説明

液晶ディスプレイにおける表示障害の検出方法

【課題】液晶ディスプレイにおいて表示障害を簡便に検出する方法を提供する。
【解決手段】表示障害の検出方法では、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルを求める。基準輝度レベルは、液晶ディスプレイに表示障害が発生していないことが確認された基準装置にデータを表示させたときの、基準装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表す。バックライト輝度レベルは、表示障害の有無が判定される対象装置でデータを表示させるときに対象装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表す。対象装置は、バックライト輝度レベルと基準輝度レベルの差が閾値よりも小さい場合、対象装置に表示障害が発生していないと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイにおける表示障害の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)の普及により、携帯電話端末などの様々な機器の画面表示装置に液晶ディスプレイが用いられてきている。液晶ディスプレイを組み込んだ機器は、出荷前に、液晶ディスプレイに表示障害が起こっているか検査され、表示障害が検出されなかった機器が出荷される。表示障害の検出は、目視によって行われることがあるが、検査装置などを用いて行われることもある。
【0003】
関連する技術として、液晶パネルに光を照射して得られた画像を用いた検査方法が知られている。この方法では、まず、液晶パネルに光を照射して得られた画像を取り込んで輝度ヒストグラムを求める操作を、複数の良品の液晶パネルに対して行い、多数の類似ヒストグラムが得られた液晶パネルを基準パーツとする。次に、被検査パーツについて輝度ヒストグラムを求め、基準パーツの輝度ヒストグラムと類似しているときに、被検査パーツに欠陥がないと判断する。また、Charge Coupled Device(CCD)カメラから受けた信号を用いて各画素の輝度分布のヒストグラムを作成し、作成されたヒストグラムと正規分布関数との相互相関値と良否判定値から画質の良否を判断する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−158238号公報
【特許文献2】特開平2−93871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶パネルに光を照射して得られた画像を用いた検査方法や、CCDカメラで得られた信号を用いた検査方法では、検査のために、CCDカメラや光源などの装置が用いられる。そのため、これらの方法では、試験装置の導入のための手間やコストがかかる。
【0006】
本発明では、液晶ディスプレイにおいて表示障害を簡便に検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある実施形態に係る検出方法では、液晶ディスプレイに表示障害が発生しているかが判定される対象装置は、基準輝度レベルを取得する。基準輝度レベルは、液晶ディスプレイに表示障害が発生していないことが確認された基準装置にデータを表示させたときの、前記基準装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表す。また、前記対象装置は、前記対象装置で前記データを表示させるときに前記対象装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表すバックライト輝度レベルを求める。前記対象装置は、前記バックライト輝度レベルと前記基準輝度レベルの差が閾値よりも小さい場合、前記対象装置に前記表示障害が発生していないと判定する。
【発明の効果】
【0008】
液晶ディスプレイにおいて表示障害が簡便に検出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る携帯電話端末の構成の一例を示す図である。
【図2】輝度レベルテーブルの例を示す図である。
【図3】画像データの表示例と、画素の輝度分布のヒストグラムを示す図である。
【図4】画素の輝度を累積分布で表した図である。
【図5】輝度レベルの求め方を説明する図である。
【図6】第1の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】携帯電話端末の操作による画面表示の変化の例を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】選択テーブルの一例を示す図である。
【図10】複数の輝度レベルテーブルでの輝度レベルの違いを説明する図である。
【図11】第3の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
液晶ディスプレイは、液晶パネルとバックライトを備える。LCDのバックライトの輝度レベルは、LCDにデータを表示したときの画素の輝度の分布に応じて決定される。ここで、LCD等に障害が発生していない2つの装置で同じデータを表示したときには、ディスプレイ上の輝度分布は同様になるため、バックライトの輝度レベルも同様になる。つまり、LCD等に障害が発生していない2つの装置で同じデータを表示したときのバックライトの輝度レベルは、一致しているとみなすことができる。
【0011】
そこで、LCD等に障害が発生していないことが確認された装置(基準装置)に、あるデータが表示されたときのバックライトの輝度レベルが求められる。次に、障害が発生しているかを判定する対象装置に、基準装置に表示したデータが表示されたときの、バックライトの輝度レベルが求められる。対象装置は、基準装置と対象装置について求められたバックライトの輝度レベルを取得し、輝度レベルの比較結果を用いて障害が発生しているかの判定を行う。ここで、同じデータを表示したときのバックライトの輝度レベルが基準装置と対象装置の間で一致しているとみなせない場合は、対象装置にLCDの表示障害があると判定される。このように、対象装置は、対象装置に発生している表示障害を検出するための装置として機能していることになる。従って、対象装置の表示障害を検出するための装置等は用いられない。このため、表示障害を検出するための装置等の設計、設置などを行うための作業やコストが削減される。
【0012】
以下の説明では、LCDを備える装置が携帯電話端末である場合を具体例として説明する。ただし、この方法は、携帯電話端末に搭載されたLCDの表示障害だけでなく、デジタルカメラ、携帯型ゲーム機、コンピュータのディスプレイ、テレビなどを含む任意の装置に備えられているLCDで発生する表示障害を検出するために用いることができる。また、以下の説明では、理解を助けるために、LCDに画像データを表示する場合を例として説明するが、文書データを含む任意のデータを表示障害の検出に用いることができる。
【0013】
図1は、実施形態に係る携帯電話端末の構成の一例を示す図である。携帯電話端末10は、LCD11、LCD制御部12、Light Emitting Diode(LED)制御部13、Central Processing Unit(CPU)14、Random Access Memory(RAM)15、不揮発メモリ16、LED17、インタフェース18を備える。
【0014】
