説明

液晶組成物、抵抗値調整方法及び置換フェノール

【課題】予め特定された比抵抗を有する液晶混合物を提供する。液晶の比抵抗が再現可能に調整される物質を選択又は提供する。
【解決手段】10ppmから10%の濃度の、例えば下式で例示される酸性化合物を含む液晶混合物で、該酸性化合物は比抵抗を予め設定された範囲、典型的には109Ωcmから数1012Ωcmの範囲に調整する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の抵抗値を有する液晶混合物、及び液晶混合物の比抵抗を予め特定された値、典型的には10Ωcmから数1012Ωcmの範囲に調整する方法に関するものである。本発明は、特に末端でフッ化された化合物又は末端でフッ化された置換基を持つ化合物を含むか又はそれらからなる液晶混合物、一般的には低極性の高抵抗液晶混合物に関するものである。
【0002】
特に、抵抗値は酸性化合物、特に好ましくはフェノールを使用して調整される。本発明はまた,新規な置換フェノールに関するものである。本発明はさらに、本発明による液晶混合物を含有する液晶表示体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高い比抵抗値を有する液晶混合物は、数タイプの液晶表示体に問題を引き起こす。
これらの高抵抗液晶混合物の大部分の問題は静電荷の発生である。これは例えば、偏光子又は補償フィルムの例では、表示体の生産中に保護膜の剥離工程で時々簡単に生ずる。しかしながら、静電荷帯電はこのような表示体の作動中例えば、プラスチック部品又は衣服との接触及び摩擦又はそのいずれかによっても生ずる。例えば、自動車用ラジオ表示体では、この種類の静電荷帯電は手が表示体に接触しても生ずることがある。最も簡単な場合では、この静電荷はスイッチオフ表示又は表示体の一部の望ましくないスイッチオンを生ずることがある。
【0004】
しかしながら、頻繁に表示体に対する不可逆変化が観測される。例えば、これらは静電荷による配向膜に対する変化により引き起こされる。この現象は特にTN及びSTN表示体において観測される。この種類の表示体では、液晶混合物の高い比抵抗値により、表示体がスイッチオフされた後でも、しばしば長期間にわたって表示された情報が残ってしまう。液晶混合物の比抵抗値が高いと、蓄積電荷キャリアが分散することは困難であり、いわゆる「残像」又は「ゴーストイメージ」、しばしば「ステイッキング(焼付き)効果」又は「画像ステイッキング(焼付き)効果」とも称される、)の発生を引き起こす。アクテイブマトリクスアドレシング方式(例えば、TN−AMD又はIPS−AMD)の表示では、アクテイブマトリクスの非線形スイッチ(例えば、TFT)は特に、損傷又は破損さえ起こす。「画像ステイッキング(焼付き)効果」もAMD方式で生ずる。
【0005】
この問題を解決する多数の提案が従来技術において行われてきた。例えば、液晶表示体の生産における静電荷帯電の発生を防止ようとする装置対策のほか、液晶混合物を最適化する多数の示唆がなされてきた。
これらの示唆の殆どが望ましい抵抗値を得るため各種ドーパントの使用を提案している。しかしながら、液晶混合物におけるドーパントの溶解度がこの場合問題である。さらに、例えば、クリアリングポイントの低下及び他の物理的特性の変化などの望ましくない効果がしばしば生ずる。望ましい抵抗値の設定値の再現性はおうおうにして好適でないか,又は達成可能な抵抗値の範囲は比較的狭い。
【0006】
液晶混合物の導電率又は比抵抗を調整するため使用される化合物のさらに必須な特性はそれらの蒸気圧である。さもないと組成の変化が生じ、この場合まさに望ましくない抵抗変化を生ずるため,液晶混合物の他の成分の蒸気圧がそうでなければならないようにこの蒸気圧は高すぎてはならない。表示体製造における真空充填用装置の極めて広範な用途で特に重要なものである。生ずる変化は生ずる圧力の持続時間及び大きさによると考えられる。
【0007】
液晶混合物におけるある一定の比抵抗値を設定するため最近使用された化合物の代表的な例はクラウンエーテルであり、WO97−03164に記載されたように使用されている。しかしながら、少量使用した場合でも、これらは抵抗値のかなりの低下をもたらす。
さらに、各種不純物を含有するクラウンエーテルの相互作用により、液晶混合物内部及び内部表示面上の両方で、即ち、本質的には配向膜で、達成された結果は使用した材料にかなり強く依存し、かつ再現性はしばしば不十分になる。このように、容易に液晶混合物に溶解しかつ多くの配向膜に対して汎用性を示す、比抵抗の再現可能な調整用物質に対する要求が存在した。
【0008】
下記式の化合物;
【化4】


及び
【化5】


の化合物が知られている。例えば、ケミカルアブストラクト(Chemical Abstracts)CAS−2894−87−3及びCAS−2200−70−6を参照されたい。
【0009】
JP−A08−067 577は液晶混合物の比抵抗を低下させるのにトリ(ポリオキシアルキレン)アミンを提案している。
JP−A08−337 778はSTN表示体に使用するため過酸化物−破壊化合物を含有する液晶混合物を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は予め特定された比抵抗を有する液晶混合物を提供することである。本発明の別の目的は液晶の比抵抗が再現可能に調整される物質を選択又は提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、この目的が酸性化合物、特に酸性フェノール、とりわけ一般式I;
【化6】


式中、
及びAは互いに独立して、かつAが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ
a)1,4−シクロヘキシレン又はトランス−1,4シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
c)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル,ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において(a)及び(b)はF原子による一置換体又は二置換体であることができ;
及びZは、互いに独立して、かつZが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ-CO-O-、-O-CO-、-CO-CH2-、-CH2-CO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-であるか又は単結合であり、
又はZ及びZ基の1つは、
-(CH2)4-、-(CH2)3CO-、-(CH2)2-O-CO-、-(CH2)2-(CO-O)-、CH=CH-CH2CH2-、-CH2-CH2-CH=CH-又はCH2-CH=CH-CH2-であり、
RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか、又は
ハロゲン、特にF又はClで一置換されるか又は多置換され、さらにこれらのラジカルの1個又は多数のCH基が互いに独立して、
-O-、-S-、
【化7】

