説明

液晶化合物の製造中間体混合物、その製造方法及び液晶化合物混合物

【課題】配向性に優れ、輝度向上率の高い液晶化合物を得ることができる、製造中間体混合物、その製造方法、及び、液晶化合物の混合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物と、式(II)で表される化合物との混合物であって、前記式(II)で表される化合物を3.5〜12重量%含有する混合物、その製造方法。及び当該混合物を原料として用いる液晶化合物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向性に優れ、輝度向上率が高い液晶化合物混合物の製造中間体混合物、その製造方法及び液晶化合物混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに使用される光学補償板等の光学フィルムとして、液晶ポリマーあるいは官能基を有する液晶化合物を配向処理した液晶配向フィルムが開発されている。このフィルムは、高分子フィルムの延伸技術を利用した複屈折フィルムでは実現不可能な、より高度な配向状態、すなわち傾斜配向、ねじれ配向等の配向を実現できるものとして注目されている。
【0003】
先に、本出願人は、このような液晶配向フィルムを製造するための液晶化合物として、後述する式(IV)で表される液晶化合物を見出している(特許文献1)。この化合物は、液晶相を示す温度範囲がより広く、化学的に安定であり、安価に製造でき、しかも、選択反射波長帯域Δλが広いものである。
後述するように、式(IV)で表される液晶化合物は、式(VII)
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基等を表す。)で表されるアジン化合物に、後述する式(I)で表される化合物を反応させることにより製造することができる。
【0006】
また、式(I)で表される化合物の製造方法として、特許文献2には、酸触媒の存在下、アクリル酸又はメタクリル酸と、後述する式(III)で表されるヒドロキシアルキル基を有する安息香酸誘導体とを反応させる方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、実施例3において、4−ヒドロキシヘキシルオキシ安息香酸(70mmol)のベンゼン溶液に、ハイドロキノン、パラトルエンスルホン酸及びアクリル酸(210mmol)を加え、加熱撹拌して脱水し、アクリル酸エステルを製造する方法が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、例1において、クロロホルム中、4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)安息香酸、4−トルオールスルホン酸、ハイドロキノン及びアクリル酸を撹拌することによって、4−(6−アクリロイルへキシルオキシ)安息香酸を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2008/133290号パンフレット
【特許文献2】特開平8−310996号公報
【特許文献3】特公平3−54204号公報
【特許文献4】特開昭58−176205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記した特許文献2〜4に記載された方法のうち、特許文献2に記載の方法により、アクリル酸を20当量用いて反応を行ったところ、式(VI)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、nは1〜10の整数を表す。)で表される副生物が9重量%も生成してしまうことが分かった。また、前記ヒドロキシアルキル基を有する安息香酸誘導体の二量化由来の副生物(式(II)で表される化合物)の生成は1重量%以下であった。
【0013】
特許文献3に記載された方法では、前記式(VI)で表される化合物が副生し、さらに4−ヒドロキシヘキシルオキシ安息香酸が7.5重量%も残存することがわかった。
また、特許文献4に記載された方法によると、前記ヒドロキシアルキル基を有する安息香酸誘導体の二量化由来の副生物(式(II)で表される化合物)の副生は、3重量%以下だった。
【0014】
本発明者らは、上記特許文献4に記載の方法で得られた、式(I)で表される化合物を主成分とする混合物を、前記式(VII)で表される化合物と反応させて、式(IV)で表される液晶化合物を主成分とする液晶化合物の混合物を合成した。
しかしながら、得られた液晶化合物の混合物は、重要な光学特性である輝度向上率や配向性において、目標値(輝度向上率:124%以上、配向性評価4以上)を満足するものではなかった。
【0015】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、配向性に優れ、輝度向上率の高い液晶化合物を得ることができる、製造中間体混合物、その製造方法、及び、液晶化合物の混合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、後記式(I)で表される化合物に、式(II)で表される化合物を混合物全体に対して3.5〜12重量%含有させた混合物を原料(製造中間体)として用いると、配向性に優れ、輝度向上率の高い、液晶化合物の混合物が得られることを見出した。そして、式(II)で表される化合物を3.5〜12重量%含有する混合物を得るためには、式(I)で表される化合物を製造する際に、用いるアクリル酸又はメタクリル酸の使用量を制御すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)の混合物が提供される。
(1)式(I)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Aは水素原子又はメチル基を表し、nは1〜12の整数を表す。)で表される化合物と、式(II)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、A及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物との混合物であって、前記式(II)で表される化合物を3.5〜12重量%含有する混合物。
【0022】
本発明の第2によれば、下記(2)〜(6)の本発明の混合物の製造方法が提供される。
(2)酸触媒の存在下、アクリル酸又はメタクリル酸と、式(III)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、nは1〜12の整数を表す。)で表される化合物とを反応させて、式(I)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、nは前記と同じ意味を表し、Aは水素原子又はメチル基を表す。)で表される化合物と、式(II)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、A及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物との混合物を製造する方法であって、アクリル酸又はメタクリル酸の使用量を制御することにより、前記式(II)で表される化合物の生成量を3.5〜12重量%に制御することを特徴とする(1)に記載の混合物の製造方法。
【0029】
(3)アクリル酸又はメタクリル酸を、前記式(III)で表される化合物に対して、2〜10当量使用することを特徴とする、(2)に記載の製造方法。
(4)酸触媒としてスルホン酸類を用いることを特徴とする、(2)又は(3)に記載の製造方法。
(5)スルホン酸類として、メタンスルホン酸又はパラトルエンスルホン酸を用いることを特徴とする、(4)に記載の製造方法。
(6)酸触媒を、前記式(III)で表される化合物に対して、0.01〜0.3当量使用すること特徴とする、(2)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
【0030】
本発明の第3によれば、下記(7)の液晶化合物の混合物が提供される。
(7)式(IV)
【0031】
【化8】

