説明

液晶ディスプレイ

【課題】液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明は、重合性化合物と、それを製造するための方法および中間体と、光学的、電気光学的および電子的目的のため、特に、液晶(liquid−crystal:LC)媒体およびLCディスプレイ、主に、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)およびPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおける、それらの使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性化合物と、それを調製するための方法および中間体と、光学的、電気光学的および電子的目的のため、特に、液晶(liquid−crystal:LC)媒体およびLCディスプレイ、特に、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおける、それらの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている液晶ディスプレイ(LCディスプレイ)は、通常、TN(twisted nematic:ツイストネマチック)型のものである。しかしながら、これらは、コントラストの視野角依存性が強い不都合を有する。加えて、より広い視野角を有する所謂VA(vertical alignment:垂直配向)ディスプレイが知られている。VAディスプレイのLCセルは2つの透明電極の間にLC媒体の層を含有しており、そこでは、通常、LC媒体は負の値の誘電(DC)異方性を有する。スイッチが切れている状態で、LC層の分子は電極表面に垂直に配向しているか(ホメオトロピック的)、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、電極表面に平行なLC分子の再配向が起きる。更に、複屈折効果に基づいており、所謂「ベンド」配向で通常は正の(DC)異方性のLC層を有しているOCB(optically compensated bend:光学補償ベンド)ディスプレイが知られている。電圧を印加すると、電極表面に垂直なLC分子の再配向が起きる。加えて、暗状態においてベンドセルの光に対する望ましくない透明性を防ぐために、通常、OCBディスプレイは1枚以上の複屈折光学的位相差フィルムを含有する。OCBディスプレイは、TNディスプレイと比較して、より広い視野角および、より短い応答時間を有する。また、2枚の基板の間にLC層を含有するIPS(in the−plane switching:面内スイッチング)ディスプレイも知られており、一方の基板のみが、通常、櫛形構造の電極層を有する。電圧を印加すると、LC層に平行な有意な成分を有する電界が電圧によって生成される。これにより、層面内でLC分子の再配向が生じる。更に、所謂FFS(fringe Field switching:フリンジ場スイッチング)ディスプレイが提案されており(とりわけ、S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁を参照;非特許文献1)、同様に同一の基板上に2つの電極を含有するが、IPSディスプレイとは対照的に、2つの電極の一方のみが構造化された(櫛形)電極の形状であり、他方の電極は構造化されていない。それにより、強力な所謂「フリンジ場」、即ち、電極端の近傍における強力な電界およびセル全体にわたって強力な垂直成分および強力な水平成分の両者ともを有する電界が生成される。IPSディスプレイおよびFFSディスプレイの両者とも、コントラストの、低い視野角依存性を有する。
【0003】
より最近のタイプのVAディスプレイにおいて、LC分子の均一な配向は、LCセル内の複数の比較的小さなドメインに限定されている。チルトドメインとしても知られるこれらのドメイン間には、ディスクリネーションが存在する場合がある。従来のVAディスプレイと比較して、チルトドメインを有するVAディスプレイは、より大きなコントラストおよび中間階調の視野角非依存性を有する。加えて、スイッチが入っている状態での分子の均一配向のための電極表面の追加処理、例えばラビングなどが、もはや必要ないため、このタイプのディスプレイの製造は、より簡便である。代わりに、チルトまたはプレチルト角の優先的方向は、電極の特別な設計により制御される。所謂MVA(multidomain vertical alignment:マルチドメイン垂直配向)ディスプレイにおいては、通常、これは突起を有する電極によって達成され、局所的なプレチルトが生じる。結果として、電圧を印加すると、LC分子は電極表面に平行に、セルで異なって定義される領域中で異なる方向に配向する。それによって「制御された」スイッチングが達成され、干渉するディスクリネーション線の形成が予防される。この配向によってディスプレイの視野角が改良されるが、しかしながら、光に対する透明性が低下する結果となる。MVAの更なる開発のために片方の電極側のみの突起が利用され、一方で反対側の電極はスリットを有しており、光に対する透明性が改良されている。電圧を印加するとスリットが施された電極はLCセル内に不均質な電界を生じ、制御されたスイッチングが更に達成されることを意味する。光に対する透明性を更に改良するためにスリットと突起との間隔を大きくすることもできるが、これにより応答時間が長くなる結果となる。所謂PVA(patterned VA:パターン化VA)においては、突起は完全に不要なものとなり、両電極は対向するスリットにより構造化されており、コントラストの増加および光に対する透明性が改良される結果となるが、技術的に難しくディスプレイが機械的影響(タッピングなど)により敏感となる。しかしながら、例えばモニターおよび特にTVスクリーンなどの多くの用途においては、ディスプレイの応答時間を短縮しコントラストおよび輝度(透過性)を改良することが要求されている。
【0004】
更なる開発は、所謂PS(polymer stabilised:高分子安定化)ディスプレイであり、用語「PSA」(polymer sustained alignment:高分子維持配向)でも知られている。これらにおいては、少量(例えば、0.3重量%、典型的には1重量%未満)の重合性化合物をLC媒体に添加し、LCセルに導入後、電極間に電圧を印加して、通常UV光重合により、その場で重合または架橋する。「反応性メソゲン」(RM:reactive mesogen)としても知られる重合性メソゲンまたは液晶化合物をLC混合物に添加することが、特に適切であることが証明されている。当面のところ、PSAの原理は、さまざまな古典的LCディスプレイ中で使用されている。よって、例えば、PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS/FFSおよびPS−TNディスプレイが知られている。試験用セルで示される通り、PSA法は、結果としてセル中にプレチルトを生じる。従って、PSA−OCBディスプレイの場合、オフセット電圧が不必要となるか低減できるように、ベンド構造を安定化することが可能である。PSA−VAディスプレイの場合、このプレチルトは応答時間に対して正の効果を有する。PSA−VAディスプレイに対しては、標準的なMVAまたはPVAピクセルおよび電極レイアウトを使用できる。加えて、しかしながら、例えば、電極の一方側のみを構造化して突起を設けないで操作することが可能であり、製造が著しく簡略化され、同時に結果としてコントラストが非常に良好となり、同時に光に対する透明性が非常に良好となる。
【0005】
PSA−VAディスプレイは、例えば、特開平10−036847号公報(特許文献1)、欧州特許出願公開第1 170 626号公報(特許文献2)、欧州特許出願公開第1 378 557号公報(特許文献3)、欧州特許出願公開第1 498 468号公報(特許文献4)、米国特許出願公開第2004/0191428号公報(特許文献5)、米国特許出願公開第2006/0066793号公報(特許文献6)および米国特許出願公開第2006/0103804号公報(特許文献7)に記載されている。PSA−OCBディスプレイは、例えば、T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.45巻、2006年、2702〜2704頁(非特許文献2)およびS.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.43巻、2004年、7643〜7647頁(非特許文献3)に記載されている。PS−IPSディスプレイは、例えば、米国特許第6,177,972号明細書(特許文献8)およびAppl.Phys.Lett.1999年、75巻(21号)、3264頁(非特許文献4)に記載されている。PS−TNディスプレイは、例えば、Optics Express 2004年、12巻(7号)、1221頁(非特許文献5)に記載されている。
【0006】
特にモニター用、特にはテレビ用途には、LCディスプレイの応答時間のみならずコントラストおよび輝度(よって、透過性も)を最適化することも引き続き要求されている。ここで、PSA法は重要な利点を提供する。特に、PSA−VAの場合、他のパラメータに著しい悪影響を及ぼすことなく、試験用セルにおいて測定可能なプレチルトと相関して応答時間の短縮を達成できる。
【0007】
しかしながら、先行技術から既知のLC混合物およびRMは、PSAディスプレイにおいて使用する際に、幾つかの不都合を依然として有することが見出されてきた。よって、これまでの全ての望ましい可溶性RMがPSAディスプレイにおける使用に適しているわけではなく、プレチルト測定を伴う直接PSA実験よりも更に適切な選択要件を見出すことは、しばしば困難である。光開始剤を添加することなくUV光を用いて重合することが望ましい場合、特定の用途に好都合のことがあるが、選択の余地は更に狭くなる。加えて、LC混合物(下では「LCホスト混合物」とも言う)+重合性成分である選択された「材料系」は、可能な限り低い回転粘度および可能な限り良好な電気特性を有していなければならず、ここで強調されるのは所謂「電圧保持率」(VHRまたはHR)である。PSAディスプレイに関しては、UV曝露がディスプレイの製造工程において不可欠な部分であり、しなしながら、製造終了後のディスプレイにおいて「通常」の曝露としてもUV曝露が自然にあるため、特に、UV光照射後の高いVHRが中心的に重要である。
【0008】
しかしながら、例えば、チルトが生じないか不適切なチルトが生じるため、また、例えば、VHRがTFTディスプレイ用途には不適切であるため、これまでの全てのLC混合物+重合性成分の組合せがPSAディスプレイに適切であるとは限らない問題が生じる。
【0009】
特に小さいプレチルト角を生成するPSAディスプレイ用の新規な材料が入手可能となれば、特に望ましい。同一の曝露時間での重合の際に、今日までに既知の材料よりも更に小さいプレチルト角を生成する材料、および/または、それを使用して、既知の材料を使用して達成できる(より高い)プレチルト角を更に短い曝露時間後で既に達成できる材料が特に好ましい。よって、ディスプレイの製造時間(タクトタイム)を短縮でき、製造工程のコストを低減できる。
【0010】
更なる問題は所謂「画像の固着」または「画像の焦付き」の発生であり、即ち、個々のピクセルの一時的なアドレスによりLCディスプレイ内に生成された画像が、これらのピクセル内の電界のスイッチが切られた後、または、他のピクセルがアドレスされた後においてすら、可視でき依然として残存する。
【0011】
PSAディスプレイの製造における更なる問題は、特に、ディスプレイ内にプレチルト角を生成するための重合工程後における、未重合のRMの存在または除去である。例えば、このタイプの未反応のRMはディスプレイの特性に悪影響を及ぼすことがあり、または、ディスプレイ内に電圧が印加されている際に制御されていない態様で重合することがある。これまでに既知の材料よりも、より速く効率よくRMが重合するとすれば、これらの残存量の制御された反応は、より単純である。
【0012】
よって、上記の不都合を有していないか、僅かな程度にのみ有しており、改良された特性を有する、特にVAおよびOCB型のPSAディスプレイ、および、そのようなディスプレイにおいて使用するためのLC媒体および重合性化合物に対する多大な要求が依然としてある。特に、高い比抵抗と同時に広い動作温度範囲で低温においてすら短い応答時間、および、低い閾電圧、低いプレチルト角、多数の中間階調、高いコントラストおよび広い視野角が可能となり、UV曝露後に高い値の電圧保持率(VHR)を有するPSAディスプレイ、および、PSAディスプレイにおいて使用するための材料に対する多大な要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−036847号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 170 626号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1 378 557号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1 498 468号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0191428号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0066793号公報
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0103804号公報
【特許文献8】米国特許第6,177,972号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】S.H.Jungら、Jpn.J.Appl.Phys.、43巻、3号、2004年、1028頁
【非特許文献2】T.−J−Chenら、Jpn.J.Appl.Phys.45巻、2006年、2702〜2704頁
【非特許文献3】S.H.Kim、L.−C−Chien、Jpn.J.Appl.Phys.43巻、2004年、7643〜7647頁
【非特許文献4】Appl.Phys.Lett.1999年、75巻(21号)、3264頁
【非特許文献5】Optics Express 2004年、12巻(7号)、1221頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上に示された不都合を有していないか低減された程度にのみ有しており、可能な限り速く完全に重合し、低いプレチルト角の確立を可能とし、ディスプレイにおける画像の固着の発生を低減または予防し、好ましくは同時に非常に高い比抵抗値、低い閾電圧および短い応答時間を可能とし、PSAディスプレイにおける使用に適する新規な材料、特に、RMおよびこれらを含むLC媒体を提供する目的を有する。
【0016】
本発明の更なる目的は、特に、光学的、電気光学的および電子的用途向けの新規なRMと、これらの調製に適する方法および中間体とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本出願において記載される通りの材料および方法による本発明によって達成された。特に、驚くべきことに、本発明による重合性化合物により、PSAディスプレイにおいて使用する際に、特に低いプレチルト角および所望のチルト角を早急に確立できることが見出された。このことは、LC媒体に関して、プレチルトを測定することにより示された。特に、光開始剤を添加することなくプレチルトが達成された。加えて、プレチルト角の曝露時間依存性を測定することで示された通り、先行技術から既知の材料と比較して、本発明による材料は、プレチルト角が著しく早急に生成される挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
よって、本発明は、液晶(liquid−crystal:LC)媒体およびLCディスプレイにおける、特に、PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおける式Iの重合性化合物の使用に関する。
【0019】
【化1】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびRは、P−Sp−、H、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、SF、または、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNまたはP−Sp−によって置き換えられていてもよく、ただし、基RおよびRの少なくとも一方は、基P−Sp−を表すか含有し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、H、または、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
Lは、それぞれの出現において同一または異なって、P−Sp−、H、OH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
sは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
ただし、以下の化合物は、好ましくは、除外される:
【0020】
【化2】