、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN、F、Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、
R’はH又はRであり、(ここでCN、F、OH又はCOOR’は除かれる)
nは0、1又は2であり、
mは0又は1であり、
oは1、2又は3であり、
n+m+oは2、3又は4であり;
X及びYはそれぞれ互いに独立して、X及び/又はYが多数回存在する場合にも、それぞれ互いに独立して、F、Cl、COOR’、NO、又はCNであり、ここで、XはFであることが好ましくかつYはCNであることが好ましく;
、p、q及びqはそれぞれ0、1、2、3又は4であり、
oが1、qが0の場合、pは3又は4であり、
oが1、qが1、2又は3の場合、p+qは1、2、3又は4、
好ましくはqは1でpは1又は2であり、
oが2又は3の場合、p+p2++qは1、2、3、4、5、6、7又は8であり、
+qが1又は2の場合、p+pは1、2、3又は4、好ましくは、
+qが1で、p+pが1又は2であり、
+qが0の場合、p+pは3、4、5、6、7又は8、好ましくは、6、7又は8である、
で示される酸性化合物を使用することによって達成された。
【0012】
好ましくは式Ia;
【化8】


式中、
及びAは互いに独立して、かつAが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ
a)1,4−シクロヘキシレン又はトランス−1,4シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
c)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル,ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において(a)及び(b)はF原子による一置換体又は二置換体であることができ;
及びZは、互いに独立して、かつZが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ-CO-O-、-O-CO-、-CO-CH2-、-CH2-CO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-であるか又は単結合であり、
又はZ及びZ基の1つは、
-(CH2)4-、-(CH2)3CO-、-(CH2)2-O-CO-、-(CH2)2-(CO-O)-、CH=CH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH=CH-又は-CH2-CH=CH-CH2-であり、
RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか、又は
ハロゲン、特にF又はClで一置換されるか又は多置換され、さらにこれらのラジカルの1個又は多数のCH基が互いに独立して、
-O-、-S-、
【化9】

、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN、F、Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、
R’はH又はRであり、(ここでCN、F、OH又はCOOR’は除かれる)
nは0、1又は2であり、
mは0又は1であり、
oは1、2又は3であり、
n+m+oは2、3又は4であり;
X及びYはそれぞれ互いに独立して、X及び/又はYが多数回存在する場合にも、それぞれ互いに独立して、F、Cl、COOR’、NO、又はCNであり、ここで、XはFであることが好ましくかつYはCNであることが好ましく;
、p、q及びqはそれぞれ0、1、2、3又は4であり、
oが1、qが0の場合、pは3又は4であり、
oが1、qが1、2又は3の場合、p+qは1、2、3又は4、
好ましくはqは1でpは1又は2であり、
oが2又は3の場合、p+p2++qは1、2、3、4、5、6、7又は8であり、
+qが1又は2の場合、p+pは1、2、3又は4、好ましくは、
+qが1で、p+pが1又は2であり、
+qが0の場合、p+pは3、4、5、6、7又は8、好ましくは、6、7又は8である、
で示される化合物が使用される。
【0013】
また、好ましくは式Ib;
【化10】


式中、
及びAは、互いに独立して、かつAが多数回存在する場合にも互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキシレン又はトランス−1,4シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
c)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルもまた独立であり,
この式において(a)及び(b)はF原子による一置換体又は二置換体であることができ;
及びZは、互いに独立して、かつZが多数回存在する場合にも互いに独立なそれぞれ互いに独立で、かつZが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ-CO-O-、-O-CO-、-CO-CH2-、-CH2-CO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-であるか又は単結合であり、
又はZ及びZ基の1つは、
-(CH2)4-、-(CH2)3CO-、-(CH2)2-O-CO-、-(CH2)2-(CO-O)-、CH=CH-CH2CH2-、-CH2-CH2-CH=CH-又はCH2-CH=CH-CH2-であり、
RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか、又はハロゲン、特にF又はClで一置換又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、-O-、-S-、
【化11】

、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又はCN、F、Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、
R’はH又はRであり、(ここでCN、F又はCOOR’は除く)
nは0、1又は2であり、
mは0又は1であり、
oは1、2又は3であり、
n+m+oは2、3又は4であり;
X及びYはそれぞれ互いに独立して、かつX及び/又はYが多数回存在する場合にも、これらの化合物もまた独立して、F、Cl、COOR’、NO又はCNであり、ここで、XはFであることが好ましくかつYはCNであることが好ましく;
p及びqはそれぞれ0、1、2又は3であり、
p+qは1、2、3,4、5、6、7又は8であり、
qは0又は1であり、かつq=0の場合、
pは3、4、5、6、7又は8であり、
q=1の場合、
pは1、2、3,4、5、6又は7であり、
かつXはFであることが好ましくかつYはCNであることが好ましい、
で示される化合物が使用される。
【0014】
式Iaにおいて、
【化12】


この式において、Xp1、Xp2、Yq1及びYq2は式Iaで上記に定義された通りである。
【0015】
式Ibでは、
【化13】


この式において、
XはF、Cl又はCOOR’、好ましくはFであり、
YはCN、又はNO、好ましくはCNであり、
p及びqはそれぞれ0、1、2又は3であり、かつ
p+qは2又は3であり、R=CN、F、Cl、OH又はCOOR’の場合には、それに代わり1である。
【0016】
式Ibにおいて、
【化14】


この式において、X及びYは式Ibで定義された通りである。
Xは好ましくはFであり、Yは好ましくはCNである。
【0017】
特に好ましくは付属式Ia−1からIa−6の化合物;
【化15】


