液晶表示装置
【課題】視野角制御に優れ、低消費電力化が可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶表示装置は、液晶表示パネルと、位相制御液晶素子と、を備えている。液晶表示パネルは、アレイ基板と、対向基板と、第2液晶層と、を含んでいる。位相制御液晶素子は、第1基板と、第2基板と、第1液晶層と、を含み、液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられている。第1液晶層は、第1基板および第2基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、電位差上昇時から前記下降時に変わった後に上昇時の前記位相状態を維持する。
【解決手段】液晶表示装置は、液晶表示パネルと、位相制御液晶素子と、を備えている。液晶表示パネルは、アレイ基板と、対向基板と、第2液晶層と、を含んでいる。位相制御液晶素子は、第1基板と、第2基板と、第1液晶層と、を含み、液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられている。第1液晶層は、第1基板および第2基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、電位差上昇時から前記下降時に変わった後に上昇時の前記位相状態を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は様々な分野に応用され、ノートパソコン、モニター、カーナビゲーション、関数電卓、中小型TV、大型TV、携帯電話、電子手帳等の電子機器に用いられている。
【0003】
これら電子機器の中でも電子手帳、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、タブレットパソコン(PC)、ノートPC等は、軽薄短小である特徴から携帯して利用される機会が多い。また、POP(point of purchase)用途、ATM(automated teller machine)用途、券売機用途に用いられる液晶表示装置は、公共の場で利用される機会が多い。
【0004】
これらの用途では、使用状況によっては他人に表示内容を識別されては困る場合がある。例えば携帯電話やPDA、タブレットPCにプライベートな内容を公共の場において表示している場合である。こうした場合、視野角は狭いほうが望ましい。しかしながら、複数の人で表示画像を観察する機会もあることから視野角を制御できる機能を有していることが望まれている。視野角特性の問題は、携帯機器および公共情報端末機器に共通した問題である。
【0005】
近年、液晶表示装置やブラウン管(CRT)の視野角を制御する手段として、着脱可能なルーバーシート(例えば3M製のライトコントロールフィルム)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、偏光板を用いる液晶表示装置においては、観察者側の偏光板を設けない構成とし、偏光メガネをかけたときのみ表示が識別できるシステムも応用されている。
【0006】
従来のルーバーシートは視野角を十分狭くさせるためにシート法線方向に数ミリ程度の遮光層を設けている。このため、ルーバーシートを用いた方法では、光の透過率が低い問題を有している。ルーバーシートの製造工程も複雑で製造コストも高い。ルーバーシートを着脱する際に手間がかかる問題も有している。また、偏光メガネを用いた方法では、不特定の人に表示画像を見せることができない問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−58066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記視野角特性の問題を解決するため、液晶表示装置に視野角制御用の視野角制御液晶素子を設けて視野角を制御する液晶表示装置が開発されている。しかしながら、視野角制御液晶素子は、常時、高電圧若しくは高電流を印加することによって視野角制御を行うため、視野角制御を行うための消費電力が増加してしまう。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、視野角制御に優れ、低消費電力化が可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極、および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極、および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、
第3電極、および前記第3電極に重なった第3配向膜を有した第3基板と、前記第3基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第4電極、および前記第4電極に重なっているとともに前記第3配向膜と対向した第4配向膜を有した第4基板と、前記第3基板および第4基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第3液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、視野角制御に優れ、低消費電力化が可能な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながらこの発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
図1に示すように、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。
【0013】
位相制御液晶素子1は、第1基板11、この第1基板に所定の隙間を保持して対向配置された第2基板12、および第1液晶層13を有している。第1基板11は、透明な絶縁基板として、例えばポリエステルフィルムやガラスからなる第1シート14aと、この第1シート上に配設されているとともにITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明な導電材料により形成された第1電極16aと、この第1電極上に配設された第1配向膜17aと、を有している。第2基板12は、透明な絶縁基板として、例えばポリエステルフィルムやガラスからなる第2シート14bと、この第2シート上に配設されているとともにITO等の透明な導電材料により形成された第2電極16bと、この第2電極上に配設された第2配向膜17bと、を有している。第1配向膜17aおよび第2配向膜17bには、プレチルト角が88°となるようラビングが施されている。
【0014】
第1基板11および第2基板12は、第1配向膜17aおよび第2配向膜17bが対面するように対向配置され、複数の第1スペーサ18により所定の隙間を置いて保持されている。第1スペーサ18は、絶縁材料で構成されている。第1電極16aおよび第2電極16bは絶縁状態に維持されている。第1基板11および第2基板12は、第1電極16aおよび第2電極16bが対向した領域であるとともに、これら第1基板および第2基板間を透過する光の位相状態を制御可能な位相制御領域R1を有している。第1基板11および第2基板12は、第1電極16aおよび第2電極16bの周縁部に配置されたシール材19により互いに接合されている。第1液晶層13は、第1基板11、第2基板12、およびシール材19の間に狭持されている。
【0015】
第1液晶層13の層厚は、5.0μmである。第1液晶層13を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.042である。液晶分子の捩れ角は450°、捩れピッチは3.57μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0016】
上記した第1液晶層13は、第1基板11および第2基板12間を透過する光の位相状態を制御する機能を有している。より詳しくは、第1液晶層13は、液晶分子の配向を制御することで視野角を制御している。第1液晶層13の液晶分子の配向を制御する際は、位相制御液晶素子1に電圧を印加して、第1電極16aおよび第2電極16b間の電位差を制御することで行う。位相制御液晶素子1の表示モードは、n型フェイズチェンジモードである。n型フェイズチェンジモードについては後述する。
【0017】
次に、上記位相制御液晶素子1の製造方法について説明する。
用意した第1シート14a上に第1電極16aを形成し、第1シートおよび第1電極上に第1配向膜17aを塗布する。その後、第1配向膜17aに配向処理としてラビングを施して第1基板11を形成する。一方、第2基板12において、用意した第2シート14b上に第2電極16bを形成し、第2シートおよび第2電極上に第2配向膜17bを塗布する。その後、第2配向膜17bに配向処理としてラビングを施して第2基板12を形成する。
【0018】
次いで、第1基板11または第2基板12上にスペーサを散布した後、第1基板または第2基板周縁部に、例えば熱硬化型のシール材19を塗布する。続いて、第1基板11および第2基板12を対向配置し、焼成する。これにより、第1基板11および第2基板12は接合される。その後、第1基板11および第2基板12間に液晶を充填する。充填する際、例えば、真空注入法等の方法を用い、シール材19の一部に設けられた液晶注入口より液晶を注入して充填する。液晶注入口は封止材で封止する。
【0019】
次に、位相制御液晶素子1の位置情報検出機能について説明する。
図1および図2に示すように、位相制御液晶素子1は抵抗検出式タッチパネルとしても機能する。位相制御液晶素子1は、第1電極16aおよび第2電極16bの重なった入力領域R3と、位置情報検出部2を有している。
【0020】
位置情報検出部2は、第1抵抗検出電極15a、15bおよび第2抵抗検出電極15c、15dを含み、入力領域R3の押圧された個所の位置情報を検出する機能を有している。第1抵抗検出電極15a、15bは、第1基板11上の矩形状の第1電極(抵抗層)16aにそれぞれ接続されているとともにこの第1電極の対向する一対の辺に設けられている。第2抵抗検出電極15c、15dは、第2基板12上の第1電極(抵抗層)16aにそれぞれ直交して位置し、かつ、矩形状の第2電極16bに接続されているとともにこの第2電極の対向する一対の辺に設けられている。ここで、第2基板12は、入力領域R3と重なった入力面Sを含んでいる。なお、後述するが、第2基板12の入力面S上に第2偏光板42が配置されている。
【0021】
第2偏光板42(位相制御液晶素子1)の外面が押圧されると第1電極16aおよび第2電極16bが接触するため、位置情報検出部2は、そのときの電極間の抵抗(第1抵抗検出電極15aおよび第2抵抗検出電極15c間、第1抵抗検出電極15aおよび第2抵抗検出電極15d間、第1抵抗検出電極15bおよび第2抵抗検出電極15c間、並びに第1抵抗検出電極15bおよび第2抵抗検出電極15d間の4通り)を計測することにより、押圧された個所の位置情報を検出することができる。第1抵抗検出電極15a、15bおよび第2抵抗検出電極15c、15dは、Al、Mo等低抵抗のメタルを蒸着若しくはスパッタリング法にて成膜した後、パターニングして形成される。これにより、位相制御液晶素子1が完成する。
【0022】
液晶表示パネル3は、TN(ツイステッドネマティック)モードの液晶表示パネルとして構成されている。液晶表示パネル3は、第3基板としてのアレイ基板21、第4基板としての対向基板22、および第2液晶層23を備えている。アレイ基板21は、透明な絶縁基板としてのガラス基板24と、このガラス基板上に形成された複数の画素電極25と、これら各画素電極25を含むガラス基板上に形成された配向膜26と、を有している。また、アレイ基板21は、ガラス基板24上に形成された図示しない各種配線やスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)等を有している。対向基板22は、透明な絶縁基板としてのガラス基板27と、このガラス基板上に形成された共通電極28と、共通電極およびガラス基板上に形成された配向膜29と、を有している。この実施の形態において、第1シート14aおよびガラス基板27は一体に形成されている。このため、位相制御液晶素子1の第1基板11および液晶表示パネル3の対向基板22は透明な共通基板71を有し、それぞれ同一の基板で構成されている。画素電極25および共通電極28は、ITO等の透明な導電材料により形成されている。配向膜26および配向膜29には、プレチルト角が5°となるようラビングが施されている。
【0023】
アレイ基板21および対向基板22は、複数の第2スペーサ30により所定の隙間を保持して対向配置されている。アレイ基板21および対向基板22は、画素電極25および共通電極28が対向しているとともに、画像を表示する表示領域R2を有している。この実施の形態において、表示領域R2は、上述した位相制御領域R1と重なっている。アレイ基板21および対向基板22は、表示領域R2の外側で両基板の周縁部に配置されたシール材31により互いに接合されている。第2液晶層23は、アレイ基板21、対向基板22、およびシール材31の間に狭持されている。
【0024】
第2液晶層23の層厚は、5.0μmである。第2液晶層23を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.092である。液晶分子の捩れ角は90°、捩れピッチは60μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0025】
表示領域R2内において、アレイ基板21および対向基板22の一方の基板には、図示しない赤色、緑色、および青色の複数の着色層を有したカラーフィルタが配置されている。このため、液晶表示パネル3は、カラー表示が可能である。
【0026】
アレイ基板21の外面(外面側)には第1偏光板41が配置され、第2基板12の外面(外面側)には第2偏光板42が配置されている。第1偏光板41および第2偏光板42は、クロスニコル配置されている。このため、液晶表示パネル3は、電圧印加状態で黒色表示となるノーマリーホワイト表示となる。
【0027】
バックライトユニット51はアレイ基板21の外面側に設けられている。バックライトユニット51は、第1偏光板41と対向しているとともに導光板を含む導光体52、この導光体の一側縁に対向配置された光源53、および反射板54を有している。
【0028】
バックライトユニット51は、導光体52表面に対向して配置された高集光性のプリズムシート55(図10および図11)を有している。プリズムシート55は、導光体52から出射されるバックライト光の平行度(指向性)を高める機能を有している。プリズムシート55は、通常ノートPC(パーソナルコンピュータ)用の液晶表示装置などに用いるプリズムシートより平行度を高める構造である。プリズムシート55としては、例えば、長瀬産業製のコリメートシート等、出射されるバックライト光の平行度が極めて高くなるものが用いられる。
【0029】
