説明

液晶フレネルレンズ及び液晶フレネルレンズの製造装置

【課題】斜め方向から光が入射しても、その入射光による映りこみを低減し、フレネルレンズ特有の同心円状の縞を目立たなくすることができる液晶フレネルレンズを提供する。
【解決手段】片方にフレネルレンズが形成された第1の透明基板と、前記フレネルレンズが形成された全てのレンズ面のみに形成された第1の透明電極と、片方の面に第2の透明電極を有しその第2の透明電極側の面を前記第1の透明電極に対向するように配置された第2の透明基板と、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に液晶を配した液晶フレネルレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凸型あるいは凹型形状かつ球面あるいは非球面状である液晶フレネルレンズ及び液晶フレネルレンズの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面あるいは曲面形状である透明基板上にフレネルレンズを形成し、フレネルレンズ形状に沿って液晶を充填させ、液晶の両端に電圧を印加させることによって液晶の屈折率を変化させる液晶フレネルレンズ方式による焦点可変レンズが考案されている。この方式は液晶の両端面に一定方向にラビングした配向膜及び電極を形成し電圧を印加させることで、液晶の配向の向きが変化し、これにより液晶を透過する光路が変わり、焦点距離を変化させることが可能である。
【0003】
ラビング配向させた液晶に対して効率良く電圧を印加させるために、光の透過方向に対し垂直面となる液晶の両端に透明導電膜を成膜している。
【0004】
従来の液晶フレネルレンズは、透明基板であるガラス基板上にSiOxNy膜をスパッタリング法により成膜する。さらにフォトマスクを用いたフォトリゾグラフィにてレジストをパターニングした後、反応性イオンエッチング法によりSiOxNy膜を加工する。加工したSiOxNy膜がフレネルレンズとなり、次にその凹凸部の表面に透明導電膜(ITO膜)を成膜し、これを透明電極としている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−79669号公報(第21頁、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、図11に示すように、フレネルレンズ44の全ての面(レンズ面や非レンズ面)に透明導電膜(ITO)42aを成膜していた。ITOは可視光領域において高い屈折率(n≒2.1)を持つので、液晶フレネルレンズ40を斜め方向から観察すると、非レンズ面のITO膜が外光による反射を受けてフレネルレンズに白く映りこむ。そのため、フレネルレンズ特有の同心円状の縞が目立ちやすく、外観上好ましくないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、外光による反射によるフレネルレンズの同心円状の縞の映り込みを低減出来る液晶フレネルレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の液晶フレネルレンズ及び液晶フレネルレンズの製造装置は、片方にフレネルレンズが形成された第1の透明基板と、前記フレネルレンズが形成された全てのレンズ面のみに形成された第1の透明電極と、片方の面に第2の透明電極を有しその第2の透明電極側の面を前記第1の透明電極に対向するように配置された第2の透明基板と、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に液晶を配したことを特徴としたものである。
【0008】
