説明

液晶組成物、位相差層の形成方法、カラーフィルタおよび液晶表示装置

【課題】長期にわたり基材との密着性に優れた位相差層を形成することのできる液晶組成物を提供する。
【解決手段】架橋性液晶分子と、分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤と、を含有することを特徴とする液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性液晶分子を含有する液晶組成物、これを用いた位相差層の形成方法と当該位相差層を有するカラーフィルタ、および該カラーフィルタを表示側基板とする液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、薄型軽量、低消費電力という大きな利点を持つため、パーソナルコンピューターや携帯電話、PDA(携帯情報端末)等の表示装置に広く用いられている。これらの液晶表示装置は、対向する一対の基材で駆動用液晶分子を挟み込んだ液晶セルと、これを挟む一対の偏光板とを備え、該分子の複屈折性を利用して光のスイッチングを行っている。
ここで、液晶表示装置には駆動液晶分子の複屈折性に由来する視野角依存性が存在するため、これを解決すべく各種の位相差層形成フィルムがこれまで開発されている。この位相差層形成フィルムは通常、ポリアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース等のフィルムの延伸によって作製されて液晶セルの外側に設置される。これに対し最近では、架橋性液晶材料や高分子液晶材料を用いて液晶セルの内側に位相差層を設置する、いわゆるインセルタイプの位相差層を形成する方法が提案されており(下記特許文献1参照)、この場合は液晶セルの内側に位相差層を設置することでフィルムの貼り付けが不要となるために高い機械的強度と耐熱性が得られ、さらには吸湿変形を抑制することができる。
【0003】
ここで、液晶セルを挟む一対の偏光板は、互いの吸光軸が直交した所謂クロスニコル状態に配置されるところ、基材に対して架橋性液晶分子を垂直に配向(ホメオトロピック配向)させてなる位相差層(いわゆる正のCプレート)を液晶セルの内側または外側に設けることにより、偏光板の視野角補償が可能になる。かかる正のCプレートをインセルタイプで形成する方法に関しては、配向膜を用いずにホメオトロピック配向させることのできる架橋性液晶分子の検討が行われている(下記特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−221506号公報
【特許文献2】特表2004−524385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配向膜を用いずに液晶セル内に位相差層を形成する場合、例えばホメオトロピック配向など、架橋性液晶分子を所定方向に安定して配向させることが難しいため、液晶表示装置の視野角補償部材としてかかる位相差層を用いたときに高品質な表示が得られないという問題が生じるおそれがある。また、架橋性液晶分子を架橋させて形成した位相差層は基材との密着性が低く、これをインセルタイプで形成した場合も基材に対する長期間の密着信頼性が乏しいという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、長期にわたり基材との密着性に優れた位相差層を形成することのできる液晶組成物、当該組成物を用いた位相差層の形成方法、当該位相差層と着色層とを備えるカラーフィルタ、および当該カラーフィルタを備えた液晶表示装置、を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、まず架橋性液晶分子を含む液晶組成物に特定のシランカップリング剤を添加することにより、該液晶分子を配向状態で互いに重合固定して得られる位相差層と基材との密着性を向上することができるとの知見に至った。さらに本発明者は、該液晶分子と上記特定のシランカップリング剤とを含む塗膜に対して、液晶分子の配向後に酸を供給することで当該シランカップリング剤と基材との反応性を向上させ、位相差層と基材との密着性をより向上することが可能になるとの知見を併せ、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち本発明の液晶組成物は、
(1)架橋性液晶分子と、分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、を含有することを特徴とする液晶組成物、を要旨とする。
【0009】
また本発明においては、より具体的な液晶組成物の態様として、
(2)架橋性液晶分子が、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する上記(1)に記載の液晶組成物;
(3)光酸発生剤を、対配合物換算値で0.1〜10質量%含有する上記(1)または(2)に記載の液晶組成物;
(4)活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤をさらに含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶組成物;
(5)99.79〜70質量%(対配合物換算値)の(メタ)アクリロイル基含有架橋性液晶分子と、0.01〜10質量%(対配合物換算値)のアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光酸発生剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光重合開始剤と、を含有する上記(4)に記載の液晶組成物;
(6)上記(1)〜(5)に記載の液晶組成物であって、該液晶組成物をグリコールモノエーテルアセテート系溶媒に溶解してなる液晶組成物溶液を無アルカリガラスの表面に塗付して塗膜を形成し、
前記塗膜を減圧乾燥させたのち、前記架橋性液晶分子の液晶相転移温度以上かつ等方相転移温度以下の温度にして前記架橋性液晶分子を配向させ、
前記配向した架橋性液晶分子に活性放射線を照射して前記架橋性液晶分子同士を互いに重合させたのち、さらにこれを230℃で30分間焼成してなる皮膜を、
温度100℃、湿度100%で12時間の加速寿命試験を行ったときに、前記皮膜の剥離強度が、JISK5600−5−6の評価基準で0または1を示すことを特徴とする液晶組成物;
としても上記本発明の目的を達成することができる。
【0010】
また本発明による位相差層の形成方法は、
(7)架橋性液晶分子と、分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤とを含む液晶組成物を、光透過性の基材上に直接にまたは下地層を介して間接に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を、前記架橋性液晶分子の液晶相転移温度以上かつ等方相転移温度以下の温度にすることで前記架橋性液晶分子を配向させて液晶相塗膜となす工程と、
前記液晶相塗膜に活性放射線を照射して、前記配向した架橋性液晶分子同士を光重合させて位相差層となすとともに、前記光酸発生剤の生じた酸と前記シランカップリング剤との反応により前記位相差層と前記基材または下地層とを密着させる工程と、
を含む位相差層の形成方法、を要旨とする。
【0011】
また本発明のカラーフィルタは、
(8)光透過性の基板上に着色層と位相差層とが積層されたカラーフィルタであって、前記位相差層が、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶組成物を前記基板上に直接または間接に塗布し、前記架橋性液晶分子を配向させ、活性放射線を照射して前記配向した架橋性液晶分子同士を互いに重合させてなることを特徴とするカラーフィルタ、を要旨とする。
【0012】
また本発明においては、より具体的なカラーフィルタの態様として、
(9)位相差層に含まれる架橋性液晶分子がホメオトロピック配向している上記(8)に記載のカラーフィルタ、としても上記本発明の目的を達成することができる。
【0013】
また本発明の液晶表示装置は、
(10)対向する表示側基板と液晶駆動側基板との間に駆動液晶分子を挟持してなる液晶表示装置であって、前記表示側基板が上記(8)または(9)に記載のカラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置、を要旨とする。
【0014】
尚、本発明に関するいくつかの用語について以下のとおり定義する。
「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタアクリロイル基」の2つの官能基の総称として用いるものとする。尚、アクリロイル基の例としてはアクリレート基(アクリロイロキシ基)が、メタアクリロイル基としてはメタクリレート基がある。同様に「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」を意味する。
「活性放射線」とは、紫外線や電離放射線など、高いエネルギーをもった電磁波や粒子線を意味する。
「液晶組成物」とは、架橋性液晶分子と、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基より選ばれた少なくとも1種を有するシランカップリング剤と、光酸発生剤とを少なくとも含み、さらに位相差層を形成するために用いられる他の物質が配合された混合物である組成物、および上記混合物を溶媒に溶解もしくは懸濁させて調製した溶液状態である組成物の両方を意味する。また特に上述した「溶液状態である組成物」である本発明の液晶組成物のことを、便宜上「液晶組成物溶液」とも呼ぶ。