輝度視角制御液晶素子4はバックライトユニット51および第1偏光板41間に配設されている。輝度視角制御液晶素子4は、第5基板81、第6基板82、および第3液晶層83を備えている。第5基板81は、透明な絶縁基板としてのガラス基板84aと、このガラス基板上に形成された第3電極85aと、第3電極を含むガラス基板上に形成された配向膜86aと、を有している。第6基板82は、透明な絶縁基板としてのガラス基板84bと、このガラス基板上に形成された第4電極85bと、第4電極およびガラス基板上に形成された配向膜86bと、を有している。第3電極85aおよび第4電極85bは、ITO等の透明な導電材料により形成されている。配向膜86aおよび配向膜86bには、ラビングが施されている。
【0030】
第5基板81および第6基板82は、複数の第3スペーサ87により所定の隙間を保持して対向配置されている。第5基板81および第6基板82は、第3電極85aおよび第4電極85bが対向しているとともに、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライトユニットから放出される光の拡散状態を制御可能な光拡散制御領域R4を有している。この実施の形態において、光拡散制御領域R4は、上述した表示領域R2と重なっている。
【0031】
第5基板81および第6基板82は、光拡散制御領域R4の外側で両基板の周縁部に配置されたシール材88により互いに接合されている。第3液晶層83は、第5基板81、第6基板82、およびシール材88の間に狭持されている。
【0032】
ここで、この実施の形態に係る第3液晶層83について説明する。第3液晶層83の層厚は、25μmである。第3液晶層83は、屈折率異方性の差(Δn)が0.23であるネマティック液晶に光架橋性ポリマ(polymer)を2wt%溶解した液晶材料で構成されている。第3液晶層83の液晶材料は室温状態では透明な液体である。
【0033】
第5基板81、第6基板82、およびシール材88の間に第3液晶層83を充填する際は、従来の液晶注入法と同様に真空注入法等を用いることで充填できる。従って、液晶を充填する際は液体状態で充填される。充填された液晶には、紫外線が照射され、ポリマ(ポリマーネットワーク)が形成されるとともに液晶分子が析出される。第3液晶層83の液晶分子の配向はほぼランダムとみなすことができる。形成されたポリマの屈折率は析出した液晶分子の常光屈折率に等しい。
【0034】
上記のように構成された輝度視角制御液晶素子4の第5基板81は、バックライトユニット51に対向して配置されている。第6基板82は、第1偏光板41に対向して配置されている。ここで、第6基板82は、例えば図示しない糊を介して第2偏光板42に貼り合わせても良い。
駆動部5は、液晶表示パネル3を駆動して表示状態を制御する。駆動部5は、表示モードのパターンに対応して位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を駆動する。
【0035】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1に駆動電圧を印加して輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態と、位相制御液晶素子に駆動電圧を印加しないで輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加した状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0036】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧4Vにて輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0037】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加していない状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0038】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.704Wである。
【0039】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧を印加しない状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧4Vを印加した状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性について説明する。
【0040】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0041】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.705Wである。
【0042】
次に、位相制御液晶素子1の表示モードである上記n型フェイズチェンジモードについて説明する。
図3に示すように、表示特性は、位相制御液晶素子1に印加される駆動電圧(第1電極16aおよび第2電極16b間の電位差)に応じて異なるが、特に、駆動電圧の上昇時と下降時とでも表示特性が異なる。駆動電圧の上昇時は線l1に示すように表示特性が変化し、駆動電圧の下降時は線l2に示すように表示特性が変化する。この表示特性の変化は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相状態の変化でもあり、第1液晶層13の作用によるものである。
【0043】
第1液晶層13は、駆動部5の駆動の元、駆動電圧上昇時からか下降時に変わった後にヒステリシスを利用して上昇時の位相状態を維持するメモリ機能を有している。より詳しくは、第1液晶層13は、駆動電圧が電圧V4まで上昇した後、電圧V4と、この電圧V4から下降した電圧V1との間で電圧V4時の位相状態に維持している。この実施の形態では、電圧V2に保持して電圧V4時の位相状態を維持している。
【0044】
電圧V1は電圧V4時の位相状態を維持できるしきい値電圧であり、電圧V3は線l2の表示特性(位相状態)を得るためのしきい値電圧である。この実施の形態で、電圧V1は、1.5V、電圧V2は上記3V、電圧V3は4V、電圧V4は上記5Vである。なお、言うまでもないが、ヒステリシスを利用する場合は、V4に限らず、少なくともV3まで上昇させれば良い。
【0045】
また、上記第1パターン表示モード時の表示特性は線l2で示されるため、位相制御液晶素子1を透過する光は拡散することが判る。上記第2パターン表示モード時は第1パターン表示モード時と反対に位相制御液晶素子1を透過する光は集束することが判る。これにより、第1パターン表示モード時は視野角の広い画像表示となり、また、第2パターン表示モード時は正面輝度の高い画像表示となることが判る。
【0046】
次に、位相制御液晶素子1がこの位相制御液晶素子を透過する光の位相状態を制御することにより、液晶表示装置の視野角を制御する原理について、図4ないし図9を用いて説明する。
【0047】
視野角特性のなかで特に重要な特性は、コントラスト視角特性および輝度視角特性である。このうち、コントラスト視角特性は黒色表示時の視角特性に大きく左右される。TNモードのように液晶分子61がほぼ垂直に配列した状態を用いる表示モードにおいては、優れた黒色表示特性得るため、液晶分子がほぼ垂直に配列した状態にて黒色表示をすることが多い。しかしながら、液晶分子61がほぼ垂直に配列した状態では、斜め視野において位相差が発生する。およそ液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)と液晶層厚と視角を乗じた位相差が発生する。
【0048】
本実施形態の場合、+480nm(×視角)の位相差が発生している。しかしながら、第1液晶層13に電圧を印加していない状態での位相差(図4および図5)は−480nm(×視角)となるため、第2液晶層23の位相差と合わせた位相差はゼロとなる。上記したことから、第1液晶層13を備えた位相制御液晶素子1を設けることにより、この位相制御液晶素子を設けない構成とした場合と比較してコントラスト視角特性を広くすることができる。
【0049】
一方で、第1液晶層13に電圧を印加し、液晶分子の振れを解き、液晶分子をほぼ垂直に配向させた状態(図8および図9)では、第2液晶層23同様、正の一軸性となる(+640nm)。このため、第2液晶層23の位相差と合わせた位相差は+1120nmとなる。上記したことから、第1液晶層13を備えた位相制御液晶素子1を設けることにより、この位相制御液晶素子を設けない構成とした場合と比較してコントラスト視角特性を著しく狭くすることができる。
【0050】
次に、輝度視角制御液晶素子4が、この輝度視角制御液晶素子を透過する光の拡散状態を制御することにより、液晶表示装置の輝度視角を制御できる原理について、図10および図11を用いて説明する。
輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧が印加されていない状態(図10)において、ネマティック液晶の液晶分子61の配向はほぼランダムである。このため、屈折率は、常光屈折率および異常光屈折率の平均となる。これに対し、ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、屈折率異方性の差(Δn)は、上述した屈折率異方性の差(Δn)の半分、つまり0.115程度となり、屈折率に差が生じることとなる。
【0051】
また、ポリマ91は、ランダムな3次元構造からなっているので、プリズムシート55を透過したバックライト光は、輝度視角制御液晶素子4にて拡散される。このため、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いた場合と同様、広い輝度視角が得られる。
【0052】
第3液晶層83の液晶分子61がほぼ垂直に配向するよう、輝度視角制御液晶素子4に十分な駆動電圧が印加されている状態(図11)において、液晶分子の配向はほぼ垂直となる。このため、第3液晶層83に入射する光の進行方向に対する屈折率は常光屈折率となる。これに対し、ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、ポリマ91および液晶分子61間に屈折率差は生じず、プリズムシート55を透過したバックライト光は輝度視角制御液晶素子4をそのまま透過する。
【0053】
上述したように、プリズムシート55により十分に高められた平行度の高い光を液晶表示パネル3(図1)に出射できる。このため、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いた場合よりもはるかに狭い輝度視角が得られる。この際、正面輝度は、輝度視角を絞っている分、その従来の液晶表示装置を用いた場合よりもはるかに高くなる。
【0054】
上記のように構成されたメモリ機能を有した位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、位相制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に視野角を制御することができる。視野角の広い第1パターン表示モードの際、第1液晶層13は、駆動電圧を5Vまで上昇させた後、3Vに保持して5V時の位相状態を維持している。第1パターン表示モード時に位相制御液晶素子1に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。なお、液晶表示装置の表示モードのパターンを制御する際は、消費電力を増大させることなくスイッチやボリューム1つで制御することができる。
【0055】
位相制御液晶素子1は、第1液晶層13を有している。第1液晶層13は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。上述したように、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角も制御できる。
【0056】
このため、モバイルPC、携帯電話、PDA,電子手帳、およびタブレットPC等、公共の場で使用する場合であっても、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。これにより、他人に表示内容を覗かれる心配を排除することができる。また、複数の観察者が表示画面を同時に、かつ、良好に視認できるようにもできる。
【0057】
MVAモードやツイステッドネマティックモード(TNモード)、ホモジニアスモード(HOMOモード)、ハイブリッドアラインネマティックモード等、ネマティック液晶を略垂直から水平配向、傾斜配向およびこれらに捩れを有する配向へと制御する液晶表示装置において、第1偏光板41および第2偏光板42は、ネマティク液晶が略垂直に配向した状態(電圧印加状態)にて黒色表示となるように配置されている。この状態では、第2液晶層23は、光学的に見て、ほぼ正の一軸性結晶とみなすことができる。従って、表示画面の斜め方向への視野においては、位相差が生じるので、表示画面の正面から観察する場合と比較してコントラスト比が低くなる。
【0058】
また、第1液晶層13において、液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は小さく、液晶分子の捩れピッチは短く、液晶分子の捩れ角は450°である。第1液晶層13は、第2液晶層23と比較しても十分に旋光性が小さい。このため、第1電極16aおよび第2電極16b間に電圧を印加していない状態において、第1液晶層13は、負の一軸性結晶とみなせる位相差板となる。
【0059】
従って、この状態では、略垂直に配向した状態の第2液晶層23の位相差を第1液晶層13が補償することにより、斜め方向の視野におけるコントラストの低下を抑制することができる。特に、第2液晶層23の位相差の絶対値、および第1液晶層13の位相差の絶対値が一致しているとその効果は最大となる。また、第1液晶層13および第2液晶層23の捩れ方向を一致させることにより、第1液晶層13は液晶表示パネル3(TNモード)の左右視角を拡大するように作用する。
【0060】
上記した効果は、第1液晶層13の液晶分子の捩れ角を以下のように制御した場合に効果的である。位相制御液晶素子1に電圧を印加した状態で、液晶分子を第1基板11平面および第2基板12平面に対して略垂直に配向させるとともに、電圧を印加しない状態で、液晶分子を捩れ角360°以上に配向させる場合。若しくは、位相制御液晶素子1に電圧を印加しない状態で液晶分子を第1基板11平面および第2基板12平面に対して略垂直に配向させるとともに、電圧を印加した状態で、液晶分子を捩れ角360°以上に配向させる場合である。
【0061】
位相制御液晶素子1は、液晶表示パネル3および第2偏光板42の間に位置するよう配置されている。これにより、第2偏光板42は、偏光子の役割を果たす。この場合、表示画面側である第2シート14b外面上に図示しない糊を介して貼り付けることが望ましい。貼り付けない場合、位相制御液晶素子1および第2偏光板42間に空気界面が存在し、また、間隙狭いとニュートンリング縞が視認されるようになり問題となる。逆に、位相制御液晶素子1および第2偏光板42間の隙間が広いと、間隙を維持するスペーサなどが必要となるほか、液晶表示装置全体の厚みを増大させることとなる。
