説明

液晶表示装置

【課題】従来と比較して少ない電力で高い輝度を有しながらもモアレが発生しない液晶表示装置を提供する。
【解決手段】光源2と、光拡散層3と、液晶セル5の両面に偏光板6,7が配置された液晶パネル4とをこの順で備え、光拡散層3の液晶パネル4側の表面3aが周期的な微細形状を有し、かつ、液晶パネル4の視認側に配置された偏光板6の最表面には、ランダムな微細凹凸形状を有し、透過鮮明度が150%以下である防眩層8を有する液晶表示装置。光拡散層表面3aの周期的な微細形状は、単位レンズが複数配置されてなるレンズシート、具体的にはたとえば、複数の半円柱状凸シリンドリカルレンズが一方向に並列されたレンズ部を有するレンチキュラーシートで構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源と、光拡散層と、液晶セルの両面に偏光板が配置された液晶パネルとをこの順で備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴から、携帯用テレビ、ノート型パーソナルコンピュータなどに利用が進んでおり、今日では、大型テレビなどの映像鑑賞用機器への応用も進んでいる。テレビ受像機など、映像を表示する目的で用いられる液晶表示装置では、視認性向上のために輝度の向上が求められている。また、光源で消費する電力は液晶表示装置全体で消費する電力の相当部分を占めていることから、電池により電力を供給する方式の装置においては、電池の寿命を増大させるために、必要とする輝度を与えるための総電力を低減させることが好ましい。さらには、環境保護の観点からも、所定の輝度を与えるための電力を減少させることが好ましい。
【0003】
このような輝度向上目的のために、図2に示すような断面三角形状の単位プリズムが一方向に周期的に配列された光学シートである、輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film(BEF):米スリーエム社の登録商標)が広く使用されている。この輝度強調フィルムは、そのプリズム面と反対側に光拡散層を配置して用いられることが多い。また、最近では特開2006−208930号公報(特許文献1)および特開2006−330149号公報(特許文献2)に開示されている図3に示すようなレンズシートと、そのレンズシートの凸部に対応する位置に開口部を有する光反射層と、接着層または粘着層と、光拡散層とをこの順に積層した断面構造を有する光拡散性の光学シートも使用されている。これらの輝度向上シートは、光源からの光を有効利用する観点から、光源と液晶パネルとの間に配置されることが多い。ただし、これらの光の有効利用を目的とした光学シートはその最表面に周期的な形状を有するため、液晶セルのパターンと干渉することによってモアレが発生するという問題があった。ここで、たとえば図4(a)に示されるパターンを有する液晶パネルと、図4(b)に示されるパターンを有する拡散板とを重ね合わせた際に、図4(c)に示されるように、明るく見える縞状の領域と暗く見える縞状の領域とが交互に配置されることがあるが、モアレとは、このように規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせたときに、それらの周期ずれにより視覚的に発生する縞模様を指す。
【0004】
モアレの発生は、輝度向上シートと液晶パネルとの間に光の向きをランダムに散乱させる光散乱層を配置することによって解消することが可能であるが、このような光散乱層を設けた場合には、液晶表示装置としての輝度が低下したり、コスト高となったりするなどの問題があった。
【0005】
一方、液晶表示装置において液晶セルの両面に配置される偏光板は通常、偏光フィルムの片面または両面に保護層が設けられた形で用いられ、その保護層として、トリアセチルセルロースフィルムが一般的である。さらに、液晶表示装置は、その画像表示面に外光が映り込むと、視認性が著しく損なわれるため、画質や視認性を重視するテレビやパーソナルコンピュータなどの用途では、これらの映り込みを防止する処理が表示装置表面になされるのが通例である。映り込み防止処理としては、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させ、映り込み像をぼかすいわゆる防眩処理が、比較的安価に実現できるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタ、テレビなどの用途に好適に用いられている。
【0006】
このような防眩性を付与するフィルムとして、たとえば特開2002−365410号公報(特許文献3)には、表面に微細な凹凸が形成された光学フィルムであって、そのフィルムの表面に、法線に対して−10°方向から光線を入射し、表面からの反射光のみを観測したときの反射光のプロファイルが特定の関係を満たす防眩性光学フィルムが開示されている。また、特開2002−189106号公報(特許文献4)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、三次元10点平均粗さおよび三次元粗さ基準面上における隣接する凸部どうしの平均距離が、それぞれ所定値となる微細な凹凸を形成させ、その凹凸が形成された電離放射線硬化性樹脂層を上記透明樹脂フィルム上に設けた形の防眩フィルムが開示されている。
【特許文献1】特開2006−208930号公報
【特許文献2】特開2006−330149号公報
【特許文献3】特開2002−365410号公報
【特許文献4】特開2002−189106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような、光源と液晶パネルとの間に輝度向上シートを含む光拡散層が配置された液晶表示装置におけるモアレ発生という課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来と比較して少ない電力で高い輝度を与えながらもモアレが発生しない液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光源と、光拡散層と、液晶セルの両面に偏光板が配置された液晶パネルとをこの順で備える液晶表示装置において、輝度を向上させつつもモアレの発生を抑えるための研究を行ってきた。その結果、光拡散層の液晶パネル側の表面が周期的な微細形状を有し、かつ、液晶セルの表示面側、すなわち、液晶パネルの視認側に配置された偏光板の最表面に、特定の光学特性を付与した防眩層を配置することによって、少ない電力であっても高い輝度を発現しつつ、モアレが発生しなくなることを見出した。そして、これらの知見に種々の検討を加えて、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
