説明

液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材

本発明は、液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材に関するものである。本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材は、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートを使用することによって、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を含まないポリアリレートを使用した位相差補償材より、同一の厚さの位相差補償材で厚さ方向位相差値が負の符号を持ち、絶対値がさらに大きい厚さ方向位相差を持つ。したがって、本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材は、液晶表示装置に役立つように使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材に関するものである。
【0002】
本出願は2006年1月13日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2006−0003882号の出願日の利益を主張し、その全ての内容は本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
一般に液晶表示装置は、電極が形成されている2枚の基板の間に液晶を注入し、電極に加える電圧の強さを調節して光透過量を調節する構造になっている。
液晶はその分子が異方性を持っており、その分子からなる液晶セルやフィルムの異方性が、液晶分子の分布及び基板に対して傾いた角度の分布程度によって異なる性質を持っている。このため、液晶表示装置は見る角度により光の量や色特性が異なる。
【0004】
ほとんどの液晶分子は液晶表示面の厚さ方向で正の位相差を持つため、液晶の複屈折値とほぼ同じ複屈折値を有し、負の位相差値を持つように構成された位相差補償材を使用しなければ視野角を補償することができない。
【0005】
厚さ方向位相差が負の値を有する位相差補償材を製造するためには、1)フィルムを延伸する方法、及び2)複屈折を有する物質をコーティングする方法等を利用している。現在、ほとんどの位相差補償材は延伸する方法によって作られているが、延伸率を調整する方法が機械的なものであるため、望みの量だけの角度を調節するのが容易ではなく、偏光板と貼り合わせた時にロール(roll)状態にすることができずに一枚ずつ貼り合せなければならないので、工程の効率性や異物管理の面で不利な問題点が生ずる。
【0006】
したがって、前記のような問題点を補完するために複屈折を有する物質をフィルムの表面にコーティングし、補償材として使う技術が提示された。韓国公開特許第10−2005−4439号には、複屈折を有する液晶をコーティングして使う方法が記載されている。しかし、液晶の複屈折が非常に高いため、液晶の配向やコーティング厚が少しだけ変わっても補償材全体の位相差が大きく変わり、位相差の調節が難しく、大面積になるほど鮮明な色の具現が難しくなる問題点がある。
【特許文献1】韓国公開特許第10−2005−4439号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは位相差の調節が容易な補償材について研究していたところ、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートを使用した位相差補償材が、従来のポリアリレート位相差補償材よりも同一の厚さに対して厚さ方向位相差値が負の符号を持ち、絶対値が大きく示されることを確認して本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、ポリアリレートコーティング層を含む液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材及びこれを含む液晶表示装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、ポリアリレートコーティング層を含む液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
1)透明基材層、及び
2)前記透明基材層上に積層される、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートコーティング層
を含み、前記ポリアリレートコーティング層は下記数式1で定義される厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値が10nm以上であることを特徴とする液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材を提供する。
【0011】
【数1】

【0012】
前記数式1において、
はコーティングの面方向において、最も屈折率が大きい方向の屈折率であり;
はコーティングの面方向において、n方向の直角方向の屈折率であり;
はnxy平面の直角方向の屈折率であり;
dはコーティング層の厚さを示す。
【0013】
また、本発明は、
1)透明基材層を準備するステップ、及び
2)前記1)ステップの透明基材層上に高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレート溶液をコーティングし、ポリアリレートコーティング層を形成するステップ
を含むことを特徴とする液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法を提供する。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、
1)透明基材層、及び
2)前記透明基材層上に積層される、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートコーティング層
を含み、前記ポリアリレートコーティング層は前記数式1で定義される厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値が10nm以上であることを特徴とする液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材を提供する。
【0015】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材は、位相差補償効果を得るためにポリアリレートにチオ基又は硫黄酸化物基を導入し、これを別途のフィルムを作らずに透明基材上に直接コーティングすることによって簡便に製造され得る。前記のような方法で簡便にポリアリレートコーティング層の厚さを調節し、多様な位相差を具現することができる。また、前記方法は従来の延伸フィルムの製造とは異なり、延伸過程を経ないことによって、望みの厚さ方向位相差値、すなわち負の値で絶対値が10nm以上を達成することができる。
【0016】
前記高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートは、下記化学式1で示される。