【0062】
また、位相制御液晶素子1および液晶表示パネル3間も同様に、間隙を設けずに貼り合せることが望ましい。位相制御液晶素子1の第1シート14aおよび第2シート14bを、可暁性のあるプラスチックや薄板ガラスで構成した場合、位相制御液晶素子は、図示しない糊を介して液晶表示パネル3に貼り付ければ良い。
【0063】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。これらの制御は、双方の液晶層に印加する電圧を制御することにより、最も広視角な状態から最も狭視角な状態の間でアナログ的に自由にできる。輝度視角制御液晶素子4により視野角を狭く制御した状態(第3液晶層83が透明に制御された状態)では、表示画面の正面方向に出射光を集中させることができる。この場合、バックライト強度を弱めても十分な輝度を得ることができるため、消費電力を低減できる。
【0064】
第3液晶層83に電圧を印加していない状態での液晶分子の配向はランダムであり、配向膜86a、86bによる配向制御は必要ない。しかしながら、第3電極85aおよび第4電極85bを保護し、かつ、第3液晶層83の保持特性を高めるためにも配向膜86a、86bは設けたほうが望ましい。ただし、この場合、ラビング等の配向処理は不要である。
【0065】
第1電極16a、第2電極16b、第3電極85a、および第4電極85bは、それぞれ一体に形成されている。このため、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の消費電力は液晶表示パネル3の消費電力と比較しても十分に少なく、また、製造も容易である。このため、ガラス基板84a、84bのかわりにプラスチック基板や薄板ガラスを用いて輝度視角制御液晶素子4を構成することも容易である。この場合、液晶表示装置全体の厚みおよび重量をより軽減できる。
【0066】
位相制御液晶素子1は、従来の抵抗検出式タッチパネル内に第1配向膜17aおよび第2配向膜17bを形成し、第1液晶層13を狭持して構成されている。従って、第1配向膜17aおよび第2配向膜17bの形成、および液晶注入に係わる工程以外、位相制御液晶素子1は、従来の抵抗検出式タッチパネルの製造工程、および部材にて製造することができる。このため、液晶表示装置全体の重量および厚みを増加させることなく形成することができる。また、製造コストを殆ど増大させることなく液晶表示装置を形成することができる。
【0067】
位相制御液晶素子1は位置情報検出部2を有している。このため、位置情報検出部2により、入力領域R3の押圧された個所の位置情報を良好に検出することができる。位相制御液晶素子1は、第1液晶層13を狭持して構成されているが、従来の抵抗検出式タッチパネル同様、押圧された個所の位置情報を良好に検出することができる。
【0068】
第1基板11および対向基板22は共通基板71を有し、同一の基板で構成されている。このため、液晶表示装置全体の厚みおよび重量を軽減することができる。
【0069】
次に、第2の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。
位相制御液晶素子1の第1配向膜17aおよび第2配向膜17bには、プレチルト角が5°となるようラビングが施されている。
【0071】
第1液晶層13の層厚は、5.0μmである。第1液晶層13を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.072である。液晶分子の捩れ角は450°、捩れピッチは3.92μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0072】
位相制御液晶素子1は位置情報検出機能を有している。第1液晶層13は、第1基板11および第2基板12間を透過する光の位相状態を制御する機能を有している。なお、第1液晶層13は、上述したメモリ機能を有していない。
【0073】
輝度視角制御液晶素子4の第3液晶層83について説明する。
第3液晶層83の層厚は、10.0μmである。第3液晶層83は、屈折率異方性の差(Δn)が0.21であるネマティック液晶に光架橋性ポリマ(polymer)を2.0wt%溶解した材料にカイラル材が5wt%添加された液晶材料で構成されている。
【0074】
第3液晶層83を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう上記のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.20である。液晶分子の捩れ角は10回転、捩れピッチPは1.0μmである。
【0075】
屈折率異方性の差Δnと捩れピッチPの積ΔnPは、0.2μmであり、旋光性はほぼゼロとなる。また、平均屈折率nと捩れピッチPの積nPは、1.5μmであり、選択反射波長は赤外線の領域にある。第3液晶層83の液晶材料は室温状態では透明な液体である。第5基板81および第6基板82間に液晶材料を注入する際、液体状態で、真空注入法等の従来から知られている注入方法を用いて行う。
【0076】
輝度視角制御液晶素子4の表示モードはポリマースタビライズドモードであり、正式にはPSCT(Polymer Stabilized Cholesteric Texture)モードである。PSCTモードについては後述する。
【0077】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1に駆動電圧を印加しないで輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加した状態と、位相制御液晶素子に駆動電圧を印加して輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加しない状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0078】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧8Vにて位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0079】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧を印加しない状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0080】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.700Wである。
【0081】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧8Vを印加した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加しない状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0082】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0083】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.709Wである。
【0084】
次に、輝度視角制御液晶素子4の表示モードである上記PSCTモードについて説明する。
図12に示すように、表示特性は、輝度視角制御液晶素子4に印加する駆動電圧(第3電極85aおよび第4電極85b間)に応じて異なるが、特に、駆動電圧の上昇時と下降時とでも表示特性が異なる。駆動電圧の上昇時は線l3に示すように表示特性が維持され、駆動電圧の下降時は線l4に示すように表示特性が変化する。この表示特性の変化は、輝度視角制御液晶素子4を透過する光の拡散状態の変化でも有り、第3液晶層83の作用によるものである。
【0085】
第3液晶層83は、駆動部5の制御の元、駆動電圧下降時にヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有している。より詳しくは、第3液晶層83は、駆動電圧が電圧V5まで上昇した後、電圧V5から下降した電圧V3と、この電圧V3からさらに下降した電圧V1との間の電圧V2で電圧V3時の拡散状態を維持している。
【0086】
電圧V1は電圧V3時の拡散状態を維持できるしきい値電圧であり、駆動電圧下降時の電圧V3から電圧V1は輝度視角制御液晶素子4を透過する光を十分に拡散できる電圧であり、電圧V4は線l4の表示特性を得るためのしきい値電圧である。この実施の形態で、電圧V1は、1V、電圧V2は上記3V、電圧V3は11V、電圧V4は15V、電圧V5は上記20Vである。なお、言うまでもないが、ヒステリシスを利用する場合は、V5に限らず、少なくともV4まで上昇させれば良い。
【0087】
また、上記第1パターン表示モード時の表示特性は線l4で示されるため、輝度視角制御液晶素子4を透過する光は拡散することが判る。上記第2パターン表示モード時は第1パターン表示モード時と反対に、輝度視角制御液晶素子4を透過する光は集光することが判る。これにより、第1パターン表示モード時は視野角の広い画像表示となり、また、第2パターン表示モード時は正面輝度の高い画像表示となることが判る。
【0088】
次に、輝度視角制御液晶素子4がこの輝度視角制御液晶素子4を透過する光の拡散状態を制御することにより、液晶表示装置の輝度視角を制御できる原理について図13および図14を用いて説明する。
【0089】
第3液晶層83にポリマ91が形成されている。ポリマ91は、液晶材料を第5基板81および第6基板82間に注入した後、注入された液晶材料全体に紫外線を照射することで形成される。また、コレステリック液晶が析出される。
【0090】
輝度視角制御液晶素子4に印加される駆動電圧が少なくとも電圧V4まで上昇した後、電圧V4から下降した電圧V3と、この電圧V3からさらに下降した電圧V1との間で電圧V3時の拡散状態を維持している状態(図13)において、コレステリック液晶の螺旋状に配列した複数の液晶分子61の中心軸の延出方向はほぼランダムである。ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、第1パターン表示モード時において、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライト光は拡散する。
【0091】
輝度視角制御液晶素子4に、0Vまたは0VからV3までの範囲内で駆動電圧が印加されている状態(図14)において、螺旋状に配列した複数の液晶分子61の中心軸の延出方向は、第5基板81の平面および第6基板82の平面にほぼ垂直に交わる。このため、第2パターン表示モード時において、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライト光は集束する。
【0092】
上記のように構成された位相制御液晶素子1およびメモリ機能を有した輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、輝度視角制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に輝度視角を制御することができる。標準的な正面輝度が得られる第1パターン表示モードの際、第3液晶層83は、駆動電圧を20Vまで上昇させた後、3Vに保持して11V時の拡散状態を維持している。第1パターン表示モード時に輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。
【0093】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。第1液晶層13は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。そして、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角を制御できる。このため、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容を識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。
【0094】
次に、第3の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。この実施の形態において、他の構成は上述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。位相制御液晶素子1は、第1の実施の形態の位相制御液晶素子と同一であり、メモリ機能を有している。輝度視角制御液晶素子4は、第2の実施の形態の輝度視角制御液晶素子と同一であり、メモリ機能を有している。
【0096】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加した状態と、位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加しない状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0097】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0098】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0099】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.704Wである。
【0100】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)および輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加しない状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0101】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0102】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.700Wである。
【0103】
上記のように構成された位相制御液晶素子1およびメモリ機能を有した輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、位相制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に視野角を制御することができ、輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を制御することにより、容易に輝度視角を制御することができる。
【0104】
標準的な正面輝度が得られる第1パターン表示モードの際、第1液晶層13は、駆動電圧を5Vまで上昇させた後、3Vに保持して5V時の位相状態を維持し、また、第3液晶層83は、駆動電圧を20Vまで上昇させた後、3Vに保持して11V時の拡散状態を維持している。第1パターン表示モード時に位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。
