液晶光学素子及び液晶光学装置
【課題】視野角特性のない液晶光学素子及び液晶光学装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンとを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成することにより、左右に偏向された入射ビームと液晶分子の傾き角との関係に対称性を持たせる。
【解決手段】第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンとを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成することにより、左右に偏向された入射ビームと液晶分子の傾き角との関係に対称性を持たせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶光学素子及び液晶光学装置に関し、特に、入射ビームを偏向することが可能な液晶光学素子及び液晶光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビームスポットの位置や光学系の光軸等を調整等するために、ビーム偏向器が用いられることがある。ビーム偏向器としては、反射ミラーやプリズムなどがあるが、反射ミラーやプリズム等で光の偏向を微調整するためには、機械的な反射ミラーやプリズムの回転手段等を設ける必要がある等の不具合があった。
【0003】
そこで、液晶を利用したビーム偏向器が提案されている。図10(a)は液晶光学素子の断面構造及び液晶分子の配向状態を表している。図10(a)に示すように液晶光学素子60には、第1の透明基板51a上に配置された格子状の透明電極52aと、第2の透明基板51b上に配置された対向共通電極52bとの間に配向膜53を介して液晶層54が挟持されている。この格子状の電極パターンの左右両端には、2つの端子(端子1及び端子2)が具備されており、端子1に1.0[V]、端子2に5.0[V]の駆動電圧を印加すると、格子状の透明電極52aは一定抵抗にて接続されているため図10(b)に示すように、端子1と端子2の間に一定勾配の電位分布が発生する。この電位勾配に従い、図10(a)に示すように、液晶層54内の液晶分子の配向状態(チルト角φ)は連続的に変化する。結果として液晶層54内には、図中の矢印Eの方向に振動している直線偏光に対しては、図10(c)に示す屈折率分布が発生する。この屈折率勾配によりレーザビームの位相が変調され、図10(c)の矢印Fに示すように、光路偏向することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来技術における液晶光学素子60においては、液晶層54における液晶分子の配向方向については、特に考慮されず、図10で図示されるように、液晶分子の配向方向は、図中の矢印Eの直線偏光と同方向であり、駆動電圧の勾配方向と平行になっている。このため、電圧の勾配方向が互いに対称となるように駆動電圧を印加した場合にレーザビームが右に偏向するときと左に偏向するときとで、レーザビームと液晶分子の傾き角との関係が非対称となる。この非対称となる要因について、以下説明する。図11は端子1に1.0[V]、端子2に5.0[V]の駆動電圧を印加してレーザビームを左に偏向させた例を示す。また、図12は端子1に5.0[V]、端子2に1.0[V]の駆動電圧を印加してレーザビームを右に偏向させた例を示す。図11において出射ビームBと液晶分子の傾き角Kとのなす角度Pと、図12において出射ビームCと液晶分子の傾き角Kとのなす角度Qとが異なり、出射ビームと液晶分子の傾き角との関係が左右非対称となる。このように左右の偏向で光学特性(波面収差、電圧に対する偏向角)が異なり視野角特性が発生するという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292349号公報(第13−15頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し、レーザビームが右に偏向するときと、左に偏向するときとでレーザビームと液晶分子の傾き角との関係が対称性を持ち視野角特性のない液晶光学素子及び液晶光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶光学素子は、第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンとを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であることを特徴とする。
また、配向膜を有し、該配向膜の配向方向と前記液晶分子の分子長軸方向とが平行であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る液晶光学装置は、第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、該複数の電極パターンに勾配電圧を印加する駆動印加手段とを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であり、且つ前記勾配電圧の勾配方向を可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液晶光学素子及び液晶光学装置は、液晶層に印加される勾配電圧の勾配方向と、液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されているため、勾配電圧に対する偏向角が左右の偏向で対称性を持ち、視野角特性がない。