式中、Spはスペーサー基を表し、P、L、sおよびtは、上で示される意味を有する。
【0021】
本発明は、更に、式Iの1種類以上の重合性化合物と、メソゲン、液晶および/または重合性でもよい1種類以上の追加の化合物とを含むLC媒体に関する。
【0022】
本発明は、更に、
−式Iの1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分A)と、および
−上および下に記載される通りの1種類以上、好ましくは2種類以上の低分子量(モノマー性および非重合性)化合物を含み、下では「LCホスト混合物」とも呼ぶ液晶成分B)と
を含むLC媒体に関する。
【0023】
本発明は、更に、電界または磁界を印加しながらPSAディスプレイ内で式Iの化合物(1種類または多種類)をその場で重合することによってLC媒体中にチルト角を生成するための、PSおよびPSAディスプレイにおける式Iの化合物および本発明によるLC媒体の使用、特に、LC媒体を含有するPSおよびPSAディスプレイにおける使用に関する。
【0024】
本発明は、更に、式Iの1種類以上の化合物または本発明によるLC媒体を含有するLCディスプレイ、特に、PSまたはPSAディスプレイ、特に好ましくは、PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS、PS−FFSまたはPS−TNディスプレイに関する。
【0025】
本発明は、更に、2枚の基板(ただし、該基板の少なくとも一方は光に対して透明であり、該基板の少なくとも一方は電極層を有する)と、および、該基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、該重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、該LCセルの該基板間において該LC媒体中で電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、該重合性化合物の少なくとも1種類は式Iより選択される)とから成るLCセルを含有するPSまたはPSA型のLCディスプレイに関する。
【0026】
本発明は、更に、1種類以上の低分子量液晶化合物または上および下で記載される通りのLCホスト混合物を、式Iまたはそれのサブ式の1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することにより、上および下で記載される通りのLC媒体を調製する方法に関する。
【0027】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの1種類以上の低分子量液晶化合物またはLCホスト混合物を、式Iまたはそれのサブ式の1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合し、混合物を上および下で記載される通りのLCセル内に導入し、電圧を印加しながら重合性化合物を重合することにより、上および下で記載される通りのLCディスプレイを製造する方法に関する。
【0028】
本発明は、更に、式Iの新規な重合性化合物と、および、それを調製する方法とに関する。
【0029】
以下の意味を上および下で適用する。
【0030】
他に示さない限り、用語「PSA」をPSディスプレイおよびPSAディスプレイを表すために使用する。
【0031】
用語「チルト」および「チルト角」は、LCディスプレイ(本明細書において、好ましくは、PSまたはPSAディスプレイ)においてLC媒体のLC分子のセル表面に対してチルトした配向を言う。本明細書において、チルト角は、LC分子の分子長軸(LCダイレクタ)と、LCセルを形成する平坦で平行な外板の表面との間の平均角(90°未満)を表す。低い値のチルト角(即ち、角度90°から大きく外れている)は、大きいチルトに対応する。チルト角を測定する適切な方法は、例に与えられている。他に示さない限り、上および下で開示される角度の値は、この測定方法に関する。
【0032】
用語「メソゲン基」は当業者には既知であり文献に記載されており、それの引力および斥力的相互作用の異方性により、低分子量または高分子物質中で液晶(LC)相の発生に本質的に寄与する基を表す。メソゲン基を含有する化合物(メソゲン化合物)は、それ自身では必ずしもLC相を有する必要はない。また、他の化合物と混合後および/または重合後のみに、メソゲン化合物がLC相挙動を示すことも可能である。典型的なメソゲン基は、例えば、剛直な棒状または円盤状の形状の単位である。メソゲンまたはLC化合物に関して使用される用語および定義の概説が、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁において与えられている。
【0033】
用語「スペーサー基」は、上および下で「Sp」とも呼ばれ、当業者には既知であり文献に記載されており、例えば、Pure Appl.Chem.73巻(5号)、888頁(2001年)およびC.Tschierske、G.Pelzl、S.Diele、Angew.Chem.2004年、116巻、6340〜6368頁を参照。他に示さない限り、用語「スペーサー基」または「スペーサー」は、上および下において、重合性メソゲン化合物中でメソゲン基および重合性基(1個または複数)を互いに連結している柔軟な基を表す。
【0034】
用語「反応性メソゲン」または「RM」は、メソゲン基および重合に適切な1個以上の官能基(重合性基または基Pとも呼ばれる)を含有する化合物を表す。
【0035】
用語「低分子量化合物」および「非重合性化合物」は、通常、モノマー性で、当業者に既知の通常の条件下、特にRMの重合のために使用される条件下において重合に適した官能基を含有しない化合物を表す。
【0036】
式Iの1種類、2種類または3種類の重合性化合物を含むLC媒体が特に好ましい。
【0037】
重合性成分(成分A)が式Iの重合性化合物を排他的に含むLC媒体が更に好ましい。
【0038】
成分B)が、ネマチック液晶相を有するLC化合物またはLC混合物であるLC媒体が更に好ましい。
【0039】
アキラルな重合性化合物、および、アキラル化合物を含む、好ましくは排他的にこれらから成るLC媒体が更に好ましい。
【0040】
重合性化合物をLC媒体に個別に加えることもできるが、本発明による2種類以上の重合性化合物を含む混合物を使用することも可能である。このタイプの混合物を重合すると、コポリマーを与える。本発明は、更に、上および下で述べられる重合性混合物にも関する。重合性化合物は、メソゲンでも非メソゲンでもよい。
【0041】
本発明によるLC媒体における重合性成分または成分A)の割合は、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満、非常に特に好ましくは0.5%未満である。
【0042】
本発明によるLC媒体における液晶成分または成分B)の割合は、好ましくは95%より多く、特に好ましくは99%より多い。
【0043】
式Iの特に好ましい化合物は、
Lは、P−Sp−、OH、CHOH、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R、−C(=O)Y、−C(=O)R、−N(R、置換されていてもよいシリル、6〜20個のC原子を有する置換されていてもよいアリール、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルまたはアルコキシ、2〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、ただし加えて、全てのこれらの基における1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよく、
はハロゲンを表し、および
は、P−Sp−、H、ハロゲン、1〜25個のC原子を有する直鎖状、分岐状または環状のアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはP−Sp−で置き換えられていてもよい
ものである。
【0044】
式Iの更に好ましい化合物は、
−RおよびRが、同一または異なる基P−Sp−を表すもの、
−RおよびRが、同一または異なる基P−Sp−を表し、ここで、基Spの両者が単結合またはC1〜12−アルキレンオキシを表すもの、
−基RおよびRの一つが基P−Sp−を表すか含有し、他方が、好ましくは、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルより選択される非重合性基を表すもの(ここで加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい)、
−RがP−Sp−を表すもの、
−RがP−Sp−を表すもの、
−Spが単結合を表すもの、
−Lが、重合性基を表さずまた含有しないもの、
−sが0を表すもの、
−指数sの一つまたは両者が1以上であり、および/またはtが1以上であり、および、Lが、好ましくは、F、Cl、−CN、および、1〜25個、特に好ましくは、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルより選択される非重合性の基であるもの(ここで加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、IまたはCNで置き換えられていてもよい)、
である。
【0045】
式Iの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0046】
【化3】

