液晶表示装置
【課題】液晶表示パネルの表示の品質を向上させることができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】表示器10は、一対の透光性基板41、42の間に液晶46が封入されている液晶表示パネル40と、透光性基板41の反電極形成面側に形成される発熱部71を有するヒータ70と、ヒータ70の発熱部71に隣り合って設置される温度感知部76を有するサーミスタ75とを備えている。
【解決手段】表示器10は、一対の透光性基板41、42の間に液晶46が封入されている液晶表示パネル40と、透光性基板41の反電極形成面側に形成される発熱部71を有するヒータ70と、ヒータ70の発熱部71に隣り合って設置される温度感知部76を有するサーミスタ75とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの裏面側にパネルヒータを設け、液晶表示パネルに封入されている液晶をヒータにて加熱し最適な状態にする液晶表示装置が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特に、特許文献2には、液晶表示パネルに近接して温度検出器を設置し、液晶表示パネルの雰囲気温度を検出し、温度検出器が、パネルの雰囲気温度が低温であることを検出すると、ヒータを加熱制御する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2004−37535号公報
【特許文献2】実開昭56−128618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載されているように温度検出器を液晶表示パネルに近接して設けるとなると、温度検出器は、例えば液晶表示パネルの基板上に設けられることが考えられる。このような位置に温度検出器を設置すると、ヒータを加熱制御したとき、ヒータからの熱は液晶表示パネルの基板を伝達した後、温度検出器に伝えられることとなる。基板は、通常、透明なガラスまたは樹脂等から構成されている。これらの部材は、比較的熱容量が大きく、ヒータからの熱が温度検出器まで伝わるまでにある程度の時間を要する。このため、ヒータにて液晶が加熱されたとしても、温度検出器にてその温度をいち早く検出することが困難となり、検出精度が悪い。
【0005】
検出精度が悪いと、ヒータの制御性が低下するため、場合によっては、液晶を過熱するおそれがある。液晶が過熱すると、コントラストが低下したり、周囲にある制御回路などに悪影響を及ぼしたりするため、液晶表示パネルの表示の品質が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶表示パネルの表示の品質を向上させることができる液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、一対の基板を有し、両基板の対向する面に複数の電極が設けられ、両基板の間隙に液晶が封入されている液晶表示パネルと、基板の反電極形成面側に設けられ、少なくとも基板の板厚方向で液晶表示パネルの表示領域と重なる位置に配置され、通電することにより発熱する透明な発熱部を有するヒータと、ヒータの発熱部に隣り合って設置される温度感知部を有する温度検出器と、を備えることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、温度検出器の温度感知部は、他の熱容量の大きな部材(例えば、液晶表示パネルの基板など)を介すことなく、ヒータの発熱部に隣り合って設置されているため、発熱部が発熱を開始すると直ぐにその温度を感知する。温度検出器は、発熱部が発熱を開始するとすぐにその温度を感知できるため、温度検出器がヒータの発熱部との間に比較的熱容量の大きな部材が介在されている場合に比べ、液晶の温度の上昇が始まってから温度感知部が温度を感知するまでの期間(以下、「反応期間」という)を短縮できる。また、温度検出器の温度感知部は発熱部に隣り合って設置されているため、温度感知部への外気温の影響を受け難くすることができ、外乱を極力排除することができる。以上のことにより、液晶温度の検出精度が向上する。
【0009】
液晶温度の検出精度が向上すると、ヒータの制御性が向上するため、液晶の過熱を抑制することができる。また、温度検出器の反応期間を短縮できるため、発熱部の発熱量を大きくしても、液晶が過熱すること無くヒータを制御することができ、急速に液晶温度を最適な温度に上昇させることができる。
【0010】
以上のことにより、液晶表示パネルの表示の品質を格段に向上させることができる液晶表示装置を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、ヒータは、発熱部と、発熱部を支持する支持基板とを備え、温度検出器は、基板と支持基板との間に設置されていることを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、ヒータは、発熱部と、その発熱部を支持する支持基板を備えており、液晶表示パネルとは別体となっている。このため、どのような形式の液晶表示パネルにも適用できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、液晶表示パネルの基板に隣り合って設けられ、一対の基板間に液晶が封入されている補償パネルを備え、補償パネルの基板のうち、液晶表示パネル側の基板は、支持基板を兼ねていることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、補償パネルの一部をヒータとして利用することができるため、液晶表示装置の厚さを極力薄くすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、発熱部は、基板の反電極形成面上に設けられ、温度検出器は、反電極形成面のさらに反電極形成面側に隣り合って設置されていることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、発熱部は液晶表示パネルの基板上に設けられているため、液晶表示装置の厚さを極力薄くすることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、発熱部は、基板の板厚方向で表示領域外の位置にも形成されており、温度検出器は、表示領域外における発熱部に隣り合って設置されていることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、発熱部は表示領域外の位置にも形成され、温度検出器は表示領域外における発熱部に隣り合って設置されているため、液晶表示パネルが透過型のものであっても、表示に影響を与えることなく温度を検出することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、発熱部は、少なくとも液晶表示パネルの表示領域全面を覆っていることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、発熱部は、少なくとも表示領域全面を覆っているため、表示領域の液晶を均一に加熱することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、発熱部には、表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されていることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、発熱部には、表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されている。これによれば、発熱部を発熱させるべく通電したときの、液晶表示パネルの液晶の温度と、温度検出器が検出する温度との温度上昇度合いを適宜調整することができる。これにより、温度検出器が検出する温度を液晶の温度に合わせることができ、液晶表示パネルの液晶の温度検出の精度がより向上する。
【0023】
請求項8に記載の発明は、抵抗調整部は、発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、抵抗調整部は発熱部の一部を除去するという簡単な構造で発熱部の抵抗を調整することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、抵抗調整部は、発熱部のうち、表示領域外の発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴としている。
【0026】
透明な発熱部とはいえ、発熱部の抵抗を調整するために発熱部の一部を除去すると、液晶表示パネルの裏面側から光を透過させると、発熱部と除去部分との境界線が影となって表示に悪影響を及ぼすおそれがある。この発明によれば、抵抗調整部は、表示領域外に形成されているため、上述の問題を回避することができる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、発熱部と隣り合った位置に、発熱部と直列に温度ヒューズが接続されていることを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、発熱部と隣り合った位置に、発熱部と直列に温度ヒューズが接続されているため、何らかの異常で発熱部の温度を制御することができなくとも、温度ヒューズにより、発熱部への通電を強制的に遮断することができる。これにより、液晶表示装置を過熱より保護することができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、温度検出器は、サーミスタであることを特徴としている。
【0030】
ここで、サーミスタは、熱容量の比較的小さい温度検出器の一種である。この発明によれば、熱容量の比較的小さいサーミスタを温度検出器として使用するため、温度の検出精度を格段に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという。)1の構成を示す模式図である。
【0033】
HUD1は車両2に搭載され、車室3前方のインストルメントパネル4内に設けられる。HUD1は、車両情報を表示するメータ5の車両2前方側に設けられている。
【0034】
このHUD1は、表示器10、反射鏡11、および防塵カバー12などから構成されている。表示器10は、車両情報を画像として形成する。反射鏡11は、表示器10が形成した表示画像の画像光を、防塵カバー12を介して車室3前方のウインドシールド6に導く。これにより、ウインドシールド6へ入射された画像光は、ウインドシールド6の車室3内側表面上にて結像され、虚像として表示される。
【0035】
図2は、図1に示す表示器10の一部の構成を示す分解斜視図であり、図3は、図1に示す表示器10の一部の構成を示す断面図である。
【0036】
表示器10は、バックライト20、投射レンズ26および液晶パネル30などから構成されている。
【0037】
バックライト20は、光源21、集光レンズ22、拡散板23等から構成され、支持部材24の内部に収容されている。
【0038】
光源21は、本実施形態では発光ダイオードである。光源21は、例えばキセノンランプ、蛍光表示管、または冷陰極管などであっても良い。光源21は、光源用プリント基板25上に実装されている。図示しないが、光源21は、プリント基板80上に実装されている制御部90と電気的に接続されている。集光レンズ22は、図3に示すように、断面が凸状である凸レンズであり、発光した光源21から広域に放射される光を集めて拡散板23に向けて出射する。拡散板23は、集光レンズ22とは反対側に発光面を有しており、集光レンズ22からの入射光を拡散して、この発光面から投射レンズ26に向けて出射する。発光面は平面状に形成されており、輝度ムラの抑制された均一な光源面として機能する。
【0039】
投射レンズ26は樹脂などの高屈折率材料で形成され、バックライト20と液晶パネル30との間に配置されている。投射レンズ26のバックライト20側には、拡散板23からの出射光が入射される。投射レンズ26は、バックライト20からの入射光を集めて液晶パネル30に投射する。
【0040】