【0010】
本発明に係る液晶光学素子は、透過型であるので、反射ミラーのように曇ったりせず、電気的に制御できるので、機械的な駆動機構等を必要とせず、安価で確実、耐久性の良い光偏向器として機能することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る液晶光学素子を示す概略斜視図である。
【図2】図1におけるC−C断面を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る液晶光学素子の勾配電圧を印加する複数の電極の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る液晶光学素子の勾配電圧を印加する複数の電極と、印加電圧及び実効屈折率との関係を示す図である。
【図5】本発明に係る液晶光学素子のビーム偏向機能を説明するための図である。
【図6】本発明に係る液晶光学素子の液晶分子の配向状態と勾配電圧の勾配方向との関係を示す図である。
【図7】本発明に係る液晶光学素子において印加される勾配電圧に対する入射レーザの偏向と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【図8】本発明に係る液晶光学装置において、勾配電圧の勾配方向を可変とし、図7における勾配電圧と対称の勾配電圧を印加した例を示す図である。
【図9】本発明に係る液晶光学素子を電子写真方式のレーザプリンタに利用した利用例を示す図である。
【図10】従来技術における液晶光学素子を示し、図10(a)は液晶光学素子の断面構造及び液晶分子の配向状態を示す概略断面図、図10(b)は液晶層内の電位分布を示す図、図10(c)は一定勾配の屈折率分布を示す液晶素子によるレーザビームの光路偏向の様子をしめす図である。
【図11】従来技術の液晶光学素子において印加される勾配電圧に対する偏向角と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【図12】図11における勾配電圧と対称の勾配電圧に対する偏向角と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明に係る液晶光学素子について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0013】
図1は、本発明に係る液晶光学素子を示す概略斜視図、図2は図1におけるC−C断面を示す断面図である。
【0014】
図1、図2に示すように液晶光学素子10において、第1透明基板11上には透明電極12及び第1の配向膜13が形成され、第2透明基板17上にはベタ電極である透明対向電極16及び第2の配向膜15が形成されている。液晶層14は、第1透明基板11及び第2透明基板17と、シール部材18との間に封入され、封止されている。また、透明電極12と透明対向電極16との間に、電圧供給手段から所定の電圧を印加することによって、液晶光学素子10は、ビーム偏向器として作用し、入射ビームAは、偏向角θだけ偏向された出射ビームBとして出射される。なお、入射ビームAの偏光方向は図1におけるy軸方向と平行であり、出射ビームBの偏向方向はxz面方向である。
【0015】
透明電極12には液晶層14に対して、入射ビームを偏向させるような一定の勾配を持った勾配電圧を印加するための複数の電極パターンが形成されており、この勾配電圧の勾配方向はx軸方向と平行になっている。これに対して、液晶層14の液晶分子の配向方向は図1におけるy軸方向と平行であり、配向膜13、15はその配向方向が液晶分子の配向方向と平行になるようにy軸方向に配向処理されている。このように液晶光学素子10は透明電極12に印加される勾配電圧の勾配方向と液晶層14の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されている。なお偏向の原理等について後述する。
【0016】
図3は、透明電極12の構成を示す図である。
【0017】
透明電極12は、複数のストライプ状の帯状電極20〜27と各帯状電極を接続する接続電極30からなる電極パターンを含んで構成されている(ストライプ電極)。帯状電極20〜27は、例えば、幅W、長さLの大きさで、低抵抗のITOにより形成され、各帯状電極20〜27は、間隔S、ピッチP(=W+S)で配置されている。接続電極30は、高抵抗のITOにより形成され、幅R(3μm)で帯状電極同士を接続している。図3では、8本の帯状電極が記載されているが、透明電極12は、全体として、少なくともビーム径と同じ程度の幅及び長さL(例えば、1〜3mm)を有する様な長さ及び本数の帯状電極(例えば、20〜60本)を含んでいる。
【0018】
図4は、帯状電極と、印加電圧及び実効屈折率との関係を示す図である。
【0019】
図4(a)は、第1の透明基板11上の帯状電極の一部の断面を示す図である。図3に示したように、各帯状電極は接続電極30によって相互に接続されている。実際には、透明電極12の最右端に位置する帯状電極と最左端に位置する帯状電極との間に、電源40より所定のAC電圧が印加される。図4では、便宜上、帯状電極20に電圧V1が、帯状電極27に電圧V5が電源40から印加されているものとする。なお、AC電圧を印加するのは、直流電圧成分を長い間、液晶に印加すると、液晶の焼きつきや分解等の不具合を生じるからである。
