説明

液晶表示装置

【課題】高コントラストを達成している液晶表示装置について、正面コントラストを改善する。
【解決手段】フロント側とリア側の偏光子20と偏光子22、それらの間に配置される液晶セル10及びフロント側とリア側の位相差領域16と位相差領域18とを有する液晶表示装置であって、位相差領域の厚み方向レターデーションRthリア(λ)とレターデーションRthフロント(λ)の合計は、液晶層の黒表示時のΔnd(λ)を補償可能な範囲であり、フロント部材散乱量≦1/38000を満たし、リア部材散乱量と、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)とが、(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)、(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ)として、式(1)又は式(2)を満たす液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の正面コントラストの改善技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)の高コントラスト(CR)化が進んでいる。特に、VA型液晶表示装置は、他のモード(例えばIPS、TN及びOCBモード)と比較して法線方向のCR(以下、「正面CR」という)が高いという長所があり、その長所をより改善するための研究開発(例えば、ブラックマトリックスの最線化、液晶の傾斜角度を制御するリブの排除(リブレス化)、TFTアレイや電極スリットの改善)が種々行われている。その結果、この6年間で、VA型液晶表示装置の正面CRは、400程度から8000程度に、約20倍高くなっている。正面CRは、画像のメリハリの指標となる重要な特性であり、これが高いという特徴があるVAモードのLCDは、今日では、LCDパネルの主流となっている。
【0003】
一方、液晶表示装置については、正面CRが高いことのみならず、広視野角であること(即ち斜め方向のCR(以下、「視野角CR」という場合がある)も高いこと)、及び斜め方向の色味付きがないことが重要である。液晶表示装置については、視野角特性の改善のために、通常、液晶セルのフロント側及びリア側に位相差フィルムが配置されている。
例えば、VA型液晶表示装置では、一般的には、フロント側とリア側にそれぞれ1枚ずつ位相差フィルムを配置して、それぞれに視野角補償に必要な位相差を振り分けて視野角補償している。互いに等しい位相差を有するフィルムをフロント側及びリア側に配置する態様(以下、「2枚型」という場合がある);並びに、フロント側及びリア側のいずれか一方に、プレーンTACフィルム等の安価なフィルムを配置し、他方に、大きな位相差を有するフィルムを配置する態様(以下、「1枚型」という場合がある);が知られている。
前者の態様は、同一の位相差フィルムを使用できるという点で有利であるし、また後者の態様も一方に汎用品を使用できる点で有利である。
【0004】
ところで、上記した通り、通常、位相差フィルムは、液晶表示装置の視野角補償のために搭載されているが、従来、正面CRにはその位相差特性はなんら寄与しないと考えられていた。位相差フィルムの光学軸ずれやヘイズによって、液晶表示装置の正面CRが低下することは知られており、液晶表示装置の正面CR改善のためには、位相差フィルムの光学軸ズレをなくすこと、ヘイズを低くすることが重要であると考えられていた(例えば、特許文献1)。また、従来では、視野角拡大のために配置される光拡散性フィルムが、正面CRを低下させる一因であることが見出され、正面CRの低下を防止するために、光拡散性フィルムの特性を調整することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
また、特許文献3には、正面方向及び斜め方向のレターデーションの差が小さい光学補償フィルムを、OCBモード液晶表示素子のカラーフィルタ基板と偏光子との間に配置することで、斜め入射した光がカラーフィルタによって散乱されることで正面コントラストが低下されるのを軽減可能であることが開示されている。しかし、正面方向及び斜め方向のレターデーションの差が小さい光学補償フィルムを利用することで正面コントラストが低下されるのを軽減する効果は、OCBモード液晶表示装置のように、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸が平行または垂直ではない配置(例えば45度)となる場合には効果を期待できる場合があるが、VAモード液晶表示装置のように、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸が主に平行または垂直で配置される場合では効果を期待できない。さらに、斜め方向及び正面方向のレターデーションの差の小さい光学補償フィルムについては、その種類は制限され、製造方法や材料などが制限される。また近年の高コントラスト液晶表示装置には、低散乱性のカラーフィルタが搭載されているので、高コントラスト液晶表示装置の正面コントラストをさらに改善する効果については、期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−139967号公報
【特許文献2】特開2009−93166号公報
【特許文献3】特許第4015840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が、液晶表示装置の正面CRについて種々検討したところ、従来、正面CRには影響しないとされていた、視野角補償用の位相差フィルムの位相差が正面CRに影響することがわかった。特に、高コントラスト(例えば、1500以上)を達成可能な液晶セルにおいて、その影響が顕著になることを見出した。視野角補償用の位相差フィルムを有する液晶表示装置について、正面CRとの関係で、位相差を最適化するという技術的思想については、本発明者が知る限りでは、従来なんら提案されていなかったといえる。
即ち、本発明は、高コントラストを達成している液晶表示装置について、さらに正面コントラストを改善する技術を提案することを課題とする。
