説明

液晶表示装置

【課題】本発明の目的は、従来の吸収型偏光子に代わり、非吸収型偏光子である反射散乱型偏光子を用い、かつ視認側に位置する偏光子の表面にアンチグレア層を有する液晶表示装置によって、従来の吸収型偏光子に比べ、特別な部材(輝度向上フィルム)を用いることなく輝度向上ができ、部材削減による透明度/画質向上効果や、フィルムのケン化/貼合処理等の工数削減効果、更には耐久性(耐湿熱性)が向上した視認性の高い液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】液晶セルを挟み二つの偏光板を有する液晶表示装置において、少なくとも一つの偏光板が、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に関し、詳しくは位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を偏光板として用いる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広く用いられている液晶表示装置は、偏光子としてPVA/ヨウ素を用いていることから、様々な制約、課題がある。第一に、偏光子が吸収型であるため、原理的に光の有効利用効率が最大50%となることである。これは、別途、住友3M社製のDBEF等に代表される輝度向上フィルムを用い、残り50%の光の一部を再利用することで利用効率を上げることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、部材点数増による透明性、画質の低下、また工数増によるコスト増、生産性低下といった問題がある。
【0003】
第二の課題として、PVA/ヨウ素偏光子の耐水性が低く、特に高湿熱下において、偏光度の低下や画面の表示ムラを引き起こす。これについては、PVA/ヨウ素偏光子の保護膜としてCOP等の低透湿性フィルムを用いる提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)が、このようなフィルムは、疎水性であるためPVAとの接着性が悪い。また接着工程において、その低透湿性のために接着剤の乾燥性が悪く、そのため片面をTACフィルム等の透湿性フィルムとしているのが現状である。また、両面への貼合を容易にするために、硬化性接着剤を用い、乾燥レスとすることが提案されているが、PVA中に残存する水分が偏光板から抜けにくいため、高温下での偏光板の耐久性が低下する問題がある。
【特許文献1】特開2003−43261号公報
【特許文献2】特開2003−211588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、従来の吸収型偏光子を用いた偏光板に代わり、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を用いた偏光板を有する液晶表示装置によって、従来の吸収型偏光子を用いた偏光板の使用に比較し、視野角拡大効果、輝度向上効果、部材削減による透明度/画質向上効果、フィルムのケン化/貼合処理等の工数削減効果、更には耐久性(耐湿熱性)が向上した視認性の高い液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0006】
1.液晶セルを挟み二つの偏光板を有する液晶表示装置において、少なくとも一つの偏光板が、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする液晶表示装置。
【0007】
2.前記位相差フィルムの面内方向における下記式で定義される589nmにおける面内位相差値Roが30〜100nmであり、かつ厚み方向の位相差値Rthが70〜300nmであり、Rth/Roが2〜5の範囲にあることを特徴とする前記1に記載の液晶表示装置。
【0008】
Ro=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
3.前記位相差フィルムが、ポリカーボネート、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、メタクリル酸メチル・スチレンコポリマーから選ばれる樹脂からなることを特徴とする前記1または2に記載の液晶表示装置。
【0009】
4.前記位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を、液晶セルの両側に用いることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来の吸収型偏光子を用いた偏光板に代わり、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を用いた偏光板を有する液晶表示装置によって、従来の吸収型偏光子を用いた偏光板の使用に比較し、視野角拡大効果、輝度向上効果、部材削減による透明度/画質向上効果、フィルムのケン化/貼合処理等の工数削減効果、更には耐久性(耐湿熱性)が向上した視認性の高い液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0012】
本発明者らは、上記課題に対し検討を加えた結果、請求項1の発明では、液晶セルを挟み二つの偏光板を有する液晶表示装置において、少なくとも一つの偏光板が、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする液晶表示装置により、従来の吸収型偏光子を用いた偏光板の使用に比較し、視野角拡大効果、輝度向上効果、部材削減による透明度/画質向上効果、フィルムのケン化/貼合処理等の工数削減効果、更には耐久性(耐湿熱性)が向上した視認性の高い液晶表示装置が得られることを見出したものである。
【0013】
本発明に係る位相差フィルム上にワイヤグリッドが形成されている位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子は、位相差フィルムがワイヤグリッド偏光子の支持体となっており、ワイヤグリッド偏光子が形成された別のフィルムや基材と、位相差フィルムとを貼合して形成されたものではない。
【0014】
また、上記位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子の上に、さらにプロテクト、アンチグレア、反射防止等の各種機能層或いは機能性フィルムを積層しても良い。本発明の液晶表示装置は、液晶パネル基板、位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を組み合わせて用いる。また、本発明の液晶表示装置には、位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子以外の吸収型偏光子や、光拡散、輝度向上、アンチグレア、反射防止等の各種機能性フィルムを用いても良い。中でも、アンチグレア、反射防止層を有する機能性フィルムであることが望ましい。これらのフィルム及び基板等は位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子に密着していることが好ましく、密着させるためには公知の粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0015】
ワイヤグリッド偏光子の場合、上記位相差フィルムの遅相軸に対し、ワイヤグリッドの方向が平行或いは直交するように形成されることが望ましい。
【0016】
請求項2の発明では、前記位相差フィルムの位相差値Ro、Rth、Rth/Roの範囲を特徴とし、請求項3では、前記位相差を有するフィルムが、ポリカーボネート、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、メタクリル酸メチル・スチレンコポリマーから選ばれる樹脂からなることを特徴とし、請求項4では係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を用いた偏光板を液晶セルの両側に用いることにより、前記本発明の効果がより向上することを見出したものである。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
《位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子》
偏光子はその方式において大きく二つに大別することができる。ある電場の振動面を持つ光を吸収し、これと直行する電場の振動面を持つ光を透過する吸収型偏光子と、ある電場の振動面を持つ光を反射し、これと直行する電場の振動面を持つ光を透過する非吸収型偏光子である反射散乱型偏光子の2種である。吸収型偏光子においては、片方の偏光を吸収し熱エネルギーに変えるためバックライトからの光を最大半分しか利用することができない。このような偏光子として、PVAフィルム等を基材とし、ヨウ素や有機染料等の二色性材料を吸着・配向させたものや、ポリイミドフィルム等の基材に異方性粒子を配向させたものが知られている。
【0019】
一方、反射散乱型偏光子の場合、偏光子で反射した光を反射板により反射させ再利用することが可能であり、吸収型偏光子と比較してより多くの光を有効利用することができるため、液晶表示装置の輝度を向上させるメリットがある。
【0020】
反射散乱型偏光子にはいくつかの方式が提案されており、ワイヤグリッド、コレステリック液晶、二種類のポリマーの多層膜、海−島構造を有するポリマーブレンドフィルム等が知られている。
【0021】
例えば、特開平9−274108号公報、特開平11−174231号公報には、正の固有複屈折性ポリマーと負の固有複屈折性ポリマーをブレンドし一軸延伸することで異方性散乱体を作製する方法が提案されている。また、特表平11−509014号公報に開示されているように、光学的連続相の屈折率と光学的異方性を有するドメインの透過軸側の屈折率とを実質的に等しくしたフィルムを形成することにより、所定の偏光を選択的に透過し、他の偏光を選択的に散乱し、散乱光を再利用することにより輝度向上ができる方式もある。
【0022】
本発明は、位相差フィルム上にワイヤグリッドが形成された位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子であることが特徴である。ワイヤグリッド偏光子はグリッド部と光透過部とからなり、この二つの構造が周期的なピッチで配置した構造をしている。ワイヤグリッド偏光子は高い偏光分離能を持っており、現在赤外域では実用化されているが、可視光で利用するためにはピッチを赤外域で使用されている場合より小さくする必要がある。ワイヤグリッド作製は一般的にリソグラフィー法によるが、特開2005−195824号公報に開示されているように、可視光で偏光分離が可能なピッチを作製するためには非常に短波長の紫外光レーザーや電子線等による露光を利用した方法も挙げられている。