LCD11は、画面として使用される液晶ディスプレイであり、後述する検出方法で用いられる表示画面を表示する他、利用者の携帯電話端末10の動作に基づく任意の用途に用いられる。なお、LCD11は、携帯電話端末10のメインディスプレイであっても、サブディスプレイであっても良い。また、LCD11は、位置入力デバイスと表示デバイスを備えているタッチパネルなどに含まれている液晶ディスプレイとすることもできる。LCD11は、バックライト21を備えており、バックライト21の輝度はLCD11に表示される画像データに応じて、LED制御部13によって調整される。
【0015】
LCD制御部12は、CPU14から出力された画像データをLCD11に出力し、出力されたデータを表示するためにLCD11を制御する。LCD制御部12は、輝度レベル計算部20を備えており、輝度レベル計算部20は、LCD11への輝度調整値や、LCD11のバックライト21として用いられているLEDに出力される電流などを算出する。また、輝度レベル計算部20は、輝度調整値や電流量をLED制御部13やCPU14に通知する。LED制御部13は、通知された輝度調整値や電流量に基づいてバックライト21に対する直接の制御等を行う。また、後述するように、LED制御部13は、判定結果を受け取ると、判定結果に応じてLED17を制御する。
【0016】
不揮発メモリ16は、試験プログラム30および輝度レベルテーブル22を格納する。試験プログラム30は、表示指示モジュール31、輝度レベル取得モジュール32および判定モジュール33を備える。また、試験プログラム30は、オプションとして、イベント発生モジュール34、検証モジュール35、および、テーブル選択モジュール36の1つ以上を備えることもできる。さらに、不揮発メモリ16は、基準装置のLCD11に画像データを表示したときのバックライト21の輝度レベルを記録している。バックライト21の輝度レベルを求める方法については後述する。以下の説明では、基準装置が備える液晶ディスプレイのバックライト21に適用される輝度レベルを「基準輝度レベル」と記載することがある。また、不揮発メモリ16は、複数の画像データについて基準輝度レベルを記録することもでき、この場合は、各々の画像データと対応付けて各画像データを表示したときに用いられた基準輝度レベルを記録している。
【0017】
図2に、輝度レベルテーブル22の例を示す。輝度レベルテーブル22は、バックライト21の輝度レベルを、LCD11の画素の輝度の中央値と対応付けている。図2(a)の例では、バックライト21は、輝度の中央値に応じて、輝度レベル1〜6の6段階のいずれかに設定される。輝度レベルテーブル22の使用方法については後述する。また、不揮発メモリ16は、図2(a)〜(c)のように、任意の複数の輝度レベルテーブル22を記憶することもできる。
【0018】
RAM15は、CPU14が試験プログラム30の実行などに用いることができる任意の種類の揮発メモリである。携帯電話端末10は、例えば、Dynamic Random Access Memory(DRAM)やSynchronous DRAM(SDRAM)を備えても良い。CPU14は、適宜、RAM15を用いて、表示障害の検出試験を行う。また、RAM15は、表示障害の検出試験の他に、ユーザの操作等に応じてCPU14によって用いられる。
【0019】
CPU14は、表示指示部、輝度レベル取得部、および、判定部を備える。また、試験プログラム30にイベント発生モジュール34、検証モジュール35、および、テーブル選択モジュール36が含まれている場合、CPU14は、イベント発生部、検証部、テーブル選択部も備える。CPU14は、不揮発メモリ16に格納されている試験プログラム30を実行することにより、表示指示機能、輝度レベル取得機能、判定機能、イベント発生機能、検証機能、および、テーブル選択機能を実現する。なお、図1に示す例では、携帯電話端末10はCPU14を備えているが、携帯電話端末10は、Micro Processing Unit(MPU)を備えることができ、また、CPUおよびMPUを1つ以上備えることもできる。
【0020】
表示指示部は、不揮発メモリ16に格納されている画像データを読み出して、LCD制御部12を介してLCD11に出力する。また、携帯電話端末10がカメラ(図示せず)や入力デバイス(図示せず)などを備えているときは、これらのデバイスから入力されたデータを、LCD11に出力して表示させることもできる。
【0021】
輝度レベル取得部は、輝度レベル計算部20にアクセスすることにより、バックライト21の輝度レベルを取得する。輝度レベル取得部は、取得したバックライト21の輝度レベルを判定部に通知する。以下の説明では、基準輝度レベルとの区別を明確にするために、前記対象装置が備える液晶ディスプレイのバックライト21に適用される輝度レベルを「バックライト輝度レベル」と記載することがある。
【0022】
判定部は、不揮発メモリ16から、基準輝度レベルを取得する。次に、バックライト輝度レベルを基準輝度レベルと比較し、両者が一致しているとみなせるかを判定する。例えば、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め決められた閾値よりも小さい場合、判定部は、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが一致しているとみなす。この場合、判定部は、表示障害が対象装置に発生していないと判定する。一方、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め決められた閾値以上の場合、判定部は、表示障害が対象装置に発生していると判定する。判定部は、判定結果をLED制御部13とインタフェース18に出力する。閾値の大きさは、例えば、バックライト21に設定される可能性のある輝度レベルの数などに基づいて決定される。なお、判定部は閾値を予め記憶することができ、また、不揮発メモリ16から読み出すこともできる。さらに、判定部は、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの値が同じときに、両者が一致しているとみなすこともできる。なお、基準輝度レベルの求め方などについては後述する。
【0023】
イベント発生部は、携帯電話端末10が出荷された後にユーザによって行われると予測される入力ボタン(図示せず)等による操作イベントを発生させる。イベント発生部は、例えば、「MENU」ボタンが押下されたときに携帯電話端末10で動作するソフトウェア等で行われる処理の発生を指示する。また、イベント発生部は、判定部から受け取った判定結果を、適宜、RAM15に記録する。検証部は、判定部から出された結果を、RAM15から読み出し、複数の判定結果を用いて、ソフトウェアに表示障害の原因があるかを判断する。なお、用いられる判定結果の数は、任意の複数とすることができる。
【0024】
テーブル選択部は、不揮発メモリ16に複数の輝度レベルテーブル22が記憶されている場合に、輝度レベル計算部20で使用される輝度レベルテーブル22を選択し、輝度レベル計算部20に通知する。テーブル選択部の動作については後述する。
【0025】