また、本発明は、適切な視野角補償を実現しつつ、正面コントラストが顕著に改善された液晶表示装置、及び当該液晶表示装置を製造するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶セル、該液晶セルとフロント側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域、及び該液晶セルとリア側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域を有する液晶表示装置であって、
前記液晶セルが、液晶層と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板及びリア側基板とを有し、前記リア側位相差領域の可視光域波長λnmにおける厚み方向レターデーションRthリア(λ)及び前記フロント側位相差領域の波長λにおける厚み方向レターデーションRthフロント(λ)は、その合計が、液晶層の黒表示時のΔnd(λ)(但し、dは前記液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は前記液晶層の波長λnmにおける屈折率異方性であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdとの積を意味する)を補償可能な範囲であり、
前記フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足するとともに、
前記フロント部材散乱量、及び前記リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)と、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)とが、下記の関係(1)又は(2)を満足する液晶表示装置:
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ);
式(0)〜(2)中、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、各基板及び該基板上に形成された部材全体について、高位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板2を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)、のそれぞれの逆数と、低位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板1を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、それぞれの逆数との差であって、下記式
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
からそれぞれ求められる値である。
【0009】
[2] 式(1)を満足する[1]の液晶表示装置。
[3] 下記関係式(3)をさらに満足する[2]の液晶表示装置;
(3) リア部材散乱量/フロント部材散乱量≧1.4 。
[4] 前記リア側基板が、カラーフィルタ層を有する[2]又は[3]の液晶表示装置。
[5] 前記液晶セルが、前記リア側基板として、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板、及び前記フロント側基板として、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板を有する[2]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[6] 前記リア側位相差領域の波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)が、
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足する[2]〜[5]のいずれかの液晶表示装置。
[7] 前記リア側位相差領域の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足する[2]〜[6]のいずれかの液晶表示装置。
[8] 前記フロント側位相差領域の波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)が、
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足する[2]〜[7]のいずれかの液晶表示装置。
[9] 前記フロント側位相差領域の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足する[2]〜[8]のいずれかの液晶表示装置。
[10] 前記フロント側位相差領域が2枚のフィルムからなり、該2枚のフィルムを液晶セル側からフィルムA及びフィルムBとし、フィルムAが下記式(4)を満足し、フィルムBが下記式(5)且つ(6)を満足し、及びフロント側偏光子の透過軸とフィルムBの遅相軸が直交又は平行であることを特徴とする[2]〜[9]のいずれかの液晶表示装置:
(4)|ReフィルムA(550)|≦100nm
(5)|ReフィルムB(550)|≧50nm
(6)0.05≦Nz≦3;
式(4)中、ReフィルムA(550)は、波長550nmにおけるフィルムAの面内レターデーションを意味し、式(5)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、式(6)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、RthフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの厚み方向レターデーションを意味し、Nz=RthフィルムB(550)/ReフィルムB(550)+0.5である。
[11] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域のRthが、可視光域において、逆波長分散性又は波長によらず同一である[2]〜[10]のいずれかの液晶表示装置。
[12] 前記カラーフィルタ層がRthを有し、該Rthが、可視光域において、逆波長分散性又は波長によらず同一である[2]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