【0105】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。第1液晶層13は、位相制御液晶素子を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。そして、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角を制御できる。このため、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容を識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。
【0106】
次に、比較例1として、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を除いて構成された以外は、上述した実施の形態に係る液晶表示装置と同様に構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性および消費電力について説明する。30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±40°と広くも狭くもない特性が得られる。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。また、正面コントラストは500:1である。画像表示時の消費電力は1.700Wである。
【0107】
次に、比較例2として、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1の表示モードがp型フェイズチェンジモードであり、輝度視角制御液晶素子4の表示モードがポリマーネットワークモードであり、正式にはPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モードである以外は、上述した実施の形態に係る液晶表示装置と同様に構成されている。なお、位相制御液晶素子1はヒステリシスを利用して位相状態を維持するメモリ機能を有しておらず、輝度視角制御液晶素子4はヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有していない。
【0108】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態と、位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加した状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0109】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧8Vにて位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧4Vにて輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0110】
まず、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態の各種表示特性および消費電力について説明する。
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。駆動電圧を印加しない状態での消費電力は、1.704Wである。
【0111】
次に、位相制御液晶素子1に駆動電圧8Vを印加した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧4Vを印加した状態の各種表示特性および消費電力について説明する。
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0112】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。駆動電圧を印加した状態での消費電力は、1.715Wであり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない構造とした場合よりも大きな値を示した。
【0113】
なお、この発明は、上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、図16に示すように、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、および駆動部5を備えていれば良い。位相制御液晶素子1の表示モードは、n型フェイズチェンジモードであり、位相制御液晶素子はヒステリシスを利用して位相状態を維持するメモリ機能を有していれば良い。
【0114】
また、図16に示した液晶表示装置では、図17に示すように、第1基板11および対向基板22は共通基板71を有していても良い。第1基板11および対向基板22を同一の共通基板71で構成することにより、液晶表示装置全体の厚みおよび重量を軽減することができる。位置情報検出機能が無くとも良い場合、位相制御液晶素子1は位置情報検出部2を設けずに形成されても良い。
【0115】
上述した実施の形態では、輝度視角制御液晶素子4の表示モードは、PSCTモードであるが、これに限らず、熱効果型スメクティックモード、または光書き込み型コレステリックモードであっても良い。つまり、輝度視角制御液晶素子4はヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有していれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の第1、第2、第3の実施の形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図2】図1に示した位相制御液晶素子の概略平面図。
【図3】図1に示した位相制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図4】図1に示した第1液晶層に電圧が印加されていない状態における第1液晶層の断面構造概略図。
【図5】図4に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図6】図1に示した第2液晶層の液晶分子が垂直に配向した場合における第2液晶層の断面構造概略図。
【図7】図6に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図8】図1に示した第1液晶層に電圧が印加されている状態における第1液晶層の断面構造概略図。
【図9】図8に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図10】図1に示した第3液晶層に電圧が印加されていない状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図11】図1に示した第3液晶層に電圧が印加されている状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図12】この発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置の輝度視角制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図13】輝度視角制御液晶素子に、図12に示したV4以上の駆動電圧を印加した後、電圧を下げてV1からV3の範囲内で駆動電圧を保持している状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図14】輝度視角制御液晶素子に、図12に示した0Vまたは0VからV3までの範囲内で駆動電圧が印加されている状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図15】この発明の比較例2における位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図16】この発明の実施の形態に係る液晶表示装置の変形例を示す断面図。
【図17】この発明の実施の形態に係る液晶表示装置の他の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0117】
1…位相制御液晶素子、2…位置情報検出部、3…液晶表示パネル、4…輝度視角制御液晶素子、11…第1基板、12…第2基板、13…第1液晶層、14a…第1シート、14b…第2シート、15a,15b…第1抵抗検出電極、15c,15d…第2抵抗検出電極、16a…第1電極、16b…第2電極、21…アレイ基板、22…対向基板、23…第2液晶層、41…第1偏光板、42…第2偏光板、51…バックライトユニット、81…第5基板、82…第6基板、83…第3液晶層、84a…ガラス基板、84b…ガラス基板、85a…第3電極、85b…第4電極。
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は様々な分野に応用され、ノートパソコン、モニター、カーナビゲーション、関数電卓、中小型TV、大型TV、携帯電話、電子手帳等の電子機器に用いられている。
【0003】
これら電子機器の中でも電子手帳、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、タブレットパソコン(PC)、ノートPC等は、軽薄短小である特徴から携帯して利用される機会が多い。また、POP(point of purchase)用途、ATM(automated teller machine)用途、券売機用途に用いられる液晶表示装置は、公共の場で利用される機会が多い。
【0004】
これらの用途では、使用状況によっては他人に表示内容を識別されては困る場合がある。例えば携帯電話やPDA、タブレットPCにプライベートな内容を公共の場において表示している場合である。こうした場合、視野角は狭いほうが望ましい。しかしながら、複数の人で表示画像を観察する機会もあることから視野角を制御できる機能を有していることが望まれている。視野角特性の問題は、携帯機器および公共情報端末機器に共通した問題である。
【0005】
近年、液晶表示装置やブラウン管(CRT)の視野角を制御する手段として、着脱可能なルーバーシート(例えば3M製のライトコントロールフィルム)が利用されている(例えば、特許文献1参照)。また、偏光板を用いる液晶表示装置においては、観察者側の偏光板を設けない構成とし、偏光メガネをかけたときのみ表示が識別できるシステムも応用されている。
【0006】
従来のルーバーシートは視野角を十分狭くさせるためにシート法線方向に数ミリ程度の遮光層を設けている。このため、ルーバーシートを用いた方法では、光の透過率が低い問題を有している。ルーバーシートの製造工程も複雑で製造コストも高い。ルーバーシートを着脱する際に手間がかかる問題も有している。また、偏光メガネを用いた方法では、不特定の人に表示画像を見せることができない問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−58066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記視野角特性の問題を解決するため、液晶表示装置に視野角制御用の視野角制御液晶素子を設けて視野角を制御する液晶表示装置が開発されている。しかしながら、視野角制御液晶素子は、常時、高電圧若しくは高電流を印加することによって視野角制御を行うため、視野角制御を行うための消費電力が増加してしまう。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、視野角制御に優れ、低消費電力化が可能な液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の他の態様に係る液晶表示装置は、
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極、および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極、および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、
第3電極、および前記第3電極に重なった第3配向膜を有した第3基板と、前記第3基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第4電極、および前記第4電極に重なっているとともに前記第3配向膜と対向した第4配向膜を有した第4基板と、前記第3基板および第4基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第3液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、視野角制御に優れ、低消費電力化が可能な液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながらこの発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置について詳細に説明する。
図1に示すように、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。
【0013】
位相制御液晶素子1は、第1基板11、この第1基板に所定の隙間を保持して対向配置された第2基板12、および第1液晶層13を有している。第1基板11は、透明な絶縁基板として、例えばポリエステルフィルムやガラスからなる第1シート14aと、この第1シート上に配設されているとともにITO(インジウム・ティン・オキサイド)等の透明な導電材料により形成された第1電極16aと、この第1電極上に配設された第1配向膜17aと、を有している。第2基板12は、透明な絶縁基板として、例えばポリエステルフィルムやガラスからなる第2シート14bと、この第2シート上に配設されているとともにITO等の透明な導電材料により形成された第2電極16bと、この第2電極上に配設された第2配向膜17bと、を有している。第1配向膜17aおよび第2配向膜17bには、プレチルト角が88°となるようラビングが施されている。
【0014】
第1基板11および第2基板12は、第1配向膜17aおよび第2配向膜17bが対面するように対向配置され、複数の第1スペーサ18により所定の隙間を置いて保持されている。第1スペーサ18は、絶縁材料で構成されている。第1電極16aおよび第2電極16bは絶縁状態に維持されている。第1基板11および第2基板12は、第1電極16aおよび第2電極16bが対向した領域であるとともに、これら第1基板および第2基板間を透過する光の位相状態を制御可能な位相制御領域R1を有している。第1基板11および第2基板12は、第1電極16aおよび第2電極16bの周縁部に配置されたシール材19により互いに接合されている。第1液晶層13は、第1基板11、第2基板12、およびシール材19の間に狭持されている。
【0015】
