説明

液晶パネルおよび液晶表示装置

【課題】視野角が広く、どの方向から画面を見ても文字や画像の着色が小さく、カラーシフトが小さい液晶パネル、及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された位相差フィルムとを少なくとも備え、該位相差フィルムは、下記一般式(I)で表される置換基を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含み、波長750nmにおける面内の位相差値が、波長550nmにおける面内の位相差値よりも大きい液晶パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜め方向のコントラスト比が高い液晶パネル、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(以下、LCDという場合がある)は、液晶分子の電気光学特性を利用して、文字や画像を表示する素子である。そのLCDの駆動モードの1つとして、バーティカル・アライメント(VA)モードがある。従来、VAモードのLCDは、視野角が狭いという欠点があった。また、該LCDは、斜め方向から画面を見ると、文字や画像が着色するという課題があった。さらに、該LCDは、方位によって色彩が大きく変化(カラーシフトともいう)するという課題があった。この課題を解決するために、例えば、長波長の光で測定した位相差値が、短波長の光で測定した位相差値よりも大きい特性(逆波長分散特性ともいう)を示す、位相差フィルムを用いた液晶パネルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の液晶パネルを備える液晶表示装置に於いて、視野角が狭いことや、画面の着色および色彩の変化という欠点は、十分に改善されていない。そのため、かかる課題の改善が望まれている。
【特許文献1】特許第3648240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、視野角が広く、且つ、360°どの方向から画面を見ても、文字や画像の着色が小さく、カラーシフトが小さい液晶パネル、及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、以下に示す液晶パネルにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明の液晶パネルは、液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された位相差フィルム(A)と、を少なくとも備え、該位相差フィルム(A)は、下記一般式(I)で表される置換基(a)を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含み、波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])が、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])よりも大きいことを特徴とする。
【0006】
【化1】

【0007】
式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコシキ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコシキ基、直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、またはチオール基を表す(ただし、Rは水素原子ではない)。
【0008】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記液晶セルが、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む。
【0009】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の遅相軸方向が、上記第1の偏光子の吸収軸方向と、実質的に直交である。
【0010】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記熱可塑性ポリマーが、ビニルアセタール系ポリマー、オレフィン系ポリマー、またはカーボネート系ポリマーである。
【0011】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])と、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])との差(ΔRe750−550=Re[750]−Re[550])が5nm以上である。
【0012】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の波長590nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[590])が、0.001以上である。
【0013】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の光弾性係数の絶対値が、50×10−12(m/N)以下である。
【0014】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体が、nx>ny=nzまたはnx>ny>nzの関係を示すものである。
【0015】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)と上記第2の偏光子との間に、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示す位相差フィルム(B)をさらに備えている。
【0016】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(B)が、セルロース系ポリマー、アミドイミド系ポリマー、イミド系ポリマー、アミド系ポリマー、エーテルエーテルケトン系ポリマー、及びシクロオレフィン系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。
【0017】
好ましい実施形態の液晶パネルは、上記位相差フィルム(A)の波長分散値(D)と、上記位相差フィルム(B)の波長分散値(D)の差(D−D)が0.05以上である。
ただし、波長分散値(D)は、式;Re[750]/Re[550]から算出される値である。Re[750]およびRe[550]は、それぞれ波長750nmおよび550nmにおける面内の位相差値である。波長分散値(D)は、式;R40[750]/R40[550]から算出される値である。R40[750]およびR40[550]は、それぞれ波長750nmおよび550nmにおける、法線方向から40度傾斜させて測定した位相差値である。
【0018】
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記いずれかの液晶パネルを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定の位相差フィルムを用いることによって、視野角が広く、さらに、360°どの方向から画面を見ても、文字や画像の着色が小さく、カラーシフトが小さい液晶パネルを提供できる。かかる液晶パネルを備える液晶表示装置は、広視野角で、カラーシフト等が小さく、表示特性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔用語の定義〕
本明細書における用語および記号の定義は以下の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz):
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率である。「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率である。「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内の位相差値:
面内の位相差値(Re[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dにより算出される値である。
(3)40度傾斜の位相差値:
R40[λ]は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの法線方向から40度傾斜させて測定した位相差値をいう。
(4)面内の複屈折率:
面内の複屈折率(Δnxy[λ])は、式;Re[λ]/dにより算出される値である。
(5)厚み方向の位相差値:
厚み方向の位相差値(Rth[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dにより算出される値である。
(6)厚み方向の複屈折率:
厚み方向の複屈折率(Δnxz[λ])は、式;Rth[λ]/dにより算出される値である。
(7)Nz係数:
Nz係数は、式;Rth[590]/Re[590]により算出される値である。
(8)波長分散値:
波長分散値(D)は、式;Re[750]/Re[550]から算出される値である。波長分散値(D)は、式;R40[750]/R40[550]から算出される値である。
(9)本明細書において、「nx=ny」または「ny=nz」と記載するときは、これらが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、例えば、nx=nyと記載する場合であっても、Re[590]が10nm未満である場合を包含する。
(10)本明細書において「実質的に直交」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、90°±2°である場合を包含し、好ましくは90°±1°である。「実質的に平行」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、0°±2°である場合を包含し、好ましくは0°±1°である。
【0021】
〔A.液晶パネルの概要〕
本発明の液晶パネルは、液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された位相差フィルム(A)とを少なくとも備える。
【0022】
上記位相差フィルム(A)は、下記一般式(I)で表される置換基(a)を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含み、波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])が、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])よりも大きい。
【0023】
【化2】

【0024】
式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコシキ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコシキ基、直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、またはチオール基を表す(ただし、Rは水素原子ではない)。
【0025】
本発明の液晶パネルの好ましい実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。この液晶パネル101は、第1の偏光子21と、位相差フィルム(A)31と、液晶セル10と、第2の偏光子22とを少なくともこの順に備える。位相差フィルム(A)31は、液晶セル10と第1の偏光子21との間に配置される。
