説明

液晶表示装置、液晶表示装置の制御方法、液晶表示装置の制御プログラム

【課題】 フリッカを抑制する液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明の液晶表示装置は、光源からの光を変調する光変調素子と、前記光変調素子からの光を検出する光検出手段と、前記光変調素子に印加する電圧値を設定する制御手段を有する液晶表示装置であって、フリッカを低減するために、前記光変調素子に印加する電圧値を調整する調整モードにおいて、前記制御手段は、前記光検出手段の検出結果の振幅が小さくなるように調整した第1の電圧値を設定し、前記光変調素子に対して電圧が印加されない期間の後に、前記光変調素子に対して電圧を印加するときは、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。特に液晶表示素子の駆動に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧の印加による液晶表示素子のイオン性物質の偏りを低減し、所望の強度の電圧を液晶層に与えるために、共通電極電圧値に対して同じ大きさの正の電圧値と負の電圧値を液晶層に印加する液晶表示素子の駆動方法(反転ドライブ方法)が知られている。この駆動を行う際に、液晶表示素子の絶縁体の非導電性膜(液晶配向膜、反射増強膜、金属溶出防止用の無機パッシベーション膜等)において、電子やホールの電荷そのものがトラッピングされることがある。電子やホールがトラップされてしまうと、膜の界面がチャージアップを引き起こし、このチャージアップによって液晶層へ印加した電圧値と実際に液晶表示素子に印加される電圧値(実効電圧値)が変化してしまうことがある。
【0003】
チャージアップが発生すると、正の電圧値を印加したときの画像の明るさと、負の電圧値を印加したときの画像の明るさとが互いに異なってしまい、フリッカが発生する。フリッカは、一般的な120Hzで反転する配列画素全てに印加する電圧の正負極性を特定の周波数で反転するフィールド反転ドライブ方法では、正の電位差の絶対値と負の電位差の絶対値との差が200mV以上になると人の目で視認できると言われている。
【0004】
特許文献1には、このフリッカを低減するために、輝度センサを配置し、液晶表示素子の変調光の輝度を検出させる。そして、共通電極電圧値を変化させて、同一の画像信号に基づく画像を表示させた際の輝度の最大値と最小値の差をフリッカ値として求め、その差が最小になる電圧値を設定するプロジェクタが開示されている。
【0005】
特許文献2には、画像光の輝度を波長域毎に検出する複数の輝度センサ部を配置し、輝度センサの出力に基づいて、フリッカが最小となるように、共通電極電圧値の大きさを調整する液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−221569号公報
【特許文献2】特開2008−026613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液晶表示素子の駆動中にイオン性物質の偏在による電荷の偏在があっても、液晶表示素子を駆動せずに放置することでイオン拡散効果により電荷の偏在が解消されていく。また、膜の界面でのチャージアップがあっても、液晶表示素子を駆動せずに放置することで膜の界面にトラップされている電荷が除去され、電荷の偏在が解消されていく。つまり、液晶表示素子を駆動せずに放置する間、フリッカを低減するために最適な実効電圧値は、最後に液晶表示素子を駆動していた際にフリッカが最小となるように調整した実効電圧値から初期設定値に近づくように変化してしまう。
【0008】
特許文献1、2に開示されている技術では、液晶プロジェクタの電源をオフして所定時間後に再度使用を開始するなど、調整後に放置された場合の実効電圧値の変化を考慮していない。よって、再起動時に前回の調整時に設定した電圧値で駆動すると、フリッカがより目立ってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の液晶表示装置は、
光源からの光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子からの光を検出する光検出手段と、
前記光変調素子に印加する電圧値を設定する制御手段を有する液晶表示装置であって、
フリッカを低減するために、前記光変調素子に印加する電圧値を調整する調整モードにおいて、前記制御手段は、前記光検出手段の検出結果の振幅が小さくなるように調整した第1の電圧値を設定し、