であり、
この式において,
R、A、A、Z、Z、n、m、X及びYは式Iaで上記に定義された通りである。Yは好ましくはCNであり、Xは好ましくはFであり、nは好ましくは0であり、かつRは好ましくはCN、F又はOHである。
【0018】
特に好ましくは付属式Ib−1からIb−5の化合物;
【化16】


であり、
この式において、R、A、Z、n、X及びYは式Ibで上記に定義された通りである。Yは好ましくはCNであり、Xは好ましくはFである。
【0019】
特に好ましくは付属式Ia−3a、Ia−4a、Ia−5a及びIa−6aの化合物;
【化17】


であり、
この式において、R、A及びmは式Iで上記に定義された通りである。
【0020】
付属式Ia−3a、Ia−4a、Ia−5a及びIa−6aでは、
【化18】

【0021】
特に好ましくは付属式Ib−1a、Ib−2a及びIb−2bの化合物;
【化19】


であり、
この式において、Rは一般式Iで上記に定義された通りである。
【0022】
付属式Ib−1a、Ib−2a及びIb−2bでは、
【化20】

【0023】
格別に好ましくは付属式IA−1−1の化合物:
【化21】


であり、
この式において、RはCN、F、Cl又はOHであり、Fであることが好ましい。
【0024】
さらに格別に好ましくは付属式Ib−1a1、Ib−2a1及びIb−3a1の化合物;
【化22】


であり、この式において、Rは一般式Iで上記に定義された通りである。式Ib−1a1の化合物の場合、Rは1から7の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであることが好ましく、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルであることが格別に好ましい。式Ib−2a1の化合物の場合、Rは1から7の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシであることが好ましく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシであることが極めて好ましい。
【0025】
上述のフェノール化合物を有する液晶混合物のほか、本願は、それらがなお未知である限りこれらの化合物自体にも関するものである。これらの液晶混合物は液晶表示体、特にSTN及びIPS表示体に使用するのに特に適当である。
【0026】
STN表示体用液晶混合物及び特にこのような表示体用に好適な液晶混合物の概念はEP 0 394 417に記載されており、かつAMD、表示体の概念はEP 0 394 419に記載されている。
【0027】
本願によるTN表示体用液晶混合物は末端シアノ置換化合物を誘電的に正の化合物として有することが好ましい。それらは式II;
【化23】


の化合物を有することが極めて好ましく、
この式において、Aが多数回存在する場合には、これらAは互いに独立して、
a)1,4−シクロヘキシレン又はトランス−1,4シクロヘキセニレン、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
c)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
この一般式において(a)及び(b)はF原子による一置換体又は二置換であることができ、
は、Zが多数存在する場合には、これらZは互いに独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CO-CH2-、-CH2-CO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-であるか又は単結合であり、
はH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換され、又はハロゲン、特にF又はClで一置換又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、-O-、-S-、
【化24】

、-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-CO-O-によりにより2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき;
rは1又は2であり、
はH又はFであり、かつ
はH又はFである。
【0028】
混合物は式II−1、必要であれば、II−2;
【化25】


この式において,Rは式IIで上記に定義された通りであり、n−アルキル又は1−E−アルケニルであることが好ましい。
【0029】
好ましくは式IIの誘電的に正の化合物を含む液晶混合物であり、ここでr=1、A=1、4−シクロヘキシレン、X=H、Zは単結合であり、Y=Hであり、かつR=1又は2から7の炭素原子をそれぞれ有するアルキル又はアルケニルである。特に、液晶混合物は少なくともそれらの誘電的に正の成分に関するこれらの化合物に基づいている。特に、これはTN表示体用及びSTN表示体用混合物にも適用される。r=1、A=1,4−フェニレン、Z=-CO-O-、X=H、Y=Fであり、かつR=1又は2から7の炭素原子をそれぞれ有するアルキル又はアルケニルである場合の式IIの化合物も好ましい液晶混合物中に存在する。しかしながら、式II−2の化合物濃度は一般に式II−1の化合物の濃度より著しく低い。好ましい液晶混合物のしきい値電圧は好ましくはTNセルで、好ましくは1.5Vから4.0V、特に好ましくは1.8Vから3.5V、特別に好ましくは2.0Vから3.0Vの範囲である。
【0030】
液晶混合物及びSTN及びAMD表示体の液晶混合物の概念について、上述の2つの特許出願を引用することにより、これらが本出願に組込まれる。
【0031】
TN及びSTN表示体についての、本願による特に好ましい液晶混合物は例えば、ベンゾニトリル及びシアノ基に対してオルト位にフッ素により一置換又は二置換されるベンゾニトリルなどの末端シアノ置換化合物を有する混合物である。
【0032】
本願によるSTN表示体用液晶混合物も末端フッ化化合物及び/又は末端フッ素含有置換基を持つ化合物を含む。
本願によるSTN表示体用液晶混合物は、特に好ましくはアルケニル側鎖を有する化合物を含む。これらの化合物は誘電的に正でかつアルケニル側鎖を有するか又は誘電的中性のいずれかである。後者において、その化合物は、一つ又は二つのアルケニル側鎖を有することができる。
【0033】
AMD表示体用液晶混合物では、好ましくは本願において末端フッ化化合物及び末端フッ素含有置換基を有する化合物又はそのいずれかである。これらの混合物は約1%、特に約5%、格別には約1%のシアノ置換化合物を含んでいることが好ましい。特に、式I及びその付属式のそれらは別として、これらの混合物は非シアノ置換化合物を任意に含む。
【0034】
本発明による化合物又は本発明により使用された化合物は、IPS表示体用混合物に使用するのが特に好ましい。このようなIPS表示体に対しては、好ましくは本願においてAMD表示体用混合物のような末端フッ化化合物を含有する液晶混合物が挙げられる。しかしながら、IPS表示体用混合物は、付加的に末端シアノ置換化合物を含んでいる。これらの末端シアノ置換化合物濃度は広い限界範囲内で変化する。
【0035】
特に、AMD表示体用混合物の場合におけるように低い上限値には制限されない。典型的には、1から50%のシアノ置換化合物が使用される。好ましくは5から35%、特に好ましくは7から25%のシアノ置換化合物を含有する混合物である。
【0036】
IPS表示体用液晶混合物及びこれらの液晶表示体用の混合物の概念は、
GB 23 10 669、EP 0 807 153、DE 19528104、DE 19528107、EP 0 768 359、DE 19 611 096及びDE 19 625 100に記載されている。IPS表示体用液晶混合物及びそれらの混合物の概念については、これら7件の特許出願を引用することにより、これらは本明細書に組込まれる。
【0037】
TN、STN、AMD及びIPS表示体の構造は公知のものであるか又は公知のルールに従うものである。ここでは、TN、STN、AMD及びIPSという用語は本明細書では広い意味で引用され、かつそれらの典型的な変形をも網羅している。
【0038】
STN表示体の構造は、EP 0 098 070、EP 0 131 216,及びEP 0 260 450、中でもIPSの表示装置の構造は、US5、576、867及びEP 0588 568に記載されている。STN及びIPS表示体の構造に関しては、上述の5件の特許出願を引用することにより、ここに組込まれる。
【0039】
スキーム1
【化26】