さらに、本発明の液晶フレネルレンズ及び液晶フレネルレンズの製造装置は、片方の面にフレネルレンズが形成された第1の透明基板のレンズ面に透明電極を形成する液晶フレネルレンズの製造装置において、前記第1の透明基板を固定するための基板ホルダと、前記透明電極を形成するための電極材料を入れた蒸発源と、前記第1の透明基板と前記蒸発源との間に配置されたメタルマスクと、前記メタルマスクを保持するためのマスクホルダと、を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶フレネルレンズによれば、レンズに対し斜め方向から光が入射しても、その入射光による映りこみを低減し、フレネルレンズ特有の同心円状の縞を目立たなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明における液晶フレネルレンズの実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1における液晶フレネルレンズの断面構造図を示す。図1において、液晶フレネルレンズ10は、第1の透明基板11aの上に、凸型のフレネルレンズ14が形成され、フレネルレンズ14において、第1の透明基板11aと接する面の反対側の面にレンズ面16が形成されている。本発明でのレンズ面16とは、フレネルレンズの光学特性を満足するように光学的に屈折あるいは回折特性を持たせた面を言う。この全てのレンズ面16に第1の透明電極12aが成膜されている。また、平板の第2の透明基板11bの片方の面に第2の透明電極12bが形成されている。第1の透明基板11aと第2の透明基板11bとには、高屈折ガラス材料あるいはPMMAポリカーポネート等の樹脂材料を用いる。また、第1の透明電極12aと第2の透明電極12bとは、ITOからなり、それぞれの透明基板の表面に蒸着法あるいはスパッタリング法で成膜する。
【0012】
その後、第1の透明電極12aに対向するように、第2の透明電極12bを持つ第2の透明基板11bを配置して、第1の透明基板11aと第2の透明基板11bとの間に液晶13を充填する。充填後、第1の透明基板11aと第2の透明基板11bの両端をシール15で封止して液晶レンズ10が完成する。なお、本実施例では、第1の透明基板11aと第2の透明基板11bとは平面で説明したが、球面あるいは非球面でも良い。
【0013】
図1に示した液晶レンズ10の第1の透明電極12aと第2の透明電極12bとの間に電圧を印加すると、液晶13の屈折率はフレネルレンズ14の屈折率より低くなる。そのため、フレネルレンズ14の集光効果により、液晶フレネルレンズ10は、凸レンズとなる。反対に、第1の透明電極12aと第2の透明電極12bとの間に電圧を印加しないときには、液晶13の屈折率とフレネルレンズ14の屈折率との差が無くなり焦点距離は無限遠となるので、凸レンズではなくなる。すなわち、第1の透明電極12aと第2の透明電極12bとの間に印加する電圧のON・OFFによって、液晶フレネルレンズ10の焦点距離を可変出来る。
【0014】
図2に本発明の実施の形態1におけるフレネルレンズ14の斜視図を、図3にその平面図を示す。図2に示すように、第1の透明電極12aが塗布されるのは、フレネルレンズ14のレンズ面16のみであり、非レンズ面17には塗布されない。そのため、第1の透明電極12aは、フレネルレンズの輪体ごとに電気的に独立している。これらの独立した第1の透明電極12a同士を導通させるために、共通電極12cをフレネルレンズ14の面の形状に沿って形成する。この共通電極12cは、2〜30Åの厚さで、70〜80μmの幅を持ってフレネルレンズ14の面の形状に沿って形成されている。共通電極に用いる材料は、本実施例では、第1の透明電極12aと同じITOとした。
【0015】
以下に、本願発明の液晶フレネルレンズ10の製造法について説明する。まず、レンズ用の樹脂をフレネルレンズ金型に充填後硬化させ、フレネルレンズ14を得る。得られたフレネルレンズ14のレンズ面16のみに第1の透明電極12aを形成する方法を、次に説明する。
【0016】
図4にフレネルレンズ14のレンズ面に第1の透明電極12aと共通電極12cとを成膜する様子を示した概略図と、図5に透明電極を成膜するときのフレネルレンズとメタルマスクの平面図を示す。本実施例では、真空蒸着法によってフレネルレンズ14のレンズ面16のみに第1の透明電極12aを形成した。また、第1の透明電極12aの材料には、ITOを用いた。図1で説明した非レンズ面17には、ITOが成膜しないように、図5に示すようにフレネルレンズ14の中心から中心角320degの範囲を囲むように扇型の開口部を持つメタルマスク104(a)で覆う。メタルマスク104(a)は、その開口部をITO蒸発源102の直上に位置するように置き、真空蒸着装置100の内部のマスクホルダ106で固定する。その後、フレネルレンズ14を基板ホルダに斜めに固定して回転させながら、レンズ部にITOを蒸着する(回転斜方蒸着法)。
