液晶光学素子
【課題】電界の漏れによる特性の悪化を軽減することができる液晶光学素子を提供する。
【解決手段】液晶光学素子は、所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、透明な共通電極を備えた第2基板、及び、第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、を備えており、第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている。
【解決手段】液晶光学素子は、所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、透明な共通電極を備えた第2基板、及び、第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、を備えており、第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの屈折力を可変することができる光学素子として、例えば特開2001−133918号公報(特許文献1)の図2に示すように、透明な電極を有する一対の透明な基板の間に液晶層が配置された構造の液晶光学素子が提案されている。この構造の液晶光学素子にあっては、一対の基板間の電圧を変えて液晶層のリタデーション分布を制御することによって、レンズの屈折力を可変することができる。
【0003】
液晶層のリタデーション分布を滑らかに変化させてレンズを形成するといった構成の液晶光学素子にあっては、光学的なレンズを構成するといった関係から、液晶層の厚さを通常の液晶表示パネルの液晶層に比べてかなり厚く設定せざるを得ない。このため、液晶層の応答速度は低下する。
【0004】
通常の光学レンズにあっては、鋸歯状の断面を持つ所謂フレネルレンズとすることによって、その厚みを減らすことができる。同様に、液晶光学素子においても、液晶層のリタデーション分布を所定の領域毎に変化させて鋸歯状の分布としフレネルレンズを形成する構成とすれば、液晶層の厚さを薄く設定することができ、応答速度も速くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶層のリタデーション分布を所定の領域毎に変化させて鋸歯状の分布とする構成にあっては、領域の境界における液晶層の配向状態に乱れが生じ、光学的特性が低下する。
【0007】
従って、本開示の目的は、液晶層の配向状態の乱れに起因する光学的特性の低下を軽減することができる液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の液晶光学素子は、
所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の液晶光学素子にあっては、第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には壁状のスペーサが設けられており、スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている。従って、遮蔽電極によって電界の漏れを抑えることができるので、領域の境界における液晶層の配向状態の乱れが軽減される。これによって、光学的特性の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【図2】図2は、液晶光学素子を用いた表示装置の模式的な斜視図である。
【図3】図3は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図4】図4は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。
【図5】図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図6】図6の(A)乃至(C)は、液晶光学素子の製造方法を説明するための第1基板などの模式的な一部断面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(C)に引き続き、液晶光学素子の製造方法を説明するための第2基板などの模式的な一部断面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(B)に引き続き、液晶光学素子の製造方法を説明するための模式的な一部断面図である。
【図9】図9は、図3のA−A断面図であって、液晶層に電圧が印加されていないときの状態を模式的に示す図である。
【図10】図10は、スペーサ側面に形成された遮蔽電極の有無による特性変化を説明するためのグラフである。
【図11】図11は、第1の変形例に係る液晶光学素子の模式的な一部断面図である。
【図12】図12は、第2の変形例に係る液晶光学素子の模式的な一部断面図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図14】図14は、図13のB−B断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【図16】図16は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図17】図17は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。
【図18】図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図19】図19は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成していないときの状態を模式的に示す図である。
【図20】図20は、図16のC−C断面図であって、図18に対して液晶光学素子が極性を反転させたフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、原則として同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る液晶光学素子、全般に関する説明
2.第1の実施形態
3.第2の実施形態
4.第3の実施形態(その他)
【0012】
[本開示に係る液晶光学素子、全般に関する説明]
本開示の液晶光学素子において、遮蔽電極に印加する電圧の値は設計に応じて適宜選択すればよい。印加する電圧の種類を削減するといった観点からは、共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される構成とすることが好ましい。
【0013】
スペーサは、第1基板の液晶層側の面に形成されている構成であってもよいし、第2基板の液晶層側の面に形成されている構成であってもよい。帯状電極の形成の容易性といった観点からは、スペーサは第2基板の液晶層側に形成されている構成とすることが好ましい。この構成にあっては、例えばスペーサを含む全面に導電材料層を形成することによって、遮蔽電極を共通電極と一体の電極として形成することができる。
【0014】
上述したように、第1基板は、所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えている。帯状電極の群の配置や各帯状電極に印加する電圧の値を適宜設定することによって、液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する構成とすることができ、あるいは又、液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する構成とすることもできる。
【0015】
帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている構成とすることができる。この場合には、帯状電極の群の配置や各帯状電極に印加する電圧の値の設定によるが、液晶光学素子は直線状のフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)や、直線状のフレネルプリズムとして動作する。あるいは又、帯状電極は環状(例えば、同心円状)に形成されている構成とすることができる。例えばレンズとして動作する場合には、液晶光学素子は通常のフレネルレンズとして動作する。
【0016】
液晶層に継続して直流電圧を印加すると液晶材料の劣化を招く。従って、通常の液晶表示パネルと同様に、共通電極と帯状電極との間の電圧の極性が順次反転するように液晶光学素子を駆動すればよい。
【0017】
第1基板や第2基板は、光に対して透明な材料から構成することができる。第1基板や第2基板を構成する材料として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ガラスを例示することができる。第1基板と第2基板は同じ材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。
【0018】
共通電極や帯状電極は、光透過性を有する金属薄膜や、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)などの透明導電材料から構成することができる。これらの電極は、真空蒸着法やスパッタリング法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、各種の化学的気相成長法(CVD法)などの周知の方法によって成膜することができる。また、帯状電極は、フォトリソグラフ法とエッチング法との組合せ、リフトオフ法などの周知の方法によりパターニングすることができる。
【0019】
液晶層を構成する材料として、ネマチック液晶材料などの広く周知の材料を用いることができる。液晶層を構成する材料は特に限定するものではない。ポジ型の液晶材料を用いた構成とすることができるし、ネガ型の液晶材料を用いた構成とすることもできる。尚、所謂ブルー相の液晶材料層を用いることもできる。
【0020】
第1基板と第2基板における液晶層側の面の少なくとも一方に、液晶分子の配向方向やプレチルト角を設定するための配向処理が施されていてもよい。配向処理は、例えばラビング処理を施した配向膜を形成するなどといった周知の方法によって行うことができる。配向膜は、ポリイミド材料などといった周知の材料を用いて構成することができる。
【0021】
壁状のスペーサの形成方法は特に限定するものではない。スペーサの形成方法として、例えば、スクリーン印刷法、感光法を挙げることができる。スクリーン印刷法とは、スペーサを形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口が形成されており、スクリーン上のスペーサ形成用材料をスキージによって開口を通過させて基板上にスペーサ形成用材料層を形成した後、必要に応じて硬化処理を行う方法である。感光法とは、基板上に感光性を有するスペーサ形成用材料層を形成し、露光および現像によってこのスペーサ形成用材料層をパターニングするといった方法である。スペーサは、透明な高分子材料といった周知の材料から構成することができる。
【0022】
第1基板の外周部と第2基板の外周部との間を封止する封止部は、たとえば熱硬化性のエポキシ系樹脂材料といった周知のシール材料を用いて構成することができる。
【0023】
二次元画像を表示する表示部と本開示の液晶光学素子とを組み合わせることによって、例えば立体画像表示が可能な表示装置を構成することができる。表示部として、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマ表示パネルなどといった、広く周知の表示部材を用いることができる。表示部は、モノクロ表示であってもよいし、カラー表示であってもよい。
【0024】
表示部の画素(ピクセル)の数M×Nを(M,N)で表記したとき、(M,N)の値として、具体的には、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(3840,2160)、(1920,1035)、(720,480)、(1280,960)など、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0025】
