説明

液晶表示装置の動作方法

【課題】PINダイオードの特性とデータ保持用のTFTの特性とを両立させることが可能な液晶表示装置の動作方法を提供する。
【解決手段】液晶表示装置1の動作方法は、PINダイオード4の真性半導体層が、遮光膜10にHIGH電圧が印加されているときにイントリンシックになるように、所定の濃度の不純物がチャネルドープされており、薄膜トランジスタ6に印加する電圧と同じ極性の電圧を、薄膜トランジスタ6と同じタイミングにおいて遮光膜10に印加するように電圧を切り替える電圧切り替え工程を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PINダイオードとデータ保持用の薄膜トランジスタとを備えている液晶表示装置の動作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型、軽量、および低消費電流等の特徴を有しているため、近年、広く普及している。例えば、PIN(P−intrinsic−N)ダイオードとLDD(Lightly Doped Drain)構造の薄膜トランジスタすなわちTFT(thin film transistor)とを備えた液晶表示装置は広く利用されている。
【0003】
このような液晶表示装置において、PINダイオードに形成された遮光膜とTFTに形成された遮光膜とは同電圧となる。なぜなら、PINダイオードにおいてはバックライトから直接入射する光を遮光するため、またTFTは光が入射することによって光励起しキャリアが発生することを防止するため、すなわちデータ保持期間におけるオフ電流を低減するために遮光膜が必要であり、かつPINダイオードとTFTとを近郊に配置する必要があるからである。このようなPINダイオードとTFTとに形成された遮光膜とが同電圧となる液晶表示装置において、PINダイオードの特性とTFTの特性とを両立させることが課題となっている。
【0004】
特許文献1には、画素電極への電圧印加のON/OFFを切り替えるトランジスタと、画素部内へ入射する光を受光するフォトダイオード等のフォトセンサとを備えた表示装置において、フォトセンサがP型アモルファスシリコン領域とN型アモルファスシリコン領域とを有することにより、フォトセンサの特性のバラツキを抑制する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、受光素子からなる光センサと、画素スイッチング素子としての薄膜トランジスタとを備えた光検出装置において、N型およびP型のうちのいずれか一方の不純物を導入する工程のみを行なうだけで光センサを形成する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、第1および第2の光センサーと、トランジスタとを備えた電気光学装置において、第1の光センサーを覆う第1の電極と、第2の光センサーを覆う第2の電極とに別の電位を印加することによって、光電流を最適化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−128520号公報(公開日:2009年6月11日)
【特許文献2】特開2008−186882号公報(公開日:2008年8月14日)
【特許文献3】特開2008−209555号公報(公開日:2008年9月11日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来技術には次のような問題がある。
【0009】
特許文献1に記載の技術は、フォトセンサの特性のバラツキを抑制することができるが、画素電極への電圧印加のON/OFFを切り替えるトランジスタの特性と両立させることはできない。
【0010】
特許文献2に記載の技術は、N型およびP型のうちのいずれか一方の不純物を導入する工程のみを行なうだけで容易に光センサを形成することはできるが、光センサと画素スイッチング素子としての薄膜トランジスタとにおける特性を向上させることについては記載されていない。
【0011】
特許文献3に記載の技術は、光電流を最適化することはできるが、光センサーと、トランジスタとにおける特性を両立させることはできない。