液晶パネル30は投射レンズ26とは反対側に画面31を有しており、外部からの入力信号に応じた表示画像を画面31上に形成する。液晶パネル30は、プリント基板80上に実装された制御部90とフレキシブルプリント基板81を介して電気的に接続されている。制御部90は、表示信号を生成し、液晶パネル30に向けてその表示信号を送信する。液晶パネル30は、透過型のパネルであり、投射レンズ26から光が投射されることによって透過照明される。液晶パネル30は、透過照明によって画面31上に形成される表示画像を反射鏡11へ出力する(図1参照)。
【0041】
次に、液晶パネル30について図4から図7に基づいて
図4から図6は、液晶パネル30を3方から見た平面図、および側面図である。図4は、液晶パネル30の投射レンズ26とは反対側の平面図であり、図5は、液晶パネル30の投射レンズ26側の平面図であり、図6は、液晶パネル30の側面図である。図7は、図6中の破線部を拡大した断面図である。
【0042】
液晶パネル30は、DSTN(Double cell Super Twisted Nematic)型の液晶パネルであり、液晶表示パネル40、補償パネル60およびヒータ70を有している。液晶表示パネル40と補償パネル60は、互いに接着剤や接着テープなどによって貼り合わされている。液晶パネル30は、補償パネル60側を投射レンズ26に向けて配置される。
【0043】
液晶表示パネル40は、一対の透光性基板41、42、スペーサ45、液晶46などから構成されている。図4に示すように、一対の透光性基板41、42は、例えばガラスにより矩形状に形成されている。補償パネル60側に配置される一方の透光性基板41は、上下方向の長さが他方の透光性基板42よりも長く形成されている。図4、図6、図7に示すように、他方の透光性基板42の下端部側には、一方の透光性基板41が突出する突出部43が形成されている。他方の透光性基板42の電極形成面とは反対側の面上、つまり画面31側の面上には、偏光板44が形成されている。
【0044】
図7に示すように、一対の透光性基板41、42の間には、他方の透光性基板42の外周縁部に沿ってスペーサ45が設けられている。一対の透光性基板41、42とスペーサ45にて形成される空間には液晶46が封入されている。
【0045】
一対の透光性基板41、42の互いに対向する面上には、透明電極47、48が形成されている。透明電極47、48は、ITO(Indium Tin Oxide、インジウムスズ酸化物)からなり、複数の帯状に形成されている。透明電極47、48は、両透光性基板41、42の板厚方向から見て、互いに直交するように透光性基板41、42に並んで形成されている。
【0046】
上記突出部43には、透明電極47、48と接続されている第一端子部(図示せず)および、フレキシブルプリント基板81の中央部分と接続される第二端子部(図示せず)が形成されている。突出部43には、制御部90にて生成された表示信号をフレキシブルプリント基板81、第二端子部を通じて受信し、その表示信号に応じて生成した駆動信号を対応する透明電極47、48に第一端子部を通じて送信する駆動回路49が実装されている(図3参照)。
【0047】
補償パネル60は、一対の透光性基板61、62、スペーサ67、液晶68などから構成されている。図5に示すように、一対の透光性基板61、62は、例えばガラスにより矩形状に形成されている。液晶表示パネル40側に配置される一方の透光性基板61は、上下方向の長さ、および左右方向の長さが、他方の透光性基板62よりも長く形成されている。図5から図7に示すように、他方の透光性基板62の下端部側には、一方の透光性基板61が突出する第一突出部63が形成され、両側端部側には、一方の透光性基板61が突出する第二突出部64、65が形成されている。なお、補償パネル60の他方の透光性基板62の大きさは、液晶表示パネル40の他方の透光性基板42の大きさとほぼ同じであり、両透光性基板61、62は、板厚方向で互いに重なるように配置されている。他方の透光性基板62の一方の透光性基板61とは反対側の面上には、偏光板66が形成されている。
【0048】
図7に示すように、一対の透光性基板61、62の間には、他方の透光性基板62の外周縁部に沿ってスペーサ67が設けられている。一対の透光性基板61、62とスペーサ67にて形成される空間には液晶68が封入されている。
【0049】
一方の透光性基板61における他方の透光性基板62側の面上には、上記透明電極47、48と同じ材料であるITOからなり、通電することにより発熱する発熱部71が全面に形成されている。これにより、発熱部71は、図4に示す液晶表示パネル40の表示画像を表示する表示領域50における液晶46を均一に加熱することができる。
【0050】
本実施形態では、一方の透光性基板61および発熱部71にてヒータ70を構成している。補償パネル60の一方の透光性基板61は、ヒータ70の一部を兼ねているため、表示器10の厚さを極力薄く形成することができる。
【0051】
図5に示すように、第二突出部64、65に形成されている発熱部71には、発熱部71に電流を供給するヒータ接続部73、74が接続されている。ヒータ接続部73、74は、帯状に形成されたフレキシブルプリント基板より構成されており、第二突出部64、65上の発熱部71と導電性接着剤などによって接続されている。
【0052】
図5に示すように、フレキシブルプリント基板81は、液晶パネル30側の端部が3つに分かれている。フレキシブルプリント基板81の中央端部82は駆動回路49と接続している。同図中、ヒータ接続部73、74は、それぞれフレキシブルプリント基板81の右側端部83、左側端部84と半田付けにより接続している。
【0053】
図5および図7に示すように、フレキシブルプリント基板81の左側端部84は、第一突出部63に形成されている発熱部71の真上に設置されるような形状となっている。この左側端部84の面上には、温度検出器としてのサーミスタ75が接着材などで貼り付けられている。サーミスタ75の温度感知部76は、発熱部71に向けて、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。サーミスタ75は比較的熱容量が小さく、温度を計測する検出器として使用するのに適している。
【0054】
このような位置にサーミスタ75を設置させることにより、液晶パネルを構成する透光性基板上にサーミスタ75を設置させる場合に比べ、発熱部71の熱を即座に感知させることができる。フレキシブルプリント基板81は透光性基板に比べ薄く、熱容量が小さいためである。
【0055】
また、サーミスタ75は、液晶表示パネル40の表示画像の表示領域50外における発熱部71に隣り合って設置されているため、本実施形態のように液晶パネル30が透過型のパネルであっても表示画像の表示に影響を与えることなく温度を検出することができる。
【0056】
また、図5および図7に示すように、右側のヒータ接続部73におけるフレキシブルプリント基板81の右側端部83と接続される端部も、第一突出部63に形成されている発熱部71の真上に配置されるような形状となっており、その端部の面上には、温度ヒューズ77が設けられている。温度ヒューズ77と発熱部71とは、ヒータ接続部73を介して直列に接続されている。ヒータ70またはヒータ70を制御する制御部90に何らかの異常が発生し、発熱部71が過熱したとしても、温度ヒューズ77はそれを感知し、発熱部71への通電を強制的に遮断する。
【0057】
図8は、本実施形態のHUD1を駆動制御する回路構成図である。制御部90は、HUD1を駆動制御するマイクロコンピュータ91を有している。マイクロコンピュータ91は、液晶パネル30、光源21、およびヒータ70を駆動制御するための演算処理を実行するCPU、演算結果や、サーミスタ75からの温度情報や、外部からのHUDON/OFFスイッチ情報や、車速情報などの各種車両情報などを一時的に記憶するRAM、CPUにてHUD1を駆動制御するための演算処理を行う際に必要な制御プログラムなどを記憶するROMを有している。
【0058】
マイクロコンピュータ91の入力側には、インターフェイス(図示しない)を介して、サーミスタ75、HUD1のON/OFFスイッチ、車速情報などの各種車両情報を発信する各種車両情報センサが接続されている。また、マイクロコンピュータ91の出力側には、光源21、駆動回路49を介して液晶表示パネル40、および温度ヒューズ77を介してヒータ70が接続されている。
【0059】
マイクロコンピュータ91は、表示器10に表示する表示画像の表示信号を生成し、駆動回路49にその信号を出力する。表示信号を受けた駆動回路49は、その信号に基づいて、一対の透光性基板41、42上に形成されている透明電極47、48への通電を制御する。マイクロコンピュータ91は、光源21を発光させるべく、駆動信号を生成し、図示しない駆動回路へ出力する。駆動回路は、その信号に基づいて、光源21への通電を制御する。また、マイクロコンピュータ91は、ヒータ70を制御する駆動信号を生成し、図示しない駆動回路へ出力する。駆動回路は、その信号に基づいて、ヒータ70の発熱部71への通電を制御する。
【0060】
次に、HUD1のヒータ70の作動を図9に基づいて説明する。図9は、HUD1のヒータ70の作動を示すフローチャートである。
【0061】
制御部90は、HUDON/OFFスイッチがONとなると図9に示す制御フローを開始する。図9に示すように、ステップS10(以下、単にS10という。他のステップについても同様とする。)では、制御部90は、所定の初期化を実行する。
【0062】
S20では、液晶温度Tを測定する。具体的には、制御部90に入力されるサーミスタ75からの温度情報に基づき液晶温度Tを測定する。実際には、液晶温度Tを直接測定することができないため、サーミスタ75から入力される温度情報に基づき推定する。推定方法としては、例えば、サーミスタ75からの温度情報と実際の液晶温度Tとの関係を実験して求めたものを制御部90のROMなどにマップや計算式として記憶し、それを使用して推定する方法が考えられる。サーミスタ75より入力される1度の温度情報より液晶温度Tを測定してもよいが、複数回入力される温度情報を平均処理して液晶温度Tを測定する方が好ましい。複数回サンプリングした温度情報に基づき液晶温度Tを測定することにより液晶温度Tの測定精度が向上する。
【0063】
S30では、測定した温度Tが30℃未満であるか否かを判定する。ここで、液晶温度Tは、HUD1の表示器10に様々な影響を与える。例えば、液晶温度Tが低温となると、表示器10に表示する表示画像の表示応答時間が長くなる。表示応答時間が長くなると、刻一刻と変化する車速情報の表示画像を更新させると表示更新前後における表示画像が重なり運転者は表示画像の認識度が低下する。一方、液晶温度Tが高温となると、表示画像のコントラストが低下してしまう。また、例えば制御部90などの周辺機器にも悪影響を及ぼす。30℃は、液晶46にとって表示の品質を高い状態に維持できる好ましい温度である。なお、この判定温度は、30℃に限らず、液晶の温度特性を考慮し、必要に応じて適宜変更するのが好ましい。
【0064】
S30における判定がYES、つまり測定した温度Tが30℃未満であれば、処理がS40に移行する。制御部90は、ヒータ70を作動すべく生成した駆動信号をヒータ70の駆動回路へ出力する。駆動回路は、発熱部71へ、その信号に応じた電流を通電する。これにより、発熱部71は通電される電流値に応じて発熱し、液晶46を加熱する。
【0065】
一方、S30における判定がNO、つまり測定した温度Tが30℃以上であれば、処理がS50に移行する。制御部90は、ヒータ70の作動を停止すべく駆動信号のヒータ70への出力を停止する。駆動回路は、制御部90からの駆動信号の受信が停止すると、発熱部71への通電を停止する。
【0066】
S40またはS50のいずれかの処理が終了すると、再び処理をS20に戻し、液晶温度Tを測定する。この制御フローは、HUDON/OFFスイッチがOFFとなるまで繰り返し実行される。
【0067】