【0023】
ワイヤグリッド偏光子の構成について図をもって説明する。図1は本発明に係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子の模式図である。図1に示すように位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子100は、位相差フィルム120上に互いに平行に並んだワイヤグリッド110からなる構造をしている。図1中、pはピッチを表し、tはワイヤグリッドの高さを表し、wはワイヤグリッドの幅を表す。
【0024】
ワイヤグリッド110の材料は特に限定されないが、可視光に対し高い反射率を示し、かつ導電性材料から選択することが好ましい。ワイヤグリッド110の素材は、これらの観点からカーボンナノファイバーなどのナノカーボン等の炭素分子、或いは銀、アルミニウム、ニッケル、ロジウム、または白金等の導電性金属材料を用いることが好ましい。
【0025】
上記ナノカーボンは、公知のカーボン繊維を使用し、繊維径が50〜200nmの範囲にあり、アスペクト比が10〜200の範囲にあるカーボン繊維に、下記表面処理を行うことによって得られる。このようなカーボン繊維は、気相法炭素繊維”VGCFまたはVGNF(いずれも昭和電工製)”シリーズが使用できる。このカーボン繊維の表面にポリアクリルニトリル系、フェノール系、フラン系、ジビニルベンゼン系、不飽和ポリエステル系、ポリイミド系、ジアリルフタレーと系、ビニルエステル系、ポリウレタン系、メラミン系、ユリア系等の有機高分子を付着後、焼成することにより、カーボン繊維の表面にカーボンを固着させて比表面積を増加させ電子導電体としたものである。
【0026】
本発明では可視光の反射率が平坦で、高い反射率が求められることを考慮すると、ワイヤグリッドに、銀、アルミニウム等の導電性金属材料を用いることがより好ましく、コスト面からも特にアルミニウムを用いることが好ましい。
【0027】
ワイヤグリッド偏光子の性能を決定する要因の一つが、ピッチp(nm)と入射光の波長λ(nm)との関係である。ワイヤグリッドのピッチpが波長のほぼ2分の1から2倍の範囲では、特定波長の光に対し偏光分離性能が著しく低下する。このような現象は一般に「レイリー共鳴」と呼ばれており、この共鳴が起こる最も長い波長(最大共鳴波長)λres−maxは下記式(1)で表現されることが知られている。詳細は、Philosophical Magazine,Vol.14.No.79.60(1907)に記載されている。
【0028】
式(1) λres−max=p(n+sinθ)
式中、n、θはそれぞれ基板の屈折率、光の入射角を表す。
【0029】
レイリー共鳴が起こる波長前後においては、ワイヤグリッド偏光子の性能が急激に落ちるため、可視光に対し十分な偏光分離性能を示すためには、最大共鳴波長λres−maxが可視光の波長よりも短くなるようにしなければならない。
【0030】
ワイヤグリッドの高さt(金属厚み)は、ワイヤグリッド偏光子の偏光分離性能から必要な値が決まり、具体的には光の透過率が1%以下であればよく、30nm以上の厚みであれば良好な性能を得ることができる。あまりに金属が薄いと、光の透過が無視できず、偏光分離性能が低下する。逆に金属が厚すぎると、光の利用効率が低下するため、厚みの上限は約200nmである。ワイヤグリッドをアルミニウムで形成する場合、金属厚みは40〜200nm程度であることが望ましい。
【0031】
ワイヤグリッドのピッチpは、0°入射、真空の屈折率n=1において式(1)より導出される最大共鳴波長λres−maxが使用する光の波長以下になればよく、可視光に対しては400nmであれば問題がないことから、ピッチpは380nm以下、100〜200nmが好ましく、偏光の分離能力から160nm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
ワイヤグリッドの幅wに関しては、ピッチpの約半分程度のときにワイヤグリッド偏光子の偏光分離性能がよくなり、0.3p<w<0.7pの範囲であることが好ましい。
【0033】
ワイヤグリッドの断面形状は、特に限定されるものではなく、正方形、長方形、台形、円形、楕円形、その他さまざまな形状を持っていてもよい。
【0034】
ワイヤグリッドが基材表面にむき出しの状態である場合、スクラッチ耐性に問題が出やすく、これを向上させる意味でワイヤグリッドが基材の内部に位置することも好ましい。また、基材の内部にグリッドが埋没した状態にするために2層以上の基材からなるフィルムであることも好ましい。
【0035】
(ワイヤグリッド偏光子の作製方法)
ワイヤグリッド偏光子の作製方法は特に限定されるものではないが、金属膜を基材上に形成する方法としては、電子線加熱や抵抗加熱による真空蒸着法、スパッター法や、メッキや電解メッキ法、金属化合物などを溶液状態で塗布した後、酸化還元することにより金属膜とする方法などが挙げられ、この中でも、基材との密着性に優れた真空蒸着法、スパッター法、電解メッキ法などが好ましい。また、形成した金属膜から縞状パターンを形成する方法としては、極紫外レーザーを用いた干渉露光法、電子線リソグラフィーを用いた製造方法があげられる。
【0036】
例えば、基材フィルム上に120nm程度のアルミニウム層を抵抗加熱蒸着等により製膜し、さらにスピンコートでフォトレジスト層を設ける。続いてArFレーザー(波長193nm)の二光束干渉露光により、透明樹脂フィルム上に縞状パターン(例えば、ピッチ180nm、ライン:スペース≒1:1)を形成し、現像後、ドライエッチングで不要部のアルミニウムを除去し、ワイヤグリッド偏光子を得る。
【0037】
別法として、予め形成した縞状パターンを有する金型を作製し、これに基材との接着性に優れるアクリル等の熱可塑性樹脂や紫外線硬化型樹脂をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、押し出しコーター、或いはスプレー塗布、インクジェット塗布等により塗設し、これを基材に貼合、転写し、転写された縞状パターン上にアルミニウムを抵抗加熱蒸着等により斜め方向から蒸着する。これにより、例えばピッチp150nm、高さ90nm、凸部幅60nmのパターン上に高さ60nmのアルミニウムが蒸着され、ワイヤグリッド偏光子を得る。
【0038】
上記ワイヤグリッド偏光子は液晶表示装置の色味の観点から400〜700nmにおける波長領域での透過率が平坦であることが好ましい。上記の波長領域において透過率の最小値が最大値の90%以上であることが好ましい。更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上である。
【0039】
また、下記式で表される偏光度Pは99以上、より好ましくは99.5以上、特に好ましくは99.8以上である。
【0040】
偏光度P=((H0−H90)/(H0+H90))1/2×100
H0 :偏光子2枚を組み合わせた時の、平行透過率
H90 :偏光子2枚を組み合わせた時の、直行透過率
《基材》
本発明に係るワイヤグリッド偏光子の基材としては、前述したように位相差フィルムであることが特徴である。
【0041】
上記位相差フィルムの面内方向における下記式で定義される589nmにおける面内位相差値Roは30〜100nmであり、50〜100nmであることがより好ましい。また、厚み方向の位相差値Rthは70〜300nmであり、100〜250nmであることがより好ましい。特にRth/Roが2〜5の範囲にあることが好ましい。
【0042】
Ro、Rth或いは位相差フィルムの幅手方向と遅相軸とのなす角θ0(°)は自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、位相差を有するフィルムの589nmにおける複屈折率測定を行い、下記式で表されるRo、Rthを測定した。
【0043】
Ro=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
本発明に係る位相差フィルムに用いられる樹脂に特に制限はないが、好ましい樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ジエチレングリコールビスカーボネート(CR−39)、スチレン/アクリロニトリル共重合体(SAN)、メタクリル酸メチル・スチレンコポリマー(MS)、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、セルロースアシレートなどの高透明樹脂があげられる。透明度や耐久性(耐湿熱性)の観点から好ましい樹脂は、ポリカーボネート、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、メタクリル酸メチル・スチレンコポリマーから選ばれる樹脂である。
【0044】
(ポリカーボネート)
ポリカーボネートとしては、特に制約はない。一般に、ポリカーボネートと総称される高分子材料は、その合成手法において重縮合反応が用いられて主鎖が炭酸結合で結ばれているものを総称するが、これらのうちでも一般に、ビスフェノール誘導体と、ホスゲン或いはジフェニルカーボネートから重縮合反応により得られるものを意味する。通常、経済性および物性面からビスフェノールAと呼称されている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンをビスフェノール成分とする繰り返し単位で表される芳香族ポリカーボネートが好ましく使用されるが、適宜各種ビスフェノール誘導体を選択することで、ポリカーボネート共重合体を構成することができる。
【0045】
かかる共重合成分として個のビスフェノールA以外に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン等を挙げることができる。さらに、これらのフェニル基の水素基が一部メチル基やハロゲン基で置換されているものも含む。また、一部にテレフタル酸および/またはイソフタル酸成分を含むポリエステルカーボネートを使用することも可能である。このような構成単位をビスフェノールAからなるポリカーボネートの構成成分の一部に使用することによりポリカーボネートの性質、例えば耐熱性、溶解性を改良することができるが、このような共重合体についても本発明は有効である。