LED17は、LED制御部13によって制御され、判定結果を出力する。例えば、LED制御部13は、対象装置に表示障害が無い場合にLED17を点灯させ、対象装置に表示障害が検出されたときにLED17を点滅させることができる。なお、red, green and blue LED(RGBLED)を用いると、LED制御部13は、対象装置に表示障害が無い場合に青色を点灯させ、対象装置に表示障害が検出されたときには赤色を点灯させるなど、判定結果に応じて異なる色を点灯させることもできる。また、LED17は、判定結果の表示の他に、適宜、ユーザの操作に応じて点灯する。
【0026】
インタフェース18は、判定部から出力された判定結果を、出力ログに変換して、携帯電話端末10に接続されているコンピュータ40に出力する。また、コンピュータ40から受信したデータを適宜変換してCPU14や不揮発メモリ16へ出力する。なお、LED17とコンピュータ40のうちの任意の一方へ判定結果が出力されるようにすることもできる。
【0027】
<第1の実施形態>
図3は、画像データの表示例と、画素の輝度分布のヒストグラムを示す。以下、図3(a)の画像データをLCD11に表示させた場合に、基準装置Aでは図3(a)のように表示され、対象装置Bでは図3(b)、対象装置Cでは図3(c)、対象装置Dでは図3(a)のように表示されたものとして説明する。基準装置A、対象装置B〜Dのいずれも、図1を参照しながら述べた装置と同様の構成にすることができる。また、第1の実施形態で用いられる試験プログラム30には、表示指示モジュール31、輝度レベル取得モジュール32、および、判定モジュール33が含まれているものとする。また、いずれの装置も不揮発メモリ16に図3(a)の画像データを記録しているものとする。ただし、基準装置Aで求められた基準輝度レベルは、対象装置B〜Dのバックライト輝度レベルが求められる前に、対象装置B〜Dの各々の不揮発メモリ16に記録されているものとする。なお、第1の実施形態では、いずれの装置も図2(a)に示す輝度レベルテーブル22を不揮発メモリ16に記憶しており、他の輝度レベルテーブル22を備えていないものとする。また、この例では、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが同じ値であるときに、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが一致したとみなすものとする。従って、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが同じであるときに表示障害が発生していないと判定される。
【0028】
まず、以下のような手順により、基準輝度レベルを求める。
(1)表示指示部は、不揮発メモリ16に記憶している図3(a)の画像データをLCD制御部12に出力する。LCD制御部12は、入力された画像データをLCD11に表示する。基準装置Aに備えられたLCD11は、図3(a)に示すように表示する。
【0029】
(2)輝度レベル計算部20は、LCD11に含まれる画素の輝度の分布を調べ、輝度の中央値を求める。図3(d)は、図3(a)を表示しているLCD11での輝度の分布を示すヒストグラムである。図3(d)では、輝度によらずに画素値は一様に分布している。従って、図3(d)に示した画素の輝度を累積分布で表すと、図4のLAのようになる。輝度レベル計算部20は、累積割合が50%の位置の輝度を中央値とする。図4では、基準装置Aに画像データを表示したときの輝度の中央値はMe1となる。なお、以下の説明では、基準装置に画像データを表示したときの輝度の中央値を「基準中央値」と記載することがある。
【0030】
(3)輝度レベル計算部20は、輝度レベルテーブル22を参照して基準輝度レベルを求める。輝度レベル計算部20は、基準中央値が輝度の中央値の欄に含まれている輝度レベルを、基準輝度レベルとする。例えば、Me1=105だとすると、輝度レベル計算部20は、バックライト21の輝度レベルを「3」に決定する。図5は、輝度レベルの求め方を説明する図である。
【0031】
(4)輝度レベル計算部20は、輝度レベル取得部の求めに応じて、基準輝度レベルをCPU14に通知する。また、LED制御部13は、基準輝度レベルにバックライト21を設定する。
【0032】
(5)輝度レベル取得部は、取得した輝度レベルを判定部に通知する。判定部は、不揮発メモリ16を参照して、不揮発メモリ16に既に基準輝度レベルが記録されているかを確認する。基準装置Aは、基準輝度レベルを不揮発メモリ16に記憶していない。すると、判定部は、基準装置の基準輝度レベルが通知されたと判定して、基準輝度レベルをインタフェース18に出力する。
【0033】
(6)インタフェース18は、適宜変換して基準輝度レベルの値を、コンピュータ40に出力する。
【0034】
次に、対象装置B〜Dのバックライト輝度レベルを求め、基準輝度レベルと比較する。なお、ここでは、一例として、表示障害の有無が確認される対象装置が3台である場合について説明しているが、任意の数の対象装置を基準装置と比較することができる。まず、対象装置Bで処理が行われた場合について説明する。
【0035】
(7)コンピュータ40に接続している装置が基準装置Aから対象装置Bに変更されると、コンピュータ40は、対象装置Bの不揮発メモリ16に基準輝度レベルを書き込む。
【0036】
(8)対象装置Bの表示指示部は、不揮発メモリ16に記憶している画像データをLCD制御部12に出力する。LCD制御部12は、入力された画像データをLCD11に表示すると、対象装置Bに備えられたLCD11は、図3(b)に示すように表示する。
【0037】
(9)輝度レベル計算部20は、手順(2)と同様に、輝度の中央値を求める。対象装置BのLCD11での輝度の分布を示すヒストグラムは、図3(e)のとおりであるとすると、累積分布は、図4のLBのようになり、輝度の中央値はMe2となる。
【0038】
(10)輝度レベル計算部20は、Me2に対応するバックライト輝度レベルを算出する。例えば、Me2=80だとすると、図5に示すように、輝度レベル計算部20は、バックライト輝度レベルを「1」に決定する。
【0039】
(11)手順(4)と同様に、対象装置Bのバックライト21が設定され、バックライトの輝度レベルがCPU14に通知される。
【0040】
(12)判定部は、バックライト輝度レベルが通知されると、不揮発メモリ16を参照して、基準輝度レベルを取得し、バックライト輝度レベルと比較する。すると、基準輝度レベルは「3」であるのに対して、対象装置Bのバックライト輝度レベルは「1」であるので、判定部は、対象装置Bに表示障害が発生していると判定する。
【0041】
(13)判定部は、判定結果をLED制御部13とインタフェース18に出力する。対象装置Bに表示障害が発生していることが通知されると、LED制御部13は、例えば、赤色にRGBLEDを点灯させるなど、表示障害の発生を外部に通知する。インタフェース18は、対象装置Bに表示障害が発生していることを出力ログとしてコンピュータ40に出力する。
【0042】
対象装置Cで表示障害の検出が行われた場合は、以下のようになる。
(7c)対象装置Cについても同様に、手順(7)〜(9)の処理が行われる。対象装置Cに画像データが出力されると、LCD11の表示は図3(c)のようになったとする。この場合の輝度ヒストグラムは、図3(f)のとおりであり、累積分布は、図4のLCのようになる。従って、輝度の中央値はMe3となる。
【0043】
(8c)輝度レベル計算部20は、Me3に対応するバックライト輝度レベルを算出する。例えば、Me3=150だとすると、図5に示すように、輝度レベル計算部20は、バックライト輝度レベルを「6」に決定する。その後、手順(11)〜(13)に示したように、判定部による判定と判定結果の出力が行われる。
