説明

液晶パネル検査装置および液晶パネル検査方法

【課題】検査用照明光を液晶パネルに照射して検査を行う場合に液晶パネルでの温度ムラの発生を抑制することのできる液晶パネル検査装置、および液晶パネル検査方法を提供すること。
【解決手段】液晶パネル検査装置は、液晶装置2の液晶パネル3に照射される光を出射する光源部と、液晶装置2が取り付けられるアルミニウム合金製のパネル載置台42と、液晶パネル3とパネル載置台42との間に配置された樹脂製シート52とを有している。樹脂製シート52は、両面に粘着性を備えたシリコーン樹脂製シートであり、密着性が高いとともに、熱伝導率が高い。そのため、樹脂製シート52を介して、液晶パネル3内における温度の均一性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルに検査用照明光を出射して液晶パネルの検査を行う液晶パネル検査装置、および液晶パネル検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の投射型表示装置では、光変調用のライトバルブとして、液晶装置が広く利用されている。かかる液晶装置が投射型表示装置の筺体内に組み込まれる前には、例えば、液晶パネルに検査用照明光を出射して液晶パネルにより変調された光をスクリーン等に投射し、投射された画像に基づいて液晶パネルを検査する工程が行われる。その際、液晶パネルは、検査用照明光の照射によって、投射型表示装置で使用される温度にまで加熱される。
【0003】
一方、投射型表示装置に使用される液晶装置として、液晶パネルと、液晶パネルを収容するホルダーと、このホルダーを液晶パネルとともに密閉収容するケースとを有し、ホルダーとケースとの間に、液晶パネルを加熱するヒーター等が配置された構成が提案されている。また、かかる液晶装置については、そのままで温度に対する液晶パネルの耐久試験を行うことが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−181805号公報の段落[0015]等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶パネルの検査工程において、ハロゲンランプやメタルハライドランプ等の光源からの光を液晶パネルに照射すると、液晶パネルに照射される光の強度は、その中心部が強く、その周辺部が弱いため、液晶パネル内には、十字状の温度のムラが発生し、適正な検査が行えないという問題点がある。すなわち、液晶パネル内に温度のムラが発生すると、温度のムラに応じて、液晶パネルでの複屈折のムラが発生するため、スクリーンに投射される画像には、図9に示す十字状の照度のムラが発生する。例えば、スクリーンに全面黒表示を行った場合、斜線を施した十字状領域では黒であるが、斜線を施していない角領域では光の漏れが発生してしまい、液晶パネルの適切な検査が困難になる。
【0006】
なお、特許文献1に記載の液晶装置は特殊な構造であり、一般的な液晶装置については適用することができない。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、検査用照明光を液晶パネルに照射して検査を行う場合に液晶パネルでの温度ムラの発生を抑制することのできる液晶パネル検査装置、および液晶パネル検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶パネル検査装置は、一対の基板間に液晶層が保持された液晶パネルが載置されるパネル載置台と、前記液晶パネルに照射される検査用照明光を出射する光源部と、前記基板より高い熱伝導率を有し、前記液晶パネルと前記パネル載置台との間において前記液晶パネルの前記パネル載置台側の面に密着する樹脂製シートと、を有することを特徴とする。なお、本発明における「樹脂製シート」とはゴム状のものも含む意味である。
【0009】
また、本発明に係る液晶パネル検査方法は、一対の基板間に液晶層が保持された液晶パネルに検査用照明光を照射し、該液晶パネルにより変調された光に基づいて当該液晶パネルを検査するにあたって、前記液晶パネルの少なくとも一方の面に、前記基板より高い熱伝導率を有する樹脂製シートを密着させておくことを特徴とする。
【0010】
本発明では、熱伝導率が高い樹脂製シートを液晶パネルに密着させ、この状態で、液晶パネルに検査用照明光を照射し、液晶パネルにより変調された光に基づいて液晶パネルを検査する。その際、液晶パネルは、検査用照明光の照射によって温度が上昇するとともに、樹脂製シートを介して、液晶パネルの温度の高い部分から温度の低い部分へ熱が効率的に伝わる。従って、液晶パネル内での温度ムラの発生を抑制することができるので、液晶層の温度ムラに起因する複屈折ムラの発生を抑制することができる。従って、液晶パネルにより変調された光は、液晶パネル内での温度ムラの影響を受けないので、液晶パネルを適切に検査することができる。