【0046】
(セルロースアシレート)
セルロースアシレートとしては、そのアシル基が脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル或いは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよく、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。これらの好ましいセルロースアシレートとしては、エステル部の総炭素数が22以下のアシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイルなど)、アリールカルボニル基(アクリル、メタクリルなど)、アリルカルボニルキ(ベンゾイル、ナフタロイルなど)、シンナモイル基を挙げることができる。これらの中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートベンゾエートなどであり、混合エステルの場合はその比率は特に限定されないが、好ましくはアセテートが総エステルの30モル%以上であることが好ましい。
【0047】
これらの中でも、セルロースアシレートが好ましく、特に写真用グレードのものが好ましく、市販の写真用グレードのものは粘度平均重合度、置換度等の品質を満足して入手することができる。写真用グレードのセルローストリアセテートのメーカーとしては、ダイセル化学工業(株)(例えばLT−20,30,40,50,70,35,55,105など)、イーストマンコダック社(例えば、CAB−551−0.01、CAB−551−0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.5、CAB−381−02、CAB−381−20、CAB−321−0.2、CAP−504−0.2、CAP−482−20、CA−398−3など)、コートルズ社、ヘキスト社等があり、何れも写真用グレードのセルロースアシレートを使用できる。また、フィルムの機械的特性や光学的な特性を制御する目的で、可塑剤、界面活性剤、レターデーション調節剤、UV吸収剤などを混合することができる(参考資料:特開2002−277632号公報、特開2002−182215号公報)。
【0048】
(シクロオレフィンポリマー)
シクロオレフィンポリマーとしては、ノルボルネン及びその誘導体、テトラシクロドデセン及びその誘導体、ジシクロペンタジエン及びその誘導体、メタノテトラヒドロフルオレン及びその誘導体などのノルボルネン系単量体を主成分とする単量体の重合体から選択することができる。
【0049】
ノルボルネン系重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系単量体の開環重合体、(2)ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との開環共重合体、(3)ノルボルネン系単量体の付加重合体、(4)ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。
【0050】
ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、及びこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基などを挙げることができる。また、これらの置換基は、同一または相異なって複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン系単量体は1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
ノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。
【0052】
ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、単量体を開環重合触媒の存在下に(共)重合することにより得ることができる。
【0053】
用いる開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硫酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒;或いは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒;などが挙げられる。
【0054】
ノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、単量体を付加重合触媒の存在下に重合することにより得ることができる。付加重合触媒としては、例えば、チタン、ジルコニウム、バナジウムなどの金属の化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒などを用いることができる。
【0055】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどが挙げられる。これらの単量体は1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0056】
(メタクリル酸・スチレンコポリマー)
本発明で用いるメタクリル酸メチル・スチレンコポリマー(以下、MS樹脂)は、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合の何れによって重合したものでもよい。また、重合時に有機過酸化物やアゾ系化合物等を重合開始剤として用いる開始剤重合で重合したものでもよく、また、このような開始剤を用いない熱重合で重合したものでもよい。好ましくは、共重合体に不純物の混入しない塊状重合法が用いられる。
【0057】
本発明で用いるMS樹脂には、該樹脂本来の透明性、耐候性、機械的強度等を維持する限り、メタクリル酸メチル、スチレン各単量体と共重合可能な少量の第三成分を導入して改質を加えることも可能であり、例えばスチレン以外の芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸(エステル)系単量体、マレイミド系単量体等から誘導された重合単位を含んでいても差しつかえない。スチレン以外の芳香族ビニル系単量体の具体例としては、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、またメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸(エステル)系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。マレイミド系単量体の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。該MS樹脂の組成はメタクリル酸メチル単位45〜90質量%、スチレン単位55〜10質量%であるが、好ましくはメタクリル酸メチル単位55〜90質量%、スチレン単位45〜10質量%である。メタクリル酸メチル単位が90質量%を越えると、MS樹脂の性質はポリメタクリル酸メチル(アクリル樹脂)のそれに近くなり、スチレン単位の寄与が少なくなるため、その成形性が低下する。
【0058】
(基材の製膜)
上記の各ポリマーをシート又はフィルム状に成形する方法として、加熱溶融成形法及び溶液流延法のいずれも用いることができる。加熱溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できるが、これらの方法の中でも、機械的強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押出成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押出成形法が最も好ましい。
【0059】
成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、好ましくは100〜600℃、より好ましくは150〜350℃の範囲で適宜設定される。成形されたシート又はフィルムの厚みは、好ましくは10〜300μm、より好ましくは30〜200μmである。
【0060】
また、溶液流延法では、まず、上記ポリマーの溶液(ドープ)を調製する。ドープには、所望により、例えば、レターデーション上昇剤等の添加剤を添加してもよい。調製したドープを、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100〜160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープをゲル化することが必要である。
【0061】
また、フィルムを製造する場合には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、他の添加剤を添加することができる。他の添加剤としては、例えば、レターデーション調整剤、可塑剤、劣化防止剤などが挙げられる。レターデーション調整剤は、フィルムのレターデーションを上昇もしくは低下させるために用いられる。可塑剤は、フィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上させるために添加する。用いる可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが挙げられる。これらの他の添加剤は、加熱溶融成形法では、ポリマーの溶融時にポリマー中に溶解させることによって、また溶液流延法では、ドープ中に溶解させることによって、成形フィルム中に含有させることができる。
【0062】
使用可能なレターデーション調整剤の例には、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物からなるレターデーション上昇剤が含まれる。2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0063】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、ベンゼン環及び1,3,5−トリアジン環がさらに好ましい。芳香族化合物は、少なくとも一つの1,3,5−トリアジン環を有することが特に好ましい。
【0064】