【0017】
ここで、フレネルレンズ14の角度調整を行うが、具体的には、非レンズ面17に蒸着されないように、ITO蒸発源102から見て、非レンズ面17が影になるように、フレネルレンズ14に傾きを持たせることが肝要である。本実施例では、非レンズ面17にITOが蒸着しないように、非レンズ面17が第1の透明基板11aに対して垂直となるようにフレネルレンズ14を基板ホルダ105に1〜2deg程傾斜を持たせて固定した。
【0018】
続いて、フレネルレンズ14が固定された基板ホルダ105を回転させ、真空槽の下部にあるヒータ101でITO蒸発源102を加熱すると、ITO103が昇華しフレネルレンズ14のレンズ面16に成膜される。フレネルレンズ14の中心を軸に基板ホルダ105で回転させながら膜の厚さが最適となるように蒸着させることで、フレネルレンズ14個々のレンズ面16に第1の透明電極12aが成膜される。
【0019】
続いて、共通電極12cの成膜を行う。
【0020】
図6に示すように、共通電極12cの形成には、第1の透明電極12aの成膜時とは異なる100μm幅のスリットが設けられたメタルマスク104(b)を用いる。このメタルマスク104(b)をマスクホルダ106に固定し、フレネルレンズ14の角度調整を行う。今回の角度調整は、レンズ面と非レンズ面の双方にITOがむらなく成膜されるような角度にする。その後、第1の透明電極12aの成膜時と同様に真空蒸着法でITOを成膜する。なお、共通電極12cの形成について、スパッタリング法でも可能ではあるが、肉眼で観察したときに目立たないように共通電極を形成するには、真空蒸着法の方が好ましい。
【0021】
共通電極12cを成膜した後、フレネルレンズ14の凹凸形状に充填するように常光屈折率no、異常光屈折率neを有するネマティック液晶を塗布し、その上に第1の透明電極12aを成膜した第1の透明基板11aを、第1の透明電極12aが成膜された面を液晶側に接するようにして挟み込む。そして液晶フレネルレンズ10を構成する各素子の位置ずれを起こさないよう第1の透明基板11a、第2の透明基板11b及び液晶13の縁をシール15で封をする。
【0022】
液晶13について、塗布したネマティック液晶分子が一定方向に揃うようにするために、第1の透明電極12a、第2の透明電極12bの表面に配向膜が形成されている。配向膜はポリイミド等が用いられ、特定方向にラビング処理を行っている。第1の透明基板11a、第2の透明基板11bとフレネルレンズ14で内部保持されている液晶13を第1の透明電極12a、第2の透明電極12bに電位差を与えることによって液晶分子の配向が変わり、偏光の向きに対して屈折率が変化する。
【0023】
以下に、本実施例で作製した液晶フレネルレンズ10の寸法を示す。液晶フレネルレンズ10の厚さを1.6mm、液晶フレネルレンズ10内のフレネル形成部(凹凸が形成されている部分)の有効径は40mmとした。液晶フレネルレンズ10を構成している第1の透明基板11a、第2の透明基板11bの厚さはそれぞれ0.7mm、フレネルレンズ14の底面から中心に位置する頂部までの厚さを0.12mm、フレネルレンズ14の中心位置での頂部から第1の透明基板11aまでの距離を0.08mmとした。また、フレネルレンズ14の曲率は中心部付近で35mm、フレネルレンズ凹凸のピッチ長を0.1mmとした。第1の透明電極12aの厚さは400Åであった。形成された共通電極12cの抵抗値は、20mmの長さで6Ωであった。
【0024】
以上の構成で作製したフレネルレンズ10について、同心円状の映り込みを目視で確認したところ、従来の構成では映り込みが観察されたが、本実施の形態では移り込みがほとんど目立たなくなった。また、第1の透明電極と第2の透明電極との間に印加する電圧の有無に従って、凸レンズと非凸レンズの動作が出来、設計意図通りの特性が得られた。なお、本実施例では透明導電膜で共通電極を構成したが、透明導電膜にこだわる必要はない。