式中、Spはスペーサー基を表し、P、L、sおよびtは、それぞれ互いに独立に、上および下で示される意味の1つを有する。sおよびtが0である式I1およびI2の化合物が特に好ましい。これらの化合物において、Pは、好ましくは、アクリレート、フルオロアクリレートまたはメタクリレート基を表す。これらの化合物において、Spは、好ましくは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有する直鎖状のアルキレンオキシを表す。
【0047】
式I1aの化合物が特に好ましい。
【0048】
【化4】

式中、Rは、H、F、Cl、CN、CFまたはCH、特に、HまたはCHを表す。
【0049】
好ましい非重合性基RおよびRは、1〜20個、好ましくは、1〜12個のC原子を有し、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシおよびアルコキシカルボニルオキシである。
【0050】
好ましいアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、シクロヘプチル、n−オクチル、シクロオクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペルフルオロオクチル、ペルフルオロヘキシルなどである。
【0051】
好ましいアルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルなどである。
【0052】
好ましいアルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルなどである。
【0053】
好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、2−メチルブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ、n−デシルオキシ、n−ウンデシルオキシ、n−ドデシルオキシなどである。
【0054】
重合性基Pは、例えば、フリーラジカルまたはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に適するか、または、例えば、ポリマー主鎖上への付加または縮合といったポリマー類似反応に適する基である。特に好ましくは、連鎖重合のための基、特に、C=C二重結合またはC≡C三重結合を含有するもの、および、例えば、オキセタンまたはエポキシド基などの開環重合に適する基である。
【0055】
好ましい基Pは、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0056】
【化5】