【0011】
本発明において、前記樹脂製シートは、少なくとも前記液晶パネルに接する面が粘着性を有していることが好ましい。かかる構成によれば、樹脂製シートと液晶パネルとを確実に密着させることができるので、樹脂製シートを介しての熱伝達がスムーズである。従って、液晶パネル内での温度ムラの発生を抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記パネル載置台は、前記基板より高い熱伝導率を有し、前記樹脂製シートは、前記パネル載置台側に位置する面が粘着性を有していることが好ましい。かかる構成によれば、樹脂製シートは、パネル載置台に確実に密着するので、樹脂製シートおよびパネル載置台を介して、液晶パネル内での温度の均一化を図ることができる。
【0013】
本発明において、前記樹脂製シートとしては、シリコーン樹脂製シートを挙げることができ、かかる樹脂製シートによれば、熱伝導率が20W/(m・K)の樹脂製シートを実現することができる。
【0014】
本発明において、前記液晶パネルは、外周端部分が枠状のフレームに保持された状態で前記パネル載置台に載置される場合があり、この場合、前記パネル載置台において、前記液晶パネルの画像表示領域と重なる領域では、該領域の周りに比して高い位置に前記樹脂製シートの表面が位置していることが好ましい。かかる構成によれば、液晶パネルを検査する際、液晶パネルの外周端部分が枠状のフレームに保持されている場合でも、液晶パネルの画像表示領域と樹脂製シートとを確実に密着させることができる。
【0015】
本発明において、前記液晶パネルは、投射型表示装置のライトバルブ用であり、前記液晶パネルに対しては、当該液晶パネルによって変調された光を投射する投射光学系が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、液晶パネルで変調された光により生成された画像内での照度ムラ等を確認するのが容易である。
【0016】
本発明において、前記液晶パネルは、反射型の液晶パネルである場合、前記光源部および前記投射光学系に対しては、前記光源部から出射された検査用照明光を前記液晶パネルに導くとともに、前記液晶パネルによって変調された光を前記投射光学系へ導く偏光ビームスプリッターが設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、反射型の液晶パネルについても検査することができる。
【0017】
本発明において、前記パネル載置台には、前記液晶パネルを加熱する加熱装置が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、液晶パネルを任意の温度で検査することができるので、液晶パネルが投射型表示装置に搭載された状態と同様な状態での検査を行うことができる。すなわち、液晶パネルの特性を検査する際の液晶パネルの温度は、一般に、検査用照明光の光量や冷却ファンの冷却能力等で決まってしまうが、加熱装置を設ければ、液晶パネルの温度を様々な温度にして検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した液晶パネル検査装置で検査される液晶装置の説明図である。
【図2】図1に示す液晶装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【図3】本発明を適用した液晶パネル検査装置の概略構成図である。
【図4】図3に示すパネル載置台への液晶装置の載置状態を示す断面図である。
【図5】図3に示す液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。
【図6】図3に示す液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の他の実施の形態に係るパネル載置台への液晶パネルの載置状態を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態に係る液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。
【図9】従来の液晶パネル検査装置を用いた場合にスクリーンに投射される画像の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0020】
[反射型の液晶パネルに対する適用例]
(液晶装置の構成)
図1は、本発明を適用した液晶パネル検査装置1で検査される液晶装置2の説明図であり、(A)は、液晶装置2の各構成要素を対向基板6の側から見た平面図、(B)は、(A)のH−H′断面の断面図である。