液晶光学素子を駆動する駆動回路は、種々の回路から構成することができる。これらは周知の回路素子などを用いて構成することができる。
【0026】
本明細書に示す各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0027】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0028】
図1は、第1の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【0029】
液晶光学素子1にあっては、第1の方向に延びるレンズ列11が、第1の方向とは異なる第2の方向にP個並んで配列されている。第p列目(但し、p=1,2・・・,P)のレンズ列11をレンズ列11pと表す。
【0030】
後述するように、各レンズ列11は、液晶層のリタデーション分布を領域毎に変化させて構成したフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)から成る。後で詳しく説明するが、符号110Aは第1基板を表し、符号110Bは第2基板を表し、符号117は封止部を表す。
【0031】
説明の都合上、液晶光学素子1のレンズ列群が成す面はX−Z平面と平行であり、レンズ列11は、垂直方向(図においてZ方向)に延び、水平方向(図においてX方向)に並んで配列されているとする。また、液晶光学素子1から光が出射する方向が+Y方向であるとする。
【0032】
例えば、図2に示すように、二次元画像を表示する表示部90と本開示の液晶光学素子1とを組み合わせることによって、立体画像表示が可能な表示装置を構成することができる。図2に示す例では、1つのレンズ列11は、基本的には4列の画素91に対応する。表示部90とレンズ列11との位置関係などを好適に設定することによって、観察領域WACにおいて視点A1乃至A4用の画像が観察可能となる。
【0033】
後述するように、液晶光学素子1の電極に印加する電圧によってレンズ列11の屈折力を制御することができる。従って、液晶光学素子1を単なる透明な板として動作させるといったことも可能であり、通常画像の表示と立体画像の表示を共に支障なく行うことができるといった表示装置を構成することができる。
【0034】
図3は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図4は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0035】
図示の都合上、図3にあっては第2基板110Bの一部を切り欠いて示した。また、第2基板110Bの一部を切り欠いて示した部分にあっては液晶層などの図示を省略した。同様に、図4にあっては第1基板110Aの一部を切り欠いて示す共に、第1基板110Aの一部を切り欠いて示した部分における液晶層などの図示を省略した。
【0036】
図5などに示すように、液晶光学素子1は、
所定の領域AL(ALL3,ALL2,ALL1,ALC,ALR1,ALR2,ALR3)毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極112(112A,112B,112C,112D)を備えた第1基板110A、
透明な共通電極115を備えた第2基板110B、及び、
第1基板110Aと第2基板110Bとの間に配置され、共通電極115と帯状電極112との間に印加される電圧によって所定の領域AL毎にリタデーション分布が制御される液晶層114、
を備えている。
【0037】
尚、帯状電極112A,112B,112C,112Dを区別する必要がない場合に、これらを単に帯状電極112と表す場合がある。領域ALなどの他の構成要素においても同様である。
【0038】
帯状電極112と共通電極115は、それぞれ、第1基板110Aと第2基板110Bの液晶層114側の面(内面)に形成されている。帯状電極112と共通電極115は、例えばITOといった透明導電材料から構成されており、周知の成膜技術により形成されている。帯状電極112は、周知のパターニング技術によって、図3に示す所定のストライプ形状に形成されている。
【0039】
液晶光学素子1は、例えばポリアミドから成る配向膜113を更に含んでいる。配向膜113は、帯状電極112を含む第1基板110Aの内面を覆うように全面に形成されている。配向膜113の表面にはZ方向にラビング処理が施されている。配向膜113によって、共通電極115と帯状電極112との間に電位差がない場合における液晶分子の分子軸(長軸)の方向が規定される。
【0040】
第1基板110Aと第2基板110Bとの間に配置される液晶層114は、ポジ型のネマチック液晶材料から成る。尚、符号114Aは液晶層114内の液晶分子を模式的に示す。
【0041】
そして、第1基板110Aと第2基板110Bとの間において、所定の領域ALの境界に対応する部分には、壁状のスペーサ116が設けられている。スペーサ116は、透明な高分子材料から成り、感光性を有するスペーサ形成用材料層の露光および現像によって形成されている。各スペーサ116の2つの壁面のうち少なくとも一方(図5に示す例では双方)には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極115Sが設けられている。後述する図6ないし図9を参照して後で詳しく説明するが、スペーサ116は第2基板110Bの内面に形成されており、遮蔽電極115Sは共通電極115と一体の電極として形成されている。
【0042】
図3に示すように、第1基板110A上には、水平方向にストライプ状に延びる給電線111(111A,111B,111C,111D)が更に設けられている。給電線111も、基本的には帯状電極112と同様の製造プロセスによって形成されている。尚、多数の帯状電極112に電圧を供給するといった観点から、給電線111は導電性に優れた金属材料を用いて形成することが好ましい。
【0043】
帯状電極112Aは給電線111Aに接続され、帯状電極112Bは給電線111Bに接続されている。同様に、帯状電極112Cは給電線111Cに接続され、帯状電極112Dは給電線111Dに接続されている。尚、図3においては、給電線111と帯状電極112のコンタクトの図示を省略した。
【0044】
上述の接続関係から明らかなように、帯状電極112A,112B,112C,112Dの各電圧は、給電線111A,111B,111C,111Dに印加される電圧によって制御される。
【0045】
液晶光学素子1の動作時にあっては、図示せぬ駆動回路の動作に基づいて、共通電極115および遮蔽電極115Sには同じ一定値の電圧(例えば0[ボルト])が印加される。また、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれには、独立した電圧が印加される。
【0046】
各領域ALにおける帯状電極112の配置、及び、スペーサ116の配置について詳しく説明する。図3に示すように、帯状電極112は、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。そして、図5に示すように、レンズ列11の中央に位置する領域ALCにあっては、左端部(領域ALL1側の端部)から右端部(領域ALR1側の端部)に向かって、符号112D,112C,112B,112A,112B,112C,112Dの順番で帯状電極112が配置されている。
【0047】
そして、レンズ列11の左側に位置する領域ALL1,ALL2,ALL3にあっては、各領域においてその左端部から右端部に向かって、符号112D,112C,112B,112Aの順番で帯状電極112が配置されている。一方、レンズ列11の右側に位置する領域ALR1,ALR2,ALR3にあっては、各領域においてその右端部から左端部に向かって、符号112D,112C,112B,112Aの順番で帯状電極112が配置されている。尚、図示の都合上、図5にあっては、領域ALC以外の領域において符号112B,112Cの表示を省略した。
【0048】
スペーサ116は、領域ALL3と領域ALL2との境界に対応する部分、領域ALL2と領域ALL1との境界に対応する部分、領域ALL1と領域ALCとの境界に対応する部分、領域ALCと領域ALR1との境界に対応する部分、領域ALR1と領域ALR2との境界に対応する部分、及び、領域ALR2と領域ALR3との境界に対応する部分に形成されている。尚、図4に示すように、スペーサ116も、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。
【0049】
以上、各領域ALにおける帯状電極112の配置、及び、スペーサ116の配置について説明した。図5に示すように、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して、帯状電極112やスペーサ116は線対称の関係となるように配置されている。
【0050】
スペーサ116のY方向の高さ(換言すれば、液晶層114の厚さ)は、例えば9[μm]であり、X方向の幅は、例えば3[μm]である。図4に示すスペーサ116の長さSLは、スペーサ116の端部と封止部117との間に間隔D1,D2が空くような値に設定されている。間隔D1,D2の値は、液晶光学素子1の製造の際に支障なく液晶材料が基板間に流れるような値に設定されている。
【0051】
以下、図6の(A)乃至(C)、図7の(A)及び(B)、並びに、図8の(A)及び(B)を参照して、液晶光学素子1の製造方法を説明する。これらの図は、基本的には、図3におけるA−A断面図と同様の断面図である。尚、図示の都合上、図7の(A)及び(B)並びに図8の(A)については、Y軸の方向を反転して表示をした。
【0052】
[工程−100](図6の(A)及び(B)参照)
先ず、第1基板110A上に、図示せぬ給電線111を周知の方法に基づき形成する。次いで、給電線111上を覆い、給電線111と帯状電極112とのコンタクトとなる部分に開口を設けた図示せぬ絶縁膜を周知の方法に基づき形成する。
【0053】
その後、給電線111などを含む全面に、例えばITOから成る導電材料層112’を周知の方法に基づき形成する(図6の(A))。次いで、この導電材料層112’を周知の方法によりパターニングすることで、給電線111に接続された帯状電極112を形成することができる(図6の(B))。
【0054】
[工程−110](図6の(C)参照)
その後、帯状電極112を含む全面に、例えばポリイミド材料から成る配向膜113を周知の方法に基づき形成し、その表面に周知の方法によりラビング処理を施す。ラビング処理の方向はZ方向である。
【0055】
[工程−120](図7の(A)及び(B)参照)
次いで、第2基板110B上に、感光性の透明な高分子材料層116’を形成する(図7の(A))。その後、この高分子材料層116’を周知の方法により領域ALの境界に対応する部分を残すようにパターニングすることで、スペーサ116を形成することができる(図7の(B))。
【0056】
[工程−130](図8の(A)参照)
次いで、スペーサ116を含む第2基板110Bの全面に、例えばITOから成る導電材料層を周知の方法に基づき形成する。これによって、共通電極115とスペーサ116の壁面上の遮蔽電極115Sを一体の電極として形成することができる。
【0057】
[工程−140](図8の(B)参照)
そして、上記工程を経た第1基板110Aと第2基板110Bを、液晶材料を挟んだ状態で対向させ、周囲を封止することによって、液晶光学素子1を得ることができる。液晶層114に電圧が印加されていない状態にあっては、図に示すように、液晶分子114Aは長軸がZ方向を向くように配向する。
【0058】
次いで、図5と図9を参照して、液晶光学素子1の動作について説明する。尚、液晶光学素子1には、図示せぬ偏光フィルムなどによって偏光方向がZ方向とされた光が入射するとする。
【0059】