【0044】
対象装置Dについても同様に、手順(7)〜(13)の処理が行われる。対象装置Dでは、手順(8)で図3(a)に示す画像が表示されているので、ヒストグラムは図3(d)、累積分布は図4のLAのとおりになる。従って、中央値はMe1であり、得られるバックライト輝度レベルは、図5のグラフに示すように「3」となる。すると、判定部は、対象装置Dのバックライト輝度レベルと基準輝度レベルが一致していることを検出し、対象装置Dには表示障害がないと判定する。判定部から判定結果を受け取ると、LED制御部13は、例えば、RGBLEDを青色に点灯させるなど、表示障害がないことを外部に通知する。また、インタフェース18は、適宜、出力ログをコンピュータ40に出力する。
【0045】
ここでは、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが同じであるときに、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが一致したとみなしているが、これは一例である。例えば、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め定められた閾値よりも小さいときは、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルが一致したとみなすこともできる。すなわち、判定部は、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め定められた閾値よりも小さいときは、表示障害がないと判定することもできる。なお、閾値は、バックライト21に設定される可能性がある輝度レベルのレベル数などの実装上の条件に応じて任意に変更することができる。
【0046】
図6は、第1の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。この例では、判定部は、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め定められた閾値よりも小さいときに、表示障害がないと判定する。図6のステップS1〜S3は基準装置の動作、ステップS4はコンピュータ40の動作であり、ステップS5〜S10は対象装置の動作である。
【0047】
まず、基準装置のLCD11に画像データが表示されると、輝度レベル計算部20は、基準中央値を求める(ステップS1、S2)。輝度レベル計算部20は、基準中央値を用いて輝度レベルテーブル22を参照し、基準輝度レベルを求める(ステップS3)。基準装置は基準輝度レベルをコンピュータ40に出力し、コンピュータ40は基準輝度レベルを対象装置に通知する(ステップS4)。次に、対象装置のLCD11に画像データが表示されると、対象装置の輝度レベル計算部20は輝度の中央値を求める(ステップS5、S6)。さらに、対象装置の輝度レベル計算部20は、輝度レベルテーブル22を参照してバックライト輝度レベルを求める(ステップS7)。判定部は、予め定められた閾値を不揮発メモリ16から取得し、バックライト輝度レベルと基準輝度レベルの差を閾値と比較する(ステップS8)。判定部は、バックライト輝度レベルと基準輝度レベルの差が閾値よりも小さい場合、対象装置に表示障害が発生していないと判定する(ステップS9)。一方、バックライト輝度レベルと基準輝度レベルの差が閾値以上である場合、判定部は、対象装置に表示障害が発生していると判定する(ステップS10)。
【0048】
以上のように、バックライトの輝度レベルを基準装置と対象装置の間で比較することにより、画像データの表示結果が基準装置と異なる対象装置を検出することができる。対象装置で画像データの表示結果が基準装置と異なる場合、対象装置にハードウェア上の障害が発生していることがある。対象装置のハードウェア上の障害には、例えば、LCD11の差動シリアルラインの断線、配置ずれ、インタフェース部分信号線の断線等などが含まれる。また、対象装置が折りたたみ式の携帯電話端末の場合には、折りたたみに用いられるヒンジフレキ部分での信号線の断線により表示障害が発生する可能性もある。
【0049】
例えば、インタフェース部分の信号線が断線している場合の表示の異常について述べる。CPU14やLCD制御部12からLCD11へ画像データを出力する際に用いられるインタフェースには、RGBインタフェースやシリアルインタフェースなどが考えられる。RGBインタフェースでデータが入力されるLCD11の場合、例えば、赤、緑、青の各色について8ビットずつの信号線を用いて画像データが入力される。この信号線の一部が断線していた場合、画像データとしては断線した部分のビットに対応するデータが異常値を示す。このため、本来は図3(a)のように表示される画像データが図3(b)に示すように表示され、前述の対象装置Bのような表示となる。一方、シリアルインタフェースを介して画像データがLCD11に入力される場合に、シリアルインタフェースに断線があると、LCD11は画像データを受け取ることができない。このため、シリアルインタフェースが断線したLCD11では、図3(c)に示したように、CPU14から出力された画像データとは異なるデータが表示される。複数のチャネルのシリアルインタフェースを併用する場合であっても、1つのインタフェースが断線すると、失われるデータ量が多いため、LCD11の表示はCPU14から入力された画像データとは異なる。
【0050】
このように、基準装置とは異なる画像が表示されているLCD11では、ハードウェア上の障害が発生している可能性がある。表示されている画像が基準装置に表示される画像と異なる対象装置では、前述のとおり、LCD11の画素の輝度の分布が異なるため、画素の輝度のヒストグラムや中央値も、基準装置とは異なる。従って、本実施形態で述べた方法により、対象装置のハードウェア上の障害によって発生している表示障害を検出することができる。
【0051】
本実施形態にかかる方法では、輝度レベル計算部20で計算されたバックライト輝度レベルに基づいて表示障害の有無を検出する。すなわち、対象装置は、対象装置に発生している表示障害を検出するための装置として機能する。従って、試験用に新たな他の装置を設置する手間やコストをかけずに、対象装置に発生している表示障害を検出することができる。さらに、CCDカメラなどの外部装置を用いた場合は、基準装置と対象装置に表示した画像をCCDカメラで撮像して得られた画像を解析する。そのため、解析結果は、撮像場所周辺の明るさ、撮像位置や撮像角度のずれ、ごみなどの異物の写りこみの影響を受ける可能性がある。一方、本実施形態に係る方法では、対象装置内で障害を検出するため、検出結果は対象装置の周辺の明るさや異物存在などの対象装置の外部の条件の変化の影響を受けないという利点もある。
【0052】
ここで、外部装置を用いずに表示障害を検出するために、LCD11のヒストグラムをLCD11からCPU14に出力することも考えられるが、この場合には、ヒストグラムを出力するためのデータ線が新たに携帯電話端末10に追加される。従って、携帯電話端末10の設計変更が行われ、設計変更に伴う新たなノイズ対策も行われることになる。また、これらの設計変更やノイズ対策を行うときには、携帯電話端末10の機構的な制約も受ける。
【0053】