【0021】
図1において、本発明の液晶パネル検査装置および液晶パネル検査方法で検査される液晶装置2は、例えば、反射型の液晶装置であり、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの反射型の液晶パネル3を有している。液晶パネル3は、その中央領域に複数の画素がマトリクス状に配列された画像表示領域3a(画素配列領域)を備えている。かかる液晶パネル3では、素子基板5と対向基板6とが所定の隙間を介してシール材7によって貼り合わされており、シール材7は対向基板6の外縁に沿うように枠状に設けられている。素子基板5と対向基板6との間のうち、シール材7で囲まれた領域内には液晶層8が保持されている。本形態において、素子基板5および対向基板6は、いずれも四角形であり、液晶パネル3の略中央には、画像表示領域3aが四角形の領域として設けられている。
【0022】
素子基板5において、画像表示領域3aの外側では、素子基板5の一辺に沿ってデータ線駆動回路9および複数の端子10が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路11が形成されている。また、素子基板5では、画像表示領域3aの内側で複数本のデータ線および複数本の走査線が縦横に伸びており、データ線駆動回路9は各データ線に電気的に接続され、走査線駆動回路11は各走査線に電気的に接続されている。端子10には、フレキシブル配線基板(図示省略)が接続されており、素子基板5には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0023】
素子基板5の対向基板6と対向する面側において、画像表示領域3aには、画素トランジスター、および画素トランジスターに対応して設けられた画素電極12がマトリクス状に形成されており、かかる画素電極12の上層側には配向膜13が形成されている。対向基板6において、素子基板5と対向する一方面側には共通電極14が形成されており、共通電極14の上層には配向膜15が形成されている。
【0024】
素子基板5において、シール材7より外側において対向基板6の角部分と重なる領域には、素子基板5と対向基板6との間で電気的導通をとるための基板間導通部16が形成されている。かかる基板間導通部16には、導電粒子を含んだ基板間導通材が配置されており、対向基板6の共通電極14は、基板間導通材を介して素子基板5側に電気的に接続されている。そのため、共通電極14には、素子基板5の側から共通電位Vcomが印加されている。
【0025】
本形態において、液晶パネル3は反射型であるため、共通電極14はITO膜(Indium
Tin Oxide)等の透光性導電膜によって形成され、画素電極12は、アルミニウム膜等の反射性導電膜によって形成されている。そのため、本形態の液晶装置2では、対向基板6側から入射した光は、素子基板5側で反射されて対向基板6側から出射される間に変調される。これに対して、共通電極14および画素電極12の双方を透光性導電膜によって形成すれば、液晶パネル3を透過型として構成することができ、この場合、対向基板6側から入射した光は、素子基板5側から透過する間に変調される。なお、液晶装置2では、使用する液晶層8の種類や、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、位相差フィルム、偏光板等が液晶パネル3に対して所定の向きに配置される。
【0026】
本形態の液晶パネル3は、ノーマリーブラックモードの液晶パネルであり、後述する検査工程において、液晶パネル3を全点灯状態で検査する場合、全画素がオンになるような画像信号が供給され、液晶パネル3を全消灯状態で検査する場合、全画素がオフになるような画像信号が供給される。
【0027】
(液晶装置の電子機器への搭載例)
図2は、図1に示す液晶装置2を用いた投射型表示装置20の概略構成図である。液晶装置2は、例えば、投射型表示装置20(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバルブとして用いられる。投射型表示装置20において、光源部21は、システム光軸L1に沿って光源22、インテグレーターレンズ23および偏光変換素子24が配置された偏光照明装置25を有している。また、投射型表示装置20は、システム光軸L1に沿って、偏光照明装置25から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面26aにより反射させる偏光ビームスプリッター26と、偏光ビームスプリッター26のS偏光光束反射面26aから反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー27と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー28とを有している。
