液晶表示装置
【課題】 高コントラスト比で視角特性が良好なSTN−LCDを提供する。
【解決手段】
液晶表示装置は、単波長発光ピークを有する光源を用いたバックライトと、基板と、基板間に挟持されたネマチック液晶層と、基板の各々においてネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部とを有し、基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、さらに、単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、液晶表示部のリタデーションR(nm)が式R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7を満たし、±10%が許容範囲である。
【解決手段】
液晶表示装置は、単波長発光ピークを有する光源を用いたバックライトと、基板と、基板間に挟持されたネマチック液晶層と、基板の各々においてネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部とを有し、基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、さらに、単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、液晶表示部のリタデーションR(nm)が式R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7を満たし、±10%が許容範囲である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いた装置に関し、特に液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高デューティーの液晶表示素子として、STN(超捩れネマチック)−LCDが用いられてきた。STN−LCDの一形態として、青色モード表示を説明する。液晶セルの上下に配置された偏光板のうち、検光子の偏光軸が出射光側の液晶分子長軸方向に対して右回りに30度になるように配置し、偏光子の偏光軸が入射光側の液晶分子長軸方向に対して左回りに30度に配置することにより、電圧無印加時に青色に呈色し、電圧印加時に白色になる、いわゆる青色モード表示が可能である。
【0003】
特開2004−62021号公報に、青色モードのSTN−LCDの液晶組成物に二色性色素を含有させ、遮断状態での遮光性を高める提案がなされている。また、遮光性を高める他の手段として、補償板を用いる方法もある。
【0004】
青色モードは、通常バックライトとして白色バックライトを用いているが、発光ダイオード(LED)のような単色光源を用いることがある。この場合、バックライトの発光波長における電圧無印加時の透過率を下げ、電圧印加時にその波長を表示させるのに適当な透過率で透過させれば、ノーマリブラックで表示色がバックライト色となるモードを得ることが出来る。
【0005】
【特許文献1】特開2004−62021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
STN−LCDは、ある波長に極小値を持つ透過率曲線を持つ。ノーマリブラックで単色表示を行うモードの場合、電圧無印加時と電圧印加時とのコントラス比を大きくすることが求められる。
【0007】
また、特に車載用の液晶表示装置の場合、視角特性の向上も望まれる。
【0008】
本発明の目的は、ノーマリブラックモードにおけるコントラス比および視角特性を向上させたSTN型の液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、単波長発光ピークを有する光源を用いたバックライトと、一対の対向する基板と、該基板間に挟持されたネマチック液晶層と、該基板の各々において該ネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、該基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部とを有し、前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、さらに、前記単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、前記液晶表示部のリタデーションR(nm)が式R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)を満たし、±10%が許容範囲である液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
ノーマリブラック表示のSTN−LCDにおいて、コントラスト比が大きく、視角特性が良好な表示を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、液晶表示装置における液晶表示部101およびバックライト102の断面図を示す。実施例における液晶表示装置は、主な構成要素として液晶表示部101とバックライト102を有する。液晶表示部101が、バックライト102からの光を透過したり、遮光したりして電極2のパターンの表示を行う。
【0012】
液晶表示部101の作成方法について説明する。2つのガラス基板1A、1Bの各々の上に透明であるITO膜をCVD、蒸着、スパッタなどにより形成し、フォトリソグラフィーにて所望のITO電極パターン2および外部取出し配線2lを形成する。ITO電極パターン2が付いたガラス基板上にフレキソ印刷にて絶縁膜4を形成する。この絶縁膜4は必須では無いが、上下基板間の短絡防止のため形成することが望ましい。絶縁膜形成は、フレキソ印刷の他に、メタルマスクを用い、蒸着やスパッタなどで行っても良い。
【0013】
次に、絶縁膜4の上に絶縁膜4とほぼ同じパターンの配向膜5をフレキソ印刷で形成する。
【0014】
次に、配向膜5にラビング処理を施す。ラビングは布を巻いた円筒状のロールを高速に回転させ、配向膜5上を擦る工程である。
【0015】
所定のパターンのシール材6をスクリーン印刷する。シール材6はスクリーン印刷の代わりにディスペンサを用いて形成しても良い。シール材として熱硬化性のES−7500(三井化学製)を用いる。他の材料として、光硬化性のものや、光・熱併用型シール材でも良い。このシール材6は径6μmのグラスファイバーを数%含んでいる。
【0016】
次に、シール材ES−7500に6.5μmのAuボールを数%含んだものを導通材7としてスクリーン印刷する。
【0017】
シール材パターン6及び導通材パターン7は基板1Bにのみ形成し、基板1Aにはギャップコントロール材を乾式散布法にて散布する。ギャップコントロール材として6μmのプラスチックボールを用いる。
【0018】
2つの基板1A、1Bを、配向膜5が内側になるよう所定の位置で重ね合わせてセル化し、プレスした状態で熱処理によりシール材6を硬化する。
【0019】
次にスクライバー装置によりガラス基板に傷をつけ、ブレイキングにより所定の大きさ、形に分割して空セルを作成する。
【0020】
上記の空セルに真空注入法で液晶3を注入し、その後エンドシール材で注入口を封止する。その後ガラス基板の面取りと洗浄を行い、液晶セルを作成する。
【0021】
さらに、液晶セルの上下に偏光板8を貼り付けSTNモードの液晶表示部101を完成する。
【0022】
参考例1として、青色モードのSTN−LCDについて説明する。
【0023】
図2Aに、青色モードSTN−LCDの概略平面図を示す。図2Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は270°である。上基板(前面基板)に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度aとする)は30°であり、下基板(背面基板)に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度bとする)も30°である。
【0024】
上記の構成の青色モードSTN−LCDの持つ透過率特性について説明する。
【0025】
図2Bに、液晶表示部のほぼ可視領域の透過率曲線を示す。なお、明細書中で示す透過率曲線は、自作のシミュレーションソフトにより算出した。図示のように、参考例における液晶表示部の透過率は、電圧無印加時に極大値と極小値を持つ。極大値は青色の波長であり、電圧無印加時において約50%の透過率である。このような液晶表示装置は背景色が青色を示す。電圧印加時には、青色領域の透過率が若干他の可視領域に比べて低いものの、可視領域全体にわたり約50%の透過率を有しており、白色バックライトの光を透過して白色表示を行う。