第1液晶層13の層厚は、5.0μmである。第1液晶層13を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.042である。液晶分子の捩れ角は450°、捩れピッチは3.57μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0016】
上記した第1液晶層13は、第1基板11および第2基板12間を透過する光の位相状態を制御する機能を有している。より詳しくは、第1液晶層13は、液晶分子の配向を制御することで視野角を制御している。第1液晶層13の液晶分子の配向を制御する際は、位相制御液晶素子1に電圧を印加して、第1電極16aおよび第2電極16b間の電位差を制御することで行う。位相制御液晶素子1の表示モードは、n型フェイズチェンジモードである。n型フェイズチェンジモードについては後述する。
【0017】
次に、上記位相制御液晶素子1の製造方法について説明する。
用意した第1シート14a上に第1電極16aを形成し、第1シートおよび第1電極上に第1配向膜17aを塗布する。その後、第1配向膜17aに配向処理としてラビングを施して第1基板11を形成する。一方、第2基板12において、用意した第2シート14b上に第2電極16bを形成し、第2シートおよび第2電極上に第2配向膜17bを塗布する。その後、第2配向膜17bに配向処理としてラビングを施して第2基板12を形成する。
【0018】
次いで、第1基板11または第2基板12上にスペーサを散布した後、第1基板または第2基板周縁部に、例えば熱硬化型のシール材19を塗布する。続いて、第1基板11および第2基板12を対向配置し、焼成する。これにより、第1基板11および第2基板12は接合される。その後、第1基板11および第2基板12間に液晶を充填する。充填する際、例えば、真空注入法等の方法を用い、シール材19の一部に設けられた液晶注入口より液晶を注入して充填する。液晶注入口は封止材で封止する。
【0019】
次に、位相制御液晶素子1の位置情報検出機能について説明する。
図1および図2に示すように、位相制御液晶素子1は抵抗検出式タッチパネルとしても機能する。位相制御液晶素子1は、第1電極16aおよび第2電極16bの重なった入力領域R3と、位置情報検出部2を有している。
【0020】
位置情報検出部2は、第1抵抗検出電極15a、15bおよび第2抵抗検出電極15c、15dを含み、入力領域R3の押圧された個所の位置情報を検出する機能を有している。第1抵抗検出電極15a、15bは、第1基板11上の矩形状の第1電極(抵抗層)16aにそれぞれ接続されているとともにこの第1電極の対向する一対の辺に設けられている。第2抵抗検出電極15c、15dは、第2基板12上の第1電極(抵抗層)16aにそれぞれ直交して位置し、かつ、矩形状の第2電極16bに接続されているとともにこの第2電極の対向する一対の辺に設けられている。ここで、第2基板12は、入力領域R3と重なった入力面Sを含んでいる。なお、後述するが、第2基板12の入力面S上に第2偏光板42が配置されている。
【0021】
第2偏光板42(位相制御液晶素子1)の外面が押圧されると第1電極16aおよび第2電極16bが接触するため、位置情報検出部2は、そのときの電極間の抵抗(第1抵抗検出電極15aおよび第2抵抗検出電極15c間、第1抵抗検出電極15aおよび第2抵抗検出電極15d間、第1抵抗検出電極15bおよび第2抵抗検出電極15c間、並びに第1抵抗検出電極15bおよび第2抵抗検出電極15d間の4通り)を計測することにより、押圧された個所の位置情報を検出することができる。第1抵抗検出電極15a、15bおよび第2抵抗検出電極15c、15dは、Al、Mo等低抵抗のメタルを蒸着若しくはスパッタリング法にて成膜した後、パターニングして形成される。これにより、位相制御液晶素子1が完成する。
【0022】
液晶表示パネル3は、TN(ツイステッドネマティック)モードの液晶表示パネルとして構成されている。液晶表示パネル3は、第3基板としてのアレイ基板21、第4基板としての対向基板22、および第2液晶層23を備えている。アレイ基板21は、透明な絶縁基板としてのガラス基板24と、このガラス基板上に形成された複数の画素電極25と、これら各画素電極25を含むガラス基板上に形成された配向膜26と、を有している。また、アレイ基板21は、ガラス基板24上に形成された図示しない各種配線やスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)等を有している。対向基板22は、透明な絶縁基板としてのガラス基板27と、このガラス基板上に形成された共通電極28と、共通電極およびガラス基板上に形成された配向膜29と、を有している。この実施の形態において、第1シート14aおよびガラス基板27は一体に形成されている。このため、位相制御液晶素子1の第1基板11および液晶表示パネル3の対向基板22は透明な共通基板71を有し、それぞれ同一の基板で構成されている。画素電極25および共通電極28は、ITO等の透明な導電材料により形成されている。配向膜26および配向膜29には、プレチルト角が5°となるようラビングが施されている。
【0023】
アレイ基板21および対向基板22は、複数の第2スペーサ30により所定の隙間を保持して対向配置されている。アレイ基板21および対向基板22は、画素電極25および共通電極28が対向しているとともに、画像を表示する表示領域R2を有している。この実施の形態において、表示領域R2は、上述した位相制御領域R1と重なっている。アレイ基板21および対向基板22は、表示領域R2の外側で両基板の周縁部に配置されたシール材31により互いに接合されている。第2液晶層23は、アレイ基板21、対向基板22、およびシール材31の間に狭持されている。
【0024】
第2液晶層23の層厚は、5.0μmである。第2液晶層23を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.092である。液晶分子の捩れ角は90°、捩れピッチは60μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0025】
表示領域R2内において、アレイ基板21および対向基板22の一方の基板には、図示しない赤色、緑色、および青色の複数の着色層を有したカラーフィルタが配置されている。このため、液晶表示パネル3は、カラー表示が可能である。
【0026】
アレイ基板21の外面(外面側)には第1偏光板41が配置され、第2基板12の外面(外面側)には第2偏光板42が配置されている。第1偏光板41および第2偏光板42は、クロスニコル配置されている。このため、液晶表示パネル3は、電圧印加状態で黒色表示となるノーマリーホワイト表示となる。
【0027】
バックライトユニット51はアレイ基板21の外面側に設けられている。バックライトユニット51は、第1偏光板41と対向しているとともに導光板を含む導光体52、この導光体の一側縁に対向配置された光源53、および反射板54を有している。
【0028】
バックライトユニット51は、導光体52表面に対向して配置された高集光性のプリズムシート55(図10および図11)を有している。プリズムシート55は、導光体52から出射されるバックライト光の平行度(指向性)を高める機能を有している。プリズムシート55は、通常ノートPC(パーソナルコンピュータ)用の液晶表示装置などに用いるプリズムシートより平行度を高める構造である。プリズムシート55としては、例えば、長瀬産業製のコリメートシート等、出射されるバックライト光の平行度が極めて高くなるものが用いられる。
【0029】
輝度視角制御液晶素子4はバックライトユニット51および第1偏光板41間に配設されている。輝度視角制御液晶素子4は、第5基板81、第6基板82、および第3液晶層83を備えている。第5基板81は、透明な絶縁基板としてのガラス基板84aと、このガラス基板上に形成された第3電極85aと、第3電極を含むガラス基板上に形成された配向膜86aと、を有している。第6基板82は、透明な絶縁基板としてのガラス基板84bと、このガラス基板上に形成された第4電極85bと、第4電極およびガラス基板上に形成された配向膜86bと、を有している。第3電極85aおよび第4電極85bは、ITO等の透明な導電材料により形成されている。配向膜86aおよび配向膜86bには、ラビングが施されている。
【0030】
第5基板81および第6基板82は、複数の第3スペーサ87により所定の隙間を保持して対向配置されている。第5基板81および第6基板82は、第3電極85aおよび第4電極85bが対向しているとともに、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライトユニットから放出される光の拡散状態を制御可能な光拡散制御領域R4を有している。この実施の形態において、光拡散制御領域R4は、上述した表示領域R2と重なっている。
【0031】
第5基板81および第6基板82は、光拡散制御領域R4の外側で両基板の周縁部に配置されたシール材88により互いに接合されている。第3液晶層83は、第5基板81、第6基板82、およびシール材88の間に狭持されている。
【0032】
ここで、この実施の形態に係る第3液晶層83について説明する。第3液晶層83の層厚は、25μmである。第3液晶層83は、屈折率異方性の差(Δn)が0.23であるネマティック液晶に光架橋性ポリマ(polymer)を2wt%溶解した液晶材料で構成されている。第3液晶層83の液晶材料は室温状態では透明な液体である。
【0033】
第5基板81、第6基板82、およびシール材88の間に第3液晶層83を充填する際は、従来の液晶注入法と同様に真空注入法等を用いることで充填できる。従って、液晶を充填する際は液体状態で充填される。充填された液晶には、紫外線が照射され、ポリマ(ポリマーネットワーク)が形成されるとともに液晶分子が析出される。第3液晶層83の液晶分子の配向はほぼランダムとみなすことができる。形成されたポリマの屈折率は析出した液晶分子の常光屈折率に等しい。
【0034】
上記のように構成された輝度視角制御液晶素子4の第5基板81は、バックライトユニット51に対向して配置されている。第6基板82は、第1偏光板41に対向して配置されている。ここで、第6基板82は、例えば図示しない糊を介して第2偏光板42に貼り合わせても良い。
駆動部5は、液晶表示パネル3を駆動して表示状態を制御する。駆動部5は、表示モードのパターンに対応して位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を駆動する。
【0035】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1に駆動電圧を印加して輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態と、位相制御液晶素子に駆動電圧を印加しないで輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加した状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0036】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧4Vにて輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0037】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加していない状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0038】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.704Wである。
【0039】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧を印加しない状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧4Vを印加した状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性について説明する。
【0040】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0041】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.705Wである。
【0042】
次に、位相制御液晶素子1の表示モードである上記n型フェイズチェンジモードについて説明する。
図3に示すように、表示特性は、位相制御液晶素子1に印加される駆動電圧(第1電極16aおよび第2電極16b間の電位差)に応じて異なるが、特に、駆動電圧の上昇時と下降時とでも表示特性が異なる。駆動電圧の上昇時は線l1に示すように表示特性が変化し、駆動電圧の下降時は線l2に示すように表示特性が変化する。この表示特性の変化は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相状態の変化でもあり、第1液晶層13の作用によるものである。
【0043】
第1液晶層13は、駆動部5の駆動の元、駆動電圧上昇時からか下降時に変わった後にヒステリシスを利用して上昇時の位相状態を維持するメモリ機能を有している。より詳しくは、第1液晶層13は、駆動電圧が電圧V4まで上昇した後、電圧V4と、この電圧V4から下降した電圧V1との間で電圧V4時の位相状態に維持している。この実施の形態では、電圧V2に保持して電圧V4時の位相状態を維持している。
【0044】
電圧V1は電圧V4時の位相状態を維持できるしきい値電圧であり、電圧V3は線l2の表示特性(位相状態)を得るためのしきい値電圧である。この実施の形態で、電圧V1は、1.5V、電圧V2は上記3V、電圧V3は4V、電圧V4は上記5Vである。なお、言うまでもないが、ヒステリシスを利用する場合は、V4に限らず、少なくともV3まで上昇させれば良い。
【0045】
また、上記第1パターン表示モード時の表示特性は線l2で示されるため、位相制御液晶素子1を透過する光は拡散することが判る。上記第2パターン表示モード時は第1パターン表示モード時と反対に位相制御液晶素子1を透過する光は集束することが判る。これにより、第1パターン表示モード時は視野角の広い画像表示となり、また、第2パターン表示モード時は正面輝度の高い画像表示となることが判る。
【0046】
次に、位相制御液晶素子1がこの位相制御液晶素子を透過する光の位相状態を制御することにより、液晶表示装置の視野角を制御する原理について、図4ないし図9を用いて説明する。
【0047】
視野角特性のなかで特に重要な特性は、コントラスト視角特性および輝度視角特性である。このうち、コントラスト視角特性は黒色表示時の視角特性に大きく左右される。TNモードのように液晶分子61がほぼ垂直に配列した状態を用いる表示モードにおいては、優れた黒色表示特性得るため、液晶分子がほぼ垂直に配列した状態にて黒色表示をすることが多い。しかしながら、液晶分子61がほぼ垂直に配列した状態では、斜め視野において位相差が発生する。およそ液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)と液晶層厚と視角を乗じた位相差が発生する。