R、A、Z、A、Z、n及びmは式Iで上記に定義された通りである。
【0040】
本発明による化合物は液晶混合物に1ppmから典型的には50,000ppm、好ましくは10ppmから10,000ppm、特に好ましくは50ppmから5,000ppm(重量比による)の濃度で加えられる。
【0041】
物理的特性は特にそれ以外の記載がない限り、「液晶の物理的特性」(「Physical Property of Liquid Crystal」),Merck KGaA、Ed.W.Becker、1997年11月に記載されているように決定される。
【0042】
液晶混合物それ自体の比抵抗(略称SR)は「アクテイブマトリクス表示体用液晶」(「Liquid Crystals for active matrix displays」),G.Weber等,Liquid Crystals,1989年,第5編,第5巻,1381〜1388ページに従い、ステンレス鋼製測定セル中の1mlを使用して決定される。
【0043】
液晶混合物の比抵抗はガラス製試験セル(SRZ)中でもさらに決定される。液晶表示体セルのようなこれらの試験セルは、互いに平行に互いに一定距離離して結合した2枚のガラス板から構成される。セルはMerck KGaA社の試験セル製造装置で作製されている。それらのセルは配向膜のないインジウム−錫酸化物(ITO)電極付の無アルカリガラスから構成される。層厚は20μmである。
セルには反対側に2つの充填開口を設けられる。電極は円形で、それぞれが1cmの面積を有している。電磁輻射除去のため、セルにリング形状の保護電極を設ける。(SR)などの比抵抗のように、試験セルの液晶混合物の比抵抗(SRZ)は感度エレクトロメータ(ケースレー(Keithley)社製6517高抵抗装置)を使用して測定する。(SR)などの比抵抗の測定時には、ケースレー617を使用する。乾燥セルの充填や抵抗値の測定はすべてエアーロックで接続されたグローブボックス装置の中で行われる。乾燥窒素の流れを継続的にこれらのグローブボックスから通過させる。セルを収容するボックス内部の相対大気湿度は、特にセルの充填中及び測定中は10%以下でなければならない。
抵抗値はアルミニウムハウジング内で測定されるが、ハウジング内で試験セルを加熱媒体としての水を有する2つの黄銅ブロックにより20℃に保持する。
漏出磁場からの遮蔽のため、測定セルの防護リングをアルミニウムハウジングと共に接地する。
【0044】
防護リングの接地は、測定系統の各々に対しては別々にかつアルミニウムハウジングの接地と共に、接地ループを形成しない方法で実施する。
放電状態のセル容量は充填前に別途測定する。それは代表的にはεempty=45pFである。
【0045】
抵抗値を測定するため,電流を20Vの直流定電圧で測定する。これが終了するまで、試験セルを次のように扱わなければならない。20秒間待った後、交互の極性の4回の20Vパルスを印可する。4回のパルスはすべてパルス幅20秒でありかつ互いに0Vの20秒間隔で分離される。4回のパルスの最後には0Vの180秒間隔が続きその後、最初のパルスの極性で20Vを180秒間再び印可する。この最終パルスの終点で、10回の測定読みが5秒以内に得られる:これらの読みは平均抵抗値を与える。
【0046】
加熱は3個のグローブボックスの別のボックスで行う。加熱後、典型的には120℃で1時間、セルを冷却させその後、グローブボックス内に温度維持セル保持器と共に移す。
【0047】
仕上げられた液晶混合物の、その結果得られた比抵抗(SR)値は該当面積及び仕様によって、10Ωcmから1012Ωcmの範囲にある。TN及びSTN表示体用液晶混合物は1010Ωcmから1013Ωcm、特別には5・1010Ωcmから2・1011Ωcmの比抵抗値を有することが好ましく、かつ
IPS表示体用液晶混合物は5・1011Ωcmから8・10Ωcm、好ましくは1012Ωcmから3・1012Ωcmの比抵抗値を有する。
【0048】
10から1000ppmの範囲のドーパントの濃度が使用されることが特に好ましくかつ5・1011Ωcmから1・1013Ωcmのセル(SRZ)の比抵抗が得られる。相対的に小さなドーパント濃度が好ましい。
【0049】
上記に与えられたかつ本願における以下の物理的特性は明確に述べられていない限り20℃の温度に対して与えられる。
【0050】
「電圧保持率」(VHR又はHR)は「液晶の物理的特性」、VIII、電圧保持率(「Physical Property of Liquid Crystal」,VIII,Voltage Holding Ratio)、Merck KGaA、Ed.W.Becker、1997年11月に記載されているように測定される。約5μmの層厚及び1cmの電極面積を有する試験セルが使用された。電圧保持率はアントニック−メルカー(Antonic−McLcher)、ドイツによる市場で入手可能な計測を使用して測定された。測定電圧は1Vであった。
【0051】
電気光学特性、特にしきい値及び急峻性値はMerck KGaAで作製された試験セルで測定された。しきい値電圧Vth又はV10は相対コントラストの10%の変化、即ち、完全飽和状態のアドレスセルと非アドレスセル間に対して決定された。この急峻性はV90/V10として決定された。
【0052】
90℃のツイスト角度を有するセルが使用された。セルは通常ホワイトモードで作動された。液晶混合物はカイラルドーパントをドープしていなかった。セルの層厚は光学的リターデーションが0.50μmになるように選択された。
使用された計測器は市場で入手可能なオーツカ、日本の計器及びMerck KGaAによる適合計測器であった。
【0053】
本願は酸性メソゲン形成性化合物により、好ましくは適切に置換されたフェノールにより液晶混合物のある一定の比抵抗を達成又は調整する方法に関する。
本願は液晶混合物の抵抗値を酸性の、メソゲン形成性の又は液晶状の化合物を使用して望ましい値に調整する方法に関する。特に好ましくは十分高いpKa値を有する酸性化合物が挙げられる。pKaの最小値は液晶混合物の抵抗値及び極性(特に、誘電異方性)に依存する。例えば1010Ωcmから1011Ωcmの低抵抗値を有する液晶混合物の場合、より大きな抵抗値を有する液晶混合物の場合よりも、より大きなpKa値を有する酸性化合物を使用することが必要である。
【0054】
使用される化合物(好ましくはフェノール化合物)のpKa値は少なくとも実施例2c(物質例5)による化合物CCU−3−CN.OH−FのpKa値と同じ位大きくなければならない(例10参照)。使用される化合物のpKa値は、CCU−3−CN.OH−FのpKa値より大きいことが好ましい。
好ましく使用されるべき化合物は、OH置換リングに3つ以上のフッ素置換基を、又はビフェニル化合物の場合、各リングに2つ以上のフッ素置換基を有する。
【0055】
化合物は、特に好ましくはそれらがOH置換ビフェニル系を含有する限り7、8又は9個のフッ素置換基を有する。化合物は、特に好ましくは1個のCN及び少なくとも1個のF置換基をOH置換ベンゼン環に含んでいる。CN基はOHに対してオルト位又はパラ位、特に好ましくはオルト位にある。
【0056】
蒸気圧が過剰に高くなる可能性のない化合物をどこでも使用することがさらに必要である。好ましくは蒸気圧が通常使用される液晶化合物の蒸気圧より高くない化合物、例えば、
【化27】


