説明

液晶表示装置の製造方法

【課題】ガラス基板を化学研磨によって均一に薄型化し、表示面の湾曲が可能な液晶表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1のガラス基板21と第2のガラス基板20との間に液晶を挟持する液晶表示パネルの製造方法であって、前記液晶パネルの少なくとも1辺に、前記液晶を封入する封入孔を有し、前記封入孔から前記液晶を封入する封入工程と、前記封入孔を封止材で封止する封止工程と、第1のガラス基板21と第2のガラス基板20の前記封入孔が形成される側の辺を、前記第1のガラス基板21及び前記第2のガラス基板20の端部から中央部に向かって厚さが増加する形状に加工する面取り22を行う工程と、前記第1のガラス基板21及び前記第2のガラス基板20を化学研磨によってエッチングする工程とを有する液晶表示装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の製造方法に係わり、特にガラス基板が薄型化され、表示面を湾曲させることが可能なフレキシブルディスプレイとして用いられる液晶表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を構成する液晶表示パネルは、基本的には、ガラス基板を好適とする第1の基板と第2の基板との基板間に液晶層を封入して当該基板に有する画素選択電極から液晶に印加される電界に応じて液晶の配向方向が変化することを利用した画像表示装置である。現在、液晶パネルのガラス基板を薄型化し、表示面を湾曲させることを可能としたフレキシブルディスプレイとして用いられる液晶表示装置の開発が進められている。
【0003】
ガラス基板を薄型化する方法の一つとして、例えばフッ化水素酸(弗酸)等のエッチング液によってガラス基板を化学研磨する方法が挙げられる。ガラス基板を化学研磨する方法の従来技術として、下記特許文献1が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2003−40649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス基板を薄型化した後に、ガラス基板の側面にある液晶封入孔を樹脂から成る封止材で封止すると、ガラス基板が薄いため、封止材がガラス基板の上下面にはみ出してしまうという不良が生じやすい。従って、液晶封入工程、封止工程の後にガラス基板を化学研磨する方が、量産性の上で効率的である。
【0006】
しかしながら、樹脂で形成された封止材はフッ化水素酸(弗酸)に溶けないため、エッチング工程において、エッチング液の対流を妨げ、封止材近傍のガラス基板のエッチング速度が遅くなり、封止材近傍に局所的にガラス基板の厚さが厚い部分が生じてしまう。
【0007】
局所的なガラス基板の厚さの違いは、その後の偏光板の貼り合せにおいてガラス割れ、気泡残り、これらに伴う画質劣化の原因となる。
【0008】
本発明は、前述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガラス基板を化学研磨によって均一に薄型化し、その後の偏光板の貼り合せにおけるガラス割れ、気泡残りを防止し、歩留まり良く、高性能な表示面の湾曲が可能な液晶表示装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0010】
(1)第1のガラス基板と、第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを所定の間隙を介してシール材で貼り合わせた液晶パネルと、前記間隙に保持される液晶とを有する液晶表示装置の製造方法であって、前記液晶パネルの少なくとも1辺に、前記液晶を封入する封入孔を有し、前記封入孔から前記液晶を封入する封入工程と、前記封入孔を封止材で封止する封止工程と、第1のガラス基板と第2のガラス基板の前記封入孔が形成される側の辺を、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板の端部から中央部に向かって厚さが増加する形状に加工する面取り工程と、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板を化学研磨によってエッチングするエッチング工程とを有 する。
【0011】
(2)(1)において、前記液晶パネルの厚さ方向における前記封止材の幅は、エッチング工程後の前記液晶パネルの厚さ以下とする。
【0012】
(3)(1)または(2)において、前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、前記端子部の外側に端子部保護用のシール材が形成して前記エッチング工程を行う。
【0013】
(4)(1)または(2)において、前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、前記端子部に耐エッチング性の保護膜を形成して前記エッチング工程を行う。
【0014】
(5)(1)または(2)において、前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、前記端子部にはフレキシブル回路基板が接続され、前記端子部及び前記フレキシブル回路基板の表面に耐エッチング性の保護膜を形成して前記エッチング工程を行う。
【0015】
(6)(1)から(5)において、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板の前記エッチング工程後の厚さは、0.2mm以下である。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0017】