【0020】
図4(b)は、各帯状電極と透明対向電極16との間に印加される実効電圧を示している。高抵抗の接続電極は、同一の幅Rを有していることから、各帯状電極は、同一の抵抗値を有する抵抗によって、相互に接続されているに等しい。また、各帯状電極は、低抵抗のITOから構成されているので、各帯状電極内における電位差は生じない。したがって、図4(a)の場合、帯状電極20〜27は、接続電極30によって抵抗分割されて、図
4(b)に示すように、電位V1〜V5の段階状の実効電位が印加され、一定の勾配を持った勾配電圧が印加された状態となる。
【0021】
図4(c)は、各帯状電極による実効屈折率Nを示している。各帯状電極に対して図4(b)に示すような実効電圧(勾配電圧)が印加されることによって、対応する液晶層14を通過する入射ビームに対して、図4(c)に示すようなN1からN5の段階的な実効屈折率が発揮される。したがって、液晶光学素子10は、点線50に示すような実効屈折率分布を有することとなる。ここで、図4(b)(c)に示すように液晶光学素子に加える勾配電圧分布と、液晶の実効屈折率分布が線形比例するためには、液晶材料の種類にもよるが、V1およびV5の値は、1.0〜2.7Vrmsの範囲であることが好ましい。この範囲を超えると、液晶分子は電圧に対し線形応答しなくなり、偏向光に傾き以外の波面収差が付加されてしまうという問題が生じる。
【0022】
なお、液晶光学素子10への入射ビームは、光路長(実効屈折率×セルギャップ)により変調を受けるが、液晶光学素子10ではセルギャップは一定なので、光路長と実効屈折率とは比例する。したがって、光路長分布と実効屈折率分布は相似することとなる。
【0023】
図5は、液晶光学素子のビーム偏向機能を説明するための図である。
【0024】
液晶光学素子10にビームAが入射すると、図4(c)に示した屈折率分布50に応じた位相の遅延が発生し、屈折率分布50の角度θと同様の角度を有するプリズムから空気中にビームが出射するようにして、出射ビームBの出射角度が、角度θだけ偏向されることとなる。即ち、θ=tanθ−1(δ/D)と表すことができる。ここで、Dは入射ビームの有効径(μm)、δは有効径Dにおける左端と右端との光路長差(μm)である。
【0025】
また、図5から、液晶光学素子10が有する屈折率分布50の角度θを調整することによって、入射ビームの偏向角θを調整可能であることが理解できる。屈折率分布50の角度θは、液晶光学素子10の透明電極12が有する帯状電極パターンに印加する実効電圧を調整することによって変化させることが可能であるので、電源40から液晶光学素子に印加される電圧を制御することによって、稼動部品を用いずに、簡単に入射ビームの偏向角θを調整することが可能となる。
【0026】
図6は、図1における液晶光学素子10の液晶分子の配向状態と勾配電圧の勾配方向との関係を示し、図6(a)はyz面方向での断面図、図6(b)はxz面方向での断面図である。
【0027】
液晶光学素子10の透明電極12に設ける帯状の電極パターンの左端に設ける端子1にV5、右端に設ける端子2にV1の駆動電圧が印加され、端子1と端子2の間に一定勾配の勾配電圧が印加された例を示す。この勾配電圧に従い液晶層内の液晶分子は配向するが液晶分子の配向方向はy軸方向と平行であるため、液晶分子の配向状態(チルト角φ)はyz面で連続的に変化し、図6(a)に示すようにV1からV5の各印加電圧に対してyz面で液晶分子a1からa5に示すように傾くことになる。一方のxz面方向での断面における液晶分子は図6(b)に示す液晶分子b1、b2、b3、b4、b5のように、z軸を長軸とする楕円状となり、V1からV5の各印加電圧に対して長軸の長さが変化する。このように液晶光学素子10は透明電極12に印加される勾配電圧の勾配方向と液晶層14の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されているため、xz面での勾配電圧に従い配向する液晶分子はyz面内で傾き、xz面内では液晶分子の傾き角はない。そのためxz面内での液晶分子の長軸の方向がZ軸と平行となる。
【0028】
図7は液晶層に印加される勾配電圧に対する入射レーザの偏向と液晶分子の傾き角との
関係を示す図である。
【0029】
前述の液晶光学素子10における透明電極12の端子1にV5、端子2にV1の駆動電圧を印加して一定の勾配持つ勾配電圧を印加した状態において、液晶層14に偏光方向がy軸方向と平行であるビームAが入射すると勾配電圧に従いxz面内で右方向に偏向し出射ビームBとして出射される。この出射ビームBはxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して偏向角Rだけ偏向され出射する。
【0030】
図8は、液晶光学素子10に印加する勾配電圧の勾配方向を可変とした液晶光学装置を示し、図7における勾配電圧と対称の勾配電圧を印加した例を示す図である。
【0031】