【0048】
本実施形態の場合、+480nm(×視角)の位相差が発生している。しかしながら、第1液晶層13に電圧を印加していない状態での位相差(図4および図5)は−480nm(×視角)となるため、第2液晶層23の位相差と合わせた位相差はゼロとなる。上記したことから、第1液晶層13を備えた位相制御液晶素子1を設けることにより、この位相制御液晶素子を設けない構成とした場合と比較してコントラスト視角特性を広くすることができる。
【0049】
一方で、第1液晶層13に電圧を印加し、液晶分子の振れを解き、液晶分子をほぼ垂直に配向させた状態(図8および図9)では、第2液晶層23同様、正の一軸性となる(+640nm)。このため、第2液晶層23の位相差と合わせた位相差は+1120nmとなる。上記したことから、第1液晶層13を備えた位相制御液晶素子1を設けることにより、この位相制御液晶素子を設けない構成とした場合と比較してコントラスト視角特性を著しく狭くすることができる。
【0050】
次に、輝度視角制御液晶素子4が、この輝度視角制御液晶素子を透過する光の拡散状態を制御することにより、液晶表示装置の輝度視角を制御できる原理について、図10および図11を用いて説明する。
輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧が印加されていない状態(図10)において、ネマティック液晶の液晶分子61の配向はほぼランダムである。このため、屈折率は、常光屈折率および異常光屈折率の平均となる。これに対し、ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、屈折率異方性の差(Δn)は、上述した屈折率異方性の差(Δn)の半分、つまり0.115程度となり、屈折率に差が生じることとなる。
【0051】
また、ポリマ91は、ランダムな3次元構造からなっているので、プリズムシート55を透過したバックライト光は、輝度視角制御液晶素子4にて拡散される。このため、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いた場合と同様、広い輝度視角が得られる。
【0052】
第3液晶層83の液晶分子61がほぼ垂直に配向するよう、輝度視角制御液晶素子4に十分な駆動電圧が印加されている状態(図11)において、液晶分子の配向はほぼ垂直となる。このため、第3液晶層83に入射する光の進行方向に対する屈折率は常光屈折率となる。これに対し、ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、ポリマ91および液晶分子61間に屈折率差は生じず、プリズムシート55を透過したバックライト光は輝度視角制御液晶素子4をそのまま透過する。
【0053】
上述したように、プリズムシート55により十分に高められた平行度の高い光を液晶表示パネル3(図1)に出射できる。このため、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いた場合よりもはるかに狭い輝度視角が得られる。この際、正面輝度は、輝度視角を絞っている分、その従来の液晶表示装置を用いた場合よりもはるかに高くなる。
【0054】
上記のように構成されたメモリ機能を有した位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、位相制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に視野角を制御することができる。視野角の広い第1パターン表示モードの際、第1液晶層13は、駆動電圧を5Vまで上昇させた後、3Vに保持して5V時の位相状態を維持している。第1パターン表示モード時に位相制御液晶素子1に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。なお、液晶表示装置の表示モードのパターンを制御する際は、消費電力を増大させることなくスイッチやボリューム1つで制御することができる。
【0055】
位相制御液晶素子1は、第1液晶層13を有している。第1液晶層13は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。上述したように、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角も制御できる。
【0056】
このため、モバイルPC、携帯電話、PDA,電子手帳、およびタブレットPC等、公共の場で使用する場合であっても、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。これにより、他人に表示内容を覗かれる心配を排除することができる。また、複数の観察者が表示画面を同時に、かつ、良好に視認できるようにもできる。
【0057】
MVAモードやツイステッドネマティックモード(TNモード)、ホモジニアスモード(HOMOモード)、ハイブリッドアラインネマティックモード等、ネマティック液晶を略垂直から水平配向、傾斜配向およびこれらに捩れを有する配向へと制御する液晶表示装置において、第1偏光板41および第2偏光板42は、ネマティク液晶が略垂直に配向した状態(電圧印加状態)にて黒色表示となるように配置されている。この状態では、第2液晶層23は、光学的に見て、ほぼ正の一軸性結晶とみなすことができる。従って、表示画面の斜め方向への視野においては、位相差が生じるので、表示画面の正面から観察する場合と比較してコントラスト比が低くなる。
【0058】
また、第1液晶層13において、液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は小さく、液晶分子の捩れピッチは短く、液晶分子の捩れ角は450°である。第1液晶層13は、第2液晶層23と比較しても十分に旋光性が小さい。このため、第1電極16aおよび第2電極16b間に電圧を印加していない状態において、第1液晶層13は、負の一軸性結晶とみなせる位相差板となる。
【0059】
従って、この状態では、略垂直に配向した状態の第2液晶層23の位相差を第1液晶層13が補償することにより、斜め方向の視野におけるコントラストの低下を抑制することができる。特に、第2液晶層23の位相差の絶対値、および第1液晶層13の位相差の絶対値が一致しているとその効果は最大となる。また、第1液晶層13および第2液晶層23の捩れ方向を一致させることにより、第1液晶層13は液晶表示パネル3(TNモード)の左右視角を拡大するように作用する。
【0060】
上記した効果は、第1液晶層13の液晶分子の捩れ角を以下のように制御した場合に効果的である。位相制御液晶素子1に電圧を印加した状態で、液晶分子を第1基板11平面および第2基板12平面に対して略垂直に配向させるとともに、電圧を印加しない状態で、液晶分子を捩れ角360°以上に配向させる場合。若しくは、位相制御液晶素子1に電圧を印加しない状態で液晶分子を第1基板11平面および第2基板12平面に対して略垂直に配向させるとともに、電圧を印加した状態で、液晶分子を捩れ角360°以上に配向させる場合である。
【0061】
位相制御液晶素子1は、液晶表示パネル3および第2偏光板42の間に位置するよう配置されている。これにより、第2偏光板42は、偏光子の役割を果たす。この場合、表示画面側である第2シート14b外面上に図示しない糊を介して貼り付けることが望ましい。貼り付けない場合、位相制御液晶素子1および第2偏光板42間に空気界面が存在し、また、間隙狭いとニュートンリング縞が視認されるようになり問題となる。逆に、位相制御液晶素子1および第2偏光板42間の隙間が広いと、間隙を維持するスペーサなどが必要となるほか、液晶表示装置全体の厚みを増大させることとなる。
【0062】
また、位相制御液晶素子1および液晶表示パネル3間も同様に、間隙を設けずに貼り合せることが望ましい。位相制御液晶素子1の第1シート14aおよび第2シート14bを、可暁性のあるプラスチックや薄板ガラスで構成した場合、位相制御液晶素子は、図示しない糊を介して液晶表示パネル3に貼り付ければ良い。
【0063】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。これらの制御は、双方の液晶層に印加する電圧を制御することにより、最も広視角な状態から最も狭視角な状態の間でアナログ的に自由にできる。輝度視角制御液晶素子4により視野角を狭く制御した状態(第3液晶層83が透明に制御された状態)では、表示画面の正面方向に出射光を集中させることができる。この場合、バックライト強度を弱めても十分な輝度を得ることができるため、消費電力を低減できる。
【0064】
第3液晶層83に電圧を印加していない状態での液晶分子の配向はランダムであり、配向膜86a、86bによる配向制御は必要ない。しかしながら、第3電極85aおよび第4電極85bを保護し、かつ、第3液晶層83の保持特性を高めるためにも配向膜86a、86bは設けたほうが望ましい。ただし、この場合、ラビング等の配向処理は不要である。
【0065】
第1電極16a、第2電極16b、第3電極85a、および第4電極85bは、それぞれ一体に形成されている。このため、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の消費電力は液晶表示パネル3の消費電力と比較しても十分に少なく、また、製造も容易である。このため、ガラス基板84a、84bのかわりにプラスチック基板や薄板ガラスを用いて輝度視角制御液晶素子4を構成することも容易である。この場合、液晶表示装置全体の厚みおよび重量をより軽減できる。
【0066】
位相制御液晶素子1は、従来の抵抗検出式タッチパネル内に第1配向膜17aおよび第2配向膜17bを形成し、第1液晶層13を狭持して構成されている。従って、第1配向膜17aおよび第2配向膜17bの形成、および液晶注入に係わる工程以外、位相制御液晶素子1は、従来の抵抗検出式タッチパネルの製造工程、および部材にて製造することができる。このため、液晶表示装置全体の重量および厚みを増加させることなく形成することができる。また、製造コストを殆ど増大させることなく液晶表示装置を形成することができる。
【0067】
位相制御液晶素子1は位置情報検出部2を有している。このため、位置情報検出部2により、入力領域R3の押圧された個所の位置情報を良好に検出することができる。位相制御液晶素子1は、第1液晶層13を狭持して構成されているが、従来の抵抗検出式タッチパネル同様、押圧された個所の位置情報を良好に検出することができる。
【0068】
第1基板11および対向基板22は共通基板71を有し、同一の基板で構成されている。このため、液晶表示装置全体の厚みおよび重量を軽減することができる。
【0069】
次に、第2の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。この実施の形態において、他の構成は上述した第1の実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。
位相制御液晶素子1の第1配向膜17aおよび第2配向膜17bには、プレチルト角が5°となるようラビングが施されている。
【0071】
第1液晶層13の層厚は、5.0μmである。第1液晶層13を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう所定のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.072である。液晶分子の捩れ角は450°、捩れピッチは3.92μmである。液晶分子の捩れは左回りである。
【0072】
位相制御液晶素子1は位置情報検出機能を有している。第1液晶層13は、第1基板11および第2基板12間を透過する光の位相状態を制御する機能を有している。なお、第1液晶層13は、上述したメモリ機能を有していない。
【0073】
輝度視角制御液晶素子4の第3液晶層83について説明する。
第3液晶層83の層厚は、10.0μmである。第3液晶層83は、屈折率異方性の差(Δn)が0.21であるネマティック液晶に光架橋性ポリマ(polymer)を2.0wt%溶解した材料にカイラル材が5wt%添加された液晶材料で構成されている。
【0074】
第3液晶層83を構成する液晶材料には、以下に示す特性が得られるよう上記のカイラル材が添加されている。液晶材料の屈折率異方性の差(Δn)は、590nmの波長に対して0.20である。液晶分子の捩れ角は10回転、捩れピッチPは1.0μmである。
【0075】
屈折率異方性の差Δnと捩れピッチPの積ΔnPは、0.2μmであり、旋光性はほぼゼロとなる。また、平均屈折率nと捩れピッチPの積nPは、1.5μmであり、選択反射波長は赤外線の領域にある。第3液晶層83の液晶材料は室温状態では透明な液体である。第5基板81および第6基板82間に液晶材料を注入する際、液体状態で、真空注入法等の従来から知られている注入方法を用いて行う。
【0076】
輝度視角制御液晶素子4の表示モードはポリマースタビライズドモードであり、正式にはPSCT(Polymer Stabilized Cholesteric Texture)モードである。PSCTモードについては後述する。
【0077】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1に駆動電圧を印加しないで輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加した状態と、位相制御液晶素子に駆動電圧を印加して輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加しない状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0078】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧8Vにて位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0079】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧を印加しない状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0080】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.700Wである。
【0081】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧8Vを印加した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加しない状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0082】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0083】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.709Wである。