CH=CW−(O)k3−、CW=CH−CO−(O)k3−、CW=CH−CO−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−およびWSi−より選択され、式中、Wは、H、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、F、ClまたはCHを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn−プロピルを表し、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子を有するオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルを表し、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子を有するアルキルを表し、Pheは、上で定義される通りでP−Spとは異なる1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンを表し、k、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1を表し、kは、好ましくは、1を表す。
【0057】
特に好ましい基PはCH=CW−COO−、特に、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−およびCH=CF−COO−、更に、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0058】
【化6】

である。
【0059】
非常に特に好ましい基Pは、ビニルオキシ、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、オキセタンおよびエポキシド、特に、アクリレートおよびメタクリレートである。
【0060】
好ましいスペーサー基Spは、基P−Sp−が式P−Sp’−X’−に対応するように式Sp’−X’より選択され、ただし、
Sp’は、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレンを表し、ただし、F、Cl、Br、IまたはCNで単置換または多置換されていてもよく、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、それぞれ互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00000−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR00−CO−O−、−O−CO−NR00−、−NR00−CO−NR00−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR00−、−NR00−CO−、−NR00−CO−NR00−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、および
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表す。
【0061】
X’は、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0062】
典型的なスペーサー基Sp’は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−、−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00000−O)p1−であり、式中、p1は1〜12の整数、q1は1〜3の整数、およびR00およびR000は上述の意味を有する。
【0063】
特に好ましい基−X’−Sp’−は、−(CHp1−、−O−(CHp1−、−OCO−(CHp1−、−OCOO−(CHp1−である。
【0064】
特に好ましい基Sp’は、例えば、それぞれの場合で直鎖状のエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0065】
本発明の更に好ましい実施形態において、式IにおけるRおよび/またはRは、2個以上の重合性基を含有する基(多官能重合性基)を表す。この型の適切な基、それらを含有する重合性化合物およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,060,200号明細書または米国特許出願公開第2006/0172090号公報に記載されている。以下の式より選択される多官能重合性基が特に好ましい。
【0066】
【化7】

式中、
alkylは、単結合または1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキレンを表し、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R00)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−で置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、ClまたはCNで置き換えられていてもよく、ただし、R00およびR000は上で示される意味を有し、
aaおよびbbは、それぞれ互いに独立に、0、1、2、3、4、5または6を表し、
Xは、X’に示される意味の1つを有し、および
1〜5は、それぞれ互いに独立に、Pに示される意味の1つを有する。
【0067】
式Iおよびそのサブ式の化合物は、当業者に既知で、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載される方法に類似して調製できる。例えば、式Iの化合物の合成は、例えば、塩化(メタ)アクリロイルまたは(メタ)アクリル酸など基Pを含有する対応する酸、酸誘導体またはハロゲン化物を使用し、例えば、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)などの脱水剤存在下において、2,7−ジヒドロキシフェナントレンをエステル化またはエーテル化することで行う。
【0068】
RがCHを表す式I1aの化合物(フェナントリル2,7−ジメタクリレート)およびそれの調製は、日本国特許第63−233952号明細書に記載されている。
【0069】
PSAディスプレイを製造するために、電圧を印加しながらLCディスプレイの基板間でLC媒体中において、その場での重合により、重合性化合物を重合または(化合物が2個以上の重合性基を含有しているのであれば)架橋する。重合は一段階で行える。また、プレチルト角を生成するために電圧を印加しながら第1工程において最初に重合を行い、引き続いて、第1工程において反応しなかった化合物を重合または架橋(最終硬化)するために、第2の重合工程において電圧を印加せずに重合を行うことも可能である。
【0070】
適切で好ましい重合方法は、例えば、熱または光重合、好ましくは光重合、特にUV光重合である。ここで、必要に応じて、1種類以上の開始剤を加えることもできる。重合の適切な条件および開始剤の適切な型および量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、商業的に入手可能な光重合開始剤Irgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、Irgacure907(登録商標)、Irgacure369(登録商標)またはDarocure1173(登録商標)(Ciba社)はフリーラジカル重合に適する。開始剤を使用するのであれば、それの割合は、好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.001〜1重量%である。しかしながら、開始剤を添加することなく、重合を行うこともできる。更なる好ましい実施形態において、LC媒体は重合開始剤を含まない。
【0071】
また、例えば、保存または輸送中におけるRMの好ましくない自発的な重合を防止するために、重合性成分A)またはLC媒体は1種類以上の安定剤を含むこともできる。安定剤の適切な型および量は当業者に既知であり、文献に記載されている。例えば、Irganox(登録商標)1076などのIrganox(登録商標)シリーズ(Ciba社)の商業的に入手可能な安定剤が特に適切である。安定剤を使用する場合、RMまたは重合性成分A)の総量に基づく安定剤の割合は、好ましくは10〜10,000ppm、非常に好ましくは50〜500ppmである。
【0072】
また、本発明による重合性化合物は開始剤のない重合にも適しており、例えば材料費がより低く、開始剤またはそれの分解生成物の残存し得る量によるLC媒体の不純物が特により少ないなどの特筆すべき利点を伴う。
【0073】
PSAディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体は、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、非常に特に好ましくは0.5重量%未満の重合性化合物、特に上述の式の重合性化合物を含む。
【0074】
1種類、2種類または3種類の式Iの重合性化合物を含むLC媒体が特に好ましい。
【0075】
更に、重合性成分A)が式Iの重合性化合物から排他的に成るLC媒体が好ましい。
【0076】
更に、成分B)がネマチック液晶相を有するLC化合物またはLC混合物であるLC媒体が好ましい。
【0077】
更に、式Iのアキラルな重合性化合物、および、成分A)および/またはB)の化合物はアキラルな化合物から成る群より排他的に選択されるLC媒体が好ましい。
【0078】
更に、重合性成分または成分A)が、1個の重合性基を含有する(一反応性の)1種類以上の重合性化合物および2個以上、好ましくは2個の重合性基を含有する(二反応性または多反応性の)1種類以上の重合性化合物を含むLC媒体が好ましい。
【0079】
更に、重合性成分または成分A)が、2個の重合性基を含有する(二反応性の)重合性化合物から排他的に成るPSAディスプレイおよびLC媒体が好ましい。
【0080】
本発明によるLC媒体における重合性成分または成分A)の割合は、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満、非常に特に好ましくは0.5%未満である。
【0081】
本発明によるLC媒体における液晶成分または成分B)の割合は、好ましくは95%より多く、特に好ましくは99%より多い。
【0082】
式Iの重合性化合物を個別に重合させることもできるが、また、式Iの2種類以上の化合物を含む混合物、または、式Iの1種類以上の化合物および好ましくは、メソゲンまたは液晶である1種類以上の更なる重合性化合物(コモノマー)を含む混合物を重合することも可能である。このタイプの混合物を重合すると、コポリマーを与える。本発明は、更に、上および下で述べられる重合性混合物にも関する。重合性化合物およびコモノマーは、メソゲンでも非メソゲンでもよく、好ましくは、メソゲンまたは液晶である。
【0083】
PSAディスプレイにおける使用に特に適切で好ましいメソゲンコモノマーは、例えば、以下の式より選択される。
【0084】
【化8】