[13] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、セルロースアシレート系フィルムからなる又はセルロースアシレート系フィルムを含むことを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの液晶表示装置。
[14] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、アクリル系ポリマーフィルムからなる又はアクリル系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの液晶表示装置。
[15] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムからなる又は当該アクリル系ポリマーフィルムを含有する[13]の液晶表示装置。
[16] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの液晶表示装置。
[17] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、1枚の二軸性の高分子フィルムからなる又は1枚の二軸性高分子フィルムを含むことを特徴とする[1]〜[16]のいずれかの液晶表示装置。
[18] 前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、1枚の一軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする[1]〜[17]のいずれかの液晶表示装置。
[19] 前記カラーフィルタ層の厚み方向レターデーションRthCF(550)と、リア側位相差領域の厚み方向レターデーションRthリア(550)が、下記式
|RthCF(550)+Rthリア(550)|≦90nm
を満足する[4]又は[5]の液晶表示装置。
[20] VA型液晶表示装置であることを特徴とする[1]〜[19]のいずれかの液晶表示装置。
[21] 独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットを含み、フィールドシーケンシャル駆動方式で駆動される[1]〜[20]のいずれかの液晶表示装置。
[22] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶セル、該液晶セルとフロント側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域、及び該液晶セルとリア側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域を有する液晶表示装置の製造方法であって、
液晶層と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板及びリア側基板とを有し、前記フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足する液晶セルを準備する第1の工程、
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
第1の工程で準備した液晶セルのフロント部材散乱量と、リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)とを比較する第2の工程、
第1の工程で準備した液晶セルの黒表示時のΔnd(λ)(但し、dは前記液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は前記液晶層の可視光域波長λnmにおける屈折率異方性であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdとの積を意味する)の補償に必要な、波長λにおける厚み方向レターデーションRth0(λ)を決定する第3の工程、及び
第2の工程で得られたリア部材散乱量及びフロント部材散乱量の大小関係に基づいて、液晶セルの黒表示時の視野角補償に必要なRth0(λ)を、フロント側位相差領域及び
リア側位相差領域それぞれの波長λにおける厚み方向レターデーション、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)、に割り当てる第4の工程、
を含む液晶表示装置の製造方法:
但し、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、各基板及び該基板上に形成された部材全体について、高位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板2を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)、それぞれの逆数と、低位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板1を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、それぞれの逆数との差であって、下記式
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
からそれぞれ求められる値である。
[23] 第2の工程で、下記関係式(1)及び(2)
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量
のいずれを満足するかを決定し;
第4の工程で、
関係式(1)を満足する場合には、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)の関係で割り当て、及び
関係式(2)を満足する場合には、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ)の関係で割り当てる、
[22]の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高コントラストを達成している液晶表示装置について、さらに正面コントラストを改善する技術を提案することができる。
