説明

液晶ディスプレイ用複合フィルム

【課題】 液晶ディスプレイの表示色再現範囲を拡大させる特性を有する液晶用フィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層からなり、その内層に光線吸収剤を含有し、光線波長535〜555nm、570〜590nm、600〜620nmにおける光線透過率の各平均値(それぞれT535−555、T570−590、T600−620)が下記式(1)および(2)式を同時に満足し、全光線透過率が75%以上である積層ポリエステルフィルムの両面に当該フィルム製造工程内で設けられた塗布層を有し、一方の塗布層の塗布量が0.03〜0.5g/mであり、当該塗布層上にハードコート層を有し、もう一方の塗布層の塗布量が0.001〜0.3g/mであり、当該塗布層上に拡散層を有することを特徴とする液晶用複合フィルム。
535−555−T570−590≧3% …(1)
600−620−T570−590≧3% …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ用途として好適に用いられる液晶ディスプレイ用複合フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急激に数量が伸びている液晶ディスプレイ装置は、光源からの光を視認側に集光し、かつ均一な面光源とする役割を果すバックライトユニットと、印加電圧を表示画素毎に調整し赤・緑・青の光を制御された光量表示させる液晶セル層ユニットの大きく分けて2つのユニットによって構成されている。
【0003】
このうち、バックライトユニットは赤・緑・青の波長領域に発光特性を有する蛍光体を用いた冷陰極管光源を視認側から見て側面に配置し、光を視認側に効率よく導く役割を有する導光板、視認側に導かれた光をディスプレイ面内に均一に分散する拡散フィルム、ディスプレイの側面側に向いている光を視認側に集光し、ディスプレイの輝度を向上させるプリズムフィルムによって構成される。
【0004】
一般的な液晶ディスプレイでは、導光板の上に通常、下拡散フィルムと呼称される拡散フィルムを1枚配置し、その上に2枚のプリズムフィルムをそれぞれ集光方向が縦横方向および左右方向となるよう配置し、さらにその上に通常、上拡散フィルムと呼称される拡散フィルムを1枚配置することでバックライトユニットは構成されている。
【0005】
液晶分子の応答速度が遅いことに起因し、動画表示に弱い特性を有していたこともあり、主にパーソナルコンピューター用途で使用されてきた液晶ディスプレイであるが、近年、液晶分子の開発が進み、その応答速度も改善され、動画表示を目的とする用途にも液晶ディスプレイが使用されるようになってきている。
【0006】
しかしながら液晶ディスプレイは動画表示を主目的として開発されてきたプラズマディスプレイ、CRT、有機ELディスプレイなどと比較し、表示色再現範囲が狭い欠点があり、その用途が動画表示用として用いられることが多くなったこともあり、その表示色再現範囲の拡大が求められている。
【0007】
表示色の改善の手法には特定波長に吸収を有する色素を液晶構成部材中に使用されているフィルムの上に塗設する手法も提案されている(特許文献1)が、本手法では液晶ディスプレイの製造プロセス中に、工程数を少なくとも一工程増やさねばならず、コストアップの要因となる欠点を有しており、従来の液晶ディスプレイの構成から部材点数を増やすことなく、かつ製造プロセスの工程数も増やす必要のない安価な手法による液晶ディスプレイの表示色再現範囲の拡大が求められている。
【0008】
また動画表示を主目的とする用途に使用される液晶ディスプレイは、長時間連続使用されることが多く、従来の液晶ディスプレイよりもさらに高い耐熱性が求められ、液晶構成各部材に耐久性の向上が求められている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−201376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶ディスプレイのバックライトを構成する機能フィルムとして好適に用いることのできる液晶ディスプレイ用複合フィルムを提供することであって、具体的には液晶ディスプレイの表示色再現範囲を拡大させ、かつ十分な耐熱性を有する液晶ディスプレイ用複合フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用複合フィルムを使用すれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層からなり、その内層に光線吸収剤を含有し、光線波長535〜555nm、570〜590nm、600〜620nmにおける光線透過率の各平均値(それぞれT535−555、T570−590、T600−620)が下記式(1)および(2)式を同時に満足し、全光線透過率が75%以上である積層ポリエステルフィルムの両面に当該フィルム製造工程内で設けられた塗布層を有し、一方の塗布層の塗布量が0.03〜0.5g/mであり、当該塗布層上にハードコート層を有し、もう一方の塗布層の塗布量が0.001〜0.3g/mであり、当該塗布層上に拡散層を有することを特徴とする液晶用複合フィルムに存する。
535−555−T570−590≧3% …(1)
600−620−T570−590≧3% …(2)
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明でいう積層ポリエステルフィルムとは、全ての層が口金から共溶融押出される共押出法により押し出されたものを延伸後、必要に応じて熱固定したものを指す。以下、積層ポリエステルフィルムとして3層構造のフィルムについて説明するが、本発明の積層ポリエステルフィルムはその目的を満たす限り、3層ポリエステルフィルムに限定されるものではなく、3層以上の多層であってもよい。
【0014】
本発明において使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。本発明においては、透明性、ヘーズ、機械的強度に大きな影響を与えない程度であれば主たる構成成分以外の第三成分を含有してもかまわない。