【0085】
【化9】


式中、
およびPはPに示される意味の1つを有し、好ましくは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、
SpおよびSpはSpに示される意味の1つを有するか、または、単結合を表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−COO−または−OCO−を表し、
Lは、式Iで上に示される意味を有し、
L’およびL”は、それぞれ互いに独立に、H、FまたはClを表し、
rは、0、1、2、3または4を表し、
sは、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
xは、0または1を表し、および
およびRは、それぞれ互いに独立に、HまたはCHを表す。
【0086】
上記の重合性化合物に加え、本発明によるLCディスプレイにおける使用のためのLC媒体は、1種類以上、好ましくは2種類以上の低分子量(即ち、モノマー性または非重合性)化合物を含むLC混合物(「ホスト混合物」)を含む。非重合性化合物は、重合性化合物の重合のために使用される条件下における重合反応に対して安定または非反応性である。原理的には、適切なホスト混合物は、従来のVAまたはOCBディスプレイにおける使用に適する任意のLC混合物である。適切なLC混合物は当業者に既知であり文献に記載されており、例えば、欧州特許出願公開第1 378 557号公報におけるVAディスプレイにおける混合物および欧州特許出願公開第1 306 418号公報およびドイツ国特許出願公開第102 24 046号公報におけるOCBディスプレイ用の混合物である。
【0087】
特に好ましいLCディスプレイ、LCホスト混合物およびLC媒体を下に述べる。
【0088】
a)式CYおよび/またはPYの1種類以上の化合物を含むLC媒体:
【0089】
【化10】

式中、個々の基は、以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【0090】
【化11】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキル(ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよい)、好ましくは、1〜6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表し、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0091】
好ましくは、両方の基LおよびLがFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表すか、または、両方の基LおよびLがFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0092】
式CYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0093】
【化12】

【0094】
【化13】

【0095】
【化14】

【0096】
【化15】

式中、aは1または2を表し、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0097】
式PYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0098】
【化16】

【0099】
【化17】

【0100】
【化18】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0101】
b)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0102】
【化19】

式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【0103】
【化20】

【0104】
【化21】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは、単結合を表す。
【0105】
式ZKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0106】
【化22】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylは、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0107】
c)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0108】
【化23】

式中、個々の基は、それぞれの出現において同一または異なって、以下の意味を有する:
およびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、
【0109】
【化24】

【0110】
【化25】

eは、1または2を表す。
【0111】
式DKの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0112】
【化26】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0113】
d)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0114】
【化27】

式中、個々の基は以下の意味を有する:
【0115】
【化28】

fは、0または1を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
およびZは、それぞれ互いに独立に、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CH=CHCHO−または単結合、好ましくは単結合を表し、
およびLは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。
【0116】
好ましくは、両方の基LおよびLがFを表すか、または、基LおよびLの一方がFを表し、他方がClを表す。
【0117】
式LYの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0118】
【化29】

【0119】
【化30】

式中、Rは上で示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、vは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル、特に、CH、C、n−C、n−C、n−C11、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0120】
e)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0121】
【化31】

式中、alkylはC1〜6アルキルを表し、LはHまたはFを表し、Xは、F、Cl、OCF、OCHFまたはOCH=CFを表す。XがFを表す式G1の化合物が特に好ましい。
【0122】
f)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0123】
【化32】

【0124】
【化33】


式中、RはRに上で示される意味の1つを有し、alkylはC1〜6アルキルを表し、dは0または1を表し、zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1〜6の整数を表す。これらの化合物においてRは、特に好ましくは、C1〜6−アルキルまたは−アルコキシまたはC2〜6−アルケニルであり、dは、好ましくは、1である。本発明によるLC媒体は、好ましくは、上述の式の1種類以上の化合物を5重量%以上の量で含む。
【0125】
g)以下の式から成る群より選択される1種類以上のビフェニル化合物を追加的に含むLC媒体:
【0126】
【化34】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0127】
LC混合物における式B1〜B3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。
【0128】
式B2の化合物が特に好ましい。
【0129】
式B1〜B3の化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0130】
【化35】

式中、alkylは、1〜6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B1aおよび/またはB2cの1種類以上の化合物を含む。
【0131】
h)以下の式の1種類以上のターフェニル化合物を追加的に含むLC媒体:
【0132】
【化36】

式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立に、上でRに示される意味の1つを有し、
【0133】
【化37】

式中、LはFまたはCl、好ましくは、Fを表し、LはF、Cl、OCF、CF、CH、CHFまたはCHF、好ましくはFを表す。
【0134】
式Tの化合物は、好ましくは、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0135】
【化38】

【0136】
【化39】

【0137】
【化40】

式中、Rは1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、Rは2〜7個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表し、(O)は酸素原子または単結合を表し、mは1〜6の整数を表す。Rは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0138】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはペントキシを表す。
【0139】
本発明によるLC媒体は、好ましくは、式Tおよびそれの好ましいサブ式のターフェニル類を、2〜30重量%、特には5〜20重量%の量で含む。
【0140】
式T1、T2、T3およびT21の化合物が特に好ましい。これらの化合物において、Rは、好ましくは、それぞれ1〜5個のC原子を有するアルキル、更にアルコキシを表す。
【0141】
混合物のΔn値が0.1以上となるよう意図する場合、本発明による混合物においてターフェニル類が好ましく用いられる。好ましい混合物は、2〜20重量%の1種類以上の式T(好ましくは、T1〜T22の化合物群より選択される)のターフェニル化合物類を含む。
【0142】
i)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0143】
【化41】

式中、RおよびRは上で示される意味を有し、好ましくは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニルを表す。
【0144】
好ましい媒体は、式O1、O3およびO4より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0145】
k)以下の式の1種類以上の化合物を追加的に、好ましくは3重量%より多く、特に5重量%以上、非常に特に好ましくは5〜30重量%の量で含むLC媒体:
【0146】
【化42】

式中、
【0147】
【化43】

は、H、CH、Cまたはn−Cを表し、(F)は任意のフッ素置換基を表し、qは1、2または3を表し、RはRに示される意味の1つを有する。
【0148】
式FIの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0149】
【化44】

式中、Rは、好ましくは、直鎖状のアルキルを表し、Rは、CH、Cまたはn−Cを表す。式FI1、FI2およびFI3の化合物が特に好ましい。
【0150】
m)以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を追加的に含むLC媒体:
【0151】
【化45】

式中、RはRに示される意味を有し、alkylは1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0152】
n)例えば以下の式から成る群より選択される化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種類以上化合物を追加的に含むLC媒体:
【0153】
【化46】

【0154】
【化47】

式中、R10およびR11は、それぞれ互いに独立に、Rに示される意味の1つを有し、好ましくは、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシまたは2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニルを表し、ZおよびZは、それぞれ互いに独立に、−C−、−CH=CH−、−(CH−、−(CHO−、−O(CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCH=CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CH−または単結合を表す。
【0155】
o)以下の式の1種類以上のジフルオロジベンゾクロマン類および/またはクロマン類を追加的に、好ましくは3〜20重量%の量、特に3〜15重量%の量で含むLC媒体:
【0156】
【化48】

式中、R11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上で示される意味を有し、cは0または1を表す。
【0157】
式BCおよびCRの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0158】
【化49】

【0159】
【化50】

式中、alkylおよびalkylは、それぞれ互いに独立に、1〜6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、alkenylおよびalkenylは、それぞれ互いに独立に、2〜6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。alkenylおよびalkenylは、好ましくは、CH=CH−、CH=CHCHCH−、CH−CH=CH−、CH−CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−、CH−(CH−CH=CH−またはCH−CH=CH−(CH−を表す。
【0160】
1種類、2種類または3種類の式BC2の化合物を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0161】
p)以下の式の1種類以上のフッ素化されたフェナントレン類および/またはジベンゾフラン類を追加的に含むLC媒体:
【0162】
【化51】

