説明

液晶ポリエステル組成物、反射板及び発光装置

【課題】液晶ポリエステルに白色顔料とガラス繊維束とが配合されてなり、高い反射率を有する反射板を与える液晶ポリエステル組成物を提供する。
【解決手段】液晶ポリエステルに、白色顔料と、ガラス繊維が下記ポリウレタンから構成される集束剤で集束されてなるガラス繊維束とを配合して、液晶ポリエステル組成物とする。
ポリウレタン:脂肪族ジイソシアネート単位及び/又は脂環式ジイソシアネート単位と下記ポリエステルポリオール単位とを有するポリウレタン。
ポリエステルポリオール単位:脂肪族多塩基酸単位及び/又は脂環式多塩基酸単位と脂肪族多価アルコール単位とを有するポリオール単位。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルに白色顔料とガラス繊維束とが配合されてなる液晶ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)発光装置の反射板としては、加工性や軽量性に優れることから、樹脂製のものが多く用いられている。LED発光装置の製造においては、LED素子の実装工程や封止樹脂の硬化工程、さらにはLEDモジュール組立時の半田付け工程等で反射板が高温環境に曝されることがある。このため、反射板を構成する樹脂材料には、高い耐熱性が必要とされ、また、反射板に成形するうえで優れた成形性も必要とされる。そこで、反射板を構成する樹脂材料として、液晶ポリエステルに反射率付与剤として白色顔料が配合されてなる液晶ポリエステル組成物が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一方、液晶ポリエステルから構成される成形体の異方性低減やウェルド強度向上のため、液晶ポリエステルにガラス繊維を配合することが広く検討されている。また、このガラス繊維として、安価であることや取扱性に優れることから、集束剤で集束されたものを用いることが検討されている。例えば、特許文献2には、集束剤として、キシリレンジイソシアネート単位とポリエステルポリオール単位とを有するポリウレタンから構成されるものを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320996号公報
【特許文献2】特開2000−44793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶ポリエステルに白色顔料を配合し、さらにガラス繊維が前記従来の集束剤で集束されてなるガラス繊維束を配合し、得られる液晶ポリエステル組成物を反射板に成形すると、集束剤が液晶ポリエステル組成物に色味を帯びさせるためか、得られる反射板の反射率が不十分になることがある。そこで、本発明の目的は、液晶ポリエステルに白色顔料とガラス繊維束とが配合されてなり、高い反射率を有する反射板を与える液晶ポリエステル組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、液晶ポリエステルに、白色顔料と、ガラス繊維が下記ポリウレタンから構成される集束剤で集束されてなるガラス繊維束とが配合されてなる液晶ポリエステル組成物を提供する。
ポリウレタン:脂肪族ジイソシアネート単位及び/又は脂環式ジイソシアネート単位と下記ポリエステルポリオール単位とを有するポリウレタン。
ポリエステルポリオール単位:脂肪族多塩基酸単位及び/又は脂環式多塩基酸単位と脂肪族多価アルコール単位とを有するポリオール単位。
【0007】
また、本発明によれば、前記液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板も提供され、さらに、前記反射板と発光素子とを有する発光装置も提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液晶ポリエステル組成物を成形することにより、高い反射率を有する反射板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0010】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる化合物とを重合させてなるもの、及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのそれぞれの一部又は全部に代えて、その重縮合可能な誘導体を用いてもよい。
【0011】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重縮合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの、カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重縮合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重縮合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるものが挙げられる。
【0012】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有するものであることが好ましく、さらに、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有するものであることがより好ましい。
【0013】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0014】
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0015】
(4)−Ar4−Z−Ar5
【0016】
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0017】
ここで、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は通常6〜20である。アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。
