【0021】
特許請求の範囲の請求項5に記載の本発明のエアゾール製品の特徴は、グリースと揮発性の溶剤を混合した液状グリースおよび噴射剤が内容物として内部に充填された耐圧缶、および前記耐圧缶に充填された内容物を噴射するために前記耐圧缶の頭頂部に装着され押下操作される操作ボタンを具備するスプレー容器と、基端部が前記操作ボタンの外周面に設けられた噴出口に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズルとを備え、前記操作ボタンを押下操作することにより、前記スプレーノズルの先端から噴射剤とともに前記液状グリースを霧状に噴射するエアゾール製品であって、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の液垂れ防止機構を備えている点にある。
【0022】
そして、このような構成を採用したことにより、請求項1に記載の本発明の液垂れ防止機構を用いた場合には、液垂れ防止用ブラシは、その先端を液状グリースを少量スプレーした塗布対象部に接触させて擦るように押し付けることで、塗布対象部に塗布した液状グリースが塗布対象部から液垂れするのを防止することができる。また、液垂れ防止用定量バルブは、液状グリースの1回の噴射量を容易かつ確実に液垂れが発生しない量とすることができる。したがって、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースが液垂れするのを防止することができる。また、請求項2に記載の本発明の液垂れ防止機構を用いた場合には、ブラシ部が全体として筒状に形成されているから、液状グリースを広い範囲の塗布対象部にスプレー塗布することができるとともに、ブラシ部の先端を塗布対象部に接触させて少量のスプレーをすることにより、液状グリースがブラシ部の外側に垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分が形成されるので、ブラシ部の先端をその接触部に擦るように押し付けることで、塗布対象部に塗布した液状グリースが塗布対象部から垂れるのを防止することができる。したがって、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースが液垂れするのを防止することができる。また、液状グリースを広い範囲の塗布対象部にスプレー塗布すること、および、液状グリースをピンポイントで塗布対象部に点付け塗布すること、との両者を容易に行うことができるので、使い勝手がよい。また、請求項3に記載の本発明の液垂れ防止機構を用いた場合には、液状グリースの噴射状態に応じてスプレーノズルの外周面の長手方向に対する取付位置を調節することができる。すなわち、スプレー用ブラシが霧状の液状グリースの拡散を阻害する阻害要因となるのを、キャップの取付位置を調節することにより防止することができる。さらにまた、請求項4に記載の本発明の液垂れ防止機構を用いた場合には、液状グリースの1回の噴射量をより確実に液垂れない量とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の液垂れ防止機構およびそれを用いたエアゾール製品によれば、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースの液垂れを確実かつ容易に防止することができるなどの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態の要部を示す模式図
【図2】図1の液垂れ防止機構を示す模式的拡大断面図
【図3】図2の模式的左側面図
【図4】本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースのスプレー塗布状態の要部を示す模式図
【図5】本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースの点付け塗布状態の要部を示す模式図
【図6】本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースの点付け塗布状態における液状グリースが垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分により液状グリースを保持貯留した状態を示す模式的説明図
【図7】本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第2実施形態の要部を示す模式図
【図8】図7の液垂れ防止機構の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0026】
図1から図2は本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態を示すものであり、図1は要部を示す模式図、図2は図1のスプレー用ブラシ近傍を示す模式的拡大断面図、図3は図2の模式的左側面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のエアゾール製品1はグリーススプレーであり、スプレー容器2と、スプレーノズル3と、液垂れ防止機構としてのスプレー用ブラシ4とを有している。
【0028】