上述したように、図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子1がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0060】
この状態において、共通電極115および遮蔽電極115Sには0[ボルト]の電圧が印加されている。また、図3に示す給電線111A,111B,111C,111Dには、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧が印加されている。従って、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれに接続されている帯状電極112A,112B,112C,112Dの電圧も、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧となる。尚、実際には、液晶層114を交流駆動するために、給電線111の電圧の極性は例えば所定の周期で切り換えられる。説明の都合上、電圧の極性の反転は考慮しないで説明を行う。他の実施形態の説明においても同様である。
【0061】
帯状電極112Dと共通電極115との間の電圧は3[ボルト]である。従って、帯状電極112Dと共通電極115との間に電界が形成され、液晶分子114Aの長軸はY方向を向く。また、帯状電極112Cと共通電極115との間の電圧は2[ボルト]である。従って、帯状電極112Cと共通電極115との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子114Aの長軸はY方向を向くが、その程度は若干弱い。同様に、帯状電極112Bと共通電極115との間の電圧は1[ボルト]である。従って、帯状電極112Bと共通電極115との間にも電界が形成され、液晶分子114Aの長軸はY方向を向くが、その程度は更に弱くなる。
【0062】
一方、帯状電極112Aと共通電極115との間の電圧は0[ボルト]である。従って、帯状電極112Aと共通電極115との間には電界が形成されず、液晶分子114Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0063】
液晶分子114Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、偏光軸がZ方向である光に対しての液晶層114におけるリタデーション(位相差)の分布は、帯状電極112Aに対応する部分が大きく、帯状電極112Dに向かうほど小さくなるといった変化を示す。図5に示すグラフは、リタデーションの分布を模式的に示したものである。他の図面におけるグラフについても同様である。
【0064】
上述したように、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して、帯状電極112は線対称の関係となるように配置されている。結果として、領域ALL3乃至ALR3におけるリタデーションの分布は、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して対称な鋸歯状の分布となる。光学的には、液晶層114は鋸歯状の断面を持つフレネルレンズと同視することができる。
【0065】
このように、液晶光学素子1は、共通電極115と帯状電極112との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する。より具体的には、レンズ列11はZ方向に延びる直線状のフレネルレンズとして動作する。
【0066】
次いで、帯状電極112と共通電極115との間に電界が形成されていないときの動作について説明する。
【0067】
図9は、図3のA−A断面図であって、液晶層に電圧が印加されていないときの状態を模式的に示す図である。
【0068】
この状態において、共通電極115および遮蔽電極115Sには0[ボルト]の電圧が印加され、給電線111A,111B,111C,111Dの全てに0[ボルト]の電圧が印加されている。従って、共通電極115と帯状電極112A,112B,112C,112Dの間に電界は形成されず、液晶分子114Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0069】
このため、領域ALL3乃至ALR3におけるリタデーションの分布は一様となる。光学的には、液晶層114は単なる透明層として作用する。
【0070】
液晶光学素子1の動作について説明した。ここで、液晶光学素子1がフレネルレンズを構成しているときの、領域ALの境界付近における電界分布の乱れについて説明する。
【0071】
例えば、図5において領域ALCと領域ALR1に着目すると、領域間の境界を挟んで、帯状電極112D(0[ボルト])と帯状電極112A(3[ボルト])とが並んで配置されている。ここで、スペーサ116の壁面に遮蔽電極115Sが形成されていない場合には、帯状電極112Dと帯状電極112Aとの間にX方向の成分を持つ電界が形成され、これによって境界における液晶層114の配向状態に乱れが生ずる。他の隣り合う領域間においても同様の現象が生じ、結果として、液晶層114におけるリタデーションの分布が乱される。
【0072】
境界における液晶層114の配向状態の乱れは、スペーサ116の壁面に遮蔽電極115Sを設けることによって軽減される。以下、図10を参照して説明する。
【0073】
図10は、スペーサ側面に形成された遮蔽電極の有無による特性変化を説明するためのグラフである。
【0074】
図10に示すグラフは、レンズ列11の横幅を1.5×102[μm]、液晶層114の幅を9[μm]とし、図5を参照して説明した電圧を帯状電極112に印加したときのリタデーションのシミュレーション結果を示す。尚、レンズ列11の対称性に鑑み、シミュレーションは領域ALR1乃至ALR3側を含むレンズ列11の右半分について行った。
【0075】
細い実線で示すグラフは理想的なリタデーションの分布を示す。太い実線で示すグラフは、図5に示す遮蔽電極115Sが形成されているときのリタデーションの分布を示す。破線で示すグラフは、図5に示す遮蔽電極115Sが形成されていないときのリタデーションの分布を示す。
【0076】
細い実線のグラフと破線のグラフとを対比して明らかなように、遮蔽電極115Sが形成されていない場合は、領域ALR1乃至ALR3のいずれにおいても、リタデーションの分布が理想的な曲線から大きく外れている。一方、太い実線のグラフは、細かい実線のグラフに近い挙動を示す。このように、遮蔽電極115Sを設けることによって、リタデーションの分布の乱れの程度を軽減することができる。
【0077】
以上、第1の実施形態について説明した。上述した説明において、光は第1基板110A側から入射するとしたが、第2基板110B側から入射する構成とすることもできる。また、入射光の偏光方向を規定する偏光フィルム等の光学部材が、光が入射する面に設けられていてもよい。
【0078】
上述した説明では、スペーサ116の2つの壁面の双方に遮蔽電極115Sが形成されているとしたが、いずれか一方に遮蔽電極115Sが形成されている構成とすることもできる。図11に、このような変形例の液晶光学素子1Aの一部断面図を示す。
【0079】
例えば図8の(A)に示す導電材料層の形成において、ITOを斜方蒸着することによって、図11に示すような構造を得ることができる。
【0080】
また、上述した説明では、スペーサ116は第1基板110A上に形成されているとしたが、第2基板110B上に形成されている構成とすることもできる。図12に、このような変形例の液晶光学素子1Bの模式的な一部断面図を示す。符号116Aはスペーサを示し、符号113’は配向膜を示す。符号115’は共通電極を示し、符号115S’は遮蔽電極を示す。尚、スペーサ116Aの2つの壁面のいずれにも遮蔽電極115S’が形成されているとしたが、いずれか一方に形成されている構成であってもよい。この構成は、第2基板110Bとの重ねズレ公差を小さくすることができるといった利点を備えている。
【0081】
上述した説明では、レンズ列を複数備えているとしたが、レンズ列を1つ備える構成であってもよい。また、帯状電極は環状に形成されている構成とすることもできる。例えば、図5においてレンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線を中心軸として回転したような構造のフレネルレンズを構成することもできる。
【0082】
[第2の実施形態]
第2の実施形態も、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0083】
第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、第1基板上の帯状電極の構成が異なる。具体的には、一部の領域において帯状電極の一部が省略されている。以上の点が相違する他、第2の実施形態は第1の実施形態と同様の構成である。
【0084】
第1の実施形態と同様に、液晶光学素子2の動作時にあっては、図示せぬ駆動回路の動作に基づいて、共通電極115および遮蔽電極115Sには同じ一定値の電圧(例えば0[ボルト])が印加される。また、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれには、独立した電圧が印加される。
【0085】
第2の実施形態における液晶光学素子2の模式的な斜視図は、図1に示す液晶光学素子1を液晶光学素子2と読み替えた図面となる。
【0086】
図13は、第2の実施形態に係る液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図14は、図13のB−B断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。液晶光学素子の背面の模式的な平面図は、第1の実施形態において参照した図4と同様である。
【0087】
第1の実施形態において参照した図5に示す領域ALのX方向の幅は、フレネルレンズを構成する関係から、
ALC/2>ALL1>ALL2>ALL3 (1)
ALC/2>ALR1>ALR2>ALR3 (2)
といった関係にある。
【0088】
従って、レンズ列11の端部に近づくほど領域ALの幅は狭くなり、帯状電極112を多数本形成することが難しくなる。
【0089】
そこで、第2の実施形態にあっては、領域ALCを除く他の領域において、帯状電極112A,112B,112Cを省略した。
【0090】
即ち、幅の狭い領域にあっては、共通電極115に対して電位差の絶対値が相対的に大きい帯状電極112Dが、液晶層114における電界分布について支配的な影響を与える。また、スペーサ116の遮蔽電極115Sの電圧は帯状電極112Aの電圧と同じ0ボルトであり、図5にあっては、第1基板110A付近において遮蔽電極115Sは帯状電極112Aと近接した位置にある。従って、遮蔽電極115Sは帯状電極112Aと略同様の機能を果たす。以上の理由により、領域ALCを除く他の領域において、帯状電極112A,112B,112Cを省略しても、第1の実施形態と略同様のリタデーション分布を得ることができる。
【0091】
尚、帯状電極112の省略の仕方はこれに限るものではない。液晶光学素子の仕様や設計に応じて適宜電極を省略すればよい。例えば、上述した例では、領域ALCを除く他の領域において帯状電極を符号112Dのみとしたが、複数本を残すといった構成とすることもできる。あるいは又、例えば最端部の領域ALL3,ALR3においてのみ電極を一部省略するといった構成とすることもできる。
【0092】
[第3の実施形態]
第3の実施形態も、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0093】
第3の実施形態における液晶光学素子は、フレネルプリズムとして動作する液晶光学素子である。
【0094】
図15は、第3の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【0095】