本発明の液晶表示装置は、光源と、光拡散層と、液晶セルの両面に偏光板が配置された液晶パネルとをこの順で備え、光拡散層の液晶パネル側の表面が周期的な微細形状を有し、かつ、液晶パネルの視認側に配置された偏光板の最表面には、ランダムな微細凹凸形状を有し、透過鮮明度が150%以下である防眩層を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の液晶像表示装置における防眩層は、透過鮮明度が100%以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の液晶表示装置における光拡散層表面の周期的な微細形状は、液晶パネル側に単位レンズが複数配置されてなるレンズシートで構成されていることが好ましい。
【0012】
また、上記のレンズシートは、複数の半円柱状凸シリンドリカルレンズが一方向に並列されたレンズ部を有するレンチキュラーシートであることが、好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来と比較して少ない電力で高い輝度を与えながらもモアレが発生しない液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の好ましい一例の液晶表示装置1を模式的に示す断面図である。本発明の液晶表示装置1は、図1に示されるように、光源2と、光拡散層3と、液晶セル5の両面に偏光板6,7が配置された液晶パネル4とをこの順で備える基本構造において、光拡散層3の液晶パネル4側の表面3aが周期的な微細形状を有し、かつ、液晶表示装置1の表示面側である液晶パネル4の視認側に配置された偏光板6の最表面に、特定の光学特性を付与した防眩層8を配置したことを特徴とする。このような本発明の液晶表示装置1は、従来と比較して少ない電力で高い輝度を与えながらもモアレが発生しないものである。
【0015】
本発明の液晶表示装置1において、光拡散層3の表面3aにおける周期的な微細形状は、光拡散層3の液晶パネル4側である光出射側の光を有効利用する目的で形成される。ここで、「周期的な微細形状」は、凸状(凸レンズ状、柱状、錐状、プリズム状、シリンドリカルレンズ状など)、または凹状(凹レンズ状など)の微細な単位形状の1以上が一定の周期を有するように形成された形状を指す。なお、「微細」とは、単位形状の幅が概ね1000μm以下、高さが概ね1000μm以下であることを指し、また、「周期的」とは互いに隣り合う単位形状の中心線間の距離(ピッチ)が10〜1000μmの範囲内で概ね一定であることを指す。単位形状の中心線間の距離(ピッチ)は、20μm以上、また200μm以下であることがより好ましい。このように表面3aが周期的な微細形状を有する光拡散層は、上述した従来公知の輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film(BEF))を光拡散性のシートに積層することによって、あるいは、上述した特許文献1、2に開示されているような、レンズシートと、そのレンズシートの凸部に対応する位置に開口部を有する光反射層と、接着層または粘着層と、光拡散層とをこの順で積層した光学シートを用いることによって形成することができる。
【0016】
ここで、図2は、本発明の液晶表示装置に好適に用いられ得る好ましい一例の光拡散層11を模式的に示す断面図である。図2に示す例の光拡散層11は、光拡散シート12,13上に、断面三角形状の単位プリズムが一方向に周期的に配列されたプリズムシート14が積層された構造を備える。ここでプリズムシート14は、上述した輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film(BEF):米スリーエム社の登録商標)で構成されている。
【0017】
また図3は、本発明の液晶表示装置に好適に用いられ得る好ましい他の例の光拡散層21を模式的に示す断面図である。図3に示す例の光拡散層21は、上述した特許文献1、2に開示された、光拡散性を有する基材23の上に、凸レンズ状のレンズシート22が積層された構造を備える。レンズシート22と基材23との間には、凸レンズの凸部に対応する位置に開口部を有する光反射層が備えられ、その光反射層は、接着層または粘着層を介して、基材23に接着されている(これらの光反射層と接着層または粘着層は図示を省略する)。
【0018】
中でも、輝度向上の観点から図3に示したように、基材23の液晶パネル側に単位レンズが複数配置されてなるレンズシート22が積層されている構造を備える光拡散層21を用いることが好ましく、さらには、成型用金型の切削やレンズ成型の容易さから、複数の半円柱状凸シリンドリカルレンズが一方向に並列されたレンズ部を有するレンチキュラーシートを図3に示した構造のレンズシートとして用いた光拡散層が特に好ましい。このような特に好ましい構造を備える光拡散層は、上記特許文献1、2に記載の方法に準じて作製することができ、またそこに記載の構造を有することが好ましい。
【0019】
本発明においては、液晶セル5の両面に偏光板6,7が貼合され、液晶パネル4が形成される。液晶セルと偏光板の貼合には通常、粘着剤が用いられる。なお、液晶セルの駆動モードとしては、TNモード、VAモード、IPSモードなどがあるが、特に制限されるものではない。また、本発明の液晶表示装置1に用いられる光源2は、当分野において従来より広く用いられている光源を特に制限されることなく用いることができ、たとえば冷陰極管、発光ダイオード(LED)などを光源として好適に用いることができる。
【0020】