本実施形態では、上述したようにサーミスタ75は、例えば液晶表示パネル40の透光性基板41に隣り合う位置に設置されるのではなく、ヒータ70の発熱部71に隣り合う位置に設置されている。これにより、サーミスタ75は、発熱部71が発熱を開始すると直ぐに温度を感知する。このため、サーミスタ75とヒータ70の発熱部71との間に比較的熱容量の大きな透光性基板41が介在されている場合に比べ、サーミスタ75の反応期間を短縮することができる。また、サーミスタ75の温度感知部76は、発熱部71に隣り合って設置されているため、温度感知部76への外気温の影響を受け難くすることができ、外乱を極力排除することができる。以上のことにより、液晶温度Tの検出精度が向上する。
【0068】
このことにより、ヒータ70の制御性が向上するため、液晶46の過熱を抑制することができる。また、サーミスタ75の反応期間を短縮できるため、発熱部71の発熱量を大きくしても、液晶46が過熱すること無くヒータ70を制御することができ、急速に液晶温度Tを最適な温度に上昇させることができる。以上のことにより、液晶表示パネル40の表示の品質を格段に向上させることができる。
【0069】
次に、HUD1の表示更新の作動を図10から図14に基づいて説明する。
【0070】
図10は、HUD1の表示更新の作動を示すフローチャートである。図11は、表示更新時のタイムチャートである。図12は、表示応答時間を説明するためのタイムチャートである。図13は、液晶温度Tと、表示応答時間RE0および表示更新時間RNとの関係を示す特性図である。図14は、表示画像の表示更新前後の状態を示す表示状態図である。
【0071】
制御部90は、HUDON/OFFスイッチがONとなると図10に示す制御フローを開始する。なお、この制御フローは、図9における制御フローとほぼ同時に開始する。図10に示すように、ステップS110(以下、単にS110という。他のステップについても同様とする。)では、制御部90は、所定の初期化を実行する。
【0072】
S120では、制御部90は、表示器10に入力される車速V情報に応じた表示をすべく駆動回路49に向けて表示信号を送信する。
【0073】
S130では、液晶温度Tを測定する。具体的には、制御部90に入力されるサーミスタ75からの温度情報に基づき液晶温度Tを測定する。実際には、液晶温度Tを直接測定することができないため、サーミスタ75から入力される温度情報に基づき推定する。推定方法としては、例えば、サーミスタ75からの温度情報と実際の液晶温度Tとの関係を実験して求めたものを制御部90のROMなどにマップや計算式として記憶し、それを使用して推定する方法が考えられる。サーミスタ75より入力される1度の温度情報より液晶温度Tを測定してもよいが、複数回入力される温度情報を平均処理して液晶温度Tを測定する方が好ましい。複数回サンプリングした温度情報に基づき液晶温度Tを測定することにより液晶温度Tの測定精度が向上する。
【0074】
S140以降の処理は、S130にて測定した温度Tに応じて表示更新前の表示画像(n)への表示を指示してから、次の表示画像への表示を指示するまでの時間である表示更新時間RNを液晶表示パネル40の表示応答時間RE0に基づき決定する。
【0075】
ここで、表示応答時間RE0および表示更新時間RNについて説明する。
【0076】
図12は、液晶表示パネル40のON/OFF切り替えを行ったときの光透過率(以下、単に透過率という。)を表したタイムチャートである。図中、液晶表示パネル40をONしてから安定した状態を透過率100%とし、OFFしてから安定した状態を透過率0%とする。
【0077】
図12に示すように、液晶表示パネル40を時刻t1にてONからOFFに切替えると、透過率は、徐々に低下し、最終的には0%に至る(図中、破線参照)。液晶表示パネル40を時刻t1にてOFFからONに切替えると、透過率は、徐々に上昇し、最終的には100%に至る(図中、実線参照)。
【0078】
本実施形態でいう表示応答時間RE0とは、液晶表示パネル40をONからOFFに切替える場合の切替えタイミングから透過率10%となるまでの応答時間RE1と、液晶表示パネル40をOFFからONに切替える場合の切替えタイミングから透過率90%となるまでの応答時間RE2とのうち、経過時間の長い方をいう。図12では、RE1の方がRE2よりも経過時間が長いため、RE0=RE1となる。
【0079】
この表示応答時間RE0は、液晶温度Tに応じて変化する。図13の破線に示すように、表示応答時間RE0は、何れも液晶温度Tが低下すると共に長くなり、液晶温度Tが上昇すると共に短くなる。
【0080】
本実施形態では表示更新時間RNとは、図11の上段に示すように、更新前の表示画像(n−1)から表示画像(n)に更新する場合を例にとって挙げると、制御部90が更新前の表示画像(n−1)の消去を開始すると共に新表示の表示画像(n)を表示する表示信号を発信してから、さらに、次の表示を開始すべく、表示画像(n)の消去を開始すると共に、次の表示画像(n+1)を表示する表示信号を発信するまでの時間をいう。
【0081】
(液晶温度Tが−7℃未満の場合)
S140では、測定した温度Tが−7℃未満であるか否かを判定する。S140での判定がYES、つまり液晶温度Tが−7℃未満であり図13に示すように比較的、液晶46の表示応答時間RE0が長いと判定されると、処理がS150に移行する。
【0082】
S150では、表示更新時間RNをRN=1500msに設定する。S160では、設定後から1500msが経過したか否かを判定する。1500msが経過していなければ、S160での処理を繰り返し実行する。
【0083】
1500msが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。具体的には、制御部90は、更新前の車速V情報に相当する表示画像(n−1)を、新たな車速V情報に相当する表示画像(n)に更新すべく、表示画像(n−1)を消去すると共に表示画像(n)の表示信号を駆動回路49に向けて発信する(図11参照)。
【0084】
(液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下の場合)
S140での判定がNO、つまり液晶温度Tが−7℃以上であると判定されると、処理がS170に移行する。
【0085】
S170では、測定した温度Tが25℃以下であるか否かを判定する。S170での判定がYES、つまり液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下であると判定されると、処理がS180に移行する。
【0086】
S180では、図13に示すように、液晶温度Tと共に変化する表示更新時間RNに基づいて表示更新時間RNを設定する。この−7℃〜25℃の温度範囲では、表示更新時間RNは、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算した時間となっている。本実施形態では、表示更新時間RNは、ステップ的に変化しているが、表示応答時間RE0に対して一定の延長時間Aを加算したものであっても良い。本実施形態では、この表示更新時間RNは、制御部90のマイクロコンピュータ91に設けられるROMに記憶されている。また、この表示更新時間RNは、計算によって求めても良い。例えば、ROMに表示応答時間RE0を記憶しておき、この温度範囲において、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算して求めたものを表示更新時間RNとする。
【0087】
S190では、設定後からS180にて設定した表示更新時間RNが経過したか否かを判定する。設定した表示更新時間RNが経過していなければ、S190での処理を繰り返し実行する。
【0088】
設定した表示更新時間RNが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。
【0089】
(液晶温度Tが25℃よりも高い場合)
S170での判定がNO、つまり液晶温度Tが25℃よりも高いと判定されると、処理がS200に移行する。
【0090】
S200では、表示更新時間RNをRN=300msに設定する。S210では、設定後から300msが経過したか否かを判定する。300msが経過していなければ、S210での処理を繰り返し実行する。
【0091】
300msが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。
【0092】
次に、図10における制御フローを実行したときの各温度範囲における表示器10の表示状態を説明する。
【0093】
液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下の比較的液晶46の状態が良好の場合、表示更新時間RNは、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算した時間となる(図11および図13参照)。
【0094】
このように表示更新時間RE0を設定すると、図11に示すように、表示画像(n−1)から表示画像(n)への更新が開始されてから、表示応答時間RE0が経過するまでは、表示画像(n−1)と表示画像(n)とが重なって表示される。これは、液晶46をON−OFFさせたときの透過率が10%から90%の範囲内にあるためである(図12参照)。表示応答時間RE0経過後、所定の延長時間Aの期間は、表示画像(n−1)は表示器10から消去され、表示画像(n)のみが表示される。このため、この延長時間Aの期間中に運転者は、表示が表示画像(n)となったことを認識することができる。
【0095】
延長時間Aは、表示画像(n−1)が消去され、表示画像(n)のみが表示され、その表示内容を運転者が確実に認識することができるだけの時間であれば良い。具体的には、この時間Aは約100msあれば運転者は表示器10に表示されている表示内容を確実に認識することができる。
【0096】
例えば、更新前の表示画像(n−1)が「4km/h」であり、新表示である表示画像(n)が「7km/h」である場合、表示器10の表示画像は、「4km/h」(図14(a)参照)から「4km/h」と「7km/h」とが重なった状態(図14(b)参照)を経て、「7km/h」(図14(c))に変化する。
【0097】
図11に示す表示応答時間RE0の期間では、表示器10の表示画像は、図14(b)に示すような状態となっている。これでは、運転者は表示器10に表示されている表示内容を認識することができない。ところが、本実施形態では、表示応答時間RE0が経過した後、所定の延長時間Aだけ「7km/h」の表示を継続するため、運転者はこの延長時間Aの期間中に表示内容が「7km/h」であることを確実に認識させることができる。これにより、表示更新途中に背景画像を挿入することをせずとも更新された表示画像の表示内容を運転者に確実に認識させることができる。また、背景画像を挿入しないため、表示更新間隔を、背景画像を挿入する場合に比べ短くすることができる。このような方法にて表示画像を更新するものは、刻々と変化する車速Vを表示させるものに適している。
【0098】
しかしながら、図13に示すように、液晶46は、その温度Tが低くなるほど表示応答時間RE0が長くなり、高くなるほど表示応答時間RE0が短くなる。
【0099】
例えば、液晶温度Tが−20℃では、表示応答時間RE0は3000msとなる。仮に、上記温度範囲(−7℃以上、25℃以下)と同じように、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算したものを表示更新時間RNとして、表示器10を作動させると、表示画像(n−1)から表示画像(n)に更新されるまでの時間が非常に長くなる。これでは、本実施形態のように表示器10に刻々と変化する車速Vを表示させるようなものには不向きであり、表示機能を低下させてしまう。
【0100】
そこで、本実施形態では、液晶温度Tがある程度低い状態にあるとき、具体的には−7℃未満のとき、上記のような問題を解消すべく、表示応答時間RE0に拘わらず表示更新時間RNを1500msに固定して設定する。これにより、表示画像(n−1)と表示画像(n)はある程度重なって見えても、表示更新時間RNを比較的長くしているため、運転者は表示内容を認識することができる。これにより、車速Vという刻々と変化する情報を表示画像として表示するという表示機能の低下を極力抑えつつ、表示の品質を確保することができるのである。
【0101】