【0018】
繰返し単位(1)は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位であり、Ar1としては、p−フェニレン基(p−ヒドロキシ安息香酸に由来)及び2,6−ナフチレン基(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来)が好ましい。
【0019】
繰返し単位(2)は、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位であり、Ar2としては、p−フェニレン基(テレフタル酸に由来)、m−フェニレン基(イソフタル酸に由来)、2,6−ナフチレン基(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来)及びジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来)が好ましい。
【0020】
繰返し単位(3)は、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位であり、Ar3としては、p−フェニレン基(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来)及び4,4’−ビフェニリレン基(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来)が好ましい。
【0021】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量を各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは30〜80モル%であり、さらに好ましくは40〜70モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、液晶ポリエステルの液晶性が向上し易いが、あまり高いと、液晶ポリエステルの溶融温度が高くなり、成形し難くなる。
【0022】
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは10〜35モル%であり、さらに好ましくは15〜30モル%である。
【0023】
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下であり、より好ましくは10〜35モル%であり、さらに好ましくは15〜30モル%である。
【0024】
繰返し単位(2)と繰返し単位(3)との含有割合は、[繰返し単位(2)]/[繰返し単位(3)](モル/モル)で表して、0.9/1〜1/0.9であることが、液晶ポリエステルの分子量が高くなり易く、液晶ポリエステルの耐熱性や強度が向上し易いので、好ましい。
【0025】
繰返し単位(3)は、X及びYが酸素原子であること、すなわち、芳香族ジオールに由来する繰返し単位であることが、液晶ポリエステルの溶融時の粘度が低くなり易いので、好ましい。
【0026】
液晶ポリエステルは、原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。前記溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0027】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が270〜400℃であることが好ましく、300〜380℃であることがより好ましい。液晶ポリエステルの流動開始温度が高いほど、液晶ポリエステルの耐熱性や強度が向上し易いが、あまり高いと、液晶ポリエステルの溶融温度が高くなり、成形し難くなる。
【0028】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で液晶ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48,000ポイズ)を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0029】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、前述のような液晶ポリエステルに白色顔料とガラス繊維束が配合されてなるものである。
【0030】
白色顔料としては、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化チタン等の無機化合物が好ましく用いられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。中でも酸化チタンが好ましい。
【0031】
白色顔料の粒径は、白色顔料が液晶ポリエステルに分散し易く、高い反射率を有する反射板が得られ易いことから、体積平均値で表して、好ましくは0.05〜2μmであり、より好ましくは0.1〜1μmであり、さらに好ましくは0.15〜0.5μmであり、特に好ましくは0.2〜0.4μmである。
【0032】
なお、ここでいう体積平均粒径は、白色顔料を走査形電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で撮影し、得られたSEM写真を画像解析装置(例えば(株)ニレコの「ルーゼックスIIIU」)で解析して、一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)を求め、それらを体積基準で累積した分布曲線において、累積度が50%であるときの粒径である。
【0033】
白色顔料の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部であり、より好ましくは25〜150質量部であり、さらに好ましくは40〜100質量部である。
【0034】
白色顔料の好ましい例である酸化チタンは、その結晶形が、ルチル型であってもよいし、アナターゼ型であってもよく、両者が混在していてもよいが、高い反射率を有し、耐候性にも優れる反射板が得られ易いことから、ルチル型の酸化チタンを含むものが好ましく、実質的にルチル型の酸化チタンのみからなるものがより好ましい。