【0017】
【化1】

【0018】
前記化学式1において、
a、b、c及びdは各々独立的に0又は1〜4の整数であり;
m及びnはモル分率であり、m+n=1、0≦m≦1、0≦n≦1であり;
、R、R及びRは各々独立的にハロゲン、ニトリル、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルコキシ、C〜C12のアリールアルキル、C〜C12のアリール又は C〜C12のアシルであり;
は直接結合か、又はC〜C30のアルキリデン(alkylidene)、C〜C30のアルキレン(alkylene)、C〜 C30のシクロアルキリデン(cycloalkylidene)、C〜 C30のシクロアルキレン(cycloalkylene)、フェニル置換されたC〜C30のアルキレン(phenyl−substituted alkylene)、カルボニル、NR、PO、酸素、チオ基、スルホキシド又はスルホンであり、ここでRは水素、C〜C12のアルキル、C〜C12のアリールアルキル又はC〜C12のアリールであり;
はチオ基又は硫黄酸化物基であり;
nが0の場合にWはチオ基、スルホキシド又はスルホンである。
【0019】
前記化学式1において、Wはチオ基、スルホキシド基又はスルホン基であることが好ましい。
【0020】
本発明の位相差補償材に使用したポリアリレートは補償効果を得るために、ポリアリレートにチオ基又は硫黄酸化物基を有する単量体を導入したことを特徴とする。
【0021】
ポリアリレートは芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸、又は芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物を縮重合して製造した芳香族リニアポリエステル樹脂を指す。このようなポリアリレート樹脂は使用する原料物質により様々な分子構造式を有し得るが、2価フェノールのうちビスフェノールAと芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸又はイソフタル酸を縮重合して製造されたものが代表的である。ポリアリレート樹脂は諸般の物性が特殊なエンジニアリングプラスチック樹脂として、透明で複屈折が高いため、液晶表示装置の位相差補償材に使用することができる。
【0022】
前記芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物は、テレフタル酸、イソフタル酸、ジベンゾ酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−メチレン−ビス(安息香酸)(4,4’−methylenebisbenzoic acid)、1,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)プロパン、4,4’−オキソ−ビス(安息香酸)、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルホン、これらの芳香族基にC〜Cのアルキル又はハロゲン基が置換した芳香族ジカルボン酸単独又はこれらの混合物であってもよいが、これだけに限定されるものではない。芳香族カルボン酸全体のうちテレフタル酸ハロゲン化物10〜90モル%とイソフタル酸ハロゲン化物90〜10モル%の混合物が好ましい。
【0023】
前記芳香族ジオールは、ビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン[bis(4−hydroxyaryl)alkane]として、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[bis(4−hydroxyphenyl)methane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)propane、BPA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)ethane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3−methylphenyl)propane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)heptane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3,5−dichlorophenyl)propane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3,5−dibromophenyl)propane]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン[bis(4−hydroxyphenyl)phenylmethane]、4,4−ジヒドロキシフェニル−1,1−m−ジイソプロピルベンゼン[4,4−dihydroxyphenyl−1,1−m−diisopropylbenzene]4,4−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレン[4,4−dihydroxyphenyl−9,9−fluorene]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)fluorene、BHPF]、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−bis(3,5−dimethyl−4−hydroxyphenyl)fluorene],BDMPF)及び9,9−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−bis(3,5−dibromo−4−hydroxyphenyl)fluorene,BFBPF]からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0024】
また、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン[bis(hydroxyaryl)cyclo alkanes]を挙げられるが、例えば1,1−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン[1,1−bis(4,4’−hydroxyphenyl)cyclopentane]、1,1−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[1,1−bis(4,4’−hydroxyphenyl)cyclohexane]、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[1−methyl−1−(4−hydroxyphenyl)−4−(dimethyl−4−hydroxyphenyl)cyclohexane]、4−{1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル}フェノール[4−{1−[3−(4−hydroxyphenyl)−4−methylcyclohexyl]−1−methylethyl}phenol]、4,4−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキシリジル]ビスフェノール[4,4−[1−methyl−4−(1−methylethyl)−1,3−cyclohexylidyl]bisphenol]、及び2,2,2,2−テトラヒドロ−3,3,3,3−テトラメチル−1,1−スピロビス−[1H]−インデン−6,6−ジオール[2,2,2,2−tetrahydro−3,3,3,3−tetramethyl−1,1−spirobis−[1H]−indene−6,6−diol]からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0025】