また、液晶温度Tが50℃では、表示応答時間RE0は100msを下回る。仮に上記温度範囲(−7℃以上、25℃以下)と同じように、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算したものを表示更新時間RNとして、表示器10を作動させると、表示画像(n−1)と表示画像(n)とが重なる期間は短くなるものの、表示画像(n−1)から表示画像(n)への更新、そして、その次の表示画像への更新が短く、却って、運転者は表示器10に表示されている内容を認識するのが困難となる。
【0102】
そこで、本実施形態では、液晶温度Tがある程度高い状態にあるとき、具体的には25℃よりも高いとき、上記のような問題を解消すべく、表示応答時間RE0に拘わらず表示更新時間RNを300msに固定して設定する。これにより、運転者は、更新後の表示画像(n)を確実に認識することができるようになる。
【0103】
以上説明してきたように、本実施形態では、液晶温度Tが所定の温度範囲にあるときは勿論、その温度範囲よりも低い場合や高い場合であっても、表示更新時の表示品質を確保することができる表示器10ひいてはHUD1を提供することができる。
【0104】
なお、本実施形態では、特許請求の範囲に記載されている液晶表示装置としてHUD1に設けられている表示器10を例に挙げて説明したが、液晶表示パネル40に表示する表示画像を直接運転者に視認させる形式のものであっても良い。
【0105】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、第1実施形態による透光性基板61上に形成した発熱部71の変形例である。第2実施形態では、透光性基板61上に形成した発熱部71の一部を除去することにより、発熱部71に発熱部71に流れる電流を制限する抵抗調整部72を形成している。これにより、抵抗調整部72の前後に形成されている発熱部71の発熱量を制御することができる。
【0106】
図15および図16は、発熱部71が形成されている透光性基板61を光源21側から見た状態を示している。
【0107】
例えば、図15に示すように、サーミスタ75に対応する部分の周囲、または第一突出部63の発熱部71を除去して抵抗調整部72(図中のハッチング部)を形成する。図15に図示する位置の発熱部71を除去することにより、発熱部71を除去した部分の前後の電流の経路が狭くなり、抵抗値が高まる。その結果、サーミスタ75に対応する部分の発熱量は、発熱部71が除去されていない部分、つまり、一点鎖線で囲まれる表示領域50に対応する部分の発熱量よりも低下する。
【0108】
また、図16に示すように、表示領域50に対応する部分を挟むように、表示領域50に対応する部分とヒータ接続部73、74との間の発熱部71を除去して抵抗調整部72(図中のハッチング部)を形成する。図16に図示する位置の発熱部71を除去することにより、発熱部71を除去した部分の前後、つまり表示領域50に対応する部分の前後の電流の経路が狭くなり、抵抗値が高まる。その結果、表示領域50に対応する部分の発熱量は、サーミスタ75に対応する部分の発熱部71の発熱量よりも低下する。
【0109】
図15や図16に示すように、発熱部71に抵抗調整部72を形成することにより、サーミスタ75に対応する部分や、表示領域50に対応する部分の発熱量を適宜調整することができる。これにより、発熱部71に通電させたときの液晶46の温度上昇と、サーミスタ75が検出する温度との関係を適宜調整することができる。
【0110】
また、図15や図16に示すように、抵抗調整部72は、表示領域50外に対応する部分に形成されているため、裏面側から光源21からの光を照射しても表示器10に表示される画像に抵抗調整部72の影が投影されるといった問題の発生を防止することができる。
【0111】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、第1実施形態のヒータ70およびサーミスタ75をTN(Twisted Nematic)型やTFT(Thin Film Transistor)型の液晶パネルに適用した例である。図17は、TN型の液晶表示パネル40aの要部を拡大した断面図である。
【0112】
図17に示すように、ヒータ70は、光源21側の透光性基板41a上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41aの透明電極47aが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。発熱部71のさらに光源21側には、光源21側の偏光板66が設けられている。透光性基板42aの反光源側にも偏光板44が設けられている。
【0113】
このように、液晶表示パネル40aを構成する透光性基板41a上にヒータ70の発熱部71を設けるようにしているため、ことにより、表示器10の厚さを極力薄くすることができる。
【0114】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第1実施形態のヒータ70およびサーミスタ75をFSTN(Film Super Twisted Nematic)型やFSTN型の一種であるASTN型の液晶パネルに適用した例である。図18は、FSTN型の液晶表示パネル40bの要部を拡大した断面図である。図19は、ASTN型の液晶表示パネル40cの要部を拡大した断面図である。
【0115】
図18に示すように、この型の液晶表示パネル40bは、透光性基板41b、42bの外側の面にそれぞれ形成されている偏光板66、44と、向かい合うそれぞれの透光性基板41b、42bとの間に高分子からなる位相差フィルム92、93が設けられている。
【0116】
ヒータ70は、光源21側の透光性基板41b上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41bの透明電極47bが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。
【0117】
また、図19に示すように、ASTN型の液晶表示パネル40cは、透光性基板41b側に設けられる偏光板66と、透光性基板41bとの間に補償フィルム94が設けられる形式の液晶表示パネル40である。
【0118】
ヒータ70は、光源21側の透光性基板41b上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41bの透明電極47bが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1実施形態によるHUDの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による表示器の一部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す表示器の一部の構成を示す断面図である。
【図4】図1に示す表示器における液晶パネルの投射レンズとは反対側の平面図である。
【図5】図1に示す表示器における液晶パネルの投射レンズ側の平面図である。
【図6】図1に示す表示器における液晶パネルの側面図である。
【図7】図1に示す表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるHUDを駆動制御する回路構成図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器に設けられるヒータの作動を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の表示更新の作動を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の表示更新時のタイムチャートである。
【図12】液晶の表示応答時間を説明するためのタイムチャートである。
【図13】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の液晶温度と、表示応答時間および表示更新時間との関係を示す特性図である。
【図14】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器が表示する表示画像の表示更新全後の状態を示す表示状態図である。
【図15】本発明の第2実施形態による表示器の発熱部が形成されている透光基板の一例を示す平面図である。
【図16】本発明の第2実施形態による表示器の発熱部が形成されている透光基板の他の例を示す平面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図18】本発明の第4実施形態による表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図19】本発明の第4実施形態による表示器における液晶パネルとは異なる別の形式の液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)、2 車両、3 車室、4 インストルメントパネル、5 メータ、6 ウインドシールド、10 表示器(液晶表示装置)、20 バックライト、21 光源、30 液晶パネル、31 画面、40 液晶表示パネル、41・42 透光性基板、43 突出部、46 液晶、47・48 透明電極、49 駆動回路、50 表示領域、60 補償パネル、61・62 透光性基板、63 第一突出部、64・65 第二突出部、70 ヒータ、71 発熱部、72 抵抗調整部、73・74 ヒータ接続部、75 サーミスタ、76 温度感知部、77 温度ヒューズ、90 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの裏面側にパネルヒータを設け、液晶表示パネルに封入されている液晶をヒータにて加熱し最適な状態にする液晶表示装置が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特に、特許文献2には、液晶表示パネルに近接して温度検出器を設置し、液晶表示パネルの雰囲気温度を検出し、温度検出器が、パネルの雰囲気温度が低温であることを検出すると、ヒータを加熱制御する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2004−37535号公報
【特許文献2】実開昭56−128618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2に記載されているように温度検出器を液晶表示パネルに近接して設けるとなると、温度検出器は、例えば液晶表示パネルの基板上に設けられることが考えられる。このような位置に温度検出器を設置すると、ヒータを加熱制御したとき、ヒータからの熱は液晶表示パネルの基板を伝達した後、温度検出器に伝えられることとなる。基板は、通常、透明なガラスまたは樹脂等から構成されている。これらの部材は、比較的熱容量が大きく、ヒータからの熱が温度検出器まで伝わるまでにある程度の時間を要する。このため、ヒータにて液晶が加熱されたとしても、温度検出器にてその温度をいち早く検出することが困難となり、検出精度が悪い。
【0005】
検出精度が悪いと、ヒータの制御性が低下するため、場合によっては、液晶を過熱するおそれがある。液晶が過熱すると、コントラストが低下したり、周囲にある制御回路などに悪影響を及ぼしたりするため、液晶表示パネルの表示の品質が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、液晶表示パネルの表示の品質を向上させることができる液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、一対の基板を有し、両基板の対向する面に複数の電極が設けられ、両基板の間隙に液晶が封入されている液晶表示パネルと、基板の反電極形成面側に設けられ、少なくとも基板の板厚方向で液晶表示パネルの表示領域と重なる位置に配置され、通電することにより発熱する透明な発熱部を有するヒータと、ヒータの発熱部に隣り合って設置される温度感知部を有する温度検出器と、を備えることを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、温度検出器の温度感知部は、他の熱容量の大きな部材(例えば、液晶表示パネルの基板など)を介すことなく、ヒータの発熱部に隣り合って設置されているため、発熱部が発熱を開始すると直ぐにその温度を感知する。温度検出器は、発熱部が発熱を開始するとすぐにその温度を感知できるため、温度検出器がヒータの発熱部との間に比較的熱容量の大きな部材が介在されている場合に比べ、液晶の温度の上昇が始まってから温度感知部が温度を感知するまでの期間(以下、「反応期間」という)を短縮できる。また、温度検出器の温度感知部は発熱部に隣り合って設置されているため、温度感知部への外気温の影響を受け難くすることができ、外乱を極力排除することができる。以上のことにより、液晶温度の検出精度が向上する。