前記スプレー容器2は、ブレーキ鳴きを消すために用いられるグリースと揮発性の溶剤を混合した液状グリースG(図4、図5参照)、および、図示しない気化した液化ガスや圧縮ガスなどからなる噴射剤が内容物として内部に充填されたアルミニウムなどの金属製あるいは樹脂製の耐圧容器としての耐圧缶6と、この耐圧缶6に充填された内容物を噴射するために耐圧缶6の頭頂部、詳しくは、図示しないバルブ機構の一部を構成するステム10の上端部に装着されたアクチュエータとしての押下操作される操作ボタン7(スプレーボタン)とを備えている。
【0029】
前記噴射剤としては、LPGを挙げることができる。また、液状グリースGと噴射剤との混合比としては、液状グリースGが90−30重量%に対して噴射剤を10−70重量%とすることが好ましい。
【0030】
前記操作ボタン7には、ほぼ円筒状に形成されたノズル装着部8が設けられており、このノズル装着部8は、その軸方向を左右方向にして水平に配置されている。また、ノズル装着部8の右端部には、スプレー容器2のパイプ状をなすステム10(外部に露出している一部のみ図示)が装着されるステム装着部9が設けられている。このステム装着部9は、下部が開口する有底筒状に形成されており、その軸方向を上下方向にして鉛直に配置されている。そして、ステム10から噴出される内容物は、ステム装着部9を介してノズル装着部8の左端である先端に案内されるようになっている。なお、エアゾール製品1の不使用時には、ノズル装着部8に至る内容物の流路が常時閉状態とされたバルブによって遮断されている。そして、使用者が操作ボタン7を押し下げるように押下操作することにより、ステム10が耐圧缶6の内部側に移動してバルブを閉状態から開状態とし、ノズル装着部8に至る内容物の流路が開放されようになっている。
【0031】
前記ノズル装着部8には、スプレーノズル3の基端部が固定あるいは着脱自在に取り付けられている。このスプレーノズル3としては、金属あるいは樹脂により、例えば、直径が2.4mm、内径が0.64mm、長さが12.0mmに形成された小径の長尺ノズル(ロングノズル)が用いられている。
【0032】
前記スプレー容器2およびスプレーノズル3の他の構成は、従来のスプレー容器およびスプレーノズルと同様に形成されているので、その詳しい説明については省略する。また、スプレー容器2およびスプレーノズル3としては、市場に供給されている既存のものであってもよい。
【0033】
前記スプレー用ブラシ4は、本実施形態の液状グリースGをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースGの液垂れを防止する液垂れ防止機構を構成するものである。また、スプレー用ブラシ4は、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PA(図4参照)にスプレー塗布すること、および、液状グリースGをピンポイントで塗布対象部PB(図5、図6参照)に点付け塗布することの両者を選択して行うためのものである。そして、スプレー用ブラシ4は、スプレーノズル3に着脱自在に取り付けられる筒状のキャップ11と、一端である根本(図1および図2の右端)がキャップ11の先端面11a(図1および図2の左端面)に取り付けられたブラシ部13とを有している。
【0034】
前記キャップ11は、プラスチックあるいはゴムなどのゴム様弾性体を材料として、例えば、直径が5mm、内径が2.4mm、長さが7mmの円筒状に形成されている。なお、キャップ11の内径は、スプレーノズル3の外径と同等あるいは若干小さく形成されていることが、キャップ11の内孔11c(中心孔)をスプレーノズル3の外周面に装着する際に、使用者の手動操作により、キャップ11、ひいてはスプレー用ブラシ4をスプレーノズル3の長手方向に沿って移動することができるとともに、その材料が有する弾性力によってスプレーノズル3の外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定することが容易かつ確実にできるという意味で好ましい。
【0035】
例えば、ゴム製のキャップ11の場合、ゴムの硬さにもよるが、キャップ11の内孔11cとスプレーノズル3の外周面との間に、0.3−0.5mm程度の締め代を設けるようにキャップ11の内径を設定すればよい。なお、締め代とは、キャップ11の内径と、スプレーノズル3の外径との直径差である。
【0036】
なお、キャップ11の形状としては、筒状であればよく、その外径形状としては、設計コンセプトなどの必要に応じて、三角形、四角形、長方形、円形、楕円形などの各種の形状から選択することができる。
【0037】
前記ブラシ部13は、直線状に形成された弾性変形可能な多数のブラシ片13aを有している。これら多数のブラシ片13aは、その長手方向がキャップ11の軸線方向(図1の左右方向)に沿って配置され、かつ、図2に示すように、キャップ11の図1の左側に示す先端面11aに設けられた開口11b(内孔11cの先端)を囲繞するように全体として円筒状をなすように配置されている。
【0038】
なお、ブラシ部13の全体としての形状としては、円筒状に限らず、先端側が大径で基端側(キャップ11の先端面11a側)が小径のラッパ状、中空テーパ状などであってもよい。また、ブラシ部13の全体としての外径形状としては、円形に限らず、三角形、四角形、長方形、楕円形などの各種の形状から選択することができる。