本発明に係る位相差補償材の補償効果を得るために、芳香族ジオールの連結部位が硫黄又は硫黄酸化物を含む化合物が、全体芳香族ジオール化合物に比べて0.1モル%〜40モル%のポリアリレートを使うのが好ましい。万一、芳香族ジオールの連結部位が硫黄又は硫黄酸化物を含む化合物が40モル%より多い場合には、ポリアリレートの分子量の調節が容易ではなく、汎用溶剤の溶解性が限定される問題が生ずる。また、0.1モル%より少ない場合には、厚さ方向位相差の絶対値の増加効果が微小である。
【0026】
さらに、前記ポリアリレートの分子量を調節するために分子量調節剤を使用してもよい。分子量調節剤としては、1価のヒドロキシ化合物、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−プロピルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、o−tert−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等の1価のフェノール化合物;又はメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の1価のアルコール;1価の(芳香族)カルボン酸ハロゲン化物、例えば、ベンゾイルクロライド、酢酸ハロゲン化物、プロピオン酸ハロゲン化物、オクタノンサンハロゲン化物、シクロヘキシルカルボン酸ハロゲン化物、トルイル酸ハロゲン化物、p−tert−ブチル安息香酸ハロゲン化物及びp−メトキシフェニル酢酸ハロゲン化物、又はベンゼンスルホニルクロライド、トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド等のスルホン酸クロライドを挙げることができる。
【0027】
また、ポリアリレートの重合時に使用できるアルカリは、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を挙げることができ、アルカリは2価フェノール及び分子量調節剤が有するフェノール性水酸基モル数の1.01〜2倍で使うのが好ましい。万一、その使用量が1.01倍未満の場合には、2価フェノール化合物を完全に溶かすことができず、その使用量が2倍を超過する場合には、相分離性が悪くなったり重合生成物を精製した後にもアルカリ化合物が重合体に残留するようになって透明性に優れたポリアリレートを得られない。また、重合過程中に起きる芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物の加水分解を考慮すれば、本方法におけるアルカリはフェノール性水酸基モル数の1.01〜2倍が好ましい。
【0028】
また、ポリアリレートの重合時に使用できる有機溶媒としては、水と混ざらずにポリアリレートを溶解できる溶媒ならば適しており、例えば、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン等を単独又は混合物状態で使用することができる。
【0029】
また、ポリアリレートの重合時に界面重合の重合速度を向上させるために相間移動触媒を使用でき、それらは通常使用されるテトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、非イオン性界面活性剤等がある。
ポリアリレートの重合時の重合温度は、カルボン酸ハロゲン化物の加水分解が抑制されるという点で0〜40℃、好ましくは0〜30℃が有利である。前記方法による重合終了後、撹拌を停止して、水層を除去し、蒸留水で反復洗浄して塩類を除去した後、ポリアリレートが得られる。この時、ポリアリレートの重量平均分子量は10,000以上で、かつ500,000以下が好ましい。
【0030】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材において、前記ポリアリレートコーティング層は厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値が10nm以上であることを特徴とする。すなわち、ポリアリレートコーティング層を基材の上に直接コーティングして形成することによって、別途の延伸工程なしに簡便に層の厚さを調節することにより、多様な位相差を付与できることを示す。
【0031】
前記透明基材層はガラス基材層であることが好ましい。
【0032】
また、本発明は、
1)透明基材層を準備するステップ、及び
2)前記1)ステップの透明基材層上に高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレート溶液をコーティングし、ポリアリレートコーティング層を形成するステップ
を含むことを特徴とする液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法を提供する。
【0033】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法において、前記1)ステップの透明基材層はガラス基材層であることが好ましい。
【0034】
前記透明基材層はポリアリレートコーティング層との接着力を向上させるために、プライマー(primer)、コロナ、常圧プラズマ、酸/塩基処理、紫外線処理、反応性ガス処理等の方法で改質することができる。
【0035】
前記プライマーは下記化学式2で示される有機シラン化合物を溶媒に溶かして使用することができる。
【0036】
【化2】

【0037】
前記化学式2において、
r及びsは0〜4の整数であり、r+s=4であり、
はアミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜Cのアルキル;アミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜C12のアリールアルキル;又はアミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜C12のアリールであり、
はC〜Cのアルキル、C〜C12のアリールアルキル、又はC〜C12のアリールである。
【0038】