透明電極12の端子1にV1、端子2にV5の駆動電圧が印加することにより端子1と端子2の間に図7に示す勾配方向と対称の勾配方向の勾配電圧が印加した状態において、液晶光学素子10にビームAが入射すると勾配電圧に従いxz面内で左方向に偏向し出射ビームCとして出射される。この出射ビームCはxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して偏向角Tだけ左方向に偏向され出射する。この偏向角Tは図7における偏向角Rと互い等しい印加電圧に対してその絶対値は等しくなり、図7における出射ビームBと図8における出射ビームCとがxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して左右対称となる。
【0032】
以上のように、液晶光学素子10は液晶層14に印加される勾配電圧の勾配方向(x軸方向)と液晶層14の液晶分子の配向方向(y軸方向)とが垂直となるように構成されているため、液晶分子はyz面内で傾き、出射ビームはxz面内で偏向する。このため、図7、図8に示すように電圧の勾配方向が互いに対称となるように駆動電圧を印加した場合レーザビーは左右に偏向するが、このときxz面内における液晶分子の長軸方向に対して出射ビームBと出射ビームCが対称性を持ち、視野角特性をなくすことができる。
したがって、印加する駆動電圧の勾配方向が互いに対称となるように変化させる電圧可変手段を液晶光学素子10に設けることにより視野角特性のない液晶光学装置を実現することができる。この結果、ビームスポットの位置調整範囲を簡単に精度良くすることが可能となる。
【0033】
本実施形態において透明電極12を構成する複数の電極は、図3に示す長方形形状を例として説明したが、これに限定されるものではなく必要に応じて適宜設定することができる。
【0034】
また、第1透明基板11及び第2透明基板17は、可撓性であって、厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂によって形成されている。しかしながら、第1透明基板11及び第2透明基板17は、透明ガラス基板、変性アクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ノルボルテン樹脂等であっても良く、また厚さも50μm〜250μmとすることができる。
【0035】
また、液晶光学素子10における液晶層14の厚さ(セルギャップ)は、6μmとした。また、液晶層14は平行配向液晶により形成されている。なお、垂直配向液晶を使用することも可能である。
【0036】
図9は、本発明に係る液晶光学素子10を電子写真方式のレーザプリンタ100に利用した利用例を示す図である。
【0037】
図9に示すレーザプリンタ100では、光源120から出力されたレーザビームは、コリメータレンズ121により略平行光に変換され、液晶光学素子10及びシリンドリカル
レンズ122を通過してポリゴンミラー123の反射面に入射する。ポリゴンミラー123の反射面から反射されたレーザビームは、感光体ドラム126上を矢印140の方向に等速で走査するようにするために第1走査レンズ124及び第2走査レンズ125を介して、感光体ドラム上を露光する。レーザビームが、不図示の構成によって帯電された感光体ドラム126上を露光することによって、潜像を形成され、不図示の現像器によって潜像にトナーが付着されてトナー像となり、不図示の転写器によってコピー紙に転写され、定着されて出力される。
【0038】
ここで、潜像を正確に形成するために、感光体ドラム126上の露光のスタート位置を正確に位置合わせする必要がある。そこで、本発明による液晶光学素子10によって、レーザビームを偏向させ、ポリゴンミラー123の反射面に入射する位置の微調整を行い、感光体ドラム上の露光開始位置を、例えば、ビームスポット130〜132の何れにするか等といった、微調整を行うことが可能となる。
【0039】
微調整では、ポリゴンミラー123から反射されるレーザビームを、検出ミラー127で反射させて受光素子128で受光し、検出タイミングや検出ずれを検出して制御部110に出力する。制御部110は、受信した検出タイミングや検出ずれに応じて、液晶光学素子10における偏向角θを決定し、それに応じた実効屈折率分布が液晶層14に発生するような電圧が印加されるような制御を行う。
【0040】
上述したように、図9に示すようなレーザプリンタ100におけるレーザビームの位置調整をより広い範囲で行うために、本発明に係る液晶光学素子10を利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
10 液晶光学素子
12 透明電極
13、15 配向膜
14 液晶層
16 透明対向電極
20〜27 帯状電極
30 接続電極
40 電源
50 実効屈折率分布
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶光学素子及び液晶光学装置に関し、特に、入射ビームを偏向することが可能な液晶光学素子及び液晶光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビームスポットの位置や光学系の光軸等を調整等するために、ビーム偏向器が用いられることがある。ビーム偏向器としては、反射ミラーやプリズムなどがあるが、反射ミラーやプリズム等で光の偏向を微調整するためには、機械的な反射ミラーやプリズムの回転手段等を設ける必要がある等の不具合があった。
【0003】