前記光変調素子に対して電圧が印加されない期間の後に、前記光変調素子に対して電圧を印加するときは、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、液晶表示装置の電圧値を適当に設定することにより、電圧が印加されない期間の後に、電圧が印加された場合においても、フリッカを抑制することが可能な液晶表示装置を提供することできる点にある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1の液晶表示装置の概略構成図
【図2】液晶表示素子の概略構成図
【図3】実施形態1の主な構成を示すブロック図
【図4】実施形態1のフローチャート
【図5】液晶表示素子の変調光の光応答波形を示す図
【図6】液晶表示素子に印加する共通電極電圧値とフリッカ量の相関図
【図7】実施形態2の主な構成を示すブロック図
【図8】実施形態2のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の液晶プロジェクタ等の液晶表示装置の構成図である。ランプ10を出射した光は、シリンダレンズアレイ21により複数の光束に分割され、シリンダレンズアレイ22の近傍に光源像を形成する。紫外線吸収フィルタ23は、紫外線を吸収する。シリンダレンズアレイ22を通過した分割光束は、偏光変換素子24に入射する。偏光変換素子24により、入射した非偏光光は所定の偏光方向を有する偏光光に変換される。フロントコンプレッサ25は、水平方向(図の紙面に沿う方向)において屈折力を有するシリンドリカルレンズで構成されている。よって、偏光変換素子24を出射した偏光光は、フロントコンプレッサ25により集光されつつ、全反射ミラーに26によりその光路を折り曲げられ、リアコンプレッサ28により再び略平行な光束となる。
【0013】
コンデンサーレンズ27は、シリンダレンズアレイ21により分割された分割光束を液晶表示素子50R、50G、50B(光変調素子)に重ね合わせることにより、液晶表示素子50R、50G、50Bを均一に照明する。
【0014】
ダイクロイックミラー31は、青と赤の波長領域の光(以降、B光、R光とする)を反射し、緑の波長領域の光(以降、G光とする)を透過する。ダイクロイックミラー31により反射されたB光とR光のうち、S偏光光のみが偏光板32bを透過する。偏光板32bを透過したB光、R光のうち、色選択性位相差板36aにより、B光のみ、その偏光方向が90度回転され、P偏光光となったB光は偏光ビームスプリッタ33bを透過し、1/4波長板35Bを介して、液晶表示素子50Bに入射する。
【0015】
一方、色選択性位相差板36aを通過したS偏光光のR光は、偏光ビームスプリッタ33bにより反射され、液晶表示素子50Rに入射する。
【0016】
液晶表示素子50Bにより変調されてS偏光光となったBの画像光は、偏光ビームスプリッタ33bにより反射される。一方、液晶表示素子50Bにより変調されなかったP偏光光は、偏光ビームスプリッタ33bを透過して、光源側に戻る。液晶表示素子50Rにより変調されたP偏光光となったRの画像光は、偏光ビームスプリッタ33bを透過する。一方、液晶表示素子50Rにより変調されなかったS偏光光は、偏光ビームスプリッタ33bにより反射され、光源側に戻る。
【0017】
そして、B、Rの画像光は、偏光ビームスプリッタ33bにより合成された光は、偏光ビームスプリッタ33c側へと射出される。その射出光のうちR光は、R光に対してのみ作用し、その偏光方向を90度回転させる色選択性位相差板36bにより、S偏光光へと変換される。そして、B光はその偏光方向を変えずに偏光板32cに入射する。偏光板32cはS偏光光のみを透過する偏光板であり、B光、R光のS偏光光は偏光板32cを透過し、偏光ビームスプリッタ33cへ入射する。
【0018】
ダイクロイックミラー31を透過したG光は、S偏光光のみを透過する偏光板32aを介して、偏光ビームスプリッタ33aに入射する。S偏光光であるG光は、偏光ビームスプリッタ33aにより反射され、液晶表示素子50Gに入射する。液晶表示素子50Gにより変調されP偏光光となったGの画像光は、偏光ビームスプリッタ33aを透過して、偏光ビームスプリッタ33cに入射する。偏光ビームスプリッタ33cに入射したR光、B光、G光は偏光ビームスプリッタ33cにより合成され、投射光学系40へと導かれる。
【0019】