【0026】
一方、LCDのバックライトとして、単波長の発光ピークを有する発光装置を用いることがある。発明者らは、バックライトの波長領域に電圧無印加時の透過率が極小値となる波長を合わせてノーマリブラックの単色表示を行うことを検討した。
【0027】
はじめに、上記の青色STN−LCDと同様の構成の液晶表示部に対してノーマリブラックの単色表示が可能か否かを検討した。液晶表示部の透過率が極小値をとる波長は540nmである。波長540nmにおける電圧無印加時の液晶表示部の透過率は約6%であり、同波長における電圧印加時の液晶表示部の透過率は約48%である。この液晶表示部101に発光波長領域540nm付近のバックライトを用いて単色表示のSTN−LCDを作製した場合、少なくとも約6%の光り抜けが生じるため、ノーマリブラックが実現できず、単色の濃淡表示となってしまう。また、コントラスト比は最大でも約8程度しかない。そのため、電圧無印加時の透過率の極小値を0%に近づけて、遮光性やコントラスト比を高めることが望まれる。
【0028】
発明者らは、電圧無印加時における透過率の極小値を0%に近づけるために、様々な偏光板配置を検討した。その結果、液晶表示素子を形成する上下基板にそれぞれ最も近い位置の液晶配向方向と、上下それぞれの基板側の偏光板軸方向とのなす角度(小さい方)の、上基板側角度(角度a)と下基板側角度(角度b)との和(角度a+bとする)が90°となる配置において優れた特性が発揮されることを見出した。その条件を満たせば、電圧無印加時の透過率−波長特性において透過率がほぼ0%となる波長が存在する。
【0029】
発光波長の中心値が630nmの赤色バックライトに組み合わせることを想定する。液晶セル作成のポイントは、透過率が0%もしくはそれに近い(ノーマリブラックを実現できる程度に低い)極小値をとる波長を、バックライトの発光波長領域に合わせるようにセルのリタデーションを制御することである。セルのリタデーションはセル厚を変えるか、複屈折率を変える(具体的には液晶材料を変える。通常液晶表示装置として用いられる範囲であれば、特性の違う液晶材料同士を混合することによりリタデーションを調整可能である)ことにより制御できる。
【0030】
図3Aに、STN−LCDの概略平面図を示す。図3Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は270°である。上基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度a)は45°であり、下基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度b)は45°である。
【0031】
図3Bに、液晶表示部のほぼ可視領域における透過率曲線を示す。図示のように、無印加時の透過率は、波長630nmで0%の極小値を持つ。この波長のLEDをバックライトとすることにより、電圧無印加時にはバックライトの光を遮光することができるので、ノーマリブラックを実現できる。電圧印加時には、波長630nmでの透過率が約42%あるので、高コントラスト比を実現できる。
【0032】
液晶セルのリタデーションは847nmである。
【0033】
なお、角度a+bは、必ずしも90°でなくとも良い。発明者らは、好ましい角度a+bについて検討した。
【0034】
図4に、角度a+bに対する、波長630nmにおける液晶表示部の電圧無印加時の透過率のグラフを示す。偏光板角度の異なる様々なサンプルを作製し表示を観察したところ、電圧無印加時の透過率が0.3%以下のサンプルが液晶表示素子として好ましいことが分かった。この条件を満足するには、図示のグラフから、角度a+bが90°±7°であれば良い(条件1)。
【0035】
上記のような条件で作製したSTN−LCDは、正面観察時に高コントラスト比を得られる。さらに発明者らは、視角を上下左右方向に振った場合においても良好な表示を得られる条件を調べた。視角特性、特に左右方向の視角特性は車載などの用途では重要だからである。
【0036】
図5Aに、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける左右方向の透過率−視角特性を示す。横軸が正面に対する右方向を正とする角度である。図示のように、左右の角度が大きくなればなるほど、電圧印加時と無印加時での透過率の差は縮まり、コントラスト比が小さくなる。また、左右とも約60°を超えたあたりで透過率が逆転する。
【0037】
図5Bに、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける上下方向の透過率−視角特性を示す。横軸が正面に対する上方向を正とする角度である。図示のように、電圧印加時の透過率は上下方向の視角で非対称である。一方、電圧無印加時の透過率は、視角30°程度までは上下ほぼ対称で、かつ十分な遮光性を持つ。
【0038】
LCDのコントラスト比は遮光性が大きな役割を果たす。実施例においては電圧無印加状態の透過率が0%に近ければ近いほど良い。発明者らは、電圧無印加状態の透過率に着目した。そして、電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を、視角をパラメータとしてまとめた。
【0039】
図6に、図3Aに示した270°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。図は、視角を正面に対して右(right)もしくは下(down)に振った場合の透過率−波長特性を、視角をパラメータとして20°毎にそれぞれ60°まで示している。normalとは視角0°のことである。
【0040】
図示のように、視角が20°程度の場合は、右方向、下方向とも視角0°の場合に比べて透過率曲線に大きな差は無いが、視角を40°、60°と大きく振ることにより透過率曲線が次第にずれてくる。また、視角が40°の場合は透過率の極小値が約2%、60°の場合は約8〜9%程度となり、当該角度から液晶表示装置を見ると、光り抜けが起こってしまう。
【0041】
図6に示されていない左方向、上方向に視角を振った場合の透過率−波長特性について述べる。左方向に視角を振った場合の透過率−波長特性は、図5Aに示した結果から、右方向に視角を振った場合とほぼ同様とみなせる。一方、上方向に視角を振った場合の透過率−波長特性は、図5Bに示した結果から、少なくとも視角30°程度までは下方向に視角を振った場合とほぼ同様とみなせる。30°以降の視角における透過率−波長特性は、下方向に視角を振った場合と異なる場合もあるし、ほぼ対称の場合もある(液晶層のプレティルト角によって異なる)。
【0042】
発明者らは、液晶層のツイスト角を変えることで電圧無印加時の透過率−視角特性がどう変化するかについて調べた。その過程で、STN−LCDだけでなく、90°ツイストのTN−LCDの透過率−視角特性についても調べた。
【0043】
図7Aに、90°TN−LCDの概略平面図を示す。図7Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示の90°TN−LCDは、液晶分子は90°ツイストし、偏光板の軸方向は平行である。
【0044】
図7Bに、90°TN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。図7Bの見方は図6と同様である。図7A、図7Bに示す例では、90°ツイストでセルのリタデーションΔndが約0.555μmのTNセルに図7Aに示すような軸方位で偏光板を配置し、発光波長の中心値が630nmの赤色バックライトを組み合わせることにより、正面観察時(視角0°)に黒地に赤色の表示を実現している。
【0045】
しかし、図7Bに示すように、視角を40°、60と振ることにより、透過率曲線が大きくずれることが分かる。波長630nmでの電圧無印加時の透過率が約2%(視角40°の場合)、もしくは約8%(視角60°の場合)である。従って良好な視角特性の実現が困難である。
【0046】
図8に、180°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。液晶セルのリタデーションは0.847μmである。図示のように、視角をパラメータとして見た場合、180°ツイストの場合には、視角40°までは透過率曲線のずれが少なく、極小値がほぼ0%を保っている。
【0047】
発明者らは上記の結果から、電圧無印加時の透過率−視角特性と液晶層のツイスト角には最適範囲が存在すると考え、STN−LCDにおいて好ましいツイスト角度を検討した。