前記化学式2で示される有機シラン化合物は3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−チオプロピルトリメトキシシラン、3−チオプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン及び3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択された1種以上を含んでもよいが、これにだけ限定されるものではない。
【0039】
プライマー溶液は溶液100重量部に対して前記化学式3の有機シラン化合物を0.1〜99.9重量部使用でき、残りは有機シラン化合物を溶かせる汎用溶媒を使用することができる。溶媒はメチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;エチルアセテート、メチルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類等を挙げられるが、これにだけに限定されるものではない。
【0040】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法において、前記2)ステップの高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートは前記化学式1で示される。
【0041】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法において、前記2)ステップのコーティング方法はコーティングする時、ポリアリレートコーティング層の厚さを調節し、厚さ方向位相差を微細に調節するのが容易で、溶融押出しする時に発生し得る面方向位相差を最小化することができる。
【0042】
前記コーティング方法としては、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フローコーティング法、プリント法、ディップコート法、グラビアコーティング法、又はバーコーティング法の中から選択して使用でき、これ以外に通常使用されるコーティング法を使ってもよい。
【0043】
前記コーティングに使用されるポリアリレート溶液において、ポリアリレート濃度は特別に制限されないが、コーティングに適した粘度を得るためにポリアリレートコーティング液100重量部に対してポリアリレートは3〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0044】
ポリアリレート溶液は、ポリアリレートを溶媒に溶かして使用するか、又は洗浄が終わった重合溶液から水を除去して適切な溶媒を添加したり濃縮して使用してもよい。
【0045】
ポリアリレートコーティング液の製造に使用される溶媒は、ポリアリレートを溶解できれば特別に制限されないが、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;エチルアセテート、メチルアセテート等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、エチレングリコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒は単独で使っても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0046】
ポリアリレート溶液は必要により追加でUV安定剤、熱安定剤、可塑剤、接着力改善剤、充填剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0047】
特に、前記接着力改善剤は下記化学式3で示される有機シラン化合物を使うのが好ましい。
【0048】
【化3】

【0049】
前記化学式3において、
p及びqは0〜4の整数であり、p+q=4であり、
及びRは各々独立的にC〜Cのアルキル、C〜C12のアリールアルキル、又はC〜C12のアリールである。
【0050】
前記化学式3で示される有機シラン化合物は、メチルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン及び3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択された1種以上を含んでもよいが、これらにだけ限定されるものではない。
【0051】
前記有機シラン化合物はポリアリレート100重量部に対して0.1〜10.0重量部を使うのが好ましい。
【0052】
前記ポリアリレート溶液を透明基材層上にコーティングし、溶媒を乾燥させる。溶媒を乾燥させる時、温度を徐々に上げたり、一定温度に入れて溶媒を乾燥させてもよい。
【0053】
乾燥が終わった試料は面方向で屈折率が最も大きい方向をx軸、x軸に面方向で直角の方向をy軸、xy平面に直角の方向をz軸と設定し、590nmで各方向の屈折率のn、n、nを測定し、コーティング層の厚さを測定して、前記数式1及び下記数式2で各々コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算できる。
【0054】
【数2】

【0055】
前記数式2において、
はコーティングの面方向において、最も屈折率が大きい方向の屈折率であり;
はコーティングの面方向において、n方向の直角方向の屈折率であり;
dはコーティング層の厚さを示す。
【0056】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法において、前記2)ステップのポリアリレートコーティング層は、さらにハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止や拡散、アンチグレア等を目的にした処理等を実施してもよい。
【0057】
前記ハードコーティング処理とは、汚点防止等を目的にして、例えば前記透明保護層の表面に硬化型樹脂で構成される硬度や活性が優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等を使用でき、前記処理は公知の方法によって遂行できる。
【0058】
また、前記スティキング防止は隣接する層との密着防止を目的とする。
【0059】
また、前記反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的にし、公知の反射防止層等の形成によって実施することができる。
【0060】
また、前記アンチグレア処理は偏光板表面で外光が反射することによる透過光の視認妨害を防止すること等を目的にし、公知の方法によって実施することができる。
【0061】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法において、前記2)ステップのポリアリレートコーティング層の厚さは0.1〜100μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜50μm、最も好ましくは0.1〜10μmである。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材は、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートを使うことによって、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を含まないポリアリレートを用いた位相差補償材より、同一の厚さの位相差補償材で厚さ方向位相差値が負の符号を持ち、絶対値がさらに大きい厚さ方向位相差を有する効果がある。したがって、本発明に係る液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材は液晶表示装置に役立つように使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をさらに容易に理解するために提供されるだけであり、これによって本発明の内容が限定されるわけではない。