式中、R11およびR12は、それぞれ互いに独立に、上で示される意味を有し、bは0または1を表し、LはFを表し、rは1、2または3を表す。
【0163】
式PHおよびBFの特に好ましい化合物は、以下のサブ式から成る群より選択される:
【0164】
【化52】

式中、RおよびR’は、それぞれ互いに独立に、1〜7個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表す。
【0165】
q)好ましくはPSA−OCBディスプレイにおいて使用するためで、以下の式から成る群より選択される1種類以上の化合物を含むLC媒体:
【0166】
【化53】

式中、
は、それぞれの出現において同一または異なって、それぞれ9個までのC原子を有するn−アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、
は、F、Cl、または、それぞれ6個までのC原子を有し、それぞれの場合においてハロゲン化されたアルキル、アルケニル、アルケニルオキシまたはアルコキシを表し、
は、−CFO−または単結合を表し、
1〜6は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、
は、好ましくは、F、Cl、CF、CHF、OCF、OCHF、OCFHCF、OCFHCHF、OCFHCHF、OCFCH、OCFCHF、OCFCHF、OCFCFCHF、OCFCFCHF、OCFHCFCF、OCFHCFCHF、OCFCFCF、OCFCFCClF、OCClFCFCFまたはCH=CF、特に好ましくは、FまたはOCFを表す。
【0167】
式AAの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0168】
【化54】

【0169】
【化55】

式中、RおよびXは上で示される意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。式AA2およびAA6の化合物が特に好ましい。
【0170】
式BBの化合物は、好ましくは、以下の式から成る群より選択される。
【0171】
【化56】

式中、RおよびXは上で示される意味を有し、Xは、好ましくは、Fを表す。式BB1、BB2およびBB5の化合物が特に好ましい。
【0172】
式CCの化合物は、好ましくは、以下の式より選択される。
【0173】
【化57】

式中、Rは、それぞれの出現において同一または異なって、上で示される意味を有し、好ましくは、1〜6個のC原子を有するアルキルを表す。
【0174】
r)式Iまたはそれのサブ式の重合性化合物およびコモノマーは別として、末端ビニルオキシ基(−O−CH=CH)を含有する化合物を含まないLC媒体。
【0175】
s)1〜5種類、好ましくは、1、2または3種類の重合性化合物を含むLC媒体。
【0176】
t)混合物中の重合性化合物の割合が、全体で0.05〜5%、好ましくは0.1〜1%であるLC媒体。
【0177】
u)1〜8種類、好ましくは1〜5種類の式CY1、CY2、PY1および/またはPY2の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物における割合は、全体で、好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜35%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0178】
v)1〜8種類、好ましくは1〜5種類の式CY9、CY10、PY9および/またはPY10の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物における割合は、全体で、好ましくは5〜60%、特に好ましくは10〜35%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0179】
w)1〜10種類、好ましくは1〜8種類の式ZKの化合物、特には、式ZK1、ZK2および/またはZK6の化合物を含むLC媒体。これらの化合物の混合物における割合は、全体で、好ましくは3〜25%、特に好ましくは5〜45%である。これらの個々の化合物の含有量は、好ましくは、それぞれの場合で2〜20%である。
【0180】
x)混合物における式CY、PYおよびZKの化合物の割合が、全体で70%より多く、好ましくは80%より多いLC媒体。
【0181】
y)プレチルト角が好ましくは85°以下、特に好ましくは80°以下であるPSA−VAディスプレイ。
【0182】
上で示される好ましい実施形態a)〜y)の化合物を上記の重合された化合物と組み合わせることで、本発明によるLC媒体において低い閾電圧、低い回転粘度および非常に良好な低温安定性に効果があり、常に高い透明点および高いHR値と同時に、PSAディスプレイにおいて特に低いプレチルト角を迅速に確立できる。特に、先行技術からの媒体と比べ、PSAディスプレイにおいて、LC媒体は著しく短縮された応答時間、また、特に中間階調の応答時間を示す。
【0183】
液晶混合物は、好ましくは少なくとも80K、特に好ましくは少なくとも100Kのネマチック相範囲、および20℃において250mPa・s以下、好ましくは200mPa・s以下の回転粘度を有する。
【0184】
VA型のディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体は、負の誘電異方性、好ましくは、20℃および1kHzで、約−0.5〜−10、特には約−2.5〜−7.5のΔεを有する。
【0185】
本発明によるVA型のディスプレイにおいては、スイッチが切れている状態で、LC媒体層における分子が電極表面に垂直に配向(ホメオトロピック配向)しているか、または、チルトホメオトロピック配向を有している。電極に電圧を印加すると、分子長軸が電極表面に平行なLC分子の再配向が起きる。
【0186】
本発明によるOCB型のディスプレイにおいては、LC媒体層における分子は「ベンド」配向をしている。電圧を印加すると、分子長軸が電極表面に垂直なLC分子の再配向が起きる。
【0187】
OCB型のディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体は、正の誘電異方性、好ましくは、20℃および1kHzで、約+7〜+17のΔεを有する。
【0188】
VA型のディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体の複屈折Δnは、好ましくは0.16未満であり、特に好ましくは0.06および0.14の間であり、特には0.07および0.12の間である。
【0189】
OCB型のディスプレイにおいて使用するための本発明によるLC媒体の複屈折Δnは、好ましくは0.14および0.22の間であり、特には0.16および0.22の間である。
【0190】
また、本発明によるLC媒体は、例えば、重合開始剤、阻害剤、安定剤、表面活性化物質またはキラルドーパントなどの当業者に既知で文献に記載されている更なる添加剤を含んでもよい。これらは、重合性でも非重合性でもよい。従って、重合性添加剤は重合性成分または成分A)に分類される。従って、非重合性添加剤は非重合性成分または成分B)に分類される。
【0191】
LC媒体は、例えば、1種類以上のキラルドーパント、好ましくは、下の表Bからの化合物から成る群より選択されるものを含んでもよい。
【0192】
更に、多色性色素、ナノ粒子、導電性塩、錯塩、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するための物質を含む群より選択され、0〜15重量%、好ましくは0〜10重量%の1種類以上の添加剤をLC媒体に添加できる。適切で好ましい導電性塩は、例えば、エチルジメチルドデシルアンモニウム4−ヘキソキシベンゾエート、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.24巻、249〜258頁、1973年参照)である。この型の物質は、例えば、独国特許出願公開第22 09 127号公報、独国特許出願公開第22 40 864号公報、独国特許出願公開第23 21 632号公報、独国特許出願公開第23 38 281号公報、独国特許出願公開第24 50 088号公報、独国特許出願公開第26 37 430号公報および独国特許出願公開第28 53 728号公報に記載されている。
【0193】
本発明によるLC媒体の好ましい実施形態a)〜y)の個々の成分は既知であるか、それらの調製方法は文献に記載されている標準的な方法に基づいているため、調製方法は当業者によって先行技術より容易に導くことができるかの何れかである。式CYの対応する化合物は、例えば、欧州特許出願公開第0 364 538号公報に記載されている。式ZKの対応する化合物は、例えば、独国特許出願公開第26 36 684号公報および独国特許出願公開第33 21 373号公報に記載されている。
【0194】
本発明によって使用できるLC媒体は、例えば、1種類以上の上述の化合物を、上で定義される通りの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することにより、それ自身は従来の方法で調製される。一般に、より少量で使用される成分の所望量を、主要構成成分を構成する成分に、有利には昇温して、溶解する。また、成分の溶液を、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノールといった有機溶媒に混合し、完全に混合後、例えば蒸留により、溶媒を再び除去することも可能である。本発明は、更に、本発明によるLC媒体を調製するための方法にも関する。
【0195】
また、本発明によるLC媒体が、例えば、H、N、O、Cl、Fが対応する同位体に置き換えられた化合物も含んで構わないことは、当業者に言うまでもない。
【0196】
本発明によるLCディスプレイの構成は、冒頭で引用した先行技術に記載される通りのPSAディスプレイに対する通常の構造に対応している。突起のない構造が好ましく、特に加えて、カラーフィルター側の電極が構造化されておらず、TFT側の電極のみがスリットを有するものが好ましい。PSA−VAディスプレイ用に特に適切で好ましい電極構造は、例えば、米国特許出願公開第2006/0066793号公報に記載されている。
【0197】
以下の例は、本発明を限定することなく説明する。しかしながら、それらは、当業者に対して、好ましく使用される化合物、それらのそれぞれの濃度およびそれらの互いの組み合わせの好ましい混合の考え方を示す。加えて、例は、どのような特性および特性の組み合わせが入手可能であるかを例示する。
【0198】
以下の略称を使用する:
(n、m、z:それぞれの場合において、互いに独立に、1、2、3、4、5または6)
【0199】
【表1】