また、本発明によれば、適切な視野角補償を実現しつつ、正面コントラストが顕著に改善された液晶表示装置、及び当該液晶表示装置を製造するための方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re及びRth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルム等のサンプルが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
【0013】
【数1】

注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0014】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0015】
また、本明細書では、Re(450)、Re(550)、Re(630)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(630)等のRe(λ)及びRth(λ)の値は、測定装置により、3以上の異なる波長(例としてλ=479.2、546.3、632.8、745.3nm)についてRe及びRthをそれぞれ測定し、それらの値から算出するものとする。具体的には、それらの測定値をコーシーの式(第3項まで、Re=A+B/λ2+C/λ4)にて近似して、値A、B及びCをそれぞれ求める。以上より波長λにおけるRe、Rthをプロットし直し、そこから各波長λのRe(λ)およびRth(λ)をそれぞれ求めることができる。
【0016】
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
【0017】
本明細書において、位相差フィルムとは、液晶セルと偏光子の間に配置された自己支持性のある膜を意味する。なお、位相差膜、位相差層、位相差フィルムは同義である。位相差領域は液晶セルと偏光子の間に配置された1層または2層以上の位相差フィルムの総称である。
また、本明細書では、「フロント側」とは表示面側を意味し、「リア側」とはバックライト側を意味する。Re(λ)及びRth(λ)に下付きで付記されている「フロント」及び「リア」の用語はそれぞれ、波長λにおける、フロント側位相差領域及びリア側位相差領域のRe(λ)及びRth(λ)であることを意味する。Δnd(λ)は、液晶セルの液晶層の波長λにおける屈折率異方性であるΔn(λ)と、液晶セルの液晶層の厚さ(nm)であるdの積を意味する。
また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味し、「正面コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいい、「視野角コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向から傾斜した斜め方向(例えば、表示面に対して、方位角方向45度、極角方向60度で定義される方向)において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいうものとする。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の液晶表示装置について説明する。
図1は、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。図1に示す液晶表示装置は、フロント側偏光子20、リア側偏光子22、フロント側偏光子20とリア側偏光子22との間に配置される液晶セルLC、液晶セルLCとフロント側偏光子20との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域16、及び液晶セルLCとリア側偏光子22との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域18を有する液晶表示装置である。
液晶セルLCは、液晶層10と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板12及びリア側基板16とを有する。フロント側位相差領域16及びリア側位相差領域18は、視野角補償に寄与する位相差を有し、即ち、フロント側位相差領域16の厚み方向レターデーションRthフロント(λ)及びリア側位相差領域18の厚み方向レターデーションRthリア(λ)の合計は、液晶層10の黒表示時のΔnd(λ)を補償可能な範囲になっている。
【0019】
本発明の液晶表示装置では、液晶セルLCの上下に存在するフロント側位相差領域18及びリア側位相差領域16の厚み方向レターデーション、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)、の大小関係が、液晶セルLCのフロント側基板12及びリア側基板14の部材散乱量の大小関係に応じて決定されていることに一つの特徴がある。
【0020】
従来の液晶表示装置では、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)の合計が、液晶セルの黒表示時のレターデーションΔnd(λ)を補償可能な範囲であることを前提に、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)にそれぞれ等しく割り当てるか、又は製造適性等の観点で、Rthリア(λ)を高くし、Rthフロント(λ)を低くして、割り当てられるのが一般的であった。しかし、近年、液晶セルについては、カラーフィルタ層のみを例にとっても、RGB着色層の形成に利用される顔料の粒子径の微細化が進み、液晶セル中で生じる光の多重散乱が顕著に減少され、高コントラスト化が進んでいる。本発明者が鋭意検討した結果、かかる高コントラストの液晶セルでは、液晶セルに入射した際の偏光状態が散乱によって失われず、正面方向のコントラストに影響を与えることがわかった。なお、正面コントラストは黒表示時の光漏れに大きく依存する。黒表示時の輝度が低いほど、正面コントラストは高くなる。液晶セル外に配置される位相差フィルム等の位相差が、正面CRに与える影響については、本発明者が知る限りでは、従来なんら検討されていなかったと言える。
【0021】