【0084】
次に、輝度視角制御液晶素子4の表示モードである上記PSCTモードについて説明する。
図12に示すように、表示特性は、輝度視角制御液晶素子4に印加する駆動電圧(第3電極85aおよび第4電極85b間)に応じて異なるが、特に、駆動電圧の上昇時と下降時とでも表示特性が異なる。駆動電圧の上昇時は線l3に示すように表示特性が維持され、駆動電圧の下降時は線l4に示すように表示特性が変化する。この表示特性の変化は、輝度視角制御液晶素子4を透過する光の拡散状態の変化でも有り、第3液晶層83の作用によるものである。
【0085】
第3液晶層83は、駆動部5の制御の元、駆動電圧下降時にヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有している。より詳しくは、第3液晶層83は、駆動電圧が電圧V5まで上昇した後、電圧V5から下降した電圧V3と、この電圧V3からさらに下降した電圧V1との間の電圧V2で電圧V3時の拡散状態を維持している。
【0086】
電圧V1は電圧V3時の拡散状態を維持できるしきい値電圧であり、駆動電圧下降時の電圧V3から電圧V1は輝度視角制御液晶素子4を透過する光を十分に拡散できる電圧であり、電圧V4は線l4の表示特性を得るためのしきい値電圧である。この実施の形態で、電圧V1は、1V、電圧V2は上記3V、電圧V3は11V、電圧V4は15V、電圧V5は上記20Vである。なお、言うまでもないが、ヒステリシスを利用する場合は、V5に限らず、少なくともV4まで上昇させれば良い。
【0087】
また、上記第1パターン表示モード時の表示特性は線l4で示されるため、輝度視角制御液晶素子4を透過する光は拡散することが判る。上記第2パターン表示モード時は第1パターン表示モード時と反対に、輝度視角制御液晶素子4を透過する光は集光することが判る。これにより、第1パターン表示モード時は視野角の広い画像表示となり、また、第2パターン表示モード時は正面輝度の高い画像表示となることが判る。
【0088】
次に、輝度視角制御液晶素子4がこの輝度視角制御液晶素子4を透過する光の拡散状態を制御することにより、液晶表示装置の輝度視角を制御できる原理について図13および図14を用いて説明する。
【0089】
第3液晶層83にポリマ91が形成されている。ポリマ91は、液晶材料を第5基板81および第6基板82間に注入した後、注入された液晶材料全体に紫外線を照射することで形成される。また、コレステリック液晶が析出される。
【0090】
輝度視角制御液晶素子4に印加される駆動電圧が少なくとも電圧V4まで上昇した後、電圧V4から下降した電圧V3と、この電圧V3からさらに下降した電圧V1との間で電圧V3時の拡散状態を維持している状態(図13)において、コレステリック液晶の螺旋状に配列した複数の液晶分子61の中心軸の延出方向はほぼランダムである。ポリマ91の屈折率は析出した液晶分子61の常光屈折率に等しい。このため、第1パターン表示モード時において、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライト光は拡散する。
【0091】
輝度視角制御液晶素子4に、0Vまたは0VからV3までの範囲内で駆動電圧が印加されている状態(図14)において、螺旋状に配列した複数の液晶分子61の中心軸の延出方向は、第5基板81の平面および第6基板82の平面にほぼ垂直に交わる。このため、第2パターン表示モード時において、輝度視角制御液晶素子4を透過するバックライト光は集束する。
【0092】
上記のように構成された位相制御液晶素子1およびメモリ機能を有した輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、輝度視角制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に輝度視角を制御することができる。標準的な正面輝度が得られる第1パターン表示モードの際、第3液晶層83は、駆動電圧を20Vまで上昇させた後、3Vに保持して11V時の拡散状態を維持している。第1パターン表示モード時に輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。
【0093】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。第1液晶層13は、位相制御液晶素子1を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。そして、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角を制御できる。このため、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容を識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。
【0094】
次に、第3の実施の形態に係る液晶表示装置について説明する。この実施の形態において、他の構成は上述した実施の形態と同一であり、同一の部分には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、輝度視角制御液晶素子4、および駆動部5を備えている。位相制御液晶素子1は、第1の実施の形態の位相制御液晶素子と同一であり、メモリ機能を有している。輝度視角制御液晶素子4は、第2の実施の形態の輝度視角制御液晶素子と同一であり、メモリ機能を有している。
【0096】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加した状態と、位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加しない状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0097】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して3Vに保持して輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0098】
まず、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)に駆動電圧5Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧20Vを印加した後、ヒステリシスを利用して駆動電圧を下げ3Vの印加を保持した状態の第1パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0099】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。上記第1パターン表示モード時の消費電力は、1.704Wである。
【0100】
次に、位相制御液晶素子1(第1電極16aおよび第2電極16b間)および輝度視角制御液晶素子4(第3電極85aおよび第4電極85b間)に駆動電圧を印加しない状態の第2パターン表示モードにおける各種表示特性および消費電力について説明する。
【0101】
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0102】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。上記第2パターン表示モード時の消費電力は、1.700Wである。
【0103】
上記のように構成された位相制御液晶素子1およびメモリ機能を有した輝度視角制御液晶素子4を備えた液晶表示装置によれば、位相制御液晶素子に印加する電圧を制御することにより、容易に視野角を制御することができ、輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を制御することにより、容易に輝度視角を制御することができる。
【0104】
標準的な正面輝度が得られる第1パターン表示モードの際、第1液晶層13は、駆動電圧を5Vまで上昇させた後、3Vに保持して5V時の位相状態を維持し、また、第3液晶層83は、駆動電圧を20Vまで上昇させた後、3Vに保持して11V時の拡散状態を維持している。第1パターン表示モード時に位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に印加する電圧を小さくすることができるため、低消費電力化が可能である。
【0105】
位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4の双方を設けることにより、コントラスト視角および輝度視角を同時に制御することが可能となる。第1液晶層13は、位相制御液晶素子を透過する光の位相差や進行方向を制御できる。そして、位相制御液晶素子1は視野角やコントラスト視角を制御できる。このため、表示モードのパターンを切替えることにより、他人に表示内容を識別されては困る場合には視野角を狭く、また複数の観察者で表示画像を観察する場合には視野角を広くすることができる。
【0106】
次に、比較例1として、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4を除いて構成された以外は、上述した実施の形態に係る液晶表示装置と同様に構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性および消費電力について説明する。30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±40°と広くも狭くもない特性が得られる。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。また、正面コントラストは500:1である。画像表示時の消費電力は1.700Wである。
【0107】
次に、比較例2として、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1の表示モードがp型フェイズチェンジモードであり、輝度視角制御液晶素子4の表示モードがポリマーネットワークモードであり、正式にはPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モードである以外は、上述した実施の形態に係る液晶表示装置と同様に構成されている。なお、位相制御液晶素子1はヒステリシスを利用して位相状態を維持するメモリ機能を有しておらず、輝度視角制御液晶素子4はヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有していない。
【0108】
ここで、本願発明者等は、上記位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態と、位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に駆動電圧を印加した状態と、の2通りにおいて、液晶表示装置を用いて画像を表示し、輝度視角、コントラスト視角、正面輝度、および正面コントラスト特性の各種表示特性を調査し、消費電力を測定した。
【0109】
その際、駆動部5は、TFTを介して駆動電圧4Vにて液晶表示パネル3を駆動した。位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加する際、駆動部5は、駆動電圧8Vにて位相制御液晶素子を駆動し、駆動電圧4Vにて輝度視角制御液晶素子を駆動する。また、バックライトユニット51は点灯した状態とし、液晶表示装置を照度0lx(ルクス)の環境下に配置した。
【0110】
まず、位相制御液晶素子1および輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧を印加しない状態の各種表示特性および消費電力について説明する。
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±60°と広く、コントラスト比10:1以上の視野角も左右方向で±80°と十分広い。また、正面輝度は300cd/m2と十分高い。このことから、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された液晶表示装置を用いて画像を表示した場合と同等の正面輝度、および輝度視角を得ていることが判る。また、正面コントラストは500:1であり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない液晶表示装置と同等の高い値が得られる。駆動電圧を印加しない状態での消費電力は、1.704Wである。
【0111】
次に、位相制御液晶素子1に駆動電圧8Vを印加した状態であるとともに、輝度視角制御液晶素子4に駆動電圧4Vを印加した状態の各種表示特性および消費電力について説明する。
30cd/m2以上の輝度を有した視野角は、左右方向で±20°と十分狭く、コントラスト比10:1以上の視野角は左右方向で±15°と十分狭い。コントラスト比1:1以上の視野角は左右方向で±20°と十分狭く、左右視野20°以上では表示を全く識別できない状態となった。
【0112】
また、正面輝度は600cd/m2であり、輝度視角制御液晶素子4を設けずに構成された従来の液晶表示装置を用いて画像を表示した場合の倍の正面輝度が得られる。また、正面コントラストは1000:1であり、位相制御液晶素子1を設けない構造とした場合や、この位相制御液晶素子に電圧を印加していない状態よりも高い値が得られる。駆動電圧を印加した状態での消費電力は、1.715Wであり、位相制御液晶素子1や輝度視角制御液晶素子4を設けない構造とした場合よりも大きな値を示した。
【0113】
なお、この発明は、上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、図16に示すように、液晶表示装置は、位相制御液晶素子1、液晶表示パネル3、第1偏光板41、第2偏光板42、バックライトユニット51、および駆動部5を備えていれば良い。位相制御液晶素子1の表示モードは、n型フェイズチェンジモードであり、位相制御液晶素子はヒステリシスを利用して位相状態を維持するメモリ機能を有していれば良い。
【0114】
また、図16に示した液晶表示装置では、図17に示すように、第1基板11および対向基板22は共通基板71を有していても良い。第1基板11および対向基板22を同一の共通基板71で構成することにより、液晶表示装置全体の厚みおよび重量を軽減することができる。位置情報検出機能が無くとも良い場合、位相制御液晶素子1は位置情報検出部2を設けずに形成されても良い。
【0115】
上述した実施の形態では、輝度視角制御液晶素子4の表示モードは、PSCTモードであるが、これに限らず、熱効果型スメクティックモード、または光書き込み型コレステリックモードであっても良い。つまり、輝度視角制御液晶素子4はヒステリシスを利用して拡散状態を維持するメモリ機能を有していれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】この発明の第1、第2、第3の実施の形態に係る液晶表示装置の断面図。
【図2】図1に示した位相制御液晶素子の概略平面図。