液晶光学素子3にあっては、第1の方向に延びるプリズム列31が、第1の方向とは異なる第2の方向にQ個並んで配列されている。第q列目(但し、q=1,2・・・,Q)のプリズム列31をプリズム列31qと表す。
【0096】
後述するように、各プリズム列31は、液晶層のリタデーション分布を領域毎に変化させて構成したフレネルプリズムから成る。後で詳しく説明するが、符号310Aは第1基板を表し、符号310Bは第2基板を表し、符号317は封止部を表す。
【0097】
説明の都合上、液晶光学素子3のプリズム列群が成す面はX−Z平面と平行であり、プリズム列31は、垂直方向(図においてZ方向)に延び、水平方向(図においてX方向)に並んで配列されているとする。また、液晶光学素子3から光が出射する方向が+Y方向であるとする。
【0098】
図16は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図17は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0099】
図示の都合上、図16にあっては第2基板310Bの一部を切り欠いて示した。また、第2基板310Bの一部を切り欠いて示した部分にあっては液晶層などの図示を省略した。同様に、図17にあっては第1基板310Aの一部を切り欠いて示す共に、第1基板310Aの一部を切り欠いて示した部分における液晶層などの図示を省略した。
【0100】
図18などに示すように、液晶光学素子3は、
各プリズム列31に対応する所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極312(312A,312B,312C,312D)を備えた第1基板310A、
透明な共通電極315を備えた第2基板310B、及び、
第1基板310Aと第2基板310Bとの間に配置され、共通電極315と帯状電極312との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層314、
を備えている。
【0101】
第1の実施形態と同様に、帯状電極312と共通電極315は、それぞれ、第1基板310Aと第2基板310Bの液晶層314側の面(内面)に形成されている。液晶層314は、ポジ型のネマチック液晶材料から成る。液晶層314の厚さは、例えば9[μm]である。帯状電極312と共通電極315は、ITOといった透明導電材料から構成されており、周知の成膜技術により形成されている。帯状電極312は、周知のパターニング技術によって、図16に示す所定のストライプ形状に形成されている。
【0102】
液晶光学素子3は、例えばポリアミドから成る配向膜313を更に含んでいる。配向膜313は、第1の実施形態において説明した配向膜113と同様の構成である。
【0103】
そして、第1基板310Aと第2基板310Bとの間において、各プリズム列31に対応する所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサ316が設けられている。スペーサ316は、形成される場所が相違する他、第1の実施形態において説明したスペーサ116と同様の構成である。各スペーサ316の2つの壁面のうち少なくとも一方(図18に示す例では双方)には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極315Sが設けられている。第1の実施形態において参照した図5と同様に、スペーサ316は第2基板310Bの内面に形成されており、遮蔽電極315Sは共通電極315と一体の電極として形成されている。
【0104】
図16に示すように、第1基板310A上には、水平方向にストライプ状に延びる給電線311(311A,311B,311C,311D)が更に設けられている。給電線311は、第1の実施形態で説明した給電線111と同様の構成である。
【0105】
帯状電極312Aは給電線311Aに接続され、帯状電極312Bは給電線311Bに接続されている。同様に、帯状電極312Cは給電線311Cに接続され、帯状電極312Dは給電線311Dに接続されている。尚、図16においては、給電線311と帯状電極312のコンタクトの図示を省略した。
【0106】
上述の接続関係から明らかなように、帯状電極312A,312B,312C,312Dの各電圧は、給電線311A,311B,311C,311Dに印加される電圧によって制御される。
【0107】
プリズム列31に対応する領域における帯状電極312の配置、及び、スペーサ316の配置について詳しく説明する。図16に示すように、帯状電極312は、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。そして、図18に示すように、各プリズム列31に対応する領域にあっては、左端部から右端部に向かって、符号312D,312C,312B,312Aの順番で帯状電極312が配置されている。
【0108】
また、スペーサ316は、プリズム列31に対応する領域の境界に対応する部分に形成されている。尚、図17に示すように、スペーサ316も、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。
【0109】
以上、プリズム列31に対応する領域における帯状電極312の配置、及び、スペーサ316の配置について説明した。液晶光学素子3の製造方法は、第1の実施形態において図6ないし図8を参照して説明した製造方法を適宜読み替えればよいので、説明を省略する。
【0110】
次いで、図18ないし図20を参照して、液晶光学素子3の動作について説明する。尚、液晶光学素子3には、図示せぬ偏光フィルムなどによって偏光方向がZ方向とされた光が入射するとする。
【0111】
上述したように、図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子3がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0112】
この状態において、共通電極315および遮蔽電極315Sには0[ボルト]の電圧が印加されている。また、図16に示す給電線311A,311B,311C,311Dには、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧が印加されている。従って、給電線311A,311B,311C,311Dのそれぞれに接続されている帯状電極312A,312B,312C,312Dの電圧も、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧となる。
【0113】
帯状電極312Dと共通電極315との間の電圧は3[ボルト]である。従って、帯状電極312Dと共通電極315との間に電界が形成され、液晶分子314Aの長軸はY方向を向く。また、帯状電極312Cと共通電極315との間の電圧は2[ボルト]である。従って、帯状電極312Cと共通電極315との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子314Aの長軸はY方向を向くが、その程度は若干弱い。同様に、帯状電極312Bと共通電極315との間の電圧は1[ボルト]である。従って、帯状電極312Bと共通電極315との間にも電界が形成され、液晶分子314Aの長軸はY方向を向くが、その程度は更に弱くなる。一方、帯状電極312Aと共通電極315との間の電圧は0[ボルト]である。従って、帯状電極312Aと共通電極315との間には電界が形成されず、液晶分子314Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0114】
液晶分子314Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、液晶層314におけるリタデーション(位相差)の分布は、帯状電極312Aに対応する部分が大きく、帯状電極312Dに向かうほど小さくなるといった変化を示す。
【0115】
結果として、プリズム列31に対応する領域におけるリタデーションの分布は、鋸歯状の分布となる。光学的には、液晶層314は鋸歯状の断面を持つフレネルプリズムと同視することができる。
【0116】
第3の実施形態は、第1の実施形態における領域ALの1つ(例えば、図5に示す領域ALL2)を繰り返し形成したといった構成とも考えることができる。従って、第1の実施形態において図10を参照して説明したと同様に、スペーサ316の遮蔽電極によってリタデーションの分布の乱れが軽減される。
【0117】
液晶光学素子3も、共通電極315と帯状電極312との間に印加される電圧によって制御される。共通電極315と帯状電極312とを同電圧とすれば、図19に示すように液晶分子314Aの長軸はZ方向に並ぶ。光学的には、液晶層314は単なる透明層として作用する。また、図20に示すように、給電線311A,311B,311C,311Dに、それぞれ、3[ボルト],2[ボルト],1[ボルト],0[ボルト]といった電圧を印加すれば、図18と逆極性のフレネルプリズムとして動作する。
【0118】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0119】
なお、本開示の技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子。
(2)共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される上記(1)に記載の液晶光学素子。
(3)スペーサは第2基板の液晶層側の面に形成されており、遮蔽電極は共通電極と一体の電極として形成されている上記(1)又は(2)に記載の液晶光学素子。
(4)液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する上記(1)から(3)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(5)液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する上記(1)から(3)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(6)帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(7)帯状電極は環状に形成されている上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の液晶光学素子。
【符号の説明】
【0120】
1,1A,1B,2,3・・・液晶光学素子、11・・・レンズ列、12・・・画素、31・・・プリズム列、90・・・表示部、91・・・画素、110A・・・第1基板、110B・・・第2基板、111,111A,111B,111C,111D・・・給電線、112,112A,112B,112C,112D・・・帯状電極、112’・・・導電材料層、113,113’,313・・・配向膜、114,314・・・液晶層、114A,314A・・・液晶分子、115,115’,315・・・共通電極、115S,115S’,315S・・・遮蔽電極、116,116A,316・・・スペーサ、116’・・・高分子材料層、117,317・・・封止部、ARC,ARL1,ARL2,ARL3,ARR1,ARR2,ARR3・・・領域、WAC・・・観察領域、A1,A2,A3,A4・・・視点
【技術分野】
【0001】
本開示は液晶光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズの屈折力を可変することができる光学素子として、例えば特開2001−133918号公報(特許文献1)の図2に示すように、透明な電極を有する一対の透明な基板の間に液晶層が配置された構造の液晶光学素子が提案されている。この構造の液晶光学素子にあっては、一対の基板間の電圧を変えて液晶層のリタデーション分布を制御することによって、レンズの屈折力を可変することができる。
【0003】