「対配合物換算値」とは、本発明の液晶組成物が上記混合物である場合には、該混合物を構成する物質として配合される各配合物の総質量を100としたときの各配合物の質量比を意味し、本発明の液晶組成物が上記配合物を溶媒で溶解あるいは混合した溶液である場合には、溶液の質量から溶媒の質量を引いた質量(即ち、溶媒に溶解または懸濁する前の各配合物の総質量)を100としたときの各配合物の質量比を意味する。
【0015】
「位相差層」とは、光の位相差(リタデーション)変化に対して光学補償することができる位相差制御機能を有する層を意味する。
【0016】
「ホメオトロピック配向」とは、位相差層を構成する液晶分子の光軸が基材に対して垂直または略垂直に立ち上がっている配向状態をいう。また「位相差層がホメオトロピック配向している」とは、位相差層を構成する液晶分子がホメオトロピック配向していることをいう。尚、本発明において、液晶分子の理想的なホメオトロピック配向とは、位相差層の法線方向をz軸とするxyz直交座標を想定したとき、x軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとがほぼ同じ値となり、かつz軸方向に測定した(測定角度が0°の時の)位相差値が4nm以下の場合をいい、好ましくは3.5nm以下の場合をいい、より好ましくは3nm以下の場合をいう。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液晶組成物をガラス基板等の基材や、着色層などの下地層の上に塗布し、架橋性液晶分子をホメオトロピック配向など所定の方向に配向させた上で、これを硬化させて位相差層を形成することにより、これと基材または下地層との密着性に優れることとなる。このため本発明の液晶組成物により位相差層を形成したカラーフィルタや、このカラーフィルタを表示側基板として用いた液晶表示装置は、いわゆるインセルタイプの位相差層を備えることとなるため、長期間に亘って優れた視野角改善効果と密着性を発揮することができる。特に、透過光をRGBなどの多色に分光する着色層を下地層として、これを被覆するように位相差層を設けることにより、着色層を機械的に保護する保護層としての機能を位相差層に併せ持たせることができる。
【0018】
また本発明の液晶組成物は、架橋性液晶分子に対して、アミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基の少なくともいずれかを含有するシランカップリング剤を添加することによりその垂直配向性が向上し、垂直配向膜を用いることなく、かつ基材や下地層の表面の性状によらず該分子をホメオトロピック(垂直)配向させることができるため、配向膜の塗工工程や塗工厚さを削減することができる。さらに本発明の液晶組成物によれば、基材や下地層の表面の一部または全面に洗浄処理や表面改質処理を施してから液晶組成物を塗布した場合であっても、架橋性液晶分子を安定にホメオトロピック配向させることができる。
【0019】
また本発明の液晶組成物は、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤を含有することにより、上記特定のシランカップリング剤と基材との反応性が向上し、基材や下地層と位相差層との密着性をさらに高めることができる。このとき、単に液晶組成物に酸を添加するのではなく、光酸発生剤を添加することにより、架橋性液晶分子をホメオトロピック配向など所定方向に配向させる段階では液晶組成物がゲル化することがないためにその分子運動が阻害されず、配向後に活性放射線を露光して液晶組成物中に初めて酸を発生させることで、シランカップリング剤と基材との反応が促進されて位相差層の密着性向上の効果のみを享受することができる。
【0020】
上記垂直配向の安定性と密着性に優れた本発明の位相差層は偏光板の視野角を補償するものである。即ち、クロスニコル状態に設置した偏光板に、本発明の位相差層を備えるカラーフィルタを備える液晶セルを挟みこむことで、光漏れや色シフトがなく高品質な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[液晶組成物について]
本発明の液晶組成物は、(i)架橋性液晶分子と、(ii)分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基の少なくともいずれかを有するシランカップリング剤と、(iii)活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、を必須成分として含有するものである。また本発明の液晶組成物は、このほか(iv)活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤のほか、(v)重合禁止剤、増感剤または垂直配向助剤などのその他添加剤を任意で含有してもよい。また本発明の液晶組成物は、(vi)溶媒に溶解または懸濁させてなる液晶組成物溶液の状態で、(vii)基材に直接または下地層を介して間接に塗布して用いることができる。
本発明の液晶組成物の上記(i)〜(v)の各成分、および本発明に用いることのできる(vi)溶媒や(vii)基材について、以下具体的に説明する。
【0022】
<(i)架橋性液晶分子について>
本発明に用いる架橋性液晶分子としては、架橋性のネマチック液晶を用いることができ、架橋性ネマチック液晶としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。
このような架橋性液晶分子としては、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(I))、下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(II))もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物(化合物(III))のうちの1種の化合物もしくは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。
特に、本発明における架橋性液晶分子を構成する架橋性ネマチック液晶分子の少なくとも1種が1分子中に1個または2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
【0023】
本発明によれば、架橋性液晶分子を含有する液晶組成物に、特定のシランカップリング剤を添加することにより、これを用いて基材表面に位相差層を形成したときに、該位相差層を構成する架橋性液晶分子を良好に垂直配向せしめることができる。かかる原理は明らかではないが、本発明の液晶組成物であれば、これを基材面上や後述する着色層などの下地層上に直接塗布して塗膜を形成した際に、該塗膜における基材界面または空気界面に存在する架橋性液晶分子だけではなく、その中間に存在する架橋性液晶分子をも良好に垂直配向させることができるため、基材表面の性状の変化または凹凸の存在により基材や下地層の界面に存在する架橋性液晶分子の配向が不安定となる場合であっても、上記中間に存在する架橋性液晶分子の良好な垂直配向に支配されて、基材界面および空気界面の架橋性液晶分子が良好に垂直配向するものと考えられる。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
化1に示す一般式(1)において、RおよびR2は、それぞれに、水素またはメチル基を示すが、架橋性液晶分子が液晶相を示す温度の範囲をより広くするには少なくともRおよびR2のどちらか一方が水素であることが好ましく、両方が水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるXおよび一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびbならびに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に1〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物(I)またはd=e=0である一般式(2)の化合物(II)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物(I)または(II)自体の結晶性が高い。また、aやb、またはdやeがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物(I)または一般式(2)の化合物(II)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶分子が液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、位相差層4に用いるには好ましくない。
【0029】
架橋性液晶分子として、上記化1、化2、化3、化4では重合性を備える液晶モノマーを例示したが、重合性液晶のオリゴマーや重合性液晶のポリマー等を用いてもよく、これらについても、上記化1、化2、化3、化4などのオリゴマーやポリマーなど公知のものを適宜選択して用いることができる。
【0030】
一般に、位相差層のリタデーション量および配向特性は、架橋性液晶分子の複屈折Δnと、位相差層の膜厚により決定されるため、架橋性液晶分子のΔnは0.03〜0.20程度が好ましく、0.05〜0.15程度が更に好ましい。
【0031】
架橋性液晶分子は、本発明の液晶組成物において、70質量%(対配合物換算値)以上、好ましくは75質量%(対配合物換算値)以上となるように含有されることが好ましい。添加量を70質量%(対配合物換算値)以上とすることにより液晶性が向上し、位相差層における架橋性液晶分子の配向不良の発生を無視し得る程度に低減することができる。架橋性液晶分子の添加が70質量%(対配合物換算値)以上では、液晶分子の配向性の観点から特に問題になることはないので、液晶組成物における他の添加剤の配合量とのバランスで、添加量を適宜決定することができる。
【0032】