一方、液晶セルを構成しているフロント側基板及びリア側基板については、その表面(液晶層側表面)に配置されている部材は互いに等しいわけではなく、強い散乱因子であるアレイ部材及びカラーフィルタ部材等はそれぞれ、いずれか一方の基板表面のみに配置されている。また、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造のように、一方の基板に双方が配置されていて、リア側基板とフロント側基板とで散乱量が顕著に異なる液晶セルも存在する。例えば、液晶セル中に偏光が入射すると、液晶セル中の様々な散乱因子によって、偏光は様々な方向に散乱するが、上記した様に、高い正面CRを達成した液晶セル中では、基板表面(液晶層側表面)に配置されている前記部材での散乱光は、散乱前の偏光状態を維持したまま散乱すると考えられる。フロント側偏光子の吸収軸で吸収される消光点と大きく異なる偏光状態にある偏光がより大きく散乱するほど、正面CRを大きく低下させることになり;一方、当該消光点に近い偏光状態にある偏光が散乱しても、正面CRの低下に与える影響は小さい。よって、フロント側基板及びリア側基板のうち、散乱因子となる部材がその表面に多く配置されている基板による散乱はより大きくなるので、当該基板に到達する際の光の偏光状態が、前記消光点に近ければ、散乱光による正面CRの低下を軽減することができる。リア側基板に到達する際の偏光の偏光状態は、その前に通過したリア側位相差領域のRthリア(λ)によって決定されるし、フロント側基板に到達する際の偏光の偏光状態は、リア側位相差領域のRthリア(λ)と、黒表示時の液晶層のΔnd(λ)によって決定され、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)の合計が、液晶セルの黒表示時のレターデーションΔnd(λ)を補償可能な範囲となっていることを考慮すれば、即ち、フロント側基板に到達する際の偏光の偏光状態は、フロント側位相差領域のRthフロント(λ)によって決定するとも言える。本発明では、液晶セルLCの上下に存在するフロント側位相差領域16及びリア側位相差領域18のそれぞれの厚み方向レターデーション、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)、の大小関係と、液晶セルLCのフロント側基板12及びリア側基板14の部材散乱量の大小関係とが、下記式(1)又は(2)を満足しているので、消光点から大きく異なる偏光状態の光の散乱が抑制されていて、その結果、正面CRが改善されている。そして、この効果は、下記式(0)を満足する、フロント側基板の部材散乱量が低い、即ち、フロント側基板が高いコントラストである液晶セルで顕著に現れる効果である。
【0022】
具体的には、本発明の液晶表示装置は、フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足するとともに、
前記フロント部材散乱量、及び前記リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)と、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)とが、下記の関係(1)又は(2)を満足する。
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ)
上記式(0)〜(2)中、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、各基板及び該基板上に形成された部材全体について、高位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板2を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)、の逆数と、低位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板1を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、の逆数との差であって、下記式
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
からそれぞれ求められる値である。
なお、Δnd(λ)、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)が、上記関係を満足する波長λは、可視光域380nm〜780nmの波長であればよい。一般的には、中心波長である550nm程度で、上記関係を満足しているのが好ましい。
【0023】
ここで、上記測定に用いる高位相差フィルム及び低位相差フィルムは、互いの相対的関係において、前者がRthが高く、後者がRthが低いフィルムである。Reについても、同様に、相対的に前者が高く、後者が低いのが好ましい。実際に液晶表示装置に利用される位相差フィルムと同様の位相差を示すフィルムを用いたほうが、実用上の有意差を反映することができ、その観点では、高位相差フィルムは、Rth(550)が210nmで且つRe(550)が60nm、低位相差フィルムは、Rth(550)が0nmで且つRe(550)が0nmの位相差フィルムを用いて、上記測定を行うのが好ましい。但し、Re及びRthのいずれについても、±10nm程度異なるフィルムを用いて測定を行っても同様な結果が得られるであろう。
【0024】
測定に用いる光源については、特に制限はなく、指向性が高いものでなくてよい。例えば、正面輝度を1とし、斜め方向(例えば、極角45度で且つ方位角0度、45度又は90度の3つの方向)の輝度が0.6程度(例えば0.55〜0.65)の光源を用いることができる。液晶表示装置のバックライトに用いられている一般的な光源であれば、この特性を満足するであろう。
【0025】
上記部材CR(フロント2)及び部材CR(フロント1)は、それぞれ上記高位相差フィルム及び低位相差フィルムをそれぞれ用いて測定されたフロント側基板の部材コントラストであり、並びに部材CR(リア2)及び部材CR(リア1)は、それぞれ上記高位相差フィルム及び低位相差フィルムをそれぞれ用いて測定されたリア側基板の部材コントラストである。この「部材コントラスト」とは、各基板と各基板上に形成される種々の部材のトータルのコントラストをいうものとする。なお、当該部材の例には、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材(TFTアレイ等)、基板上の突起部、共通電極、スリット等、種々の部材が含まれる。