【0032】
〔式中、Aは水素原子あるいはメチル基を表し、nは1〜12の整数を表し、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、又はO−C(=O)−NRを表す。Rは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又はC(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕で表される液晶化合物と、式(V)
【0033】
【化9】

【0034】
(式中、A、n、X〜Xは、前記と同じ意味を表す。)で表される液晶化合物の混合物であって、前記式(V)で表される液晶化合物を3.5〜12重量%含有する液晶化合物の混合物。
【発明の効果】
【0035】
本発明の混合物を用いると、配向性に優れ、輝度向上率の高い、液晶化合物の混合物を収率よく製造することができる。
本発明の混合物の製造方法によれば、本発明の混合物を、一段階で簡便に、かつ収率よく製造することができる。
本発明の液晶化合物の混合物は配向性に優れ、輝度向上率が高く、光学特性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】コレステリック規則性を有する樹脂層を偏光顕微鏡で観察し、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥の量を目視で確認して判定する場合の、前記樹脂層のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を、1)本発明の混合物、2)混合物の製造方法、及び3)液晶化合物の混合物に項分けして詳細に説明する。
【0038】
1)本発明の混合物
本発明の第1は、前記式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」という。)と、式(II)で表される化合物(以下、「化合物(II)」という。)との混合物であって、化合物(II)を3.5〜12重量%含有する混合物(以下、「本発明の混合物」ということがある。)である。本発明では化合物(I)と化合物(II)以外の化合物(例えば安息香酸誘導体の3量化由来の副生物)を、本発明の効果を損なわない範囲で微量に含有していても良い。
【0039】
前記式(I)、(II)中、Aは水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。nは1〜12の整数を表し、2〜8の整数が好ましく、4〜7の整数がより好ましく、6が特に好ましい。
【0040】
本発明の混合物は、後述する液晶化合物の混合物の好適な製造中間体となり得る。
すなわち、本発明の混合物を製造中間体として用いると、化合物(I)のみを製造中間体として用いる場合、及び、化合物(I)と化合物(II)の混合物であって、化合物(II)を3.5重量%未満しか含まない混合物、又は化合物(II)を12重量%より多く含む混合物を製造中間体として用いる場合よりも、配向性に優れた、輝度向上率の高い、液晶化合物の混合物を収率よく製造することができる。
【0041】
本発明の混合物の製造方法としては、特に制限されないが、本発明の混合物を一段階で簡便に、かつ収率よく製造することができることから、後述する本発明の混合物の製造方法が好ましい。
【0042】
2)混合物の製造方法
本発明の混合物の製造方法は、酸触媒の存在下、アクリル酸又はメタクリル酸(以下、両者を併せて、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、好ましくはアクリル酸と、前記式(III)で表される化合物(以下、「化合物(III)」という。)を反応させて、本発明の混合物を製造する方法であって、(メタ)アクリル酸の使用量を制御することにより、化合物(II)の生成量を3.5〜12重量%、好ましくは3.6〜10重量%、更に好ましくは3.7〜8重量%、特に好ましくは3.8〜6重量%に制御することを特徴とする。
【0043】
(メタ)アクリル酸の使用量を制御する方法としては、結果として、化合物(II)の生成量が3.5〜12重量%に制御できるものであれば、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸の使用量を、化合物(III)に対して、2〜10当量とすることが好ましく、3〜8当量とすることがより好ましく、3.5〜5.0当量とするのが更に好ましい。このような範囲の量の(メタ)アクリル酸を用いることで、得られる混合物中の化合物(II)の含有量を、3.5〜12重量%により確実に制御することができる。
【0044】
用いる酸触媒としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸類;塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類;等が挙げられる。これらの中でも、本発明の混合物を簡便に得られることから、スルホン酸類が好ましく、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸が特に好ましい。
【0045】
酸触媒の使用量は、化合物(III)に対して、0.01〜0.3当量であるのが好ましく、0.05〜0.25当量であるのがより好ましい。
【0046】
原料の化合物(III)は、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸とハロゲン化アルキルアルコールを、アルカリ水溶液中で加熱撹拌する方法(特許文献3)等の公知の方法によって製造することができる。
【0047】
(メタ)アクリル酸と化合物(III)との反応は、溶媒中で行うのが好ましい。
用いる溶媒としては、不活性なものであれば、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;及びこれらの溶媒の二種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性に優れる観点から、芳香族炭化水素が好ましく、特にトルエンが好ましい。