【0012】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、PINダイオードの特性とTFTの特性とを両立させることが可能な液晶表示装置の動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶表示装置の動作方法は、PINダイオードと、上記PINダイオードに近接して接続され、上記PINダイオードから出力される電気信号をデータとして保持するLDD構造の薄膜トランジスタと、バックライトから上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに入射する光を遮光するように上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに近接して形成された遮光膜とを備えた液晶表示装置の動作方法であって、上記PINダイオードの真性半導体層は、上記遮光膜にHIGH電圧が印加されているときにイントリンシックになるように、所定の濃度の不純物がチャネルドープされており、上記薄膜トランジスタに印加する電圧と同じ極性の電圧を、上記薄膜トランジスタと同じタイミングにおいて上記遮光膜に印加するように電圧を切り替える電圧切り替え工程を含んでいることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、本発明の液晶表示装置の動作方法は、PINダイオードと、上記PINダイオードから出力される電気信号をデータとして保持するLDD構造の薄膜トランジスタと、上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに近接して形成された遮光膜とを備えている液晶表示装置の動作方法であって、LDD構造の薄膜トランジスタに印加する電圧と同じ極性の電圧を、上記薄膜トランジスタと同じタイミングにおいて上記遮光膜に印加するように電圧を切り替える。上記PINダイオードは、上記遮光膜に近接して形成されている。このため、上記PINダイオードと上記遮光膜とには同じ極性の電圧が印加される。また、上記PINダイオードの真性半導体層は、上記遮光膜にHIGH電圧が印加されているときにイントリンシックになるように、所定の濃度の不純物がチャネルドープされている。
【0015】
このため、上記遮光膜すなわち上記PINダイオードにHIGH電圧が印加されているときに、上記PINダイオードの真性半導体層がイントリンシックになる。したがって、上記遮光膜すなわち上記PINダイオードに印加される電圧が0Vに近づいても電流が流れなくなることはない。十分な電流が流れているため、上記PINダイオードのセンサー回路における光に対する出力電圧の線形性に悪影響を与えることがなく、出力電圧範囲が狭くなることがない。すなわち、上記PINダイオードにおける光に対する感度が低下することはない。さらに、上記遮光膜すなわち上記PINダイオードにHIGH電圧が印加されているときは、上記薄膜トランジスタにもHIGH電圧が印加されている。このため、上記薄膜トランジスタのON特性が良くなる。
【0016】
また、上記薄膜トランジスタに印加する電圧と同じ極性の電圧を、上記薄膜トランジスタと同じタイミングにおいて上記遮光膜すなわち上記PINダイオードに印加する。このため、OFFリーク電流を低減するために上記薄膜トランジスタにLOW電圧が印加されているときは、上記PINダイオードにもLOW電圧が印加されている。上記薄膜トランジスタにLOW電圧を印加する際には、上記PINダイオードを充電しないため、上記PINダイオードの真性半導体層がイントリンシックである必要はない。したがって、上記遮光膜すなわち上記PINダイオードに印加する電圧を考慮する必要なく、上記薄膜トランジスタに印加する電圧を調整することによって、OFFリーク電流を低減することができる。
【0017】
以上説明したように、液晶表示装置においては、上記PINダイオードの特性とデータ保持用のTFTの特性とを両立させることができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る液晶表示装置の動作方法における上記電圧切り替え工程は、薄膜トランジスタの容量蓄積期間にはHIGH電圧を印加し、上記薄膜トランジスタのデータ保持期間にはLOW電圧を印加するように電圧を切り替える工程であることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記薄膜トランジスタの容量蓄積期間にHIGH電圧を印加する。したがって、上記薄膜トランジスタの容量蓄積期間に上記薄膜トランジスタのON特性が良くなる。また、上記容量蓄積期間に上記PINダイオードにおける光に対する感度が低下することはない。また、上記薄膜トランジスタのデータ保持期間にLOW電圧を印加する。したがって、上記薄膜トランジスタのデータ保持期間にOFFリーク電流を低減することができるという更なる効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液晶表示装置の動作方法は、以上のように、PINダイオードと、上記PINダイオードに近接して接続され、上記PINダイオードから出力される電気信号をデータとして保持するLDD構造の薄膜トランジスタと、バックライトから上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに入射する光を遮光するように上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに近接して形成された遮光膜とを備えた液晶表示装置の動作方法であって、上記PINダイオードの真性半導体層は、上記遮光膜にHIGH電圧が印加されているときにイントリンシックになるように、所定の濃度の不純物がチャネルドープされており、上記薄膜トランジスタに印加する電圧と同じ極性の電圧を、上記薄膜トランジスタと同じタイミングにおいて上記遮光膜に印加するように電圧を切り替える電圧切り替え工程を含んでいる。