【0028】
また、投射型表示装置20は、各色光が入射する3つの液晶装置2(反射型の液晶装置2R、2G、2B)を備えており、光源部21は、3つの液晶装置2R、2G、2Bに所定の色光を供給する。投射型表示装置20においては、3つの液晶装置2R、2G、2Bにて変調された光をダイクロイックミラー27、28、および偏光ビームスプリッター26にて合成した後、この合成光を投射光学系29によってスクリーン30等の被投射部に投射する。なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成してもよい。
【0029】
また、液晶装置2は、モバイルコンピューター、携帯電話機、情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電子機器のカラー表示装置として用いることができる。この場合、対向基板6には、カラーフィルター(図示省略)や保護膜が形成される。
【0030】
(液晶パネル検査装置の構成)
図3は、本発明を適用した液晶パネル検査装置1の概略構成図である。図4は、図3に示すパネル載置台42への液晶装置2の載置状態を示す断面図である。本形態の液晶パネル検査装置1は、反射型の液晶パネル3の各種の特性を検査するための装置であり、かかる液晶パネル検査装置1では、例えば、被投射部であるスクリーン40に投射された画像を目視で確認することで、液晶パネル3の照度のムラ、シミ、表示不良および動画不良等が検査される。
【0031】
図3に示すように、液晶パネル検査装置1は、液晶パネル3に照射される検査光用照明光を出射する光源部41と、液晶パネル3が載置されるパネル載置台42と、液晶パネル3によって変調された光をスクリーン40等の被投射部に拡大投射する投射光学系43とを有している。光源部41は、システム光軸L2に沿って光源44、カラーフィルター45および偏光板46が配置された偏光照明装置47を有している。また、液晶パネル検査装置1は、システム光軸L2に沿って、偏光照明装置47から出射されたP偏光光束を透過させるとともに液晶装置2で反射されたS偏光光束を反射させるS偏光光束反射面48aを備える偏光ビームスプリッター48(光路分離素子)を備えている。なお、偏光照明装置47は、偏光板46に代えて、偏光変換素子(ポラライジングコンバーター(PLC))を備えていても良い。
【0032】
本形態において、光源44は、例えば、ハロゲンランプまたはメタルハライドランプ等であり、白色光を出射する。カラーフィルター45は、光源44から出射された光のうち、緑色光の成分を通過させる。従って、光源部41は、検査用照明光として、液晶パネル3に緑色の単色光を照射する。かかる液晶パネル検査装置1において、液晶パネル3で変調された光は、偏光ビームスプリッター48によって、投射光学系43に向かって反射され、投射光学系43によってスクリーン40に投射される。なお、システム光軸L2に沿って、偏光ビームスプリッター48と液晶パネル2との間には位相差補償板49が配置され、偏光ビームスプリッター48と投射光学系43との間には偏光板50が配置されている。
【0033】
本形態において、パネル載置台42は、液晶パネル3において素子基板5や対向基板6に用いられる石英基板やガラス基板(熱伝導率=0.55〜0.75W/(m・K))より熱伝導率が高い材料、例えば、アルミニウム合金(熱伝導率=237W/(m・K))からなり、直方体形状を有している。
【0034】
本形態において、液晶パネル3は、図2を参照して説明した投射型表示装置に搭載される際と同様、その外周端部分が四角形の枠状のフレーム51に保持されており、液晶パネル3は、フレーム51に保持された状態で、素子基板5を下向きにしてパネル載置台42に載置されている。この状態で、フレーム51は、液晶パネル3より下方に突出しており、液晶パネル3の裏面は、フレーム51の下面51aより上方に位置する。
【0035】
ここで、液晶パネル3とパネル載置台42との間には、樹脂製シート52が配置されており、液晶装置2は、樹脂製シート52を介してパネル載置台42に載置されている。より具体的には、パネル載置台42において、液晶パネル3が載置される載置面42aには、四角形状に窪む凹部42bが形成されており、かかる凹部42bの内部に樹脂製シート52が配置されている。ここで、凹部42bの深さは、樹脂製シート52の厚さより小である。このため、樹脂製シート52の下半部は、凹部42bの中に位置し、上半部は凹部42bから外に突出している。
【0036】