である。
【0057】
特に好ましくはその蒸気圧が、
【化28】


の蒸気圧より高くない化合物である。
【0058】
特に好ましくは酸性フェノール、特に本願の式I及びその付属式の化合物である。
本発明によれば、偏光子、電極基板及び電極、その表面が隣接する液晶分子の好ましい配向(デイレクタ)が通常、一方の電極から他方の電極まで約90°の(特に、80°から110°の)値又は160°から720°の値でねじられるように処理が施された電極からなる、液晶表示体部品の構造はこの種類の表示体部品の通常の設計に対応するものである。通常設計用語は本明細書では広く引用されかつTN及びSTNセル、特にマトリクス表示体部品及び補足的に磁石を含む表示体部品のすべての派生物及び変形例をも網羅している。
【0059】
2枚の外側プレートでの表面チルト角は同一でも又は異なるものであってもよい。同一チルト角が好ましい。好ましいTN表示体は外側プレート表面での分子の長軸と外側プレート間が0°から7°、好ましくは0.01°から5°、特に0.1°から2°のチルト角を有する。STN表示体では、チルト角は1°から30°、好ましくは1°から12°、特に3°から8°である。
【0060】
セル中のTN混合物のねじれ角は22.5°から170°、好ましくは45°から130°、特に80°から115°の値を有する。表示体では、配向膜から配向膜のSTN混合物のねじれ角は100°から600°、好ましくは170°から270°、特に180°から250°の値を有する。
本願のIPS表示体はねじれのないスタート状態を有しかつ基板に対して平行な電場成分により基板に対して垂直軸にねじられる。チルト角は0°から又は僅か0°以上(例えば、0.01°)15°、特に0.2°から6°の範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明に従って使用される液晶混合物はそれ自体通常の方法で作成される。一般に、微量で使用される所望量の成分を主要成分を構成する成分に昇温させて適宜に溶解させる。成分溶液を有機溶剤、例えばアセトン、クロロフォルム又はメタノールに混合し、混合後、溶剤を例えば蒸留により再び除去することも可能である。液晶混合物は当業者にとって公知のかつ文献に記載されている別の添加物を含有することがもきる。例えば、0から15%の多色性染料を加えることができる。
【0062】
下記例により本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。
次の略号を使用する:
T(S,N) スメクチック−ネマチック相転移温度
T(N,I) ネマチック−アイソトロピック相転移温度
cl.p. クリアリングポイント
on スイッチオンから最大コントラストの90%に達する
までの時間
off スイッチオフから最大コントラストの10%に達するま
での時間
90/V10 急峻性
ave (ton+toff)/2(平均応答時間)
Δ ε 誘電異方性
Δn 光学異方性
SR バルクの比抵抗
SRZ 試験セルの比抵抗
【0063】
本明細書中、特に特定されない限り、すべての温度は℃で示され、百分率は重量パーセントであり、かつ物性値は20℃での値である。本願及び以下の実施例において、液晶成分の構造は略号で表示し、式への変換は以下の表A及びBによって行われる。すべてのC2n+1及びC2m+1基はn又はm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖アルキル基である。アルケニル基はトランス−構造を有する。表Bのコードは自明である。表Aには、親構造の頭字語のみを示す。それぞれの場合、親構造の頭字語の次に、ハイフンで分離された置換基R、R、L、L及びLのコードが続く。
【化29】