【0039】
前記各ブラシ片13aは、剛毛あるいは直径が0.1−1.0mmの範囲から選択されたプラスチックで形成することにより高剛性とし、かつその長さが3−20mmの範囲から選択されたものとすることがブラシ片13aがその自重によって有意に変形してたわむのを防止することができるし、ブラシ部13で液状グリースGを塗布する際に、塗布に必要な腰の強さを容易に得ることができるという意味で好ましい。
【0040】
なお、ブラシ片13aの長さは、キャップ11の先端面11aから外部に露出した部分、すなわち、キャップ11の先端面11aに埋め込まれた部分を除く図1の左右方向の長さをいう。
【0041】
また、ブラシ片13aの密度としては、1平方センチ当たり500−5000本とすることが液状グリースGを点付け塗布する際に、液状グリースGがブラシ部13の外部に垂れないように液状グリースGを保持貯留する溜まり部分、すなわち液状グリースGの保持空間を容易に形成することができるし、液状グリースGを点付け塗布する際に、毛管作用により、ブラシ部13に液状グリースGを吸引することができるという意味で好ましい。
【0042】
さらに、各ブラシ片13aは、ヘアブラシと同様に、キャップ11の先端面11aに植毛されている構成であってもよいし、キャップ11の先端面11aに取り付け凹部を形成して接着剤などによって接合する構成であってもよい。
【0043】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0044】
まず、本実施形態のエアゾール製品1の形成方法について説明する。
【0045】
本実施形態のエアゾール製品1は、スプレー容器2に取り付けられているスプレーノズル3の先端部に、スプレー用ブラシ4のキャップ11の内孔11cをさし込んで装着することにより形成する。このとき、スプレー用ブラシ4のキャップ11は、ブラシ部13が取り付けられている先端面11aとは反対の図1の右側に示す基端面11dを先頭にしてスプレーノズル3のノズル装着部8の内孔8aにさし込む。また、スプレーノズル3の外周に対してキャップ11の内孔11cが締め代を備えているので、キャップ11は、手動操作によってスプレーノズル3の長手方向に沿って移動することができるとともに、キャップ11を形成する材料の弾性力によってスプレーノズル3の外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定することができる。
【0046】
前記スプレーノズル3に対するスプレー用ブラシ4の取付位置としては、図2に示すように、ブラシ部13の根本、すなわちキャップ11の先端面11aと、スプレーノズル3の先端面3aとが同一平面に位置するように取付位置を調節する。
【0047】
なお、スプレーノズル3の外周面の長手方向に対する取付位置は、液状グリースGを塗布対象部にスプレーするに先だって、液状グリースGの噴射状態に応じて適宜調節する。
【0048】
ここで、スプレーノズル3に対するスプレー用ブラシ4の取付位置を液状グリースGの噴射状態に応じて調節する意味は、霧状に噴射される液状グリースGは、スプレーノズル3の先端面3aの開口から離間するにしたがって拡散するので、霧状の液状グリースGがスプレー用ブラシ4の全体として円筒状に形成されたブラシ部13の内孔13cを円滑に通過することができるように、キャップ11の位置をスプレーノズル3の長さ方向に沿って移動させることをいう。
【0049】
つまり、スプレーノズル3の先端面3aとブラシ部13の先端との間の距離が長くなればなるほど、液状グリースGの拡散が阻害され易くなる。
【0050】
なお、液状グリースGを塗布対象部PAにスプレー塗布する場合には、極端には、スプレー用ブラシ4のブラシ部13の先端と、スプレーノズル3の先端面3aとが同一平面に位置するように取付位置を調節することもできる。
【0051】
つぎに、本実施形態のエアゾール製品1の使用方法について説明する。
【0052】
図4は本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースのスプレー塗布状態の要部を示す模式図である。図5は本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースの点付け塗布状態の要部を示す模式図である。図6は本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第1実施形態による液状グリースの点付け塗布状態における液状グリースが垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分により液状グリースを保持貯留した状態を示す模式的説明図である。
【0053】