芳香族化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。このようなレターデーション上昇剤についてはWO01/88574A1、WO00/2619A1、特開2000−111914号公報、同2000−275434号公報、特願2002−70009号明細書等に記載されている。
【0065】
使用可能な可塑剤の例には、リン酸エステルからなる可塑剤が含まれる。例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどが挙げられる。カルボン酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレートなどのフタル酸エステル;O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル;オレイン酸ブチル;リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチルなどの高級脂肪酸エステル;トリメット酸エステル;などが挙げられる。
【0066】
使用可能な劣化防止剤としては、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類などが挙げられる。劣化防止剤については、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載されたものがある。
【0067】
これらの他の添加剤は、ポリマーに対して、通常0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
【0068】
成形されたフィルム(例えば、溶液流延法で作製した場合は、ベルト又はドラム上から剥離されたフィルム、さらに所望により乾燥されて、溶媒を除去されたフィルム)は、複屈折性を持たせるために、延伸処理を実施するのが好ましい。
【0069】
延伸法としては、例えば、フィルム流れ方向に速度差のついたクリップにてフィルムを幅方向に広げる同時二軸延伸法、フィルム幅方向をピン或いはクリップにより把持し、把持した部分のフィルム流れ方向速度差を利用する縦一軸延伸方法、把持した部分を幅方向に広げる横一軸延伸法等があり、またこれらの延伸方法やロール速度差を利用するロール縦一軸延伸方法等を組み合わせた逐次二軸延伸法等が挙げられる。
【0070】
位相差フィルムを得るための連続延伸法の例をいくつか挙げたが、本発明の位相差フィルムの延伸方法はこれらに限定されるものではなく、生産性の観点から連続延伸が好ましいが、連続延伸である必要はない。
【0071】
延伸倍率等の延伸条件については、位相差フィルムの用途、より詳細にはその用途に要求される光学特性に応じて、好ましい範囲が決定される。本発明では、延伸倍率は特に制限はなく延伸しなくてもよいが、延伸する場合は1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍であり、この範囲で所望のレターデーションとなるようにすればよい。
【0072】
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+40℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しないため、所望のレターデーションを得ることが困難になる。
【0073】
レターデーションは、延伸前のシートのレターデーションと延伸倍率、延伸温度、延伸配向フィルムの厚さにより制御することができる。延伸前のシートが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほどレターデーションの絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望のレターデーションの位相差フィルムを得ることができる。
【0074】
レターデーションのバラツキは小さいほど好ましく、位相差フィルムとしては、波長590nmのレターデーションのバラツキが通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±1nm以下の小さなものである。
【0075】
レターデーションの面内でのバラツキや厚さムラは、それらの小さな延伸前のシートを用いる他、延伸時にシートに応力が均等にかかるようにすることにより、小さくすることができる。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、更に好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
【0076】
《アンチグレア層》
本発明は、液晶セルに対して視認側に位置する偏光子の表面にアンチグレア層を有することが好ましい。アンチグレア層は直接、または他の層を介して該偏光子表面に形成されるか、アンチグレア層を有する機能性フィルムを該偏光子に貼合することで得られる。
【0077】
本発明においてアンチグレア層とは、液晶表示装置やCRTなどの表示装置の見やすさを向上させるために、例えば蛍光灯の光などが画面に写るのを防ぐ働きをするもので、この光を乱反射させる機能を有する層をいい、有機樹脂材料を成分として含むことが好ましい。
【0078】
アンチグレア層を構成する有機樹脂材料としては、アンチグレア層におけるバインダーとしての性質を有し、アンチグレア層形成後の皮膜として十分な強度を持ち、さらに透明性のあるものを特に制限なく使用できる。前記樹脂としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられるが、皮膜の強度、加工性の点で、熱硬化型樹脂または活性エネルギー線硬化型樹脂が好ましい。
【0079】
熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられ、中でも、表面硬度、耐繰り返し疲労性及び耐擦傷性に優れる観点から、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリシロキサン樹脂が好ましい。
【0080】
また、これらの樹脂に必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えて使用することができる。
【0081】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、分子中に重合性不飽和結合またはエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー及び/またはモノマーが、エネルギー線の照射により硬化してなる樹脂である。活性エネルギー線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合または架橋し得るエネルギー量子を有するものを指し、通常は紫外線または電子線を用いる。
【0082】
紫外線および電子線硬化型樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。この紫外線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー、または光重合性モノマー、光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。また、電子線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマーまたは光重合性モノマーを含有するものである。
【0083】
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
本発明においては、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
【0085】
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0086】
本発明においては、アンチグレア層は、前記熱硬化型樹脂または活性エネルギー線硬化型樹脂と、微粒子とからなるものが好ましい。アンチグレア層が、前記構成をとることにより、表面凹凸形状を実現することができる。
【0087】
前記微粒子としては、平均粒子径が5〜100nm、好ましくは10〜50nmのものを用いる。平均粒子径は、500個の粒子を、走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、または動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。ここでいう平均粒子径は、個数平均粒子径をさす。以下同様である。
【0088】
より具体的には、上記粒子径を有する微粒子であればよいが、導電性微粒子が好ましい。前記微粒子として、導電性微粒子を用いることにより、帯電防止性、機械的強度に優れるアンチグレア層を得ることができる。加えて、アンチグレア層の屈折率を容易に制御することができる。
【0089】
導電性微粒子は、導電性を有する微粒子であれば特に制約はないが、透明性に優れることから、金属酸化物の微粒子が好ましい。
【0090】
導電性の金属酸化物としては、例えば、五酸化アンチモン、酸化スズ、リンがドープされた酸化スズ(PTO)、アンチモンがドープされた酸化スズ(ATO)、フッ素がドープされた酸化スズ(FTO)、スズがドープされた酸化インジウム(ITO)、亜鉛がドープされた酸化インジウム(IZO)、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛(AZO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム、アンチモン酸亜鉛等が挙げられる。これらの金属酸化物微粒子は一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、透明性に優れること等から、五酸化アンチモン及び/またはリンがドープされた酸化スズの使用が好ましい。
【0091】
また本発明においては、導電性の金属酸化物微粒子として、導電性を持たない金属酸化物微粒子に、導電性金属酸化物を被覆することによって、導電性を付与したものを使用することもできる。例えば、屈折率は高いが導電性を有しない酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の微粒子の表面に、前記導電性金属酸化物を被覆して導電性を付与して用いることができる。
【0092】
本発明においては、アンチグレア層における微粒子の含有量は、少なくとも30体積%であることが好ましく、40〜60体積%であることがさらに好ましい。前記微粒子の含有量が前記範囲よりも少ないとアンチグレア層の表面凹凸の高さが不十分となり、逆に多いとアンチグレア層の強度が不十分となる傾向がある。