【0048】
図9に、波長630nmにおける、視角をパラメータとしたSTN−LCDの透過率−ツイスト角特性を示す。
【0049】
視角特性が広いと感じられるディスプレイを実現するためには下、右方向それぞれ40°以内の視角において電圧無印加時の透過率の低さを実現することが好ましい。作製した様々な条件のディスプレイを観察したところ、40°視角範囲内において透過率1%以下が実現できれば、表示が良好であることが分かった。図9によれば、下、右方向の視角40°における透過率が1%以下であるツイスト角度は155°〜210°である(条件2)。
【0050】
発明者らは、さらに好ましいツイスト角度を限定する。車載ディスプレイにおいては、より左右方向の視角特性が重視されるため、左右方向40°視角範囲内において、電圧無印加時の透過率が可能な限り低いことが望ましい。この観点から作製した様々な条件のディスプレイを観察したところ、40°視角範囲内において透過率0.3%以下が実現できれば車載用ディスプレイの視角特性として更に良好であることが判った。図9において、左右方向(図では右方向。既述のように、左右方向の視角特性はほぼ対応するであろう)40°の視角における透過率が0.3%以下であるツイスト角度は170°〜200°である。
【0051】
条件1および条件2を満たし、波長630nmの赤色バックライトと液晶セルを組み合わせた液晶表示装置(参考例2)についてさらに検討する。
【0052】
図10Aに、参考例2によるSTN−LCDの概略平面図を示す。図10Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は180°である。上基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度a)は45°であり、下基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度b)は45°である。液晶セルのリタデーションは713nmである。
【0053】
図10Bに、波長630nmにおける液晶表示部の透過率−視角特性を示す。図示のように、上下方向、左右方向共に、40°視角範囲内において透過率は1%以下を保っている。また、左右方向に関しては、60°視角範囲内において透過率が1%以下を保っており、より良好な視角特性を有することが分かる。
【0054】
図11に、電圧印加時および無印加時における透過率−波長特性を示す。図中の波長630nmにおける電圧無印加時の透過率はほぼ0%であり、高コントラスト比が実現できる。一方、電圧印加時の透過率は約14%と低い値を示しており、この値を高くすることが出来れば液晶表示装置としてさらに良好なものを提供できる。
【0055】
発明者らは、条件1および条件2の他に、さらに電圧印加時における透過率を向上させる条件(条件3)について検討した。
【0056】
図12に、発光ピーク波長に対する最適リタデーションの範囲を示す。図中3本の直線は、液晶のツイスト角が155°、180°、210°の場合において、それぞれのツイスト角で電圧印加時に高い透過率を得られるような最適なリタデーションをプロットし、それらを直線で結んだものである。なお、ここでいう最適なリタデーションとは、発明者らが判断した、液晶セルの動作に支障の無い範囲内で極力電圧印加時の透過率が高くなるようなリタデーションを指す。
【0057】
同一波長に対しては、ツイスト角155°における最適リタデーションが最も大きく、ツイスト角210°における最適リタデーションが最も小さい。ツイスト角180°における最適リタデーションは両最適リタデーションの間にある。155°〜210°の範囲内のツイスト角における最適リタデーションも、両最適リタデーション直線の間にある。
【0058】
上記の結果から、条件3となるリタデーションRの範囲は、単波長光源の発光ピーク波長をλとすると、
1.95λ−200≦R≦2.13λ−185 (式1)
となる。これは、電圧印加時に単波長光源の発光ピーク波長付近で高透過率を得るための必要条件である。
【0059】
なお、参考例2による液晶表示装置のリタデーションは、図中×印で示されており、式1の範囲から外れている。
【0060】
発明者らは、式1(1.95λ−200≦R≦2.13λ−185)について一般化した式を導出することを試みた。波長λの関数として表されたリタデーションの関数が、ツイスト角T(°)の一時関数
f(T)=aT+b
g(T)=cT+d
を用いて
R=f(T)λ+g(T)−(式2)と近似されるとする。
(式1)を、ツイスト角155°および210°におけるリタデーションの式
R=2.13λ−185 −(式3)
R=1.95λ−200 −(式4)
にそれぞれ当てはめて連立方程式を立てると
f(155)=155a+b=2.13 − (式5−1)
f(210)=210a+b=1.95 − (式5−2)
g(155)=155c+d=−185 − (式6−1)
g(210)=210c+d=−200 − (式6−2)
となる。これらを解くと
R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)−(式7)
となる。
【0061】
なお、この式はリタデーションの最適値を示す式であり、±10%程度であれば、電圧印加時の透過率を高くする必要条件(条件3)として認めることができるであろう。
【0062】
ツイスト角180°で角度a=45°、b=45°、単波長光源の発光ピーク波長が630nmの液晶表示装置について上記の条件3を踏まえて再検討する。ここまで、液晶分子配向方向と偏光板軸方向の為す角の方向については述べなかったが、ここから、上下それぞれの基板側の偏光板軸方向とのなす角度(小さい方)の、上基板側角度をcとし、下基板側角度をdとして、角度のプラスマイナスを検討に加えることとする(|c|=a、|d|=bである)。角度のプラスマイナスが液晶セルのリタデーションに影響するからである。角度は液晶分子配向方向から偏光板軸方向に向かって左回りを+とする。
【0063】
図13A〜図13Dに、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す(但し、図13Dと図10Aは同じ)。角度cおよびdのプラスマイナスを考えたとき、角度の組み合わせは次の(13−1)〜(13−4)(それぞれ図13A〜図13Dに対応する)となる。
(13−1)c=+45°、d=+45°
(13−2)c=+45°、d=−45°
(13−3)c=−45°、d=+45°
(13−4)c=−45°、d=−45°
上記の4つの角度の組み合わせは、条件1、条件2を満たしている。さらに、液晶セルのリタデーションが条件3を満たしているか検討する。
【0064】
組み合わせ(13−1)および(13−4)のリタデーションは713nmであり、これは条件3を満たしていない。
【0065】
一方、組み合わせ(13−2)および(13−3)のリタデーションは1110nmであり、条件3を満たしている。従って、この2つの組み合わせを実施例1として採用する。
【0066】
なお、実施例1において、角度cとdとは互いに逆向きである。
【0067】
図14に、実施例1における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長630nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約50%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0068】
図15Aに、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線を示し、図15Bに、視角を左右に振った場合の透過率曲線を示す。
【0069】
図15Aを参照する。視角を上下方向に振った場合、視角−40°〜40°の範囲において電圧無印加時の透過率が1%以下(条件2において視角特性が良好であると判断した透過率である)を保っている。電圧印加時の透過率は視角−40°〜40°の範囲では30%以上であり、対称性についてもそれほど悪くない。この結果から、上下方向の視角特性は良好であるといえる。
【0070】
図15Bを参照する。視角を左右方向に振った場合、電圧無印加時の透過率はほぼ左右対称であり、視角−50°〜50°の範囲において透過率2%以下である。電圧印加時の透過率は視角−80°〜80の範囲ではほぼ対称である。この結果から、左右方向の視角特性も良好であるといえる。
【0071】
このように、条件1〜条件3を満たすことにより、実施例1は、電圧無印加時の遮光性およびコントラスト比が高く、視角特性が良好な液晶表示装置を提供できる。
【0072】