【0048】
反応は、例えば、適当な溶媒中、化合物(III)、所定量の(メタ)アクリル酸、酸触媒、及び、所望によりヒドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を混合し、全容を加熱撹拌することにより行う。また、反応は、生成する水を用いる溶媒との共沸脱水にて系外に除去し、蒸気温度が溶媒の沸点となるまで還流して行うのが好ましい。
【0049】
反応終了後は、有機合成化学における通常の後処理操作を行う。例えば、反応混合物にアルカリ水溶液を加えて水層を中和し、有機層を分離して洗浄した後、有機層に貧溶媒を加えて結晶を析出させることにより、目的とする本発明の混合物を得ることができる。
【0050】
得られる本発明の混合物が、化合物(II)を3.5〜12重量%含有することは、例えば、該混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、化合物(I)と化合物(II)の測定データ(チャート)の面積パーセントを算出することにより確認することができる。
【0051】
3)液晶化合物の混合物
本発明の第3は、前記式(IV)で表される液晶化合物(以下、「液晶化合物(IV)」という。)と、式(V)で表される液晶化合物(以下、「液晶化合物(V)」という。)の混合物であって、液晶化合物(V)を3.5〜12重量%、好ましくは3.6〜10重量%、更に好ましくは3.7〜8重量%、特に好ましくは3.8〜6重量%含有する液晶化合物の混合物である。本発明では化合物(IV)と化合物(V)以外の化合物を、本発明の効果を損なわない範囲で微量に含有していても良い。
【0052】
前記式(IV)、(V)中、A、nは前記と同じ意味を表す。
〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、又はO−C(=O)−NRを表す。
【0053】
〜Xのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0054】
置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
これらの置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等が挙げられる。
【0055】
は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又はC(=O)−が介在していてもよい。これらの中でも、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−が好ましい。
ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合は除かれる。
、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0056】
前記Rの、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在するアルキル基の具体例としては、−CH−CH−O−CH−CH、−CH−CH−S−CH−CH、−CH−CH−O−C(=O)−CH、−CH−CH−C(=O)−O−CH、−CH−O−C(=O)−O−CH−CH、−CH−CH−NR−C(=O)−CH、−CH−CH−C(=O)−NR−CH、−CH−NR−CH−CH、−CH−CH−C(=O)−CH等が挙げられる。
【0057】
これらの中でも、本発明の液晶化合物の混合物においては、X〜Xとしては、原料の入手しやすさ、及び光学特性に優れた液晶化合物の混合物が得られる観点から、
(1)X〜Xがいずれも水素原子であるか、
(2)X〜X及びXがいずれも水素原子であり、かつX及びXがそれぞれ独立して、−OCH、−OCHCH、若しくは−CHであるか、
(3)X〜X、X及びXがいずれも水素原子であり、かつ、Xが、−C(=O)−OR、−OCH、−OCHCH、−CH、−CHCH、−CHCHCH、若しくはフッ素原子であるか、
(4)X〜X、X及びXがいずれも水素原子であり、かつ、X及びXがそれぞれ独立して、−C(=O)−OR、−OCH、−OCHCH、−CH、−CHCH、−CHCHCH若しくはフッ素原子であるか、又は
(5)X〜X及びX〜Xがいずれも水素原子であり、かつ、Xが、−C(=O)−O−R、−OCH、−OCHCH、−CH、−CHCH、−CHCHCH、若しくはフッ素原子であることが好ましく、
【0058】
(2a)X〜X及びXがいずれも水素原子であり、かつ、X及びXがともに−OCHであるか、
(3a)X〜X、X及びXがいずれも水素原子であり、かつ、Xが、−C(=O)−OCH、−C(=O)−O−CHCHCH、−C(=O)−O−CHCHOCHCHCH、若しくは−O−CHCHであるか、又は、
(4a)X〜X、X及びXがいずれも水素原子であり、かつ、X及びXがそれぞれ独立して、−O−CHCH、−C(=O)−O−CHCHCHCH、若しくは−C(=O)−OCHであることがより好ましい。
【0059】
本発明の、液晶化合物(IV)と液晶化合物(V)の混合物であって、液晶化合物(V)を3.5〜12重量%含有する液晶化合物の混合物は、配向性に優れ、輝度向上率が高く、光学特性に優れた液晶化合物である。
配向性は、後述の方法により評価し、通常、4以上であるのが好ましい。
輝度向上率は、後述の方法により評価し、通常、124%以上であるのが好ましい。
【0060】
本発明の液晶化合物の混合物を製造する方法としては、特に制約はないが、前記、本発明の混合物を用いる方法が好ましい。前記本発明の混合物を用いると、簡便に本発明の液晶化合物の混合物を得ることができる。
【0061】
具体的には、本発明の混合物の溶媒溶液に、所定量の、スルホニルハライド及び塩基を添加して撹拌した後、式(VII)
【0062】
【化10】