【0026】
図2は、本発明の第2の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。この液晶パネル102は、第1の偏光子21と、位相差フィルム(A)31と、液晶セル10と、位相差フィルム(B)32と、第2の偏光子22とを少なくともこの順に備える。位相差フィルム(A)31は、液晶セル10と第1の偏光子21との間に配置される。位相差フィルム(B)32は、液晶セル10と第2の偏光子22との間に配置される。このような形態によれば、位相差フィルムが、液晶セルの両側に配置されるため、位相差フィルムに膨張や収縮が生じた場合にも、液晶セルに歪が生じにくい。その結果、光学的なムラの生じにくい液晶パネルを得ることができる。
【0027】
図3は、本発明の第3の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。この液晶パネル103は、第1の偏光子21と、位相差フィルム(A)31と、位相差フィルム(B)32と、液晶セル10と、第2の偏光子22とを少なくともこの順に備える。位相差フィルム(A)31は、位相差フィルム(B)32と第1の偏光子21との間に配置される。位相差フィルム(B)32は、液晶セル10と位相差フィルム(A)31との間に配置される。
【0028】
図4は、本発明の第4の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。この液晶パネル104は、第1の偏光子21と、保護層(A)23と、位相差フィルム(A)31と、液晶セル10と、位相差フィルム(B)32と、保護層(B)24と、第2の偏光子22とを少なくともこの順に備える。保護層(A)23は、第1の偏光子21と位相差フィルム(A)31との間に配置される。保護層(B)24は、第2の偏光子22と位相差フィルム(B)32との間に配置される。位相差フィルム(A)31は、液晶セル10と保護層(A)23との間に配置される。位相差フィルム(B)32は、液晶セル10と保護層(B)24との間に配置される。このような形態によれば、位相差フィルム(A)及び(B)が隣接する偏光子に直接貼着されないため、該偏光子の収縮応力が、位相差フィルムに影響しにくい。その結果、光学的なムラの生じにくい液晶パネルを得ることができる。
【0029】
なお、実用的には、第1及び/又は第2の偏光子の、液晶セルを備える側とは反対側には、任意の保護層や表面処理層が配置され得る。また、上記液晶パネルの構成部材の間には、任意の接着層が設けられ得る。この「接着層」とは、隣り合う部材との面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。上記接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート剤が形成され、その上に接着剤層または粘着剤層が形成されたような多層構造であってもよい。また、接着層は、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。以下、本発明の構成部材の詳細について説明するが、本発明は、下記の特定の実施形態のみに限定されるものではない。
【0030】
〔B.液晶セル〕
図1を参照すると、本発明に用いられる液晶セル10は、一対の基板11、11’と、基板11、11’の間に挟持された表示媒体としての液晶層12とを有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)11’には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線及びソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方の基板(カラーフィルター基板)11には、カラーフィルターが設けられる。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板11’に設けてもよい。あるいは、例えば、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置のバックライトにRGB3色光源が用いられる場合は、上記カラーフィルターは省略され得る。基板11と基板11’との間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御される。基板11及び基板11’の液晶層12と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。あるいは、例えば、パターニングされた透明電極によって形成されるフリンジ電界を利用して、液晶分子の初期配向が制御される場合には、上記配向膜は省略され得る。
【0031】
上記液晶セルは、好ましくは、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む。本明細書において、「ホメオトロピック配列」とは、液晶分子の配向ベクトルが、配向処理された基板と液晶分子の相互作用の結果、基板平面に対し、垂直に(法線方向に)配向した状態のものをいう。なお、上記ホメオトロピック配列は、液晶分子の配向ベクトルが、基板法線方向に対し、わずかに傾いている場合(すなわち液晶分子がプレチルトを有する場合)も包含される。液晶分子がプレチルトを有する場合、そのプレチルト角(基板法線からの角度)は、好ましくは5°以下であり、さらに好ましくは3°以下である。プレチルト角を上記範囲とすることによって、コントラスト比の高い液晶表示装置が得られ得る。
【0032】
上記液晶セルは、好ましくは、屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する。屈折率楕円体がnz>nx=nyの関係を有する液晶セルの駆動モードとしては、例えば、バーティカル・アライメント(VA)モードや、垂直配向型ECB(Electrically Controlled Birefringence)モードが挙げられる。好ましくは、上記液晶セルは、バーティカル・アライメント(VA)モードである。
【0033】
上記VAモードの液晶セルは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態で、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を、基板に対して法線方向の電界で応答させる。具体的には、VAモードの液晶セルは、例えば、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報に記載されている。VAモードの液晶セルは、ノーマリーブラック方式の場合、電界が存在しない状態では、液晶分子が基板に対して法線方向に配向している。このため、該液晶セルは、上下の偏光板を直交配置させると、黒表示が得られる。一方、VAモードの液晶セルは、電界が存在する状態では、液晶分子が偏光板の吸収軸に対して、45°方位に倒れるように動作することによって、透過率が大きくなり、白表示が得られる。
【0034】
上記VAモードの液晶セルは、例えば、特開平11−258605号公報に記載されているように、電極にスリットを形成したものや、表面に突起を形成した基材を用いることによって、マルチドメイン化したものであってもよい。このような液晶セルは、例えば、シャープ(株)製のASV(Advanced Super View)モード、同社製のCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、富士通(株)製のMVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、三星電子(株)製のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、同社製のEVA(Enhanced Vertical Alignment)モード、三洋電機(株)製のSURVIVAL(Super Ranged Viewing by Vertical Alignment)モード等が挙げられる。
【0035】
上記液晶セルの、電界が存在しない状態におけるRthLC[590]は、好ましくは−500nm〜−200nmであり、さらに好ましくは−400nm〜−200nmである。ここで、上記RthLC[590]は、23℃における波長590nmで測定した液晶セルの厚み方向の位相差値である。上記RthLC[590]の値は、液晶分子の複屈折率とセルギャップによって、適宜、設定される。上記液晶セルのセルギャップ(基板間隔)は、通常、1.0μm〜7.0μmである。
【0036】
上記液晶セルは、市販の液晶表示装置に搭載されているものをそのまま用いてもよい。VAモードの液晶セルを含む、市販の液晶表示装置としては、例えば、シャープ(株)製の37V型液晶テレビ(商品名「AQUOS LC−37AD5」)、SUMSUNG社製の32V型ワイド液晶テレビ(商品名「LN32R51B」)、(株)ナナオ製の液晶テレビ(商品名「FORIS SC26XD1」)、AU Optronics社製の液晶テレビ(商品名「T460HW01」)等が挙げられる。
【0037】
〔C.偏光子〕
本明細書において「偏光子」とは、自然光や偏光から任意の偏光に変換し得る素子をいう。本発明に用いられる第1及び第2の偏光子は、特に制限はないが、好ましくは、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものである。このような偏光子は、好ましくは、入射する光を直交する2つの偏光成分に分けたとき、そのうちの一方の偏光成分を透過させる機能を有し、且つ、他方の偏光成分を、吸収、反射、及び散乱させる機能から選ばれる少なくとも1つの機能を有する。上記第1及び第2の偏光子の厚みは、それぞれ、好ましくは5μm〜50μmである。上記第1の偏光子の吸収軸方向は、好ましくは、上記第2の偏光子の吸収軸方向と実質的に直交となるように、第1及び第2の偏光子が配置される。上記第1及び第2の偏光子は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0038】
上記第1及び第2の偏光子は、単体透過率が38%〜45%であり、偏光度が99%以上であるものが好ましい。なお、偏光度の理論上の上限は100%である。単体透過率及び偏光度を上記の条件とする偏光子を用いることによって、正面方向のコントラスト比が高い液晶表示装置が得られ得る。
【0039】
本発明に用いられる第1及び第2の偏光子は、任意の適切なものが選択され得る。上記第1及び第2の偏光子は、好ましくは、ヨウ素とビニルアルコール系ポリマーとを含む。このような偏光子は、通常、ビニルアルコール系ポリマーを主成分とする高分子フィルムを、ヨウ素水溶液で染色し、さらにそれを延伸することによって得ることができる。上記偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは2重量%〜5重量%である。ヨウ素含有量を上記範囲とすることによって、光学特性に優れる偏光子が得られ得る。
【0040】
上記ビニルアルコール系ポリマーは、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。上記ビニルアルコール系ポリマーのケン化度は、好ましくは95モル%以上である。上記ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。ケン化度が上記範囲であるビニルアルコール系ポリマーを用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。
【0041】