まず、本実施形態のエアゾール製品1により、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布する場合には、図4に示すように、使用者がスプレー容器2、ひいてはスプレー用ブラシ4のブラシ部13の先端を塗布対象部PAから離間させた状態で操作ボタン7を押し下げるように押下操作することにより、スプレーノズル3の先端から噴射剤とともに液状グリースGを霧状に噴射、すなわちスプレーをする。このとき、スプレー用ブラシ4のブラシ部13が、直線状に形成された多数のブラシ片13aがその長手方向をキャップ11の軸線方向に沿って配置され、かつ、キャップ11の先端面11aに設けられた開口11bを囲繞するように全体として筒状をなすように配置されているから、ブラシ部13の先端に設けられた開口11bとスプレーノズル3の先端面3aに設けられた開口とを連通する孔空間21(図2参照)が形成されているので、スプレーノズル3から霧状に噴射された液状グリースGは、孔空間21を通過しつつ徐々に拡散し、この拡散は孔空間21を通過した後も継続し塗布対象部PAに到達する。また、スプレーされた液状グリースGは、塗布対象部PAに到達する前に、液状グリースGに含まれている揮発性の溶剤が気化して流動性を喪失する。したがって、液状グリースGをスプレー塗布した塗布対象部PAには、溶剤が気化した液状グリースG、すなわちグリースのみが塗布されることになるので、塗布対象部に塗布した液状グリースGが塗布対象部PAから液垂れすることはない。
【0054】
よって、使用者が操作ボタン7を押し下げるように操作するという簡単な使用方法で、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布することができる。
【0055】
また、本実施形態のエアゾール製品1により、液状グリースGをピンポイントで塗布対象部PBに点付け塗布する場合には、図5に示すように、使用者がブラシ部13の先端を塗布対象部に接触させた状態で少量のスプレーをする(操作ボタン7を短時間押し下げる)。このとき、前述したように、スプレー用ブラシ4のブラシ部13が、直線状に形成された多数のブラシ片13aをその長手方向をキャップ11の軸線方向に沿って配置され、かつ、キャップ11の先端面11aに設けられた開口11bを囲繞するように全体として筒状をなすように配置されているから、ブラシ部13の先端を塗布対象部に接触させて少量のスプレーをすることにより、図6に示すように、液状グリースGがブラシ部13の外部に垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分22が形成されるので、ブラシ部13をその接触部に擦るように押し付けることで、塗布対象部PBに塗布した液状グリースGが塗布対象部PBから垂れるのを防止することができる。その後、ブラシ部13の先端を押し伸ばすように移動させることにより、液状グリースGを線状に塗布、すなわち刷毛塗りすることもできる。
【0056】
このように、本実施形態のスプレー用ブラシ4によれば、ブラシ部13が全体として筒状に形成されているから、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布することができるとともに、ブラシ部13の先端を塗布対象部PBに接触させて少量のスプレーをすることにより、液状グリースGがブラシ部13の外部に垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分22が形成されるので、ブラシ部13の先端をその接触部に擦るように押し付けることで、塗布対象部PBに塗布した液状グリースGが塗布対象部PBから垂れるのを防止することができる。したがって、液状グリースGをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースGが液垂れするのを防止することができるし、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布すること、および、液状グリースGをピンポイントで塗布対象部PBに点付け塗布すること、との両者を容易に行うことができるので、使い勝手がよい。
【0057】
また、本実施形態のスプレー用ブラシ4によれば、キャップ11がプラスチックあるいはゴム様弾性体を材料として形成されており、キャップ11の内径がスプレーノズル3の外径と同等あるいは若干小さく形成されており、キャップ11が手動操作によってスプレーノズル3の長手方向に沿って移動可能に形成されているとともに、その材料が有する弾性力によってスプレーノズル3の外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定可能に形成されているから、液状グリースGの噴射状態に応じてスプレーノズル3の外周面の長手方向に対するキャップ11、ひいてはスプレー用ブラシ4の取付位置を調節することができる。すなわち、スプレー用ブラシ4のブラシ部13が霧状の液状グリースGの拡散を阻害する阻害要因となるのを、キャップ11の取付位置を調節することにより防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のスプレー用ブラシ4によれば、ブラシ片13aが剛毛あるいは直径が0.1−1.0mmの範囲から選択されたプラスチックであり、かつその長さが3−20mmの範囲から選択されたものであるから、ブラシ片13aの長手方向をキャップ11の軸線方向に沿って容易かつ確実に配置することができるとともに、ブラシ片13aがその自重によってたわむのを防止することができる。したがって、ブラシ片13aが自重によってたわむことにより霧状の液状グリースGの拡散を阻害する阻害要因となるのを防止することができる。