【0063】
(X〜Xは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物(以下、「化合物(VII)」という。)を加え、全容を所定温度で撹拌する。
【0064】
ここで用いるスルホニルハライドとしては、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、フェニルスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライドなどが挙げられる。
スルホニルハライドの使用量は、化合物(VII)に対して、通常2〜3倍モルである。
【0065】
用いる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基などが挙げられる。
塩基の使用量は、化合物(VII)に対して、通常2〜3倍モルである。
【0066】
また、この場合、反応を促進する目的で、反応液に4−ジメチルアミノピリジンを添加することも好ましい。
4−ジメチルアミノピリジンの添加量は、化合物(VII)に対して、通常0.1〜1倍モルである。
【0067】
反応温度は、通常、0℃から溶媒の還流温度、好ましくは10℃〜50℃である。
反応時間は、反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは数十分から数時間である。
【0068】
反応終了後は、反応混合物に貧溶媒を加え、析出する結晶をろ別し、必要により、得られる粗結晶を洗浄あるいは再結晶することにより、目的とする本発明の液晶化合物の混合物を得ることができる。
【0069】
得られる液晶化合物の混合物が、液晶化合物(V)を3.5〜12重量%含有することは、例えば、該混合物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し、液晶化合物(IV)と液晶化合物(V)の測定データ(チャート)の面積パーセントを算出することにより確認することができる。
【0070】
本発明の液晶化合物の混合物は配向性に優れ、輝度向上率が高く、光学特性に優れるものである。
【実施例】
【0071】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例において行った試験方法は以下のとおりである。
なお、用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)は以下に示すものを用いた。
HPLC:
使用装置 :Agilent製 HP−1100
使用カラム :Agilent製 ECLIPSE−C18 4.6mm×250mm
カラム温度 :40℃
流量 :1ml/min
インジェクション量(サンプル濃度):1μL(1wt%)
検出器 :UV254nm
【0072】
グラジェント条件は下記の通りである。
【0073】
【表1】