【0009】
液晶温度の検出精度が向上すると、ヒータの制御性が向上するため、液晶の過熱を抑制することができる。また、温度検出器の反応期間を短縮できるため、発熱部の発熱量を大きくしても、液晶が過熱すること無くヒータを制御することができ、急速に液晶温度を最適な温度に上昇させることができる。
【0010】
以上のことにより、液晶表示パネルの表示の品質を格段に向上させることができる液晶表示装置を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、ヒータは、発熱部と、発熱部を支持する支持基板とを備え、温度検出器は、基板と支持基板との間に設置されていることを特徴としている。
【0012】
この発明によれば、ヒータは、発熱部と、その発熱部を支持する支持基板を備えており、液晶表示パネルとは別体となっている。このため、どのような形式の液晶表示パネルにも適用できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、液晶表示パネルの基板に隣り合って設けられ、一対の基板間に液晶が封入されている補償パネルを備え、補償パネルの基板のうち、液晶表示パネル側の基板は、支持基板を兼ねていることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、補償パネルの一部をヒータとして利用することができるため、液晶表示装置の厚さを極力薄くすることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、発熱部は、基板の反電極形成面上に設けられ、温度検出器は、反電極形成面のさらに反電極形成面側に隣り合って設置されていることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、発熱部は液晶表示パネルの基板上に設けられているため、液晶表示装置の厚さを極力薄くすることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、発熱部は、基板の板厚方向で表示領域外の位置にも形成されており、温度検出器は、表示領域外における発熱部に隣り合って設置されていることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、発熱部は表示領域外の位置にも形成され、温度検出器は表示領域外における発熱部に隣り合って設置されているため、液晶表示パネルが透過型のものであっても、表示に影響を与えることなく温度を検出することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、発熱部は、少なくとも液晶表示パネルの表示領域全面を覆っていることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、発熱部は、少なくとも表示領域全面を覆っているため、表示領域の液晶を均一に加熱することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、発熱部には、表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されていることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、発熱部には、表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されている。これによれば、発熱部を発熱させるべく通電したときの、液晶表示パネルの液晶の温度と、温度検出器が検出する温度との温度上昇度合いを適宜調整することができる。これにより、温度検出器が検出する温度を液晶の温度に合わせることができ、液晶表示パネルの液晶の温度検出の精度がより向上する。
【0023】
請求項8に記載の発明は、抵抗調整部は、発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴としている。
【0024】
この発明によれば、抵抗調整部は発熱部の一部を除去するという簡単な構造で発熱部の抵抗を調整することができる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、抵抗調整部は、発熱部のうち、表示領域外の発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴としている。
【0026】
透明な発熱部とはいえ、発熱部の抵抗を調整するために発熱部の一部を除去すると、液晶表示パネルの裏面側から光を透過させると、発熱部と除去部分との境界線が影となって表示に悪影響を及ぼすおそれがある。この発明によれば、抵抗調整部は、表示領域外に形成されているため、上述の問題を回避することができる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、発熱部と隣り合った位置に、発熱部と直列に温度ヒューズが接続されていることを特徴としている。
【0028】
この発明によれば、発熱部と隣り合った位置に、発熱部と直列に温度ヒューズが接続されているため、何らかの異常で発熱部の温度を制御することができなくとも、温度ヒューズにより、発熱部への通電を強制的に遮断することができる。これにより、液晶表示装置を過熱より保護することができる。
【0029】
請求項11に記載の発明は、温度検出器は、サーミスタであることを特徴としている。
【0030】
ここで、サーミスタは、熱容量の比較的小さい温度検出器の一種である。この発明によれば、熱容量の比較的小さいサーミスタを温度検出器として使用するため、温度の検出精度を格段に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0032】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという。)1の構成を示す模式図である。
【0033】
HUD1は車両2に搭載され、車室3前方のインストルメントパネル4内に設けられる。HUD1は、車両情報を表示するメータ5の車両2前方側に設けられている。
【0034】
このHUD1は、表示器10、反射鏡11、および防塵カバー12などから構成されている。表示器10は、車両情報を画像として形成する。反射鏡11は、表示器10が形成した表示画像の画像光を、防塵カバー12を介して車室3前方のウインドシールド6に導く。これにより、ウインドシールド6へ入射された画像光は、ウインドシールド6の車室3内側表面上にて結像され、虚像として表示される。
【0035】
図2は、図1に示す表示器10の一部の構成を示す分解斜視図であり、図3は、図1に示す表示器10の一部の構成を示す断面図である。
【0036】
表示器10は、バックライト20、投射レンズ26および液晶パネル30などから構成されている。
【0037】
バックライト20は、光源21、集光レンズ22、拡散板23等から構成され、支持部材24の内部に収容されている。
【0038】
光源21は、本実施形態では発光ダイオードである。光源21は、例えばキセノンランプ、蛍光表示管、または冷陰極管などであっても良い。光源21は、光源用プリント基板25上に実装されている。図示しないが、光源21は、プリント基板80上に実装されている制御部90と電気的に接続されている。集光レンズ22は、図3に示すように、断面が凸状である凸レンズであり、発光した光源21から広域に放射される光を集めて拡散板23に向けて出射する。拡散板23は、集光レンズ22とは反対側に発光面を有しており、集光レンズ22からの入射光を拡散して、この発光面から投射レンズ26に向けて出射する。発光面は平面状に形成されており、輝度ムラの抑制された均一な光源面として機能する。
【0039】
投射レンズ26は樹脂などの高屈折率材料で形成され、バックライト20と液晶パネル30との間に配置されている。投射レンズ26のバックライト20側には、拡散板23からの出射光が入射される。投射レンズ26は、バックライト20からの入射光を集めて液晶パネル30に投射する。
【0040】
液晶パネル30は投射レンズ26とは反対側に画面31を有しており、外部からの入力信号に応じた表示画像を画面31上に形成する。液晶パネル30は、プリント基板80上に実装された制御部90とフレキシブルプリント基板81を介して電気的に接続されている。制御部90は、表示信号を生成し、液晶パネル30に向けてその表示信号を送信する。液晶パネル30は、透過型のパネルであり、投射レンズ26から光が投射されることによって透過照明される。液晶パネル30は、透過照明によって画面31上に形成される表示画像を反射鏡11へ出力する(図1参照)。
【0041】
次に、液晶パネル30について図4から図7に基づいて
図4から図6は、液晶パネル30を3方から見た平面図、および側面図である。図4は、液晶パネル30の投射レンズ26とは反対側の平面図であり、図5は、液晶パネル30の投射レンズ26側の平面図であり、図6は、液晶パネル30の側面図である。図7は、図6中の破線部を拡大した断面図である。
【0042】
液晶パネル30は、DSTN(Double cell Super Twisted Nematic)型の液晶パネルであり、液晶表示パネル40、補償パネル60およびヒータ70を有している。液晶表示パネル40と補償パネル60は、互いに接着剤や接着テープなどによって貼り合わされている。液晶パネル30は、補償パネル60側を投射レンズ26に向けて配置される。
【0043】
液晶表示パネル40は、一対の透光性基板41、42、スペーサ45、液晶46などから構成されている。図4に示すように、一対の透光性基板41、42は、例えばガラスにより矩形状に形成されている。補償パネル60側に配置される一方の透光性基板41は、上下方向の長さが他方の透光性基板42よりも長く形成されている。図4、図6、図7に示すように、他方の透光性基板42の下端部側には、一方の透光性基板41が突出する突出部43が形成されている。他方の透光性基板42の電極形成面とは反対側の面上、つまり画面31側の面上には、偏光板44が形成されている。
【0044】
図7に示すように、一対の透光性基板41、42の間には、他方の透光性基板42の外周縁部に沿ってスペーサ45が設けられている。一対の透光性基板41、42とスペーサ45にて形成される空間には液晶46が封入されている。
【0045】
一対の透光性基板41、42の互いに対向する面上には、透明電極47、48が形成されている。透明電極47、48は、ITO(Indium Tin Oxide、インジウムスズ酸化物)からなり、複数の帯状に形成されている。透明電極47、48は、両透光性基板41、42の板厚方向から見て、互いに直交するように透光性基板41、42に並んで形成されている。
【0046】
上記突出部43には、透明電極47、48と接続されている第一端子部(図示せず)および、フレキシブルプリント基板81の中央部分と接続される第二端子部(図示せず)が形成されている。突出部43には、制御部90にて生成された表示信号をフレキシブルプリント基板81、第二端子部を通じて受信し、その表示信号に応じて生成した駆動信号を対応する透明電極47、48に第一端子部を通じて送信する駆動回路49が実装されている(図3参照)。
【0047】