【0059】
本実施形態のエアゾール製品1によれば、ブラシ部13が全体として筒状に形成されているスプレー用ブラシ4を備えているから、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布することができる。また、ブラシ部13の先端を塗布対象部PBに接触させて少量のスプレーをすることにより、液状グリースGがブラシ部13の外部に垂れ落ちないように保持貯留する溜まり部分22が形成されるので、ブラシ部13の先端をその接触部に擦るように押し付けることで、塗布対象部PBに塗布した液状グリースGが塗布対象部PBから液垂れするのを防止することができる。
【0060】
したがって、本実施形態のエアゾール製品1によれば、液状グリースGをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースGの液垂れを防止することができる。また、本実施形態のエアゾール製品1によれば、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布すること、および、液状グリースGをピンポイントで塗布対象部PBに点付け塗布すること、との両者を選択して行うことができる。
【0061】
また、本実施形態のエアゾール製品1によれば、スプレー用ブラシ4のキャップ11がプラスチックあるいはゴム様弾性体を材料として形成されており、このキャップ11の内径がスプレーノズル3の外径と同等あるいは若干小さく形成されており、さらにこのキャップ11が手動操作によってスプレーノズル3の長手方向に沿って移動可能に形成されているとともに、その材料が有する弾性力によってスプレーノズル3の外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定可能に形成されているから、液状グリースGの噴射状態に応じてスプレーノズル3の外周面の長手方向に対するキャップ11、ひいてはスプレー用ブラシ4の取付位置を調節することができる。すなわち、スプレー用ブラシ4のブラシ部13が霧状の液状グリースGの拡散を阻害する阻害要因となるのを、キャップ11の取付位置を調節することにより防止することができる。
【0062】
さらに、本実施形態のエアゾール製品1によれば、スプレー用ブラシ4のブラシ部13を構成するブラシ片13aが剛毛あるいは直径0.1−1.0mmのプラスチックであり、かつその長さが3−20mmの範囲から選択されたものであるから、ブラシ片13aの長手方向をキャップ11の軸線方向に沿って容易かつ確実に配置することができるとともに、ブラシ片13aがその自重によってたわむのを防止することができる。したがって、ブラシ片13aが自重によってたわむことにより霧状の液状グリースGの拡散を阻害する阻害要因となるのを防止することができる。
【0063】
さらにまた、本実施形態のエアゾール製品1は、既存のブレーキ鳴き防止用の液状グリースGをスプレーすることのできるエアゾール製品に取り付けられたスプレーノズル3に対して本実施形態のスプレー用ブラシ4を取り付けるという簡単な方法で構成することができるので、低コスト化を容易に図ることができるし、短時間で市場に供給することが可能なものである。
【0064】
図7および図8は本発明に係る液垂れ防止機構を備えるエアゾール製品の第2実施形態を示すものであり、図7は要部を示す模式図、図8は図7の液垂れ防止機構の拡大図である。なお、前述した第1実施形態のエアゾール製品1と同一ないし相当する構成については図面中に同一の符号を付し、その詳しい説明については省略する。
【0065】
図7に示すように、本実施形態のエアゾール製品31は、前述した第1実施形態のエアゾール製品1における液垂れ防止機構としての液垂れ防止用ブラシ4を、液垂れ防止機構としての液垂れ防止用定量バルブ34としたものである。この液垂れ防止用定量バルブ34は、スプレー容器32に設けられており、塗布対象部PBに霧状に噴射した液状グリースGの液垂れを防止するための液垂れ防止機能と、従来の内容物を噴射する流路を開閉するバルブ機構の機能を併せ持つ構成とされている。
【0066】
本実施形態のエアゾール製品31は、スプレー容器32と、スプレーノズル3とを有している。
【0067】
前記スプレー容器32は、液状グリースGおよび噴射剤が内容物として内部に充填されたアルミニウムなどの金属製あるいは樹脂製の耐圧容器としての耐圧缶33と、この耐圧缶33に充填された内容物を噴射するために押下操作されるアクチュエータとしての操作ボタン7(スプレーボタン)と、液垂れ防止機構としての液垂れ防止用定量バルブ34とを備えている。
【0068】
図8に示すように、スプレー容器32の一部を構成する耐圧缶33の上端開口部分の内側には全体として筒状に形成された樹脂リング36が配設されている。この樹脂リング36の外周と耐圧缶33の内周との相互間には、内容物が樹脂リング36の外周と耐圧缶33の内周との間を通過して外部に漏れるのを防止するためのアウターガスケット37が配設されている。そして、樹脂リング36によってハウジング38が保持されることにより、液垂れ防止機構としての液垂れ防止用定量バルブ34が装着されている。なお、符号39はカバーである。