本発明に用いられる偏光板6,7は、フィルム面内で直交する一方の向きに振動する直線偏光を透過し、他方の向きに振動する直線偏光を吸収するタイプの、一般に偏光フィルムまたは偏光板として知られるものでよい。具体的には、ポリビニルアルコールフィルムに一軸延伸と二色性色素による染色を施し、さらにホウ酸架橋を施したものを偏光フィルムとして用いることができる。偏光フィルムには、二色性色素としてヨウ素を用いたヨウ素系偏光フィルム、二色性色素として二色性染料を用いた染料系偏光フィルムがあるが、本発明の液晶表示装置にはいずれを用いてもよい。また、本発明における偏光板6,7として、上述した偏光フィルムのみを用いてもよいが、通常、当該偏光フィルムの片面または両面に、トリアセチルセルロースなどの透明高分子からなる保護フィルムが積層された偏光板が用いられる。偏光板6,7は、適宜の市販品を用いてもよく、好適な市販品としてたとえばスミカランSRDB31E(住友化学(株)製)などを挙げることができる。
【0021】
偏光板6,7は、上述したように、一般的には、粘着剤を用いて液晶セル5に貼合されるが、液晶表示装置の視野角拡大のための位相差板を偏光板と液晶セルとの間に駆動モードに合わせて適宜配置することが好ましい。その際には、液晶セル側の保護フィルムとして位相差板の機能を有するフィルムを使用することも可能である。
【0022】
本発明の液晶表示装置は、上述したように、液晶セル5の両面にそれぞれ配置された偏光板6,7のうち、液晶パネル4の視認側に配置された偏光板6の最表面に、防眩層8が配置される。この防眩層8に、偏光板6の保護フィルムとしての役割を持たせることもできるが、その場合には、偏光板6は、偏光フィルムの防眩層8が配置された側とは反対側に、上述したような保護フィルムを有するように実現されてることが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる防眩層8は、微細な凹凸形状がランダムに形成された表面形状を有し、透過鮮明度が150%以下であるものが用いられる。ここで、防眩層8の透過鮮明度は、JIS K 7105の規定に準拠し、暗部と明部の幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて写像性測定器ICM−1DP(スガ試験機(株)製)にて測定された値の合計値を指す。この定義による透過鮮明度の最大値は400%となる。この透過鮮明度が150%を超える防眩層を用いた場合には、光拡散層の出射面の光を有効利用するための周期的な微細表面形状と液晶セルパターンの干渉によって発生するモアレを解消することができない。なお、上述した拡散層の液晶パネル側の表面における周期的な微細形状と、液晶セル5のセルパターンとの干渉によって発生するモアレの強弱は、当該周期的な微細形状とセルパターンのピッチや、当該周期的な微細形状と液晶セルとの間のギャップなどに依存して変化し、より確実にモアレを解消するためには、防眩層8の上記透過鮮明度は100%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる防眩層8は、上述したモアレの解消という観点からは、上記透過鮮明度の下限については特に制限されないが、液晶表示装置の視認性の観点から30%以上であることが好ましい。なお、防眩層8の透過鮮明度を効果的に低下させるためには、たとえば、表面凹凸形状の周期を大きくすればよいことが知られている。
【0025】
本発明の液晶表示装置1に用いられる防眩層8は、既存の方法を用いて形成することができる。既存の方法としては、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布面表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法や、特開2002−189106号公報(特許文献4)に開示されているように、フィラーを含有させずに、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させる方法などがある。
【0026】
なお、防眩層8は、偏光板6の偏光フィルム上に直接形成しても構わないし、防眩層を透明樹脂フィルム上に形成した後、その防眩層付き透明樹脂フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることによって形成しても構わない。この場合、用いられる透明樹脂フィルムとしては、実質的に光学的な透明性を有するフィルムであれば特に制限されるものでなく、具体的には、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどからなるフィルムなどが例示される。シクロオレフィン系樹脂は、ノルボルネンやジメタノオクタヒドロナフタレンのような環状オレフィンをモノマーとする樹脂であり、具体的な市販品としてはアートン(JSR(株)製)、ゼオノア(日本ゼオン(株)製)、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。
【0027】
フィラーを分散させる樹脂や形状を転写する場合の樹脂として電離放射線硬化型樹脂が広く使用されており、そのような電離放射線硬化型樹脂としては、分子内に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましく用いられるが、防眩層8の機械的強度を向上させるためには、3官能以上のアクリレート、すなわち、分子内に3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物がより好ましく用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが例示される。
【0028】
また、防眩面に可撓性を付与して割れにくくするために、分子内にウレタン結合を有するアクリレート化合物も好ましく用いられる。具体的には、トリメチロールプロパンジアクリレートやペンタエリスリトールトリアクリレートのような、分子内にアクリロイルオキシ基とともに少なくとも1個の水酸基を有する化合物2分子が、ヘキサメチレンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物に付加した構造のウレタンアクリレートが例示される。
【0029】
この他、エーテルアクリレート系、エステルアクリレート系など、電離放射線によりラジカル重合を開始し、硬化するその他のアクリル系樹脂も用いることができる。アクリル系の電離放射線硬化型樹脂を紫外線の照射により硬化させる場合は、紫外線の照射を受けたときにラジカルを発生し、重合・硬化反応を開始させるために、紫外線ラジカル開始剤が添加されて用いられる。