【0064】
TN、STN及びIPS表示体は
表A及びBの1つ又は多数の化合物から構成された液晶混合物を含有することが好ましい。
【0065】
表A:(L、L、L:H又はF)
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
表B:
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
以下の実施例は本発明を、制限を表わすことなく説明しようとするものである。本明細書中、百分率は重量パーセントで示す。m.p.は融点、cl.p.=クリアリングポイントを示し、すべて温度は摂氏℃で示す。さらに、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相、及びI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは転移温度である。Δnは光学異方性(589nm、20℃)を示し、Δεは誘電異方性(1kHz、20℃)を示す。
【実施例】
【0070】
例1(物質実施例)
化合物1
4.1gの2、6−ジフルオロ−4−(4−n−プロピル−トランス−シクロヘキシル)ベンゾニトリル
【化30】


を150mlのTHFに溶解し、その溶液を250mlの4ネックフラスコに入れた。1.75gのカリウム第3−ブトオキシドを30mlのTHFに溶解し、その溶液をゆっくりと滴下し温度が30℃を超えないような速さで攪拌しながら加えた。赤みをおびた反応混合物を12時間攪拌し,その後、約40mlの濃縮HClを使用して加水分解し,その結果、混合物は黄色に変色した。加水分解中、温度が30℃を超えないことを確認した。混合物を3回50mlのメチル第3ブチルエーテル(MTB)を用いてそれぞれの場合に抽出した。その後、有機相を50mlの水で2回洗浄し、乾燥し、蒸発させ、残渣をクロマトグラフィによりシリカゲル上でMTB/ヘキサン(1:1)中でフリットを介して精製した。その後、分留分を蒸散させ、その固形分2.5gを得、それをn−ヘプタンから再結晶し、1.7gの化合物2−シアノ−3−フルオロ−5−(4−n−フェニル−トランス−シクロヘキシル)フェノール
【0071】
【化31】

、PCH−3N.F.OHと略称される、を得た。
融点は138.6℃であった。
【0072】
次の化合物を同様に作成した:
化合物2から7
【化32】

【0073】
例2(物質実施例2)
化合物番号8;
【化33】


を例1の化合物1と同様に相当するスタート化合物使用して、次のスキームにより調製した。
【0074】
スキーム2
【化34】


R、A、Z、A、Z、m及びnは式I下上記に定義された通りである。
【0075】
例2a(物質実施例3)
化合物番号9;
【化35】


を作成した。
物性は次の通り:
相シーケンス C 71℃ N 83.4℃ I
【0076】
例2b(物質実施例4)
化合物番号10;
【化36】


を調製した。
C 112℃ I
【0077】
例2c(物質実施例5)
化合物番号11(CCP−3−CN.OH−F.F.Fと略称);
【化37】


を調製した。
C 229℃ I
【0078】
例2d(物質実施例6)
化合物;
【化38】


を調製した。
K 94℃ I
【0079】
例2e(物質実施例7)
化合物;
【化39】


を調製した。
C 146℃ I
【0080】
例3(使用実施例1)
例1による1000ppm又は10,000ppm(重量による)の化合物PLH−3N.F.OHを液晶混合物A−0に加えた。
液晶混合物A−0の組成及び物理的特性を以下の表(表1)に示す。本願のすべての濃度データのような個々の化合物の濃度データは明確に述べられていない限り重量による。
【0081】
表1:混合物A−0
組成
【表5】


物性
T(N,I)=96℃
Δn(589nm)=0.108
Δε(1kHz)=3.1
V10=2.8V
【0082】
混合物A−0、A−1000、A−10,000の比抵抗を測定した。結果を下表(表2)に示す:
表2: PCN−3N.F.OHを含有する液晶混合物Aの比抵抗
【表6】

【0083】
例4(使用実施例2)
例1による1000ppm(重量による)の化合物PCH−3N.F.OHを実施例3の液晶混合物A−0に加え,その結果得られた液晶混合物A−1000を2つの部分に分割し、その1つをミリポアフィルター(テフロン40μm)で濾過した(A−1000F)。
【0084】
このようにして得られた3種類の化合物A−0、A−1000,A−10,000及び実施例3の化合物A−10,000の特性を別の試験セルで測定した。これらの試験セルはMerck KGaA社の試験セル製造装置で作製されたものである。試験セルは6.0μmの層厚であった。
5つの異なる配向膜を有する試験セルを使用した。
【0085】
これらの配向膜を下記表(表3)に示す。
表3:使用した配向膜の要約
【表7】

【0086】
5つの異なる配向膜を有する試験セルの3種類の混合物の特性を以下の表(表4)に示す。与えらた値すべては全応用例におけるように、特に述べられていない限り少なくとも2つの個々の測定値の平均値である。
表4:異なる配向膜を有するPCN−3N.F.OHを含有する混合物Aの物性
【表8】

【0087】
例5(使用実施例3)
液晶混合物B−0を作成し、4つの部分に分割した。実施例1の化合物PCH−3N.F.OHを3分割分に100ppm、1000ppm及び10、000ppmの濃度で加えた。
異なる濃度B−100、B−1000及びB−10,000の、その結果得られた3種類の混合物及びPCH−3N.F.OHを含有しない源混合物B−0をそれらの物理的特性に関して、特にそれらの比抵抗に関して調べた。その結果を下記表(表6)に示す。
液晶混合物B−0は下記表(表5)に示した組成及び物性を有する。
【0088】
表5:混合物B−0
組成
【表9】


物性
T(N,I)=72℃
Δn(589nm)=0.075
Δε(1kHz)=10.2
V0(フレデリック No.)=1.0V
【0089】
混合物B−0からB−10,000迄の比抵抗値を下記表(表6)に示す。
表6:PCN−3N.F.OHを含有する混合物Bの比抵抗
【表10】