【0015】
本発明におけるポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物等公知の触媒を使用してよいが、好ましくはアンチモン化合物の量を零またはアンチモンとして100ppm以下にすることによりフィルムのくすみを低減したものが好ましい。
【0016】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、最外層とは、フィルムの露出する2面を構成する層であり、それ以外の層を内層と呼ぶ。本発明のフィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IV)は、内層、最外層いずれも通常0.52〜0.75、好ましくは0.55〜0.70、さらに好ましくは0.58〜0.67である。IV値が0.52未満では、フィルムとした際のポリエステルが持つ優れた特徴である耐熱性、機械的強度が劣る可能性がある。またIV値が0.75を超えると、ポリエステルフィルム製造時の押出工程で負荷が大きくなりすぎる傾向があり、生産性が低下する恐れがある。
【0017】
本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常9〜300μm、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは50〜188μmの範囲である。本発明のフィルムの最外層厚みは、片側のみの厚みで0.5μm以上かつ総厚みの1/4以下であることが好ましい。かかる厚みが0.5μm未満では、加工中の熱履歴等により、内層に含有されている光線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトし、生産ラインの汚染やフィルム表面の異物量の増加が見られる可能性がある。一方総厚みの1/4の厚さより厚いと光線吸収剤を含有させる層の濃度が高くなり、濁りが発生したり、デラミネーションの原因となったりする。また、フィルム巻取り性向上のため最外層に配合している滑剤粒子量が増えてヘーズ値が高くなり、フィルムの透明性が悪化する傾向がある。
【0018】
本発明の複合フィルムを構成する積層ポリエステルフィルムは、そのT535−555、T570−590、T600−620が、下記式(1)および(2)を同時に満足する必要があり、好ましくは(T535−555−T570−590)および(T600−620−T570−590)の値は5%以上である。
535−555−T570−590≧3% …(1)
600−620−T570−590≧3% …(2)
光線波長535nm〜555nm、600nm〜620nm、の領域はそれぞれ液晶ディスプレイの緑色、赤色の主発光波長にあたる一方、光線波長570nm〜590nmの領域は橙色の発光波長にあたる。橙色の発光は液晶ディスプレイの発光色度を悪化させる主要因となっている発光である。かかる各平均値の差が3.0%未満では、液晶ディスプレイのバックライトを構成する機能フィルムの基材として用いたときに液晶ディスプレイの表示色再現範囲を拡大させる効果が低い。
【0019】
また、本発明の複合フィルムを構成する積層ポリエステルフィルムは、全光線透過率の値が75%以上、好ましくは80%以上である必要がある。かかる値が75%未満では液晶ディスプレイのバックライトを構成する機能フィルムの基材として用いたときに液晶ディスプレイの輝度を低下させることとなり、液晶ディスプレイから映し出される画像が暗くなりすぎ好ましくない。
【0020】
本発明のフィルムを構成する積層ポリエステルフィルムの内層のうち少なくとも1層に光線吸収剤を含有する。含有する光線吸収剤の種類は、ポリエステルフィルム製造時の溶融工程に耐えうる耐熱性を有し、かつポリエステル中での分散性に優れるものであれば特に限定されるものではなく、具体例としては染料では、アンスラキノン系、複素環系、ペリノン系、キノリン系染料などが挙げられる。有機顔料では、フタロシアニン系、ペリノン系、イソインドリノン系、ピロール系顔料などが挙げられる。また、透明性を悪化させない範囲であれば、調色のために無機顔料も含有することもできる。これらの光線吸収剤はその吸収特性に応じて前述の光線透過率の範囲内となるよう1種以上を混合して用いられるが、通常、光線波長570nm〜590nmに吸収を有する光線吸収剤を1〜2種混合して使用する。原料ポリエステル中の含有量としては本発明の目的を満たす限り特に限定されるものではないが、0.001から10重量%の範囲が好ましい。かかる含有量が0.001重量%未満ではフィルム中の光線吸収剤の均一分散性の制御が難しくなり、また10重量%を超えると光線吸収剤の濃度が高くなり光線吸収剤の凝集などが発生しやすくなり好ましくない。また必要に応じて酸化防止剤、安定剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、増粘剤、滑剤、可塑剤などを添加してもよい。
【0021】
本発明のフィルムは、上述の積層ポリエステルフィルムの片面に拡散層を設ける。また、拡散層を設けた裏面に表面硬度向上のためハードコート層を設ける。この場合、ポリエステルフィルムは、一般的に不活性であることから接着性に乏しく、かかる拡散層およびハードコート層との接着性を向上させるために、接着性向上のための塗布層をあらかじめ設けることも必要である。
【0022】
かかる塗布層を形成する方法としては、横延伸工程前(配向結晶化完了前)にコートしてテンター内で乾燥する、いわゆるインラインコート法を採用することが好ましい。また、必要に応じ、積層フィルムの製造後にオフラインコートで各種のコートをさらに行ってもよい。このようなコートは拡散層およびハードコート層を設ける両方の面に実施する。コーティングの材料としては、オフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、本発明のようなインラインコーティング(製造工程内で塗布層を設ける)の場合は、水系または水分散系が好ましい。
【0023】
本発明において、透明性向上のため、また拡散層およびハードコート層との密着性を向上させるためにバインダー樹脂を使用することも可能である。