【0025】
従来の構成では液晶13あるいはフレネルレンズ14とITO等の透明電極との屈折率差Δnは0.4〜0.6であったが、フレネルレンズ14の凹凸の非レンズ面に第2の透明電極12bを成膜しないようにすることで、液晶13とフレネルレンズ14との屈折率差Δnは0〜0.2と小さくなり、フレネルレンズ14の非レンズ部17に入射する光について反射を大幅に低減させることが可能となる。
【0026】
また、本実施の形態では、フレネルレンズ14の凹凸の非レンズ面による反射を抑えるために、液晶13よりフレネルレンズ14の屈折率を大きく設定することがより好ましい。
【0027】
(実施の形態2)
図7に、本発明の実施の形態2における液晶フレネルレンズの断面構造図を示す。実施の形態1との違いは、フレネルレンズの断面形状にあり、本実施例では凹型である。
【0028】
図7において、液晶フレネルレンズ20は、第1の透明基板21aの上に、凹型のフレネルレンズ24が形成され、フレネルレンズ24において、第1の透明基板21aと接する面の反対側の面にレンズ面26が形成されている。レンズ面26の定義は、実施の形態1と同様である。また、非レンズ面27の定義は、実施の形態1と同様である。図7には、示されていないが、本実施例でも実施の形態1と同様な共通電極が設けられている。図その他の構造および使用する材料は、実施の形態1と同様なので省略する。
【0029】
図7に示した液晶レンズ20の第1の透明電極22aと第2の透明電極22bとの間に電圧を印加すると、液晶23の屈折率はフレネルレンズ24の屈折率より低くなる。そのため、フレネルレンズ24の発散効果により、液晶フレネルレンズ20は、凹レンズとなる。反対に、第1の透明電極22aと第2の透明電極22bとの間に電圧を印加しないときには、液晶23の屈折率とフレネルレンズ24の屈折率との差が無くなり焦点距離は無限遠となるので、凹レンズではなくなる。すなわち、第1の透明電極22aと第2の透明電極22bとの間に印加する電圧のON・OFFによって、液晶フレネルレンズ20の焦点距離を可変出来る。
【0030】
実施の形態2の液晶フレネルレンズ20の製造方法は、実施の形態1で説明した製造方法と同一なので省略する。以下に、作製した液晶フレネルレンズ20の寸法を示す。
【0031】
実施の形態2で作製した液晶フレネルレンズ20の厚さは、1.6mm、液晶フレネルレンズ20内のフレネル形成部(凹凸が形成されている部分)の有効径は40mmとした。液晶フレネルレンズ20を構成している第1の透明基板21a、第2の透明基板21bの厚さはそれぞれ0.7mm、フレネルレンズ24の底面から中心に位置する頂部までの厚さを0.12mm、フレネルレンズ24の中心位置での頂部から第1の透明基板21aまでの距離を0.08mmとした。また、フレネルレンズ24の曲率は中心部付近で35mm、フレネルレンズ凹凸のピッチ長を0.1mmとした。第1の透明電極22aの厚さは400Åだった。形成された共通電極22cの抵抗値は、20mmの長さで6Ωであり、実施の形態1と同じ値を示した。
【0032】
以上の構成で作製したフレネルレンズ20について、同心円状の映り込みを目視で確認したところ、従来の構成では映り込みが観察されたが、本実施の形態では移り込みがほとんど目立たなくなった。また、第1の透明電極と第2の透明電極との間に液晶制御用の電圧を印加した所、設計通りの動作が確認された。
【0033】
従来の構成では液晶23あるいはフレネルレンズ24とITO等の透明電極との屈折率差Δnは0.4〜0.6であったが、フレネルレンズ24の凹凸の非レンズ面に第2の透明電極22bを成膜しないようにすることで、液晶23とフレネルレンズ24との屈折率差Δnは0〜0.2と小さくなり、フレネルレンズ24の非レンズ部27に入射する光についての反射を大幅に低減させることが可能となる。
【0034】
また、本実施の形態では、フレネルレンズ24の凹凸の非レンズ面による反射を抑えるために、液晶23よりフレネルレンズ24の屈折率を大きく設定することがより好ましい。
【0035】