一方、本実施形態では、輝度レベル計算部20で計算されたバックライト輝度レベルがCPU14に出力されるが、このときに、輝度レベル計算部20は、CPU14からLCD制御部12に向けた制御信号を出力する配線を用いる。また、輝度レベル計算部20は、適宜、LCD制御部12とLED制御部13を結ぶ制御用インタフェースとLED制御部13とCPU14を結ぶ制御用インタフェースを用いて、バックライト輝度レベルをCPU14に出力することもできる。つまり、いずれの方法であっても、本実施形態に係る方法を用いるときに、携帯電話端末10に新たな配線が加えられるなどの、携帯電話端末10の設計変更が行われることは無い。従って、携帯電話端末10の設計変更や設計変更に起因するノイズ対策のための手間やコストが発生しない。
【0054】
<第2の実施形態>
第1の実施形態により、ハードウェア上の障害の検出が行われたが、第2の実施形態では、携帯電話端末10に搭載されるソフトウェアの検証が行われる。以下、検証の対象となるソフトウェアを「対象ソフトウェア」と記載する。対象ソフトウェアは、LCD11に第1および第2の画像データを表示させることができる。対象ソフトウェアは、第1の画像データがLCD11に表示されている間に、出荷後の携帯電話端末10がユーザによって操作されると、LCD11に第2の画像データを表示させるように設計されているものとする。
【0055】
第2の実施形態でも、基準装置と対象装置のいずれも図1を参照しながら説明した装置構成とすることができるが、ここでは、試験プログラム30は、表示指示モジュール31、輝度レベル取得モジュール32、判定モジュール33の他に、イベント発生モジュール34と検証モジュール35を備えるものとする。ここで、イベント発生部は、出荷後の携帯電話端末10へのユーザの操作によって発生する操作イベントを発生させる。なお、輝度レベルの求め方は、基準装置と対象装置のいずれでも、第1の実施形態で述べた方法と同様である。また、表示障害の検出方法も、第1の実施形態で説明した方法と同様である。第2の実施形態においても、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が予め決められた閾値より小さいときに、両者は一致しているとみなされるものとする。
【0056】
第2の実施形態では、基準装置は、不揮発メモリ16に第1の画像データと第2の画像データを備えている。一方、対象装置は、不揮発メモリ16に、携帯電話端末10で動作する対象ソフトウェアが格納されている。
【0057】
第2の実施形態では、基準装置で第1の画像データを表示させたときの第1の基準輝度レベル、および、第2の画像データを表示させたときの第2の基準輝度レベルが求められる。さらに、対象装置に第1の画像データを、不揮発メモリ16に格納された対象ソフトウェアによって表示しておき、第1のバックライト輝度レベルを求める。その後、対象装置のイベント発生部が操作イベントを発生させることにより画像データが変更された後に、再度、対象装置の第2のバックライト輝度レベルを求める。対象装置と対象ソフトウェアのいずれにも障害が発生していない場合には、対象装置に起因する表示障害は発生せず、また、第1の画像データの後に行われた操作によって第2の画像データが表示される。従って、対象装置と対象ソフトウェアのいずれにも障害が発生していない場合には、第1の基準輝度レベルと第1のバックライト輝度レベルは一致しているとみなされ、対象装置に表示障害が検出されない。さらに、第2の基準輝度レベルと第2のバックライト輝度レベルも一致しているとみなされ、対象装置に表示障害が検出されない。一方、対象ソフトウェアに障害があるが、対象装置のハードウェアには障害が発生していない場合、第1の基準輝度レベルと第1のバックライト輝度レベルは一致しているとみなされる。しかし、第2の基準輝度レベルと第2のバックライト輝度レベルは一致しているとみなされず、表示障害が検出される。
【0058】
図7は、携帯電話端末10の操作による画面表示の変化の例を示す図である。図7を参照しながら、対象装置E、Fに対して第2の実施形態に係る障害検出を行う場合について説明する。ここでは、図7(a)の画像データを第1の画像データ、図7(b)の画像データを第2の画像データとする。また、対象ソフトウェアは、第1の画像データが表示されているときに、「MENU」ボタンを押下すと第2の画像データが表示されるように設計されているものとする。
【0059】
(1)基準装置に図7(a)の画像データを表示させる。基準装置の表示指示部は、不揮発メモリ16から第1の画像データを読み出してLCD11に表示させる。基準装置の輝度レベル取得部は、輝度レベル計算部20から、第1の基準輝度レベルを取得する。
【0060】
(2)判定部は、第1の基準輝度レベルを、輝度レベル取得部から受け取って、インタフェース18に出力する。インタフェース18は、コンピュータ40に第1の輝度レベルを出力する。
【0061】
(3)基準装置の表示指示部は、不揮発メモリ16から第2の画像データを読み出してLCD11に表示させる。基準装置のLCD11には図7(b)の画像データが表示される。基準装置の輝度レベル取得部は、輝度レベル計算部20から、第2の基準輝度レベルを取得する。
【0062】
(4)手順(2)と同様に、コンピュータ40は、インタフェース18を介して判定部から第2の基準輝度レベルを受け取る。
【0063】
(5)コンピュータ40を対象装置Eに接続して、第1および第2の基準輝度レベルを対象装置Eの不揮発メモリ16に記録する。
【0064】
(6)対象装置Eの表示指示部は、不揮発メモリ16に記録されている対象ソフトウェアを実行して第1の画像データを、LCD11に表示させる。さらに、輝度レベル取得部は、対象装置Eに第1の画像データが表示されたときのバックライト輝度レベル(第1のバックライト輝度レベル)を、輝度レベル計算部20から取得する。表示指示部は、判定部に第1のバックライト輝度レベルを通知する。
【0065】
(7)対象装置Eの判定部は、不揮発メモリ16から第1の基準輝度レベルを取得し、第1のバックライト輝度レベルと比較して、表示障害の有無を判定する。ここでは、表示障害が無かったものとする。
【0066】
(8)判定部は、表示障害が無いことをイベント発生部に出力する。イベント発生部は、判定結果をRAM15に記憶する。また、イベント発生部は、「MENU」ボタンが押下された場合に行われる処理を、対象ソフトウェアに要求する。
【0067】
(9)対象ソフトウェアに基づいて、CPU14は、イベント発生部から要求された処理を行い、LCD11に表示する画像データを、LCD制御部12に出力する。LCD11は、LCD制御部12の制御に従って、入力された画像データを表示する。ここでは、対象装置EのLCD11は、図7(c)に示す画像を表示したものとする。
【0068】
(10)輝度レベル取得部は、図7(c)の画像データが表示されたときの輝度レベルを取得する。判定部は、輝度レベル取得部から、図7(c)の画像データが表示されたときのバックライト輝度レベル(第2のバックライト輝度レベル)を取得する。
【0069】
(11)判定部は、不揮発メモリ16から第2の基準輝度レベルを取得し、第2のバックライト輝度レベルと比較する。ここでは、第2の基準輝度レベルと第2のバックライト輝度レベルの比較により、表示障害があると判定されたとする。
【0070】
(12)判定部は、比較結果をイベント発生部に出力すると、イベント発生部は、判定結果をRAM15に記憶する。イベント発生部は、さらに発生させるイベントが指定されていない場合は、その旨を検証モジュール35に通知する。なお、イベント発生部は、予め発生させるイベントの数や種類を記憶しているか、不揮発メモリ16から読み出しているものとする。