また、樹脂製シート52および凹部42bは、少なくとも液晶パネル3の画像表示領域3a(図1参照)と重なるサイズの矩形形状を有している。このため、パネル載置台42において、液晶パネル3の画像表示領域3aと重なる領域では、かかる領域の周りに比して高い位置に樹脂製シート52の表面が位置している一方、フレーム51が重なる領域は、樹脂製シート52の表面より低い領域になっている。また、樹脂製シート52および凹部42bは、フレーム51の内周端よりも小さく形成されているため、フレーム51の内周端と樹脂製シート52との間には隙間が形成されている。従って、フレーム51は、パネル載置台42から浮いており、フレーム51の下面51aと載置面42aとの間には隙間が形成されている。
【0037】
このように構成した液晶パネル検査装置1において、樹脂製シート52はシリコーン系樹脂製シートであり、温度耐久性に優れているとともに、極めて硬度が低い。そのため、樹脂製シート52は、柔軟性および凹凸への追従性が高い。しかも、樹脂製シート52は両面に粘着性を備えている。従って、樹脂製シート52は、液晶パネル3やパネル載置台42に対する密着性に優れている。それ故、図4に示すように、パネル載置台42の上に、樹脂製シート52および液晶パネル3をこの順に載置するだけで、樹脂製シート52は、液晶パネル3等の自重により、液晶パネル3に密着するとともに、パネル載置台42(凹部42bの底部)に密着することになる。
【0038】
また、樹脂製シート52は、液晶パネル3において素子基板5や対向基板6に用いられる石英基板やガラス基板(熱伝導率=0.55〜0.75W/(m・K))より熱伝導率が高い材料からなる。本形態において、樹脂製シート52の熱伝導率は、ガラス基板の熱伝導率よりも少なくとも10倍以上高く、例えば、20W/(m・K)である。かかる樹脂製シート52としては、ポリマテック株式会社の型番「PT−V」で特定される樹脂製の放熱シートであり、その厚さは0.25〜2.0mmである。
【0039】
(検査時の液晶パネル3の温度分布とスクリーンに投射される画像の照度分布)
図5は、図3に示す液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。図6は、図3に示す液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。図5(A)、(B)において、四角マークは、液晶パネル3のX部分に対応する液晶パネル3の裏面部分の温度であり、三角マークは、Y部分に対応する液晶パネル3の裏面部分の温度であり、丸マークは、Z部分に対応する液晶パネル3の裏面部分の温度である。また、図6(A),(B)において、三角マークは、液晶パネル3のX部分からスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比を示し、丸マークは、液晶パネル3のX部分からスクリーン40へ投射された光の照度と、Z部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比を示す。なお、図6に示す結果は、液晶パネル3を全消灯状態で検査した場合の値であり、その際、全画素がオフになるような画像信号が液晶パネル3に供給される。
【0040】
図3および図4を参照して説明した液晶パネル検査装置1を用いて、液晶パネル3の検査を行う際に、光源部41から液晶装置2に検査用照明光を照射すると、液晶パネル3により変調された光がスクリーン40に投射される。従って、投射された画像に基づいて液晶パネル3を検査することができる。その際、本形態の液晶パネル3は、ノーマリーブラックモードの液晶パネルであり、液晶パネル3を全点灯状態で検査する場合、全画素がオンになるような画像信号が供給され、液晶パネル3を全消灯状態で検査する場合、全画素がオフになるような画像信号が供給される。
【0041】
かかる検査工程において、液晶パネル3に検査用照明光が照射されると、検査用照明光によって、液晶パネル3が加熱される。その際、本形態では、図4を参照して説明したように、樹脂製シート52が液晶パネル3およびパネル載置台42に密着している。このため、液晶パネル3内において、温度が高い方から低い方に樹脂製シート52を介して熱が伝わる。また、液晶パネル3内において、温度が高い方から低い方に樹脂製シート52およびパネル載置台42を介して熱が伝わる。従って、画像表示領域3aの中心部分(図1(A)のX部分)、および画像表示領域3aの対角線上の2箇所の角部分(図1(A)のY部分およびZ部分)の各々の位置における液晶パネル3の裏面部分の温度は、照射開始からの時間経過に伴って、例えば、図5(A)に示すように変動するが、画像表示領域3a内の位置による温度差が極めて小さい。
【0042】