(実施の形態3)
図8に、本発明の実施の形態3におけるフレネルレンズの平面図を示す。実施の形態1及び実施の形態2との相異は、複数の共通電極を備えたことにある。このように、共通電極を複数にして、フレネルレンズの中心から外周部にかけて放射状に配置することで、液晶分子の応答速度を高めることが出来る。
【0036】
図8に示した液晶フレネルレンズ34の基本構造は実施の形態1と同様である。すなわち、図1に示したように、液晶フレネルレンズ34は、第1の透明基板11a、第2の透明基板11b、第1の透明電極32a(図1では12aで示している。)、第2の透明電極12b、液晶13、凸レンズ型のフレネルレンズ14、シール15とで構成される。共通電極32cは、フレネルレンズの中心から放射状に4本あり、それぞれ複数フレネルレンズを4分割する位置にある。これらの共通電極32cにより、第1の透明電極32aは、互いに接続される。
【0037】
図9に、実施の形態3に示す共通電極の作製方法を示す。実施の形態1で使用した共通電極用作製用のメタルマスク104(b)を使用し、一つの共通電極を作製する毎にこのメタルマスク104(b)回転させることで、複数の共通電極が作製できる。
【0038】
最初に、図6で示した100μmの幅のスリットを形成したメタルマスク104(b)を図9のマスクホルダ306に設置する。
【0039】
続いて、1本目の共通電極を形成するために、第1の透明基板を基板ホルダ305に設置し、共通電極を形成する場所に合わせるために、基板ホルダを回転させ、この状態を保持したまま、蒸着法でITOを成膜する。続いて、2本目の共通電極を形成するために、今度は先程の基板ホルダ305を軸に90deg回転させ、先程と同様にITOを成膜する。続いて、3本目と4本目の共通電極を形成するために、それぞれ基板ホルダ305を90deg回転させ、ITOを成膜する。
【0040】
上記では、メタルマスク304(a)を固定して、基板ホルダ305を回転させることで共通電極32cを4本形成したが、基板ホルダ305を固定し、図10に示すように、円状のメタルマスク304(b)をフレネルレンズに貼付し、共通電極32cを形成する毎にメタルマスク304(b)を回転させる方法でもよい。
【0041】
具体的には、1本目の共通電極を形成するためにメタルマスク304(b)を図10(a)のように設置する。この状態を保持したまま、蒸着法あるいはスパッタリング法でITOを成膜する。続いて、2本目の共通電極を形成するために、図10(b)のように、先程の図10(a)の状態からメタルマスク304(b)を90deg回転させ、先程と同様にITOを成膜する。この際、共通電極がレンズ面と非レンズ面に形成されるようフレネルレンズの向きも調節する。続いて、3本目、4本目の共通電極を形成するために、図10(c)、図10(d)のようにそれぞれメタルマスク304(b)を90deg回転させ、フレネルレンズの向きを調節してITOを成膜する。共通電極を成膜した後の工程については、実施の形態1と同様であるので省略する。
【0042】
以上の構成により、実施の形態1で作製した液晶フレネルレンズと比較し、液晶の応答性が良い液晶フレネルレンズを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明にかかる液晶フレネルレンズは、外光による映りこみを低減することを有し、電子制御式眼鏡等として有用である。また、印加電圧によって焦点距離を可変させる液晶フレネルレンズを用いた電子制御式眼鏡に好適に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1における液晶フレネルレンズの断面構造図
【図2】本発明の実施の形態1におけるフレネルレンズの斜視図
【図3】本発明の実施の形態1におけるフレネルレンズの平面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるフレネルレンズのレンズ面に透明電極を成膜する様子を示した概略図
【図5】本発明の実施の形態1における透明電極を成膜するときのフレネルレンズとメタルマスクの平面図
【図6】本発明の実施の形態1における共通電極を成膜するときのフレネルレンズとメタルマスクの平面図