補償パネル60は、一対の透光性基板61、62、スペーサ67、液晶68などから構成されている。図5に示すように、一対の透光性基板61、62は、例えばガラスにより矩形状に形成されている。液晶表示パネル40側に配置される一方の透光性基板61は、上下方向の長さ、および左右方向の長さが、他方の透光性基板62よりも長く形成されている。図5から図7に示すように、他方の透光性基板62の下端部側には、一方の透光性基板61が突出する第一突出部63が形成され、両側端部側には、一方の透光性基板61が突出する第二突出部64、65が形成されている。なお、補償パネル60の他方の透光性基板62の大きさは、液晶表示パネル40の他方の透光性基板42の大きさとほぼ同じであり、両透光性基板61、62は、板厚方向で互いに重なるように配置されている。他方の透光性基板62の一方の透光性基板61とは反対側の面上には、偏光板66が形成されている。
【0048】
図7に示すように、一対の透光性基板61、62の間には、他方の透光性基板62の外周縁部に沿ってスペーサ67が設けられている。一対の透光性基板61、62とスペーサ67にて形成される空間には液晶68が封入されている。
【0049】
一方の透光性基板61における他方の透光性基板62側の面上には、上記透明電極47、48と同じ材料であるITOからなり、通電することにより発熱する発熱部71が全面に形成されている。これにより、発熱部71は、図4に示す液晶表示パネル40の表示画像を表示する表示領域50における液晶46を均一に加熱することができる。
【0050】
本実施形態では、一方の透光性基板61および発熱部71にてヒータ70を構成している。補償パネル60の一方の透光性基板61は、ヒータ70の一部を兼ねているため、表示器10の厚さを極力薄く形成することができる。
【0051】
図5に示すように、第二突出部64、65に形成されている発熱部71には、発熱部71に電流を供給するヒータ接続部73、74が接続されている。ヒータ接続部73、74は、帯状に形成されたフレキシブルプリント基板より構成されており、第二突出部64、65上の発熱部71と導電性接着剤などによって接続されている。
【0052】
図5に示すように、フレキシブルプリント基板81は、液晶パネル30側の端部が3つに分かれている。フレキシブルプリント基板81の中央端部82は駆動回路49と接続している。同図中、ヒータ接続部73、74は、それぞれフレキシブルプリント基板81の右側端部83、左側端部84と半田付けにより接続している。
【0053】
図5および図7に示すように、フレキシブルプリント基板81の左側端部84は、第一突出部63に形成されている発熱部71の真上に設置されるような形状となっている。この左側端部84の面上には、温度検出器としてのサーミスタ75が接着材などで貼り付けられている。サーミスタ75の温度感知部76は、発熱部71に向けて、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。サーミスタ75は比較的熱容量が小さく、温度を計測する検出器として使用するのに適している。
【0054】
このような位置にサーミスタ75を設置させることにより、液晶パネルを構成する透光性基板上にサーミスタ75を設置させる場合に比べ、発熱部71の熱を即座に感知させることができる。フレキシブルプリント基板81は透光性基板に比べ薄く、熱容量が小さいためである。
【0055】
また、サーミスタ75は、液晶表示パネル40の表示画像の表示領域50外における発熱部71に隣り合って設置されているため、本実施形態のように液晶パネル30が透過型のパネルであっても表示画像の表示に影響を与えることなく温度を検出することができる。
【0056】
また、図5および図7に示すように、右側のヒータ接続部73におけるフレキシブルプリント基板81の右側端部83と接続される端部も、第一突出部63に形成されている発熱部71の真上に配置されるような形状となっており、その端部の面上には、温度ヒューズ77が設けられている。温度ヒューズ77と発熱部71とは、ヒータ接続部73を介して直列に接続されている。ヒータ70またはヒータ70を制御する制御部90に何らかの異常が発生し、発熱部71が過熱したとしても、温度ヒューズ77はそれを感知し、発熱部71への通電を強制的に遮断する。
【0057】
図8は、本実施形態のHUD1を駆動制御する回路構成図である。制御部90は、HUD1を駆動制御するマイクロコンピュータ91を有している。マイクロコンピュータ91は、液晶パネル30、光源21、およびヒータ70を駆動制御するための演算処理を実行するCPU、演算結果や、サーミスタ75からの温度情報や、外部からのHUDON/OFFスイッチ情報や、車速情報などの各種車両情報などを一時的に記憶するRAM、CPUにてHUD1を駆動制御するための演算処理を行う際に必要な制御プログラムなどを記憶するROMを有している。
【0058】
マイクロコンピュータ91の入力側には、インターフェイス(図示しない)を介して、サーミスタ75、HUD1のON/OFFスイッチ、車速情報などの各種車両情報を発信する各種車両情報センサが接続されている。また、マイクロコンピュータ91の出力側には、光源21、駆動回路49を介して液晶表示パネル40、および温度ヒューズ77を介してヒータ70が接続されている。
【0059】
マイクロコンピュータ91は、表示器10に表示する表示画像の表示信号を生成し、駆動回路49にその信号を出力する。表示信号を受けた駆動回路49は、その信号に基づいて、一対の透光性基板41、42上に形成されている透明電極47、48への通電を制御する。マイクロコンピュータ91は、光源21を発光させるべく、駆動信号を生成し、図示しない駆動回路へ出力する。駆動回路は、その信号に基づいて、光源21への通電を制御する。また、マイクロコンピュータ91は、ヒータ70を制御する駆動信号を生成し、図示しない駆動回路へ出力する。駆動回路は、その信号に基づいて、ヒータ70の発熱部71への通電を制御する。
【0060】
次に、HUD1のヒータ70の作動を図9に基づいて説明する。図9は、HUD1のヒータ70の作動を示すフローチャートである。
【0061】
制御部90は、HUDON/OFFスイッチがONとなると図9に示す制御フローを開始する。図9に示すように、ステップS10(以下、単にS10という。他のステップについても同様とする。)では、制御部90は、所定の初期化を実行する。
【0062】
S20では、液晶温度Tを測定する。具体的には、制御部90に入力されるサーミスタ75からの温度情報に基づき液晶温度Tを測定する。実際には、液晶温度Tを直接測定することができないため、サーミスタ75から入力される温度情報に基づき推定する。推定方法としては、例えば、サーミスタ75からの温度情報と実際の液晶温度Tとの関係を実験して求めたものを制御部90のROMなどにマップや計算式として記憶し、それを使用して推定する方法が考えられる。サーミスタ75より入力される1度の温度情報より液晶温度Tを測定してもよいが、複数回入力される温度情報を平均処理して液晶温度Tを測定する方が好ましい。複数回サンプリングした温度情報に基づき液晶温度Tを測定することにより液晶温度Tの測定精度が向上する。
【0063】
S30では、測定した温度Tが30℃未満であるか否かを判定する。ここで、液晶温度Tは、HUD1の表示器10に様々な影響を与える。例えば、液晶温度Tが低温となると、表示器10に表示する表示画像の表示応答時間が長くなる。表示応答時間が長くなると、刻一刻と変化する車速情報の表示画像を更新させると表示更新前後における表示画像が重なり運転者は表示画像の認識度が低下する。一方、液晶温度Tが高温となると、表示画像のコントラストが低下してしまう。また、例えば制御部90などの周辺機器にも悪影響を及ぼす。30℃は、液晶46にとって表示の品質を高い状態に維持できる好ましい温度である。なお、この判定温度は、30℃に限らず、液晶の温度特性を考慮し、必要に応じて適宜変更するのが好ましい。
【0064】
S30における判定がYES、つまり測定した温度Tが30℃未満であれば、処理がS40に移行する。制御部90は、ヒータ70を作動すべく生成した駆動信号をヒータ70の駆動回路へ出力する。駆動回路は、発熱部71へ、その信号に応じた電流を通電する。これにより、発熱部71は通電される電流値に応じて発熱し、液晶46を加熱する。
【0065】
一方、S30における判定がNO、つまり測定した温度Tが30℃以上であれば、処理がS50に移行する。制御部90は、ヒータ70の作動を停止すべく駆動信号のヒータ70への出力を停止する。駆動回路は、制御部90からの駆動信号の受信が停止すると、発熱部71への通電を停止する。
【0066】
S40またはS50のいずれかの処理が終了すると、再び処理をS20に戻し、液晶温度Tを測定する。この制御フローは、HUDON/OFFスイッチがOFFとなるまで繰り返し実行される。
【0067】
本実施形態では、上述したようにサーミスタ75は、例えば液晶表示パネル40の透光性基板41に隣り合う位置に設置されるのではなく、ヒータ70の発熱部71に隣り合う位置に設置されている。これにより、サーミスタ75は、発熱部71が発熱を開始すると直ぐに温度を感知する。このため、サーミスタ75とヒータ70の発熱部71との間に比較的熱容量の大きな透光性基板41が介在されている場合に比べ、サーミスタ75の反応期間を短縮することができる。また、サーミスタ75の温度感知部76は、発熱部71に隣り合って設置されているため、温度感知部76への外気温の影響を受け難くすることができ、外乱を極力排除することができる。以上のことにより、液晶温度Tの検出精度が向上する。
【0068】
このことにより、ヒータ70の制御性が向上するため、液晶46の過熱を抑制することができる。また、サーミスタ75の反応期間を短縮できるため、発熱部71の発熱量を大きくしても、液晶46が過熱すること無くヒータ70を制御することができ、急速に液晶温度Tを最適な温度に上昇させることができる。以上のことにより、液晶表示パネル40の表示の品質を格段に向上させることができる。
【0069】
次に、HUD1の表示更新の作動を図10から図14に基づいて説明する。
【0070】
図10は、HUD1の表示更新の作動を示すフローチャートである。図11は、表示更新時のタイムチャートである。図12は、表示応答時間を説明するためのタイムチャートである。図13は、液晶温度Tと、表示応答時間RE0および表示更新時間RNとの関係を示す特性図である。図14は、表示画像の表示更新前後の状態を示す表示状態図である。
【0071】
制御部90は、HUDON/OFFスイッチがONとなると図10に示す制御フローを開始する。なお、この制御フローは、図9における制御フローとほぼ同時に開始する。図10に示すように、ステップS110(以下、単にS110という。他のステップについても同様とする。)では、制御部90は、所定の初期化を実行する。
【0072】
S120では、制御部90は、表示器10に入力される車速V情報に応じた表示をすべく駆動回路49に向けて表示信号を送信する。
【0073】
S130では、液晶温度Tを測定する。具体的には、制御部90に入力されるサーミスタ75からの温度情報に基づき液晶温度Tを測定する。実際には、液晶温度Tを直接測定することができないため、サーミスタ75から入力される温度情報に基づき推定する。推定方法としては、例えば、サーミスタ75からの温度情報と実際の液晶温度Tとの関係を実験して求めたものを制御部90のROMなどにマップや計算式として記憶し、それを使用して推定する方法が考えられる。サーミスタ75より入力される1度の温度情報より液晶温度Tを測定してもよいが、複数回入力される温度情報を平均処理して液晶温度Tを測定する方が好ましい。複数回サンプリングした温度情報に基づき液晶温度Tを測定することにより液晶温度Tの測定精度が向上する。
【0074】
S140以降の処理は、S130にて測定した温度Tに応じて表示更新前の表示画像(n)への表示を指示してから、次の表示画像への表示を指示するまでの時間である表示更新時間RNを液晶表示パネル40の表示応答時間RE0に基づき決定する。
【0075】
ここで、表示応答時間RE0および表示更新時間RNについて説明する。
【0076】
図12は、液晶表示パネル40のON/OFF切り替えを行ったときの光透過率(以下、単に透過率という。)を表したタイムチャートである。図中、液晶表示パネル40をONしてから安定した状態を透過率100%とし、OFFしてから安定した状態を透過率0%とする。
【0077】
図12に示すように、液晶表示パネル40を時刻t1にてONからOFFに切替えると、透過率は、徐々に低下し、最終的には0%に至る(図中、破線参照)。液晶表示パネル40を時刻t1にてOFFからONに切替えると、透過率は、徐々に上昇し、最終的には100%に至る(図中、実線参照)。