【0064】
<製造例1〜3及び比較製造例1>:ポリアリレートの製造
【0065】
<製造例1>
撹拌器を備えた反応器に蒸留水360g、NaOH14.2g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)33.18g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BPS)4.13g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを投入して反応器の温度を25℃に維持した。
これとは別にイソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量で混合した32.8gの芳香族ジカルボン酸クロライド混合物をメチレンクロライド440gに溶かした。この溶液をアルカリ水溶液が溶け合っている反応器に撹拌しながら添加した。1時間撹拌した後に塩酸を添加し、蒸留水で洗浄した。水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した後、この溶液をメタノールに注ぎ、重合体を相分離させた後、高分子をろ過して真空オーブン120℃で12時間乾燥させた。
【0066】
前記製造されたポリアリレートの重量平均分子量及びガラス転移温度は下記のように分析した。
(1)重量平均分子量は重合完了後、重合溶液を分取して、クロマトグラフィー用テトラヒドロフランで0.1重量%に薄め、クロマトグラフィー用テトラヒドロフランを溶離液としてゲル透過クロマトグラフィーで測定して、標準ポリスチレン検量線で換算した値である。
(2)ガラス転移温度はDSC(differential scanning calorimeter)を使用して測定するが、窒素の雰囲気で分当り10℃の速度で300℃まで昇温して試料の熱履歴をなくし、室温まで冷却した後300℃まで再び昇温して測定した。
前記のような方法で分析したポリアリレートの重量平均分子量は115,000でガラス転移温度は216℃であった。
【0067】
<製造例2>
撹拌器を備えた反応器に蒸留水300g、NaOH13.3g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)27.6g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BPS)7.8gを投入して溶かした。反応器の温度が25℃に維持したら、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを反応器に添加して撹拌した。
これとは別にイソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量混合した30.7gの芳香族ジカルボン酸クロライド混合物をメチレンクロライド440gに溶かした。この溶液をアルカリ水溶液が溶け合っている反応器に撹拌しながら添加した。1時間撹拌した後に塩酸を添加し、反応を終了させて、その後蒸留水で洗浄した。水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した後、この溶液をメタノールに注ぎ、重合体を相分離させた後、高分子をろ過して真空オーブン120℃で12時間乾燥させた。
前記製造例1と同じ方法で分析したポリアリレートの重量平均分子量は105,000であり、ガラス転移温度は218℃であった。
【0068】
<製造例3>
撹拌器を備えた反応器に蒸留水290g、NaOH11.3g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)29.3g、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BPS)7.8g、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを投入して反応器の温度を25℃に維持しながら撹拌した。
これとは別にイソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドを同一の量で混合した29.4gの芳香族ジカルボン酸クロライド混合物をメチレンクロライド440gに溶かした。この溶液をアルカリ水溶液が溶け合っている反応器に撹拌しながら添加した。1時間撹拌した後に塩酸を添加し、水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した。洗浄が終わった溶液をメタノールに注ぎ、重合体を相分離させた後、高分子をろ過して真空オーブン120℃で12時間乾燥させた。
前記製造例1と同じ方法で分析したポリアリレートの重量平均分子量は84,000であり、ガラス転移温度は220℃であった。
【0069】
<比較製造例1>
撹拌器を備えた反応器に蒸留水92g、NaOH3.9g、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)9.93g、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロライド0.48gを投入して反応器の温度を25℃で維持しながら撹拌した。
これとは別にイソフタル酸クロライドとテレフタル酸クロライドが同一のモル数で混ざり合った8.8gの芳香族ジカルボン酸クロライド混合物をメチレンクロライド100gに溶かした。この溶液をあらかじめ製造した2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが溶け合っているアルカリ水溶液に添加した。1時間重合した後に塩酸を添加し、蒸留水で水層の伝導度が20μs/cm以下になるまで洗浄を繰り返した。洗浄が終わった溶液をメタノールに注ぎ、重合体を相分離させた後、高分子をろ過して真空オーブン120℃で12時間乾燥させた。
前記製造例1と同じ方法で分析したポリアリレートの重量平均分子量は98,000であり、ガラス転移温度は200℃であった。
【0070】
<実施例1〜6及び比較例1>:ポリアリレートフィルムの製造
【0071】
<実施例1>
前記製造例1で製造したポリアリレート1.00gを1,2−ジクロロエタン9.00gにゆっくり投じながら溶かし、追加で、30℃で24時間撹拌して均一な溶液を製造した。0.45μmフィルタでろ過して不溶物とホコリを除去し、10重量%のコーティング液を製造した。ガラスの上にコーティング液を注ぎ、30μmに調節したバーを使用して0.6m/minの速度でコーティングし、室温で10分間乾燥させた後オーブン130℃で60分間乾燥させて溶媒を除去した。バーの間隔を40μm、60μmに調節し、高分子コーティングの厚さが異なる試料を製造した。
【0072】