上記ビニルアルコール系ポリマーの平均重合度は、目的に応じて、適宜、適切な値が選択され得る。上記平均重合度は、好ましくは1200〜3600である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0042】
上記ビニルアルコール系ポリマーを主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。上記成形加工法としては、例えば、特開2001−315144号公報[実施例1]に記載の方法が挙げられる。
【0043】
上記ビニルアルコール系ポリマーを主成分とする高分子フィルムは、好ましくは、可塑剤及び/又は界面活性剤を含有する。上記可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。上記界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。上記可塑剤及び界面活性剤の含有量は、好ましくはビニルアルコール系ポリマー100重量部に対して、1を超え10重量部以下である。上記可塑剤及び界面活性剤は、偏光子の染色性や延伸性をより一層向上させる目的で使用される。
【0044】
上記ビニルアルコール系ポリマーを主成分とする高分子フィルムは、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製の商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製の商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
【0045】
偏光子の製造方法の一例について、図5を参照して説明する。図5は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。この製造方法においては、ビニルアルコール系ポリマーを主成分とする高分子フィルム301が、繰り出し部300から繰り出され、まず、ヨウ素を含む水溶液浴310中に浸漬される。このとき、高分子フィルム301は、速比の異なるロール311及び312でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤及び染色工程に供される。次に、高分子フィルムは、ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液の浴320中に浸漬され、速比の異なるロール321及び322でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理に供される。架橋処理されたフィルムは、ロール331及び332によって、ヨウ化カリウムを含む水溶液浴330中に浸漬され、水洗処理に供される。水洗処理された高分子フィルムは、乾燥手段340で乾燥され、巻き取り部360にて巻き取られる。偏光子350の延伸倍率は、一般的には、元長の5倍〜7倍である。
【0046】
〔D.位相差フィルム(A)〕
図1〜図4を参照すると、本発明に用いられる位相差フィルム(A)31は、液晶セル10と、第1の偏光子21と、の間に配置される。上記位相差フィルム(A)を配置する際、位相差フィルム(A)の遅相軸方向と、第1の偏光子の吸収軸との位置関係は、目的に応じて、適宜、選択され得る。好ましくは、上記位相差フィルム(A)の遅相軸方向と、上記第1の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交または実質的に平行となるように、位相差フィルム(A)と第1の偏光子が配置される。さらに好ましくは、上記位相差フィルム(A)の遅相軸方向と、上記第1の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交となるように、位相差フィルム(A)と第1の偏光子が配置される。
【0047】
〔D−1.位相差フィルム(A)の材料〕
本発明に用いられる位相差フィルム(A)は、下記一般式(I)で表される置換基(a)を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含む。上記熱可塑性ポリマーの含有量は、位相差フィルム(A)の全固形分100に対して、好ましくは50〜100(重量比)である。本明細書において「熱可塑性」とは、加熱により軟化して塑性を示し、冷却すると固化する性質をいう。また「ポリマー」とは、重合度(当該ポリマーが、複数の構成単位を含む場合は、各構成単位の合計の重合度)が20以上の高重合体を包含し、さらに、重合度が2以上20未満の低重合体(オリゴマーともいう)を包含する。
【0048】
【化3】

【0049】
式(I)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコシキ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコシキ基、直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、またはチオール基を表す(ただし、Rは水素原子ではない)。
以下、「ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコシキ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコシキ基、直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、またはチオール基」を総称して、「置換基(a)」という場合がある。
【0050】
上記式中、Rは、当該置換基(a)が結合している熱可塑性ポリマーの立体配座を制御するために用いられる。具体的には、式(I)の結合手(主鎖との結合部位)に近接するR部位が上記置換基(a)であるため、該置換基(a)と主鎖が立体障害を生じ、上記式(I)のナフチル基の平面構造が、熱可塑性ポリマーの主鎖の配向方向に対して、実質的に直交方向に配向すると考えられる。このように配向する式(I)を有する熱可塑性ポリマーを用いることによって、波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])が、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])よりも大きい(すなわち、逆波長分散特性を示す)、位相差フィルム(A)を得ることができる。
従って、式(I)のRは、水素原子よりも立体的に大きいものであれば、主鎖と立体障害を生じ得るので、Rは上記置換基(a)から適宜選択し得る。
他方、式(I)のR〜Rの部位、R部位に比して主鎖と立体障害を生じ難い部位なので、R〜Rは、水素原子でもよいし、上記置換基(a)でもよい。好ましくは少なくともRが水素原子であり、より好ましくはR〜Rが水素原子である。
【0051】
上記置換基(a)のポリマーへの導入方法は、任意の適切な方法が採用され得る。上記導入方法としては、例えば、(i)上記置換基と置換可能な反応性部位を有するポリマーを予め重合し、該ポリマーの反応性部位に、上記置換基(a)を有する化合物を反応させる方法、(ii)上記置換基(a)を有するモノマーと、他のモノマーとを共重合させる方法が挙げられる。
【0052】
上記置換基(a)を有する化合物及びモノマーは、1−ナフタレン誘導体であり、ポリマーへの導入方法に適したものが選択され得る。上記置換基(a)を有する化合物及びモノマーは、例えば、1−ナフトアルデヒド、1−アミノナフタレン、1−ヒドロキシナフタレン、1−ナフトン、及びそれらの誘導体である。
【0053】
上記熱可塑性ポリマーは、上記置換基(a)を有するものであれば、任意の構造を有するものが採用され得る。上記熱可塑性ポリマーの主鎖の結合は、例えば、アセタール結合、炭素原子同士の結合、カーボネート結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、シロキサン結合等が挙げられる。位相差フィルム(A)の形成材料として好ましい結合は、アセタール結合、炭素原子同士の結合、カーボネート結合である。すなわち、上記熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ビニルアセタール系ポリマー、オレフィン系ポリマー、またはカーボネート系ポリマーである。該ポリマーを用いれば、逆波長分散特性を示し、且つ、光弾性係数の絶対値の小さい位相差フィルム(A)が得られ得るからである。なお、上記オレフィン系ポリマーには、鎖状オレフィンの他に、環状オレフィン系ポリマーも包含する。該環状オレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネンやジシクロペンタジエン等の開環重合体、それらの水素添加物などが挙げられる。
【0054】
特に好ましくは、上記熱可塑性ポリマーは、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも有する。式(II)中、l,m,nの各基本単位の配列順序は、特に制限はなく、交互、ランダム、又はブロックのいずれであってもよい。このような熱可塑性ポリマーは、汎用溶剤(例えば、アセトン、酢酸エチル、トルエン等)への溶解性に優れ、延伸等の操作性に優れたガラス転移温度を示す。
【0055】
【化4】

【0056】
上記一般式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、又はチオール基を表す(ただし、Rは水素原子ではない)。A及びAは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基を表す。Aは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数5〜10の置換若しくは非置換のシクロアルキル基、置換若しくは非置換のフェニル基、置換若しくは非置換のナフチル基、又は置換若しくは非置換の複素環基を表す。Aは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、ベンジル基、シリル基、リン酸基、アシル基、ベンゾイル基、又はスルホニル基を表す。
【0057】
上記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも有する熱可塑性ポリマー(ビニルアセタール系ポリマー)は、例えば、ビニルアルコール系ポリマーと、アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物から選択される少なくとも2種類の化合物を、溶剤に分散又は溶解させて、酸触媒の存在下で反応させる工程を含む方法によって製造される。上記ビニルアルコール系ポリマーの縮合反応は、アルデヒド化合物及び/又はケトン化合物から選択される少なくとも2種類の化合物を、同時に反応させてもよいし、1種類づつ反応(逐次反応)させてもよい。上記ビニルアセタール系ポリマーのアセタール化度は、好ましくは40モル%〜99モル%である。この反応は、ビニルアルコール系ポリマーとの縮合反応であり、アルデヒド化合物が用いられる場合はアセタール化ともいう。なお、本明細書において「アセタール化」は、ケトン化合物を用いたケタール化を包含する。
【0058】
上記一般式(II)中、基本単位lは、例えば、ビニルアルコール系ポリマーと1−ナフトアルデヒド類又は1−ナフトン類との縮合反応によって形成されたユニットである。上記1−ナフトアルデヒド類としては、例えば、2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド、2−エトキシ−1−ナフトアルデヒド、2−プロポキシ−1−ナフトアルデヒド、2−メチル−1−ナフトアルデヒド、2,6−ジメチル−1−ナフトアルデヒド、2,4−ジメチル−1−ナフトアルデヒド、2−ヒドロキシ−1−ナフトアルデヒド等が挙げられる。上記1−ナフトン類としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−アセトナフトン、8’−ヒドロキシ−1’−ベンゾナフトン等が挙げられる。