【0090】
例6(使用実施例4)
例5におけるように、化合物PCH−3N.F.OHを使用したが、ここでは液晶混合物C−0から開始した。混合物の組成及び物性を下記表(表7)に示す。
表7:混合物C−0
組成
【表11】


物性
T(N,I)=67.5℃
Δn(589nm)=0.085
Δε(1kHz)=7.5
回転粘度=74mPa・s
V0(フレデリック No.)=1.2V
【0091】
混合物の比抵抗値を下記表(表8)に示す。
表8:混合物Cの比抵抗
【表12】

【0092】
例7(使用実施例5)
例5で使用された液晶混合物B−0を化合物
【化40】


(略称BF9−OH)と混合した。この物質の融点(結晶相からアイソトロピック相への転移)は120℃である。10、100又は1000ppmの物質BF9−OHをスタート混合物B−0の3つのサンプルに加え、その結果得られたBB−10、BB−100及びBB−1000の比抵抗をスタート混合物B−0の比抵抗と比較した。20℃での試験セルの比抵抗値に加えて、120℃で1時間加熱後の20℃での試験セルの比抵抗値の測定した。
【0093】
表9:BF9−OHを含有する混合物Bの比抵抗
【表13】

【0094】
例8(使用実施例6)
例5におけるように、PCH−3N.F.OHを使用した。これを液晶混合物D−0において調べ、その組成及び特性を下記表10に示す。
表10:混合物D−0の組成
組成
【表14】


物性
T(N,I)=70.0℃
Δn(589nm)=0.0.076
Δε(1kHz)=10.1
【0095】
例7におけるように、混合物の比抵抗値を試験セルで測定した。その結果を下記表11に示す。
表11:試験セルにPCH−3N.F.OHを含有する混合物Dの比抵抗
【表15】

【0096】
例9(使用実施例7)
例8におけるように、液晶混合物Dを使用したが、ここではBF9−OHを、例2におけるように加えた。試験セルにおける比抵抗の結果を下記表12に示す。
表12:BF9−OHを含有する混合物Dの比抵抗
【表16】

【0097】
例10(使用実施例8)
例8におけるように、液晶混合物D−0を使用したが、例2c(物質実施例5)の化合物番号11
【化41】


CCP−3−CN.OH.F.F.Fと略称、をここでは使用した。試験セルにおける比抵抗値の結果を下記表13に示す。
【0098】
表13:CCU−3−CN.OH−Fを含有する混合物Dの比抵抗
【表17】


化合物CCU−3−CN.OH−Gの酸度は使用される値の範囲で明らかであり、いくつかの応用に十分である。
【0099】
比較例1
それぞれの場合で、各種源状態及び前処理の4−シクロ−4’−ハイドロオキシビフェニルの1000ppm、
【化42】


、OCBと略称、を実施例3の液晶混合物A−0に加えた。対応する混合物を分割し、それぞれの場合において、一部を実施例4で説明したように濾過しかつある場合では、繰返し濾過した。下記表(表14)は抵抗測定の結果を示す。
【0100】
表14:OCBを含有する混合物Aの抵抗
【表18】

【0101】
表14に見られるように、化合物OCBは液晶混合物の抵抗を低減するのに適当であるが、しかしながら、結果には再現性がない。まず、結果はOCBの源状態及び前プロセス(例えば、精製方法)に依存し、次に、混合物が標準作業,例えば濾過、処理を受けると、結果は著しく変化する。
【0102】
比較例2
2,6−ビス−第3−ブチル−4−(4−n−プロピルトランス−シクロヘキシル)フェノール
【化43】


、TBCPと略称、の種々の量を液晶混合物E−0に加えた。
混合物E−0は下記(表15)に示した組成を有し、かつそこに記載されている特性を有する。
【0103】
表15:混合物E−0
組成
【表19】


物性
T(N,5)=92℃
Δn(589nm)=0.097
Δε(1kHz)=5.2
V10=2.0V
【0104】
各種濃度を有する混合物に対して、電圧保持率が例4におけるように測定された。配向膜はここではPI−1(日本合成ゴムの1051)であった。結果を下記表(表16)に示す。
表16:TBCPを含有する混合物Eの電圧保持率
【表20】


表11の結果に見られるように、化合物TBCPは液晶混合物の比抵抗又は電圧保持率を低減させるのに適当ではない。これは多分その低いpka値、即ち、その低い酸性度による。
【0105】
比較例3
下記表(表17)に示した比抵抗値を与える化合物4−シアノ−3−フルオロフェノール
【化44】


、CFPと略称、の種々の量を例3の液晶混合物Aに溶解させ、
【0106】
表17:CFPを含有する混合物Aの比抵抗
【表21】


表12の結果から見られるように、比較的高いpka値を有する化合物CFPは液晶混合物の比抵抗を低減させるのに使用される。その後、電圧保持比をPI−1を含有する液晶セルで測定した。結果を表18に示す。
【0107】
表18:CFPを含有する混合物Aの電圧保持率
【表22】


特に、低CFP濃度で少しでもあるとしても精々小さな効果であるということが解る。さらに、種々の時間を置いて,窒素ガス中で容器を開放した状態で種々の時間を置いて、かつ真空セル充填装置で種々の時間を置いてサンプルを調べた。CFPを含有する混合物の抵抗値は特に窒素中で容器を開放した状態で増大し、特に真空セル充填装置で増大しかつ電圧保持率も同様に増大するということが解った。この挙動は多分化合物CFPの高蒸気圧によるものである。これはセルを実用的には不適当にし、表12に示すように、ある場合には、液晶混合物の抵抗について望ましい効果を持たせる。
【0108】
比較例4
比較例3と同様に化合物4−エトキシ−3−シアノ−2−フルオロフェノール、
【化45】