【0035】
酸化チタンには、表面処理が施されていてもよい。例えば、無機金属酸化物を用いて表面処理を施すことにより、分散性や耐候性を向上させることができる。無機金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ)を用いることが好ましい。なお、耐熱性や強度の点からは、表面処理が施されていない酸化チタンを用いることが好ましい。
【0036】
酸化チタンの製造方法は、塩素法でもよいし、硫酸法でもよいが、ルチル型の酸化チタンを製造する場合は、塩素法が好ましい。塩素法により酸化チタンを製造する場合、まず、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル鉱)と塩素とを1000℃付近で反応させて粗四塩化チタンを得、この粗四塩化チタンを精留で精製した後、酸素で酸化することが好ましい。
【0037】
塩素法で製造された酸化チタンの市販品の例としては、石原産業(株)の「TIPAQUE CR−60」及び「TIPAQUE CR−58」が挙げられる。また、硫酸法で製造された酸化チタンの市販品の例としては、テイカ(株)の「TITANIX JR−301」及び「WP0042」並びに堺化学(株)の「SR−1」、「SR−1R」及び「D−2378」が挙げられる。
【0038】
本発明では、ガラス繊維束として、ガラス繊維がポリウレタンから構成される集束剤で集束されてなるものを用いる。そして、このポリウレタンとして、脂肪族ジイソシアネート単位及び/又は脂環式ジイソシアネート単位と下記ポリエステルポリオール単位とを有するものであって、ポリエステルポリオール単位が脂肪族多塩基酸単位及び/又は脂環式多塩基酸単位と脂肪族多価アルコール単位とを有するポリオール単位であるものを用いる。これにより、高い反射率を有する反射板を与える液晶ポリエステル組成物を得ることができる。
【0039】
ガラス繊維としては、Eガラスが好ましく用いられる。ガラス繊維(ガラスフィラメント)の平均繊維径は、好ましくは4〜23μmであり、より好ましくは4〜16μmである。ガラス繊維の平均繊維径があまり小さいと、反射板の衝撃強度が低下し易くなり、あまり大きいと、反射板中でガラス繊維の端面部での応力が高くなり、反射板の引張強度や曲げ強度が低下し易くなる。
【0040】
ガラス繊維としては、シラン化合物で表面処理されたものが好ましい。シラン化合物の例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−N’−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビニルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン化合物、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、反射板の色調の点から、エポキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0041】
脂肪族ジイソシアネート単位を誘導する脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及びリジンジイソシアネートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でもHDIが好ましい。また、脂環式ジイソシアネート単位を誘導する脂環式ジイソシアネートの例としては、イソフォロンジイソシアネート(IPDI)及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でもIPDIが好ましい。
【0042】
脂肪族多塩基酸単位を誘導する脂肪族多塩基酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸及びフマル酸が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。また、脂環式多塩基酸単位を誘導する脂環式多塩基酸の例としては、1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0043】
脂肪族多価アルコール単位を誘導する脂肪族多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びジプロピレングリコールが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも炭素数4〜12の脂肪鎖を有するものが、ガラス繊維の集束性に優れることから、好ましい。
【0044】
ポリエステルポリオールの好ましい例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール及びポリネオペンチルアジペートジオールが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。ポリエステルポリオールの数平均分子量は、通常500〜6000、好ましくは800〜3000である。
【0045】
ポリエステルポリオールの市販品の例としては、(株)クラレの「クラレポリオール P−2012」、「クラレポリオール P−2011」及び「クラレポリオール P−2050」が挙げられる。
【0046】
ポリエステルポリオールは、脂肪族多塩基酸及び/又は脂環式多塩基酸と脂肪族多価アルコールとを脱水重縮合させることにより、製造することができる。また、ポリウレタンは、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環式ジイソシアネートとポリエステルポリオールとを重付加させることにより、製造することができる。なお、ポリエステルポリオールを製造する際、必要に応じて、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、ビフエニルジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族多塩基酸を、脂肪族多塩基酸及び/又は脂環式多塩基酸と共に、多塩基酸として用いてもよい。