【0059】
上記一般式(II)中、基本単位mは、ビニルアルコール系ポリマーと、任意のアルデヒド化合物又はケトン化合物との縮合反応によって形成されたユニットである。アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、1,1−ジエトキシエタン(アセタール)、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、2−ニトロベンズアルデヒド、4−シアノベンズアルデヒド、4−カルボキシベンズアルデヒド、4−フェニルベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、6−メトキシ−2−ナフトアルデヒド、3−メチル−2−チオフェンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボキシアルデヒド等が挙げられる。
【0060】
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、t−ブチルケトン、ジプロピルケトン、アリルエチルケトン、アセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、4’−アミノアセトフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、2’−ヒドロキシアセトフェノン、3’−ニトロアセトフェノン、ベンザルアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、4−ニトロベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、p−ブロモベンゾフェノン、シクロヘキシル(フェニル)メタノン、2−ブチロナフトン、1−アセトナフトン等が挙げられる。
【0061】
上記一般式(II)中、Aは、残存する水酸基を保護する(エンドキャップ処理ともいう)ことにより、吸水率を適切な値に調整するために用いられる。吸水率を小さくすると、高い透明性を有し、位相差の安定性に優れた位相差フィルム(A)を得ることができる。ただし、本発明の位相差フィルムが用いられる用途や目的によっては、当該置換基は、エンドキャップ処理されていなくてもよい(すなわち、Aは水素原子のままでよい)。
【0062】
上記Aは、例えば、水酸基の残存するポリマーを得た後に、水酸基と反応して置換基を形成し得る(すなわち、エンドキャップ処理可能な)任意の適切な基(保護基ともいう)が用いられる。上記保護基は、例えば、ベンジル基、4−メトキシフェニルメチル基、メトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、メタンスルホニル基、ビス−4−ニトロフェニルフォスファイト等が挙げられる。上記エンドキャップ処理の反応条件は、例えば、水酸基の残存するポリマーと目的とする置換基の塩化物とを、4(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンなどの触媒の存在下、25℃〜100℃で1時間〜20時間攪拌して行なうことができる。上記保護基を用いることによって、高温多湿の環境下においても、高い透明性を有し、且つ、位相差の安定性に優れた位相差フィルム(A)が得られ得る。
【0063】
上記一般式(II)中、l、m及びnの比率は、目的に応じて、適宜、適切な値が設定され得る。上記基本単位lの比率は、好ましくは2モル%〜40モル%であり、さらに好ましくは2モル%〜30モル%である。上記基本単位mの比率は、好ましくは20モル%〜80モル%であり、さらに好ましくは30モル%〜75モル%である。上記基本単位nの比率は、好ましくは1モル%〜60モル%であり、さらに好ましくは5モル%〜50モル%である。ただし、l+m+n=100モル%。各基本単位の比率を、上記範囲とするポリマーを用いることによって、優れた逆波長分散特性を示し、延伸による位相差の発現性に優れ、面内の複屈折率(Δnxy)が大きい、位相差フィルム(A)を得ることができる。
【0064】
上記熱可塑性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは3,000〜500,000である。重量平均分子量を上記範囲とすることによって、機械的強度に優れた位相差フィルム(A)を得ることができる。なお、上記重量平均分子量は、テトラヒドロフランを展開溶媒にしたGPC法(ポリスチレン標準)により求めた値である。
【0065】
上記熱可塑性ポリマーのガラス転移温度は、好ましくは100℃〜190℃であり、さらに好ましくは110℃〜170℃である。ガラス転移温度を上記範囲とすることによって、耐熱性と成形加工性に優れた位相差フィルム(A)を得ることができる。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121−1987に準じた、DSC法によって求めることができる。
【0066】
上記位相差フィルム(A)は、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、及び増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の使用量は、上記熱可塑性ポリマー100重量部に対して、好ましくは0を超え30重量部以下である。
【0067】
〔D−2.位相差フィルム(A)の諸特性〕
本発明に用いられる位相差フィルム(A)は、波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])が、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])よりも大きい。位相差フィルム(A)は、いわゆる、逆波長分散特性を示すものである。
【0068】
上記位相差フィルム(A)の波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])と、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])との差(ΔRe750−550=Re[750]−Re[550])は、好ましくは3nm以上であり、さらに好ましくは4nm〜25nmである。ΔRe750−550を上記範囲とする位相差フィルム(A)を用いることによって、視野角が広く、且つ、360°どの方向から画面を見ても、文字や画像の着色が小さく、カラーシフトが小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0069】
従来、ΔRe750−550が大きい位相差フィルムを作製することは困難であった。本発明の位相差フィルム(A)であれば、ΔRe750−550を大きくすることができるため、特に、赤色の波長領域で理想的な波長分散特性が得られる。従って、この位相差フィルム(A)を用いた液晶パネルは、例えば、黒画像を表示した場合に、バックライトの光が視認側に漏れることを低減できる。よって、液晶表示装置が、赤色に着色することを防止できる。
【0070】
上記位相差フィルム(A)の波長分散値(D)は、好ましくは1を超え、さらに好ましくは1.02〜1.30であり、特に好ましくは1.04〜1.15である。ここで、波長分散値(D)は、式;Re[750]/Re[550]から算出される値である。Dを上記範囲とする位相差フィルム(A)を用いることによって、より一層優れた表示特性を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0071】
上記位相差フィルム(A)の波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0072】
上記位相差フィルム(A)の波長590nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[590])は、好ましくは0.001以上であり、さらに好ましくは0.0012以上である。上記Δnxy[590]が大きい位相差フィルムは、所望の位相差値を有するものを薄く作製することができる。上記位相差フィルム(A)が、特に、上記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含む場合、他の逆波長分散特性を示すポリマーに比べ、Δnxy[590]が大きいという特徴を有する。上記Δnxy[590]は、フィルムの光学的な均一性の点から、好ましくは0.005以下である。
【0073】
上記位相差フィルム(A)の光弾性係数の絶対値(C[590])(m/N)は、好ましくは50×10−12以下であり、さらに好ましくは30×10−12以下である。上記範囲の光弾性係数の絶対値が小さい位相差フィルムは、例えば、応力による光学的なムラが生じにくい。上記C[590]は、Δnxy[590]が大きい位相差フィルム(A)を得るという点から、好ましくは5×10−12以上である。
【0074】
上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体は、好ましくはnx>ny=nzの関係(正の一軸性ともいう)を示すか、又はnx>ny>nzの関係(負の二軸性ともいう)を示すものである。上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体がnx>ny=nzの関係を示す場合、当該位相差フィルム(A)のRe[590]及びRth[590]は10nm以上であり、且つ、|Rth[590]−Re[590]|は10nm未満である。上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を示す場合、当該位相差フィルム(A)のRe[590]及びRth[590]は10nm以上であり、且つ、Rth[590]−Re[590]が10nm以上である。
【0075】
上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体が、nx>ny=nzの関係を示す場合、上記位相差フィルム(A)のRe[590]は、好ましくは60nm〜180nmであり、さらに好ましくは70nm〜170nmである。上記位相差フィルム(A)のNz係数は、好ましくは0.9を超え1.1未満である。
【0076】
上記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体が、nx>ny>nzの関係を示す場合、上記位相差フィルム(A)のRe[590]は、好ましくは40nm〜160nmであり、さらに好ましくは50nm〜150nmである。上記位相差フィルム(A)のRth[590]は、好ましくは60nm〜180nmであり、さらに好ましくは70nm〜170nmである。上記位相差フィルム(A)のNz係数は、好ましくは1.1〜6.0であり、さらに好ましくは1.1〜4.0である。
【0077】
上記位相差フィルム(A)が、図4に示す構成で用いられる場合、上記位相差フィルム(A)の位相差値は、保護層(A)の屈折率楕円体や位相差値に応じて、適宜、適切に設定され得る。例えば、保護層(A)の屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性ともいう)を示す場合、上記位相差フィルム(A)のRe[590]は、保護層(A)のRth[590]との和(Re[590]+Rth[590])が、好ましくは100nm〜180nmとなるように設定される。具体的には、例えば、前記Rth[590]が60nmであるときは、上記位相差フィルム(A)のRe[590]は、好ましくは40nm〜120nmである。なお、保護層(A)の詳細については、後述する。