ガラス基板を化学研磨によって均一に薄型化することが可能となる。これにより、その後の偏光板の貼り合せにおけるガラス割れ、気泡残りを防止し、歩留まり良く、高性能な表示面の湾曲が可能な液晶表示装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は複数枚の液晶パネルが形成された一対のマザーガラス基板を示す図である。図1においては、3×1枚の液晶パネルが、一対のマザーガラス基板上に短冊状に形成されている。
【0020】
図1において、1は複数枚の液晶パネルが形成された一対のマザーガラス基板、2は外周のシール材、3は液晶を囲うシール材、4は封入孔、5は封止材である。
【0021】
複数の液晶パネルは、一対のマザーガラス基板1を所定の間隙を介して貼り合わせ、シール材3で囲われた所定の間隙に、液晶を封入孔4から封入し、封入孔4を樹脂から成る封止材5で封止して形成される。
【0022】
図2は、化学研磨を行う前の、図1のA−Aにおける断面図である。図2において、21は第1のガラス基板、20は第2のガラス基板である。また、8は端子部、22は面取り部である。
【0023】
第1のガラス基板21と第2のガラス基板20によって一対のガラス基板が形成されている。第1のガラス基板21にはTFTが形成されるためTFT基板ともいう。また、第2のガラス基板20にはカラーフィルタが形成されるためカラーフィルタ基板ともいう。
【0024】
端子部8は、第1のガラス基板21に形成されたTFTを駆動する外部からの信号等が入力される端子が形成された領域である。化学研磨の際に、端子部8がエッチング液に触れないように、外周のシール材2が形成されている。
【0025】
第1のガラス基板21と第2のガラス基板20の封時材5が形成された辺において、ガラス基板端部を面取りし、面取り部22を形成している。
【0026】
面取り部22を形成することにより、ガラス基板の厚さ方向における封止材5の厚さは、第1のガラス基板21及び第2のガラス基板20の、面取り部22以外の部分の厚さよりも小さくなる。この封止材5の厚さは、化学研磨で第1のガラス基板21及び第2のガラス基板20をエッチングした後の液晶パネルの厚さよりも小さくする。
【0027】
図3は、化学研磨を行った後の、図1のA−Aにおける断面図である。図3において、31は化学研磨後の第1のガラス基板、30は化学研磨後の第2のガラス基板である。
【0028】
化学研磨の方法としては、フッ化水素酸(弗酸)をエッチング液として用い、図1に示す短冊状に液晶パネルを形成し一対のマザーガラス基板を、エッチング液に浸し、所定の厚さまでガラス基板を薄型化する。化学研磨後の第1のガラス基板31、第2のガラス基板30の板厚は、0.2mm以下である。尚、表示面が湾曲可能な液晶表示装置において、フレキシブル性を考慮するとガラス基板の板厚は0.05mm程度が望ましい。
【0029】
封止材5の厚さを、化学研磨後の液晶パネルの厚さよりも予め小さく形成したことにより、化学研磨後の第1のガラス基板31、第2のガラス基板30は、封止材5の近傍においても、それ以外の部分においても、厚さが均一にエッチングすることができる。
【0030】
図7は、図2に対応する面取りを行わない従来の化学研磨研磨前の断面図である。図8は、面取りを行わない図7の状態で化学研磨を行った後の断面図である。
【0031】
面取りを行わない場合、封止材5の厚さは、化学研磨前の液晶パネルの厚さとほぼ同等である。樹脂から成る封止材5は、エッチング液として用いたフッ化水素酸(弗酸)に溶けないので、エッチング工程において、エッチング液の対流を妨げ、封止材近傍のガラス基板のエッチング速度が遅くなり、図8の80に示すように、封止材近傍に局所的にガラス基板の厚さが厚い部分が生じてしまう。
【0032】
図4は、化学研磨後にガラス基板を切断して得られた個々の液晶パネルを示す図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は図4(a)のB−Bにおける断面図である。
【0033】
図4(b)に示すように、端子部8が露出されている。エッチング工程においては、上述した通り、外周のシール材2によって端子部8はエッチング液に触れていない。従って、端子部8に形成された端子が、エッチング液によって溶解することはない。
【0034】
図4に示したように個々の液晶パネルに切断した後、図示しないが偏光板を第1のガラス基板及び第2のガラス基板の表面に貼る。更に、端子部8への信号入力のためフレキシブル回路基板が接続され、必要に応じては端子部8の表面には電子部品が直接接続されることもある。
【0035】
本実施例において、ガラス基板の厚さを均一にエッチングすることができるので、偏光板を貼る場合のガラス割れや、気泡残りが生じない。従って、これらに起因する画質劣化のない高品質な、表示面が湾曲可能な液晶表示装置を製造することができる。
【0036】
尚、本実施例では複数枚の液晶パネルを短冊状に形成した場合にて説明したが、これは1枚の液晶パネル毎にエッチング工程を行う場合でも、切断工程がないだけであり、他は同様である。
【実施例2】
【0037】
図5は実施例2の構成を示す一対のマザーガラス基板の図である。図5(a)は平面図、図5(b)は化学研磨後の、図5(a)のC−Cにおける断面図である。
【0038】
本実施例2においては、予め端子部8が露出されている。更に、化学研磨の前に、端子部8がエッチング液に触れないように保護膜9を形成している。その他の構成は実施例1と同様である。
【0039】
保護膜9はフレキシブル回路基板等を端子部に接続する前に除去する。保護膜9の除去は一対のマザーガラス基板1を個々の液晶パネルに切断する前に行っても良いし、切断下後に行っても良い。保護膜9は、レジスト性有機膜を用いて形成することができる。またCVD等による有機膜を用いて形成することもできる。保護膜9の除去は化学的洗浄、或いは機械的剥離で行うことができる。
【0040】