【0047】
集束剤には、反射板の色調の点から、蛍光増白剤が含まれていてもよい。蛍光増白剤の例としては、ベンゾオキサゾール系、トリアゾール系、クマリン系、ピラゾリン系、スチリル系及びナフタルイミド系のものが挙げられる。蛍光増白剤は、反射板の色調の点から、ガラス繊維束100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の割合になるように、集束剤に含まれることが好ましい。また、集束剤には、必要に応じて、帯電防止剤等の成分が含まれていてもよい。
【0048】
ガラス繊維が集束剤で集束されてなるガラス繊維束は、一束中にガラス繊維を100〜4000本含むことが好ましく、800〜3000本含むことが好ましい。
【0049】
ガラス繊維束中の集束剤の含有量は、ガラス繊維束に対して、好ましくは0.05〜0.4質量%であり、より好ましくは0.05〜0.29質量%である。ガラス繊維束中の集束剤の含有量があまり少ないと、ガラス繊維束の集束性が不十分になり、反射板を製造する際、糸割れや毛羽立ちが発生し易くなり、作業性が悪くなり易い。ガラス繊維束中の集束剤の含有量があまり多いと、反射板を製造する際にガスが発生し易くなり、また、反射板に膨れが生じ易くなって、反射板の機械的特性が低下し易くなる。
【0050】
ガラス繊維束の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは5〜200質量部であり、より好ましくは10〜150質量部である。
【0051】
液晶ポリエステルに配合されるガラス繊維束は、通常、ガラスストランドを切断してなるガラスチョップドストランドとして得られる。
【0052】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル、白色顔料及びガラス繊維束を250℃以上で混練することにより製造することが好ましい。混練温度は、より好ましくは280℃以上であり、また通常400℃以下、好ましくは380℃以下である。
【0053】
こうして得られる本発明の液晶ポリエステルを成形することにより、高い反射率を有する反射板を製造することができる。成形方法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法等の溶融成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。射出成形法によれば、薄肉部を有する反射板や、複雑な形状の反射板を製造することが容易になり、特に薄肉部の厚みが0.01mm〜3.0mm、好ましくは0.02〜2.0mm、より好ましくは0.05〜1.0mmである小型の反射板を製造するためには、射出成形法が適している。
【0054】
こうして得られる本発明の反射板は、波長460nmの光に対する拡散反射率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。なお、ここでいう反射率とは、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づいて求められるものである。
【0055】
本発明の反射板は、電気、電子、自動車、機械等の分野で光反射、特に可視光反射のための反射部材として好適に用いられる。例えば、ハロゲンランプ、HID等の光源装置のランプリフレクターや、LEDや有機EL等の発光素子を用いた発光装置や表示装置の反射板として好適に用いられる。特に、LEDを用いた発光装置の反射板として好適に用いられる。
【実施例】
【0056】
実施例1〜6、比較例1〜2
〔液晶ポリエステル(1)〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。その後、1−メチルイミダゾール0.9gを添加し、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粗粉砕機で粉砕し、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温した後、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、次いで285℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。こうして得られた液晶ポリエステル(1)の流動開始温度は、327℃であった。
【0057】
〔液晶ポリエステル(2)〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1298.6g(12.7モル)及び1−メチルイミダゾール0.2gを入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で1時間還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール0.9gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、窒素雰囲気下、室温から230℃まで1時間かけて昇温し、230℃から260℃まで2時間かけて昇温し、260℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。こうして得られた液晶ポリエステル(2)の流動開始温度は、300℃であった。
【0058】
〔白色顔料(1)〕
白色顔料(1)として、石原産業(株)の「TIPAQUE CR−58」(塩素法で製造された酸化チタンのアルミナ表面処理品。体積平均粒径0.28μm)
【0059】
〔白色顔料(2)〕
白色顔料(2)として、石原産業(株)の「TIPAQUE PF−740」(塩素法で製造された酸化チタンのアルミナ表面処理品。体積平均粒径0.25μm)
【0060】
〔タルク〕
日本タルク株式会社製 タルクX−50(板状充填剤 中心粒径:14.5μm)を用いた。
【0061】
〔ガラス繊維束(1)〜(3)〕