従って、液晶パネル3のX部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、図6(A)の三角マークで示すように、照射開始後の時間が経過しても、1または1に近い値を示す。同様に、液晶パネル3のX部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Z部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、図6(A)の丸マークで示すように、照射開始後の時間が経過しても、1または1に近い値を示す。
【0043】
これに対して、図3および図4を参照して説明した液晶パネル検査装置と同様な装置において、樹脂製シート52を用いずに、液晶パネル3を直接、パネル載置台42に載置した場合(比較例)、液晶パネル3のX部分、Y部分およびZ部分の各々の位置における液晶パネル3の裏面部分の温度は、照射開始からの時間の経過に伴って、例えば、図5(B)に示すように変動し、画像表示領域3a内の位置による温度差がかなり大きい。
【0044】
従って、比較例において、光源部41から液晶装置2へ光を照射した際、液晶パネル3のX部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、図6(B)の三角マークで示すように、時間経過とともに1から大きく外れることになる。同様に、液晶パネル3のX部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Z部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、図6(B)の丸マークで示すように、時間経過とともに1から大きく外れることになる。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、液晶パネル3の裏面に密着する樹脂製シート52が液晶パネル3とパネル載置台42との間に配置されている。また、本形態では、樹脂製シート52は、高い熱伝導率を有している。そのため、液晶パネル3に照射される光の中心部の強度が強く、その周辺部の強度が弱くても、光源部41から液晶装置2へ光が照射されたときに、樹脂製シート52を介して、液晶パネル3の温度の高い部分から温度の低い部分へ熱を効率的に伝導することができる。特に本形態では、アルミニウム合金等からなるパネル載置台42にも樹脂製シート52が密着しているため、光源部41から液晶装置2へ光が照射されたときには、樹脂製シート52およびパネル載置台42を介して、液晶パネル3の温度の高い部分から温度の低い部分へ熱をより効率的に伝導することができる。
【0046】
従って、例えば、図5(A)に示すように、液晶パネル3の中心部の温度と角部の温度との差を小さくすることができる。すなわち、液晶パネル3内での温度ムラの発生を抑制することができる。その結果、液晶パネル3内での複屈折ムラを抑制することができ、例えば、図6(A)に示すように、X部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分またはZ部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、照射開始後の時間が経過しても、1または1に近い値となる。すなわち、スクリーン40に投射される画像の照度のムラの発生を抑制することができる。従って、本形態では、液晶パネル検査装置1を用いて、液晶パネル3の適切な特性検査を行うことが可能になる。
【0047】
しかも、樹脂製シート52は、両面が粘着性を有している。このため、樹脂製シート52は、液晶パネル3およびパネル載置台42に確実に密着するため、温度を均一化する効果が優れている。
【0048】
また、樹脂製シート52は、両面が粘着性を有しているとともに、パネル載置台42の凹部42bの中に配置されている。そのため、液晶パネル3およびパネル載置台42と樹脂製シート52とのずれを防止することができる。
【0049】
また、本形態では、パネル載置台42において、液晶パネル3の画像表示領域3aと重なる領域では、かかる領域の周りに比して高い位置に樹脂製シート52の表面が位置している一方、フレーム51が重なる領域は、樹脂製シート52の表面より低い領域になっている。このため、液晶パネル3がフレーム51に保持された状態で、フレーム51が液晶パネル3より下方に突出している場合でも、液晶装置2の自重によって、液晶パネル3と樹脂製シート52とを密着させることができる。しかも、本形態では、フレーム51の内周端と樹脂製シート52との間に隙間が形成されているため、フレーム51の内周端の影響で、液晶パネル3と樹脂製シート52との密着が妨げられることはない。それ故、本形態では、液晶装置2がフレーム51に支持されていても、液晶装置2の自重によって、液晶パネル3と樹脂製シート52とを密着させることができる。