投射光学系40は、鏡筒40aと不図示の光学素子を有し、偏光ビームスプリッタ33cにより合成された合成光をスクリーン200に投射する。
【0020】
以降、図1で示した液晶表示素子50R、50G、50Bを代表して液晶表示素子50とし、液晶表示素子50について図2を用いて説明する。図2は液晶表示素子50の断面図である。液晶表示素子50は、対向基板51と、液晶材料(液晶層)55と、駆動基板56とから構成される。対向基板51は、ガラス基板52、共通電極53(透明電極)、配向膜54を有する。駆動基板56は、配向膜57と、画素電極58と、Si基板59を有する。以下、液晶表示素子50の共通電極53あるいは画素電極58に印加する電圧値(共通電極電圧値)を、液晶表示素子に印加する電圧値とする。共通電極電圧値を基準として、正の電圧と負の電圧が印加されることにより、液晶表示素子50は駆動される。
【0021】
図3は本発明の主要部の関係を示すブロック図である。図1で示した制御部76(制御手段)は駆動手段70と表示画像調整手段72を含む。駆動手段70は、不図示の入力機器、例えばパーソナルコンピュータ等により画像が入力されると、その入力画像を形成するように液晶表示素子50を駆動する。駆動手段70は、入力機器からの画像の入力信号(Vsig)を液晶表示素子50に最適な駆動信号(LCsig)に変換する。その駆動信号で液晶表示素子50を駆動して、画像を表示する。駆動信号(LCsig)には、液晶表示素子50の画素電極58に印加する電圧値と、共通電極53に印加する共通電極電圧値等が含まれる。
【0022】
表示画像検出手段80(光検出手段)は、液晶表示素子50が変調した光を検出するための光センサと、光センサの出力からノイズ成分を除去するためのフィルタと、フィルタを通過した出力をデジタル値に変換するAD変換器を有する。表示画像検出手段80は、液晶表示素子50の変調光の出力波形を記憶部60に記憶させる。
【0023】
図1に示すように、表示画像検出手段80を偏光ビームスプリッタ33cと筐体1aとの間に配置することによって、投射画像を遮ることなく、液晶表示素子50により変調された光を検出することができる。
【0024】
記憶部60には、光応答波形のデータや、液晶表示素子の初期設定値(基準電圧値)に関するデータ、液晶表示素子を駆動するために必要なデータ、フリッカ量等が記憶される。初期設定値(基準電圧値)とは液晶表示素子にイオン性物質の偏在がない場合において設定される電圧値であり、具体的には工場出荷時に設定された値である。
【0025】
表示画像調整手段72は、フリッカを調整するためのテストパターンを表示するように、駆動手段70に命令を出す。
【0026】
次に、図4に記載のフローチャートに沿って、図3の各ブロックの動作等について説明する。
【0027】
Step1において、ユーザーによる調整モードの開始指示を受けた液晶表示装置は本フローを開始する。
【0028】
Step2において、液晶表示装置は記憶部60に記憶されている共通電極電圧値の初期設定値Vsを読み込む。
【0029】
Step3において、表示画像調整手段72は、Step2において読み込まれた初期設定値Vsを共通電極電圧値として設定する。そして、表示画像調整手段72は、駆動手段70に対して、フリッカを調整するためのテストパターン(検出画像)を表示するように、命令を出す。駆動手段70は、その命令に従って、液晶表示素子50に駆動信号を送る。フリッカ調整用のテストパターンとしては、最もフリッカを検出しやすい画像を表示することが好ましい。例えば、画面全体において明るさが50%付近(グレー階調)の画像である。
【0030】
テストパターンを表示させたときに、表示画像検出手段80により検出された出力波形の検出結果の一例を図5に示す。共通電極電圧値を変化させると、この出力波形の振幅が変わる。実施形態では、この出力波形の振幅をフリッカ量LVflkとする。
【0031】
Step4において、表示画像検出手段80は、液晶表示素子50の変調光の出力波形を検出する。その検出結果から液晶表示装置はフリッカ量を算出し、フリッカ量と駆動条件(共通電極電圧値)を記憶部60に記憶させる。
【0032】
Step5、Step52において、表示画像検出手段80が検出するフリッカ量が略最小となるまで、共通電極電圧値(Vcom)を変更する。そして、表示画像調整手段72は、図6に示すように共通電極電圧値を変更した時のフリッカ量を記憶させる。
【0033】