イソフォロンジイソシアネートと、アジピン酸、フタル酸及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールから得られたポリエステルポリールとから、ポリウレタンを得た。このポリウレタンで、エポキシシラン化合物で表面処理された平均繊維径10μmのEガラスを、ガラス繊維束中のポリウレタン含有量が0.12質量%(ガラス繊維束(1))、0.15質量%(ガラス繊維束(2))又は0.19質量%(ガラス繊維束(3))となるように、集束してストランドとした後、3mm長に切断し、次いで乾燥させて、チョップドストランドして、ガラス繊維束(1)〜(3)を得た。
【0062】
〔ガラス繊維束(4)〕
キシリレンジイソシアネートと、カプロラクトンから得られたポリエステルポリールとから、ポリウレタンを得た。このポリウレタンで、アミノシラン化合物で表面処理された平均繊維径10μmのEガラスを、ガラス繊維束中のポリウレタン含有量が0.20質量%となるように、集束してストランドとした後、3mm長に切断し、次いで乾燥させて、チョップドストランドして、ガラス繊維束(4)を得た。
【0063】
〔ガラス繊維束(5)〕
イソフォロンジイソシアネートと、カプロラクトン、フタル酸及びネオペンチルグリコールから得られたポリエステルポリールとから、ポリウレタンを得た。このポリウレタンで、アミノシラン化合物で表面処理された平均繊維径10μmのEガラスを、ガラス繊維束中のポリウレタン含有量が0.20質量%となるように、集束してストランドとした後、3mm長に切断し、次いで乾燥させて、チョップドストランドして、ガラス繊維束(5)を得た。
【0064】
〔液晶ポリエステル組成物〕
実施例1〜3、比較例1〜2
液晶ポリエステル(1)100質量部に対して、白色顔料(1)55質量部及び表1に示すガラス繊維束27質量部を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30」)を用いて、320℃にて混練し、液晶ポリエステル組成物を得た。
【0065】
実施例4〜6
液晶ポリエステル(2)100質量部に対して、白色顔料(2)、ガラス繊維束及びタルクを表2に示す配合量で配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30」)を用いて、280℃にて混練し、液晶ポリエステル組成物を得た。
【0066】
〔反射板〕
得られた液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)の「PS40E5ASE型」)を用いて、340℃にて、鏡面加工した金型内に射出し、寸法64mm×64mm×1mmの反射板の試験片を得た。この試験片の表面に対して、JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に準拠して、自記分光光度計((株)日立製作所の「U−3500」)を用いて、波長460nmの光に対する拡散反射率の測定を行い、結果を表1及び表2に示した。なお、この拡散反射率は、硫酸バリウムの標準白色板の拡散反射率を100%としたときの相対値である。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルに、白色顔料と、ガラス繊維が下記ポリウレタンから構成される集束剤で集束されてなるガラス繊維束とが配合されてなる液晶ポリエステル組成物。
ポリウレタン:脂肪族ジイソシアネート単位及び/又は脂環式ジイソシアネート単位と下記ポリエステルポリオール単位とを有するポリウレタン。
ポリエステルポリオール単位:脂肪族多塩基酸単位及び/又は脂環式多塩基酸単位と脂肪族多価アルコール単位とを有するポリオール単位。
【請求項2】
前記白色顔料の配合量が、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、20〜200質量部である請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記ガラス繊維束の配合量が、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、5〜200質量部である請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記脂肪族多価アルコール単位が、炭素数4〜12の脂肪鎖を有する単位である請求項1〜3のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリエステル、前記白色顔料及び前記ガラス繊維束を250℃以上で混練してなる請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記ガラス繊維束中の前記集束剤の含有量が、前記ガラス繊維束に対して、0.05〜0.4質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項7】
前記ガラス繊維が、シラン化合物で表面処理されている請求項1〜6のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項8】
前記シラン化合物が、エポキシシラン化合物である請求項7に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物を成形してなる反射板。
【請求項10】
JIS K7105−1981の全光線反射率測定法A(標準白色板:硫酸バリウム)に基づく波長460nmの光に対する拡散反射率が、70%以上である請求項9に記載の反射板。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の反射板と発光素子とを有する発光装置。
【請求項12】
前記発光素子がLEDである請求項11に記載の発光装置。

【公開番号】特開2012−46743(P2012−46743A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165194(P2011−165194)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】