、ECFPと略称、を液晶混合物A−0で調べた。非常に類似した結果が得られた。CFPと同様に,ECFPでも比抵抗の著しい低下を生じ,これは明らかに使用した濃度に依存している。効果はCFPの場合におけるよりもECFPの場合の方が幾分大きい。しかしながら、過剰蒸気圧の問題もECFPでは生ずるが、CFPの場合より幾分その程度は小さい。従って、CFPと同様にECFPは実用的応用には特別には適当ではない。
【0109】
比較例5
例1における化合物PCH−3N.F.OHと同様の方法で作成した化合物2−シアノ−4−(4−n−プロピル−トランス−シクロヘキシル)フェノール、
【化46】


PCH−3N.OHと略称、の融点は145.4℃である。
例1におけるように、PCH−3N.OHの比抵抗を混合物A−0で測定した。結果を下記表19に示す。
【0110】
表19:PCH−3N.OHを含有する混合物Aの比抵抗
【表23】


例3(表2、混合物A−1000)と比較して、PCH−3N.F.OHの1000ppmは混合物A−0の比抵抗を1.9・1013Ωcmから1.0・1012Ωcmへ低下させるのみであるのに対して、同一濃度の例1の化合物PCH−3N.OHは1.0・1011Ωcmまで低下させることが解る。PCH−3N.F.OHと比較してより低い酸度のため、従ってPCH−3N.OHは混合物A−0などの液晶混合物の比抵抗の調整には適当でない。
【0111】
比較例6
例8におけるように、化合物D−0を使用した。しかしながら、今回は
【化47】


、CCP−3OH−F.F.Fと略称、を使用した。試験化合物での比抵抗値の結果を下記表20に示す。
【0112】
表20:CCP−3OH−F.F.Fを含有する混合物Dの抵抗
【表24】


結果から見られるように、化合物CCP−3OH−F.F.Fは抵抗値の調整には適当ではない。これはその不適当なpka値によるものであると見られる。
【0113】
比較例7
例8におけるように、化合物D−0を使用した。しかしながら、今回は
【化48】


、LUU−3−OHと略称、を使用した。結果を下記表21に示す。
【0114】
表21:LUU−3−OHを含有する混合物Dの抵抗
【表25】


比較例6のドーパントCCP−3OH−F.F.Fのように、LUU−3−OHも抵抗値の調整には適当ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10ppmから10%の濃度の酸性化合物を含むことを特徴とする、特定の比抵抗を有する液晶混合物。
【請求項2】
酸性化合物が、フェノールであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶混合物。
【請求項3】
酸性化合物が、式Iのフェノール;
【化1】


式中、
及びAは互いに独立して、かつAが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ
a)1,4−シクロヘキシレン又はトランス−1,4シクロヘキセニレンであり、式においてさらに、1個又は多数の非−隣接CH基がO及び/又はSで交換でき、
b)1,4−フェニレン、その中でさらに、1個又は2個のCH基がNで交換でき、
c)1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン−1,4−ジイル,ナフタレン−2,6−ジイル、デカハイドロナフタレン−3,6−ジイル、又は1,2,3,4−テトラハイドロナフタレン−2,6−ジイルであり、この一般式において(a)及び(b)はF原子による一置換体又は二置換体であることができ;
及びZは、互いに独立して、かつZが多数回生ずる場合にも互いに独立して、それぞれ-CO-O-、-O-CO-、-COCH2-、-CH2-CO-、-CH2O-、-OCH2-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-であるか又は単結合であり、
又はZ及びZ基の1つは、
-(CH2)4-、-(CH2)3CO-、-(CH2)2-O-CO-、-(CH2)2-(CO-O)-、CH=CH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH=CH-又は-CH2-CH=CH-CH2-であり、
RはH、それぞれ1又は2から15の炭素原子を有するアルキル又はアルケニルであり、それらは未置換であるか、CN又はCFにより一置換されているか、又は
ハロゲン、特にF又はClで一置換されるか又は多置換され、さらにこれらの基の1個又は多数のCH基が互いに独立して、
-O-、-S-、
【化2】

、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により2つのO原子が直接互いに結合されない条件で交換でき、Rは又、CN、F、Cl又はCOOR’、適当であればOHであり、
R’はH又はRであり、(ここでCN、F、OH又はCOOR’は除かれる)
nは0、1又は2であり、
mは0又は1であり、
oは1、2又は3であり、
n+m+oは2、3又は4であり;
X及びYはそれぞれ互いに独立して、又X及び/又はYが多数回存在する場合には、それぞれ互いに独立して、F、Cl、COOR’、NO、又はCNであり、ここで、XはFであることが好ましくかつYはCNであることが好ましく;
、p、q及びqはそれぞれ0、1、2、3又は4であり、
oが1、qが0の場合、pは3又は4であり、
oが1、qが1、2又は3の場合、p+qは1、2、3又は4、
好ましくはqは1でpは1又は2であり、
oが2又は3の場合、p+p2++qは1、2、3、4、5、6、7又は8であり、
+qが1又は2の場合、p+pは1、2、3又は4、好ましくは、
+qが1で、p+pが1又は2であり、
+qが0の場合、p+pは3、4、5、6、7又は8、好ましくは、6、7又は8である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の液晶混合物。
【請求項4】
液晶表示体における請求項1に記載の液晶混合物の使用。
【請求項5】
請求項1に記載の液晶混合物を含有する液晶表示体。
【請求項6】
液晶表示体が、STN、AMD、TN又はIPS表示体であることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示体。
【請求項7】
酸性化合物が液晶混合物に加えられることを特徴とする液晶混合物の比抵抗の調整方法。
【請求項8】
酸性化合物が、適当な低蒸気圧かつ適当な高酸度(pk)のメソゲン形成性化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸性化合物が、請求項3に記載の式Iの化合物であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
下記式の化合物;
【化3】


を除く、請求項3に記載の式Iの化合物。
【請求項11】
フェノール系OH基が、例えば、ハロゲンなどの置換基の求核性置換により導入されることを特徴とする、請求項10に記載の式Iの化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−59430(P2010−59430A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248230(P2009−248230)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【分割の表示】特願平11−27065の分割
【原出願日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】