Step5において、フリッカ量が記憶部60の中で最小と判定された場合、step6において、フリッカ量が最小となる共通電極電圧値(第1の電圧値)を設定する(第1の設定ステップ)。
【0034】
Step7において、液晶表示装置は、記憶部60に記憶済みのフリッカ量が最小となる共通電極電圧値(Vmin)と初期設定値Vsの平均値(Vmin+Vs)/2を算出する。
【0035】
Step8において、表示画像調整手段72は、Step7で算出された平均値を記憶部60に記憶させ、フリッカ調整モードは終了する。
【0036】
そして、電源がオフにされ、所定期間の後に、液晶表示素子50に電圧が印加されたときに、Step8において、記憶部60に記憶された平均値を共通電極電圧値(第2の電圧値)として設定する(第2の設定ステップ)。
【0037】
課題の欄で述べたように、液晶表示装置の電源がオフされたあと、フリッカを低減するために液晶表示素子の共通電極あるいは画素電極に印加すべき最適な電圧値は、電荷の偏りの解消により、工場出荷時の初期設定値Vsに近づいていく。したがって、液晶表示装置の電源がオフされ、しばらく放置されたあと再び起動された際に、液晶表示素子50に印加すべき電圧値として、表示画像調整手段72は、Step5において設定された電圧値(Vmin)よりも低い電圧値を設定すれば良い。つまり、液晶表示素子に対して電圧が印加されない期間の後に、液晶表示素子に対して電圧を印加するときは、第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定すれば良い。
【0038】
上記のフローチャートを実行することにより、画像表示装置の起動を停止し、しばらく放置した後に電源のオンが指示された場合に、特にフリッカの発生を抑える効果を得ることができる。理由は、最適な電圧値が初期設定値に近づくように変化しているにもかかわらず、変化前に最適であった電圧値によって液晶表示素子が駆動されてしまうことがなくなるからである。
【0039】
なお、実施形態1では、フリッカ調整モードにおいて、次回起動時に液晶表示素子に印加される電圧値(Vmin+Vs/2)を記憶部60に記憶させ、次回起動のときに、平均値を共通電極電圧値として設定させたが、これに限られない。例えば、液晶表示装置の電源がオフされる指示を受けたときに、液晶表示素子50に印加すべき電圧値として平均値を設定してもよい。これにより、次回起動時には、電圧値の設定処理を行わずとも良いので、液晶表示装置50を起動させる際の処理速度を向上させることができる。
【0040】
また、Step4におけるフリッカ量の求め方としては、光センサの出力に基づいて、液晶表示素子50の駆動周波数成分をフーリエ変換にて抽出し、その周波数成分の強度をフリッカ量としてもよい。
【0041】
また、Step4、Step5において、出力波形の振幅が最小となる電圧値を共通電極電圧値として設定したがこれに限られない。例えば、互いに異なる共通電極電圧値と、その時のフリッカ量を用いて近似曲線式をフィッティングさせることで、フリッカ量が小さくなる共通電極電圧値を求めても良い。つまり、設定される共通電極電圧値はフリッカ量が最小となる電圧値が設定されることが好ましいが、必ずしも最小である必要はなく、フリッカが低減されるような電圧値が設定されればよい。
【0042】
また、Step7において、フリッカが最小となる共通電極電圧値(Vmin)と初期設定値Vsの平均値を算出しているが、これに限定されず、例えば調整で得られた値をVmin、初期設定値をVsとしたときに(2Vmin+Vs)/3等としてもよい。
【0043】
(実施形態2)
実施形態1では、記憶部60が記憶している初期設定値Vsとフリッカが最小となる共通電極電圧値(Vmin)から、液晶表示素子50の駆動信号の設定値を決める形態について説明した。実施形態2では初期設定値Vsと共通電極電圧値(Vmin)以外に、時間を計測するタイマー部を持つ形態について説明する。実施形態1と異なる点は、タイマー部を有する点と、電源オン時に最適な共通電極電圧値を設定する点である。
【0044】
図7に実施形態2の主な構成のブロック図を示す。タイマー部74は、液晶表示素子50の電源がオフされてからの経過時間を計測し、記憶部60に記憶する。そして、次回電源がオンされた時の共通電極電圧値を設定するために、経過時間は利用される。
【0045】