本実施例においても、ガラス基板の厚さを均一にエッチングすることができるので、偏光板を貼る場合のガラス割れや、気泡残りが生じない。従って、これらに起因する画質劣化のない高品質な、表示面が湾曲可能な液晶表示装置を製造することができる。
【実施例3】
【0041】
図6は実施例3の構成を示す一対のマザーガラス基板の図である。図6(a)は平面図、図6(b)は化学研磨後の、図6(a)のD−Dにおける断面図である。
【0042】
本実施例では、予め端子部8を露出させた後、端子部8において、フレキシブル回路基板10を端子に接続させている。更に、端子部8及びフレキシブル回路基板10がエッチング液に触れないように保護膜9を形成している。その他の構成は実施例1及び実施例2と同様である。
【0043】
化学研磨後、フレキシブル回路基板付きの個々の液晶パネルに切断する。本実施例においては、保護膜9は除去の必要はないが、取り除いてもかまわない。尚、保護膜9は、端子部8および端子部近傍のフレキシブル回路基板10の表面だけに形成しても良いが、フレキシブル回路基板10の全面を含めて形成しても良い。また端子部8にはフレキシブル回路基板10だけでなく他の電子部品が取り付けられていても良い。
【0044】
本実施例においても、ガラス基板の厚さを均一にエッチングすることができるので、偏光板を貼る場合のガラス割れや、気泡残りが生じない。従って、これらに起因する画質劣化のない高品質な、表示面が湾曲可能な液晶表示装置を製造することができる。
【0045】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本
発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。また、前記実施例の図面において封止材5の幅を封入孔4の幅と同等に記載したが,この幅は封入孔よりも大きければ差し支えなく,最大には封入孔のあるガラス端辺の全幅であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1の構成を説明する複数枚の液晶パネルが形成された一対のマザーガラス基板を示す図である。
【図2】化学研磨前の図1のA−A断面図である。
【図3】化学研磨後の図1のA−A断面図である。
【図4】化学研磨後にガラス基板を切断して得られた個々の液晶パネルを示す図である。
【図5】本発明の実施例2の構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施例3の構成を説明する図である。
【図7】従来の構成を示す一対のマザーガラス基板の化学研磨前の断面図である。
【図8】従来の構成を示す一対のマザーガラス基板の化学研磨後の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・マザーガラス基板、2・・・外周のシール材、3・・・シール材、4・・・封入孔、5・・・封止材、8・・・端子部、9・・・保護膜、10・・・フレキシブル回路基板、20、30・・・第2のガラス基板、21、31・・・第1のガラス基板、22・・・面取り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス基板と、第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを所定の間隙を介してシール材で貼り合わせた液晶パネルと、前記間隙に保持される液晶とを有する液晶表示装置の製造方法であって、
前記液晶パネルの少なくとも1辺に、前記液晶を封入する封入孔を有し、
前記封入孔から前記液晶を封入する封入工程と、
前記封入孔を封止材で封止する封止工程と、
第1のガラス基板と第2のガラス基板の前記封入孔が形成される側の辺を、前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板の端部から中央部に向かって厚さが増加する形状に加工する面取り工程と、
前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板を化学研磨によってエッチングするエッチング工程とを有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記液晶パネルの厚さ方向における前記封止材の幅は、エッチング工程後の前記液晶パネルの厚さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、
前記端子部の外側に端子部保護用のシール材が形成して前記エッチング工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、
前記端子部に耐エッチング性の保護膜を形成して前記エッチング工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のガラス基板の前記液晶と対向する側の面の、前記シール材の外側には、外部からの信号等を入力する端子が形成された端子部を有し、
前記端子部にはフレキシブル回路基板が接続され、
前記端子部及び前記フレキシブル回路基板の表面に耐エッチング性の保護膜を形成して前記エッチング工程を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1のガラス基板及び前記第2のガラス基板の前記エッチング工程後の厚さは、0.2mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−204713(P2009−204713A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44664(P2008−44664)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】