【0074】
A:アセトニトリル/THF/H0(0.1wt%リン酸添加)= 50/10/40
B:アセトニトリル/THF/H0(0.1wt%リン酸添加)= 85/10/5
【0075】
配向性の評価、輝度向上率の測定は、以下のように行った。
(輝度向上率の測定)
工程1:反射型偏光子の作製
厚さ100μm、幅50mm、長さ200mmの脂環式オレフィンポリマーフィルム(ゼオノアフィルム、オプテス社製)の片面を、表面の濡れ指数が56dyne/cmになるように、コロナ放電処理を施した。これを基材フィルムとして用いた。
【0076】
以下の組成からなる配向膜用組成物を、前記基材フィルムのコロナ放電処理を施した面に、ワイヤーバー#4を用いて塗布した。塗布後120℃にて5分間乾燥し、膜厚0.2μmの乾膜を作製した。
【0077】
〔配向膜用組成物〕
変性ポリアミド:
・FR105(鉛市社製、ファインレジン、部分メトキシメチル化ポリアミド) 90重量部
・A90(東レ社製、AQ−ナイロン、部分アルキルアミノ化ポリアミド) 10重量部
溶剤:
・1−プロパノール(溶解度パラメータ11.8) 3233重量部
架橋剤:
・エラストロン BN04 1.0重量部
【0078】
該乾膜を一方向にラビング処理することで、配向膜を得た。作成した配向膜上に下記組成の重合性液晶化合物を含む組成物をワイヤーバー#6を用いて塗布し、100℃にて5分間乾燥及び配向熟成した。
【0079】
〔コレステリック規則性を有する樹脂層を構成する重合性液晶化合物を含む組成物〕
液晶化合物100重量部に対し、シクロペンタノン153重量部に溶解して溶液とした。これに、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:イルガキュア1919)を3.3重量部、キラル剤6.0重量部、界面活性剤(1重量%のシクロペンタノン溶液として使用)11.6重量部を添加して溶解した溶液を調製した。
液晶化合物として、構造式(IV−1)と構造式(V−1)の混合物を、キラル剤としてLC756(BASF社製)を、界面活性剤としてKH−40(セイミケミカル社製)を、それぞれ使用した。この調製した溶液を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製シリンジフィルターにて濾過したものを重合性液晶化合物を含む組成物として使用した。
【0080】
【化11】