【0030】
紫外線照射によりラジカル反応を開始する紫外線ラジカル開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどの他、特に紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム越しに紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなど、可視領域に吸収を有するリン系の光ラジカル開始剤が好適に用いられる。
【0031】
また、エポキシ系やオキセタン系など、カチオン重合性の電離放射線硬化型樹脂も、硬化後に凹凸が賦形される樹脂として用いることができる。この場合はたとえば、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼンやビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルのようなカチオン重合性多官能オキセタン化合物と、(4−メチルフェニル)〔4−(2−メチルプロピル)フェニル〕ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェートのような光カチオン開始剤との混合物が用いられる。
【0032】
樹脂中に分散させる微粒子は、防眩層8の設計に併せて適宜選択することができる。このような微粒子の例として、多孔質シリカ微粒子(屈折率:1.46)、メラミンビーズ(屈折率:1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率:1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率:1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率:1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率:1.53)、ポリスチレンビーズ(屈折率:1.6)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率:1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率:1.46)などが挙げられる。
【0033】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0034】
<実施例1>
(1)エンボス用金型の作製
直径200mmの鉄ロール(JISによるSTKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、ジルコニアビーズTZ−B53(東ソー(株)製、平均粒径:53μm)を、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積あたり)、ブラスト圧力0.15MPa(ゲージ圧)、微粒子を噴射するノズルから金属表面までの距離450mmの条件でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対して、塩化第二銅水溶液でエッチングを行った。その際のエッチング量は6μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、エンボス用の金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。得られた金型は、表面のビッカース硬度が1000であった。
【0035】
(2)防眩フィルムの作製
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物を入手した。
【0036】
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート 40部
レベリング剤 あり
なお、多官能ウレタン化アクリレートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物が用いられている。
【0037】
厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、上記紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥後の塗膜厚みが10μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、上記(1)で作製した金型の凹凸面に、紫外線硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で20mJ/cm2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを得た。
【0038】
(3)液晶表示装置の作製
光源と液晶パネルとの間に光拡散層が配置され、その光拡散層の光出射側(液晶パネル側)表面にレンチキュラーレンズシートが配置されている市販の液晶テレビLC−37GS10(シャープ(株)製)の液晶セルから表裏両面の偏光板を剥離した。それらオリジナル偏光板の代わりに、背面側および表示面側とも、偏光板スミカランSRDB31E(住友化学(株)製)を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合し、さらに表示面側偏光板の上には、上記(2)で作製した防眩フィルムをランダムな微細凹凸形状を有する側が表面側となるように粘着剤を介して貼合し、防眩層とした。このようにして得られた液晶パネルを、光源/光拡散層(液晶テレビLC−37GS10のオリジナル拡散シート)/液晶パネルの順となるように組み立てて、液晶像表示装置のサンプルを作製した。
【0039】
<実施例2>
偏光板スミカラン(住友化学(株)製)に防眩層として使用されている、防眩フィルムAG3を防眩層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0040】
<実施例3>
偏光板スミカラン(住友化学(株)製)に防眩層として使用されている、防眩フィルムAG5を防眩層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0041】