【0078】
上記位相差フィルム(A)の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値に設定され得る。上記厚みは、好ましくは20μm〜200μmであり、さらに好ましくは30μm〜100μmである。上記の厚み範囲の位相差フィルム(A)であれば、実用上十分な機械的強度と、目的とする光学特性が得られ得る。
【0079】
上記位相差フィルム(A)の吸水率は、好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは2%〜6%以下である。また、上記位相差フィルム(A)の透湿度は、好ましくは400g/m以下であり、さらに好ましくは10g/m〜200g/mである。上記位相差フィルム(A)は、特に、上記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含む場合、他の汎用ポリマーに比べ、吸水率が高く、且つ、透湿度が低いという特徴を有する。このような位相差フィルム(A)は、偏光子に対して優れた密着性を有し、且つ、水蒸気による偏光子の劣化を防止できる。
【0080】
〔D−3.位相差フィルム(A)の製造方法〕
1つの実施形態において、本発明に用いられる位相差フィルム(A)は、上記熱可塑性ポリマー、又は上記熱可塑性ポリマーを含む樹脂組成物をシート状に成形して、高分子フィルム(A)を得、さらに該高分子フィルム(A)を延伸することによって、上記熱可塑性ポリマー中の主鎖及び側鎖を配向させて作製される。
【0081】
上記高分子フィルム(A)は、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。上記成形加工法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、ソルベントキャスティング法等が挙げられる。
【0082】
上記高分子フィルム(A)を延伸する方法としては、目的に応じて、任意の適切な延伸方法が採用され得る。上記延伸方法としては、例えば、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、縦横逐次二軸延伸法等が挙げられる。延伸方向は、フィルムの長手方向(MD方向)であってもよいし、幅方向(TD方向)であってもよい。また、特開2003−262721号公報の図1に記載の延伸法を用いて、斜め方向に延伸(斜め延伸)してもよい。
【0083】
上記高分子フィルム(A)を延伸する条件は、適宜、設定され得る。延伸温度は、好ましくは、高分子フィルム(A)のガラス転移温度(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃である。延伸倍率は、好ましくは、1を超え3倍以下である。延伸時の送り速度は、機械精度、安定性等から、好ましくは0.5m/分〜30m/分である。このような条件を選択することによって、位相差値が均一になり易く、かつ、透明性の高い位相差フィルム(A)を得ることができる。
【0084】
〔E.位相差フィルム(B)〕
本発明の液晶パネルは、好ましくは、上記位相差フィルム(A)と上記第2の偏光子との間に、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係(負の一軸性ともいう)を示す位相差フィルム(B)をさらに備える。上記位相差フィルム(B)は、好ましくは、液晶セルの複屈折(nz>nx=ny)を光学的に補償するため、液晶セルに隣接するように配置される。1つの実施形態においては、図2及び図4に示すように、位相差フィルム(B)は、液晶セルと第2の偏光子との間に配置される。別の実施形態においては、図3に示すように、位相差フィルム(B)は、液晶セルと位相差フィルム(A)との間に配置される。このような液晶パネルは、より一層広い視野角を得ることができる。
【0085】
〔E−1.位相差フィルム(B)の材料〕
上記位相差フィルム(B)を形成する材料としては、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示すものであれば、任意の適切なものが採用され得る。上記位相差フィルム(B)は、好ましくは、セルロース系ポリマー、アミドイミド系ポリマー、イミド系ポリマー、アミド系ポリマー、エーテルエーテルケトン系ポリマー、及びシクロオレフィン系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む。これらのポリマーは、ソルベントキャスティング法でシート状に形成された場合、溶剤の蒸発過程で、分子が自発的に配向しやすいため、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示す位相差フィルムが得られやすいとう特徴を有する。これらのポリマーは、例えば、米国特許5,344,916号に記載の方法によって得ることができる。
【0086】
上記位相差フィルム(B)は、液晶性組成物を用いたものであってもよい。液晶性組成物が用いられる場合、上記位相差フィルム(B)は、プレーナ配列に配向させた棒状液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層、又はカラムナー配列に配向させたディスコチック液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層を含む。液晶化合物を用いれば、厚み方向の複屈折率が大きいため、薄型の位相差フィルムを得ることができる。
【0087】
上記プレーナ配列に配向させた棒状液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層からなる位相差フィルムは、例えば、特開2003−287623号公報に記載の方法によって得ることができる。また、上記カラムナー配列に配向させたディスコチック液晶化合物を含む液晶性組成物の固化層若しくは硬化層からなる位相差フィルムは、例えば、特開平9−117983号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0088】
特に好ましくは、上記位相差フィルム(B)は、イミド系ポリマーを含む。好ましくは、上記イミド系ポリマーは、ヘキサフルオロイソプロピリデン基及び/又はトリフルオロメチル基を有する。さらに好ましくは、上記イミド系ポリマーは、下記一般式(III)で表される繰り返し単位、又は下記一般式(IV)で表される繰り返し単位を少なくとも有する。これらの繰り返し単位を含むイミド系ポリマーは、透明性、汎用溶剤に対する溶解性に優れ、厚み方向の複屈折率が大きい。さらに、急峻な正の波長分散特性を示すため、後述する位相差フィルム(A)との波長分散特性の関係;ΔDを大きくすることができる。
【0089】
【化5】

【0090】
【化6】

【0091】
上記一般式(III)及び(IV)中、G及びG’は、共有結合、CH基、C(CH基、C(CF基、C(CX基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0092】
上記一般式(III)中、Lは置換基であり、eはその置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるか又は異なる。eは、0から3までの整数である。
【0093】
上記一般式(IV)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるか又は異なる。fは、0から4までの整数であり、g及びhは、それぞれ1から3までの整数である。
【0094】
上記イミド系ポリマーは、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとの反応によって得ることができる。上記一般式(III)の繰り返し単位は、例えば、ジアミンとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを用い、これと芳香環を少なくとも2つ有するテトラカルボン酸二無水物と反応させて、得ることができる。上記一般式(IV)の繰り返し単位は、例えば、テトラカルボン酸二無水物として、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物を用い、これと芳香環を少なくとも2つ有するジアミンとを反応させて、得ることができる。上記反応は、例えば、2段階で進行する化学イミド化であってもよいし、1段階で進行する熱イミド化であってもよい。
【0095】
上記テトラカルボン酸二無水物は、任意の適切なものが選択され得る。上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン酸二無水物等が挙げられる。
【0096】
上記ジアミンは、任意の適切なものが選択され得る。上記ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル等が挙げられる。
【0097】
上記イミド系ポリマーは、ジメチルホルムアミド溶液(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)を展開溶媒とするポリエチレンオキサイド標準の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは20,000〜180,000である。該ポリマーのイミド化率は、好ましくは95%以上である。上記イミド化率は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸由来のプロトンピークと、ポリイミド由来のプロトンピークとの積分強度比から求めることができる。
【0098】
〔E−2.位相差フィルム(B)の諸特性〕
上記位相差フィルム(B)は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示す。この場合、上記位相差フィルム(B)のRe[590]は、10nm未満であり、さらに好ましくは5nm未満である。上記位相差フィルム(B)のRth[590]は、10nm以上であり、好ましくは100nm〜350nmであり、さらに好ましくは120nm〜310nmである。
【0099】
上記位相差フィルム(B)が、図4に示す構成で用いられる場合、上記位相差フィルム(B)の位相差値は、保護層(B)の光学特性を考慮して、適宜、適切に設定され得る。例えば、保護層(B)の屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示す場合、上記位相差フィルム(B)のRth[590]は、保護層(B)のRth[590]との和(Rth[590]+Rth[590])が、好ましくは100nm〜350nmとなるように設定される。具体的には、例えば、前記Rth[590]が60nmであるときは、上記位相差フィルム(B)のRth[590]は、好ましくは40nm〜290nmである。なお、保護層(B)の詳細については、後述する。
【0100】
上記位相差フィルム(B)の波長590nmにおける透過率(T[590])は、好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0101】
上記位相差フィルム(B)の波長590nmにおける厚み方向の複屈折率(Δnxz[590])は、好ましくは0.005以上であり、さらに好ましくは0.01以上であり、特に好ましくは0.03以上である。上記Δnxz[590]が大きい位相差フィルムは、所望の位相差値を有するものを薄く作製することができる。上記Δnxz[590]は、フィルムの光学的な均一性の点から、好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.06以下である。