液晶層のリタデーション分布を滑らかに変化させてレンズを形成するといった構成の液晶光学素子にあっては、光学的なレンズを構成するといった関係から、液晶層の厚さを通常の液晶表示パネルの液晶層に比べてかなり厚く設定せざるを得ない。このため、液晶層の応答速度は低下する。
【0004】
通常の光学レンズにあっては、鋸歯状の断面を持つ所謂フレネルレンズとすることによって、その厚みを減らすことができる。同様に、液晶光学素子においても、液晶層のリタデーション分布を所定の領域毎に変化させて鋸歯状の分布としフレネルレンズを形成する構成とすれば、液晶層の厚さを薄く設定することができ、応答速度も速くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液晶層のリタデーション分布を所定の領域毎に変化させて鋸歯状の分布とする構成にあっては、領域の境界における液晶層の配向状態に乱れが生じ、光学的特性が低下する。
【0007】
従って、本開示の目的は、液晶層の配向状態の乱れに起因する光学的特性の低下を軽減することができる液晶光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の液晶光学素子は、
所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の液晶光学素子にあっては、第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には壁状のスペーサが設けられており、スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている。従って、遮蔽電極によって電界の漏れを抑えることができるので、領域の境界における液晶層の配向状態の乱れが軽減される。これによって、光学的特性の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【図2】図2は、液晶光学素子を用いた表示装置の模式的な斜視図である。
【図3】図3は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図4】図4は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。
【図5】図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図6】図6の(A)乃至(C)は、液晶光学素子の製造方法を説明するための第1基板などの模式的な一部断面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(C)に引き続き、液晶光学素子の製造方法を説明するための第2基板などの模式的な一部断面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(B)に引き続き、液晶光学素子の製造方法を説明するための模式的な一部断面図である。
【図9】図9は、図3のA−A断面図であって、液晶層に電圧が印加されていないときの状態を模式的に示す図である。
【図10】図10は、スペーサ側面に形成された遮蔽電極の有無による特性変化を説明するためのグラフである。
【図11】図11は、第1の変形例に係る液晶光学素子の模式的な一部断面図である。
【図12】図12は、第2の変形例に係る液晶光学素子の模式的な一部断面図である。
【図13】図13は、第2の実施形態に係る液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図14】図14は、図13のB−B断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図15】図15は、第3の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【図16】図16は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。
【図17】図17は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。
【図18】図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【図19】図19は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成していないときの状態を模式的に示す図である。
【図20】図20は、図16のC−C断面図であって、図18に対して液晶光学素子が極性を反転させたフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、原則として同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る液晶光学素子、全般に関する説明
2.第1の実施形態
3.第2の実施形態
4.第3の実施形態(その他)
【0012】
[本開示に係る液晶光学素子、全般に関する説明]
本開示の液晶光学素子において、遮蔽電極に印加する電圧の値は設計に応じて適宜選択すればよい。印加する電圧の種類を削減するといった観点からは、共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される構成とすることが好ましい。
【0013】
スペーサは、第1基板の液晶層側の面に形成されている構成であってもよいし、第2基板の液晶層側の面に形成されている構成であってもよい。帯状電極の形成の容易性といった観点からは、スペーサは第2基板の液晶層側に形成されている構成とすることが好ましい。この構成にあっては、例えばスペーサを含む全面に導電材料層を形成することによって、遮蔽電極を共通電極と一体の電極として形成することができる。
【0014】
上述したように、第1基板は、所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えている。帯状電極の群の配置や各帯状電極に印加する電圧の値を適宜設定することによって、液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する構成とすることができ、あるいは又、液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する構成とすることもできる。
【0015】
帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている構成とすることができる。この場合には、帯状電極の群の配置や各帯状電極に印加する電圧の値の設定によるが、液晶光学素子は直線状のフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)や、直線状のフレネルプリズムとして動作する。あるいは又、帯状電極は環状(例えば、同心円状)に形成されている構成とすることができる。例えばレンズとして動作する場合には、液晶光学素子は通常のフレネルレンズとして動作する。
【0016】
液晶層に継続して直流電圧を印加すると液晶材料の劣化を招く。従って、通常の液晶表示パネルと同様に、共通電極と帯状電極との間の電圧の極性が順次反転するように液晶光学素子を駆動すればよい。
【0017】
第1基板や第2基板は、光に対して透明な材料から構成することができる。第1基板や第2基板を構成する材料として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ガラスを例示することができる。第1基板と第2基板は同じ材料から構成されていてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。
【0018】
共通電極や帯状電極は、光透過性を有する金属薄膜や、インジウムとスズの酸化物(ITO)やインジウムと亜鉛の酸化物(IZO)などの透明導電材料から構成することができる。これらの電極は、真空蒸着法やスパッタリング法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、各種の化学的気相成長法(CVD法)などの周知の方法によって成膜することができる。また、帯状電極は、フォトリソグラフ法とエッチング法との組合せ、リフトオフ法などの周知の方法によりパターニングすることができる。
【0019】
液晶層を構成する材料として、ネマチック液晶材料などの広く周知の材料を用いることができる。液晶層を構成する材料は特に限定するものではない。ポジ型の液晶材料を用いた構成とすることができるし、ネガ型の液晶材料を用いた構成とすることもできる。尚、所謂ブルー相の液晶材料層を用いることもできる。
【0020】
第1基板と第2基板における液晶層側の面の少なくとも一方に、液晶分子の配向方向やプレチルト角を設定するための配向処理が施されていてもよい。配向処理は、例えばラビング処理を施した配向膜を形成するなどといった周知の方法によって行うことができる。配向膜は、ポリイミド材料などといった周知の材料を用いて構成することができる。
【0021】
壁状のスペーサの形成方法は特に限定するものではない。スペーサの形成方法として、例えば、スクリーン印刷法、感光法を挙げることができる。スクリーン印刷法とは、スペーサを形成すべき部分に対応するスクリーンの部分に開口が形成されており、スクリーン上のスペーサ形成用材料をスキージによって開口を通過させて基板上にスペーサ形成用材料層を形成した後、必要に応じて硬化処理を行う方法である。感光法とは、基板上に感光性を有するスペーサ形成用材料層を形成し、露光および現像によってこのスペーサ形成用材料層をパターニングするといった方法である。スペーサは、透明な高分子材料といった周知の材料から構成することができる。
【0022】
第1基板の外周部と第2基板の外周部との間を封止する封止部は、たとえば熱硬化性のエポキシ系樹脂材料といった周知のシール材料を用いて構成することができる。
【0023】
二次元画像を表示する表示部と本開示の液晶光学素子とを組み合わせることによって、例えば立体画像表示が可能な表示装置を構成することができる。表示部として、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマ表示パネルなどといった、広く周知の表示部材を用いることができる。表示部は、モノクロ表示であってもよいし、カラー表示であってもよい。
【0024】
表示部の画素(ピクセル)の数M×Nを(M,N)で表記したとき、(M,N)の値として、具体的には、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(3840,2160)、(1920,1035)、(720,480)、(1280,960)など、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0025】
液晶光学素子を駆動する駆動回路は、種々の回路から構成することができる。これらは周知の回路素子などを用いて構成することができる。
【0026】
本明細書に示す各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0027】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0028】
図1は、第1の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【0029】
液晶光学素子1にあっては、第1の方向に延びるレンズ列11が、第1の方向とは異なる第2の方向にP個並んで配列されている。第p列目(但し、p=1,2・・・,P)のレンズ列11をレンズ列11pと表す。
【0030】
後述するように、各レンズ列11は、液晶層のリタデーション分布を領域毎に変化させて構成したフレネルレンズ(リニアフレネルレンズ)から成る。後で詳しく説明するが、符号110Aは第1基板を表し、符号110Bは第2基板を表し、符号117は封止部を表す。
【0031】
説明の都合上、液晶光学素子1のレンズ列群が成す面はX−Z平面と平行であり、レンズ列11は、垂直方向(図においてZ方向)に延び、水平方向(図においてX方向)に並んで配列されているとする。また、液晶光学素子1から光が出射する方向が+Y方向であるとする。