<実施例4>
偏光板スミカラン(住友化学(株)製)に防眩層として使用されている、防眩フィルムAG6を防眩層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0042】
<比較例1>
金型作製の際のエッチング量を8μmに変更した以外は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有するエンボス用の金型を作製した。得られた金型は、表面のビッカース硬度が1000であった。この金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製し、これを防眩層として用い、実施例1と同様に液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0043】
<比較例2>
偏光板スミカラン(住友化学(株)製)に防眩層として使用されている、防眩フィルムAG8を防眩層として用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0044】
<比較例3>
視認側最表面に防眩層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして液晶表示装置のサンプルを作製した。
【0045】
<評価試験1:透過鮮明度>
実施例1〜4、比較例1、2で用いた防眩層(防眩フィルム)について、JIS K 7105に準拠した写像性測定器ICM−1DP(スガ試験機(株)製)を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度(%)を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス基板側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、上述したとおり、暗部と明部の幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。なお、比較例3については、TACフィルムのみを粘着剤でガラスに貼合した状態で同様にして評価した。
【0046】
<評価試験2:白表示時輝度>
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた液晶表示装置のサンプルを暗室内で起動し、輝度計BM5A((株)トプコン製)を用いて、白表示状態における輝度(cd/m2)を測定した。
【0047】
<評価試験3:モアレ>
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた液晶表示装置のサンプルを暗室内で起動し、モアレの発生の程度を目視で評価した。モアレの強弱の程度は1から5の5段階で次のように評価した。
【0048】
モアレ
1:モアレ縞が観察されない
2:1と3の中間レベル
3:モアレ縞が観察される
4:3と5の中間レベル
5:モアレ縞が明瞭に観察される
評価試験1〜3の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、表1中、たとえば実施例1の透過鮮明度の内訳は次のとおりである。
透過鮮明度
0.125mm光学くし:26.0%
0.5mm光学くし :22.8%
1.0mm光学くし :23.5%
2.0mm光学くし :35.0%
合計 107.3%
表1に示したとおり、実施例1〜4の液晶表示装置は、輝度も高いうえにモアレも発生しない良好な視認性を示すことが分かった。さらに、透過鮮明度が特に低い実施例3、4の液晶表示装置はモアレがほとんど観察されなかった。一方、透過鮮明度が150%を上回った比較例1〜3の液晶表示装置では、高い輝度を示しているもののモアレが観察され、視認性を著しく損ねる結果となった。また、表1に示す結果から、透過鮮明度の上昇とともにモアレの程度が強くなることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の好ましい一例の液晶表示装置1を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置に好適に用いられ得る好ましい一例の光拡散層11を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置に好適に用いられ得る好ましい他の例の光拡散層21を模式的に示す断面図である。
【図4】モアレの発生について説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
1 液晶表示装置、2 光源、3,11,21 光拡散層、4 液晶パネル、5 液晶セル、6,7 偏光板、8 防眩層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、光拡散層と、液晶セルの両面に偏光板が配置された液晶パネルとをこの順で備える液晶表示装置であって、
光拡散層の液晶パネル側の表面が周期的な微細形状を有し、かつ、液晶パネルの視認側に配置された偏光板の最表面に、ランダムな微細凹凸形状を有し、透過鮮明度が150%以下である防眩層を有する、液晶表示装置。
【請求項2】
防眩層の透過鮮明度が100%以下である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
光拡散層表面の周期的な微細形状は、液晶パネル側に単位レンズが複数配置されてなるレンズシートで構成されている、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
レンズシートが、複数の半円柱状凸シリンドリカルレンズが一方向に並列されたレンズ部を有するレンチキュラーシートである、請求項3に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−116109(P2009−116109A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289988(P2007−289988)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】