【0050】
さらに、本形態では、液晶パネル3に緑色の単色光が照射されており、スクリーン40には、緑色または黒色の画像が投射される。そのため、青色の画像や赤色の画像がスクリーン40に投射される場合と比較して、スクリーン40に投射される画像に対する視認性が高いとともに、液晶パネル3を目視で検査する場合でも、作業者の目が疲れにくい。
【0051】
(パネル載置台42等の変形例)
図7は、本発明の他の実施の形態に係るパネル載置台への液晶パネルの載置状態を示す断面図である。上述した形態では、樹脂製シート52は、フレーム51の内周端よりも小さく形成されており、フレーム51の下面51aとパネル載置台42の載置面42aとの間には隙間が形成されているが、図7(A)、(B)に示すように、樹脂製シート52が液晶パネル3よりもサイズが大きく、フレーム51の下面51aと載置面42aとの間に樹脂製シート52が位置する構成であってもよい。
【0052】
この場合でも、図7(A)に示すように、フレーム51の下面51aと素子基板5の裏面とが同一平面上に配置されていれば、液晶パネル3をフレーム51に保持された状態で検査する場合でも、液晶パネル3と樹脂製シート52とを密着させることができる。
【0053】
また、図7(B)に示すように、パネル載置台42に段部42cを設けることにより、液晶パネル3の画像表示領域3aと重なる領域では、かかる領域の周りに比して高い位置に樹脂製シート52の表面が位置している構成とすれば、フレーム51が液晶パネル3より下方に突出している場合でも、液晶パネル3と樹脂製シート52とを密着させることができる。
【0054】
また、図7(C)に示すように、液晶装置2をフレーム51に取り付けずにそのまま、樹脂製シート52を介してパネル載置台42に載置してもよい。かかる構成によれば、液晶パネル3と樹脂製シート52とを密着させることができる。
【0055】
(パネル載置台42に加熱装置を付加した構成例)
図8は、本発明の他の実施の形態に係る液晶パネル検査装置の効果を説明するためのグラフである。上述した形態において、パネル載置台42に対して、液晶パネル3を加熱する加熱装置を設けてもよい。例えば、パネル載置台42として、例えば、液晶パネル3を加熱可能なホットプレートとしての機能を有していてもよい。図3を参照して説明した液晶パネル検査装置1で特性検査を行う際の液晶パネル3の温度は、光源44の光量等で決まってしまうが、パネル載置台42が加熱装置を有していれば、液晶パネル3の温度を制御することが可能になる。例えば、図8(A)に示すように、パネル載置台42の設定温度に応じて、液晶パネル3の温度を設定することができる。従って、液晶パネル3の温度を様々な温度にして液晶装置2の特性を検査することができる。例えば、液晶パネル3の温度を、投射型表示装置20で実際に使用されるときの温度にして、液晶パネル3の特性を検査することができる。
【0056】
ここで、パネル載置台42の加熱装置によって液晶パネル3を加熱した場合、液晶装置2へ光の照射を開始してから所定時間経過後の、X部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分およびZ部分のそれぞれで反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比は、例えば、図8(B)に示すように、1または1に近い値を示す。なお、図8(B)において、三角マークは、X部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Y部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比であり、丸マークは、X部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度と、Z部分で反射されてスクリーン40へ投射された光の照度との比である。
【0057】
[透過型の液晶パネルに対する適用例]
上述した形態では、液晶パネル検査装置1は、反射型の液晶装置2を検査するための装置であるが、透光性材料で形成されるパネル載置台42と、透光性の樹脂製シート52とを用いて、透過型の液晶装置を検査するための液晶パネル検査装置を構成しても良い。より具体的には、パネル載置台42において、液晶パネル3の画像表示領域3aと重なる部分を、液晶パネル3において素子基板5や対向基板6に用いられる石英基板やガラス基板(熱伝導率=0.55〜0.75W/(m・K))より熱伝導率が高い透光材料、例えば、ITO(熱伝導率=8.2W/(m・K))により形成すればよい。かかる構成によれば、例えば、光源部から出射された検査用照明光を、パネル載置台42とは反対側から液晶パネル3に照射し、液晶パネル3およびパネル載置台42の透光部分を透過した光をスクリーンに投射すればよい。あるいは、パネル載置台42の透光部分を介して検査用照明光を液晶パネル3に照射し、液晶パネル3を透過した光をスクリーンに投射すればよい。