【0081】
乾燥及び配向熟成後、塗膜に対して、照度4mW/cm2の紫外線を基材フィルム側から1秒間照射し、100℃で60秒間加温・乾燥処理を行った。再び、照度4mW/cm2の紫外線を基材フィルム側から1秒間照射し、100℃で60秒間加温・乾燥処理を行った。
前記2回の紫外線照射は、HOYA SCHOTT社製、装置名EXECURE 3000−Wを用い、365nmのバンドパスフィルターを介して行った。365nmバンドパスフィルターの光線透過領域は346〜403nmであり、帯域幅(波長範囲の幅)は57nmである。照度はオーク製作所社製の紫外線光量計付照度計(UV−M03、センサは360nmにピーク感度を持つUV−SN35)を使用して測定した。
次いで、前記塗工膜に塗布面側から25℃の窒素雰囲気下で紫外線を100mW/cmで5秒間照射することにより硬化させ、コレステリック規則性を有する樹脂層として反射型偏光子を得た。
【0082】
工程2:光学異方性層の作製
メタクリル酸メチル97.8重量%とアクリル酸メチル2.2重量%とからなるモノマー組成物を、バルク重合法により重合させ、樹脂ペレットを得た。
【0083】
特公昭55−27576号公報の実施例3に準じて、ゴム粒子を製造した。このゴム粒子は、球形3層構造を有し、芯内層が、メタクリル酸メチル及び少量のメタクリル酸アリルの架橋重合体であり、内層が、主成分としてのアクリル酸ブチルとスチレン及び少量のアクリル酸アリルとを架橋共重合させた軟質の弾性共重合体であり、外層が、メタクリル酸メチル及び少量のアクリル酸エチルの硬質重合体である。また、内層の平均粒子径は0.19μmであり、外層をも含めた粒径は0.22μmであった。
上記樹脂ペレット70重量部と、上記ゴム粒子30重量部とを混合し、二軸押出機で溶融混練して、メタクリル酸エステル重合体組成物A(ガラス転移温度105℃)を得た。
【0084】
上記メタクリル酸エステル重合体組成物A(b層)、及びスチレン無水マレイン酸共重合体(ガラス転移温度130℃)(a層)を温度280℃で共押出成形することにより、b層/a層/b層の三層構造で、各層が45/70/45(μm)の平均厚みを有する複層フィルムを得た。この積層フィルムを、テンター延伸機で、遅相軸がMD方向に対して45度傾いた方向になるように、延伸温度134℃、延伸倍率1.8倍で斜め延伸し、光学異方性層を得た。さらにこの光学異方性層の片面を、濡れ指数が56dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施し、光学異方性層を得た。
得られた光学異方性層の波長550nmにおけるレターデーション値は、厚み方向のレターデーションRthは−118nm、面内方向のレターデーションReは140nmであった。
【0085】
工程3:輝度向上フィルムの作製
工程1で得られた反射型偏光子のコレステリック規則性を有する樹脂層側に、工程2で得られた光学異方性層を接着剤を介して貼り合わせ、積層シートを得た。すなわち、まずエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(不揮発分40重量%、酢酸ビニル含有率40重量%)40重量部、石油樹脂エマルジョン(不揮発分40重量%、樹脂軟化点85℃)35重量部、及びパラフィンワックスエマルジョン(不揮発分40重量%、樹脂軟化点64℃)10重量部からなる、23℃における剪断貯蔵弾性率が10MPaである接着剤組成物を調製した。この接着剤組成物を、前記反射型偏光子のコレステリック規則性を有する樹脂層上に積層し、前記光学異方性層のコロナ処理面とをラミネーターを用いて、80℃、2kgf/50mmのニップ圧にて貼り合わせを行った。
【0086】
工程4:輝度向上率の測定
市販の液晶表示装置(Sharp製、AQUOS、LC−37BE1W)を分解し、輝度向上フィルムとして工程3で作製した輝度向上フィルムを用いて再び組み立て直した。液晶表示装置は、光源、拡散板、拡散シート、プリズムシート、輝度向上フィルム、液晶パネルの順で構成されている。フィルムの把持には、装置の部品をそのまま利用した。組み立て直した液晶表示装置を立てた状態で白表示させ、そのときの正面方向の輝度を、視野角測定評価装置(メーカー:Autronic−MELCHERS社製、商品名:ErgoScope)で測定した。輝度向上フィルムがない場合の正面方向の輝度も同様に測定し、輝度向上フィルムがある場合とない場合の輝度の差を算出した。
【0087】
(配向性の評価)
工程1で作成したコレステリック規則性を有する樹脂層を偏光顕微鏡で観察し、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥の量を目視で確認して判定した。評価は5段階で判定し、配向欠陥が全く見られない場合を5と判定し、全面に渡って配向欠陥が存在する場合を1と判定した。よって、値が大きいほど良い結果であることを示している。
判定のイメージを図1に示す。図1中、(A)が配向性「5」の場合、(B)が配向性「3」の場合、(C)が配向性「1」の場合をそれぞれ示している。また、図1中、オイリーストリークと呼ばれる配向欠陥は黒い線として観察される。
【0088】
(実施例1)
式(I−1)で表される化合物(以下、「化合物(I−1)」という。)と式(II−1)で表される化合物(以下、「化合物(II−1)」という。)の混合物の合成
【0089】
【化12】