したがって、PINダイオードの特性とデータ保持用のTFTの特性とを両立させることができる液晶表示装置の動作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施形態を示すものであり、液晶表示装置の構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施形態を示すものであり、液晶表示装置の動作方法を説明する図である。
【図3】図3は本発明の実施形態を示すものであり、PINダイオードの特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る一実施形態について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
【0023】
(液晶表示装置1の構成)
まず、本実施形態に係る液晶表示装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、液晶表示装置1の一部における回路構成2を示す図である。この図に示すように、液晶表示装置1は、PINダイオード4、LDD構造のデータ保持用のTFT6(薄膜トランジスタ)、蓄積容量8および遮光膜10を備えている。
【0024】
液晶表示装置1は図示しないが受光部(タッチパネル機能)を備えており、受光部における受光素子各々は、PINダイオード4およびデータ保持用のTFT6を備えている。TFT6は、PINダイオード4から出力される電気信号をデータとして保持するLDD構造のTFT6であり、PINダイオード4に近接して接続されている。また、遮光膜10は、バックライトからPINダイオード4およびTFT6に入射する光を遮光するようにPINダイオード4およびTFT6に近接して形成されている。また、蓄積容量8への充電による電位変化を、センサー出力として取り出すことができる。
【0025】
遮光膜10により、PINダイオード4におけるバックライトから直接入射する光が遮光されるとともに、TFT6に光が入射してキャリアが発生することによるOFFリーク電流を防止できる。すなわち、TFT6のデータ保持期間におけるOFF電流を低減することができる。また、PINダイオード4は遮光膜10に近接しているため、遮光膜10に印加する電圧は、PINダイオード4にも印加される。なお、データは矢印Aに示した方向に読み出される。
【0026】
(液晶表示装置1の動作方法)
次に、液晶表示装置1の動作方法について図2を参照して説明する。図2は、TFT6および遮光膜10における電圧の切り替えを説明する図である。
【0027】
まず、電圧の切り替え工程前のPINダイオード4の真性半導体層におけるチャネルドープについて説明する。PINダイオード4の真性半導体層は、遮光膜10の電圧変動により、空乏状態から蓄積状態まで変化する。液晶表示装置1の動作方法においては、容量蓄積期間中にHIGH電圧が遮光膜10に印加されているときに、真性半導体層がイントリンシックになるように、予め規定の濃度の不純物が真性半導体層にチャネルドープされている。
【0028】
図2に示すように、液晶表示装置1の動作方法においては、TFT6の容量蓄積期間にはTFT6にHIGH電圧を印加する。一方、スタート直後、データ保持、およびデータ読み出し期間においてはTFT6にLOW電圧を印加する。そして、液晶表示装置1の動作方法においては、この図に示すように、遮光膜10に印加する電圧を、TFT6における電圧切り替えのタイミングに連動させて切り替える工程を含む。すなわち、TFT6にHIGH電圧を印加するときには遮光膜10にも同じ極性の電圧すなわちHIGH電圧を印加し、また、TFT6にLOW電圧を印加するときには遮光膜10にもLOW電圧を印加する。遮光膜10とPINダイオード4とは近接して形成されているため、PINダイオード4と遮光膜10とには同じ極性の電圧が印加される。
【0029】
容量蓄積期間は、TFT6にHIGH電圧を印加するため、遮光膜10にもHIGH電圧を印加する。上述したように、PINダイオード4の真性半導体層は、遮光膜10にHIGH電圧が印加されるときにイントリンシックになるように不純物がチャネルドープされている。HIGH電圧が印加されることによりLDD部の実効的な抵抗が下がるため、TFT6のON特性がよくなる。また、詳しくは参照する図面を替えて後述するが、真性半導体層がイントリンシックであるため、PINダイオード4における光に対する感度が低下することはない。すなわち、液晶表示装置1は容量蓄積期間において、TFT6のON特性と、PINダイオード4における光に対する感度とを両立させることができる。