【0024】
本発明において使用する「バインダー樹脂」とは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものである。
【0025】
バインダー樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。拡散層およびハードコート層との接着性向上という点では、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂がより好ましく用いられる。
【0026】
架橋剤樹脂としてはメラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン系樹脂が一般に用いられるが、塗布性、耐久接着性の点でメラミン系樹脂が特に好ましい。メラミン系樹脂は、特に限定されるものではないが、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物あるいは上記のうちメラミンの一部または全部を尿素で置換した化合物を用いることができる。
【0027】
またメラミン系樹脂としては、単量体、あるいは二量体以上の多量体からなる縮合物のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。上記エーテル化に用いる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノールなどを好ましく使用することができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール型メチル化メラミン樹脂、完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などを用いることができる。その中でもメチロール化メラミン樹脂がもっとも好ましい。さらに、メラミン系架橋剤の熱硬化を促進するため、例えばp−トルエンスルホン酸などの酸性触媒を用いることもできる。
【0028】
塗布剤中におけるメラミン樹脂の配合量は、通常1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%の範囲である。架橋剤樹脂の配合量が1重量%未満の場合は、耐久接着性が十分発揮されないことがあり、耐溶剤性の改良効果が不十分となる傾向があり、50重量%を超える場合は、十分な接着性が発揮されない恐れがある。
【0029】
本発明において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させることが好ましい。塗布剤中における粒子の配合量は、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。かかる配合量が0.5重量%未満では、耐ブロッキング性が不十分となる場合があり、10重量%を超えると、フィルムの透明性を阻害し、画像の鮮明度が落ちる傾向がある。
【0030】
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、シリカが安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0031】
上記の無機粒子、有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
【0032】
また、塗布層は、帯電防止剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料などを含有してもよい。塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0033】
塗布剤の塗布方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店1979年発行「コーティング方式」に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはこれら以外の塗布装置を使用することができる。塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また表面特性をさらに改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0034】
また、かかる塗布層の塗布量は、拡散層を設ける面においては、最終的な乾燥後の重量として0.001〜0.3g/m以下、好ましくは0.005〜0.2g/mである。塗布量が0.001g/m未満の場合は、塗布層の上に設ける拡散層との接着性が十分に満たせない。一方、塗布量が0.3g/mを超える場合は、滑り性低下等の不具合を生じる。
【0035】
また、ハードコート層を設ける面の塗布層の塗布量は、最終的な乾燥後の重量として0.03〜0.5g/mであり、好ましくは0.05〜0.3g/mである。塗布量が0.03g/m未満の場合は、塗布層の上に設けるハードコート層と塗布層との界面で接着性が不足し、特に耐久試験後にその傾向が顕著となり、界面で剥離が発生する。他方、塗布量が0.5g/mを超える場合は、塗布層の乾燥が不十分であることに起因する塗膜強度の低下や滑り性低下等の不具合を生じる。
【0036】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムに拡散層を設ける際、通常バインダー樹脂にアクリル樹脂・もしくはシリコーン樹脂等からなる透明微粒子を含有させ溶剤で希釈した塗料を、塗布、乾燥して形成される。塗料には必要に応じて塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤、帯電防止剤などが含有される。
【0037】
塗料の塗布方法としては、前述の原崎勇次著、槙書店1979年発行「コーティング方式」に示されるようなリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、またはこれら以外の塗布装置を使用することができる。
【0038】