【0032】
例えば、図2に示すように、二次元画像を表示する表示部90と本開示の液晶光学素子1とを組み合わせることによって、立体画像表示が可能な表示装置を構成することができる。図2に示す例では、1つのレンズ列11は、基本的には4列の画素91に対応する。表示部90とレンズ列11との位置関係などを好適に設定することによって、観察領域WACにおいて視点A1乃至A4用の画像が観察可能となる。
【0033】
後述するように、液晶光学素子1の電極に印加する電圧によってレンズ列11の屈折力を制御することができる。従って、液晶光学素子1を単なる透明な板として動作させるといったことも可能であり、通常画像の表示と立体画像の表示を共に支障なく行うことができるといった表示装置を構成することができる。
【0034】
図3は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図4は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0035】
図示の都合上、図3にあっては第2基板110Bの一部を切り欠いて示した。また、第2基板110Bの一部を切り欠いて示した部分にあっては液晶層などの図示を省略した。同様に、図4にあっては第1基板110Aの一部を切り欠いて示す共に、第1基板110Aの一部を切り欠いて示した部分における液晶層などの図示を省略した。
【0036】
図5などに示すように、液晶光学素子1は、
所定の領域AL(ALL3,ALL2,ALL1,ALC,ALR1,ALR2,ALR3)毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極112(112A,112B,112C,112D)を備えた第1基板110A、
透明な共通電極115を備えた第2基板110B、及び、
第1基板110Aと第2基板110Bとの間に配置され、共通電極115と帯状電極112との間に印加される電圧によって所定の領域AL毎にリタデーション分布が制御される液晶層114、
を備えている。
【0037】
尚、帯状電極112A,112B,112C,112Dを区別する必要がない場合に、これらを単に帯状電極112と表す場合がある。領域ALなどの他の構成要素においても同様である。
【0038】
帯状電極112と共通電極115は、それぞれ、第1基板110Aと第2基板110Bの液晶層114側の面(内面)に形成されている。帯状電極112と共通電極115は、例えばITOといった透明導電材料から構成されており、周知の成膜技術により形成されている。帯状電極112は、周知のパターニング技術によって、図3に示す所定のストライプ形状に形成されている。
【0039】
液晶光学素子1は、例えばポリアミドから成る配向膜113を更に含んでいる。配向膜113は、帯状電極112を含む第1基板110Aの内面を覆うように全面に形成されている。配向膜113の表面にはZ方向にラビング処理が施されている。配向膜113によって、共通電極115と帯状電極112との間に電位差がない場合における液晶分子の分子軸(長軸)の方向が規定される。
【0040】
第1基板110Aと第2基板110Bとの間に配置される液晶層114は、ポジ型のネマチック液晶材料から成る。尚、符号114Aは液晶層114内の液晶分子を模式的に示す。
【0041】
そして、第1基板110Aと第2基板110Bとの間において、所定の領域ALの境界に対応する部分には、壁状のスペーサ116が設けられている。スペーサ116は、透明な高分子材料から成り、感光性を有するスペーサ形成用材料層の露光および現像によって形成されている。各スペーサ116の2つの壁面のうち少なくとも一方(図5に示す例では双方)には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極115Sが設けられている。後述する図6ないし図9を参照して後で詳しく説明するが、スペーサ116は第2基板110Bの内面に形成されており、遮蔽電極115Sは共通電極115と一体の電極として形成されている。
【0042】
図3に示すように、第1基板110A上には、水平方向にストライプ状に延びる給電線111(111A,111B,111C,111D)が更に設けられている。給電線111も、基本的には帯状電極112と同様の製造プロセスによって形成されている。尚、多数の帯状電極112に電圧を供給するといった観点から、給電線111は導電性に優れた金属材料を用いて形成することが好ましい。
【0043】
帯状電極112Aは給電線111Aに接続され、帯状電極112Bは給電線111Bに接続されている。同様に、帯状電極112Cは給電線111Cに接続され、帯状電極112Dは給電線111Dに接続されている。尚、図3においては、給電線111と帯状電極112のコンタクトの図示を省略した。
【0044】
上述の接続関係から明らかなように、帯状電極112A,112B,112C,112Dの各電圧は、給電線111A,111B,111C,111Dに印加される電圧によって制御される。
【0045】
液晶光学素子1の動作時にあっては、図示せぬ駆動回路の動作に基づいて、共通電極115および遮蔽電極115Sには同じ一定値の電圧(例えば0[ボルト])が印加される。また、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれには、独立した電圧が印加される。
【0046】
各領域ALにおける帯状電極112の配置、及び、スペーサ116の配置について詳しく説明する。図3に示すように、帯状電極112は、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。そして、図5に示すように、レンズ列11の中央に位置する領域ALCにあっては、左端部(領域ALL1側の端部)から右端部(領域ALR1側の端部)に向かって、符号112D,112C,112B,112A,112B,112C,112Dの順番で帯状電極112が配置されている。
【0047】
そして、レンズ列11の左側に位置する領域ALL1,ALL2,ALL3にあっては、各領域においてその左端部から右端部に向かって、符号112D,112C,112B,112Aの順番で帯状電極112が配置されている。一方、レンズ列11の右側に位置する領域ALR1,ALR2,ALR3にあっては、各領域においてその右端部から左端部に向かって、符号112D,112C,112B,112Aの順番で帯状電極112が配置されている。尚、図示の都合上、図5にあっては、領域ALC以外の領域において符号112B,112Cの表示を省略した。
【0048】
スペーサ116は、領域ALL3と領域ALL2との境界に対応する部分、領域ALL2と領域ALL1との境界に対応する部分、領域ALL1と領域ALCとの境界に対応する部分、領域ALCと領域ALR1との境界に対応する部分、領域ALR1と領域ALR2との境界に対応する部分、及び、領域ALR2と領域ALR3との境界に対応する部分に形成されている。尚、図4に示すように、スペーサ116も、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。
【0049】
以上、各領域ALにおける帯状電極112の配置、及び、スペーサ116の配置について説明した。図5に示すように、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して、帯状電極112やスペーサ116は線対称の関係となるように配置されている。
【0050】
スペーサ116のY方向の高さ(換言すれば、液晶層114の厚さ)は、例えば9[μm]であり、X方向の幅は、例えば3[μm]である。図4に示すスペーサ116の長さSLは、スペーサ116の端部と封止部117との間に間隔D1,D2が空くような値に設定されている。間隔D1,D2の値は、液晶光学素子1の製造の際に支障なく液晶材料が基板間に流れるような値に設定されている。
【0051】
以下、図6の(A)乃至(C)、図7の(A)及び(B)、並びに、図8の(A)及び(B)を参照して、液晶光学素子1の製造方法を説明する。これらの図は、基本的には、図3におけるA−A断面図と同様の断面図である。尚、図示の都合上、図7の(A)及び(B)並びに図8の(A)については、Y軸の方向を反転して表示をした。
【0052】
[工程−100](図6の(A)及び(B)参照)
先ず、第1基板110A上に、図示せぬ給電線111を周知の方法に基づき形成する。次いで、給電線111上を覆い、給電線111と帯状電極112とのコンタクトとなる部分に開口を設けた図示せぬ絶縁膜を周知の方法に基づき形成する。
【0053】
その後、給電線111などを含む全面に、例えばITOから成る導電材料層112’を周知の方法に基づき形成する(図6の(A))。次いで、この導電材料層112’を周知の方法によりパターニングすることで、給電線111に接続された帯状電極112を形成することができる(図6の(B))。
【0054】
[工程−110](図6の(C)参照)
その後、帯状電極112を含む全面に、例えばポリイミド材料から成る配向膜113を周知の方法に基づき形成し、その表面に周知の方法によりラビング処理を施す。ラビング処理の方向はZ方向である。
【0055】
[工程−120](図7の(A)及び(B)参照)
次いで、第2基板110B上に、感光性の透明な高分子材料層116’を形成する(図7の(A))。その後、この高分子材料層116’を周知の方法により領域ALの境界に対応する部分を残すようにパターニングすることで、スペーサ116を形成することができる(図7の(B))。
【0056】
[工程−130](図8の(A)参照)
次いで、スペーサ116を含む第2基板110Bの全面に、例えばITOから成る導電材料層を周知の方法に基づき形成する。これによって、共通電極115とスペーサ116の壁面上の遮蔽電極115Sを一体の電極として形成することができる。
【0057】
[工程−140](図8の(B)参照)
そして、上記工程を経た第1基板110Aと第2基板110Bを、液晶材料を挟んだ状態で対向させ、周囲を封止することによって、液晶光学素子1を得ることができる。液晶層114に電圧が印加されていない状態にあっては、図に示すように、液晶分子114Aは長軸がZ方向を向くように配向する。
【0058】
次いで、図5と図9を参照して、液晶光学素子1の動作について説明する。尚、液晶光学素子1には、図示せぬ偏光フィルムなどによって偏光方向がZ方向とされた光が入射するとする。
【0059】
上述したように、図5は、図3のA−A断面図であって、液晶光学素子1がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0060】
この状態において、共通電極115および遮蔽電極115Sには0[ボルト]の電圧が印加されている。また、図3に示す給電線111A,111B,111C,111Dには、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧が印加されている。従って、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれに接続されている帯状電極112A,112B,112C,112Dの電圧も、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧となる。尚、実際には、液晶層114を交流駆動するために、給電線111の電圧の極性は例えば所定の周期で切り換えられる。説明の都合上、電圧の極性の反転は考慮しないで説明を行う。他の実施形態の説明においても同様である。
【0061】
帯状電極112Dと共通電極115との間の電圧は3[ボルト]である。従って、帯状電極112Dと共通電極115との間に電界が形成され、液晶分子114Aの長軸はY方向を向く。また、帯状電極112Cと共通電極115との間の電圧は2[ボルト]である。従って、帯状電極112Cと共通電極115との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子114Aの長軸はY方向を向くが、その程度は若干弱い。同様に、帯状電極112Bと共通電極115との間の電圧は1[ボルト]である。従って、帯状電極112Bと共通電極115との間にも電界が形成され、液晶分子114Aの長軸はY方向を向くが、その程度は更に弱くなる。