【0078】
本実施形態でいう表示応答時間RE0とは、液晶表示パネル40をONからOFFに切替える場合の切替えタイミングから透過率10%となるまでの応答時間RE1と、液晶表示パネル40をOFFからONに切替える場合の切替えタイミングから透過率90%となるまでの応答時間RE2とのうち、経過時間の長い方をいう。図12では、RE1の方がRE2よりも経過時間が長いため、RE0=RE1となる。
【0079】
この表示応答時間RE0は、液晶温度Tに応じて変化する。図13の破線に示すように、表示応答時間RE0は、何れも液晶温度Tが低下すると共に長くなり、液晶温度Tが上昇すると共に短くなる。
【0080】
本実施形態では表示更新時間RNとは、図11の上段に示すように、更新前の表示画像(n−1)から表示画像(n)に更新する場合を例にとって挙げると、制御部90が更新前の表示画像(n−1)の消去を開始すると共に新表示の表示画像(n)を表示する表示信号を発信してから、さらに、次の表示を開始すべく、表示画像(n)の消去を開始すると共に、次の表示画像(n+1)を表示する表示信号を発信するまでの時間をいう。
【0081】
(液晶温度Tが−7℃未満の場合)
S140では、測定した温度Tが−7℃未満であるか否かを判定する。S140での判定がYES、つまり液晶温度Tが−7℃未満であり図13に示すように比較的、液晶46の表示応答時間RE0が長いと判定されると、処理がS150に移行する。
【0082】
S150では、表示更新時間RNをRN=1500msに設定する。S160では、設定後から1500msが経過したか否かを判定する。1500msが経過していなければ、S160での処理を繰り返し実行する。
【0083】
1500msが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。具体的には、制御部90は、更新前の車速V情報に相当する表示画像(n−1)を、新たな車速V情報に相当する表示画像(n)に更新すべく、表示画像(n−1)を消去すると共に表示画像(n)の表示信号を駆動回路49に向けて発信する(図11参照)。
【0084】
(液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下の場合)
S140での判定がNO、つまり液晶温度Tが−7℃以上であると判定されると、処理がS170に移行する。
【0085】
S170では、測定した温度Tが25℃以下であるか否かを判定する。S170での判定がYES、つまり液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下であると判定されると、処理がS180に移行する。
【0086】
S180では、図13に示すように、液晶温度Tと共に変化する表示更新時間RNに基づいて表示更新時間RNを設定する。この−7℃〜25℃の温度範囲では、表示更新時間RNは、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算した時間となっている。本実施形態では、表示更新時間RNは、ステップ的に変化しているが、表示応答時間RE0に対して一定の延長時間Aを加算したものであっても良い。本実施形態では、この表示更新時間RNは、制御部90のマイクロコンピュータ91に設けられるROMに記憶されている。また、この表示更新時間RNは、計算によって求めても良い。例えば、ROMに表示応答時間RE0を記憶しておき、この温度範囲において、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算して求めたものを表示更新時間RNとする。
【0087】
S190では、設定後からS180にて設定した表示更新時間RNが経過したか否かを判定する。設定した表示更新時間RNが経過していなければ、S190での処理を繰り返し実行する。
【0088】
設定した表示更新時間RNが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。
【0089】
(液晶温度Tが25℃よりも高い場合)
S170での判定がNO、つまり液晶温度Tが25℃よりも高いと判定されると、処理がS200に移行する。
【0090】
S200では、表示更新時間RNをRN=300msに設定する。S210では、設定後から300msが経過したか否かを判定する。300msが経過していなければ、S210での処理を繰り返し実行する。
【0091】
300msが経過すると、処理はS120に戻る。S120では、その時の車速V情報に基づき、新たな車速Vに相当する表示画像を表示器10に表示させる。
【0092】
次に、図10における制御フローを実行したときの各温度範囲における表示器10の表示状態を説明する。
【0093】
液晶温度Tが−7℃以上、25℃以下の比較的液晶46の状態が良好の場合、表示更新時間RNは、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算した時間となる(図11および図13参照)。
【0094】
このように表示更新時間RE0を設定すると、図11に示すように、表示画像(n−1)から表示画像(n)への更新が開始されてから、表示応答時間RE0が経過するまでは、表示画像(n−1)と表示画像(n)とが重なって表示される。これは、液晶46をON−OFFさせたときの透過率が10%から90%の範囲内にあるためである(図12参照)。表示応答時間RE0経過後、所定の延長時間Aの期間は、表示画像(n−1)は表示器10から消去され、表示画像(n)のみが表示される。このため、この延長時間Aの期間中に運転者は、表示が表示画像(n)となったことを認識することができる。
【0095】
延長時間Aは、表示画像(n−1)が消去され、表示画像(n)のみが表示され、その表示内容を運転者が確実に認識することができるだけの時間であれば良い。具体的には、この時間Aは約100msあれば運転者は表示器10に表示されている表示内容を確実に認識することができる。
【0096】
例えば、更新前の表示画像(n−1)が「4km/h」であり、新表示である表示画像(n)が「7km/h」である場合、表示器10の表示画像は、「4km/h」(図14(a)参照)から「4km/h」と「7km/h」とが重なった状態(図14(b)参照)を経て、「7km/h」(図14(c))に変化する。
【0097】
図11に示す表示応答時間RE0の期間では、表示器10の表示画像は、図14(b)に示すような状態となっている。これでは、運転者は表示器10に表示されている表示内容を認識することができない。ところが、本実施形態では、表示応答時間RE0が経過した後、所定の延長時間Aだけ「7km/h」の表示を継続するため、運転者はこの延長時間Aの期間中に表示内容が「7km/h」であることを確実に認識させることができる。これにより、表示更新途中に背景画像を挿入することをせずとも更新された表示画像の表示内容を運転者に確実に認識させることができる。また、背景画像を挿入しないため、表示更新間隔を、背景画像を挿入する場合に比べ短くすることができる。このような方法にて表示画像を更新するものは、刻々と変化する車速Vを表示させるものに適している。
【0098】
しかしながら、図13に示すように、液晶46は、その温度Tが低くなるほど表示応答時間RE0が長くなり、高くなるほど表示応答時間RE0が短くなる。
【0099】
例えば、液晶温度Tが−20℃では、表示応答時間RE0は3000msとなる。仮に、上記温度範囲(−7℃以上、25℃以下)と同じように、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算したものを表示更新時間RNとして、表示器10を作動させると、表示画像(n−1)から表示画像(n)に更新されるまでの時間が非常に長くなる。これでは、本実施形態のように表示器10に刻々と変化する車速Vを表示させるようなものには不向きであり、表示機能を低下させてしまう。
【0100】
そこで、本実施形態では、液晶温度Tがある程度低い状態にあるとき、具体的には−7℃未満のとき、上記のような問題を解消すべく、表示応答時間RE0に拘わらず表示更新時間RNを1500msに固定して設定する。これにより、表示画像(n−1)と表示画像(n)はある程度重なって見えても、表示更新時間RNを比較的長くしているため、運転者は表示内容を認識することができる。これにより、車速Vという刻々と変化する情報を表示画像として表示するという表示機能の低下を極力抑えつつ、表示の品質を確保することができるのである。
【0101】
また、液晶温度Tが50℃では、表示応答時間RE0は100msを下回る。仮に上記温度範囲(−7℃以上、25℃以下)と同じように、表示応答時間RE0に所定の延長時間Aを加算したものを表示更新時間RNとして、表示器10を作動させると、表示画像(n−1)と表示画像(n)とが重なる期間は短くなるものの、表示画像(n−1)から表示画像(n)への更新、そして、その次の表示画像への更新が短く、却って、運転者は表示器10に表示されている内容を認識するのが困難となる。
【0102】
そこで、本実施形態では、液晶温度Tがある程度高い状態にあるとき、具体的には25℃よりも高いとき、上記のような問題を解消すべく、表示応答時間RE0に拘わらず表示更新時間RNを300msに固定して設定する。これにより、運転者は、更新後の表示画像(n)を確実に認識することができるようになる。
【0103】
以上説明してきたように、本実施形態では、液晶温度Tが所定の温度範囲にあるときは勿論、その温度範囲よりも低い場合や高い場合であっても、表示更新時の表示品質を確保することができる表示器10ひいてはHUD1を提供することができる。
【0104】
なお、本実施形態では、特許請求の範囲に記載されている液晶表示装置としてHUD1に設けられている表示器10を例に挙げて説明したが、液晶表示パネル40に表示する表示画像を直接運転者に視認させる形式のものであっても良い。
【0105】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、第1実施形態による透光性基板61上に形成した発熱部71の変形例である。第2実施形態では、透光性基板61上に形成した発熱部71の一部を除去することにより、発熱部71に発熱部71に流れる電流を制限する抵抗調整部72を形成している。これにより、抵抗調整部72の前後に形成されている発熱部71の発熱量を制御することができる。
【0106】
図15および図16は、発熱部71が形成されている透光性基板61を光源21側から見た状態を示している。
【0107】
例えば、図15に示すように、サーミスタ75に対応する部分の周囲、または第一突出部63の発熱部71を除去して抵抗調整部72(図中のハッチング部)を形成する。図15に図示する位置の発熱部71を除去することにより、発熱部71を除去した部分の前後の電流の経路が狭くなり、抵抗値が高まる。その結果、サーミスタ75に対応する部分の発熱量は、発熱部71が除去されていない部分、つまり、一点鎖線で囲まれる表示領域50に対応する部分の発熱量よりも低下する。
【0108】
また、図16に示すように、表示領域50に対応する部分を挟むように、表示領域50に対応する部分とヒータ接続部73、74との間の発熱部71を除去して抵抗調整部72(図中のハッチング部)を形成する。図16に図示する位置の発熱部71を除去することにより、発熱部71を除去した部分の前後、つまり表示領域50に対応する部分の前後の電流の経路が狭くなり、抵抗値が高まる。その結果、表示領域50に対応する部分の発熱量は、サーミスタ75に対応する部分の発熱部71の発熱量よりも低下する。
【0109】
図15や図16に示すように、発熱部71に抵抗調整部72を形成することにより、サーミスタ75に対応する部分や、表示領域50に対応する部分の発熱量を適宜調整することができる。これにより、発熱部71に通電させたときの液晶46の温度上昇と、サーミスタ75が検出する温度との関係を適宜調整することができる。
【0110】
また、図15や図16に示すように、抵抗調整部72は、表示領域50外に対応する部分に形成されているため、裏面側から光源21からの光を照射しても表示器10に表示される画像に抵抗調整部72の影が投影されるといった問題の発生を防止することができる。