【0026】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、各液晶セルを形成する2枚の基板、すなわち、フロント側基板及びリア側基板を分離する。必要であれば、それぞれの剥離面を、水やエタノール等で洗浄する。
偏光膜の両面に高位相差フィルムを貼合して作製した偏光板2と、偏光膜の両面に低位相差フィルムを貼合した偏光板1をそれぞれ2枚準備する。
液晶表示装置に用いられている一般的な光源上に、偏光膜の両面に偏光板2もしくは偏光板1を配置し、その上に各液晶セルを分解して作製し得た、フロント側基板又はリア側基板を、回転ステージ(例えばSGSP−120YAW、シグマ光機製)等に取り付けて、光源上の偏光板2もしくは偏光板1と所定の距離(例えば2mm)の間隔で平行に配置する。このとき、基板上にあるTFTアレイの配線およびブラックマトリックスの格子パターンが、偏光板2又は1の偏光軸と一致するように配置する。さらにその上に、回転ステージに取り付けた上記と同一の偏光板2又は1を、偏光板間の距離が所定の距離(例えば52mm)になるように配置する。測定器(例えば、BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、偏光板2及び1それぞれを用いて測定した値から、正面コントラストA(白輝度/黒輝度)を算出する。ここで、偏光板を回転させたときに、最も輝度値が低くなるときを黒表示の輝度値とし、さらに偏光板を90度回転させた場合の輝度値を白表示の輝度値とした。
次に、前述の形態において、フロント側基板またはリア側基板を取り外した形態で、偏光板2又は1のみの黒表示および白表示の輝度値を測定し、偏光板2及び1それぞれを用いて測定した値から、正面コントラストBを算出する。
正面コントラストAにおける、偏光板の正面コントラストBの影響を排除するため、次の式で部材コントラスト(CR)を算出する。
部材CR(=1/(1/正面コントラストA−1/正面コントラストB)
【0027】
上記方法で、部材CR(フロント2)、部材CR(フロント1)、部材CR(リア2)及び部材CR(リア1)をそれぞれ求める。この値に基づき、下記式にそれぞれの値を代入し、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量を算出する。
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、フロント基板及びリア基板における偏光の散乱の程度を示し、これらの値が大きいほど、散乱の程度が大きいことを意味する。
【0028】
上記(1)を満足する態様は、リア部材散乱量>フロント部材散乱量であり、且つRthフロント(λ)>Rthリア(λ)である。この態様では、リア側基板に大きな散乱因子であるアレイ基板及び/又はカラーフィルタが配置されている。例えば、COA構造の液晶セルは、リア部材散乱量>フロント部材散乱量を満足するであろう。本態様では、リア側基板部材による散乱が大きいが、リア側基板に到達する際の入射光の偏光状態を支配するリア側位相差領域のRthリア(λ)が小さく、フロント側位相差領域Rthフロント(λ)に、黒表示時の液晶層のΔnd(λ)の補償に寄与するRth(λ)が大きく割り当てられている。その結果、リア側基板部材によって偏光が大きく散乱し、偏光状態を維持していても、その偏光状態は、消光点の偏光状態に近いので、散乱による正面CRの低下を軽減することができる。
【0029】
上記(2)を満足する態様は、リア部材散乱量<フロント部材散乱量であり、且つRthフロント(λ)<Rthリア(λ)である。この態様では、フロント基板に大きな散乱因子であるカラーフィルタ等が配置されているであろう。通常の液晶セルは、カラーフィルタ層がフロント側基板上にあり、それによって散乱量が大きくなっていて、さらにリア側基板に配置されるアレイ基板のアレイが細線化等されていると、リア部材散乱量<フロント部材散乱量を満足するであろう。本態様では、フロント側基板部材による散乱が大きいが、フロント側基板に到達する際の入射光の偏光状態を支配するフロント側位相差領域のRthフロント(λ)が小さく、リア側位相差領域Rthリア(λ)に、黒表示時の液晶層のΔnd(λ)の補償に寄与するRth(λ)が大きく割り当てられている。その結果、フロント側基板部材によって偏光が大きく散乱し、偏光状態を維持していても、その偏光状態は、消光点の偏光状態に近いので、散乱による正面CRの低下を軽減することができる。
【0030】
但し、この効果は、発明者が種々検討した結果、式(0) フロント部材散乱量 ≦1/38000、を満足することではじめて顕著になる。このことは、後述する実施例でも実証されている。現在製品化されている液晶セルで、上記式(0)を満足しているものは存在しない。
式(0)を満足するためには、フロント側基板の部材に対して、高コントラスト化の処理を施す必要があり、例えば、フロント側基板にカラーフィルタ層が配置されているのであれば、例えば、ブラックマトリックスの細線化、カラーフィルタの着色に用いる顔料の微細化等の処理が必要である。
なお、式(0)を満足することは、即ち、フロント基板のコントラストが高いことを意味する、フロント基板のコントラストが高いことは、即ち、液晶セル全体のコントラストを改善することになる。
【0031】
また、本発明の効果は液晶セル内に入射した偏光が内部の各部材で散乱された後も、その偏光状態をほぼ維持すると仮定すると、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によっても説明することができる。一方で、従来は、偏光が散乱されると、その偏光状態を維持するとは考えられていなかったので、液晶セル内の散乱による正面CRの低下を解決している本発明の効果が、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によって説明できることは、予期せぬことであった。
【0032】
本発明の効果は、いずれのモードの液晶表示装置でも得られる。黒表示時の液晶層のΔnd(λ)は、各モードによって異なるので、それに応じて、Rthリア(λ)及びRthフロント(λ)の合計を決定し、リア側基板部材とフロント側基板部材の散乱量に応じて、それぞれRth0(λ)を割り当てれば、本発明の効果を得ることができる。