液晶組成物中の架橋性液晶分子は、液晶相転移温度以上かつ等方相転移温度以下の温度とすることで所定方向に配向して液晶相を示す。かかる配向状態で分子同士を重合することにより液晶相状態が固定化されて位相差層となり、以後の加熱プロセスにおいて等方相転移することがない。したがって液晶組成物を基材上に直接または間接に塗布して塗膜を形成し、液晶分子を所定方向に配向させた後に、当該配向した分子の液晶相状態を維持しつつ分子同士を互いに重合させるため、塗膜に対して活性放射線を照射するとよい。
またかかる重合を好適に発生させるため、液晶組成物には後述の光重合開始剤を添加するとよい。
さらに本発明の液晶組成物に用いる架橋性液晶分子としても、活性放射線の露光によって自ら互いに三次元架橋重合する光重合性の架橋性液晶分子であることが好ましい。
【0033】
<(ii)シランカップリング剤について>
本発明の液晶組成物に配合されるシランカップリング剤は、アミノ基、スルフィド基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基のいずれかを含有するものが用いられる。
このようなシランカップリング剤としては、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製KBM−602、東芝シリコーン社製TSL8345)、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−603、東芝シリコーン社製TSL8340)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE−603、東芝シリコーン社製TSL8331)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−903)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE−903)、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−573)等のアミノ系シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製KBM−802)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−803、東芝シリコーン社製TSL8380)等のメルカプト系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学社製KBE−846)等のスルフィド系シランカップリング剤、および3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製KBM−502、東芝シリコーン社製TSL8375)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−503、東芝シリコーン社製TSL8370)、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学社製KBE−502)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE−503)、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM−5103)等のメタ(アクリロキシ)系シランカップリング剤を挙げることができる。
シランカップリング剤は異なる2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記シランカップリング剤は、本発明の液晶組成物における含有量が、0.01〜10質量%(対配合物換算値)、好ましくは0.01〜5質量%(対配合物換算値)、より好ましくは0.01〜2質量%(対配合物換算値)、特に好ましくは0.1〜2質量%(対配合物換算値)となるように添加する。尚、本明細書の以下の記載において、特に断りなく「質量%」と記載するときは、本発明の組成物における対配合物換算値を意味するものとする。上記シランカップリング剤を0.01質量以上添加することによって、位相差層に十分な配向安定性を付与することが可能であり、また添加量を10質量%以下とすることで、シランカップリング剤の添加により位相差層中の液晶分子の配向不良、あるいは位相差層の電気信頼性の低下を無視できる程度に抑えることができる。
本発明の液晶組成物に用いられる架橋性液晶分子とシランカップリング剤との配合比は、好ましくは、100:5.5、より好ましくは、100:3.3、特に好ましくは、100:2.2である。
【0035】
<(iii)光酸発生剤について>
【0036】
本発明の液晶組成物には、活性放射線の露光により酸(プロトン)を生じる光酸発生剤を必須成分として添加する。これにより、液晶組成物を基材上に塗布し、架橋性液晶分子を所定方向に配向させた後の塗膜に対して、任意のタイミングで活性放射線を照射することで塗膜中に酸を発生させ、上記特定のシランカップリング剤と当該酸との反応によりシランカップリング剤と基材との反応を促進させることができる。
上述のように、本発明においては配向した架橋性液晶分子同士を光重合させる目的で塗膜に対して活性放射線を照射するとよい。したがってかかる照射工程において、光酸発生剤から酸が生じて、これをシランカップリング剤に対する触媒として機能させることができる。換言すると本発明によれば、架橋性液晶分子同士の光重合と、シランカップリング剤と基材との反応を、一度の活性放射線の照射工程によって同時に生じさせることができるため、基材や下地層との密着性に優れる本発明の位相差層を少ない工程数によって得ることができる。
【0037】
したがって光酸発生剤としては、後記の光重合開始剤の吸収波長に応じて照射される単波長光または混合波長光である活性放射線に含まれる波長の光を吸収して酸を発生させるものであることが好ましい。
【0038】
本発明の液晶組成物に配合される光酸発生剤としては、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(tert−ブトキシカルボニルメトキシナフチル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(tert−ブトキシカルボニルメトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−クロロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウムニトレート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、ジフェニルヨードニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、(4−ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン(シグマアルドリッチ社製)、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、1−ナフチルジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロアンチモニウム塩混合物(シグマアルドリッチ社製)、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート塩混合物(シグマアルドリッチ社製)、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、トリフェニルスルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート(シグマアルドリッチ社製)、ビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタン(和光純薬社製)、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン(和光純薬社製)、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン(和光純薬社製)、ジフェニル−2,4,6−トリメチルフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート(和光純薬社製)等の市販材料を用いることができる。
また本発明においては、異なる2種類以上の光酸発生剤を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
上記光酸発生剤は、本発明の液晶組成物における含有量が、0.1〜10質量%(対配合物換算値)、好ましくは0.5〜7質量%(対配合物換算値)となるように添加する。上記光酸発生剤を0.1質量%以上添加することによって、位相差層に十分な密着性を付与することが可能であり、また添加量を10質量%以下とすることで、光酸発生剤の添加により位相差層中の液晶分子の配向不良、あるいは位相差層の電気信頼性の低下を無視できる程度に抑えることができる。
本発明の液晶組成物に用いられる架橋性液晶分子と光酸発生剤との配合比は、好ましくは、100:1〜13、より好ましくは、100:1〜6である。
【0040】
なお光酸発生剤は、いわゆるポジ型のフォトレジスト材料に添加されることで知られている。すなわち、これを含有する塗布液を基材全面に塗工硬化してなる皮膜をパターン露光して酸を局所的に発生させることで当該露光部をエッチング除去可能とするために光酸発生剤を大量に用いる技術は従来知られているところ、本発明は、活性放射線の露光により光酸発生剤から生じる酸によってシランカップリング剤と基材との反応を促進させて液晶組成物の硬化膜と基材との密着性を向上させるという技術思想に基づくものであり、またかかる反応によって用い尽くされる程度の量の光酸発生剤を液晶組成物に添加すれば足りる。
【0041】
<(iv)光重合開始剤について>