そこで、液晶を利用したビーム偏向器が提案されている。図10(a)は液晶光学素子の断面構造及び液晶分子の配向状態を表している。図10(a)に示すように液晶光学素子60には、第1の透明基板51a上に配置された格子状の透明電極52aと、第2の透明基板51b上に配置された対向共通電極52bとの間に配向膜53を介して液晶層54が挟持されている。この格子状の電極パターンの左右両端には、2つの端子(端子1及び端子2)が具備されており、端子1に1.0[V]、端子2に5.0[V]の駆動電圧を印加すると、格子状の透明電極52aは一定抵抗にて接続されているため図10(b)に示すように、端子1と端子2の間に一定勾配の電位分布が発生する。この電位勾配に従い、図10(a)に示すように、液晶層54内の液晶分子の配向状態(チルト角φ)は連続的に変化する。結果として液晶層54内には、図中の矢印Eの方向に振動している直線偏光に対しては、図10(c)に示す屈折率分布が発生する。この屈折率勾配によりレーザビームの位相が変調され、図10(c)の矢印Fに示すように、光路偏向することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来技術における液晶光学素子60においては、液晶層54における液晶分子の配向方向については、特に考慮されず、図10で図示されるように、液晶分子の配向方向は、図中の矢印Eの直線偏光と同方向であり、駆動電圧の勾配方向と平行になっている。このため、電圧の勾配方向が互いに対称となるように駆動電圧を印加した場合にレーザビームが右に偏向するときと左に偏向するときとで、レーザビームと液晶分子の傾き角との関係が非対称となる。この非対称となる要因について、以下説明する。図11は端子1に1.0[V]、端子2に5.0[V]の駆動電圧を印加してレーザビームを左に偏向させた例を示す。また、図12は端子1に5.0[V]、端子2に1.0[V]の駆動電圧を印加してレーザビームを右に偏向させた例を示す。図11において出射ビームBと液晶分子の傾き角Kとのなす角度Pと、図12において出射ビームCと液晶分子の傾き角Kとのなす角度Qとが異なり、出射ビームと液晶分子の傾き角との関係が左右非対称となる。このように左右の偏向で光学特性(波面収差、電圧に対する偏向角)が異なり視野角特性が発生するという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−292349号公報(第13−15頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題点を解決し、レーザビームが右に偏向するときと、左に偏向するときとでレーザビームと液晶分子の傾き角との関係が対称性を持ち視野角特性のない液晶光学素子及び液晶光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶光学素子は、第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンとを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であることを特徴とする。
また、配向膜を有し、該配向膜の配向方向と前記液晶分子の分子長軸方向とが平行であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る液晶光学装置は、第1及び第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、該複数の電極パターンに勾配電圧を印加する駆動印加手段とを有し、前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であり、且つ前記勾配電圧の勾配方向を可変することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液晶光学素子及び液晶光学装置は、液晶層に印加される勾配電圧の勾配方向と、液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されているため、勾配電圧に対する偏向角が左右の偏向で対称性を持ち、視野角特性がない。
【0010】
本発明に係る液晶光学素子は、透過型であるので、反射ミラーのように曇ったりせず、電気的に制御できるので、機械的な駆動機構等を必要とせず、安価で確実、耐久性の良い光偏向器として機能することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る液晶光学素子を示す概略斜視図である。
【図2】図1におけるC−C断面を示す概略断面図である。
【図3】本発明に係る液晶光学素子の勾配電圧を印加する複数の電極の構成を示す図である。
【図4】本発明に係る液晶光学素子の勾配電圧を印加する複数の電極と、印加電圧及び実効屈折率との関係を示す図である。
【図5】本発明に係る液晶光学素子のビーム偏向機能を説明するための図である。
【図6】本発明に係る液晶光学素子の液晶分子の配向状態と勾配電圧の勾配方向との関係を示す図である。
【図7】本発明に係る液晶光学素子において印加される勾配電圧に対する入射レーザの偏向と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【図8】本発明に係る液晶光学装置において、勾配電圧の勾配方向を可変とし、図7における勾配電圧と対称の勾配電圧を印加した例を示す図である。
【図9】本発明に係る液晶光学素子を電子写真方式のレーザプリンタに利用した利用例を示す図である。