【0093】
本発明においては、アンチグレア層の表面の凹凸の高さは、十点平均粗さRzで0.1〜0.8μm、好ましくは0.2〜0.7μmである。前記凹凸の高さが前記範囲より小さいと防眩性が不十分となり、逆に大きいと散乱が大きくなりすぎて、画像表示装置に用いたときヘイズが大きくなったり、画像鮮明性が低下したり、さらに画像表示を黒表示にしたときの白味も強くなる。
【0094】
アンチグレア層の表面の凹凸の高さとして表される十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準じて、例えば、ダイヤモンドからなる先端部を頂角55度の円錐形とした直径1mmの測定針を介して凹凸構造面上を一定方向に3mmの長さで走査し、その場合の測定針の上下方向の移動変化を測定してそれを記録した表面粗さ曲線として知見を得ることができる。或いは光学干渉式表面粗さ測定機によっても測定することができる。
【0095】
本発明においては、アンチグレア層の表面の凹凸の周期の範囲は、通常4〜100μm、好ましくは10〜80μmである。前記凹凸の周期が前記範囲よりも小さいと防眩性が不十分となり、逆に大きいと画像表示装置に用いたときにギラツキが生じてしまう。
【0096】
アンチグレア層の周期は、前述の表面粗さ曲線における凹凸変化が微小な部分に基づいて表面粗さ曲線の凹凸変化が凸部として評価できる基準線を想定し、その基準線からの当該凸部の高さの平均を中心線として、表面粗さ曲線がその中心線を下から上(または上から下)に通過する際の交点に基づきその交点間の距離の平均として定義することができる。
【0097】
本発明においては、アンチグレア層の平均傾斜角は、3度以下、好ましくは2度以下である。アンチグレア層の平均傾斜角が前記範囲よりも大きいと、散乱が大きくなりすぎて、画像表示装置に用いたときヘイズが大きくなったり、画像鮮明性が低下したり、さらに画像表示を黒表示にしたときの白味が強くなる。
【0098】
平均傾斜角は、前述の表面粗さ曲線における前記した凹凸変化が微小な部分の勾配に基づいてその勾配の絶対値の平均として定義することができる。
【0099】
本発明においては、アンチグレア層の凸部を主面側からみたときの形状が、多角形になっていることが好ましい。前記形状が、多角形になっていることにより、防眩性と、白ボケ防止および透過画像鮮明性との両立が可能となる。多角形としては、五角形、六角形、八角形が挙げられる。前記形状は、これらが2種以上組み合わさったものでもよい。
【0100】
本発明においては、アンチグレア層の屈折率は、好ましくは1.55以上、より好ましくは1.60以上である。アンチグレア層の屈折率がこの範囲にあると、アンチグレア層上に低屈折率層を設けた場合に、外光の反射を抑制し、写り込みを防止することができる。屈折率は、例えば、公知の分光エリプソメーターを用いて測定して求めることができる 本発明においては、アンチグレア層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)で「HB」以上の硬度を示すことが好ましい。アンチグレア層の鉛筆硬度が前記範囲であることにより、アンチグレア層がハードコート層を兼ねることができ、部材を薄くすることができ好ましい。
【0101】
アンチグレア層の厚みは、1〜30μmの範囲であることが好ましい。
【0102】
本発明においては、アンチグレア層の上に、更に屈折率が1.25〜1.37である低屈折率層を有することが好ましい。低屈折率層を有することにより、本発明の液晶表示装置に反射防止性を備えることができる。
【0103】
本発明において、低屈折率層を構成する材料としては、屈折率が上記範囲である層を構成する材料であれば特に制限されないが、屈折率の制御が容易である点及び耐水性に優れる点で、エアロゲルが好ましい。
【0104】
エアロゲルは、マトリックス中に微小な気泡が分散した透明性多孔質体である。気泡の大きさは大部分が200nm以下であり、気泡の含有量は通常10体積%以上60体積%以下、好ましくは20体積%以上40体積%以下である。
【0105】
微小な気泡が分散したエアロゲルの具体例としては、シリカエアロゲル、中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体が挙げられる。
【0106】
シリカエアロゲルは、米国特許第4402927号公報、米国特許第4432956号公報、米国特許第4610863号公報等に開示されているように、アルコキシシランの加水分解重合反応によって得られたシリカ骨格からなる湿潤状態のゲル状化合物を、アルコール或いは二酸化炭素等の溶媒(分散媒)の存在下で、この溶媒の臨界点以上の超臨界状態で乾燥することによって製造することができる。超臨界乾燥は、例えばゲル状化合物を液化二酸化炭素中に浸漬し、ゲル状化合物が含む溶媒の全部または一部をこの溶媒よりも臨界点が低い液化二酸化炭素に置換し、この後、二酸化炭素の単独系、或いは二酸化炭素と溶媒との混合系の超臨界条件下で乾燥することによって、行うことができる。また、シリカエアロゲルは、米国特許第5137279号公報、米国特許5124364号公報等に開示されているように、ケイ酸ナトリウムを原料として、上記と同様にして製造しても良い。シリカエアロゲルの屈折率は、シリカエアロゲルの原料配合比によって自由に変化させることができる。
【0107】
また、シリカエアロゲルを用いる場合において、上記のようにしてアルコキシシランの加水分解、重合反応によって得られたゲル状化合物を疎水化処理することによって、シリカエアロゲルに疎水性を付与することが好ましい。このように疎水性を付与した疎水性シリカエアロゲルは、湿気や水等が浸入し難くなり、シリカエアロゲルの屈折率や光透過性等の性能が劣化することを防ぐことができるものである。
【0108】
この疎水化処理は、ゲル状化合物を超臨界乾燥する前、或いは超臨界乾燥中に行うことができる。疎水化処理は、ゲル状化合物の表面に存在するシラノール基の水酸基を疎水化処理剤の官能基と反応させ、疎水化処理剤の疎水基と置換させることによって疎水化するために行うものである。疎水化処理を行う手法としては、疎水化処理剤を溶媒に溶解させた疎水化処理液中にゲルを浸漬し、混合するなどしてゲル内に疎水化処理剤を浸透させた後、必要に応じて加熱して、疎水化反応を行わせる方法があげられる。
【0109】
疎水化処理に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルジシロキサン等を挙げることができるが、疎水化処理剤が容易に溶解し、かつ、疎水化処理前のゲルが含有する溶媒と置換可能なものであればよく、これらに限定されるものではない。また後の工程で超臨界乾燥が行われる場合、超臨界乾燥の容易な媒体、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、液化二酸化炭素などと同一種類もしくはそれと置換可能なものが好ましい。また疎水化処理剤としては例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0110】
疎水化処理については、特開平5−279011号公報、特開平7−138375号公報に開示されている方法を用いることもできる。
【0111】
中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体としては、特開2001−233611号公報、特開2003−149642号公報に開示されているような、微粒子の内部に空隙を持つ中空微粒子をバインダー樹脂に分散させた多孔質体が挙げられる。
【0112】
バインダー樹脂としては中空微粒子の分散性、多孔質体の透明性、多孔質体の強度等の条件に適合する樹脂等から選択して用いることができ、例えば従来から用いられているポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの塗料用樹脂、またはアルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物・およびその加水分解物等が挙げられる。
【0113】
これらの中でも微粒子の分散性、多孔質体の強度からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アルコキシシラン等の加水分解性有機珪素化合物・およびその加水分解物が好ましい。
【0114】
低屈折率層として中空粒子がマトリックス中に分散された多孔質体を用いる場合には、低屈折率層の反射特性や防汚性を向上させることから、上記樹脂にフッ素樹脂を混合してもよい。
【0115】
中空微粒子は、無機化合物の微粒子であれば、特に制限されないが、外殻の内部に空洞が形成された無機中空微粒子が好ましく、シリカ系中空微粒子の使用が特に好ましい。
【0116】
無機化合物としては、無機酸化物が一般的である。無機酸化物としては、SiO2、Al23、B23、TiO2、ZrO2、SnO2、Ce23、P25、Sb23、MoO3、ZnO2、WO3等の1種または2種以上を挙げることができる。2種以上の無機酸化物として、TiO2−Al23、TiO2−ZrO2、In23−SnO2、Sb23−SnO2を例示することができる。これらは1種単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
無機中空微粒子としては、(A)無機酸化物単一層、(B)種類の異なる無機酸化物からなる複合酸化物の単一層、及び(C)上記(A)と(B)との二重層を包含するものを用いることができる。
【0118】
外殻は細孔を有する多孔質なものであってもよく、或いは細孔が閉塞されて空洞が外殻の外側に対して密封されているものであってもよい。外殻は、内側の第1無機酸化物被覆層及び外側の第2無機酸化物被覆層からなる複数の無機酸化物被覆層であることが好ましい。外側に第2無機酸化物被覆層を設けることにより、外殻の細孔を閉塞させて外殻を緻密化でき、さらには、内部の空洞を密封した無機中空微粒子を得ることができる。特に第2無機酸化物被覆層の形成に含フッ素有機珪素化合物を用いる場合は、フッ素原子を含む被覆層が形成されるために、得られる粒子はより低屈折率となるとともに、有機溶媒への分散性もよく、さらに低屈折率層の防汚性付与にも効果があり好ましい。このような含フッ素有機珪素化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等をあげることができる。
【0119】