【0111】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、第1実施形態のヒータ70およびサーミスタ75をTN(Twisted Nematic)型やTFT(Thin Film Transistor)型の液晶パネルに適用した例である。図17は、TN型の液晶表示パネル40aの要部を拡大した断面図である。
【0112】
図17に示すように、ヒータ70は、光源21側の透光性基板41a上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41aの透明電極47aが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。発熱部71のさらに光源21側には、光源21側の偏光板66が設けられている。透光性基板42aの反光源側にも偏光板44が設けられている。
【0113】
このように、液晶表示パネル40aを構成する透光性基板41a上にヒータ70の発熱部71を設けるようにしているため、ことにより、表示器10の厚さを極力薄くすることができる。
【0114】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、第1実施形態のヒータ70およびサーミスタ75をFSTN(Film Super Twisted Nematic)型やFSTN型の一種であるASTN型の液晶パネルに適用した例である。図18は、FSTN型の液晶表示パネル40bの要部を拡大した断面図である。図19は、ASTN型の液晶表示パネル40cの要部を拡大した断面図である。
【0115】
図18に示すように、この型の液晶表示パネル40bは、透光性基板41b、42bの外側の面にそれぞれ形成されている偏光板66、44と、向かい合うそれぞれの透光性基板41b、42bとの間に高分子からなる位相差フィルム92、93が設けられている。
【0116】
ヒータ70は、光源21側の透光性基板41b上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41bの透明電極47bが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。
【0117】
また、図19に示すように、ASTN型の液晶表示パネル40cは、透光性基板41b側に設けられる偏光板66と、透光性基板41bとの間に補償フィルム94が設けられる形式の液晶表示パネル40である。
【0118】
ヒータ70は、光源21側の透光性基板41b上に設けられている。ヒータ70の発熱部71は、透光性基板41bの透明電極47bが形成されている面とは反対側の面の全面に形成されている。そして、サーミスタ75は、温度感知部76が第1実施形態と同様、発熱部71と隣り合う位置に設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1実施形態によるHUDの構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態による表示器の一部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す表示器の一部の構成を示す断面図である。
【図4】図1に示す表示器における液晶パネルの投射レンズとは反対側の平面図である。
【図5】図1に示す表示器における液晶パネルの投射レンズ側の平面図である。
【図6】図1に示す表示器における液晶パネルの側面図である。
【図7】図1に示す表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるHUDを駆動制御する回路構成図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器に設けられるヒータの作動を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の表示更新の作動を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の表示更新時のタイムチャートである。
【図12】液晶の表示応答時間を説明するためのタイムチャートである。
【図13】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器の液晶温度と、表示応答時間および表示更新時間との関係を示す特性図である。
【図14】本発明の第1実施形態によるHUDの表示器が表示する表示画像の表示更新全後の状態を示す表示状態図である。
【図15】本発明の第2実施形態による表示器の発熱部が形成されている透光基板の一例を示す平面図である。
【図16】本発明の第2実施形態による表示器の発熱部が形成されている透光基板の他の例を示す平面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図18】本発明の第4実施形態による表示器における液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【図19】本発明の第4実施形態による表示器における液晶パネルとは異なる別の形式の液晶パネルの要部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0120】
1 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)、2 車両、3 車室、4 インストルメントパネル、5 メータ、6 ウインドシールド、10 表示器(液晶表示装置)、20 バックライト、21 光源、30 液晶パネル、31 画面、40 液晶表示パネル、41・42 透光性基板、43 突出部、46 液晶、47・48 透明電極、49 駆動回路、50 表示領域、60 補償パネル、61・62 透光性基板、63 第一突出部、64・65 第二突出部、70 ヒータ、71 発熱部、72 抵抗調整部、73・74 ヒータ接続部、75 サーミスタ、76 温度感知部、77 温度ヒューズ、90 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板を有し、前記両基板の対向する面に複数の電極が設けられ、前記両基板の間隙に液晶が封入されている液晶表示パネルと、
前記基板の反電極形成面側に設けられ、少なくとも前記基板の板厚方向で前記液晶表示パネルの表示領域と重なる位置に配置され、通電することにより発熱する透明な発熱部を有するヒータと、
前記ヒータの前記発熱部に隣り合って設置される温度感知部を有する温度検出器と、
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記発熱部と、前記発熱部を支持する支持基板とを備え、
前記温度検出器は、前記基板と前記支持基板との間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示パネルの前記基板に隣り合って設けられ、一対の基板間に液晶が封入されている補償パネルを備え、
前記補償パネルの前記基板のうち、前記液晶表示パネル側の前記基板は、前記支持基板を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記発熱部は、前記基板の反電極形成面上に設けられ、
前記温度検出器は、前記反電極形成面のさらに前記反電極形成面側に隣り合って設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記発熱部は、前記基板の板厚方向で前記表示領域外の位置にも形成されており、
前記温度検出器は、前記表示領域外における前記発熱部に隣り合って設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記発熱部は、少なくとも前記液晶表示パネルの前記表示領域全面を覆っていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記発熱部には、前記表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または前記温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記抵抗調整部は、前記発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記抵抗調整部は、前記発熱部のうち、前記表示領域外の前記発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記発熱部と隣り合った位置に、前記発熱部と直列に温度ヒューズが接続されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記温度検出器は、サーミスタであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
一対の基板を有し、前記両基板の対向する面に複数の電極が設けられ、前記両基板の間隙に液晶が封入されている液晶表示パネルと、
前記基板の反電極形成面側に設けられ、少なくとも前記基板の板厚方向で前記液晶表示パネルの表示領域と重なる位置に配置され、通電することにより発熱する透明な発熱部を有するヒータと、
前記ヒータの前記発熱部に隣り合って設置される温度感知部を有する温度検出器と、
を備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記発熱部と、前記発熱部を支持する支持基板とを備え、
前記温度検出器は、前記基板と前記支持基板との間に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶表示パネルの前記基板に隣り合って設けられ、一対の基板間に液晶が封入されている補償パネルを備え、
前記補償パネルの前記基板のうち、前記液晶表示パネル側の前記基板は、前記支持基板を兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記発熱部は、前記基板の反電極形成面上に設けられ、
前記温度検出器は、前記反電極形成面のさらに前記反電極形成面側に隣り合って設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記発熱部は、前記基板の板厚方向で前記表示領域外の位置にも形成されており、
前記温度検出器は、前記表示領域外における前記発熱部に隣り合って設置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記発熱部は、少なくとも前記液晶表示パネルの前記表示領域全面を覆っていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記発熱部には、前記表示領域に対応する部位へ流れる電流を制限する、または前記温度検出器近傍へ流れる電流を制限する抵抗調整部が形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記抵抗調整部は、前記発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記抵抗調整部は、前記発熱部のうち、前記表示領域外の前記発熱部の一部を除去することにより抵抗を調整することを特徴とする請求項7に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記発熱部と隣り合った位置に、前記発熱部と直列に温度ヒューズが接続されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記温度検出器は、サーミスタであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−39386(P2010−39386A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204727(P2008−204727)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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