【0058】
[その他の実施の形態]
上述した形態では、スクリーン40に投射された画像を目視で確認することで、液晶装置2の特性を検査しているが、液晶装置2によって変調された光をCCDカメラ等の画像センサーに投射して、所定の処理を行うことで、液晶装置2の特性を検査しても良い。
【0059】
上述した形態では、液晶パネル3の一方の面に樹脂製シート52を密着させたが、液晶パネル3の両面の各々に樹脂製シート52を密着させてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1・・・液晶パネル検査装置、2・・・液晶装置、3・・・液晶パネル、41・・・光源部、42・・・パネル載置台、42a・・・載置面、42b・・・凹部、43・・・投射光学系、48・・・偏光ビームスプリッター、51・・・フレーム、52・・・樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に液晶層が保持された液晶パネルが載置されるパネル載置台と、
前記液晶パネルに照射される検査用照明光を出射する光源部と、
前記基板より高い熱伝導率を有し、前記液晶パネルと前記パネル載置台との間において前記液晶パネルの前記パネル載置台側の面に密着する樹脂製シートと、
を有することを特徴とする液晶パネル検査装置。
【請求項2】
前記樹脂製シートは、少なくとも前記液晶パネルに接する面が粘着性を有していることを特徴とする請求項1に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項3】
前記パネル載置台は、前記基板より高い熱伝導率を有し、
前記樹脂製シートは、前記パネル載置台に接する面が粘着性を有していることを特徴とする請求項2に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項4】
前記樹脂製シートは、シリコーン樹脂製シートであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項5】
前記樹脂製シートの熱伝導率は、20W/(m・K)であることを特徴とする請求項4に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項6】
前記液晶パネルは、外周端部分が枠状のフレームに保持された状態で前記パネル載置台に載置され、
前記パネル載置台において、前記液晶パネルの画像表示領域と重なる領域では、該領域の周りに比して高い位置に前記樹脂製シートの表面が位置していることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項7】
前記液晶パネルは、投射型表示装置のライトバルブ用であり、
前記液晶パネルに対しては、当該液晶パネルによって変調された光を投射する投射光学系が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項8】
前記液晶パネルは、反射型の液晶パネルであり、
前記光源部および前記投射光学系に対しては、前記光源部から出射された検査用照明光を前記液晶パネルに導くとともに、前記液晶パネルによって変調された光を前記投射光学系へ導く偏光ビームスプリッターが設けられていることを特徴とする請求項7に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項9】
前記パネル載置台には、前記液晶パネルを加熱する加熱装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の液晶パネル検査装置。
【請求項10】
一対の基板間に液晶層が保持された液晶パネルに検査用照明光を照射し、該液晶パネルにより変調された光に基づいて当該液晶パネルを検査するにあたって、
前記液晶パネルの少なくとも一方の面に、前記基板より高い熱伝導率を有する樹脂製シートを密着させておくことを特徴とする液晶パネル検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−181172(P2012−181172A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45995(P2011−45995)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】