無機中空微粒子の平均粒子径は特に制限されないが、5〜2000nmが好ましく、20〜100nmがより好ましい。5nmよりも小さいと、中空によって低屈折率になる効果が小さく、逆に2000nmよりも大きいと、透明性が極端に悪くなり、拡散反射による寄与が大きくなってしまう。ここで、平均粒子径は、透過型電子顕微鏡観察による数平均粒子径である。
【0120】
上述のような無機中空微粒子の製造方法は、例えば、特開2001−233611号公報に詳細に記載されており、本発明に使用できる無機中空微粒子は、そこに記載された方法に基づいて製造することができ、また一般に市販されている無機中空微粒子を用いることもできる。
【0121】
無機微粒子の配合量は、特に制限されないが、低屈折率層全体に対して、10〜30質量%であるのが好ましい。無機微粒子の配合量がこの範囲であるときに、低屈折率性と耐擦傷性を兼ね備えた光学積層フィルムを得ることができる。
【0122】
低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.25〜1.37、さらに好ましくは1.30〜1.37である。低屈折率層の屈折率を前記範囲にすることにより、防眩性フィルムに反射防止性に加えて、耐擦傷性を付与することができる。
【0123】
低屈折率層の屈折率は、アンチグレア層の屈折率と同様の方法で測定することができる。
【0124】
低屈折率層の厚みは、可視光線の吸収をよくするため、10〜1000nm、好ましくは30〜500nmである。
【0125】
本発明においては、低屈折率層の上に防汚層を有していても良い。防汚層は、低屈折率層を保護し、かつ、防汚性能を高めるために設けるものである。
【0126】
防汚層の形成材料としては、低屈折率層の機能が阻害されず、防汚層としての要求性能が満たされる限り特に制限はない。通常、疎水基を有する化合物を好ましく使用できる。具体的な例としてはパーフルオロアルキルシラン化合物、パーフルオロポリエーテルシラン化合物、フッ素含有シリコーン化合物を使用することができる。防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法;化学的気相成長(CVD)法;湿式コーティング法;等を用いることができる。防汚層の厚みは特に制限はないが、通常20nm以下が好ましく、1〜10nmであるのがより好ましい。
【0127】
本発明の製造方法において、アンチグレア層を形成する塗布液に含まれる揮発性を有する有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;及びこれらの2種以上からなる組み合わせ;等が挙げられる。
【0128】
これらの中でも、塗布液の対流を発生させ、表面凹凸を形成するために、ASTM.D3539.76に従い測定した酢酸n−ブチルの蒸発速度を1とした場合の相対蒸発速度で0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。このような有機溶剤としては、メタノール、エタノール、トルエン、n−ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0129】
塗布液における有機溶剤の含有量は、20体積%以上であり、40体積%以上であることが好ましい。前記範囲より少ないと、塗布液の対流が十分に発生しないため、表面凹凸の高さが不十分となる。
【0130】
本発明において、アンチグレア層を形成する塗布液に含まれる平均粒子径が5〜100nmである微粒子の含有量は、少なくとも5体積%であり、好ましくは7〜30体積%である。
【0131】
アンチグレア層を形成するための塗布液に含まれる界面活性剤の含有量は、多くとも1000ppmであり、好ましくは多くとも500ppmであり、最も好ましくは0ppmである。界面活性剤の含有量が前記範囲よりも多いと、塗布液の対流が十分に発生せず、アンチグレア層の表面に凹凸が形成されなくなる。
【0132】
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。フッ素系の界面活性剤としては、スリーエム社製のフロラードFC−431等のパーフルオロアルキルスルホン酸アミド基含有ノニオン、大日本インキ社製のメガファックF−171、F−172、F−173、F−176PF、F−470、F−471等のパーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等のオリゴマー等の各種の置換基で側鎖や主鎖の末端が変性されたポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0133】
アンチグレア層を形成するための塗布液の粘度は50mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が前記範囲より大きいと、塗布液の対流が十分に発生せず、表面凹凸の高さが不十分となる。前記塗布液の粘度は、JIS Z 8803に従い、単一円筒形回転粘度計により測定することができる。測定時の塗布液温度は、実際の塗布環境温度で行う。
【0134】
アンチグレア層を形成するための塗布液の塗工方法としては、特に制限されず、公知の塗工方法が採用できる。塗工方法としては、ワイヤバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等が挙げられる。塗布後の厚みは、塗布直後、溶剤乾燥前の溶液の状態で、平均厚みで10μm以上であることが好ましく、平均厚みで30μm〜100μmであることがより好ましい。塗布後の厚みが、前記範囲より薄いと、表面凹凸の高さが不十分となる。逆に塗布後の厚みが前記範囲より厚いと、表面凹凸高さ、周期が大きくなり、白ぼけが増し、透過画像鮮明性が悪化するため好ましく無い。
【0135】
上記アンチグレア層を構成する塗布液を塗工した後、これを乾燥及び硬化させることにより、表面に凹凸を有するアンチグレア層を形成することができる。
【0136】
乾燥温度及び乾燥時間は、アンチグレア層を構成する塗布液の溶剤や有機樹脂材料の種類、基材フィルムの種類に応じて適宜設定される。乾燥温度は、通常、室温から基材フィルムのガラス転移温度以下の範囲である。
【0137】
アンチグレア層の塗膜を得てこれを乾燥した後は、熱硬化型樹脂を含有する場合には加熱することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂を含有する場合には活性エネルギー線を照射することにより、それぞれ硬化させてアンチグレア層を形成することができる。硬化させる条件は、アンチグレア層を構成する有機樹脂材料の種類によって異なる。
【0138】
有機樹脂材料が、熱硬化型樹脂である場合は、使用する熱硬化型樹脂に適した硬化条件で加熱して、硬化させればよい。
【0139】
有機樹脂材料が、活性エネルギー線硬化型樹脂である場合は、電子線または紫外線の照射によって硬化することができる。電子線硬化の場合は、コックロフワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000KeVのエネルギーを有する電子線が使用される。紫外線硬化の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が挙げられる。
【0140】
アンチグレア層の上に低屈折率層を形成する場合は、低屈折率層を構成する塗布液をアンチグレア層の上に塗工し、次いで乾燥することにより得られる。
【0141】
塗工方法としては、ワイヤバーコート法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法等の公知の塗工方法が挙げられる。
【0142】
低屈折率層の上に防汚層を形成する場合、防汚層の形成方法としては、形成する材料に応じて、蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法;化学的気相成長(CVD)法;湿式コーティング法;が挙げられる。
【0143】
本発明のアンチグレア層は、全光線透過率が90%以上であり、かつヘイズが10%以下であることが好ましく、全光線透過率が92%以上であり、かつヘイズが5%以下であることがさらに好ましい。
【0144】
《液晶表示装置の構成》
液晶表示装置は、外部光を利用して、液晶セルを備えた表示ユニットを照明する反射型液晶表示装置であってもよく、表示ユニットを照明するためのバックライトユニットを備えた透過型液晶表示装置であってもよい。前記反射型液晶表示装置では、外部からの入射光を、表示ユニットを介して取り込み、表示ユニットを透過した透過光を反射部材により反射して表示ユニットを照明できる。反射型液晶表示装置では、前記反射部材から前方の光路内に防眩性フィルムや光学部材(特に偏光板と防眩性フィルムとの積層体)を配設できる。例えば、反射部材と表示ユニットとの間、表示ユニットの前面などに防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
【0145】
透過型液晶表示装置において、バックライトユニットは、光源(冷陰極管などの管状光源,発光ダイオードなどの点状光源など)からの光を一方の側部から入射させて前面の出射面から出射させるための導光板(例えば、断面楔形状の導光板)を備えていてもよい。また、必要であれば、導光板の前面側にはプリズムシートを配設してもよい。なお、通常、導光板の裏面には、光源からの光を出射面側へ反射させるための反射部材が配設されている。このような透過型液晶表示装置では、通常、光源から前方の光路内に防眩性フィルムや光学部材を配設又は積層できる。
【0146】
本発明の液晶表示装置は、アンチグレア層を設けると防眩性に優れ、更に低屈折率層を設けた場合は反射防止性にも優れるので視認性が極めて良好である。
【0147】
本発明の液晶表示装置の構成例を図をもって説明する。但し、本発明の液晶表示装置の構成はこれらに限定されるものではない。
【0148】
図2は従来型の液晶表示装置を示す模式図である。ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理を施した吸収型偏光子2aの両側を、アルカリ鹸化処理したTACフィルム保護膜3a、3bを完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせ偏光板2Aを作製する。同様にして吸収型偏光子2bにTACフィルム保護膜3c、3dを貼合した偏光板2Bを作製し、作製した偏光板2A、2Bを、位相差フィルム4a、4bを介して液晶セル1の両側に完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる。液晶表示装置の光源ユニット7は、光源、導光板、拡散フィルム、レンズフィルム、反射板等により構成され、該光源ユニットと液晶セルの間に輝度向上フィルム5を配置する。