【0069】
前記液垂れ防止用定量バルブ34は、樹脂リング36に保持された全体が円筒状のハウジング38と、このハウジング38に上下方向に移動可能に支持されたステム41とを有している。そして、ステム41の上部は、内部にステム通路42を有する筒状部41aとされるとともに、下部が円柱状のロッド部41bとされ、筒状部41aとロッド部41bとの間には鍔状のバルブ部41cが形成されている。そして、バルブ部41cの上方には、ステム41を包囲する環状のステムガスケット43がハウジング38の縁部により保持された状態で配置されている。
【0070】
前記ハウジング38の中央段部とステム41のバルブ部41cの下面との間にはステム41を常時上方に押し上げるよう付勢するスプリング44が介挿されており、このスプリング44の付勢力により、バルブ部41cの上面がステムガスケット43に押圧された状態とされている。
【0071】
前記ステム41の筒状部41aは、耐圧缶33の開口から外部に突出して伸びる状態とされ、この筒状部41aの下端部には、ステム通路42から径方向に伸びてその外周面に開口するステム孔45が形成されている。
【0072】
また、ハウジング38の下端には円筒形のブッシュ46が固定されているとともに、このブッシュ46の下端部には、耐圧缶33の内底部にまで伸びるディップチューブ47が接続されている。そして、ブッシュ46により、上方に向かうに従って次第に拡開するテーパ筒状部48aを有するカップゴム48が、ハウジング38の段部との間に保持されており、このカップゴム48のテーパ筒状部48aの上向きの内周面と、ロッド部41bのテーパ状の下端部41baとにより弁が構成されている。
【0073】
その他の構成については、前述した第1実施形態のエアゾール製品1と同様とされているので、その詳しい説明は省略する。
【0074】
このような構成からなる液垂れ防止用定量バルブ34によれば、操作ボタン7が押下操作されない非動作時には、ステム41がスプリング44によって上方に押し上げられてバルブ部41cの上部がステムガスケット43の下面に押圧されるとともに、ステム孔45の開口がステムガスケット43の内周面により塞がれた状態とされることにより、ハウジング38とステム41のロッド部41bとにより区画される空間Sはステム通路42と遮断された状態とされる。
【0075】
一方、操作ボタン7により、スプリング44に抗してバルブが押下操作された動作時は、ステム41が降下されてステム孔45の開口がステムガスケット43より下方に外れた位置となるために、ステム通路42がハウジング38内の空間Sと連通された状態となり、これにより、当該空間S内の内容物が、ステム孔45、ステム通路42およびアクチュエータ通路50(図7参照)を介してスプレーノズル3の先端から外部に噴射される。
【0076】
このとき、降下したロッド部41bの下端部41baはカップゴム48のテーパ筒状部48aの上向き内周面に押圧されることにより、ブッシュ46内の空間Cがハウジング38内の空間Sと遮断された状態となり、したがって、実際に噴射されるものは空間S内の内容物のみとなる。
【0077】
そして、操作ボタン7に対する押下力が除かれてバルブ部41cがスプリング44の作用によって上昇位置に復帰すると、この非動作時には、ロッド部41bの下端部41baがカップゴム48から離間する結果、ハウジング38内の空間Sがブッシュ46内の空間Cおよびディップチューブ47を介して耐圧缶33の内部と連通することにより、空間S内には再び耐圧缶33内の内容物が充満される。したがって、1回の噴射操作により、ハウジング38内の空間S内の容積によって定まる量の内容物が定量的に噴出されることとなる。
【0078】
すなわち、ハウジング38内の空間Sが定量室となる。この空間Sの容積としては、塗布対象部PBに霧状に噴射した液状グリースGの液垂れを防止、すなわち、液垂れが発生しない量であればよく、0.01−1.0ミリリットルの範囲が好ましく、0.1ミリリットル程度とすることが、液状グリースGの液垂れを確実に防止することができるという意味でより好ましい。
【0079】
このように、本実施形態の液垂れ防止用定量バルブ34によれば、液状グリースGの1回の噴射量を容易かつ確実に液垂れが発生しない量とすることができる。したがって、液状グリースをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースが液垂れするのを防止することができる。
【0080】
また、本実施形態の液垂れ防止用定量バルブ34によれば、液状グリースGの1回の噴射量を0.01−1.0ミリリットルの範囲とすることができるので、液垂れが発生しない量を確実かつ容易に得ることができる。
【0081】
本実施形態のエアゾール製品31によれば、液状グリースの1回の噴射量を容易かつ確実に液垂れが発生しない量とすることができる。したがって、液状グリースGをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースGが液垂れするのを防止することができる。
【0082】
また、本実施形態のエアゾール製品31によれば、1回の操作で噴射される液状グリースGの噴射量が定量室である空間Sの容積によって規制されるため、操作ボタン7を複数回操作することにより、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布することができる。