ここで使用する透明微粒子の粒径については、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmの範囲である。透明微粒子の粒径が5μm未満の場合は、1粒子当たりの光拡散機能が不足し、配合する微粒子量を増量せねばならず、粒子間の凝集に伴う拡散層の均一光拡散性が失われることがある。また透明微粒子の粒径が50μmを超える場合は、塗工プロセス中に異物等の除去の目的で設置されているフィルターの詰まりが激しくなり、頻繁なフィルター交換を実施しなければならず、生産性が落ちることがある。
【0039】
拡散層に用いられるバインダー樹脂の具体例としては、通常、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられ、透明微粒子野分散性、透明性、耐久性などの観点からポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0040】
溶剤としては、通常ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系が挙げられる。これらの溶剤は必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0041】
拡散層の厚さは、通常3〜50μm、好ましくは5〜30μmの範囲である。拡散層の厚さが3μm未満の場合は、透明微粒子の濃度が高くなり粒子間の凝集に伴う拡散層の均一光拡散性が失われることがある。また50μmを超える場合は、塗布後の乾燥が不十分となりやすく、拡散層内の残留溶剤量が増え、塗布層の強度が不十分となる恐れがある。
【0042】
拡散層を塗設後の拡散フィルムのヘーズは、通常、5〜90%の範囲であり、好ましくは、10〜80%の範囲である。ヘーズが5%未満の場合は、拡散フィルムの光拡散性に劣り、液晶ディスプレイに拡散フィルムを組み入れて使用した場合、ディスプレイ表示画面内に輝度ムラが発生してしまい、ディスプレイ表示品位に劣ることとなる。また90%を超える場合は、光源からの光の透過性に劣り、ディスプレイとしての表示輝度が悪化することとなる。
【0043】
また、本発明の複合フィルムの拡散層の裏面に形成するハードコート層の硬化成分としては、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル系、付加重合系、チオール・アクリルのハイブリッド系、カチオン重合系、カチオン重合とラジカル重合のハイブリッド系などを使用することができる。これらの中では、硬化性、耐擦傷性、表面硬度、可撓性および耐久性の観点でアクリル系の硬化成分が好ましい。
【0044】
上記のアクリル系硬化成分は、活性エネルギー線重合成分としてのアクリルオリゴマーと反応性希釈剤とを含有する。そして、必要に応じ、光重合開始剤、光増感剤、改質剤を含有する。アクリルオリゴマーとしては、代表的には、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合されたオリゴマーが挙げられる。その他のアクリルオリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、メラミン、イソシアヌール酸、環状ホスファゼン等の剛直な骨格にアクリロイル基またはメタアクリロイル基が結合したオリゴマーが挙げられる。
【0045】
反応性希釈剤は、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うとともに、それ自体が多官能性または一官能性のアクリルオリゴマーとを反応する基を有するため、塗膜の共重合成分となる。反応性希釈剤の具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2−クロロチオキサントン、アントラキノン、フェニルジスルフィド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。
【0047】
光増感剤としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール等の三級アミン系、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン系、β−チオジグリコール等のチオエーテル系などが挙げられる。改質剤としては、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、有機高分子、染料、顔料、安定剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらは、活性エネルギー線による反応を阻害しない範囲で使用され、ハードコート層の特性を用途に応じて改良することができる。ハードコート層の組成物には、塗工時の作業性向上、塗工厚さのコントロールのため、有機溶剤を配合することができる。
【0048】
ハードコート層の形成は、硬化用樹脂組成物を前記の塗布層の表面に塗布した後に活性エネルギー線を照射して架橋硬化させることにより行う。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線、α線、β線、γ線を使用することができる。活性エネルギー線の照射は、通常、塗布層側から行うが、フィルムとの密着性を高めるため、フィルム面側から行ってもよく、さらには活性エネルギー線を反射し得る反射板をフィルム面側に設けてもよい。
【0049】
ハードコート層の厚さは、通常0.5〜15μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。ハードコート層の厚さが0.5μm未満の場合は、表面硬度が不十分となることによる、ハードコート性不良が発生する場合があり、15μmを超える場合は、ハードコート層の硬化収縮が大きくなり、フィルムが硬化樹脂層側にカールすることがある。本発明においてハードコート層側の表面硬度は、通常H以上、好ましくは2H以上である。H未満では耐擦傷性が不十分である。
【0050】