【0149】
更に、TACフィルム保護膜3a上には保護・機能性フィルム6を貼合して、例えばハードコート効果を付与する。
【0150】
図3は従来型の別の液晶表示装置を示す模式図である。図2の構成において、TACフィルム保護膜3b、3cを位相差フィルム4a、4bで代替えし部材の削減を行った構成である。
【0151】
図4は、本発明の位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を用いた液晶表示装置の模式図である。
【0152】
光源ユニット側に配置した吸収型偏光子2bを用いた偏光板2Bと対になるように、本発明に係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子8Aを液晶セル1に接着剤を用いて接着する。
【0153】
更に、ワイヤグリッド偏光子8A上には保護・機能性フィルム6を貼合して、例えばハードコート効果を付与する。
【0154】
図5は、本発明の位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【0155】
図4の構成に対し、光源ユニット側に本発明に係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子8Bを液晶セル1に接着剤を用いて接着する。
【0156】
ワイヤグリッド偏光子8Bは反射散乱型であることから、液晶表示装置の光源ユニット7と液晶セルの間に輝度向上フィルム5は不要となる。
【0157】
図6は本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【0158】
本発明に係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を液晶セルの両側に用いた例である。図2の従来型の構成に対し大幅に薄膜化が可能である。
【0159】
図7は本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【0160】
保護・機能性フィルム6の替わりに、アンチグレア層9をワイヤグリッド偏光子上に塗設した例である。ワイヤグリッド偏光子2枚を用いてアンチグレア層9を塗設した構成の液晶表示装置は、従来型液晶表示装置に対して大幅に薄膜化、部材数の低減が可能である。
【0161】
ワイヤグリッド偏光子8A、8Bを他の部材と接着するには、接着剤層または粘着剤層を介して行うことが好ましい。接着剤層に用いる接着剤または粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性等の観点から、アクリル系のものが好ましい。また、プライマー溶液を介して貼り合わせることも好ましい。プライマー溶液としては、無水マレイン酸変性スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物を、溶媒に溶解させたものなどを好ましく用いることができる。
【0162】
更に、本発明の液晶表示装置は、その目的に応じて、反射防止フィルム等の機能性フィルムを適宜貼合することができる。
【0163】
本発明の液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型、VA(Vertical Alignment)、MVA(Multiple Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend)型等の半透過型、反射型等、あらゆる液晶セルを好ましく用いることができる。
【実施例】
【0164】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0165】
《位相差フィルムの作製》
〈セルロースアシレートフィルムの作製〉
下記のようにドープを調製し、そのドープを用いてセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0166】
(ドープの調製)
セルロースアシレートとして、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を含む下記の材料を所定量混合し、その混合物を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり撹拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げ溶解した。容器内を1.2気圧に調整した。このドープを安積濾紙社製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、一晩そのまま放置しドープを得た。
【0167】
TAC(アセチル基置換度2.88) 50質量部
CAP(アセチル基置換度1.90、プロピオニル基置換度0.70) 50質量部
トリフェニルホスフェート 3質量部
メチルフタリルエチルグリコレート 4質量部
チヌビン109(チバスペシャルティーケミカルズ社製) 3質量部
塩化メチレン 455質量部
エタノール 36質量部
下記レターデーション上昇剤 5質量部
尚、上記アシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定した。
【0168】
【化1】

【0169】
次いで、上記のように調製したドープをダイからステンレスベルト(流延用支持体ともいう)上にドープ温度30℃で流延し、ウェブを形成した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上でウェブを1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ウェブをステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いでテンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、フィルム温度145℃にて、巾方向に1.15倍延伸した。このようにして膜厚80μmのセルロースアシレートフィルムF−1を得た。このフィルムのレターデーション値Ro=45nm、Rth=145nmであった。
【0170】
(レターデーションの測定)
アッベ屈折率計(4T)を用いてフィルム構成材料の平均屈折率を測定した。また、市販のマイクロメーターを用いてフィルムの厚さを測定した。
【0171】
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が589nmにおけるフィルムのレターデーション測定を行った。上述の平均屈折率と膜厚を入力し、面内レターデーション(Ro)及び厚み方向のレターデーション(Rth)の値を得た。
【0172】
Ro=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
〈ポリカーボネートフィルムの作製〉
ポリカーボネート PC−1として、下記モノマー M−1、M−2 1:1モル比からなるポリカーボネート共重合体を用い、セルロースアシレートフィルムと同様、溶液流延法によりフィルムを作製した。なお、溶媒には塩化メチレンを用いた。このフィルムを、215℃にて1.2倍に縦延伸した後、1.5倍に横延伸した。その後、120℃でこの状態を1分間保持しながら冷却し、更に室温で冷却した。このようにして、膜厚65μmのポリカーボネートフィルムF−2を得た。Ro=45nm、Rth=150nmであった。
【0173】
【化2】

【0174】
ポリカーボネート PC−2として、帝人化成(株)製 パンライト K−1300Yを用い、溶融流延法にてフィルムを作製した。なお、290℃にて溶融し、100℃のドラム上に流延した。このフィルムを、210℃にて1.2倍に縦延伸した後、1.45倍に横延伸した。その後、100℃でこの状態を1分間保持しながら冷却し、更に室温で冷却した。このようにして、膜厚60μmのポリカーボネートフィルムF−3を得た。Ro=40nm、Rth=140nmであった。
【0175】
〈シクロオレフィンポリマーフィルムの作製〉
シクロオレフィンポリマー COP−1として、JSR(株)製ARTONを用い、セルロースアシレートフィルムと同様、溶液流延法によりフィルムを作製した。なお、溶媒には塩化メチレンを用いた。このフィルムを、175℃にて1.3倍に縦延伸した後、1.7倍に横延伸した。その後、110℃でこの状態を1分間保持しながら冷却し、更に室温で冷却した。このようにして、膜厚60μmのシクロオレフィンポリマーフィルムF−4を得た。Ro=40nm、Rth=130nmであった。
【0176】
(シクロオレフィンポリマーの合成)
窒素置換した反応容器に、モノマーとして、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 225質量部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 25質量部、分子量調節剤として 1−ヘキセン 18質量部、溶媒として トルエン 750質量部を仕込み、この溶液を60℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒としてトリエチルアルミニウム1.5モル/lを含有するトルエン溶液0.62質量部、t−ブタノールおよびメタノールで変性した六塩化タングステン(t−ブタノール:メタノール:タングステン=0.35モル:0.3モル:1モル)を含有する0.05モル/lのトルエン溶液3.7質量部を添加し、この系を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環共重合反応させて開環共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液4000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環共重合体溶液に、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム:RuHCl(CO)[P(C6533 0.48質量部を添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で3時間加熱攪拌することにより水素添加反応を行った。得られた反応溶液を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、シクロオレフィンポリマー COP−2を得た。