本発明に用いられる架橋性液晶分子を好適に光重合性させるため、本発明の液晶組成物には任意成分として光重合開始剤を配合するとよい。光重合開始剤は、基材上に本発明の液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に、塗布された液晶組成物に活性放射線を照射し、液晶分子同士を重合させるための開始剤として働くものである。光重合開始剤としては、ラジカル重合性開始剤を使用することができる。ラジカル重合性開始剤は紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、例えばベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントンまたはチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物等が挙げられる。光重合開始剤の具体例としては、イルガキュアー184、イルガキュアー369、イルガキュアー651、イルガキュアー907(いずれもチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー(メルク社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成株式会社製)等のケトン系、ビイミダゾール系化合物等が好ましい。
これらの光重合開始剤は、1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、互いの吸収分光特性を阻害しないように、吸収波長の異なるものを組み合わせることが好ましい。
【0042】
光重合開始剤が配合された本発明の液晶組成物を基材上に直接または間接に塗布して塗膜を形成し、該塗膜中に存在する架橋性液晶分子を配向させた後、該光重合開始剤の感光波長の光を該塗膜に照射することによって、配向した架橋性液晶分子同士を良好に架橋させることができる。
【0043】
光重合開始剤は、液晶の配向を大きく損なわない範囲で添加することが必要であり、液晶組成物中の含有量が0.1〜10質量%(対配合物換算値)、好ましくは0.5〜8質量%(対配合物換算値)、より好ましくは1〜5質量%(対配合物換算値)、となるように添加する。2種以上の光重合剤を併用する場合には、用いられる光重合剤の総量の質量比が上記数値範囲内になるよう調整する。
【0044】
本発明における架橋性液晶分子、シランカップリング剤、光酸発生剤、さらには光重合開始剤の含有量は、上述した好ましい含有量を示す数値範囲の中で、その組み合わせや用いられる他の化合物の種類によって適宜調整することができる。たとえば、(メタ)アクリロイル基含有架橋性液晶分子と、アミノ基含有シランカップリング剤と、光酸発生剤と、光重合開始剤とを含有する液晶組成物であれば、該液晶組成物中に含有される量は、(メタ)アクリロイル基含有架橋性液晶99.79〜70質量%(対配合物換算値)、アミノ基含有シランカップリング剤0.01〜10質量%(対配合物換算値)、光酸発生剤0.1〜10質量%(対配合物換算値)、および光重合開始剤0.1〜10質量%(対配合物換算値)であることが好ましい。
【0045】
<(v)その他添加剤について>
本発明の液晶組成物には光重合開始剤のほか、その目的が損なわれない範囲で架橋性液晶分子同士の重合速度を制御可能に抑制する重合禁止剤を添加してもよく、また活性放射線の吸収を補助するための増感剤を添加することもできる。重合禁止剤の例としては、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、p−t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチル・パラクレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α−ナフトールまたはアセトアニジンアセテートなどを用いることができる。
【0046】
本発明の液晶組成物は、基材上面にホメオトロピック配向した位相差層を形成するために用いることができる。即ち上記液晶組成物を基材上面に直接に、または後述する着色層などの下地層の上面に塗布し、該液晶組成物中に含有される架橋性液晶分子を垂直配向(ホメオトロピック配向)させて硬化し、固定化することにより、液晶分子の光軸が位相差層の法線方向を向くとともに常光線屈折率よりも大きな異常光線屈折率を位相差層の法線方向に有する、いわゆる正のCプレートを形成することができる。特に、基材上面に配向膜を形成せずとも安定してホメオトロピック配向する位相差層を形成可能であることが本発明の液晶組成物の優れた効果である。かかる場合に、上記液晶組成物にさらに垂直配向助剤を添加すると、より有利に上述した本発明の効果を得ることができる。
【0047】
垂直配向助剤の例としては、例えばレシチンや第四級アンモニウム界面活性剤などの垂直に整列したアルキル鎖またはフルオロカーボン鎖を有する表面カップリング剤、HTAB(ヘキサデシル−トリメチルアンモニウムブロミド)、DMOAP(N,N−ジメチル−N−オクタデシル−3−アミノプロピルトリメトキシシリルクロリド)、N−パーフルオロオクチルスルホニル−3−アミノプロピルトリメチルアンモニウムヨージド、長鎖アルキルアルコールまたはシランポリマーなどを挙げることができる。
【0048】
<(vi)溶媒について>
本発明の液晶組成物を基材上に直接または間接に塗布するに際し、塗布性を向上させるため架橋性液晶分子やシランカップリング剤などを溶媒に溶解または分散させた液晶組成物溶液の状態とすることが好ましい。
【0049】
溶媒としては上述した架橋性液晶分子やシランカップリング剤等の固形分を溶解することが可能であり、かつ塗布する相手側素材の性能を阻害しないものを特に限定されることなく用いることができる。
具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等を単独で、または2種以上を混合して使用することが可能である。
単独の溶媒を使用しただけでは固形分の溶解性が不充分であるか、または下地層の素材が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。
上記した溶媒のなかにあって、単独で用いる溶媒として特に好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒等が挙げられる。また同様に2種以上を混合して用いる溶媒として特に好ましいものは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系が挙げられる。本発明の液晶組成物溶液の濃度は、液晶組成物に含有させる固形分の溶解性や、該組成物を用いて形成される位相差層の所望の厚みにより異なるが、通常は1〜60質量%濃度、特には3〜40質量%濃度で調製されることが好ましい。尚、上記濃度は、液晶組成物溶液の質量から溶媒の質量を引いた質量を、液晶組成物溶液の総質量で除して100をかけて求めることができる。
【0050】
<(vii)基材について>
液晶組成物が塗布される基材は光透過性を有し、光学的に等方性のものが好ましいが、必要に応じて局所的に光学的異方性または遮光性の領域を設けることもできる。また光透過率は、位相差層が形成されるカラーフィルタなどの用途に応じて適宜選定可能である。
具体的には、無機材料または有機材料により形成された板、シートまたはフィルムを用いることができる。このうち無機材料としては、ガラス、シリコン、または石英などを例示することができる。中でも液晶ディスプレー用として本発明のカラーフィルタを用いる場合には、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスを基板として用いることが好ましい。また熱膨張性が小さく寸法安定性が良好であり、高温加熱処理における作業性が優れるという観点からは石英が好ましい。一方、有機材料としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリプロピレン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、熱可塑性ポリイミドなどを例示することができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。基材の厚さについても、カラーフィルタなどの用途に応じて、例えば5μm〜3mm程度のものが使用される。
【0051】
[カラーフィルタについて]
本発明の液晶組成物は、上述のように液晶分子が基材上に安定してホメオトロピック配向して固定化した位相差層を形成可能である。したがって該位相差層を有する本発明のカラーフィルタは、透過光の分光機能に加え、その配向安定性により優れた位相差制御機能が発揮される。これにより本発明のカラーフィルタを備える液晶表示装置は、優れた視野角改善効果を発揮する。以下、液晶組成物を用いてなる位相差層の形成方法と、これを備えるカラーフィルタについて図面に基づき例示的に説明する。
【0052】
図1は本発明の一実施態様を示すカラーフィルタ1の縦断面模式図である。透過光は同図の上下方向にカラーフィルタ1を通過する。2は光透過性の基材からなる透明基板、3は透過する可視光を複数色に分光する着色層、4は本発明の液晶組成物よりなる位相差層、5は遮光性のブラックマトリクス(BM)、9は電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させてなるスペーサーである。
【0053】
本実施形態にかかるカラーフィルタ1を作製するには、まず透明基板2上に、着色層3設け、次いで着色層3上に本発明の液晶組成物溶液を塗布し、これに含まれる架橋性液晶分子を配向および重合硬化させて位相差層4を形成し、さらに位相差層4の上面に複数のスペーサー9を任意の間隔で配列させる。尚、カラーフィルタ1には着色層3と位相差層4との間、または位相差層4の上面などの任意の位置に、光透過性かつ光学等方性の材料により図示しない保護層を形成してもよい。またカラーフィルタ1を液晶表示装置の表示側基板として用いる場合は、駆動液晶分子の種類などを勘案し、透明導電膜(ITO)や水平配向膜などの図示しない機能層を、適宜、本発明のカラーフィルタ1に形成してよい。