【0062】
一方、帯状電極112Aと共通電極115との間の電圧は0[ボルト]である。従って、帯状電極112Aと共通電極115との間には電界が形成されず、液晶分子114Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0063】
液晶分子114Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、偏光軸がZ方向である光に対しての液晶層114におけるリタデーション(位相差)の分布は、帯状電極112Aに対応する部分が大きく、帯状電極112Dに向かうほど小さくなるといった変化を示す。図5に示すグラフは、リタデーションの分布を模式的に示したものである。他の図面におけるグラフについても同様である。
【0064】
上述したように、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して、帯状電極112は線対称の関係となるように配置されている。結果として、領域ALL3乃至ALR3におけるリタデーションの分布は、レンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線に対して対称な鋸歯状の分布となる。光学的には、液晶層114は鋸歯状の断面を持つフレネルレンズと同視することができる。
【0065】
このように、液晶光学素子1は、共通電極115と帯状電極112との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する。より具体的には、レンズ列11はZ方向に延びる直線状のフレネルレンズとして動作する。
【0066】
次いで、帯状電極112と共通電極115との間に電界が形成されていないときの動作について説明する。
【0067】
図9は、図3のA−A断面図であって、液晶層に電圧が印加されていないときの状態を模式的に示す図である。
【0068】
この状態において、共通電極115および遮蔽電極115Sには0[ボルト]の電圧が印加され、給電線111A,111B,111C,111Dの全てに0[ボルト]の電圧が印加されている。従って、共通電極115と帯状電極112A,112B,112C,112Dの間に電界は形成されず、液晶分子114Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0069】
このため、領域ALL3乃至ALR3におけるリタデーションの分布は一様となる。光学的には、液晶層114は単なる透明層として作用する。
【0070】
液晶光学素子1の動作について説明した。ここで、液晶光学素子1がフレネルレンズを構成しているときの、領域ALの境界付近における電界分布の乱れについて説明する。
【0071】
例えば、図5において領域ALCと領域ALR1に着目すると、領域間の境界を挟んで、帯状電極112D(0[ボルト])と帯状電極112A(3[ボルト])とが並んで配置されている。ここで、スペーサ116の壁面に遮蔽電極115Sが形成されていない場合には、帯状電極112Dと帯状電極112Aとの間にX方向の成分を持つ電界が形成され、これによって境界における液晶層114の配向状態に乱れが生ずる。他の隣り合う領域間においても同様の現象が生じ、結果として、液晶層114におけるリタデーションの分布が乱される。
【0072】
境界における液晶層114の配向状態の乱れは、スペーサ116の壁面に遮蔽電極115Sを設けることによって軽減される。以下、図10を参照して説明する。
【0073】
図10は、スペーサ側面に形成された遮蔽電極の有無による特性変化を説明するためのグラフである。
【0074】
図10に示すグラフは、レンズ列11の横幅を1.5×102[μm]、液晶層114の幅を9[μm]とし、図5を参照して説明した電圧を帯状電極112に印加したときのリタデーションのシミュレーション結果を示す。尚、レンズ列11の対称性に鑑み、シミュレーションは領域ALR1乃至ALR3側を含むレンズ列11の右半分について行った。
【0075】
細い実線で示すグラフは理想的なリタデーションの分布を示す。太い実線で示すグラフは、図5に示す遮蔽電極115Sが形成されているときのリタデーションの分布を示す。破線で示すグラフは、図5に示す遮蔽電極115Sが形成されていないときのリタデーションの分布を示す。
【0076】
細い実線のグラフと破線のグラフとを対比して明らかなように、遮蔽電極115Sが形成されていない場合は、領域ALR1乃至ALR3のいずれにおいても、リタデーションの分布が理想的な曲線から大きく外れている。一方、太い実線のグラフは、細かい実線のグラフに近い挙動を示す。このように、遮蔽電極115Sを設けることによって、リタデーションの分布の乱れの程度を軽減することができる。
【0077】
以上、第1の実施形態について説明した。上述した説明において、光は第1基板110A側から入射するとしたが、第2基板110B側から入射する構成とすることもできる。また、入射光の偏光方向を規定する偏光フィルム等の光学部材が、光が入射する面に設けられていてもよい。
【0078】
上述した説明では、スペーサ116の2つの壁面の双方に遮蔽電極115Sが形成されているとしたが、いずれか一方に遮蔽電極115Sが形成されている構成とすることもできる。図11に、このような変形例の液晶光学素子1Aの一部断面図を示す。
【0079】
例えば図8の(A)に示す導電材料層の形成において、ITOを斜方蒸着することによって、図11に示すような構造を得ることができる。
【0080】
また、上述した説明では、スペーサ116は第1基板110A上に形成されているとしたが、第2基板110B上に形成されている構成とすることもできる。図12に、このような変形例の液晶光学素子1Bの模式的な一部断面図を示す。符号116Aはスペーサを示し、符号113’は配向膜を示す。符号115’は共通電極を示し、符号115S’は遮蔽電極を示す。尚、スペーサ116Aの2つの壁面のいずれにも遮蔽電極115S’が形成されているとしたが、いずれか一方に形成されている構成であってもよい。この構成は、第2基板110Bとの重ねズレ公差を小さくすることができるといった利点を備えている。
【0081】
上述した説明では、レンズ列を複数備えているとしたが、レンズ列を1つ備える構成であってもよい。また、帯状電極は環状に形成されている構成とすることもできる。例えば、図5においてレンズ列11の中心を通りY方向に延びる仮想直線を中心軸として回転したような構造のフレネルレンズを構成することもできる。
【0082】
[第2の実施形態]
第2の実施形態も、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0083】
第2の実施形態は、第1の実施形態に対して、第1基板上の帯状電極の構成が異なる。具体的には、一部の領域において帯状電極の一部が省略されている。以上の点が相違する他、第2の実施形態は第1の実施形態と同様の構成である。
【0084】
第1の実施形態と同様に、液晶光学素子2の動作時にあっては、図示せぬ駆動回路の動作に基づいて、共通電極115および遮蔽電極115Sには同じ一定値の電圧(例えば0[ボルト])が印加される。また、給電線111A,111B,111C,111Dのそれぞれには、独立した電圧が印加される。
【0085】
第2の実施形態における液晶光学素子2の模式的な斜視図は、図1に示す液晶光学素子1を液晶光学素子2と読み替えた図面となる。
【0086】
図13は、第2の実施形態に係る液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図14は、図13のB−B断面図であって、液晶光学素子がフレネルレンズを構成しているときの状態を模式的に示す図である。液晶光学素子の背面の模式的な平面図は、第1の実施形態において参照した図4と同様である。
【0087】
第1の実施形態において参照した図5に示す領域ALのX方向の幅は、フレネルレンズを構成する関係から、
ALC/2>ALL1>ALL2>ALL3 (1)
ALC/2>ALR1>ALR2>ALR3 (2)
といった関係にある。
【0088】
従って、レンズ列11の端部に近づくほど領域ALの幅は狭くなり、帯状電極112を多数本形成することが難しくなる。
【0089】
そこで、第2の実施形態にあっては、領域ALCを除く他の領域において、帯状電極112A,112B,112Cを省略した。
【0090】
即ち、幅の狭い領域にあっては、共通電極115に対して電位差の絶対値が相対的に大きい帯状電極112Dが、液晶層114における電界分布について支配的な影響を与える。また、スペーサ116の遮蔽電極115Sの電圧は帯状電極112Aの電圧と同じ0ボルトであり、図5にあっては、第1基板110A付近において遮蔽電極115Sは帯状電極112Aと近接した位置にある。従って、遮蔽電極115Sは帯状電極112Aと略同様の機能を果たす。以上の理由により、領域ALCを除く他の領域において、帯状電極112A,112B,112Cを省略しても、第1の実施形態と略同様のリタデーション分布を得ることができる。
【0091】
尚、帯状電極112の省略の仕方はこれに限るものではない。液晶光学素子の仕様や設計に応じて適宜電極を省略すればよい。例えば、上述した例では、領域ALCを除く他の領域において帯状電極を符号112Dのみとしたが、複数本を残すといった構成とすることもできる。あるいは又、例えば最端部の領域ALL3,ALR3においてのみ電極を一部省略するといった構成とすることもできる。
【0092】
[第3の実施形態]
第3の実施形態も、本開示に係る液晶光学素子に関する。
【0093】
第3の実施形態における液晶光学素子は、フレネルプリズムとして動作する液晶光学素子である。
【0094】
図15は、第3の実施形態に係る液晶光学素子の模式的な斜視図である。
【0095】
液晶光学素子3にあっては、第1の方向に延びるプリズム列31が、第1の方向とは異なる第2の方向にQ個並んで配列されている。第q列目(但し、q=1,2・・・,Q)のプリズム列31をプリズム列31qと表す。
【0096】
後述するように、各プリズム列31は、液晶層のリタデーション分布を領域毎に変化させて構成したフレネルプリズムから成る。後で詳しく説明するが、符号310Aは第1基板を表し、符号310Bは第2基板を表し、符号317は封止部を表す。
【0097】
説明の都合上、液晶光学素子3のプリズム列群が成す面はX−Z平面と平行であり、プリズム列31は、垂直方向(図においてZ方向)に延び、水平方向(図においてX方向)に並んで配列されているとする。また、液晶光学素子3から光が出射する方向が+Y方向であるとする。
【0098】
図16は、液晶光学素子の正面の模式的な平面図である。図17は、液晶光学素子の背面の模式的な平面図である。図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0099】
図示の都合上、図16にあっては第2基板310Bの一部を切り欠いて示した。また、第2基板310Bの一部を切り欠いて示した部分にあっては液晶層などの図示を省略した。同様に、図17にあっては第1基板310Aの一部を切り欠いて示す共に、第1基板310Aの一部を切り欠いて示した部分における液晶層などの図示を省略した。
【0100】
図18などに示すように、液晶光学素子3は、
各プリズム列31に対応する所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極312(312A,312B,312C,312D)を備えた第1基板310A、
透明な共通電極315を備えた第2基板310B、及び、
第1基板310Aと第2基板310Bとの間に配置され、共通電極315と帯状電極312との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層314、
を備えている。
【0101】