【0090】
(工程1)
20%水酸化カリウム水溶液62.2gに、4−ヒドロキシ安息香酸10gと、クロロヘキサノール19.8gを加え、強攪拌下、加熱還流した。3時間後、反応混合物に20%水酸化カリウム水溶液を10.3g追加し、更に4時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した後、水60g、及び2−プロパノール30gを加え、1.2Nの塩酸60gを30分かけて滴下することで、白色固体が沈殿した。これをろ別し、水で洗浄することで、HPLC純度95%以上の4−(6−ヒドロキシ−ヘキサ−1−イルオキシ)安息香酸14.7g(収率85%)を得た。
【0091】
(工程2)
トルエン50gに、工程1で得られた4−(6−ヒドロキシ−ヘキサ−1−イルオキシ)安息香酸10g(42mmol)と、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル0.2gを加えた。更にアクリル酸12.1g(168mmol;4.0当量)、及びメタンスルホン酸0.4gを加え、攪拌下、ディーンスタークを使用して、生成する水をトルエンとの共沸脱水にて系外に除去しながら、蒸気温度がトルエンの沸点となるまで還流を行った。反応混合物を室温まで放冷した後、25%炭酸カリウム水溶液により、水層のpHが4〜5となるまで中和を行い、分液して水層を除去した。
【0092】
得られた有機層に水20gを加え、結晶が析出しないように40℃に加温しながら洗浄を行った。分液後の有機層に、n−ヘプタン86gを滴下したところ、白色粉末が沈殿した。これをろ別、乾燥することで、化合物(I−1)〔4−(6−アクリロイル−ヘキス−1−イルオキシ)安息香酸〕と化合物(II−1)の混合物である白色固体9.8gを得た(収率80%)。得られた白色固体を、HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は、4.6重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0093】
(実施例2)
式(IV−1)で表される液晶化合物(以下、「液晶化合物(IV−1)」という。)と式(V−1)で表される液晶化合物(以下、「液晶化合物(V−1)」という。)の混合物の合成
【0094】
【化13】

【0095】
テトラヒドロフラン50gに、実施例1で最終的に得られた白色固体12.3gを溶かし、そこに、メタンスルホニルクロライド4.8g、さらにトリエチルアミン4.4gを添加した。30分後、4−ジメチルアミノピリジン0.5gを添加した後、N−(4−ヒドロキシベンジリデン−N’−(4−ヒドロキシ−2−カルボメトキシベンジリデン)ヒドラジン 5.0gを添加し、更にトリエチルアミン3.7gを添加し、全容を撹拌した。2時間後、メタノール125gを加え、析出した結晶をろ別した。
【0096】
得られた粗結晶を酢酸エチル62.5gに溶解し、メタノール112.5gを加えて再沈殿させ、沈殿物をろ別、乾燥して、液晶化合物(IV−1)及び液晶化合物(V−1)の混合物10.0gを得た。得られた液晶化合物の混合物を、HPLCを用いて分析したところ、液晶化合物(V−1)の含有量は4.5重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は5、輝度向上率は125.0%であった。
【0097】
(実施例3)
アクリル酸を15.1g(210mmol、5.0当量)用いた他は、実施例1と同様にして、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物を得た。HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は3.8重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0098】
得られた混合物を用いて、実施例2と同様にして、液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の混合物を得た。得られた液晶化合物の混合物をHPLCを用いて分析したところ、化合物(V−1)の含有量は3.8重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は4、輝度向上率は125.0%であった。
【0099】
(実施例4)
アクリル酸を10.6g(147mmol、3.5当量)用いた他は、実施例1と同様にして、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物を得た。HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は6.0重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0100】
得られた混合物を用いて、実施例2と同様にして、液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の液混合物を得た。得られた液晶化合物の混合物を、HPLCを用いて分析したところ、化合物(V−1)の含有量は6.0重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は5、輝度向上率は124.0%であった。
【0101】
(比較例1)
実施例1の工程2において、トルエンを用いず、アクリル酸を60.4g(840mmol、20当量)用いた他は、実施例1と同様にして、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物を得た。HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は1.0重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0102】
得られた混合物を用いて、実施例2と同様にして、液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の混合物を得た。得られた液晶化合物の混合物をHPLCを用いて分析したところ、化合物(V−1)の含有量は0.8重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は3、輝度向上率は124.0%であった。
【0103】
(比較例2)
アクリル酸を18.1g(251mmol、6.0当量)用いた他は、実施例1と同様にして、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物を得た。HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は3.3重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0104】
得られた混合物を用いて、実施例2と同様にして、液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の混合物を得た。得られた液晶化合物の混合物をHPLCを用いて分析したところ、化合物(V−1)の含有量は2.8重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は3、輝度向上率は124.5%であった。
【0105】
(比較例3)
アクリル酸を3.6g(50mmol、1.2当量)用いた他は、実施例1と同様にして、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物を得た。HPLCを用いて分析したところ、化合物(II−1)の含有量は16.0重量%(HPLC面積パーセント)であった。
【0106】
得られた混合物を用いて、実施例2と同様にして、液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の混合物を得た。得られた液晶化合物の混合物をHPLCを用いて分析したところ、化合物(V−1)の含有量は15.8重量%(HPLC面積パーセント)であった。
得られた液晶化合物の混合物の特性を調べたところ、配向性は5、輝度向上率は118%であった。
【0107】
下記第1表に、実施例2〜4及び比較例1〜3において、用いた混合物中の化合物(II−1)の含有量、用いたアクリル酸の、4−(6−ヒドロキシヘキサ−1−イルオキシ)安息香酸に対する当量数、得られた液晶化合物の混合物中の化合物(V−1)の含有量、並びに、得られた液晶化合物の混合物の配向性及び輝度向上率をまとめて示す。
【0108】
【表2】