【図3】図1に示した位相制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図4】図1に示した第1液晶層に電圧が印加されていない状態における第1液晶層の断面構造概略図。
【図5】図4に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図6】図1に示した第2液晶層の液晶分子が垂直に配向した場合における第2液晶層の断面構造概略図。
【図7】図6に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図8】図1に示した第1液晶層に電圧が印加されている状態における第1液晶層の断面構造概略図。
【図9】図8に示した液晶分子の平均的屈折率楕円体を示す図。
【図10】図1に示した第3液晶層に電圧が印加されていない状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図11】図1に示した第3液晶層に電圧が印加されている状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図12】この発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置の輝度視角制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図13】輝度視角制御液晶素子に、図12に示したV4以上の駆動電圧を印加した後、電圧を下げてV1からV3の範囲内で駆動電圧を保持している状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図14】輝度視角制御液晶素子に、図12に示した0Vまたは0VからV3までの範囲内で駆動電圧が印加されている状態における第3液晶層の断面構造およびバックライトユニットから放出される光の光路を説明するための図。
【図15】この発明の比較例2における位相制御液晶素子および輝度視角制御液晶素子に印加される駆動電圧に対する表示特性の変化をグラフで示した図。
【図16】この発明の実施の形態に係る液晶表示装置の変形例を示す断面図。
【図17】この発明の実施の形態に係る液晶表示装置の他の変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0117】
1…位相制御液晶素子、2…位置情報検出部、3…液晶表示パネル、4…輝度視角制御液晶素子、11…第1基板、12…第2基板、13…第1液晶層、14a…第1シート、14b…第2シート、15a,15b…第1抵抗検出電極、15c,15d…第2抵抗検出電極、16a…第1電極、16b…第2電極、21…アレイ基板、22…対向基板、23…第2液晶層、41…第1偏光板、42…第2偏光板、51…バックライトユニット、81…第5基板、82…第6基板、83…第3液晶層、84a…ガラス基板、84b…ガラス基板、85a…第3電極、85b…第4電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間で、前記第1電位差時の前記位相状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1基板および第2基板間の電位差を第1電位差まで上昇させた後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間に保持する駆動部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差から下降し、かつ、前記第1電位差時の前記拡散状態と異なる第2電位差と、この第2電位差からさらに下降した第3電位差との間に保持することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1基板および第2基板間の電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差から下降した第2電位差と、この第2電位差からさらに下降した第3電位差との間で、前記第2電位差時の前記拡散状態を維持させる駆動部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極、および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極、および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、
第3電極、および前記第3電極に重なった第3配向膜を有した第3基板と、前記第3基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第4電極、および前記第4電極に重なっているとともに前記第3配向膜と対向した第4配向膜を有した第4基板と、前記第3基板および第4基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第3液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間で、前記第1電位差時の前記位相状態を維持し、
前記第3液晶層は、前記電位差が第3電位差まで上昇した後、前記第3電位差から下降し、かつ、前記第3電位差時の拡散状態と異なる第4電位差と、この第4電位差からさらに下降した第5電位差との間で、前記第4電位差時の前記拡散状態を維持することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第1基板および第2基板間の電位差を第1電位差まで上昇させた後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間に保持するとともに、前記第3基板および第4基板間の電位差を第3電位差まで上昇させた後、前記第3電位差から下降し、かつ、前記第3電位差時の拡散状態と異なる第4電位差と、この第4電位差からさらに下降した第5電位差との間に保持する駆動部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記位相制御液晶素子の表示モードは、n型フェイズチェンジモードであることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記輝度視角制御液晶素子の表示モードは、ポリマースタビライズドモード、熱効果型スメクティックモード、または光書き込み型コレステリックモードであることを特徴とする請求項4または7に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1電極および第2電極はそれぞれ矩形状に形成され、
前記位相制御液晶素子は、
前記第1電極および第2電極の重なった入力領域と、
前記第1電極に接続されているとともにこの第1電極の対向する一対の辺にそれぞれ設けられた第1抵抗検出電極と、前記第1電極に直交して位置し、かつ、前記第2電極に接続されているとともにこの第2電極の対向する一対の辺にそれぞれ設けられた第2抵抗検出電極と、を含み、前記入力領域の押圧された個所の位置情報を検出する位置情報検出部と、を備えていることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記アレイ基板に対向配置され、平行度の高い光を前記アレイ基板に出射するバックライトユニットと、
前記アレイ基板およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記輝度視角制御液晶素子に対向配置され、平行度の高い光を前記輝度視角制御液晶素子に出射するバックライトユニットと、
前記輝度視角制御液晶素子およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記対向基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記輝度視角制御液晶素子に対向配置され、平行度の高い光を前記輝度視角制御液晶素子に出射するバックライトユニットと、
前記輝度視角制御液晶素子およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記第1基板および対向基板は、同一の基板で構成されていることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間で、前記第1電位差時の前記位相状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1基板および第2基板間の電位差を第1電位差まで上昇させた後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間に保持する駆動部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差から下降し、かつ、前記第1電位差時の前記拡散状態と異なる第2電位差と、この第2電位差からさらに下降した第3電位差との間に保持することを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1基板および第2基板間の電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差から下降した第2電位差と、この第2電位差からさらに下降した第3電位差との間で、前記第2電位差時の前記拡散状態を維持させる駆動部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
アレイ基板と、前記アレイ基板に所定の隙間をおいて対向配置された対向基板と、前記アレイ基板および対向基板間に狭持された第1液晶層と、を含む液晶表示パネルと、
第1電極、および前記第1電極に重なった第1配向膜を有した第1基板と、前記第1基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第2電極、および前記第2電極に重なっているとともに前記第1配向膜と対向した第2配向膜を有した第2基板と、前記第1基板および第2基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の位相状態が異なるとともに、前記電位差上昇時から前記下降時に変わった後に前記上昇時の前記位相状態を維持する第2液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルの対向基板と対向して設けられた位相制御液晶素子と、
第3電極、および前記第3電極に重なった第3配向膜を有した第3基板と、前記第3基板に所定の隙間をおいて対向配置され、かつ、第4電極、および前記第4電極に重なっているとともに前記第3配向膜と対向した第4配向膜を有した第4基板と、前記第3基板および第4基板間に狭持され、かつ、これら両基板間の電位差の上昇時と下降時とでこれら両基板間を透過する光の拡散状態が異なるとともに、前記下降時に前記拡散状態を維持する第3液晶層と、を含み、前記液晶表示パネルのアレイ基板と対向して設けられた輝度視角制御液晶素子と、を備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2液晶層は、前記電位差が第1電位差まで上昇した後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間で、前記第1電位差時の前記位相状態を維持し、
前記第3液晶層は、前記電位差が第3電位差まで上昇した後、前記第3電位差から下降し、かつ、前記第3電位差時の拡散状態と異なる第4電位差と、この第4電位差からさらに下降した第5電位差との間で、前記第4電位差時の前記拡散状態を維持することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第1基板および第2基板間の電位差を第1電位差まで上昇させた後、前記第1電位差と、この第1電位差から下降した第2電位差との間に保持するとともに、前記第3基板および第4基板間の電位差を第3電位差まで上昇させた後、前記第3電位差から下降し、かつ、前記第3電位差時の拡散状態と異なる第4電位差と、この第4電位差からさらに下降した第5電位差との間に保持する駆動部を備えていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記位相制御液晶素子の表示モードは、n型フェイズチェンジモードであることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記輝度視角制御液晶素子の表示モードは、ポリマースタビライズドモード、熱効果型スメクティックモード、または光書き込み型コレステリックモードであることを特徴とする請求項4または7に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1電極および第2電極はそれぞれ矩形状に形成され、
前記位相制御液晶素子は、
前記第1電極および第2電極の重なった入力領域と、
前記第1電極に接続されているとともにこの第1電極の対向する一対の辺にそれぞれ設けられた第1抵抗検出電極と、前記第1電極に直交して位置し、かつ、前記第2電極に接続されているとともにこの第2電極の対向する一対の辺にそれぞれ設けられた第2抵抗検出電極と、を含み、前記入力領域の押圧された個所の位置情報を検出する位置情報検出部と、を備えていることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記アレイ基板に対向配置され、平行度の高い光を前記アレイ基板に出射するバックライトユニットと、
前記アレイ基板およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記輝度視角制御液晶素子に対向配置され、平行度の高い光を前記輝度視角制御液晶素子に出射するバックライトユニットと、
前記輝度視角制御液晶素子およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記対向基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記輝度視角制御液晶素子に対向配置され、平行度の高い光を前記輝度視角制御液晶素子に出射するバックライトユニットと、
前記輝度視角制御液晶素子およびバックライトユニットの間に配置された第1偏光板と、
前記第2基板の外面側に配置された第2偏光板と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記第1基板および対向基板は、同一の基板で構成されていることを特徴とする請求項1または7に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−52258(P2007−52258A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237613(P2005−237613)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】
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