【0083】
したがって、本実施形態のエアゾール製品31によれば、前述した第1実施形態のエアゾール製品1と同様に、液状グリースGをピンポイントで点付け塗布する際に、液状グリースGが液垂れするのを防止することができるし、液状グリースGを広い範囲の塗布対象部PAにスプレー塗布すること、および、液状グリースGをピンポイントで塗布対象部PBに点付け塗布すること、との両者を容易に行うことができるので、使い勝手がよい。
【0084】
なお、第2実施形態のエアゾール製品31に、図7の想像線にて示す第1実施形態のスプレー用ブラシ4を設ける構成としてもよい。すなわち、エアゾール製品31に、液垂れ防止用定量バルブ34およびスプレー用ブラシ4の2つの液垂れ防止機構を設ける構成としてもよい。この構成の場合、第1実施形態のエアゾール製品1における効果に加えて第2実施形態のエアゾール製品31における効果を合わせ持つものとなる。
【0085】
また、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、液状グリースとしては、ブレーキ鳴き防止用の液状グリースではなく、一般的な摺動部の潤滑に用いるものであってもよい。この場合、スプレー塗布あるいは点付け塗布する塗布対象部は、グリース潤滑を必要とする部分である。
【符号の説明】
【0087】
1、31 エアゾール製品
2、32 スプレー容器
3 スプレーノズル
4 スプレー用ブラシ(液垂れ防止機構)
10、41 ステム
11 キャップ
13 ブラシ部
21 孔空間
22 溜まり部分
34 液垂れ防止用定量バルブ(液垂れ防止機構)
G 液状グリース
S 空間(定量室)
PA 塗布対象部(広い範囲)
PB 塗布対象部(点付け塗布する)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象部に霧状に噴射した液状グリースの液垂れを防止するための液垂れ防止機構であって、
前記液垂れ防止機構は、液状グリースが内部に充填されたスプレー容器の押下操作される操作ボタンに設けられたノズル装着部に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズルに対して着脱自在に取り付けられる液垂れ防止用ブラシ、およびスプレー容器の内部に設けられた液垂れ防止用定量バルブの少なくとも一方であることを特徴とする液垂れ防止機構。
【請求項2】
前記液垂れ防止用ブラシは、前記スプレーノズルに対して着脱自在に取り付けられる筒状のキャップと、一端が前記キャップの先端面に取り付けられたブラシ部とを有し、
前記ブラシ部は、直線状に形成された弾性変形可能な多数のブラシ片を有しているとともに、前記多数のブラシ片は、その長手方向が前記キャップの軸線方向に沿って配置され、かつ、前記キャップの先端面に設けられた開口を囲繞するように全体として筒状をなすように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液垂れ防止機構。
【請求項3】
前記キャップは、プラスチックあるいはゴム様弾性体を材料として形成されており、
前記キャップの内径は前記スプレーノズルの外径と同等あるいは若干小さく形成されており、
前記キャップは、手動操作によって前記スプレーノズルの長手方向に沿って移動可能に形成されているとともに、その材料が有する弾性力によって前記スプレーノズルの外周面の長手方向の任意の位置に締め付け固定可能に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液垂れ防止機構。
【請求項4】
前記液垂れ防止用定量バルブは、その噴出量が0.01−1.0ミリリットルの範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の液垂れ防止機構。
【請求項5】
グリースと揮発性の溶剤を混合した液状グリースおよび噴射剤が内容物として内部に充填された耐圧缶、および前記耐圧缶に充填された内容物を噴射するために前記耐圧缶の頭頂部に装着され押下操作される操作ボタンを具備するスプレー容器と、基端部が前記操作ボタンのノズル装着部に固定あるいは着脱自在に取り付けられたパイプ状のスプレーノズルとを備え、前記操作ボタンを押下操作することにより、前記スプレーノズルの先端から噴射剤とともに前記液状グリースを霧状に噴射するエアゾール製品であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の液垂れ防止機構を備えていることを特徴とするエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−77881(P2012−77881A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225613(P2010−225613)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000206004)大新化工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】