本発明において、積層ポリエステル層の最外層には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合してもよい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0051】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0052】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜5μmが好ましい。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、透明性が損なわれる恐れがある。
【0053】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、通常フィルム全体の重量に対して0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0054】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0055】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤等を添加することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、液晶ディスプレイの表示色再現範囲を拡大させる特性を有し、かつ十分な耐熱性を有する液晶ディスプレイ用複合フィルムを提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0058】
(1)粘度(IV)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=1/1(重量比)の混合溶媒100mlに溶解させ、30℃で測定した。
【0059】
(2)フィルムの積層厚さ
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を光学顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本の界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値の積層厚さとした。
【0060】
(3)平均粒径(d50:μm)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CP3型を用いてストークスの抵抗則に基づく沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
【0061】
(4)光線透過率
分光光度計((島津製作所製UV3100PC)により、ハロゲンランプ光源を用いてスキャン速度を低速、サンプリングピッチを1nm、光線波長350〜800nm領域で連続的に光線透過率を測定した。光線波長535nm〜555nm、570nm〜590nm、600nm〜620nmにおける光線透過率の各平均値(それぞれT535−555、T570−590、T600−620)を算術平均にて上述の測定結果より算出した。
【0062】
(5)全光線透過率
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、全光線透過率を測定した。
【0063】
(6)塗布量
フィルムを100mm×100mmの小片10枚に切り出し、塗布量を測定する面をメチルエチルケトン/トルエン=1/1の混合有機溶剤を染み込ませた布で拭き取り、拭き取り前後の重量差から平方メートル当たりに換算し、塗布量(g/m)を算出した。
【0064】
(7)拡散層の作成
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒で平均粒径20μmのアクリル樹脂系の球形ビーズと樹脂バインダー「オプトレッツOZ1100(日立化成工業製)」をビーズ重量(対固形分濃度)150重量部となるように配合し、これをポリエステルフィルムの塗布層を設けた側に乾燥後の厚みで20μmとなるようにマイクログラビア方式で塗工、乾燥し、拡散層を形成した。
【0065】
(8)ハードコート層の作成
アクリル系ハードコード剤「紫光(日本合成化学工業製)」をトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒で希釈し、これを硬化後の厚みで3μmとなるようにリバースグラビア方式で拡散フィルムの裏面に塗工した。次に110℃1分間乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀灯により出力120W/cm、照射距離15cm、ライン速度10m/分の条件で紫外線硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0066】
(9)拡散層およびハードコート層との接着性
初期接着性の評価については拡散層・ハードコート層とも、当該層形成直後に1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットをいれ、直ちに、同一箇所について3回セロテープ(登録商標)による急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価した。また、耐熱試験後の接着性の評価については、小型環境試験機にて90℃の環境に1000時間暴露した後に、上述の急速剥離テストを実施し、剥離面積により評価した。判定基準は以下のとおりである。
【0067】
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦20
×:21≦碁盤目剥離個数
【0068】
(10)液晶ディスプレイの輝度・色度改善率
市販15インチ型カラー液晶ディスプレイ(富士通株式会社製 MODEL:VL−1540S)を分解し、そのバックライトユニットを分解して、上拡散フィルムに本発明により作成した拡散層およびハードコート層を両面に塗設した複合フィルムを組み込み、暗室内に設置した。このディスプレイから1m離れた場所にディスプレイに正対するように分光輝度放射気計(コニカミノルタセンシング株式会社製 型式:CS−1000A)を設置し、ディスプレイ全面に白色を表示したときの輝度および赤色、緑色、青色を表示したときの色度(xy色度)を測定した。赤色・緑色・青色の各色純度の改善具合を判定する基準としては、下記式によって定義される色度改善率により判断した。