【0200】
【表2】

【0201】
【表3】

【0202】
【表4】

【0203】
【表5】


本発明の好ましい実施形態において、本発明によるLC媒体は、表Aからの化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0204】
表Bに、本発明によるLC媒体に添加できる使用可能なキラルドーパントを示す。
【0205】
【表6】

【0206】
【表7】


LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には0.01〜5重量%、特に好ましくは0.1〜3重量%のドーパントを含む。LC媒体は、好ましくは、表Bからの化合物から成る群より選択される1種類以上のドーパントを含む。
【0207】
表Cに、本発明によるLC媒体に添加できる使用可能な安定剤を示す(nは、ここで、1〜12の整数を表す)。
【0208】
【表8】

【0209】
【表9】

【0210】
【表10】

【0211】
【表11】



LC媒体は、好ましくは0〜10重量%、特には1ppm〜5重量%、特に好ましくは1ppm〜1重量%の安定剤を含む。LC媒体は、好ましくは、表Cからの化合物から成る群より選択される1種類以上の安定剤を含む。
【0212】
加えて、以下の略称および記号を使用する:
は20℃における容量閾電圧(V)であり、
は20℃および589nmにおける異常光屈折率であり、
は20℃および589nmにおける常光屈折率であり、
Δnは20℃および589nmにおける光学的異方性であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率であり、
εは20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率であり、
Δεは20℃および1kHzにおける誘電異方性であり、
cl.p.、T(N,I)は透明点(℃)であり、
γは20℃における回転粘度(mPa・s)であり、
は20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
は20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
は20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数(pN)であり、
LTSは試験用セル中で決定される低温安定性(相)であり、
HR20は20℃における電圧保持率(%)であり、および
HR100は100℃における電圧保持率(%)である。
【0213】
他に明記しない限り、本出願において全ての濃度は重量パーセントで示されており、全ての固形分または液晶成分を含み、溶媒を含まない対応する混合物に全体として関する。
【0214】
他に明記しない限り、例えば、融点T(C,N)、スメクチック(S)からネマチック(N)相への転移T(S,N)および透明点T(N,I)などの本出願において示される全ての温度の値は摂氏度(℃)で示される。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは、転移温度を表す。
【0215】
全ての物理的特性は「メルク液晶、液晶の物理的特性」1997年11月、ドイツ国メルク社に従って決定されるか決定されたものであり、それぞれの場合で他に明らかに示さない限り温度は20℃が適用され、Δnは589nmで決定され、Δεは1kHzで決定される。
【0216】
本発明において、用語「閾電圧」は、他に明らかに示さない限り、フレデリックス閾値とも呼ばれる容量閾値(V)に関する。例において、一般的に通常であるが、10%相対コントラストに対する光学的閾値(V10)も示される場合がある。
【0217】
容量閾電圧の測定用に使用されるディスプレイは20μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最表面にラビングされていないポリイミド配向層を有し、配向層は液晶分子のホメオトロピックエッジ配向に効果がある。
【0218】
チルト角の測定用に使用されるディスプレイまたは試験用セルは4μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最表面にポリイミド配向層を有し、ただし、2つのポリイミド配向層は互いに逆平行にラビングされており、液晶分子のホメオトロピックエッジ配向に効果がある。
【0219】
重合性化合物は、所定の時間のUV光照射により、同時に電圧をディスプレイに印加しながら(通常、10V〜30Vの交流、1kHz)、ディスプレイまたは試験用セル中で重合する。例において他に示さない限り、28mW/cmの水銀蒸気ランプを使用し、365nm帯域通過フィルターが装着された標準的なUVメーター(Ushio UNIメーター)を使用して強度を測定する。
【0220】
チルト角は、回転結晶実験(Autronic−Melchers TBA−105)によって決定される。ここで、低い値(即ち、角度90°から大きく外れている)が大きなチルトに対応する。
【0221】
VHR値は次の通り測定する:0.3%の重合性単量体化合物をLCホスト混合物に添加し、生じる混合物をTN−VHR試験用セル(90°でラビング、TNポリイミド配向層、層厚dは約4μm)に導入する。2時間のUV曝露(日照試験)の前後において、100℃で5分後に、1V、60Hz、64μ秒パルスにてHR値を決定する(測定装置:Autronic−Melchers VHRM−105)。
【実施例】
【0222】
<例1>
ネマチックLCホスト混合物N1を以下の通り配合する。
【0223】
【表12】

本発明による0.3%のRM1(フェナントリル2,7−ジメタクリレート)をLC混合物N1に加える:
【0224】
【化58】

結果として得られる混合物を、上記の通りのVAe/o試験セル中に導入する。
【0225】
比較の目的のために、本発明によるRM1の代わりに、先行技術より既知の式AまたはBのRMを使用して、上記の通りのVAe/o試験セルを製造する:
【0226】
【化59】

それぞれのRM/ホスト混合物の組み合わせについて、2つの試験セルを製造する。24Vの電圧(交流)を印加しながら、種々の持続時間で50mW/cmの強度を有するUV光(365nm)をセルに照射し、RMの重合を起す。
【0227】
それぞれの試験セルについて、上に示す通りプレチルト角を決定する。種々の曝露時間のそれぞれについて達成されるプレチルト角を表1に示す。表中に、それぞれの試験系列における2つのセルに関するプレチルト角と、それらより計算される平均プレチルト角とを示す。
【0228】
【表13】

表1より見て取れる通り、先行技術からのRMAまたはBを含むLC媒体よりも、RM1を含む本発明によるLC媒体によって著しく更に低いプレチルト角を達成できる。2分間の曝露時間後の本発明によるLC媒体における平均プレチルト角は67.1°、即ち、平均プレチルト角の変化(即ち、90°の初期配向と比較して)は22.9°であり、これは、RMBを含むLC媒体によって達成される対応する値(3.6°)の6倍以上である。
【0229】
また、表1には、RMAまたはBを含むLC媒体とは対照的に、本発明によるLC媒体によって著しく更に短い曝露時間後において既に低いプレチルト角を達成できることが示されている。例えば、本発明によるLC媒体は僅か45秒の曝露時間後で85.0°の平均プレチルト角を示す一方で、RMAを含むLC媒体については、同様の値(85.5°)は90秒後、即ち、2倍の曝露時間後のみで達成される。
【0230】
<例2>
ネマチックLCホスト混合物N2を以下の通り配合する。
【0231】
【表14】