【0177】
シクロオレフィンポリマー COP−2を用い、溶融流延法にてフィルムを作製した。なお、240℃にて溶融し、100℃のドラム上に流延した。このフィルムを、150℃にて横方向の幅を一定に保ちながら1.3倍に縦延伸した後、1.5倍に横延伸した。その後、100℃でこの状態を1分間保持しながら冷却し、更に室温で冷却した。このようにして、膜厚50μmのシクロオレフィンポリマーフィルムF−5を得た。Ro=45nm、Rth=120nmであった。
【0178】
〈複合ポリカーボネートフィルムの作製〉
前述のポリカーボネートフィルムF−2の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを、アクリル系粘着剤層を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、160℃の空気循環式恒温オーブン内で1.15倍に延伸し、膜厚80μmのポリカーボネートフィルムF−6を得た。Ro=280nm、Rth=135nmであった。
【0179】
〈熱収縮セルロースアシレートフィルム〉
シクロペンタノン80質量部にノルボルネン系樹脂〔JSR(株)製 商品名「ARTON」〕20質量部を加えて作製した溶液を、厚さ40μmの市販のセルロースアシレートフィルム(KC4UY、コニカミノルタオプト社製)上に厚み150μmで塗工し、140℃で3分間乾燥した。乾燥後、セルロース樹脂フィルムの表面に形成されたノルボルネン系樹脂フィルムを剥離し、セルロースアシレートフィルムF−7を得た。Ro=0.3、Rth=3であった。
【0180】
《アンチグレア層の作製》
〈アンチグレア層付きTACフィルム AG−1〉
アクリル樹脂[サイクロマーP(ACA)320M、ダイセル化学工業社製]
13部
セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20、イーストマン社製)
2.5部
UV硬化モノマー(DPHA、ダイセル・ユ−シービー社製) 15部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)
1.5部
メチルエチルケトン 50部
1−ブタノール 14部
1−メトキシ−2−プロパノール 4部
上記組成物を混合、溶解後、この溶液を、ワイヤバー#24を用いて市販のセルロースアシレートフィルム(KC8UY、コニカミノルタオプト社製、以下、TACフィルムF−0)上に塗布した。これを、80℃で乾燥後、UV硬化処理した。さらに、低屈折率層として、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(LR204−6、日産化学社製製)をワイヤバー#5を用いて塗布し、乾燥後、90℃で5分間熱硬化させ、アンチグレアフィルムAG−1を作製した。アンチグレア層の下記測定法による十点平均粗さRzは0.6μmであった。
【0181】
(十点平均粗さRzの測定)
アンチグレア層の表面の凹凸の高さとして表される十点平均粗さRzは、JIS B0601−1994に準じて、光学干渉式表面粗さ計RST/PLUS(WYKO社製)を使用して、1.2mm×0.9mmの面積に対して求めた。
【0182】
《偏光板の作製》
〈偏光板P−0Aの作製〉
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で6倍縦延伸を行い、偏光膜を作製した。これに、ケン化処理したTACフィルムF−0を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の両面に貼合し、偏光板P−0Aを作製した。
【0183】
〈偏光板P−0Bの作製〉
上記偏光膜の片面に、セルロースアシレートフィルムF−1を、その面内遅相軸と偏光膜の透過軸が平行になるように貼合した以外は同様の操作を行い、位相差フィルム一体型偏光板P−0Bを作製した。
【0184】
〈偏光子P−1の作製〉
セルロースアシレートフィルムF−1に、蒸着により、120nm厚のアルミニウム層を成膜した後、さらにスピンコートによりフォトレジスト層を塗設した。続いて、ArFレーザー(波長193nm)の二光束干渉露光により、縞状パターン(ピッチ200nm、巾100nm)を形成し、現像後、ドライエッチングでアルミニウムを除去し、位相差フィルム一体型ワイヤーグリッド偏光子P−1を作製した。
【0185】
〈偏光子P−2、3、4、5、6、7の作製〉
表1記載のフィルム及びワイヤグリッド層材料を用い、偏光子P−1と同様の操作を行い、位相差フィルム一体型ワイヤーグリッド偏光子P−2、3、4、5、6、7を作製した。
【0186】
〈アンチグレア層付き偏光子P−3G、5G、6Gの作製〉
塗布基材として、TACフィルムの代わりにワイヤグリッド偏光子P−3、P−5、P−6を用いた以外は、AG−1の作製と同様の操作を行い、アンチグレア層付きワイヤグリッド偏光子P−3G、5G、6Gを作製した。
【0187】
【表1】

【0188】
《液晶表示装置の作製》
垂直配向型液晶セルを使用した液晶表示装置(シャープ製32型テレビAQ−32AD5)に設けられている一対の偏光板および一対の位相差フィルム(光学補償シート)を剥がし液晶セルを取り出した。これに、表2に示す配置構成となるように、作製した偏光板の透過軸が、予め貼合されていた偏光板の透過軸と同じ方向となるように粘着剤を介して、偏光板、位相差フィルム、アンチグレアフィルムを貼合し、液晶表示装置1〜11を作製した。なお、光源、導光板、拡散板、等は、そのまま用いた。
【0189】
更に、IPS型(横電界スイッチングモード型)液晶ディスプレイである日立製液晶テレビWooo W17−LC50を用いて、同様にして表2記載の構成で液晶表示装置12、13を作製した。
【0190】
【表2】

【0191】
《液晶表示装置としての評価》
液晶表示装置を室内に設置し、画面輝度、画像コントラスト、耐久性について、以下の基準で目視評価した。
【0192】
(輝度)
比較例−1を基準として、
○:輝度向上が強い
△:輝度向上が弱い
×:輝度向上が認められない
(画像コントラスト)
◎:非常に鮮明に見える
○:鮮明に見える
△:やや不鮮明に見える
×:不鮮明でありはっきり見えない
(耐久性)
作製した各偏光子について、耐久試験(60℃、80%RH、250時間放置)を行った後、パネルを作製し、画像の黒表示について評価した。
【0193】
◎:黒表示が鮮明に見える
○:やや白っぽく見える
△:白っぽく見える
×:白く見える
(厚み)
表2記載の液晶表示装置構成要素のうち、液晶セルを除く要素のおよその厚みを市販のマイクロメーターを用いて測定した。
【0194】
これらの評価結果を表3に示す。
【0195】
【表3】

【0196】
表3より、本発明の液晶表示装置は、優れた輝度、画像コントラスト、耐久性を示していることが明らかである。
【0197】
また、ワイヤグリッド型偏光子を2枚使用した液晶表示装置9、11、12は大幅に厚みが低減されており、軽量薄膜な液晶表示装置が得られることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明に係る位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光素子の模式図である。
【図2】従来型の液晶表示装置の構成を示す模式図である。
【図3】従来型の液晶表示装置の別の構成を示す模式図である。
【図4】本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた液晶表示装置の模式図である。
【図5】本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【図6】本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【図7】本発明のワイヤグリッド偏光子を用いた別の液晶表示装置の模式図である。
【符号の説明】
【0199】
1 液晶セル
2A、2B 吸収型偏光板
2a、2b 吸収型偏光子
3a、3b、3c、3d TACフィルム保護膜
4a、4b 位相差フィルム
5 輝度向上フィルム
6 保護・機能性フィルム
7 光源ユニット
8 ワイヤグリッド
8A、8B 位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子
9 アンチグレア層
100 位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子
110 金属グリッド
120 位相差フィルム
t 金属グリッド高さ
w 金属グリッド幅
p 金属グリッドピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶セルを挟み二つの偏光板を有する液晶表示装置において、少なくとも一つの偏光板が、位相差フィルム上にワイヤグリッドを形成した位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記位相差フィルムの面内方向における下記式で定義される589nmにおける面内位相差値Roが30〜100nmであり、かつ厚み方向の位相差値Rthが70〜300nmであり、Rth/Roが2〜5の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
Ro=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
【請求項3】
前記位相差フィルムが、ポリカーボネート、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、メタクリル酸メチル・スチレンコポリマーから選ばれる樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記位相差フィルム一体型ワイヤグリッド偏光子を、液晶セルの両側に用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292908(P2008−292908A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140263(P2007−140263)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】