前記高分子コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差は下記のように測定した。
厚さ方向位相差はOji Scientific Instrument社のKobra21−ADH(商品名)を使って、590nmで面方向で屈折率が最も大きい方向をx軸、x軸に面方向で直角の方向をy軸、xy平面に直角の方向をz軸と設定して590nmで各方向の屈折率のn、n、nを測定して、コーティング層の厚さを測定し、各軸方向の屈折率のn、n、nを測定した後、前記数式1及び数式2で各々コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。
その結果は下記表1に示した。
【0073】
<実施例2>
前記実施例1で製造例1のポリアリレートの代りに製造例2のポリアリレートを使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で行い、コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。バーの間隔は各々40μm、50μm、70μmである。
その結果は下記表1に示した。
【0074】
<実施例3>
前記実施例1で製造例1のポリアリレートの代りに製造例3のポリアリレートを使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で行い、コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。バーの間隔は各々30μm、50μm、60μmである。
その結果は下記表1に示した。
【0075】
<実施例4>
表面改質されたガラス基材及び接着力改善剤を使って、ポリアリレートフィルムを製造した。
室温で1−プロパノールで薄めた3−アミノプロピル(トリエトキシ)シラン[3−aminopropyl(triethoxy)silane;APES]溶液5重量%をガラス表面の上にコーティングした後、3分間常温で乾燥させた後、60℃で3分間熱硬化した。
前記製造例1で製造したポリアリレートを1,2−ジクロロエタンに溶かして10重量%のコーティング液を製造し、これに3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン[3−glycidoxypropyltrimethoxysilane;GPMS]をポリアリレート100g当り5gの割合で添加して、高分子コーティング液を製造した。
前記プライマー層で処理されたガラス上に前記高分子コーティング液を10μmに調節したバーを使用し、0.6m/minの速度でコーティングして室温で10分間乾燥させた後、オーブン130℃で60分間乾燥させ溶媒を除去した。バーの間隔を20μm、40μmに調節して、高分子コーティングの厚さが異なる試料を製造した。
前記高分子コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差は前記実施例1に記載されている方法で測定して計算した。
その結果は下記表1に示した。
【0076】
<実施例5>
前記実施例4で表面改質されたガラス基材の代わりに表面改質されていないガラス基材を使ったことを除いては、実施例4と同一の方法で行い、コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。
その結果は下記表1に示した。
【0077】
<実施例6>
前記実施例4で表面改質されたガラス基材の代わりに表面改質されていないガラス基材を使って、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランを5gの代わりに10gの割合で使ったことを除いては、実施例4と同一の方法で行い、コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。
その結果は下記表1に示した。
【0078】
<比較例1>
前記実施例1で製造例1のポリアリレートの代りに比較製造例1のポリアリレートを使ったことを除いては、実施例1と同一の方法で行い、コーティングの厚さ方向位相差及び面方向位相差を計算した。バーの間隔は各々20μm、40μm、60μmである。
その結果は下記表1に示した。
【0079】
【表1】

【0080】
前記表1に示された通り、本発明に係る高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートを使用した位相差補償材(実施例1〜6)が、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を含まないポリアリレートを使用した位相差補償材(比較例1)より厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値がさらに大きい厚さ方向位相差を持つことが分かる。
【0081】
具体的に本発明の実施例(1〜3)及び比較例1の位相差補償材の厚さによる厚さ方向位相差値を示した図1を見ると、本発明の実施例(1〜3)は比較例1より位相差補償材の同一厚さに対して厚さ方向位相差値の絶対値がさらに大きく、ポリアリレート内にチオ基又は硫黄酸化物基の含量が高いほど位相差補償材の厚さ方向位相差値の絶対値がさらに大きくなることが分かる。
【0082】
<実験例>剥離力評価
本発明に係る高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートを使用した位相差補償材の剥離力を調べるために、下記のような実験を行った。
前記実施例4〜6で製造したポリアリレートフィルムを縦横1mm間隔の100個の格子を有するニチバンテープで剥離テストをした。
その結果は下記表2に示した。
【0083】
【表2】

【0084】
前記表2に示された通り、本発明に係る位相差補償材のうち表面改質されたガラス基材及び接着力改善剤を使用した位相差補償材の場合(実施例4)は全く剥離されない反面、表面改質されていないガラス基材及び接着力改善剤を使用した位相差補償材の場合(実施例5及び6)は若干の格子が剥離されることを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例(1〜3)及び比較例1の位相差補償材の厚さに係る厚さ方向位相差値を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)透明基材層、及び
2)前記透明基材層上に積層される、高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートコーティング層
を含み、前記ポリアリレートコーティング層は下記数式1で定義される厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値が10nm以上であることを特徴とする液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材:
【数1】

前記数式1において、
はコーティングの面方向において、最も屈折率が大きい方向の屈折率であり;
はコーティングの面方向において、n方向の直角方向の屈折率であり;
はnxy平面の直角方向の屈折率であり;
dはコーティング層の厚さを示す。
【請求項2】