【図10】従来技術における液晶光学素子を示し、図10(a)は液晶光学素子の断面構造及び液晶分子の配向状態を示す概略断面図、図10(b)は液晶層内の電位分布を示す図、図10(c)は一定勾配の屈折率分布を示す液晶素子によるレーザビームの光路偏向の様子をしめす図である。
【図11】従来技術の液晶光学素子において印加される勾配電圧に対する偏向角と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【図12】図11における勾配電圧と対称の勾配電圧に対する偏向角と液晶分子の傾き角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明に係る液晶光学素子について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0013】
図1は、本発明に係る液晶光学素子を示す概略斜視図、図2は図1におけるC−C断面を示す断面図である。
【0014】
図1、図2に示すように液晶光学素子10において、第1透明基板11上には透明電極12及び第1の配向膜13が形成され、第2透明基板17上にはベタ電極である透明対向電極16及び第2の配向膜15が形成されている。液晶層14は、第1透明基板11及び第2透明基板17と、シール部材18との間に封入され、封止されている。また、透明電極12と透明対向電極16との間に、電圧供給手段から所定の電圧を印加することによって、液晶光学素子10は、ビーム偏向器として作用し、入射ビームAは、偏向角θだけ偏向された出射ビームBとして出射される。なお、入射ビームAの偏光方向は図1におけるy軸方向と平行であり、出射ビームBの偏向方向はxz面方向である。
【0015】
透明電極12には液晶層14に対して、入射ビームを偏向させるような一定の勾配を持った勾配電圧を印加するための複数の電極パターンが形成されており、この勾配電圧の勾配方向はx軸方向と平行になっている。これに対して、液晶層14の液晶分子の配向方向は図1におけるy軸方向と平行であり、配向膜13、15はその配向方向が液晶分子の配向方向と平行になるようにy軸方向に配向処理されている。このように液晶光学素子10は透明電極12に印加される勾配電圧の勾配方向と液晶層14の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されている。なお偏向の原理等について後述する。
【0016】
図3は、透明電極12の構成を示す図である。
【0017】
透明電極12は、複数のストライプ状の帯状電極20〜27と各帯状電極を接続する接続電極30からなる電極パターンを含んで構成されている(ストライプ電極)。帯状電極20〜27は、例えば、幅W、長さLの大きさで、低抵抗のITOにより形成され、各帯状電極20〜27は、間隔S、ピッチP(=W+S)で配置されている。接続電極30は、高抵抗のITOにより形成され、幅R(3μm)で帯状電極同士を接続している。図3では、8本の帯状電極が記載されているが、透明電極12は、全体として、少なくともビーム径と同じ程度の幅及び長さL(例えば、1〜3mm)を有する様な長さ及び本数の帯状電極(例えば、20〜60本)を含んでいる。
【0018】
図4は、帯状電極と、印加電圧及び実効屈折率との関係を示す図である。
【0019】
図4(a)は、第1の透明基板11上の帯状電極の一部の断面を示す図である。図3に示したように、各帯状電極は接続電極30によって相互に接続されている。実際には、透明電極12の最右端に位置する帯状電極と最左端に位置する帯状電極との間に、電源40より所定のAC電圧が印加される。図4では、便宜上、帯状電極20に電圧V1が、帯状電極27に電圧V5が電源40から印加されているものとする。なお、AC電圧を印加するのは、直流電圧成分を長い間、液晶に印加すると、液晶の焼きつきや分解等の不具合を生じるからである。
【0020】
図4(b)は、各帯状電極と透明対向電極16との間に印加される実効電圧を示している。高抵抗の接続電極は、同一の幅Rを有していることから、各帯状電極は、同一の抵抗値を有する抵抗によって、相互に接続されているに等しい。また、各帯状電極は、低抵抗のITOから構成されているので、各帯状電極内における電位差は生じない。したがって、図4(a)の場合、帯状電極20〜27は、接続電極30によって抵抗分割されて、図
4(b)に示すように、電位V1〜V5の段階状の実効電位が印加され、一定の勾配を持った勾配電圧が印加された状態となる。
【0021】
図4(c)は、各帯状電極による実効屈折率Nを示している。各帯状電極に対して図4(b)に示すような実効電圧(勾配電圧)が印加されることによって、対応する液晶層14を通過する入射ビームに対して、図4(c)に示すようなN1からN5の段階的な実効屈折率が発揮される。したがって、液晶光学素子10は、点線50に示すような実効屈折率分布を有することとなる。ここで、図4(b)(c)に示すように液晶光学素子に加える勾配電圧分布と、液晶の実効屈折率分布が線形比例するためには、液晶材料の種類にもよるが、V1およびV5の値は、1.0〜2.7Vrmsの範囲であることが好ましい。この範囲を超えると、液晶分子は電圧に対し線形応答しなくなり、偏向光に傾き以外の波面収差が付加されてしまうという問題が生じる。
【0022】
なお、液晶光学素子10への入射ビームは、光路長(実効屈折率×セルギャップ)により変調を受けるが、液晶光学素子10ではセルギャップは一定なので、光路長と実効屈折率とは比例する。したがって、光路長分布と実効屈折率分布は相似することとなる。