【0054】
<着色層について>
着色層3は、透明基板2上に所定波長領域の可視光を遮光するブラックマトリクス5を形成し、次いで所定波長領域の可視光を透過する着色画素である赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8を順次設けて形成される。
【0055】
ブラックマトリクス5は、着色画素である赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8(以下、単に「着色画素6,7,8」ともいう)同士の重なり合いを防止するとともに、着色画素間の隙間を埋めて、近接する着色画素間からの光の漏れ(漏れ光)を抑制する等の働きを有する。したがって、ブラックマトリクス5は、透明基板2上において着色画素6,7,8の配置が予定される位置に対応する領域を、着色画素毎に平面視上区画化するように形成される。そして、着色画素6,7,8は、それぞれブラックマトリクス5により区画化された領域を平面視上被覆するようにして配置される。
【0056】
ブラックマトリクス5は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性または光吸収性を有する金属薄膜を所定形状に透明基板2にパターニングすることにより形成することができる。また、ブラックマトリクス5は、インクジェット法やフレキソ印刷法により、黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することによりを形成することも可能である。
【0057】
ブラックマトリクス5に次いで形成される着色画素6,7,8は、赤色、緑色、青色各々について各色の波長帯の光を透過させる着色画素を所定のパターンに配置して形成される。着色画素を構成する赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8の配置形態としては、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型等種々な配置パターンを選択することができる。より具体的には、各色の着色画素6,7,8毎に、顔料など各色の着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液の塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で所定形状にパターニングすることにより形成できる。また別の方法としては、着色画素6,7,8毎に、インクジェット法等により、着色材料分散液を所定形状に塗布することによっても形成することができる。加えて、これら赤(R)のサブ画素6、緑(G)のサブ画素7、青(B)のサブ画素8に代えて、各色の補色の波長帯の光を透過させる着色画素を用いることも可能である。
尚、本発明における着色層3は、上述で例示した3色のサブ画素を備える場合に限定されるものではない。例えば4色以上の着色画素から構成されていてもよいし、あるいは単色または2色備えて構成されてもよい。またこれにあわせて、ブラックマトリクス5を省略することも可能である。
【0058】
<UV洗浄処理について>
着色層3を形成後、位相差層4を形成する前に、着色層3の表面をUV洗浄処理またはコロナ処理といった表面改質処理を行うことが一般的である。かかる処理を行うことにより、着色層3の表面に塗布される液晶組成物、特にはこれに含まれる架橋性液晶分子に対する濡れ性を改善することができ望ましい。
【0059】
上記UV洗浄処理を行う場合、紫外線照射量は500mJ/cm〜3000mJ/cm、より好ましくは900mJ/cm〜3000mJ/cmの範囲で行われる。500mJ/cm以下の照射量では、基板表面に十分な濡れ性を付与することができず、3000mJ/cm以上の照射量では、カラーフィルタが変色するといった不具合が生じる虞がある。特に900mJ/cm以上3000mJ/cm以下の紫外線照射量で洗浄することにより、着色層表面の濡れ性は好ましく改善されるが、一方、紫外線照射の影響により着色層上面の性状は大きく変化する。その結果、900mJ/cm以上の紫外線照射量で洗浄した着色層3の上面に、従来の液晶組成物に含まれる架橋性液晶を配向膜なしに垂直配向させようとすると、配向が乱れ、安定してホメオトロピック配向した位相差層を得ることができなかった。これに対し、本発明の液晶組成物であれば、上記900mJ/cm以上の紫外線照射量で洗浄した着色層3上面であっても、配向膜の存在なしに、液晶組成物中の架橋性液晶分子を良好に垂直配向させることが可能であり、これにより安定してホメオトロピック配向する位相差層4を提供することができる。
【0060】
<位相差層について>
(位相差層の組成物および形成方法)
本発明のカラーフィルタ1における位相差層4は、下地層としての着色層3を被覆するように、本発明の液晶組成物を基板表面に塗布し、液晶組成物中の架橋性液晶分子をホメオトロピック配向および架橋させることによって形成することができる。位相差層4は、着色層3の上面のみに接触してもよく、または着色層3を掩覆して透明基板2と額縁状に接触してもよい。前者の場合は、位相差層4の密着性とは位相差層4と着色層3との密着強度を意味する。また後者の場合、位相差層4の密着性は、位相差層4と透明基板2との密着強度に加え、位相差層4と着色層3との密着強度をあわせたものとなる。
このとき、液晶組成物を着色層3表面に均一に塗布しやすいように、溶液状態の液晶組成物、即ち液晶組成物溶液を用いることが望ましい。
【0061】
液晶組成物溶液を下地層(着色層3)上に塗布する方法としては、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、無版印刷法といった各種印刷方法や、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法、コンマコート法、インクジェット法といった塗工方法、あるいはこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
そして液晶組成物溶液が塗布された塗布基板(以下、単に「塗布基板」ともいう。また塗布された基板の表面に形成された層を「塗膜」という。)を乾燥させる。乾燥は、大気圧下で自然乾燥してもよいが、特に密閉容器内で圧力約1.5×10−1Torr以下に下げて減圧乾燥処理することにより液晶組成物溶液中の溶媒を気化させることが望ましい。
【0062】
上記減圧乾燥処理において、乾燥と同時に液晶組成物に含まれる架橋性液晶分子を基板面に対して垂直方向に配列させる、即ちホメオトロピック配向させて塗膜に液晶相を発現させることが可能である。かかる方法では、塗布基板を減圧状態とすることで塗膜を過冷却状態にすることができ、塗膜中に含まれる架橋性液晶分子をホメオトロピック配向させることで、光学等方性であった塗膜を液晶相塗膜に変える。次いでこの状態を保持したままこの塗布基板を室温程度にする。これにより架橋性液晶分子を、以後の工程で架橋反応させるまで、効率よくホメオトロピック配向させた状態に維持することができる。さらに残存する溶媒を除去するとともに塗膜に含まれる架橋性液晶分子の配向を確実にするために塗布基板を焼成(予備焼成)してもよい。焼成方法は、特に限定されるものではないが、例えばホットプレート上に塗布基板を設置し、70℃〜120℃の温度範囲で、2分間〜30分間程度焼成することができる。
尚、上述は、本発明の液晶組成物に含まれる架橋性液晶分子をホメオトロピック配向させる配向処理を限定するものではない。架橋性液晶分子をホメオトロピック配向させる配向処理として一般的に知られる方法、例えば、上記塗膜に対し所定方向から電場や磁場を負荷する方法等を適宜選択して使用することもできる。
【0063】
次に、上記塗膜においてホメオトロピック配向した架橋性液晶分子を架橋反応させ、該配向を固定化させる。この架橋反応は、塗膜表面に活性放射線を照射することで進行する。このとき、上記塗膜に照射する活性放射線の波長は、この塗膜を構成する液晶組成物の吸収波長、より具体的には液晶組成物に含まれる光重合開始剤の吸収波長に応じて適宜選択される。尚、上記塗膜に照射する光は、単色光に限らず、架橋性液晶分子の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。具体的には紫外線を照射することが一般的である。例えば、紫外線を照射して架橋性液晶分子を架橋硬化させる場合は、波長200〜500nm程度の紫外線が照射されることが一般的である。
【0064】
また架橋性液晶分子を光重合させるための活性放射線の照射により光酸発生剤から発生した酸触媒によって、基材や下地層とシランカップリング剤との反応が進行し、位相差層の密着性が強固なものとなるためである。活性放射線の照射源としては高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。照射光量は架橋性液晶分子の種類や組成、光重合開始剤の種類や量等によっても異なるが、10〜3000mJ/cm程度とするとよい。
【0065】
架橋性液晶分子の架橋反応は、架橋性液晶分子が液晶相から等方相へ相転移する温度(等方相転移温度)よりも1〜10℃低い温度まで塗布基板を加熱しながら架橋反応を行うことが好ましい。これにより、架橋反応時に液晶分子のホメオトロピック配向の乱れを低減することができる。また同様の観点から、より好ましい架橋反応温度は等方相転移温度よりも3〜6℃低い温度である。
【0066】