【0030】
一方、データ保持期間は、TFT6にLOW電圧を印加する。したがって、遮光膜10にもLOW電圧を印加する。TFT6にLOW電圧を印加するため、LDD部の実効的な抵抗が上がり、Lデータ保持期間におけるTFT6のOFFリーク電流を低減することができる。また、遮光膜10にLOW電圧を印加するため、PINダイオード4の真性半導体層はイントリンシックにならない。しかしながら、データ保持期間にはPINダイオード4を充電しないため、真性半導体層がイントリンシックである必要はない。したがって、TFT6のOFFリーク電流を重視した電圧を遮光膜10に印加することができる。すなわち、液晶表示装置1はデータ保持期間において、TFT6におけるOFFリーク電流の低減を、遮光膜10に印加する電圧を考慮する必要なく実現させることができる。
【0031】
以上説明したように、液晶表示装置1においては、容量蓄積期間とデータ保持期間とにおいて、TFT6の特性と、PINダイオード4の特性とを両立させることができる。
【0032】
次に、上述した、容量蓄積期間にPINダイオード4の真性半導体層がイントリンシックになることにより、PINダイオード4の光に対する感度が低下しないことについて図3を参照して説明する。図3は、PINダイオード4に印加する逆バイアス電圧(Va)と、PINダイオード4に流れる電流との関係を示すグラフである。
【0033】
PINダイオード4をフォトセンサー回路内において使用する場合、初期状態においては、例えば−8Vの電圧を印加する。光電流が流れて容量が蓄積されていくと、PINダイオード4に印加される逆バイアス電圧(Va)は、実質的に0Vに近づいていく。この際に真性半導体層がイントリンシックになっていないと、図3のaに示すようなダイオード特性の場合に、逆バイアス電圧(Va)が0Vに近づくにつれて電流が流れにくくなる。これにより、光に対するセンサー回路の出力電圧の線形性がなくなってしまう。通常は、線形領域をセンサーとして用いるため、出力電圧の線形性が無くなることにより、使用可能な出力電圧範囲が狭くなる。したがって、PINダイオード4の光に対する感度が低下してしまう。液晶表示装置1の動作方法においては、容量蓄積期間にPINダイオード4の真性半導体層がイントリンシックになるため、逆バイアス電圧(Va)が実質的に0Vに近づいても電流が流れにくくなることはない。したがって、光に対する感度が低下することはない。
【0034】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の液晶表示装置の動作方法は、PINダイオードとデータ保持用のTFTとを備えている液晶表示装置一般において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 液晶表示装置
4 PINダイオード
6 データ保持用のTFT(薄膜トランジスタ)
8 蓄積容量
10 遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PINダイオードと、上記PINダイオードに近接して接続され、上記PINダイオードから出力される電気信号をデータとして保持するLDD構造の薄膜トランジスタと、バックライトから上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに入射する光を遮光するように上記PINダイオードおよび上記薄膜トランジスタに近接して形成された遮光膜とを備えた液晶表示装置の動作方法であって、
上記PINダイオードの真性半導体層は、上記遮光膜にHIGH電圧が印加されているときにイントリンシックになるように、所定の濃度の不純物がチャネルドープされており、
上記薄膜トランジスタに印加する電圧と同じ極性の電圧を、上記薄膜トランジスタと同じタイミングにおいて上記遮光膜に印加するように電圧を切り替える電圧切り替え工程を含んでいる液晶表示装置の動作方法。
【請求項2】
上記電圧切り替え工程は、薄膜トランジスタの容量蓄積期間にはHIGH電圧を印加し、上記薄膜トランジスタのデータ保持期間にはLOW電圧を印加するように電圧を切り替える工程であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−76023(P2011−76023A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230222(P2009−230222)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】