【0102】
上記位相差フィルム(B)は、好ましくは、波長750nmにおける40度傾斜の位相差値(R40[750])が、波長550nmにおける40度傾斜の位相差値(R40[550])よりも小さい。位相差フィルム(B)は、いわゆる、正の波長分散特性を示すものである。
【0103】
上記位相差フィルム(B)の波長550nmにおける40度傾斜の位相差値(R40[550])と、波長750nmにおける40度傾斜の位相差値(R40[750])との差(ΔR40550−750=R40[550]−R40[750])は、好ましくは5nm以上であり、さらに好ましくは5nm〜20nmである。ΔR40550−750を上記範囲とする位相差フィルム(B)を用いることによって、視野角が広く、且つ、360°どの方向から画面を見ても、文字や画像の着色が小さく、カラーシフトが小さい液晶表示装置を得ることができる。
【0104】
上記位相差フィルム(B)のDは、好ましくは1.0未満であり、さらに好ましくは0.85〜0.98であり、特に好ましくは0.90〜0.96である。ここで、波長分散値(D)は、式;R40[750]/R40[550]から算出される値である。Dを上記範囲とする位相差フィルム(B)を用いることによって、より一層優れた表示特性を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0105】
上記位相差フィルム(A)の波長分散値(D)と、上記位相差フィルム(B)の波長分散値(D)の差(ΔD=D−D)は、好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.07〜0.17であり、特に好ましくは0.09〜0.15である。ΔDを上記範囲とする位相差フィルムを用いることによって、液晶パネルの光学的な補償がより最適に行なわれる結果、より一層優れた表示特性を有する液晶表示装置を得ることができる。
【0106】
上記位相差フィルム(B)の厚みは、目的に応じて、適宜、適切な値に設定され得る。上記厚みは、好ましくは0.5μm〜100μmである。上記位相差フィルム(B)として、イミド系ポリマーが用いられる場合、該位相差フィルム(B)の厚みは、好ましくは0.5μm〜10μmであり、さらに好ましくは0.5μm〜6μmである。上記の範囲であれば、薄型で、且つ、目的とする光学特性を有する位相差フィルム(B)を得ることができる。
【0107】
〔E−3.位相差フィルム(B)の製造方法〕
本発明に用いられる位相差フィルム(B)の製法は、上述したようなポリマー分子の自発的な分子配向を利用する方法や、液晶性組成物を用いる方法のほかに、任意の成形加工法や延伸方法が選択され得る。成形加工法や延伸方法は、例えば、上記D−3項に記載したものが挙げられる。
【0108】
〔F.保護層(A)及び(B)〕
本発明に用いられる保護層(A)及び(B)は、隣接する偏光子の収縮や膨張を低減し、さらに機械的強度を高めるために使用される。上記保護層(A)及び(B)は、それぞれ同じものであってもよいし、異なっていてもよい。上記保護層(A)及び(B)の厚みは、好ましくは20μm〜100μmである。
【0109】
上記保護層(A)及び(B)の屈折率楕円体は、好ましくはnx=ny>nzの関係を示すか、又はnx=ny=nzの関係(光学的に等方性ともいう)を示す。上記保護層の屈折率楕円体が、x=ny>nzの関係を示す場合、該保護層のRe[590]は10nm未満であり、Rth[590]は、10nm〜80nmである。上記保護層の屈折率楕円体が、nx=ny=nzの関係を示す場合、上記保護層のRe[590]及びRth[590]は、いずれも10nm未満である。
【0110】
上記保護層(A)及び(B)を形成する材料としては、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、上記保護層は、セルロース系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを包含する高分子フィルムを含む。上記セルロース系ポリマーを包含する高分子フィルムは、例えば、特開平7−112446号公報の実施例1に記載の方法によって得ることができる。上記シクロオレフィン系ポリマーを包含する高分子フィルムは、例えば、特開2001−350017号公報に記載の方法によって得ることができる。上記アクリル系ポリマーを包含する高分子フィルムは、例えば、特開2004−198952号公報の実施例1に記載の方法によって得ることができる。
【0111】
〔G.液晶表示装置〕
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルを含む。図6は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。なお、見やすくするために、図6の各構成部材の縦、横及び厚みの比率は、実際とは異なっていることに留意されたい。この液晶表示装置200は、液晶パネル100と、液晶パネル100の一方の側に配置されたバックライトユニット80とを少なくとも備える。なお、図示例では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、これは例えば、サイドライト方式のものであってもよい。
【0112】
直下方式が採用される場合、上記バックライトユニット80は、好ましくは、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85とを少なくとも備える。サイドライト方式が採用される場合、好ましくは、バックライトユニットは、上記の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを少なくとも備える。なお、図6に例示した光学部材は、本発明の効果が得られる限りにおいて、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モードなど、用途に応じてその一部が省略され得るか、又は、他の光学部材に代替され得る。
【0113】
上記液晶表示装置は、液晶パネルの背面から光を照射して画面を見る、透過型であっても良いし、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る、反射型であっても良い。あるいは、上記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であっても良い。
【0114】
本発明の液晶表示装置は、例えば、視野角が広いという特長を有する。上記液晶表示装置の視野角(コントラスト比10以上の、極角値の範囲)は、好ましくは、上下方向で160°以上であり、且つ、左右方向で160°以上である。上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のコントラスト比の平均値は、好ましくは50以上であり、さらに好ましくは80〜200である。さらに、上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のコントラスト比の最小値は、好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30〜150である。
【0115】
本発明の液晶表示装置は、例えば、黒画像を表示した画面を斜め方向から見た場合に、360°どの方向から画面を見ても、赤色の着色が小さいという特徴と有する。上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のaの平均値は、好ましくは6以下であり、さらに好ましくは2以下である。上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のaの最大値は、好ましくは11以下であり、さらに好ましくは7以下である。なお、上記aは、CIE1976L色空間の色座標である。上記aは、画面の赤色の大きさを表し、画面に着色のない理想的な状態は、a=0である。
【0116】
本発明の液晶表示装置は、例えば、黒画像を表示した画面を斜め方向から見た場合に、360°どの方向から画面を見ても、カラーシフトが小さいという特徴と有する。上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のΔa[={(a+(b1/2]の最大値と最小値の差は、好ましくは9以下であり、さらに好ましくは5以下である。上記液晶表示装置の極角60°、方位角0°〜360°のΔaの最大値は、好ましくは11以下であり、さらに好ましくは7以下である。なお、上記a及びbは、CIE1976L色空間で定義される、色座標a及びbである。Δaは、画面の着色の大きさを表し、画面に着色のない理想的な状態は、Δa=0である。
【0117】
〔H.用途〕
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0118】
好ましくは、本発明の液晶表示装置の用途は、テレビである。上記テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0119】
本発明について、以上の実施例及び比較例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光子の単体透過率の測定:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値を測定した。
(2)偏光子の偏光度の測定:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて、偏光子の平行透過率(H)及び直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より求めた。上記平行透過率(H)は、同じ種類の2枚の偏光子を、互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ種類の2枚の偏光子を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
(3)位相差値(Re[λ]、Rth[λ])、Nz係数、T[590]の測定方法:
王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、23℃で測定した。なお、平均屈折率は、アッベ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−M4」]を用いて測定した値を用いた。
(4)厚みの測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、アンリツ製デジタルマイクロメーター「KC−351C型」を使用して測定した。
(5)ポリイミドの分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリエチレンオキサイドを標準試料として算出した。装置、器具及び測定条件は下記の通りである。
・サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液を調製した。
・前処理:8時間静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した。
・分析装置:東ソー製「HLC−8020GPC」
・カラム:東ソー製 GMHXL+GMHXL+G2500HXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm(計90cm)
・溶離液:ジメチルホルムアミド(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)
・流量:0.8ml/min.