また架橋性液晶分子の架橋反応の別の方法として、不活性ガス雰囲気中で、上記塗布基板を液晶相温度にまで加熱しながら架橋性液晶分子の感光波長の光を液晶相塗膜に照射することもできる。この方法では、不活性雰囲気下で液晶分子が架橋されており、空気雰囲気下で液晶分子が架橋される場合に比べ、基板から離れた位置にある液晶分子(すなわち液晶相塗膜の表面に近傍する液晶分子)のホメオトロピック配向の乱れを抑制することができる点で好ましい。
【0067】
架橋性液晶分子の架橋反応のさらなる別の方法として、不活性ガス雰囲気中または空気雰囲気中で、上記塗布基板を液晶相温度まで加熱しながら架橋性液晶分子の感光波長の光を塗膜に照射して架橋反応を部分的に進行させ(部分的架橋工程という)、部分的架橋工程の後、液晶が結晶相となる温度(Tc)まで上記塗布基板を冷却し、この状態でさらに感光波長の光を該塗布基板の塗膜に照射して架橋反応を進行させて完了させることもできる。尚、上記した温度Tcは、架橋反応を進行させる前の塗布基板において液晶分子が結晶相となる温度である。
【0068】
上記部分的架橋工程では、温度Tcまで塗布基板を冷却しても、その塗膜に含まれる架橋性液晶分子のホメオトロピック配向性が維持される程度に、架橋反応が進行している。従って、部分的架橋工程における架橋反応の進行の程度は、塗膜に含まれる架橋性液晶分子の種類や、その塗膜の膜厚などに応じて適宜選択されるが、おおよそ、架橋性液晶分子の架橋度が5〜50となるまで架橋反応を進行させることが好ましい。
【0069】
以上により、透明基板2上に、着色層3と、架橋性液晶分子がホメオトロピック配向および架橋し該配向が固定化されてなる位相差層4とを有する基材が形成される。上述では、本発明の一実施態様として、透明基板2、着色層3、位相差層4が順に形成されたカラーフィルタ1について説明したが、本発明の構成はこれに限定されず、例えば透明基板、位相差層、着色層がこの順に積層形成されたカラーフィルタを除外するものではない。本発明において、光透過性の基材上に直接または間接に液晶組成物を塗布した場合に該液晶組成物に含まれる架橋性液晶分子が良好に垂直配向し、その結果、安定してホメオトロピック配向する位相差層が提供されることが重要である。これにより、カラーフィルタ1を液晶表示装置の表示側基板に用いた場合、光漏れのない高品質な表示が可能となる。
特に、上述したカラーフィルタ1のごとく、着色層3の上面に位相差層4が形成される場合には、該着色層3の表面を洗浄処理および/または表面改質処理しても架橋性液晶分子の配向を乱すことなく位相差層4を形成することができるという点で有利である。
尚、位相差層4の厚みに関しては特に制限はないが、透過光に所望のリタデーション量が得られる厚さであって、かつ生産性等を考慮して通常、0.5〜10μm程度が好ましい。
【0070】
上述の方法により形成されるカラーフィルタ1は、さらに焼成工程に供されることが望ましい。位相差層4を焼成することにより、その耐熱性および密着性を向上させることができる。
焼成工程は、架橋工程を終了した上記基材を一定温度に加温したオーブン等に設置して、加熱することにより行うことができる。例えば、空気雰囲気下且つ大気圧下において、エスペック(株)製「クリーンオーブンPVHC−231」を用いて、上記焼成工程を行うことができる。焼成温度および焼成時間は、上記基材の厚み、特に位相差層4の厚みや、用いられる架橋性液晶分子の種類などによって適宜決定することができるが、0.5時間以上2.5時間以下であって、200℃以上250℃以下であることが好ましい。
焼成工程における焼成時間が2.5時間を越えると、上記基材に黄変等が発生し、該上記基材の透過率を下げる虞があり、また0.5時間未満であると、密着性、耐熱性、硬化度が低くなることによって、充分な耐久性が得られない虞がある。
【0071】
本発明の上記基材は、架橋性液晶分子をホメオトロピック配向状態で固定してなる位相差層4を有しているので、例えば位相差を制御する部材である光学補償部材等、光の偏光状態を制御するための部材として用いることができるものである。
特に本発明の液晶組成物にはアミノ基、スルフィド基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基のいずれかを含有するシランカップリング剤および光酸発生剤が含有されており、これを用いて形成される位相差層4では、上記液晶分子の光硬化において、光酸発生剤により生成する酸触媒が、基材とカップリング剤との反応を強く促進させるため、きわめて密着性の高い位相差層4を形成する事ができる。
【0072】
(位相差層の密着性評価)
本発明の位相差層は、透明基板や、下地層である着色層との密着強度を向上することができる。具体的には、加速寿命試験後の位相差層の剥離強度が、JISK5600−5−6の評価基準で1以下、すなわち0または1であることが好ましい。
【0073】
具体的な剥離試験は以下のようにして行う。
まず、本発明の液晶組成物を無アルカリガラス製のサンプル基板に塗工形成して、これに含まれる架橋性液晶分子を配向させた後、活性放射線を照射して液晶分子同士を互いに重合させる。
つぎに、かかるサンプル基板を230℃で30分間焼成し、サンプル基板上に位相差層をベタ形成した試験片を作製する。
かかる試験片を、タバイ製加速寿命試験機EHS−411Mを用いて100℃、100%RHで12時間の加熱寿命試験にかけたのち、温度23±2℃、湿度50±5%程度の環境下、位相差層を格子状に、直交方向に1mm間隔で6回カットを行い、5×5個の格子目を設ける。
次に、幅25mm、かつ幅25mmあたりの付着力が10±1Nを有するテープを長さ約75mm用い、当該テープの長手方向が格子の何れかの辺に平行となるように格子上に貼り付け、指でこすり付ける。さらに、テープの端をつまみ上げ、テープ非粘着面に対し約60°となる角度で、0.5〜1秒かけて引き剥がした後の格子の状態を以下の6段階で評価する。
【0074】
評価基準0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない状態。
評価基準1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれはあるが、クロスカット部分で影響を受けるのは、5%以下の状態。
評価基準2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けているのは明確に5%を超えるが、15%を上回ることはない。
評価基準3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが、35%を上回ることはない。
評価基準4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、および/または数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
評価基準5:はがれの程度が分類4を超える場合(格子の全面が剥離している状態を含む)。
【0075】
温度100℃、湿度100%で12時間の加速寿命試験後の位相差層4の剥離強度を、JISK5600−5−6の評価基準で1以下とするためには、99.79〜70質量%(対配合物換算値)の(メタ)アクリロイル基含有架橋性液晶分子と、0.01〜10質量%(対配合物換算値)のアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光酸発生剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光重合開始剤と、を含有する液晶性組成物を光硬化および焼成することでこれが実現される。
【0076】
<スペーサーについて>
図1に示す本実施形態のカラーフィルタ1は、上記基材における位相差層4上にさらにスペーサー9が形成されて完成される。スペーサー9は、液晶セルを構成する一対の基板間の距離(セルギャップ)を所望に保持するための構造部材である。
【0077】
スペーサー9の形成方法は特に限定されず、例えば、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系またはエステル系ポリマー等の光学等方性材料からなる光硬化性の感光性塗料を、位相差層4の上に塗布してこれを乾燥させ、さらにスペーサー9の形成予定位置に対応したマスクパターンを介して該塗料を露光硬化させた後、未硬化部分をエッチング除去し、さらに全体を焼成することにより形成される。このほか、予め柱状に成型された光学等方性材料をフレキソ印刷法によって位相差層4上の所望の位置に配置してもよい。
【0078】
尚、本発明のカラーフィルタ内に、保護層(図示せず)を設ける場合には、該保護層は多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系もしくはエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂材料、または多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系またはエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂塗料を塗布、乾燥、硬化させて形成することができる。
【0079】
以上により得られた本発明のカラーフィルタは、光漏れが非常に少なく、上記基材を液晶表示装置に用いた場合に、安定して優れた視野角改善効果を発揮するとともに、上記特定のシランカップリング剤と光酸発生剤の反応に起因する高い剥離強度を備えている。
尚、上述では本発明の一実施形態であるカラーフィルタ1について説明したが、本発明のカラーフィルタは必ずしも保護層およびスペーサーを備える必要はない。また本発明のカラーフィルタを液晶表示装置における表示側基板として用いた際に必要とされる部材、例えば透明導電膜などを備えることを否定するものではない。本発明のカラーフィルタは、少なくとも透明基板と着色層と位相差層とを有することが必要であり、特に、架橋性液晶分子が安定してホメオトロピック配向する位相差層が実現されていることが重要である。