第1の実施形態と同様に、帯状電極312と共通電極315は、それぞれ、第1基板310Aと第2基板310Bの液晶層314側の面(内面)に形成されている。液晶層314は、ポジ型のネマチック液晶材料から成る。液晶層314の厚さは、例えば9[μm]である。帯状電極312と共通電極315は、ITOといった透明導電材料から構成されており、周知の成膜技術により形成されている。帯状電極312は、周知のパターニング技術によって、図16に示す所定のストライプ形状に形成されている。
【0102】
液晶光学素子3は、例えばポリアミドから成る配向膜313を更に含んでいる。配向膜313は、第1の実施形態において説明した配向膜113と同様の構成である。
【0103】
そして、第1基板310Aと第2基板310Bとの間において、各プリズム列31に対応する所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサ316が設けられている。スペーサ316は、形成される場所が相違する他、第1の実施形態において説明したスペーサ116と同様の構成である。各スペーサ316の2つの壁面のうち少なくとも一方(図18に示す例では双方)には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極315Sが設けられている。第1の実施形態において参照した図5と同様に、スペーサ316は第2基板310Bの内面に形成されており、遮蔽電極315Sは共通電極315と一体の電極として形成されている。
【0104】
図16に示すように、第1基板310A上には、水平方向にストライプ状に延びる給電線311(311A,311B,311C,311D)が更に設けられている。給電線311は、第1の実施形態で説明した給電線111と同様の構成である。
【0105】
帯状電極312Aは給電線311Aに接続され、帯状電極312Bは給電線311Bに接続されている。同様に、帯状電極312Cは給電線311Cに接続され、帯状電極312Dは給電線311Dに接続されている。尚、図16においては、給電線311と帯状電極312のコンタクトの図示を省略した。
【0106】
上述の接続関係から明らかなように、帯状電極312A,312B,312C,312Dの各電圧は、給電線311A,311B,311C,311Dに印加される電圧によって制御される。
【0107】
プリズム列31に対応する領域における帯状電極312の配置、及び、スペーサ316の配置について詳しく説明する。図16に示すように、帯状電極312は、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。そして、図18に示すように、各プリズム列31に対応する領域にあっては、左端部から右端部に向かって、符号312D,312C,312B,312Aの順番で帯状電極312が配置されている。
【0108】
また、スペーサ316は、プリズム列31に対応する領域の境界に対応する部分に形成されている。尚、図17に示すように、スペーサ316も、一方向(図においてZ方向)に伸びる直線状に形成されている。
【0109】
以上、プリズム列31に対応する領域における帯状電極312の配置、及び、スペーサ316の配置について説明した。液晶光学素子3の製造方法は、第1の実施形態において図6ないし図8を参照して説明した製造方法を適宜読み替えればよいので、説明を省略する。
【0110】
次いで、図18ないし図20を参照して、液晶光学素子3の動作について説明する。尚、液晶光学素子3には、図示せぬ偏光フィルムなどによって偏光方向がZ方向とされた光が入射するとする。
【0111】
上述したように、図18は、図16のC−C断面図であって、液晶光学素子3がフレネルプリズムを構成しているときの状態を模式的に示す図である。
【0112】
この状態において、共通電極315および遮蔽電極315Sには0[ボルト]の電圧が印加されている。また、図16に示す給電線311A,311B,311C,311Dには、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧が印加されている。従って、給電線311A,311B,311C,311Dのそれぞれに接続されている帯状電極312A,312B,312C,312Dの電圧も、それぞれ、0[ボルト],1[ボルト],2[ボルト],3[ボルト]といった電圧となる。
【0113】
帯状電極312Dと共通電極315との間の電圧は3[ボルト]である。従って、帯状電極312Dと共通電極315との間に電界が形成され、液晶分子314Aの長軸はY方向を向く。また、帯状電極312Cと共通電極315との間の電圧は2[ボルト]である。従って、帯状電極312Cと共通電極315との間には、先ほどよりも弱い電界が形成される。液晶分子314Aの長軸はY方向を向くが、その程度は若干弱い。同様に、帯状電極312Bと共通電極315との間の電圧は1[ボルト]である。従って、帯状電極312Bと共通電極315との間にも電界が形成され、液晶分子314Aの長軸はY方向を向くが、その程度は更に弱くなる。一方、帯状電極312Aと共通電極315との間の電圧は0[ボルト]である。従って、帯状電極312Aと共通電極315との間には電界が形成されず、液晶分子314Aの長軸はZ方向のままとなる。
【0114】
液晶分子314Aの長軸方向の屈折率は、短軸方向の屈折率よりも大きい。このため、液晶層314におけるリタデーション(位相差)の分布は、帯状電極312Aに対応する部分が大きく、帯状電極312Dに向かうほど小さくなるといった変化を示す。
【0115】
結果として、プリズム列31に対応する領域におけるリタデーションの分布は、鋸歯状の分布となる。光学的には、液晶層314は鋸歯状の断面を持つフレネルプリズムと同視することができる。
【0116】
第3の実施形態は、第1の実施形態における領域ALの1つ(例えば、図5に示す領域ALL2)を繰り返し形成したといった構成とも考えることができる。従って、第1の実施形態において図10を参照して説明したと同様に、スペーサ316の遮蔽電極によってリタデーションの分布の乱れが軽減される。
【0117】
液晶光学素子3も、共通電極315と帯状電極312との間に印加される電圧によって制御される。共通電極315と帯状電極312とを同電圧とすれば、図19に示すように液晶分子314Aの長軸はZ方向に並ぶ。光学的には、液晶層314は単なる透明層として作用する。また、図20に示すように、給電線311A,311B,311C,311Dに、それぞれ、3[ボルト],2[ボルト],1[ボルト],0[ボルト]といった電圧を印加すれば、図18と逆極性のフレネルプリズムとして動作する。
【0118】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0119】
なお、本開示の技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子。
(2)共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される上記(1)に記載の液晶光学素子。
(3)スペーサは第2基板の液晶層側の面に形成されており、遮蔽電極は共通電極と一体の電極として形成されている上記(1)又は(2)に記載の液晶光学素子。
(4)液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する上記(1)から(3)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(5)液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する上記(1)から(3)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(6)帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の液晶光学素子。
(7)帯状電極は環状に形成されている上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の液晶光学素子。
【符号の説明】
【0120】
1,1A,1B,2,3・・・液晶光学素子、11・・・レンズ列、12・・・画素、31・・・プリズム列、90・・・表示部、91・・・画素、110A・・・第1基板、110B・・・第2基板、111,111A,111B,111C,111D・・・給電線、112,112A,112B,112C,112D・・・帯状電極、112’・・・導電材料層、113,113’,313・・・配向膜、114,314・・・液晶層、114A,314A・・・液晶分子、115,115’,315・・・共通電極、115S,115S’,315S・・・遮蔽電極、116,116A,316・・・スペーサ、116’・・・高分子材料層、117,317・・・封止部、ARC,ARL1,ARL2,ARL3,ARR1,ARR2,ARR3・・・領域、WAC・・・観察領域、A1,A2,A3,A4・・・視点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子。
【請求項2】
共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
スペーサは第2基板の液晶層側の面に形成されており、遮蔽電極は共通電極と一体の電極として形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
帯状電極は環状に形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項1】
所定の領域毎に群を構成するように形成された透明な複数の帯状電極を備えた第1基板、
透明な共通電極を備えた第2基板、及び、
第1基板と第2基板との間に配置され、共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって所定の領域毎にリタデーション分布が制御される液晶層、
を備えており、
第1基板と第2基板との間において、所定の領域の境界に対応する部分には、壁状のスペーサが設けられており、
スペーサの2つの壁面のうち少なくとも一方には、一定値の電圧が印加される遮蔽電極が設けられている液晶光学素子。
【請求項2】
共通電極および遮蔽電極には同じ一定値の電圧が印加される請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項3】
スペーサは第2基板の液晶層側の面に形成されており、遮蔽電極は共通電極と一体の電極として形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項4】
液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルレンズとして動作する請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項5】
液晶光学素子は共通電極と帯状電極との間に印加される電圧によって制御されるフレネルプリズムとして動作する請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項6】
帯状電極は一方向に伸びる直線状に形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【請求項7】
帯状電極は環状に形成されている請求項1に記載の液晶光学素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−50503(P2013−50503A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186983(P2011−186983)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(598172398)株式会社ジャパンディスプレイウェスト (90)
【Fターム(参考)】
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