なお、角度a+b=90となる種々の角度の組み合わせを検討した結果、a=b=45°となる組み合わせの場合に最も電圧印加時の透過率が高くなることが判った。
【0073】
ツイスト角190°で角度a=45°、b=45°、単波長光源の発光ピーク波長が630nmの液晶表示装置について検討する。
【0074】
図16A〜図16Dに、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す。実施例1の場合と同様に、角度のプラスマイナスを考えたとき、角度cとdの組み合わせは次の(16−1)〜(16−4)(それぞれ図16A〜図16Dに対応する)となる。
(16−1)c=+45°、d=+45°
(16−2)c=+45°、d=−45°
(16−3)c=−45°、d=+45°
(16−4)c=−45°、d=−45°
上記の4つの角度の組み合わせは、条件1、条件2を満たしている。さらに、液晶セルのリタデーションが条件3を満たしているか検討する。
【0075】
組み合わせ(16−1)および(16−4)のリタデーションは683nmであり、これは条件3を満たしていない。
【0076】
一方、組み合わせ(13−2)および(13−3)のリタデーションは1086nmであり、条件3を満たしている。従って、この2つの組み合わせを実施例2として採用する。
【0077】
実施例2についても、実施例1と同様、角度cとdとは互いに逆向きである。
【0078】
図17に、実施例2における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長630nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約49%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0079】
図18Aに、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線を示し、図18Bに、視角を左右に振った場合の透過率曲線を示す。
【0080】
図18Aを参照する。視角を上下方向に振った場合、視角−80°〜70°の範囲において電圧無印加時の透過率が1%を保っている。電圧印加時の透過率は若干対称性が崩れてはいるが、視角−40°〜40の範囲では透過率約32%以上を保っている。この結果から、上下方向の視角特性は良好であるといえる。
【0081】
図18Bを参照する。視角を左右方向に振った場合、電圧無印加時の透過率はほぼ左右対称であり、視角−50°〜50°の範囲において透過率1%以下である。電圧印加時の透過率は視角−80°〜80の範囲ではほぼ対称である。この結果から、左右方向の視角特性も良好であるといえる。
【0082】
なお、単波長光源の発光ピーク波長は630nmに限らない。実施例3として、波長550nmの発光ピークを持つ単波長光源を用いた液晶表示装置を説明する。
【0083】
実施例3は、実施例2と液晶セル構成および角度cとdの組み合わせは同様で、リタデーションを変更したものである。発光ピーク波長550nmに電圧無印加時の透過率の極小値を合わせるために、セルのリタデーションを917nmとする。
【0084】
図19に、実施例3における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長550nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約50%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0085】
上記の実施例は、液晶セル内に選択電圧印加部、非選択電圧印加部、電圧無印加部が存在するマルチプレックス駆動方式の液晶表示部においても適用することができるであろう。その際は、非選択電圧印加部の液晶配向状態と電圧無印加部の液晶配向状態とを極力近づけることが高コントラスト化もしくは低クロストーク化のために好ましい。
【0086】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、単波長の光源としてLEDの他に、レーザを用いても良い。
【0087】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、液晶表示装置における液晶表示部101の断面図である。
【図2】図2Aは、青色モードSTN−LCDの概略平面図であり、図2Bは、液晶表示部のほぼ可視領域の透過率曲線である。
【図3】図3Aは、STN−LCDの概略平面図であり、図3Bは、液晶表示部のほぼ可視領域における透過率曲線である。
【図4】図4は、波長630nmにおける、液晶表示部の電圧無印加時の透過率−角度特性である。
【図5】図5Aは、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける左右の透過率−視角特性であり、図5Bは、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける上下の透過率−視角特性である。
【図6】図6は、図3Aに示した270°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図7】図7Aは、90°TN−LCDの概略平面図であり、図7Bは、90°TN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図8】図8は、180°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図9】図9は、STN−LCDの波長630nmにおける、視角をパラメータとした透過率−ツイスト角特性である。
【図10】図10Aは、STN−LCDの概略平面図であり、図10Bは、波長630nmにおける液晶表示部の透過率−視角特性である。
【図11】図11は、電圧印加時および無印加時における透過率−波長特性である。
【図12】図12は、発光ピーク波長に対する最適リタデーションの範囲である。
【図13】図13A〜図13Dは、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向である。
【図14】図14は、実施例1における透過率−波長曲線である。
【図15】図15Aは、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線であり、図15Bは、視角を左右に振った場合の透過率曲線である。
【図16】図16A〜図16Dは、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向である。
【図17】図17は、実施例2における透過率−波長曲線である。
【図18】図18Aは、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線であり、図18Bは、視角を左右に振った場合の透過率曲線である。
【図19】図19は、実施例3における透過率−波長曲線である。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B 基板
2 電極
2l 配線
3 液晶
4 絶縁膜
5 配向膜
6 シール材
7 導通材
8 偏光板
101 液晶表示部
102 バックライト
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶を用いた装置に関し、特に液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高デューティーの液晶表示素子として、STN(超捩れネマチック)−LCDが用いられてきた。STN−LCDの一形態として、青色モード表示を説明する。液晶セルの上下に配置された偏光板のうち、検光子の偏光軸が出射光側の液晶分子長軸方向に対して右回りに30度になるように配置し、偏光子の偏光軸が入射光側の液晶分子長軸方向に対して左回りに30度に配置することにより、電圧無印加時に青色に呈色し、電圧印加時に白色になる、いわゆる青色モード表示が可能である。
【0003】
特開2004−62021号公報に、青色モードのSTN−LCDの液晶組成物に二色性色素を含有させ、遮断状態での遮光性を高める提案がなされている。また、遮光性を高める他の手段として、補償板を用いる方法もある。
【0004】
青色モードは、通常バックライトとして白色バックライトを用いているが、発光ダイオード(LED)のような単色光源を用いることがある。この場合、バックライトの発光波長における電圧無印加時の透過率を下げ、電圧印加時にその波長を表示させるのに適当な透過率で透過させれば、ノーマリブラックで表示色がバックライト色となるモードを得ることが出来る。