それぞれの場合において、LCホスト混合物N2と本発明によるRM1またはRMAまたはBとより、例1で記載されるようにして試験セルを製造し、電圧を印加しながらUV照射によって重合し、種々の曝露時間後にプレチルト角を決定する。結果を表2に示す。
【0232】
【表15】

例1で示される通り、RMAまたはBを含むLC媒体と比較して、RM1を含む本発明によるLC媒体は、著しく更に短い曝露時間後に、既に著しく更に低いプレチルト角または匹敵するプレチルト角を示す。
【0233】
<例3>
それぞれの場合において、LCホスト混合物N1と本発明によるRM1またはRMAまたはBとより、例1で記載されるようにして試験セルを製造する。第2の実験においては、重合前に、0.006%(混合物全体に基づく)の光開始剤(PI)Irgacure651(登録商標)を追加的にLC媒体に加える。RMを重合するために、10Vの電圧(交流)を印加しながら、28mW/cmの強度を有するUV光(365nm)をセルに照射するが、ただし、曝露時間は、PIがないサンプルで20分、PIがあるサンプルで2分である。達成されたプレチルト角を表3に示す。
【0234】
【表16】

表3より見て取れる通り、RM1を含む本発明によるLC媒体は、開始剤がある場合およびない場合の両者において、最も低いプレチルト角を示す。
【0235】
<例4>
本発明によるRM1またはRMAまたはBを0.3%追加して、LCホスト混合物N1またはN2からLC媒体を調製し、上記の通りのTN−VHR試験セル内に導入する。上記の通り、UV曝露前後のVHR値を決定する。結果を表4に示す。
【0236】
【表17】

表4より見て取れる通り、RM1を含む本発明によるLC媒体は、ホスト混合物N1については更に著しく高く、RMAまたはBを含む先行技術からのLC媒体と比較して匹敵するVHR値を示す。
【0237】
<例5>
ネマチックLCホスト混合物N3を以下の通り配合する。
【0238】
【表18】

LCホスト混合物N3と、それぞれの場合で0.3%の本発明によるRM1または先行技術からのRMAとより、上記の方法に類似して試験セルを製造し、例1で記載される通りに、電圧を印加しながらUVを照射することによりRMを重合する。種々の曝露時間後に、LCセル中の未重合RMの残存含有量を、それぞれの場合で決定する。このために、試験セルを切断して開き、有機溶媒を使用して混合物を洗浄し、溶液中の残存RMの含有量をHPLCで決定する。これにより、LCセル中での反応性RMの重合の速度および完全性を推定できる(同一の曝露時間において未重合RMの残存含有量が低くなるほど、より速く完全な重合を意味する)。結果を表5に示す。
【0239】
【表19】

表5より見て取れる通り、先行技術からのRMAよりも、本発明によるLCセルにおいて、RM1は著しく更に速い重合速度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶(liquid−crystal:LC)媒体およびLCディスプレイにおける式Iの化合物の使用。
【化1】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
およびRは、P−Sp−、H、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、SF、または、1〜25個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを表し、ただし加えて、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれ互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、−C(R00)=C(R000)−、−C≡C−、−N(R)−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−によって置き換えられていてもよく、ただし加えて、1個以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNまたはP−Sp−によって置き換えられていてもよく、ただし、基RおよびRの少なくとも一つは、基P−Sp−を表すか含有し、
Pは、それぞれの出現において同一または異なって、重合性基を表し、
Spは、それぞれの出現において同一または異なって、スペーサー基または単結合を表し、
00およびR000は、それぞれ互いに独立に、H、または、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
Lは、それぞれの出現において同一または異なって、P−Sp−、H、OH、ハロゲン、SF、NO、炭素基または炭化水素基を表し、
sは、それぞれの出現において同一または異なって、0、1、2または3を表し、
tは、0、1または2を表し、
ただし、以下の化合物は除外される:
【化2】


式中、Spはスペーサー基を表し、P、L、sおよびtは、上で示される意味を有する。)
【請求項2】
PS(polymer stabilised:ポリマー安定化)またはPSA(polymer sustained alignment:ポリマー維持配向)型のLCディスプレイにおける請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項3】
2枚の基板(ただし、該基板の少なくとも一方は光に対して透明であり、該基板の少なくとも一方は電極層を有する)と、および、該基板間に配置され、重合された成分および低分子量成分を含むLC媒体層(ただし、該重合された成分は、1種類以上の重合性化合物を、該LCセルの該基板間において該LC媒体中で電圧を印加しながら重合することで得ることができ、ただし、該重合性化合物の少なくとも1種類は請求項1に記載の式Iの化合物である)とから成るLCセルを含有するPSまたはPSA型のLCディスプレイにおける請求項2に記載の化合物の使用。
【請求項4】
式IにおけるRおよびRが、同一または異なる基P−Sp−を表し、sおよびtが0を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
式Iの化合物が、以下のサブ式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【化3】

(式中、Pはアクリレートまたはメタクリレート基を表し、Spは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有する直鎖状のアルキレンオキシを表し、sおよびtは0を表す。)
【請求項6】
LC媒体が、式CYおよび/またはPYの1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【化4】

(式中、個々の基は、以下の意味を有する:
aは、1または2を表し、
bは、0または1を表し、
【化5】

およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
は、−CH=CH−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−O−、−CH−、−CHCH−または単結合、好ましくは、単結合を表し、
1〜4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、OCF、CF、CH、CHF、CHFを表す。)
【請求項7】
LC媒体が、以下の式の1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【化6】

(式中、個々の基は以下の意味を有する:
【化7】

を表し、
【化8】

を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、ただし加えて、1個または2個の隣接していないCH基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−CH=CH−、−CO−、−OCO−または−COO−で置き換えられていてもよく、
は、−CHCH−、−CH=CH−、−CFO−、−OCF−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C−、−CF=CF−または単結合を表す。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のLCディスプレイ。
【請求項9】
PSA−VA、PSA−OCB、PS−IPS、PS−FFSまたはPS−TNディスプレイであることを特徴とする請求項8に記載のLCディスプレイ。
【請求項10】
請求項1、4または5に記載の式Iの1種類以上の化合物を含むLC媒体。
【請求項11】
請求項10に記載のLC媒体であって、
−1種類以上の重合性化合物を含む重合性成分A)、および
−1種類以上の低分子量化合物を含む液晶成分B)を含み、
重合性成分A)が、請求項1、4または5に記載の式Iの1種類以上の重合性化合物を含むことを特徴とするLC媒体。
【請求項12】
成分B)が、請求項6または7に記載の式CY、PYおよびZKより選択される1種類以上の化合物を含む請求項10または11に記載のLC媒体。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のLC媒体を調製する方法であって、1種類以上の低分子量液晶化合物を、請求項1、4または5に記載の式Iの1種類以上の重合性化合物と、および、任意成分として更なる液晶化合物および/または添加剤と混合することによる方法。

【公表番号】特表2011−515543(P2011−515543A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501117(P2011−501117)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001514
【国際公開番号】WO2009/118086
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】