図8のフローチャートを参照しながら、図7の各ブロックの動作について説明する。Step1からStep7までは実施形態1と同じである。Step7のあとに液晶表示装置の電源オフの指示を受けると、タイマー部74は、電源がオフされてからの経過時間のカウントを開始する。そして、液晶表示素子50の電源がオンされるまで、経過時間のカウントを継続する。
【0046】
Step8において、電源オフ後に、次回電源オン時までの時間Tiをタイマー部74から記憶部60に経過時間(Ti)を記憶させる。
【0047】
Step9において、液晶表示装置は、電願オン時に記憶部60に記憶されている初期設定値Vs、共通電極電圧値Vmin(第1の電圧値)、経過時間Tiを用いて、設定すべき共通電極電圧値Vnewを算出する。
【0048】
Step10において、表示画像調整手段72は、駆動手段70が液晶表示素子50に共通電極電圧値Vnew(第2の電圧値)を印加するように設定する(第2の設定ステップ)。
【0049】
共通電極電圧値Vnewは、以下のステップにより算出される。最適な共通電極電圧値は、液晶表示素子の電源がオフ状態では、時間と共に初期設定値Vsに近付くことが本発明者により見出されている。従って、最適な共通電極電圧値は、フリッカが最小となるように調整された共通電極電圧値Vminから初期設定値Vsへと減少する関数であればよい。また、共通電極電圧値Vminはおよそ500時間程度で初期設定値Vsに戻り、安定することも、本発明者により見出されている。
【0050】
以上から、再び電源がオンされる際の共通電極電圧値Vnewを実施形態2では以下の式を用いて算出する。
【0051】
【数1】

【0052】
つまり、経過時間Tiは境界条件であり、Tiが500時間未満の場合は、初期設定値Vsと共通電極電圧値Vminと経過時間Tiとの関数により求められる値を共通電極電圧値として設定する。一方、500時間以上、電源がオフされた状態であった場合は、初期設定値Vsが共通電極電圧値として設定される。
【0053】
以上より、使用状況に適応した共通電極電圧値を設定することが可能となり、長時間電源がオフされていたことにより、最適な共通電極電圧値が変化してしまった場合において、次回起動時に最適な共通電極電圧値が印加されるので、フリッカが抑えられる。
【0054】
なお、使用する関数や安定化までの時間については上記に限定されることなく、2次関数で減少するようにしてもよい。また、初期設定値に収束する時間を100時間から1000時間程度の中で任意に設定してもよい。
【0055】
また、タイマー部74は液晶表示素子50がオフされてからの経過時間を計測しても良い。あるいは、液晶プロジェクタの電源がオフされてからの経過時間を計測しても良い。
【0056】
なお、実施形態2においてタイマー部は経過時間そのものを記憶部60に記憶させても良いし、カウント値を記憶させてもよい。
【0057】
また、実施形態1、実施形態2の各フローの主体は、図1の制御部76としたが、それぞれのステップを別々に構成された制御部76が実行しても良い。実施形態1及び2を制御プログラムで実施する場合は、制御部あるいは液晶表示装置に実施形態1及び2のフローを実行させれば良い。
【0058】
なお、実施形態1及び2において、フリッカを低減するように共通電極電圧値を変化させることが一般的であるが、画素電極58に印加する電圧値を変化させても良い。
【0059】
また、ユーザーの調整モード開始の指示を受けたら、「調整開始」と文字を投射画像に表示してユーザーに調整モードに入ることを認識させてもよい。また、フリッカを低減させるための共通電極電圧値の設定が終了した時点で「調整終了」と表示することで調整モード終了を知らせてもよい。あるいは、調整の開始と終了を共に知らせてもよい。
【0060】
また、調整モードの開始の指示が出た後に、投射画像を遮るシャッターを閉じて調整し、終了後にシャッターを開く等して、調整中の画像が外部に投影されないようにしてもよい。
【0061】
また、調整モードの開始の指示は、ユーザーからの操作部を介した指示であったがこれに限られず、特定の手続きが終了したら調整モードを開始してもよい。
【0062】
また、表示画像検出手段80を配置する場所は、偏光ビームスプリッタ33cの横に限らず、液晶表示素子50の変調後の光を検出できる箇所であればよい。例えば、投射光学系40の内部に設置しても良いし、不要光を遮光するためのマスクがある場合はそのマスク等に取り付けても良い。また、液晶表示装置の投射画像を遮るシャッターや、投射光学系40のカバーに設置しても良い。
【0063】