【0005】
【特許文献1】特開2004−62021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
STN−LCDは、ある波長に極小値を持つ透過率曲線を持つ。ノーマリブラックで単色表示を行うモードの場合、電圧無印加時と電圧印加時とのコントラス比を大きくすることが求められる。
【0007】
また、特に車載用の液晶表示装置の場合、視角特性の向上も望まれる。
【0008】
本発明の目的は、ノーマリブラックモードにおけるコントラス比および視角特性を向上させたSTN型の液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、単波長発光ピークを有する光源を用いたバックライトと、一対の対向する基板と、該基板間に挟持されたネマチック液晶層と、該基板の各々において該ネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、該基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部とを有し、前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、さらに、前記単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、前記液晶表示部のリタデーションR(nm)が式R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)を満たし、±10%が許容範囲である液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
ノーマリブラック表示のSTN−LCDにおいて、コントラスト比が大きく、視角特性が良好な表示を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、液晶表示装置における液晶表示部101およびバックライト102の断面図を示す。実施例における液晶表示装置は、主な構成要素として液晶表示部101とバックライト102を有する。液晶表示部101が、バックライト102からの光を透過したり、遮光したりして電極2のパターンの表示を行う。
【0012】
液晶表示部101の作成方法について説明する。2つのガラス基板1A、1Bの各々の上に透明であるITO膜をCVD、蒸着、スパッタなどにより形成し、フォトリソグラフィーにて所望のITO電極パターン2および外部取出し配線2lを形成する。ITO電極パターン2が付いたガラス基板上にフレキソ印刷にて絶縁膜4を形成する。この絶縁膜4は必須では無いが、上下基板間の短絡防止のため形成することが望ましい。絶縁膜形成は、フレキソ印刷の他に、メタルマスクを用い、蒸着やスパッタなどで行っても良い。
【0013】
次に、絶縁膜4の上に絶縁膜4とほぼ同じパターンの配向膜5をフレキソ印刷で形成する。
【0014】
次に、配向膜5にラビング処理を施す。ラビングは布を巻いた円筒状のロールを高速に回転させ、配向膜5上を擦る工程である。
【0015】
所定のパターンのシール材6をスクリーン印刷する。シール材6はスクリーン印刷の代わりにディスペンサを用いて形成しても良い。シール材として熱硬化性のES−7500(三井化学製)を用いる。他の材料として、光硬化性のものや、光・熱併用型シール材でも良い。このシール材6は径6μmのグラスファイバーを数%含んでいる。
【0016】
次に、シール材ES−7500に6.5μmのAuボールを数%含んだものを導通材7としてスクリーン印刷する。
【0017】
シール材パターン6及び導通材パターン7は基板1Bにのみ形成し、基板1Aにはギャップコントロール材を乾式散布法にて散布する。ギャップコントロール材として6μmのプラスチックボールを用いる。
【0018】
2つの基板1A、1Bを、配向膜5が内側になるよう所定の位置で重ね合わせてセル化し、プレスした状態で熱処理によりシール材6を硬化する。
【0019】
次にスクライバー装置によりガラス基板に傷をつけ、ブレイキングにより所定の大きさ、形に分割して空セルを作成する。
【0020】
上記の空セルに真空注入法で液晶3を注入し、その後エンドシール材で注入口を封止する。その後ガラス基板の面取りと洗浄を行い、液晶セルを作成する。
【0021】
さらに、液晶セルの上下に偏光板8を貼り付けSTNモードの液晶表示部101を完成する。
【0022】
参考例1として、青色モードのSTN−LCDについて説明する。
【0023】
図2Aに、青色モードSTN−LCDの概略平面図を示す。図2Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は270°である。上基板(前面基板)に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度aとする)は30°であり、下基板(背面基板)に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度bとする)も30°である。
【0024】
上記の構成の青色モードSTN−LCDの持つ透過率特性について説明する。
【0025】
図2Bに、液晶表示部のほぼ可視領域の透過率曲線を示す。なお、明細書中で示す透過率曲線は、自作のシミュレーションソフトにより算出した。図示のように、参考例における液晶表示部の透過率は、電圧無印加時に極大値と極小値を持つ。極大値は青色の波長であり、電圧無印加時において約50%の透過率である。このような液晶表示装置は背景色が青色を示す。電圧印加時には、青色領域の透過率が若干他の可視領域に比べて低いものの、可視領域全体にわたり約50%の透過率を有しており、白色バックライトの光を透過して白色表示を行う。
【0026】
一方、LCDのバックライトとして、単波長の発光ピークを有する発光装置を用いることがある。発明者らは、バックライトの波長領域に電圧無印加時の透過率が極小値となる波長を合わせてノーマリブラックの単色表示を行うことを検討した。
【0027】
はじめに、上記の青色STN−LCDと同様の構成の液晶表示部に対してノーマリブラックの単色表示が可能か否かを検討した。液晶表示部の透過率が極小値をとる波長は540nmである。波長540nmにおける電圧無印加時の液晶表示部の透過率は約6%であり、同波長における電圧印加時の液晶表示部の透過率は約48%である。この液晶表示部101に発光波長領域540nm付近のバックライトを用いて単色表示のSTN−LCDを作製した場合、少なくとも約6%の光り抜けが生じるため、ノーマリブラックが実現できず、単色の濃淡表示となってしまう。また、コントラスト比は最大でも約8程度しかない。そのため、電圧無印加時の透過率の極小値を0%に近づけて、遮光性やコントラスト比を高めることが望まれる。
【0028】
発明者らは、電圧無印加時における透過率の極小値を0%に近づけるために、様々な偏光板配置を検討した。その結果、液晶表示素子を形成する上下基板にそれぞれ最も近い位置の液晶配向方向と、上下それぞれの基板側の偏光板軸方向とのなす角度(小さい方)の、上基板側角度(角度a)と下基板側角度(角度b)との和(角度a+bとする)が90°となる配置において優れた特性が発揮されることを見出した。その条件を満たせば、電圧無印加時の透過率−波長特性において透過率がほぼ0%となる波長が存在する。
【0029】
発光波長の中心値が630nmの赤色バックライトに組み合わせることを想定する。液晶セル作成のポイントは、透過率が0%もしくはそれに近い(ノーマリブラックを実現できる程度に低い)極小値をとる波長を、バックライトの発光波長領域に合わせるようにセルのリタデーションを制御することである。セルのリタデーションはセル厚を変えるか、複屈折率を変える(具体的には液晶材料を変える。通常液晶表示装置として用いられる範囲であれば、特性の違う液晶材料同士を混合することによりリタデーションを調整可能である)ことにより制御できる。
【0030】
図3Aに、STN−LCDの概略平面図を示す。図3Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は270°である。上基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度a)は45°であり、下基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度b)は45°である。
【0031】