【0023】
図5は、液晶光学素子のビーム偏向機能を説明するための図である。
【0024】
液晶光学素子10にビームAが入射すると、図4(c)に示した屈折率分布50に応じた位相の遅延が発生し、屈折率分布50の角度θと同様の角度を有するプリズムから空気中にビームが出射するようにして、出射ビームBの出射角度が、角度θだけ偏向されることとなる。即ち、θ=tanθ−1(δ/D)と表すことができる。ここで、Dは入射ビームの有効径(μm)、δは有効径Dにおける左端と右端との光路長差(μm)である。
【0025】
また、図5から、液晶光学素子10が有する屈折率分布50の角度θを調整することによって、入射ビームの偏向角θを調整可能であることが理解できる。屈折率分布50の角度θは、液晶光学素子10の透明電極12が有する帯状電極パターンに印加する実効電圧を調整することによって変化させることが可能であるので、電源40から液晶光学素子に印加される電圧を制御することによって、稼動部品を用いずに、簡単に入射ビームの偏向角θを調整することが可能となる。
【0026】
図6は、図1における液晶光学素子10の液晶分子の配向状態と勾配電圧の勾配方向との関係を示し、図6(a)はyz面方向での断面図、図6(b)はxz面方向での断面図である。
【0027】
液晶光学素子10の透明電極12に設ける帯状の電極パターンの左端に設ける端子1にV5、右端に設ける端子2にV1の駆動電圧が印加され、端子1と端子2の間に一定勾配の勾配電圧が印加された例を示す。この勾配電圧に従い液晶層内の液晶分子は配向するが液晶分子の配向方向はy軸方向と平行であるため、液晶分子の配向状態(チルト角φ)はyz面で連続的に変化し、図6(a)に示すようにV1からV5の各印加電圧に対してyz面で液晶分子a1からa5に示すように傾くことになる。一方のxz面方向での断面における液晶分子は図6(b)に示す液晶分子b1、b2、b3、b4、b5のように、z軸を長軸とする楕円状となり、V1からV5の各印加電圧に対して長軸の長さが変化する。このように液晶光学素子10は透明電極12に印加される勾配電圧の勾配方向と液晶層14の液晶分子の配向方向とが垂直となるように構成されているため、xz面での勾配電圧に従い配向する液晶分子はyz面内で傾き、xz面内では液晶分子の傾き角はない。そのためxz面内での液晶分子の長軸の方向がZ軸と平行となる。
【0028】
図7は液晶層に印加される勾配電圧に対する入射レーザの偏向と液晶分子の傾き角との
関係を示す図である。
【0029】
前述の液晶光学素子10における透明電極12の端子1にV5、端子2にV1の駆動電圧を印加して一定の勾配持つ勾配電圧を印加した状態において、液晶層14に偏光方向がy軸方向と平行であるビームAが入射すると勾配電圧に従いxz面内で右方向に偏向し出射ビームBとして出射される。この出射ビームBはxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して偏向角Rだけ偏向され出射する。
【0030】
図8は、液晶光学素子10に印加する勾配電圧の勾配方向を可変とした液晶光学装置を示し、図7における勾配電圧と対称の勾配電圧を印加した例を示す図である。
【0031】
透明電極12の端子1にV1、端子2にV5の駆動電圧が印加することにより端子1と端子2の間に図7に示す勾配方向と対称の勾配方向の勾配電圧が印加した状態において、液晶光学素子10にビームAが入射すると勾配電圧に従いxz面内で左方向に偏向し出射ビームCとして出射される。この出射ビームCはxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して偏向角Tだけ左方向に偏向され出射する。この偏向角Tは図7における偏向角Rと互い等しい印加電圧に対してその絶対値は等しくなり、図7における出射ビームBと図8における出射ビームCとがxz面内での液晶分子の長軸方向G(z軸と平行方向)に対して左右対称となる。
【0032】
以上のように、液晶光学素子10は液晶層14に印加される勾配電圧の勾配方向(x軸方向)と液晶層14の液晶分子の配向方向(y軸方向)とが垂直となるように構成されているため、液晶分子はyz面内で傾き、出射ビームはxz面内で偏向する。このため、図7、図8に示すように電圧の勾配方向が互いに対称となるように駆動電圧を印加した場合レーザビーは左右に偏向するが、このときxz面内における液晶分子の長軸方向に対して出射ビームBと出射ビームCが対称性を持ち、視野角特性をなくすことができる。
したがって、印加する駆動電圧の勾配方向が互いに対称となるように変化させる電圧可変手段を液晶光学素子10に設けることにより視野角特性のない液晶光学装置を実現することができる。この結果、ビームスポットの位置調整範囲を簡単に精度良くすることが可能となる。
【0033】
本実施形態において透明電極12を構成する複数の電極は、図3に示す長方形形状を例として説明したが、これに限定されるものではなく必要に応じて適宜設定することができる。
【0034】
また、第1透明基板11及び第2透明基板17は、可撓性であって、厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂によって形成されている。しかしながら、第1透明基板11及び第2透明基板17は、透明ガラス基板、変性アクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ノルボルテン樹脂等であっても良く、また厚さも50μm〜250μmとすることができる。