【0071】
(13)検証部は、RAM15に通知されている判定結果を読み出す。ここでは、手順(8)では異常が検出されなかったが、(12)は異常が検出されている。検証部は、第1の基準輝度レベルと第1のバックライト輝度レベルを用いた判定では、表示異常が確認されていないので、表示装置Eには表示障害の原因は無く、対象ソフトウェアに表示障害の原因があると判断する。検証部は、判断結果を、LED制御部13とインタフェース18に出力する。LED制御部13やインタフェース18は、第1の実施形態で述べたように、判断結果をLED17やコンピュータ40に出力する。
【0072】
次に、対象装置Fでの表示異常の検出について述べる。
(5f)次に、コンピュータ40を対象装置Fに接続して、対象装置Fの試験を行う。手順(5)〜(8)と同様に処理が行われる。
【0073】
(6f)対象装置FのCPU14は、イベント発生部から要求された処理を行うことにより、図7(b)に示す画像データをLCD11に表示したものとする。すると、輝度レベル取得部は、図7(b)の画像データが表示されたときの輝度レベルを取得する。判定部は、輝度レベル取得部から、図7(b)の画像データが表示されたときのバックライト輝度レベル(対象装置Fでの第2のバックライト輝度レベル)を取得する。
【0074】
(7f)判定部は、不揮発メモリ16から第2の基準輝度レベルを取得し、第2のバックライト輝度レベルと比較する。ここでは、対象装置Fの操作により、図7(b)に示す画面データが表示されている。従って、対象装置Fでは、第2の基準輝度レベルと第2のバックライト輝度レベルが一致し、表示障害がないと判定されたとする。
【0075】
(8f)手順(12)で述べたように、判定部から出力された結果がRAM15に記憶され、検証部は、RAM15から判定結果を読み出して比較する。対象装置Fでは、判定結果のいずれでも障害が発生していないと判定されている。そこで、検証部は、対象ソフトウェアと、対象装置Fのいずれにも、表示障害が無いと判断して、判断結果を、LED制御部13とインタフェース18に出力する。LED制御部13やインタフェース18は、判断結果をLED17やコンピュータ40に出力する。
【0076】
このように、対象装置の操作によって表示画像が第1の画像データから第2の画像データに変動するかを確認することにより、第2の実施形態では、ソフトウェアの動作確認が行われる。なお、上記の具体例では、2回の判定結果を比較しているが、検証部の判断に用いられる判定結果は任意の数とすることができる。
【0077】
図8は、第2の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートは、対象ソフトウェアがN種類の画像を表示することができる場合についての検査例を示している。この例では、基準装置はnという変数、対象装置はmという変数を用いて動作する。変数nは、基準装置が算出する基準輝度レベルの数の計数に用いられる。変数mは、対象装置で基準輝度レベルとバックライト輝度レベルとの差を閾値と比較して得られた判定結果の数の計数に用いられる。なお、n、m、Nはいずれも1以上の整数であるものとする。
【0078】
基準装置は、n=1に設定する(ステップS21)。輝度レベル計算部20は、LCD11に第nの画像データが表示されたときの基準輝度レベル(第nの基準輝度レベル)を求め、輝度レベル取得部に通知する(ステップS22)。輝度レベル取得部が第nの基準輝度レベルを取得すると、基準装置は、nを1だけインクリメントして、Nと比較し、nがNより大きくなるまでステップS22〜S24を繰り返す(ステップS23、S24)。基準装置は、第1〜第Nの基準輝度レベルを求めると、得られた値をコンピュータ40に出力する。コンピュータ40は、第1〜第Nの基準輝度レベルを対象装置に通知する(ステップS25)。
【0079】
対象装置は、m=1に設定してから第1の画像データを表示し、第1の画像データが表示されたときの第1のバックライト輝度レベルを求める(ステップS26、S27)。ここで、対象装置は、対象ソフトウェアを用いて第1の画像データを表示する。次に、対象装置の判定部は、第1のバックライト輝度レベルと第1の基準輝度レベルの差を、予め定められた閾値と比較することにより、表示異常が発生しているかを判定する(ステップS28)。第1のバックライト輝度レベルと第1の基準輝度レベルの差が閾値以上の場合、対象装置の判定部は、対象装置に表示障害が発生していると判断し、処理を終了させる(ステップS29)。一方、第1のバックライト輝度レベルと第1の基準輝度レベルの差が閾値未満の場合、対象装置の判定部は、対象装置に表示障害が発生していないことをイベント発生部に通知し、イベント発生部は、mを1だけインクリメントする(ステップS29、S30)。イベント発生部は操作イベントを発生させ、輝度レベル計算部20は、操作イベントが行われた後のバックライト輝度レベル(第mのバックライト輝度レベル)を計算する(ステップS31)。判定部は、第mのバックライト輝度レベルと第mの基準輝度レベルの差を閾値と比較することにより、異常が発生しているかを判定し、判定結果をRAM15に記録する(ステップS32)。対象装置は、mの値をNと比較する(ステップS33)。mがN以下の場合、対象装置は、ステップS30〜S33を繰り返す。
【0080】
一方、mがNより大きい場合、検証部は、第2〜第Nのバックライト輝度レベルの値を用いて行われた判定の結果をRAM15から取得し、異常が検出された判定があったかを確認する(ステップS34)。異常が検出された判定が無い場合、検証部は、対象ソフトウェアに障害が無いと判断する(ステップS35)。異常が検出された判定がある場合、検証部は対象ソフトウェアに障害が有ると判断する(ステップS36)。判断結果は、LED17やコンピュータ40に出力される。
【0081】
なお、図8の例では、N種類の基準輝度レベルを用いて対象装置でN回の判定が行われているが、対象装置の判定はN回以上とするなどの変更をすることもできる。
【0082】
これまで、オペレータが対象ソフトウェアを携帯電話端末10上で動作させて、LCD11の表示を目視で確認することにより、ソフトウェアのバグが発見されていた。そのため、例えば、メモリリーク試験などのように連続で同じ操作を繰り返す場合は、手間とコストがかかってしまっていた。一方、本実施形態を用いると、対象ソフトウェアの動作確認を簡便に行うことができる。
【0083】
<第3の実施形態>
第3の実施形態では、不揮発メモリ16に複数の輝度レベルテーブル22が記録されているときに、輝度レベル計算部20が使用する輝度レベルテーブル22を選択することができる。以下の説明では、一例として、図2(a)〜(c)の3つの輝度レベルテーブル22を記憶している携帯電話端末10の場合について述べる。なお、以下の説明では、図2(a)〜(c)の輝度レベルテーブルの識別子は、a〜cであるものとする。
【0084】
第3の実施形態で用いられる試験プログラム30は、表示指示モジュール31、輝度レベル取得モジュール32、判定モジュール33の他に、テーブル選択モジュール36を備える。テーブル選択モジュール36をCPU14が実行することにより、テーブル選択機能が実現される。テーブル選択部は、選択テーブルを用いて輝度レベルテーブル22を選択する。
【0085】