図3Bに、液晶表示部のほぼ可視領域における透過率曲線を示す。図示のように、無印加時の透過率は、波長630nmで0%の極小値を持つ。この波長のLEDをバックライトとすることにより、電圧無印加時にはバックライトの光を遮光することができるので、ノーマリブラックを実現できる。電圧印加時には、波長630nmでの透過率が約42%あるので、高コントラスト比を実現できる。
【0032】
液晶セルのリタデーションは847nmである。
【0033】
なお、角度a+bは、必ずしも90°でなくとも良い。発明者らは、好ましい角度a+bについて検討した。
【0034】
図4に、角度a+bに対する、波長630nmにおける液晶表示部の電圧無印加時の透過率のグラフを示す。偏光板角度の異なる様々なサンプルを作製し表示を観察したところ、電圧無印加時の透過率が0.3%以下のサンプルが液晶表示素子として好ましいことが分かった。この条件を満足するには、図示のグラフから、角度a+bが90°±7°であれば良い(条件1)。
【0035】
上記のような条件で作製したSTN−LCDは、正面観察時に高コントラスト比を得られる。さらに発明者らは、視角を上下左右方向に振った場合においても良好な表示を得られる条件を調べた。視角特性、特に左右方向の視角特性は車載などの用途では重要だからである。
【0036】
図5Aに、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける左右方向の透過率−視角特性を示す。横軸が正面に対する右方向を正とする角度である。図示のように、左右の角度が大きくなればなるほど、電圧印加時と無印加時での透過率の差は縮まり、コントラスト比が小さくなる。また、左右とも約60°を超えたあたりで透過率が逆転する。
【0037】
図5Bに、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける上下方向の透過率−視角特性を示す。横軸が正面に対する上方向を正とする角度である。図示のように、電圧印加時の透過率は上下方向の視角で非対称である。一方、電圧無印加時の透過率は、視角30°程度までは上下ほぼ対称で、かつ十分な遮光性を持つ。
【0038】
LCDのコントラスト比は遮光性が大きな役割を果たす。実施例においては電圧無印加状態の透過率が0%に近ければ近いほど良い。発明者らは、電圧無印加状態の透過率に着目した。そして、電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を、視角をパラメータとしてまとめた。
【0039】
図6に、図3Aに示した270°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。図は、視角を正面に対して右(right)もしくは下(down)に振った場合の透過率−波長特性を、視角をパラメータとして20°毎にそれぞれ60°まで示している。normalとは視角0°のことである。
【0040】
図示のように、視角が20°程度の場合は、右方向、下方向とも視角0°の場合に比べて透過率曲線に大きな差は無いが、視角を40°、60°と大きく振ることにより透過率曲線が次第にずれてくる。また、視角が40°の場合は透過率の極小値が約2%、60°の場合は約8〜9%程度となり、当該角度から液晶表示装置を見ると、光り抜けが起こってしまう。
【0041】
図6に示されていない左方向、上方向に視角を振った場合の透過率−波長特性について述べる。左方向に視角を振った場合の透過率−波長特性は、図5Aに示した結果から、右方向に視角を振った場合とほぼ同様とみなせる。一方、上方向に視角を振った場合の透過率−波長特性は、図5Bに示した結果から、少なくとも視角30°程度までは下方向に視角を振った場合とほぼ同様とみなせる。30°以降の視角における透過率−波長特性は、下方向に視角を振った場合と異なる場合もあるし、ほぼ対称の場合もある(液晶層のプレティルト角によって異なる)。
【0042】
発明者らは、液晶層のツイスト角を変えることで電圧無印加時の透過率−視角特性がどう変化するかについて調べた。その過程で、STN−LCDだけでなく、90°ツイストのTN−LCDの透過率−視角特性についても調べた。
【0043】
図7Aに、90°TN−LCDの概略平面図を示す。図7Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示の90°TN−LCDは、液晶分子は90°ツイストし、偏光板の軸方向は平行である。
【0044】
図7Bに、90°TN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。図7Bの見方は図6と同様である。図7A、図7Bに示す例では、90°ツイストでセルのリタデーションΔndが約0.555μmのTNセルに図7Aに示すような軸方位で偏光板を配置し、発光波長の中心値が630nmの赤色バックライトを組み合わせることにより、正面観察時(視角0°)に黒地に赤色の表示を実現している。
【0045】
しかし、図7Bに示すように、視角を40°、60と振ることにより、透過率曲線が大きくずれることが分かる。波長630nmでの電圧無印加時の透過率が約2%(視角40°の場合)、もしくは約8%(視角60°の場合)である。従って良好な視角特性の実現が困難である。
【0046】
図8に、180°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性を示す。液晶セルのリタデーションは0.847μmである。図示のように、視角をパラメータとして見た場合、180°ツイストの場合には、視角40°までは透過率曲線のずれが少なく、極小値がほぼ0%を保っている。
【0047】
発明者らは上記の結果から、電圧無印加時の透過率−視角特性と液晶層のツイスト角には最適範囲が存在すると考え、STN−LCDにおいて好ましいツイスト角度を検討した。
【0048】
図9に、波長630nmにおける、視角をパラメータとしたSTN−LCDの透過率−ツイスト角特性を示す。
【0049】
視角特性が広いと感じられるディスプレイを実現するためには下、右方向それぞれ40°以内の視角において電圧無印加時の透過率の低さを実現することが好ましい。作製した様々な条件のディスプレイを観察したところ、40°視角範囲内において透過率1%以下が実現できれば、表示が良好であることが分かった。図9によれば、下、右方向の視角40°における透過率が1%以下であるツイスト角度は155°〜210°である(条件2)。
【0050】
発明者らは、さらに好ましいツイスト角度を限定する。車載ディスプレイにおいては、より左右方向の視角特性が重視されるため、左右方向40°視角範囲内において、電圧無印加時の透過率が可能な限り低いことが望ましい。この観点から作製した様々な条件のディスプレイを観察したところ、40°視角範囲内において透過率0.3%以下が実現できれば車載用ディスプレイの視角特性として更に良好であることが判った。図9において、左右方向(図では右方向。既述のように、左右方向の視角特性はほぼ対応するであろう)40°の視角における透過率が0.3%以下であるツイスト角度は170°〜200°である。
【0051】
条件1および条件2を満たし、波長630nmの赤色バックライトと液晶セルを組み合わせた液晶表示装置(参考例2)についてさらに検討する。
【0052】
図10Aに、参考例2によるSTN−LCDの概略平面図を示す。図10Aは、上下基板各々の側の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す図である。図示のように、液晶のツイスト角は180°である。上基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、上側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度a)は45°であり、下基板に最も近い位置の液晶分子配向方向と、下側偏光板軸方向との為す小さい方の角度(角度b)は45°である。液晶セルのリタデーションは713nmである。
【0053】
図10Bに、波長630nmにおける液晶表示部の透過率−視角特性を示す。図示のように、上下方向、左右方向共に、40°視角範囲内において透過率は1%以下を保っている。また、左右方向に関しては、60°視角範囲内において透過率が1%以下を保っており、より良好な視角特性を有することが分かる。
【0054】
図11に、電圧印加時および無印加時における透過率−波長特性を示す。図中の波長630nmにおける電圧無印加時の透過率はほぼ0%であり、高コントラスト比が実現できる。一方、電圧印加時の透過率は約14%と低い値を示しており、この値を高くすることが出来れば液晶表示装置としてさらに良好なものを提供できる。
【0055】
発明者らは、条件1および条件2の他に、さらに電圧印加時における透過率を向上させる条件(条件3)について検討した。