【図7】本発明の実施の形態2における液晶フレネルレンズの断面構造図
【図8】本発明の実施の形態3における共通電極を複数本設置したフレネルレンズの平面図
【図9】本発明の実施の形態3におけるフレネルレンズのレンズ面及び非レンズ面に共通電極を成膜する様子を示した概略図
【図10】本発明の実施の形態3における共通電極を成膜するときのフレネルレンズとメタルマスクの平面図
【図11】従来の液晶フレネルレンズの断面構造図
【符号の説明】
【0045】
10、20、40 液晶レンズ
11a、21a、41a 第1の透明基板
11b、21b、41b 第2の透明基板
12a、22a、42a 第1の透明電極
12b、22b、32b、42b 第2の透明電極
12c、32c 共通電極
13、23、43 液晶
14、34、44 フレネルレンズ(凸レンズ型)
15、25、45 シール
16、26 レンズ面
17、27 非レンズ面
24 フレネルレンズ(凹レンズ型)
100、300 真空蒸着装置
101、301 ヒータ
102、302 ITO蒸発源
103、303 ITO
104(a)、104(b)、304(a)、304(b)メタルマスク
105、305 基板ホルダ
106、306 マスクホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片方にフレネルレンズが形成された第1の透明基板と、
前記フレネルレンズが形成された全てのレンズ面のみに形成された第1の透明電極と、
片方の面に第2の透明電極を有しその第2の透明電極側の面を前記第1の透明電極に対向するように配置された第2の透明基板と、
前記第1の透明基板と前記第2の透明基板との間に液晶を配した液晶フレネルレンズ。
【請求項2】
全ての前記第1の透明電極を電気的に接続するための共通電極を備えた請求項1記載の液晶フレネルレンズ。
【請求項3】
前記フレネルレンズの断面形状は、凸型又は凹型のいずれか一方である請求項1に記載の液晶フレネルレンズ。
【請求項4】
前記フレネルレンズの断面形状は、球面又は非球面のいずれか一方である請求項1に記載の液晶フレネルレンズ。
【請求項5】
前記共通電極が、少なくとも1つ以上形成されている請求項2に記載の液晶フレネルレンズ。
【請求項6】
片方の面にフレネルレンズが形成された第1の透明基板のレンズ面に透明電極を形成する液晶フレネルレンズの製造装置において、
前記第1の透明基板を固定するための基板ホルダと、
前記透明電極を形成するための電極材料を入れた蒸発源と、
前記第1の透明基板と前記蒸発源との間に配置されたメタルマスクと、
前記メタルマスクを保持するためのマスクホルダと、
を備えた液晶フレネルレンズの製造装置。
【請求項7】
前記基板ホルダは、前記第1の透明基板と前記蒸発源との角度を可変できる請求項6に記載の液晶フレネルレンズの製造装置。
【請求項8】
前記基板ホルダは、前記第1の透明基板を自在に回転できる請求項6に記載の液晶フレネルレンズの製造装置。
【請求項9】
前記メタルマスクは、中心から外側に向けて扇形の切れ込みを持ち、その中心を前記第1の透明基板の中心と同一にするように配置されたときに前記第1の透明基板を覆う大きさを持つ請求項6に記載の液晶フレネルレンズの製造装置。
【請求項10】
前記メタルマスクは、中心から外側に向けて矩形の切れ込みを持ち、その中心を前記第1の透明基板の中心と同一にするように配置されたときに前記第1の透明基板を覆う大きさを持つ請求項6に記載の液晶フレネルレンズの製造装置。
【請求項11】
前記マスクホルダは、前記メタルマスクの中心を前記第1の透明基板の中心と同一にするように規定する請求項6に記載の液晶フレネルレンズの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−98644(P2009−98644A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229253(P2008−229253)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】