【0035】
また、液晶光学素子10における液晶層14の厚さ(セルギャップ)は、6μmとした。また、液晶層14は平行配向液晶により形成されている。なお、垂直配向液晶を使用することも可能である。
【0036】
図9は、本発明に係る液晶光学素子10を電子写真方式のレーザプリンタ100に利用した利用例を示す図である。
【0037】
図9に示すレーザプリンタ100では、光源120から出力されたレーザビームは、コリメータレンズ121により略平行光に変換され、液晶光学素子10及びシリンドリカル
レンズ122を通過してポリゴンミラー123の反射面に入射する。ポリゴンミラー123の反射面から反射されたレーザビームは、感光体ドラム126上を矢印140の方向に等速で走査するようにするために第1走査レンズ124及び第2走査レンズ125を介して、感光体ドラム上を露光する。レーザビームが、不図示の構成によって帯電された感光体ドラム126上を露光することによって、潜像を形成され、不図示の現像器によって潜像にトナーが付着されてトナー像となり、不図示の転写器によってコピー紙に転写され、定着されて出力される。
【0038】
ここで、潜像を正確に形成するために、感光体ドラム126上の露光のスタート位置を正確に位置合わせする必要がある。そこで、本発明による液晶光学素子10によって、レーザビームを偏向させ、ポリゴンミラー123の反射面に入射する位置の微調整を行い、感光体ドラム上の露光開始位置を、例えば、ビームスポット130〜132の何れにするか等といった、微調整を行うことが可能となる。
【0039】
微調整では、ポリゴンミラー123から反射されるレーザビームを、検出ミラー127で反射させて受光素子128で受光し、検出タイミングや検出ずれを検出して制御部110に出力する。制御部110は、受信した検出タイミングや検出ずれに応じて、液晶光学素子10における偏向角θを決定し、それに応じた実効屈折率分布が液晶層14に発生するような電圧が印加されるような制御を行う。
【0040】
上述したように、図9に示すようなレーザプリンタ100におけるレーザビームの位置調整をより広い範囲で行うために、本発明に係る液晶光学素子10を利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
10 液晶光学素子
12 透明電極
13、15 配向膜
14 液晶層
16 透明対向電極
20〜27 帯状電極
30 接続電極
40 電源
50 実効屈折率分布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、
前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、を有し、
前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
さらに、配向膜を有し、該配向膜の配向方向と前記液晶分子の分子長軸方向とが平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、
前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、
該複数の電極パターンに勾配電圧を印加する駆動印加手段と、を有し、
前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であり、且つ前記勾配電圧の勾配方向を可変することを特徴とする液晶光学装置。
【請求項1】
第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、
前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、を有し、
前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であることを特徴とする液晶光学素子。
【請求項2】
さらに、配向膜を有し、該配向膜の配向方向と前記液晶分子の分子長軸方向とが平行であることを特徴とする請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
第1及び第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板間に挟持された液晶層と、
前記液晶層に対して、入射ビームを偏向させるような勾配電圧を印加する複数の電極パターンと、
該複数の電極パターンに勾配電圧を印加する駆動印加手段と、を有し、
前記勾配電圧の勾配方向と前記液晶層の液晶分子の配向方向とが垂直であり、且つ前記勾配電圧の勾配方向を可変することを特徴とする液晶光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−164191(P2011−164191A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24098(P2010−24098)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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