【0056】
図12に、発光ピーク波長に対する最適リタデーションの範囲を示す。図中3本の直線は、液晶のツイスト角が155°、180°、210°の場合において、それぞれのツイスト角で電圧印加時に高い透過率を得られるような最適なリタデーションをプロットし、それらを直線で結んだものである。なお、ここでいう最適なリタデーションとは、発明者らが判断した、液晶セルの動作に支障の無い範囲内で極力電圧印加時の透過率が高くなるようなリタデーションを指す。
【0057】
同一波長に対しては、ツイスト角155°における最適リタデーションが最も大きく、ツイスト角210°における最適リタデーションが最も小さい。ツイスト角180°における最適リタデーションは両最適リタデーションの間にある。155°〜210°の範囲内のツイスト角における最適リタデーションも、両最適リタデーション直線の間にある。
【0058】
上記の結果から、条件3となるリタデーションRの範囲は、単波長光源の発光ピーク波長をλとすると、
1.95λ−200≦R≦2.13λ−185 (式1)
となる。これは、電圧印加時に単波長光源の発光ピーク波長付近で高透過率を得るための必要条件である。
【0059】
なお、参考例2による液晶表示装置のリタデーションは、図中×印で示されており、式1の範囲から外れている。
【0060】
発明者らは、式1(1.95λ−200≦R≦2.13λ−185)について一般化した式を導出することを試みた。波長λの関数として表されたリタデーションの関数が、ツイスト角T(°)の一時関数
f(T)=aT+b
g(T)=cT+d
を用いて
R=f(T)λ+g(T)−(式2)と近似されるとする。
(式1)を、ツイスト角155°および210°におけるリタデーションの式
R=2.13λ−185 −(式3)
R=1.95λ−200 −(式4)
にそれぞれ当てはめて連立方程式を立てると
f(155)=155a+b=2.13 − (式5−1)
f(210)=210a+b=1.95 − (式5−2)
g(155)=155c+d=−185 − (式6−1)
g(210)=210c+d=−200 − (式6−2)
となる。これらを解くと
R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)−(式7)
となる。
【0061】
なお、この式はリタデーションの最適値を示す式であり、±10%程度であれば、電圧印加時の透過率を高くする必要条件(条件3)として認めることができるであろう。
【0062】
ツイスト角180°で角度a=45°、b=45°、単波長光源の発光ピーク波長が630nmの液晶表示装置について上記の条件3を踏まえて再検討する。ここまで、液晶分子配向方向と偏光板軸方向の為す角の方向については述べなかったが、ここから、上下それぞれの基板側の偏光板軸方向とのなす角度(小さい方)の、上基板側角度をcとし、下基板側角度をdとして、角度のプラスマイナスを検討に加えることとする(|c|=a、|d|=bである)。角度のプラスマイナスが液晶セルのリタデーションに影響するからである。角度は液晶分子配向方向から偏光板軸方向に向かって左回りを+とする。
【0063】
図13A〜図13Dに、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す(但し、図13Dと図10Aは同じ)。角度cおよびdのプラスマイナスを考えたとき、角度の組み合わせは次の(13−1)〜(13−4)(それぞれ図13A〜図13Dに対応する)となる。
(13−1)c=+45°、d=+45°
(13−2)c=+45°、d=−45°
(13−3)c=−45°、d=+45°
(13−4)c=−45°、d=−45°
上記の4つの角度の組み合わせは、条件1、条件2を満たしている。さらに、液晶セルのリタデーションが条件3を満たしているか検討する。
【0064】
組み合わせ(13−1)および(13−4)のリタデーションは713nmであり、これは条件3を満たしていない。
【0065】
一方、組み合わせ(13−2)および(13−3)のリタデーションは1110nmであり、条件3を満たしている。従って、この2つの組み合わせを実施例1として採用する。
【0066】
なお、実施例1において、角度cとdとは互いに逆向きである。
【0067】
図14に、実施例1における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長630nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約50%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0068】
図15Aに、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線を示し、図15Bに、視角を左右に振った場合の透過率曲線を示す。
【0069】
図15Aを参照する。視角を上下方向に振った場合、視角−40°〜40°の範囲において電圧無印加時の透過率が1%以下(条件2において視角特性が良好であると判断した透過率である)を保っている。電圧印加時の透過率は視角−40°〜40°の範囲では30%以上であり、対称性についてもそれほど悪くない。この結果から、上下方向の視角特性は良好であるといえる。
【0070】
図15Bを参照する。視角を左右方向に振った場合、電圧無印加時の透過率はほぼ左右対称であり、視角−50°〜50°の範囲において透過率2%以下である。電圧印加時の透過率は視角−80°〜80の範囲ではほぼ対称である。この結果から、左右方向の視角特性も良好であるといえる。
【0071】
このように、条件1〜条件3を満たすことにより、実施例1は、電圧無印加時の遮光性およびコントラスト比が高く、視角特性が良好な液晶表示装置を提供できる。
【0072】
なお、角度a+b=90となる種々の角度の組み合わせを検討した結果、a=b=45°となる組み合わせの場合に最も電圧印加時の透過率が高くなることが判った。
【0073】
ツイスト角190°で角度a=45°、b=45°、単波長光源の発光ピーク波長が630nmの液晶表示装置について検討する。
【0074】
図16A〜図16Dに、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向を示す。実施例1の場合と同様に、角度のプラスマイナスを考えたとき、角度cとdの組み合わせは次の(16−1)〜(16−4)(それぞれ図16A〜図16Dに対応する)となる。
(16−1)c=+45°、d=+45°
(16−2)c=+45°、d=−45°
(16−3)c=−45°、d=+45°
(16−4)c=−45°、d=−45°
上記の4つの角度の組み合わせは、条件1、条件2を満たしている。さらに、液晶セルのリタデーションが条件3を満たしているか検討する。
【0075】
組み合わせ(16−1)および(16−4)のリタデーションは683nmであり、これは条件3を満たしていない。
【0076】
一方、組み合わせ(13−2)および(13−3)のリタデーションは1086nmであり、条件3を満たしている。従って、この2つの組み合わせを実施例2として採用する。
【0077】
実施例2についても、実施例1と同様、角度cとdとは互いに逆向きである。
【0078】
図17に、実施例2における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長630nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約49%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0079】
図18Aに、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線を示し、図18Bに、視角を左右に振った場合の透過率曲線を示す。
【0080】
図18Aを参照する。視角を上下方向に振った場合、視角−80°〜70°の範囲において電圧無印加時の透過率が1%を保っている。電圧印加時の透過率は若干対称性が崩れてはいるが、視角−40°〜40の範囲では透過率約32%以上を保っている。この結果から、上下方向の視角特性は良好であるといえる。
【0081】
図18Bを参照する。視角を左右方向に振った場合、電圧無印加時の透過率はほぼ左右対称であり、視角−50°〜50°の範囲において透過率1%以下である。電圧印加時の透過率は視角−80°〜80の範囲ではほぼ対称である。この結果から、左右方向の視角特性も良好であるといえる。
【0082】