図9は、選択テーブルの一例を示す図である。ここで、選択テーブルは、不揮発メモリ16に格納されているものとする。選択テーブルは、輝度レベルテーブル22の識別子と、それぞれの輝度レベルテーブル22でバックライト輝度レベルの変動が大きい輝度の範囲を示す情報が記録されている。例えば、輝度レベルが1〜6の輝度レベルテーブル22では、輝度レベル2〜5に入る輝度の範囲を、バックライト輝度レベルの変動が大きい輝度の範囲とすることができる。また、バックライト輝度レベルの変動が大きい輝度の範囲を示すデータとして、例えば、図9に示しているように、ある輝度レベルのときの輝度の範囲を、輝度レベルテーブル22の識別子と対にして記録することもできる。なお、選択テーブルには、任意の数の輝度レベルテーブル22に関する情報を記録することができる。さらに、輝度レベルテーブル22の識別子や輝度の範囲以外の情報も選択テーブルに加えることができる。
【0086】
第3の実施形態では、まず、基準装置が以下の処理を行う。
(1)第1の実施形態で図3を参照しながら述べた手順(1)、(2)で述べた操作により、基準中央値が求められる。
【0087】
(2)輝度レベル計算部20は、CPU14に基準中央値を通知する。
(3)基準装置のテーブル選択部は、選択テーブルを参照して、基準中央値がバックライト輝度レベルの変動の大きい範囲に含まれる輝度レベルテーブル22を選択する。例えば、基準中央値が175である場合、テーブル選択部は、識別子「b」に対応する輝度レベルテーブル22を輝度レベル計算部20が使用する輝度レベルテーブル22に決定する。さらに、テーブル選択部は、決定した輝度レベルテーブルを輝度レベル計算部20に通知する。
【0088】
(4)輝度レベル計算部20は、図2(b)に示した輝度レベルテーブル22を用いて基準輝度レベルを求める。輝度レベルの求め方は、図5を参照しながら述べたとおりである。
【0089】
(5)輝度レベル計算部20は、輝度レベル取得部の求めに応じて、バックライトの輝度レベルをCPU14に通知する。判定部は、基準輝度レベルをインタフェース18に出力する。さらに、テーブル選択部は、輝度レベルの決定に用いられた輝度レベルテーブル22の識別子をインタフェース18に出力する。
【0090】
(6)インタフェース18は、適宜変換して基準輝度レベルの値と輝度レベルテーブル22の識別子を、コンピュータ40に出力する。
なお、手順(4)で、テーブル選択部は、選択テーブルに記録されている輝度の範囲から、基準輝度レベルが一意に求められる場合には、テーブル選択部は、基準輝度レベルも輝度レベル計算部20に通知することができる。例えば、図9の選択テーブルでは、輝度レベル3の輝度が記録されており、テーブル選択部は、基準中央値が輝度レベル3に入る輝度レベルテーブル22を選択している。従って、テーブル選択部は、基準輝度レベルが輝度レベル3に入ることを認識しているので、輝度レベル計算部20に、基準輝度レベルが3となる旨を通知することができる。この場合、手順(5)では、テーブル選択部が直接、輝度レベル取得部に輝度レベルを通知できる。
【0091】
次に、対象装置では、以下の処理が行われる。
(7)コンピュータ40は、対象装置Bの不揮発メモリ16に基準輝度レベルと輝度レベルテーブル22の識別子を書き込む。
【0092】
(8)対象装置の表示指示部は、不揮発メモリ16に記憶している画像データをLCD制御部12に出力する。
【0093】
(9)対象装置の輝度レベル計算部20は、表示された画像に応じて輝度の中央値を求める。さらに、輝度レベル計算部20は、不揮発メモリ16に書き込まれている識別子に対応する輝度レベルテーブル22を不揮発メモリ16から読み出して、バックライト輝度レベルを求める。この例では、識別子「b」に対応する輝度レベルテーブル22を用いてバックライト輝度レベルが求められる。
【0094】
(10)輝度レベル計算部20は、バックライト輝度レベルを、輝度レベル取得部を介して判定部に通知する。
【0095】
(11)判定部は、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルを比較して、対象装置に表示障害が発生しているかを判定する。判定方法は、第1の実施形態で述べた方法と同様である。
【0096】
このように、基準装置で画像データを表示したときの輝度レベルに基づいて輝度レベルテーブル22を使い分けることができる。このように、画像データに応じて輝度レベルテーブル22を変更することにより、判定結果の信頼性を向上することができる。図10は、複数の輝度レベルテーブル22での輝度レベルの違いを説明する図である。図10(a)のように、基準装置で画像データを表示したときの輝度の分布が高い領域に集中している場合、基準中央値は、図(b)に示すように高い値となる。基準中央値が例えば、175などであるときに図2(a)に示す輝度レベルテーブル22を使用すると、図10(c)に示すように輝度の中央値は輝度レベル6になる。すると、対象装置の輝度の中央値が基準中央値に比べて50以上低くなるまで輝度レベルは変化しない。また、対象装置の輝度の中央値が基準中央値よりも高くなっても、輝度レベルは6のまま変化しない。従って、基準中央値が175程度に高い画像データを用いて表示障害が発生しているかを確認するときには、図2(a)に示す輝度レベルテーブル22では、信頼性の高い判定結果は得られない。一方、基準中央値が175のときに、図2(b)に示す輝度レベルテーブル22を用いると、図10(d)に示すように、基準中央値が輝度レベル3の領域に入る。また、対象装置で得られた輝度の中央値が基準中央値から6以上ずれると輝度レベルが変化する。従って、基準輝度レベルに応じて輝度レベルテーブル22を変更することによって、表示障害の検出精度を向上することができる。
【0097】
一方、基準装置で画像データを表示したときの輝度の分布が輝度の低い領域に集中している場合、基準中央値も低い値になる。従って、例えば、基準中央値が65程度の場合に図2(c)の輝度レベルテーブル22から求められた輝度レベルに基づいた判定結果は、図2(a)の輝度レベルテーブル22により求められた輝度レベルに基づく判定結果に比べて信頼性が高くなる。
【0098】
図11は、第3の実施形態に係る表示障害の検出方法の一例を示すフローチャートである。基準装置のLCD11に画像データが表示されると、基準装置の輝度レベル計算部20は、基準中央値を求める(ステップS41、S42)。基準装置のテーブル選択部は、基準中央値を用いて、輝度レベル計算部20が使用する輝度レベルテーブル22を選択する(ステップS43)。輝度レベル計算部20は、テーブル選択部が選択した輝度レベルテーブル22を用いて基準輝度レベルを求める(ステップS44)。基準装置は、選択された輝度レベルテーブル22を識別する識別子と基準輝度レベルを、コンピュータ40に出力し、コンピュータ40は、これらの値を対象装置に通知する(ステップS45)。
【0099】
対象装置は、画像データを表示したときのバックライト輝度レベルを、通知された識別子で識別される輝度レベルテーブル22を用いて求める(ステップS46、S47)。基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が閾値未満のとき、判定部は、対象装置に表示障害が無いと判定する(ステップS48、S49)。一方、基準輝度レベルとバックライト輝度レベルの差が閾値以上のとき、判定部は、対象装置に表示障害が発生していると判定する(ステップS48、S50)。