前記高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートが下記化学式1で示されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材:
【化1】

前記化学式1において、
a、b、c及びdは各々独立的に0又は1〜4の整数であり;
m及びnはモル分率であり、m+n=1、0≦m≦1、0≦n≦1であり;
、R、R及びRは各々独立的にハロゲン、ニトリル、C〜C12のアルキル、C〜C12のアルコキシ、C〜C12のアリールアルキル、C〜C12のアリール又はC〜C12のアシルであり;
は直接結合か、又はC〜C30のアルキリデン(alkylidene)、C〜C30のアルキレン(alkylene)、C〜C30のシクロアルキリデン(cycloalkylidene)、C〜C30のシクロアルキレン(cycloalkylene)、フェニル置換されたC〜C30のアルキレン(phenyl−substituted alkylene)、カルボニル、NR、PO、酸素、チオ基、スルホキシド又はスルホンであり、ここでRは水素、C〜C12のアルキル、C〜C12のアリールアルキル又はC〜C12のアリールであり;
はチオ基又は硫黄酸化物基であり;
nが0の場合には、Wはチオ基、スルホキシド又はスルホンである。
【請求項3】
前記化学式1のWがチオ基、スルホキシド基又はスルホン基であることを特徴とする、請求項2に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項4】
前記化学式1のnが0.001〜0.4であることを特徴とする、請求項2に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項5】
前記高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートは、芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸、又は芳香族ジオールと芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物を縮重合して製造されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項6】
前記芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物は、テレフタル酸、イソフタル酸、ジベンゾ酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−メチレン−ビス(安息香酸)(4,4’−methylenebisbenzoic acid)、1,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)プロパン、4,4’− オキソ−ビス(安息香酸)、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシカルボニルフェニル)スルホン、及びこれらの芳香族基にC〜Cのアルキル又はハロゲン基が置換した芳香族ジカルボン酸単独又はこれらの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項7】
前記芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸ハロゲン化物が、テレフタル酸ハロゲン化物10〜90モル%とイソフタル酸ハロゲン化物90〜10モル%の混合物であることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項8】
前記芳香族ジオールが、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[bis(4−hydroxyphenyl)methane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)propane,BPA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)ethane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3−methylphenyl)propane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)heptane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3,5−dichlorophenyl)propane]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン[2,2−bis(4−hydroxy−3,5−dibromophenyl)propane]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン[bis(4−hydroxyphenyl)phenylmethane]、4,4−ジヒドロキシフェニル−1,1−m−ジイソプロピルベンゼン[4,4−dihydroxyphenyl−1,1−m−diisopropylbenzene]、4,4−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオレン[4,4−dihydroxyphenyl−9,9−fluorene]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[2,2−bis(4−hydroxyphenyl)fluorene,BHPF]、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−bis(3,5−dimethyl−4−hydroxyphenyl)fluorene]、BDMPF)、9,9−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン[9,9−bis(3,5−dibromo−4−hydroxyphenyl)fluorene,BFBPF]、1,1−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン[1,1−bis(4,4’−hydroxyphenyl)cyclopentane]、1,1−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[1,1−bis(4,4’−hydroxyphenyl)cyclohexane]、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン[1−methyl−1−(4−hydroxyphenyl)−4−(dimethyl−4−hydroxyphenyl)cyclohexane]、4−{1−[3−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキシル]−1−メチルエチル}フェノール[4−{1−[3−(4−hydroxyphenyl)−4−methylcyclohexyl]−1−methylethyl}phenol]、4,4−[1−メチル−4−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキシルリジル]ビスフェノール[4,4−[1−methyl−4−(1−methylethyl)−1,3−cyclohexylidyl]bisphenol]、及び2,2,2,2−テトラヒドロ−3,3,3,3−テトラメチル−1,1−スピロビス−[1H]−インデン−6,6−ジオール[2,2,2,2−tetrahydro−3,3,3,3−tetramethyl−1,1−spirobis−[1H]−indene−6,6−diol]からなる群から1種以上選択されることを特徴とする、請求項5に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項9】