なお、単波長光源の発光ピーク波長は630nmに限らない。実施例3として、波長550nmの発光ピークを持つ単波長光源を用いた液晶表示装置を説明する。
【0083】
実施例3は、実施例2と液晶セル構成および角度cとdの組み合わせは同様で、リタデーションを変更したものである。発光ピーク波長550nmに電圧無印加時の透過率の極小値を合わせるために、セルのリタデーションを917nmとする。
【0084】
図19に、実施例3における透過率−波長曲線を示す。図示のように、波長550nm
において電圧無印加時の透過率はほぼ0%の極小値を持つ。一方、同波長の電圧無印加時の透過率は約50%と高い値を示している。従って、電圧無印加時の遮光性が高く、コントラスト比も高いといえる。
【0085】
上記の実施例は、液晶セル内に選択電圧印加部、非選択電圧印加部、電圧無印加部が存在するマルチプレックス駆動方式の液晶表示部においても適用することができるであろう。その際は、非選択電圧印加部の液晶配向状態と電圧無印加部の液晶配向状態とを極力近づけることが高コントラスト化もしくは低クロストーク化のために好ましい。
【0086】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、単波長の光源としてLEDの他に、レーザを用いても良い。
【0087】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、液晶表示装置における液晶表示部101の断面図である。
【図2】図2Aは、青色モードSTN−LCDの概略平面図であり、図2Bは、液晶表示部のほぼ可視領域の透過率曲線である。
【図3】図3Aは、STN−LCDの概略平面図であり、図3Bは、液晶表示部のほぼ可視領域における透過率曲線である。
【図4】図4は、波長630nmにおける、液晶表示部の電圧無印加時の透過率−角度特性である。
【図5】図5Aは、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける左右の透過率−視角特性であり、図5Bは、図3Aに示した270°STN−LCDの波長630nmにおける上下の透過率−視角特性である。
【図6】図6は、図3Aに示した270°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図7】図7Aは、90°TN−LCDの概略平面図であり、図7Bは、90°TN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図8】図8は、180°STN−LCDの電圧無印加時におけるほぼ可視域の透過率−波長特性である。
【図9】図9は、STN−LCDの波長630nmにおける、視角をパラメータとした透過率−ツイスト角特性である。
【図10】図10Aは、STN−LCDの概略平面図であり、図10Bは、波長630nmにおける液晶表示部の透過率−視角特性である。
【図11】図11は、電圧印加時および無印加時における透過率−波長特性である。
【図12】図12は、発光ピーク波長に対する最適リタデーションの範囲である。
【図13】図13A〜図13Dは、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向である。
【図14】図14は、実施例1における透過率−波長曲線である。
【図15】図15Aは、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線であり、図15Bは、視角を左右に振った場合の透過率曲線である。
【図16】図16A〜図16Dは、液晶表示部の液晶分子配向方向と偏光板軸方向である。
【図17】図17は、実施例2における透過率−波長曲線である。
【図18】図18Aは、視角を上下方向に振った場合の透過率曲線であり、図18Bは、視角を左右に振った場合の透過率曲線である。
【図19】図19は、実施例3における透過率−波長曲線である。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B 基板
2 電極
2l 配線
3 液晶
4 絶縁膜
5 配向膜
6 シール材
7 導通材
8 偏光板
101 液晶表示部
102 バックライト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単波長を出力するバックライトと、
一対の対向する基板と、該基板間に挟持されたネマチック液晶層と、該基板の各々において該ネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、該基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部と
を有し、
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、
さらに、前記単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、前記液晶表示部のリタデーションR(nm)が式
R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)
を満たし、±10%が許容範囲である液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶のツイスト角が170°〜200°である請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記バックライトの発光波長領域に、前記液晶表示部の電圧無印加状態の透過率が極小値をとる波長を合わせたノーマリブラック表示の請求項1または2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度が共に略45°である請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項5】
さらに、
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度が逆向きである請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項1】
単波長を出力するバックライトと、
一対の対向する基板と、該基板間に挟持されたネマチック液晶層と、該基板の各々において該ネマチック液晶層側に形成された電極パターンと、該基板の法線方向に関して上下に配置された偏光板とを含み、液晶のツイスト角が155°〜210°のSTN型である液晶表示部と
を有し、
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記ネマチック液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが同じでなく、かつそれらの方向が為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度の和が90°±7°であり、
さらに、前記単波長発光ピークをλ(nm)、ネマチック液晶のツイスト角をT(°)すると、前記液晶表示部のリタデーションR(nm)が式
R=(−0.00327T+2.637)λ−0.2727T−142.7 (155≦T≦210)
を満たし、±10%が許容範囲である液晶表示装置。
【請求項2】
前記液晶のツイスト角が170°〜200°である請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記バックライトの発光波長領域に、前記液晶表示部の電圧無印加状態の透過率が極小値をとる波長を合わせたノーマリブラック表示の請求項1または2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度が共に略45°である請求項1〜3のいずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項5】
さらに、
前記一対の基板の、上基板と下基板の各々と接する位置において、前記液晶層の液晶分子配向方向と偏光板の軸方向とが為す小さい方の角度の、上基板側角度と下基板側角度が逆向きである請求項1〜4のいずれか1項記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−53413(P2009−53413A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219638(P2007−219638)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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