・検出器:RI(示差屈折計)
・カラム温度:40℃
・注入量:100μl
(6)光弾性係数の絶対値(C[590])の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、サンプル(サイズ2cm×10cm)の両端を挟持して応力(5〜15N)をかけながら、サンプル中央の位相差値(23℃/波長590nm)を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから算出した。
(7)吸水率の測定方法:
JIS K 7209−1984「プラスチックの吸水率及び沸騰吸水率試験方法」のA法に準じて測定し、試験片の状態調節後の質量(M)と、吸水前後の質量増加分(M−M)の比[{(M−M)/M}×100]から求めた。Mは、試験片の吸水後の質量である。試験片は、サイズ5cm×5cmのものを用いた。
(8)透湿度の測定方法:
JIS Z 0208−1976「防湿包装材料の透湿度試験方法」に準じて測定した。サンプルは、厚み3mm以下の70〜80mmφの円形フィルムシートを用いた。透湿試験は、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件の恒湿恒温装置を用いた。
(9)ガラス転移温度(Tg)の測定方法:
示差走査熱量計[セイコー(株)製 製品名「DSC−6200」]を用いて、JIS K 7121(1987)(プラスチックの転移温度の測定方法)に準じた方法により求めた。具体的には、3mgのサンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;80ml/分)で昇温(加熱速度;10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。熱量計は、標準物質(インジウム)を用いて温度補正を行なった。
(10)コントラスト比の測定方法:
23℃の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製の製品名「EZ Contrast160D」を用いて、白画像及び黒画像を表示した場合のXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、液晶パネルの長辺を方位角0°とし、法線方向を極角0°とした。
(11)液晶表示装置の着色(a)及びカラーシフト量(Δa)の測定方法:
23℃の暗室でライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製の製品名「EZ Contrast160D」を用いて、黒画像を表示した画面の極角60°、方位角0°〜360°におけるCIE1976L色空間で定義される、色座標a及びbを測定した。斜め方向のカラーシフト量(Δa)は、式;{(a+(b1/2から算出した。
【0120】
偏光子の準備
[参考例1]
市販の偏光板[日東電工(株)製 商品名「NPF SIG1423DU」]を、偏光板Aとして、そのまま用いた。この偏光板Aは、偏光子と、該偏光子の両側に配置された保護層とを含む。上記偏光子の単体透過率は43%であり、偏光度は99%であった。上記偏光板Aの2つの保護層は、いずれも、屈折率楕円体がnx=ny=nzの関係を示し、Re[590]=0.5nmであり、Rth[590]は1nmである。
【0121】
[参考例2]
市販の偏光板[日東電工(株)製 商品名「NPF SEG1423DU」]を、偏光板Bとして、そのまま用いた。この偏光板Bは、偏光子と、該偏光子の両側に配置された保護層とを含む。上記偏光子の単体透過率は43%であり、偏光度は99%であった。上記偏光板Bの2つの保護層は、いずれも、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示し、Re[590]=0.5nmであり、Rth[590]は60nmである。
【0122】
液晶セルの準備
[参考例3]
VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置[ソニー製の40インチ液晶テレビ 商品名「BRAVIA KDL−40X1000」]から液晶パネルを取り出た。この液晶セルの上下に配置されていた偏光板等の光学フィルムを全て取り除いた。得られた液晶セルのガラス板の表裏を洗浄し、液晶セルAを得た。
【0123】
ポリビニルアセタール系ポリマーの合成
[参考例4]
8.8gのビニルアルコール系ポリマー[日本合成化学(株)製 商品名「NH−18」(重合度1800、ケン化度99.0%)]を、105℃の空気循環式乾燥オーブンで2時間乾燥させた後、167.2gのジメチルスルホシキドに溶解した。ここに、11.8gの2−メトキシ−1−ナフトアルデヒド、10.6gのベンズアルデヒド、及び0.80gのp−トルエンスルホン酸・1水和物を加えて、40℃で1時間攪拌した。反応溶液に、23.64gの1,1−ジエトキシエタン(アセタール)をさらに加えて、40℃で1時間攪拌した。その後、2.13gのトリエチルアミンを加えて反応を終了させた。得られた粗生成物は、1Lのメタノールで再沈殿を行った。ろ過した重合体をテトラヒドロフランに溶解し、再びメタノールで再沈殿を行った。これを、ろ過、乾燥して、11.5gの白色ポリマーを得た。このポリマーは、H−NMRで測定したところ、下記構造式(V)で表される繰り返し単位を有するビニルアセタール系ポリマーであった。また、このビニルアセタール系ポリマーのガラス転移温度は131℃であった。
【0124】
【化7】

【0125】
イミド系ポリマーの合成
[参考例5]
機械式攪拌装置、ディーンスターク装置、窒素導入管、温度計及び冷却管を取り付けた反応容器(500mL)内に2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物[クラリアントジャパン(株)製]17.77g(40mmol)及び2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル[和歌山精化工業(株)製]12.81g(40mmol)を加えた。続いて、イソキノリン2.58g(20mmol)をm−クレゾール275.21gに溶解させた溶液を加え、23℃で1時間攪拌して(600rpm)均一な溶液を得た。次に、反応容器を、オイルバスを用いて反応容器内の温度が180±3℃になるように加温し、温度を保ちながら5時時間攪拌して黄色溶液を得た。更に3時間攪拌を行ったのち、加熱及び攪拌を停止し、放冷して室温に戻すと、ポリマーがゲル状となって析出した。
【0126】
上記反応容器内の黄色溶液にアセトンを加えて上記ゲルを完全に溶解させ、希釈溶液(7重量%)を作製した。この希釈溶液を、2Lのイソプロピルアルコール中に攪拌を続けながら少しずつ加えると、白色粉末が析出した。この粉末を濾取し、1.5Lのイソプロピルアルコール中に投入して洗浄した。さらにもう一度同様の操作を繰り返して洗浄した後、前記粉末を再び濾取した。これを60℃の空気循環式恒温オーブンで48時間乾燥した後、150℃で7時間乾燥して、下記構造式(VI)のポリイミド粉末を得た(収率85%)。上記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は124,000、イミド化率は99.9%であった。
【0127】
【化8】

【0128】
位相差フィルム(A)の作製
[参考例6]
参考例4で作製したビニルアセタール系ポリマー(25重量部)をメチルエチルケトン(100重量部)に溶解し20重量%の溶液を調整した。この溶液を、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ(株)製 商品名「ルミラーS27−E」]の表面に、コンマコーターにてシート状に均一に流延し、多室型の空気循環式乾燥オーブン中(誤差±1℃)で、80℃で20分間、120℃で20分間、150℃で60分間と低温から徐々に昇温しながら溶剤を蒸発させた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、厚み120μmの高分子フィルム(A−1)を作製した。この高分子フィルム(A−1)の透過率は90%、残留揮発成分量は5%であった。上記高分子フィルム(A−1)を、乾熱式二軸延伸装置を用いて、固定端横一軸延伸法にて、135℃±1℃で1.7倍に延伸した。このようにして、得られた位相差フィルム(A−1)を表1に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
[参考例7]
参考例6と同様の方法で作製した高分子フィルム(A−1)を、乾熱式二軸延伸装置を用いて、固定端横一軸延伸法にて、140℃±1℃で1.7倍に延伸した。このようにして、得られた位相差フィルム(A−2)を表1に示す。
【0131】
位相差フィルム(B)の作製
[参考例8]
参考例5で作製したポリイミド粉末をメチルイソブチルケトンに溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム[東レ(株)製 商品名「ルミラーS27−E」]の表面に、コンマコーターにてシート状に均一に流延し、多室型の空気循環式乾燥オーブン中(誤差±1℃)で、80℃で2分間、135℃で5分間、150℃で10分間と低温から徐々に昇温しながら溶剤を蒸発させた。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して、厚み3μmのポリイミド層(位相差フィルム(B))を作製した。上記位相差フィルム(B)は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示し、T[590]=91%、Re[590]=1nm、Rth[590]=120nm、D(R40[750]/R40[550])=0.936であった。
【0132】
液晶パネル及び液晶表示装置の作製
[実施例1]
参考例3で準備した液晶セルAの視認側の表面に、参考例6で得られた位相差フィルム(A−1)を、アクリル系粘着剤層(20μm)を介して、上記位相差フィルム(A−1)の遅相軸方向が、上記液晶セルAの長辺方向と、実質的に直交するように貼着した。次に、上記位相差フィルム(A−1)の視認側の表面に、参考例1で得られた偏光板Aを、アクリル系粘着剤層(20μm)を介して、上記偏光板Aの吸収軸方向が、上記液晶セルAの長辺方向と、実質的に平行となるように貼着した。このとき、上記偏光板Aの吸収軸方向と、上記位相差フィルム(A−1)の遅相軸方向は実質的に直交である。
【0133】