前記透明基材層はガラス基材層であることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項10】
前記2)のポリアリレートコーティング層は無延伸フィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項11】
1)透明基材層を準備するステップ、及び
2)前記1)ステップの透明基材層上に高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレート溶液をコーティングし、ポリアリレートコーティング層を形成するステップ
を含むことを特徴とする、液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項12】
前記1)ステップの透明基材層は、プライマー(primer)、コロナ、常圧プラズマ、酸/塩基処理、紫外線処理、又は反応性ガス処理の方法で改質されたことを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項13】
前記プライマーは、下記化学式2で示される有機シラン化合物を溶媒に溶かして使用するものであることを特徴とする、請求項12に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法:
【化2】

前記化学式2において、
r及びsは0〜4の整数であり、r+s=4であり、
は、アミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜Cのアルキル;アミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜C12のアリールアルキル;又はアミン基、ヒドロキシ基及びチオール基からなる群から選択された一つ以上の基を有するC〜C12のアリールであり、
はC〜Cのアルキル、C〜C12のアリールアルキル、又はC〜C12のアリールである。
【請求項14】
前記化学式2で示される有機シラン化合物は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−チオプロピルトリメトキシシラン、3−チオプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン及び3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から1種以上選択されるものであることを特徴とする、請求項13に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項15】
前記2)ステップの高分子主鎖内にチオ基又は硫黄酸化物基を有するポリアリレートが前記化学式1で示されることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項16】
前記2)ステップのコーティング方法が、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フローコーティング法、プリント法、ディップコート法、グラビアコーティング法、又はバーコーティング法の中から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項17】
前記2)ステップのポリアリレート溶液が、UV安定剤、熱安定剤、可塑剤、接着力改善剤、又は充填剤のうち1以上の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項18】
前記接着力改善剤が下記化学式3で示される有機シラン化合物であることを特徴とする、請求項17に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法:
【化3】

前記化学式3において、
p及びqは0〜4の整数であり、p+q=4であり、
及びRは各々独立的にC〜Cのアルキル、C〜C12のアリールアルキル、又はC〜C12のアリールである。
【請求項19】
前記化学式3で示される有機シラン化合物が、メチルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、3−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン及び3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランからなる群から1種以上選択されるものであることを特徴とする、請求項18に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項20】
前記2)ステップのポリアリレートコーティング層は、さらにハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止や拡散、又はアンチグレアのうち1以上の目的のための処理がされたものであることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項21】
前記2)ステップのポリアリレートコーティング層の厚さは0.1〜100μmであることを特徴とする、請求項11に記載の液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材の製造方法。
【請求項22】
請求項11による製造方法によって製造されることを特徴とする厚さ方向位相差値が負の値を持ち、絶対値が10nm以上であることを特徴とする、液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材。
【請求項23】
請求項1による液晶表示装置用ネガティブCタイプの位相差補償材を含むことを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【公表番号】特表2009−523260(P2009−523260A)
【公表日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550239(P2008−550239)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000205
【国際公開番号】WO2007/081168
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】