【0080】
[液晶表示装置について]
本発明のカラーフィルタ1は液晶表示装置の表示側基板として用いることができる。図4に示す液晶表示装置12は、観察者側(図中上方に相当)に設置される表示側基板13に図1に示す本実施形態のカラーフィルタ1を用い、表示側基板13と液晶駆動側基板14とがスペーサー9を介して対向しており、両者の間に駆動液晶分子15を封入して駆動液晶層16が構成されている。ここで、位相差層4はカラーフィルタ1の透明基板2と、液晶駆動側基板14を構成する透明基板31との間に挟まれるよう配置され、いわゆるインセル型をなす。
また透明基板2に対し着色層3とは反対側面には、透明導電膜21および正のAプレート22が順に積層された機能層20が形成されている。そして表示側基板13側の最外面には直線偏光板23が、他方、液晶駆動側基板14側の最外面には直線偏光板32が、それぞれ積層されている。
【0081】
液晶表示装置12がIPSモードの場合には、表示側基板13の直線偏光板23と、液晶駆動側基板14の直線偏光板32とは、互いの透過軸が直交するようクロスニコル状態に配されている。
【0082】
液晶駆動側基板14は、透明基板31のインセル側に駆動用回路33と、これにより電圧の負荷量を制御される駆動用電極34とが設けられている。
【0083】
尚、上述する液晶表示装置12は、本発明の一実施態様にすぎず、かかる構成により本発明の液晶表示装置が限定されるものではない。本発明の液晶表示装置は、少なくとも、本発明のカラーフィルタを表示側基板とし、これと対向する液晶駆動側基板との間に駆動液晶分子が封入されて構成されていればよい。かかる構成によれば、本発明の液晶組成物を用いて形成された位相差層が、対向する透明基板間に存在する、いわゆるインセル型として実現されるため、耐久性や耐膨湿性に優れ、また着色層に対する保護層としての機能を併せ持つ。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
下記化5に示す化合物(a)〜(d)を用い、下記組成の組成物Aを調製した。組成物Aは、特表2004−524385号公報の記載に準じ、以下に掲げる材料を混合することにより調製した。尚、以下に示す組成物Aにおける各物質の質量比は、組成物Aの総質量に対する各物質の質量比である。
【0085】
【化5】

【0086】
(液晶組成物A)
化合物(a) 32.67質量%
化合物(b) 18.67質量%
化合物(c) 21.00質量%
化合物(d) 21.00質量%
ドデカノール 1.02質量%
BHT 0.04質量%
イルガキュアー907 5.60質量%
【0087】
次に、上記組成物Aに対して、アミノ系シランカップリング剤として3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコーン社製:TSL8331)を2質量%(対配合物換算値)、および光酸発生剤としてビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)を5質量%添加し、本発明の液晶組成物を得た。
次いで、上記液晶組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で溶解し、濃度20%の液晶組成物溶液を得た。
【0088】
次に適当な洗浄処理を施し、清浄とした透明基板として100×100mm、厚み0.7mmのガラス板(コーニング社製:1737ガラス)を用意した。そして下記に示す赤色の着色レジストをスピンコート法で上記透明基板上に塗布し、90℃、3分間の条件でプリベークし、アライメント露光(100mJ/cm)した後、230℃、30分間ポストベークし、膜厚2.0μmの赤色単色の着色層を形成した。続いて着色層を波長254nm、エネルギーの条件で、紫外線洗浄した。尚、上記紫外線洗浄には市販の紫外線洗浄装置(岩崎電気社製:商品名OC−2506)を用いた。
【0089】
上記紫外線洗浄処理後、スピンコーター(ミカサ社製:商品名1H−360S)を用いて上記液晶組成物溶液を着色層上にスピンコーティングした後、減圧乾燥した。続いて空気雰囲気下において、超高圧水銀灯を有する紫外線照射装置(ハリソン東芝ライティング社製:商品名TOSCURE 751)により紫外線を20mW/cmで10秒照射して上記液晶組成物溶液に含有される架橋性液晶分子を架橋させた。最後に230℃のオーブン内に、上記架橋処理が終了した基材を設置し、30分焼成して膜厚1.0μmの位相差層を有する本発明のカラーフィルタを形成した。
【0090】
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト組成)
・赤顔料・・・・・・・・・・・・・・・5.0質量部
(C.I.PR254(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製:クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・・・・・・・・・・・1.0質量部
(C.I.PY139(BASF社製:パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・・・・・・・・・・・3.0質量部
(ゼネカ(株)製:ソルスパース24000)
・多官能アクリレートモノマー・・・・・4.0質量部
(サートマー(株)製:SR399)
・ポリマー・・・・・・・・・・・・・・5.0質量部
(昭和高分子(株)製:VR60)
・光重合開始剤1・・・・・・・・・・・1.4質量部
(チバガイギー社製:イルガキュアー907)
・光重合開始剤2・・・・・・・・・・・0.6質量部
(2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール)
・溶媒・・・・・・・・・・・・・・・80.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0091】
(評価1)
○配向性評価
位相差層を構成する架橋性液晶分子の配向状態は、波長589nmの光が位相差層を透過する際に生じる位相差を、上述した位相差値の測定方法に準じて評価した。なお、位相差の測定には、大塚電子社製:RETS−1250AVを用いた。
即ち、図2に示すように、光学素子の位相差層の表面上に互いに直交するx軸とy軸をとるとともにx軸とy軸に対して垂直なz軸を想定した。そして、z軸方向およびz軸に対してx軸方向およびy軸方向に傾斜する方向について位相差層の位相差を測定した。また、x軸方向に傾斜する方向について測定された場合、y軸方向に傾斜する方向について測定された場合、光学素子に生じる位相差がz軸を基準として対称性を示しているか否かを測定した。これらの測定結果に基づき、架橋性液晶分子が良好にホメオトロピック配向をしているか否かという配向性の良否を、次のように評価した。
【0092】
位相差はx軸方向、y軸方向ともに対称性を示し、且つ、z軸方向の位相差の値が4nm以下 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◎
位相差はx軸方向、y軸方向ともに対称性を示す、または、z軸方向の位相差の値が4nm以下、についていずれか一方を満たす ・・・・○
位相差はx軸方向、y軸方向ともに対称性に乱れがあり、且つ、z軸方向の位相差の値が4nmより大きい ・・・・・・・・・・・・・・×
【0093】
本実施例に関する位相差の測定結果を図3に示し、評価を下表1に示す。x軸方向に傾斜する方向について測定された場合、y軸方向に傾斜する方向について測定された場合、いずれの場合でも光学素子に生じる位相差は、z軸を基準として対称性を示しており、これにより、光学素子の位相差層に含まれる架橋性液晶分子がホメオトロピック配向していることが確認された。
【0094】
(評価2)
○光漏れの有無に関する肉眼観察および光漏れ評価
オリンパス(株)製:偏光顕微鏡CPX31−Pをクロスニコル状態に設定し、偏光板に実施例1で得られたカラーフィルタを挟んだ状態で可視光を当て、光漏れの有無を肉眼で観察した。またこのときの輝度を測定した。
次に偏光板を平行の状態に設定し、偏光板に実施例1のカラーフィルタを挟んだ状態で光を当てて、平行状態のときの輝度を測定した。クロスニコル状態(即ち黒表示)のときの輝度をToff、平行状態(即ち白表示)のときの輝度をTonとしたときの輝度比Ton/Toffを算出した。そして、カラーフィルタの光漏れに関し、以下のように評価した。尚、上記輝度は、ELDIM社製:EZコントラスト160を用いて測定した。
【0095】
光漏れが肉眼では観察されず、Ton/Toff比が1100以上・・・・・・・・・◎
光漏れが肉眼では観察されず、Ton/Toff比が1000以上1100未満・・・○
明らかに光漏れがあり、且つTon/Toff比が1000未満・・・・・・・・・・×
【0096】
実施例1の評価2の結果を下表1に示す。
【0097】
(評価3)
○密着性試験
上述のようにJISK5600−5−6に準じ、12時間の加速寿命試験後のカラーフィルタにおける位相差層の基材に対する密着力を評価基準0〜5で評価し、これを以下の三段階にクラス分けした。
【0098】
評価基準0または1・・・・・○
評価基準2または3・・・・・△
評価基準4または5・・・・・×
【0099】
実施例1の評価3の結果を下表1に示す。
【0100】
<実施例2>
添加する3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコーン社製:TSL8331)の添加量を0.01質量%、およびビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)の添加量を0.1質量%に変えた以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
【0101】
実施例2に関し、上記評価1〜3に準じて評価を行った。結果を下表1に示す。