続いて、上記液晶セルAのバックライト側の表面に、参考例7で得られた位相差フィルム(B)を、アクリル系粘着剤層(20μm)を介して、貼着した。次に、上記位相差フィルム(B)のバックライト側の表面に、参考例2で得られた偏光板Bを、アクリル系粘着剤層(20μm)を介して、上記偏光板Bの吸収軸方向が、上記液晶セルAの長辺方向と、実質的に直交するように貼着した。このとき、上記偏光板Aの吸収軸方向と、上記偏光板Bの吸収軸方向とは、実質的に直交である。図7は、実施例1の液晶パネルに用いた位相差フィルム(A−1)と位相差フィルム(B)の波長分散特性を示す。図7における縦軸は、位相差フィルム(A−1)のプロットに対してはRe/Re[550]であり、位相差フィルム(B)のプロットに対してはR40/R40[550]である。上記液晶パネルAは、ΔD(D−D)=0.12である。
【0134】
この液晶パネルAを、元の液晶表示装置のバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作製した。図8は、実施例1の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。図8に示すように、この液晶表示装置Aは、全方位でコントラスト10以下の特性領域は観測されなかった。従って、上記液晶表示装置Aの上下方向、及び左右方向の視野角は、いずれも160°以上であった。
上記液晶表示装置Aは、
極角60°,方位角0°〜360°のコントラスト比の平均値=81.5、
極角60°,方位角0°〜360°のコントラスト比の最小値=24.9、
極角60°,方位角0°〜360°のaの平均値=1.00、
極角60°,方位角0°〜360°のaの最大値=5.60、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値と最小値の差=3.77、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値=8.59、
であった。
【0135】
[実施例2]
位相差フィルム(A−1)に代えて位相差フィルム(A−2)を用い、偏光板Aに代えて偏光板Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、液晶パネルB及び液晶表示装置Bを作製した。上記液晶パネルBは、ΔD(D−D)=0.116である。この液晶表示装置Bも、全方位でコントラスト10以下の特性領域は観測されなかった。従って、上記液晶表示装置Bの上下方向、及び左右方向の視野角は、いずれも160°以上であった。
上記液晶表示装置Bは、
極角60°,方位角0°〜360°のコントラスト比の平均値=79.9、
極角60°,方位角0°〜360°のコントラスト比の最小値=34.1、
極角60°,方位角0°〜360°のaの平均値=5.38、
極角60°,方位角0°〜360°のaの最大値=10.51、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値と最小値の差=7.03、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値=10.59、
であった。
【0136】
[比較参考例1]
VAモードの液晶セルを含む市販の液晶表示装置[ソニー製 40インチ液晶テレビ 商品名「BRAVIA KDL−40X1000」]を、液晶表示装置Xとしてそのまま用いた。
上記液晶表示装置Xは、
極角60°,方位角0°〜360°のaの平均値=6.67、
極角60°,方位角0°〜360°のaの最大値=11.84、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値と最小値の差=9.31、
極角60°,方位角0°〜360°のΔaの最大値=11.85、
であった。
【0137】
[評価]
図9は、実施例1及び比較参考例1の液晶表示装置の、黒画像を表示した画面の極角60°、方位角0°〜360°における着色(a)の変化である。図10は、実施例1及び比較参考例1の液晶表示装置の、黒画像を表示した画面の極角60°、方位角0°〜360°におけるカラーシフト量(Δa)の変化である。図9及び図10から明らかなように、実施例1の液晶表示装置は、比較参考例1の液晶表示装置に比べて、a及びΔaの方位角に依存した変化量が格段に小さく、360°どの方位から画面を見ても、着色とカラーシフトが格段に小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上のように、本発明の液晶パネルは、優れた表示特性を示すため、液晶テレビ、携帯電話などに好適に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の第1の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【図5】本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。
【図7】実施例1の液晶パネルに用いた位相差フィルム(A−1)と位相差フィルム(B)の波長分散特性を示すグラフ図である。
【図8】実施例1の液晶表示装置のコントラスト等高線図である。
【図9】実施例1及び比較参考例1の液晶表示装置の、黒画像を表示した画面の極角60°、方位角0°〜360°における着色(a)の変化を示すグラフ図である。
【図10】実施例1及び比較参考例1の液晶表示装置の、黒画像を表示した画面の極角60°、方位角0°〜360°におけるカラーシフト量(Δa)の変化を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0140】
10 液晶セル
11、11’ 基板
12 液晶層
21 第1の偏光子
22 第2の偏光子
23 保護層(A)
24 保護層(B)
31 位相差フィルム(A)
32 位相差フィルム(B)
80 バックライトユニット
81 光源
82 反射フィルム
83 拡散板
84 プリズムシート
85 輝度向上フィルム
101、102、103、104 液晶パネル
200 液晶表示装置
300 繰り出し部
301 高分子フィルム
310 ヨウ素を含む水溶液浴
320 ホウ酸とヨウ化カリウムとを含む水溶液浴
330 ヨウ化カリウムを含む水溶液浴
311、312、321、322、331、332 ロール
340 乾燥手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルと、該液晶セルの一方の側に配置された第1の偏光子と、該液晶セルの他方の側に配置された第2の偏光子と、該液晶セルと該第1の偏光子との間に配置された位相差フィルム(A)と、を少なくとも備え、
該位相差フィルム(A)は、下記一般式(I)で表される置換基(a)を少なくとも有する熱可塑性ポリマーを含み、波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])が、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])よりも大きい、液晶パネル:
【化1】

式中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のアルコシキ基、炭素数1〜4の直鎖若しくは分枝のチオアルコシキ基、直鎖若しくは分枝のアルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、またはチオール基を表す(ただし、Rは水素原子ではない)。
【請求項2】
前記液晶セルは、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む、請求項1に記載の液晶パネル。
【請求項3】
前記位相差フィルム(A)の遅相軸方向が、前記第1の偏光子の吸収軸方向と、実質的に直交である、請求項1または2に記載の液晶パネル。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、ビニルアセタール系ポリマー、オレフィン系ポリマー、又はカーボネート系ポリマーである、請求項1から3のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項5】
前記位相差フィルム(A)の波長750nmにおける面内の位相差値(Re[750])と、波長550nmにおける面内の位相差値(Re[550])との差(ΔRe750−550=Re[750]−Re[550])が3nm以上である、請求項1から4のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項6】
前記位相差フィルム(A)の波長590nmにおける面内の複屈折率(Δnxy[590])が、0.001以上である、請求項1から5のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項7】
前記位相差フィルム(A)の光弾性係数の絶対値が、50×10−12(m/N)以下である、請求項1から6のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項8】
前記位相差フィルム(A)の屈折率楕円体が、nx>ny=nzまたはnx>ny>nzの関係を示す、請求項1から7のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項9】
前記位相差フィルム(A)と前記第2の偏光子との間に、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を示す位相差フィルム(B)をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の液晶パネル。
【請求項10】
前記位相差フィルム(B)が、セルロース系ポリマー、アミドイミド系ポリマー、イミド系ポリマー、アミド系ポリマー、エーテルエーテルケトン系ポリマー、及びシクロオレフィン系ポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項9に記載の液晶パネル。
【請求項11】
前記位相差フィルム(A)の波長分散値(D)と、前記位相差フィルム(B)の波長分散値(D)の差(D−D)が0.05以上である、請求項9または10に記載の液晶パネル:
ここで、波長分散値(D)は、式;Re[750]/Re[550]から算出される値であり、Re[750]およびRe[550]は、それぞれ波長750nmおよび550nmにおける面内の位相差値であり、波長分散値(D)は、式;R40[750]/R40[550]から算出される値であり、R40[750]およびR40[550]は、それぞれ波長750nmおよび550nmにおける、法線方向から40度傾斜させて測定した位相差値である。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−9389(P2008−9389A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130131(P2007−130131)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】