【0109】
以上のことから、アクリル酸の使用量を制御することで、化合物(I−1)と化合物(II−1)の混合物であって、化合物(II−1)を3.5〜12重量%含む混合物を得ることができた。また、得られた混合物を使用することで、液晶化合物(V−1)を3.5〜12重量%含む液晶化合物(IV−1)と液晶化合物(V−1)の混合物を、一段階で容易に製造することができることがわかった。
【0110】
実施例2〜4の液晶化合物の混合物は、輝度向上率124.0%以上、配向性評価4以上の優れた光学特性を示した。
一方、液晶化合物(IV−1)の含有量が3.5〜12重量%ではない、比較例1、2の液晶化合物の混合物は、実施例2〜4の液晶化合物の混合物に比して、配向性に劣り、比較例3の液晶化合物の混合物は輝度向上率が低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Aは水素原子又はメチル基を表し、nは1〜12の整数を表す。)で表される化合物と、式(II)
【化2】

(式中、A及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物との混合物であって、前記式(II)で表される化合物を3.5〜12重量%含有する混合物。
【請求項2】
酸触媒の存在下、アクリル酸又はメタクリル酸と、式(III)
【化3】

(式中、nは1〜12の整数を表す。)で表される化合物とを反応させて、式(I)
【化4】

(式中、nは前記と同じ意味を表し、Aは水素原子又はメチル基を表す。)で表される化合物と、式(II)
【化5】

(式中、A及びnは前記と同じ意味を表す。)で表される化合物との混合物を製造する方法であって、アクリル酸又はメタクリル酸の使用量を制御することにより、前記式(II)で表される化合物の生成量を3.5〜12重量%に制御することを特徴とする請求項1に記載の混合物の製造方法。
【請求項3】
アクリル酸又はメタクリル酸を、前記式(III)で表される化合物に対して、2〜10当量使用することを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
酸触媒としてスルホン酸類を用いることを特徴とする、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
スルホン酸類として、メタンスルホン酸又はパラトルエンスルホン酸を用いることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
酸触媒を、前記式(III)で表される化合物に対して、0.01〜0.3当量使用すること特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
式(IV)
【化6】

〔式中、Aは水素原子あるいはメチル基を表し、nは1〜12の整数、X〜Xはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−OR、−O−C(=O)−R、−C(=O)−OR、−O−C(=O)−OR、−NR−C(=O)−R、−C(=O)−NR、又はO−C(=O)−NRを表す。Rは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rがアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又はC(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−及び−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。R、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕で表される液晶化合物と、式(V)
【化7】

(式中、A、n、X〜Xは、前記と同じ意味を表す。)で表される液晶化合物の混合物であって、前記式(V)で表される液晶化合物を3.5〜12重量%含有する液晶化合物の混合物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−202517(P2010−202517A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46187(P2009−46187)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】