また、液晶表示装置の電源オンから電源オフまでの時間が短い場合には、本発明の表示画像調整を行わないようにしてもよい。液晶表示素子50の電気光学特性が安定するまでには時間がかかることが知られているので、電気光学特性が安定した後に、表示画像調整を行えば、適切に調整を行うことができる。
【0064】
また、本発明の液晶表示装置は、投射光学系を構成要素として有さない液晶表示装置本体も含む。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で様々な変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
50 液晶表示素子
60 記憶部
70 駆動手段
72 表示画像調整手段
80 表示画像検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子からの光を検出する光検出手段と、
前記光変調素子に印加する電圧値を設定する制御手段を有する液晶表示装置であって、
フリッカを低減するために、前記光変調素子に印加する電圧値を調整する調整モードにおいて、前記制御手段は、前記光検出手段の検出結果の振幅が小さくなるように調整した第1の電圧値を設定し、
前記光変調素子に対して電圧が印加されない期間の後に、前記光変調素子に対して電圧を印加するときは、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の電圧値は、電荷の偏りがない状態において液晶表示素子に設定された基準電圧値よりも高い電圧値であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2の電圧値は、前記第1の電圧値と前記基準電圧値との平均値であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示装置の電源がオフされてから、オンされるまでの時間を計測するタイマーを有し、
前記第2の電圧値は、前記タイマーにより計測された時間と前記第1の電圧値と前記基準電圧値とに基づく値であることを特徴とする請求項2または3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2の電圧値は、前記タイマーにより計測された時間の関数を用いた値であることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
光源からの光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子からの光を検出する光検出手段と、
前記光変調素子に印加する電圧値を設定する制御手段を有する液晶表示装置に以下のステップを実行させる制御プログラムであって、
フリッカを低減するために、前記光変調素子に印加する電圧値を調整する調整モードにおいて、前記制御手段は、前記光検出手段の検出結果の振幅が小さくなるように、前記光変調素子に印加する電圧値を調整し、調整された第1の電圧値を設定する第1の設定ステップと、
前記光変調素子に対して電圧が印加されない期間の後に、前記光変調素子に対して電圧を印加するときは、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定する第2の設定ステップを有することを特徴とする制御プログラム。
【請求項7】
光源からの光を変調する光変調素子と、
前記光変調素子からの光を検出する光検出手段と、
前記光変調素子に印加する電圧値を設定する制御手段を有する液晶表示装置の制御方法であって、
フリッカを低減するために、前記光変調素子に印加する電圧値を調整する調整モードにおいて、前記制御手段は、前記光検出手段の検出結果の振幅が小さくなるように、前記光変調素子に印加する電圧値を調整し、調整された第1の電圧値を設定し、
前記光変調素子に対して電圧が印加されない期間の後に、前記光変調素子に対して電圧を印加するときは、前記第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を設定することを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−203126(P2012−203126A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66378(P2011−66378)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】