【0102】
<実施例3>
添加する3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコーン社製:TSL8331)の添加量を10質量%、およびビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)の添加量を10質量%に変えた以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0103】
<実施例4>
添加するシランカップリング剤を3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製:KBM−802)に変えた以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0104】
<実施例5>
添加するシランカップリング剤をビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学社製:KBE−846)に変えた以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0105】
<実施例6>
添加するシランカップリング剤を3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製:KBE−503)に変えた以外は実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0106】
<実施例7>
添加する光酸発生剤を、同じく光酸発生剤であるビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタン(和光純薬社製)に変えた以外は、実施例1と同様にカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0107】
<比較例1>
シランカップリング剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製し比較例1とした。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0108】
<比較例2>
光酸発生剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0109】
<参考例1>
添加する3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコーン社製:TSL8331)の添加量を0.008質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして位相差層を作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0110】
<参考例2>
添加する3−アミノプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコーン社製:TSL8331)の添加量を15質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして位相差層を作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0111】
<参考例3>
添加するビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)の添加量を0.08質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして位相差層を作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0112】
<参考例4>
添加するビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−1−ブタンスルホネート(シグマアルドリッチ社製)の添加量を15質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして位相差層を作製した。
上記評価1〜3に準じて評価を行った結果を下表1に示す。
【0113】
(表1)

【0114】
上記表1に示す本発明の実施例および比較例より、本発明の液晶組成物は、光酸発生剤を添加することにより基板密着性が向上し、また上記特定のシランカップリング剤の添加により架橋性液晶分子のホメオトロピック配向性が向上することが確認された。
また特に実施例実施例1,2と比較例1とを対比することにより、特定のシランカップリング剤と光酸発生剤とをともに液晶組成物に添加することにより位相差層の基板密着性が向上することが分かる。
このことは、実施例2と参考例2とを対比することでより明らかとなる。すなわちシランカップリング剤と光酸発生剤の合計添加量は参考例2の方が多いものの、両者をバランスさせることにより、実施例2にかかる位相差層の方がより高い基板密着性を示していることからも、本発明による特定のシランカップリング剤と光酸発生剤との相乗的効果による位相差層の基板密着性の向上は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明のカラーフィルタの一実施態様を示す縦断面模式図である。
【図2】サンプルの位相差測定方向を示した図である。
【図3】ホメオトロピック配向した位相差層の測定角と位相差との関係を示したグラフである。
【図4】本発明のカラーフィルタを用いた液晶表示装置の一実施態様を示す縦断面略図である。
【符号の説明】
【0116】
1 カラーフィルタ
2 透明基板
3 着色層
4 位相差層
5 ブラックマトリクス
9 スペーサー
12 液晶表示装置
13 表示側基板
14 液晶駆動側基板
15 駆動液晶分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性液晶分子と、分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項2】
架橋性液晶分子が、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
光酸発生剤を、対配合物換算値で0.1〜10質量%含有する請求項1または2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤をさらに含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項5】
99.79〜70質量%(対配合物換算値)の(メタ)アクリロイル基含有架橋性液晶分子と、0.01〜10質量%(対配合物換算値)のアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光酸発生剤と、0.1〜10質量%(対配合物換算値)の光重合開始剤と、を含有する請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の液晶組成物であって、該液晶組成物をグリコールモノエーテルアセテート系溶媒に溶解してなる液晶組成物溶液を無アルカリガラスの表面に塗付して塗膜を形成し、
前記塗膜を減圧乾燥させたのち、前記架橋性液晶分子の液晶相転移温度以上かつ等方相転移温度以下の温度にして前記架橋性液晶分子を配向させ、
前記配向した架橋性液晶分子に活性放射線を照射して前記架橋性液晶分子同士を互いに重合させたのち、さらにこれを230℃で30分間焼成してなる皮膜を、
温度100℃、湿度100%で12時間の加速寿命試験を行ったときに、前記皮膜の剥離強度が、JISK5600−5−6の評価基準で0または1を示すことを特徴とする液晶組成物。
【請求項7】
架橋性液晶分子と、分子構造中にアミノ基、メルカプト基、スルフィド基、または(メタ)アクリロイル基のいずれかを有するシランカップリング剤と、活性放射線の露光により酸を生じる光酸発生剤と、活性放射線の露光によりフリーラジカルを生じる光重合開始剤とを含む液晶組成物を、光透過性の基材上に直接にまたは下地層を介して間接に塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を、前記架橋性液晶分子の液晶相転移温度以上かつ等方相転移温度以下の温度にすることで前記架橋性液晶分子を配向させて液晶相塗膜となす工程と、
前記液晶相塗膜に活性放射線を照射して、前記配向した架橋性液晶分子同士を光重合させて位相差層となすとともに、前記光酸発生剤の生じた酸と前記シランカップリング剤との反応により前記位相差層と前記基材または下地層とを密着させる工程と、
を含む位相差層の形成方法。
【請求項8】
光透過性の基板上に着色層と位相差層とが積層されたカラーフィルタであって、前記位相差層が、請求項1〜6のいずれかに記載の液晶組成物を前記基板上に直接または間接に塗布し、前記架橋性液晶分子を配向させ、活性放射線を照射して前記配向した架橋性液晶分子同士を互いに重合させてなることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項9】
位相差層に含まれる架橋性液晶分子がホメオトロピック配向している請求項8に記載のカラーフィルタ。
【請求項10】
対向する表示側基板と液晶駆動側基板との間に駆動液晶分子を挟持してなる液晶表示装置であって、前記表示側基板が請求項8または9に記載のカラーフィルタであることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−297420(P2008−297420A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144523(P2007−144523)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】