【0100】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、様々に変形可能である。以下にその例をいくつか述べる。
【0101】
以上の説明では、基準輝度レベルは、コンピュータ40から不揮発メモリ16に書き込まれると記載したが、試験プログラム30が、基準装置のLCD11に画像データを表示したときのバックライト21の輝度レベルを保持しても良い。この場合は、基準輝度レベルが求められた後に、適宜、オペレータが試験プログラム30を作成し、コンピュータ40などを介して不揮発メモリ16に試験プログラム30を記録する。
【0102】
以上の説明では、6段階の輝度レベルを用いる輝度レベルテーブル22を用いる場合について述べたが、任意の数の輝度レベルを定義した輝度レベルテーブル22を用いることができる。さらに、図2(a)〜(c)に記載した輝度レベルテーブルは、輝度が10変わるごとに輝度レベルが変化するが、1つの輝度レベルに含まれる輝度の範囲は任意に変更できる。1つの輝度レベルに含まれる輝度の範囲を小さくすることにより、表示障害の検出精度を高めることができる。
【0103】
また、輝度レベルテーブル22は、輝度の中央値と輝度レベルを対応付けていたが、例えば、階調の中央値と輝度レベルを対応付けるように変更することもできる。かかる場合には、ヒストグラムや累積分布を画素の階調の関数として求めて、階調の中央値に基づいて輝度レベルを決定する。なお、輝度や階調の中央値に限らず、例えば、輝度や階調の平均値に基づいて輝度レベルを決定することもできる。
【0104】
さらに、輝度レベルの代わりに、バックライト21の輝度に影響を及ぼす任意の値を、基準装置と対象装置の間で比較するように変形することもできる。例えば、バックライト21に供給される電流量を、基準装置と対象装置の間で比較することができる。
【0105】
なお、第1〜第3の実施形態を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0106】
10 携帯電話端末
11 LCD
12 LCD制御部
13 LED制御部
14 CPU
15 RAM
16 不揮発メモリ
17 LED
18 インタフェース
20 輝度レベル計算部
21 バックライト
22 輝度レベルテーブル
30 試験プログラム
31 表示指示モジュール
32 輝度レベル取得モジュール
33 判定モジュール
34 イベント発生モジュール
35 検証モジュール
36 テーブル選択モジュール
40 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ディスプレイに表示障害が発生しているかが判定される対象装置は、前記表示障害が発生していないことが確認された基準装置にデータを表示させたときの、前記基準装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表す基準輝度レベルを取得し、
前記対象装置は、前記対象装置で前記データを表示させるときに前記対象装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表すバックライト輝度レベルを求め、
前記対象装置は、前記バックライト輝度レベルと前記基準輝度レベルの差が閾値よりも小さい場合、前記対象装置に前記表示障害が発生していないと判定する
ことを特徴とする表示障害の検出方法。
【請求項2】
前記基準輝度レベルは、前記データを表示している前記基準装置が備える液晶ディスプレイに含まれている画素の輝度の中央値を表す基準中央値、ならびに、前記基準装置に備えられたバックライトの輝度レベルと前記基準中央値とを対応付けた輝度レベルテーブルを用いて求められ、
前記対象装置は、前記対象装置に前記データを表示させたときに前記対象装置が備える液晶ディスプレイに含まれている画素の輝度の中央値を表す対象装置中央値を求め、
前記対象装置は、前記輝度レベルテーブルで、前記対象装置中央値と同じ大きさの前記基準中央値に対応付けられた輝度レベルを、前記バックライト輝度レベルとする
ことを特徴とする請求項1に記載の表示障害の検出方法。
【請求項3】
前記対象装置は、前記対象装置の操作により、前記対象装置に表示するデータを第1のデータから第2のデータへ変更するように作成されたソフトウェアを記憶し、
前記基準装置で前記第1のデータを表示させたときの第1の基準輝度レベルを取得し、
前記基準装置で前記第2のデータを表示させたときの第2の基準輝度レベルを取得し、
前記第1のデータを表示している前記対象装置から得られた第1のバックライト輝度レベルと前記第1の基準輝度レベルを比較した結果から、前記対象装置に前記表示障害が発生していないと判定した場合、前記第1のデータを表示している対象装置に前記操作を行った後のバックライト輝度レベルを表す第2のバックライト輝度レベルを求め、
前記第2のバックライト輝度レベルを前記第2の基準輝度レベルと比較した結果に基づいて、前記対象装置に前記表示障害が発生していると判定した場合は、前記ソフトウェアに前記表示障害の原因があると判断する
ことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の表示障害の検出方法。
【請求項4】
前記基準中央値が第1の範囲内の値をとるときに前記基準中央値が大きくなる程、前記基準装置に備えられたバックライトの輝度レベルが大きくなるように設定された第1の輝度レベルテーブルと、前記基準中央値が第2の範囲内の値をとるときに前記基準中央値が大きくなる程、前記基準装置に備えられたバックライトの輝度レベルが大きくなるように設定された第2の輝度レベルテーブルを、前記基準装置が記憶し、
前記基準装置は、前記基準輝度レベルを求めるために用いられる基準中央値が前記第1の範囲に含まれている場合には前記第1の輝度レベルテーブルを用い、前記基準輝度レベルを求めるために用いられる基準中央値が前記第2の範囲に含まれている場合に前記第2の輝度レベルテーブルを用い、
前記対象装置に、前記基準装置が用いた輝度レベルテーブルと同じ輝度レベルテーブルを記憶させ、
前記対象装置は、前記基準装置が用いた輝度レベルテーブルと同じ輝度レベルテーブルを用いて前記バックライト輝度レベルを求める
ことを特徴とする請求項2もしくは3に記載の表示障害の検出方法。
【請求項5】
液晶ディスプレイの表示障害の有無が判定される対象装置を、
前記表示障害が発生していないことが確認された基準装置にデータを表示させたときの、前記基準装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表す基準輝度レベルを取得する基準輝度レベル取得手段、
前記対象装置で前記データを表示させるときに前記対象装置が備える液晶ディスプレイのバックライトに適用される輝度レベルを表すバックライト輝度レベルを計算するバックライト輝度レベル計算手段、
前記バックライト輝度レベルと前記基準輝度レベルの差が閾値よりも小さい場合、前記対象装置に前記表示障害が発生していないと判定する判定手段
として動作させることを特徴とする表示障害の検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−158684(P2011−158684A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19905(P2010−19905)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】