【0069】
・色度改善率(%):100×(1−√((x−x+(y−y)/√((x−x+(y−y))
※1;x,y:本発明の積層ポリエステルフィルムを適用した場合の各色表示時のxy座標値
※2;x、y:市販ディスプレイの各色表示時のx、y座標値
※3;x、y:NTSC(National Television Standard Committee)"により規定されている各色のxy座標値
【0070】
(10)液晶ディスプレイ画像の視感評価
また、ディスプレイの輝度・色度に関しては動画映像をディスプレイに表示し、目視による視感評価も実施した。輝度の判断基準は以下のとおりである。
A:表示画像の明るさは十分にあり視聴に全くは問題ない
B:表示画像の明るさはやや暗く感じられるが、視聴に問題はない
C:表示画像の明るさが暗く感じられ、視聴に際し明るさの不足を感じる
【0071】
また色度の判断基準は以下のとおりである。
D:表示画像の色彩度合いは十分にあり、視聴に問題はない
E:表示画像の色彩度合いがやや悪く、視聴に際し鮮やかさの不足を感じる
【0072】
以下に実施例および比較例を示すが、これに用いたポリエステルの製造方法は次のとおりである。
【0073】
〈ポリエステルの製造〉
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.011重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた後、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0074】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)を、予め160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75のポリエステル(B)を得た。
【0075】
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.2部加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65であった。
【0076】
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、チバ・スペシャリティケミカルズ製 ORASOL Red G 1.0重量%の濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、染料マスターバッチポリエステル(E)を作成した。得られたポリエステル(D)の極限粘度は、0.60であった。
【0077】
<ポリエステル(E)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、三菱化学製ダイアレジン ブルーG 1.0重量%の濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、染料マスターバッチポリエステル(F)を作成した。得られたポリエステル(F)の極限粘度は、0.60であった。
【0078】
<ポリエステル(F)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、三菱化学製ダイアレジン レッドS 2.0重量%、同ヴァイオレッドD 1.3重量%、同イエローF 2,3重量%、同ブルーH3G 4.4重量%の各濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、染料マスターバッチポリエステル(G)を作成した。得られたポリエステル(G)の極限粘度は、0.60であった。
【0079】
また、以下の実施例、比較例で用いた配向結晶化完了前に塗布する塗布液中の各水性塗料の固形分比および内容は下記のとおりである。
<塗布液中の各水性塗料の固形分比>
水性塗料a/水性塗料b/水性塗料c/水性塗料d=47/20/30/3
【0080】
<水性塗料a>
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0081】
<水性塗料b>
メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
【0082】
<水性塗料c>
ヘキサメトキシメチルメラミン
<水性塗料d>
平均粒径65nmのシリカゾル
【0083】
実施例1:
前述のポリエステル(B)、(C)をそれぞれ92.0%、8.0%の割合で混合した混合原料をA層の原料とし、ポリエステル(A)、(D)をそれぞれ98.8%、1.2%の割合で混合した混合原料をB層の原料として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、A層を最外層(表層)、B層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度81℃で縦方向に3.4倍延伸した後、その両面に塗布液を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、140℃での冷却ゾーンを経て、横方向に2%弛緩し、厚さ100μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1521g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1490g/mであった。
【0084】
実施例2:
実施例1において、B層の原料をポリエステル(A)、(D)、(E)をそれぞれ98.7%、0.5%、0.8%で混合した混合原料としたことと、ハードコート層を設ける面の塗布液の塗布量を乾燥後の塗布量で0.05g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1495g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.0486g/mであった。
【0085】
比較例1:
実施例1において、B層の原料をポリエステル(A)をそれぞれ100.0%の単独原料とした以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1521g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1506g/mであった。
【0086】
比較例2:
実施例1において、B層の原料をポリエステル(A)、(D)をそれぞれ97.0%、3.0%で混合した混合原料とした以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1524g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1511g/mであった。
【0087】
比較例3:
実施例1において、B層の原料をポリエステル(A)、(E)をそれぞれ98.7%、1.3%で混合した混合原料とした以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1497g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1481g/mであった。
【0088】
比較例4:
実施例1において、B層の原料をポリエステル(A)、(F)をそれぞれ99.5%、0.5%で混合した混合原料とした以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1532g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1522g/mであった。
【0089】
比較例5:
実施例1において、ハードコート層を塗布する面の塗布液の塗布量を乾燥後の塗布量で0.025g/mとなるよう塗布した以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1498g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.0251g/mであった。
【0090】
比較例6:
実施例1において、ハードコート層を塗布する面の塗布液の塗布量を乾燥後の塗布量で0.6g/mとなるよう塗布した以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.1502g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.6228g/mであった。本フィルムはロール巻取り時の滑り性が悪く、巻取り後のロールからフィルムを巻き出す際、塗布層の削れ粉が確認された。
【0091】
比較例7:
実施例1において、拡散層を塗布する面の塗布液の塗布量を乾燥後の塗布量で0.0005g/mとなるよう塗布した以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.0004g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1523g/mであった。
【0092】
比較例8:
実施例1において、拡散層を塗布する面の塗布液の塗布量を乾燥後の塗布量で0.4g/mとなるよう塗布した以外は、実施例1と同様にして厚み100μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの各層の厚みは、5/90/5μmであった。また拡散層を設ける面の塗布量は0.3810g/mであり、ハードコート層を設ける面の塗布量は0.1517g/mであった。本フィルムはロール巻取り時の滑り性が悪く、巻取り後のロールからフィルムを巻き出す際、塗布層の削れ粉が確認された。
【0093】
比較例9:
ポリエステル(A)、(D)をそれぞれ98.8%、1.2%の割合で混合した混合原料を用いて、1台のベント式二軸押出機に供給して溶融押出しし、延伸および熱処理の条件は実施例1と同様にして厚み100μmの単層のフィルムを得た。得られたフィルムは厚みが100μmであり、フィルム表面に光線吸収剤が析出したフィルムであった。このため塗布層の塗布量および特性は正確に測定することができなかった。また本フィルム生産後に生産ラインの光線吸収剤による汚染が確認された。
【0094】
実施例1〜2、比較例1〜8で得られたポリエステルフィルムの特性をまとめて表1、表2、表3、表4および表5に示す。本発明の要件を満たすフィルムは、光学用としての適性が高いことがわかる。
【0095】
【表1】

【0096】
表1中の(1)式および(2)式は以下のとおりである。
(1):T535−555−T570−590
(2):T600−620−T570−590
【0097】
【表2】

【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明のフィルムは、例えば、液晶ディスプレイ用の光学フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層からなり、その内層に光線吸収剤を含有し、光線波長535〜555nm、570〜590nm、600〜620nmにおける光線透過率の各平均値(それぞれT535−555、T570−590、T600−620)が下記式(1)および(2)式を同時に満足し、全光線透過率が75%以上である積層ポリエステルフィルムの両面に当該フィルム製造工程内で設けられた塗布層を有し、一方の塗布層の塗布量が0.03〜0.5g/mであり、当該塗布層上にハードコート層を有し、もう一方の塗布層の塗布量が0.001〜0.3g/mであり、当該塗布層上に拡散層を有することを特徴とする液晶用複合フィルム。
535−555−T570−590≧3% …(1)
600−620−T570−590≧3% …(2)

【公開番号】特開2009−198827(P2009−198827A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40599(P2008−40599)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】