例えば、VAモード、TNモードの液晶層の黒表示時のΔnd(λ)及びその光学補償に必要とされているRth0(λ)の範囲を、下記の表に示す。但し、以下の表に示す値
は例示であって、これらの例に限定されるものではない。なお以下の表中には、波長λが550nmの例を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
また、本発明の正面コントラスト向上の効果は、バックライトからの出射光の角度プロファイルを調整することによって、更に改善することができる。具体的には、より集光性が強いバックライトを用いると正面コントラストの絶対値が増加するため、本発明で示された正面CR絶対値の増加分も大きくなる。集光性の指標は例えば正面における出射光強度I(0°)に対する極角45度における出射光強度I(45°)の比I(0°)/I(45°)で表され、この値が大きいほど集光性が強いバックライトということになる。集光性が高いバックライトとしては、拡散フィルムと液晶パネルとの間に、光集光機能を備えたプリズムフィルム(プリズム層)を設けることが望ましい。このプリズムフィルムは、導光板の光出射面から出射され、拡散フィルムで拡散された光を、高効率で液晶パネルの有効表示エリアに集光させるものである。一般的な直下型方式のバックライトが搭載された液晶表示装置は、例えば、上部に透明基板や偏光板に挟まれたカラーフィルタ、液晶層からなる液晶パネルと、その下面側にバックライトが設けられている。米国3M社の登録商標である輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)が代表例である。BEFは、フィルム基材上に、断面三角形状の単位プリズムが一方向に周期的に配列されたフィルムであり、プリズムは光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)である。BEFは、"軸外(off−axis)"からの光を集光し、この光を視聴者に向けて"軸上(on−axis)"に方向転換(redirect)または"リサイクル(recycle)"する。BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイに採用する旨が開示されている特許文献としては、特公平1−37801号公報、特開平6−102506号公報、特表平10−506500号公報に例示されるように多数のものが知られている。
【0035】
また、集光性を高めるために、レンズアレイシートを用いることも望ましい。レンズアレイシートは、所定のピッチで凸状に形成された単位レンズが複数個2次元に配列されてなるレンズ面を有する。そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面に、前記レンズの非集光面領域に光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートが好ましい。また、所定のピッチで形成された凸状のシリンドリカルレンズが複数個平行に配列されてなるレンチキュラーレンズ面と、そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面には、前記凸状のシリンドリカルレンズの非集光面領域に長手方向のストライプ状の光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートも好ましい。また、例えば、シリンドリカル状の曲面から構成される単位レンズを面内に一方向に配列したレンチキュラーレンズアレイシート、あるいは円形、矩形、六角形などの底面形状を有しドーム状の曲面から構成される単位レンズが面内に2次元配列されてなるレンズアレイシートなども使用することができる。これらのレンズアレイシートについては、特開平10−241434号、特開2001−201611号、特開2007−256575号、特開2006−106197号、特開2006−208930号、特開2007−213035号、及び特開2007−41172号等の各公報に記載があり、参照することができる。
【0036】
本発明は、バックライトの出射光スペクトル、及びカラーフィルタの透過スペクトルを調整することによって、色再現域を広げたディスプレイの態様においても効果を奏する。具体的には、バックライトには赤色LED、緑色LED及び青色LEDを組み合わせて混色させた白色バックライトを用いることが望ましい。また、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの出射光ピークの半値幅が小さいことが好ましい。LEDの場合には、CCFLに比べて半値波長幅が20nm程度と小さく、またピーク波長をR(赤)が610nm以上、G(緑)が530nm、B(青)が480nm以下とすることにより、光源自体の色純度を高くすることができる。
【0037】
また、LEDのピーク波長以外において、カラーフィルタの分光透過率をできるだけ小さく抑制することにより、さらに色再現性を向上させ、NTSC比が100%の特性を有することが報告されている。例えば、特開2004−78102号公報に記載がある。赤色カラーフィルタは、緑色LED及び青色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、緑色カラーフィルタは、青色LED及び赤LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、青カラーフィルタは、赤色LED及び緑色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましい。具体的にはこれら透過率がいずれも、0.1以下であることが望ましく、更に好ましくは0.03以下であり、更に好ましくは0.01以下である。これらのバックライトとカラーフィルタとの関係については、例えば特開2009−192661号公報に記載があり、参照することができる。
【0038】
また、バックライトにレーザー光源を用いることも色再現域を広げるためには好ましい。赤、緑及び青色のレーザー光源のピーク波長が、それぞれ430〜480nm、520〜550nm、及び620〜660nmであることが好ましい。レーザー光源のバックライトについては、特開2009−14892号公報に記載があり、参照することができる。
【0039】
以下では、上記式(1)を満足する態様について詳細に説明する。
式(1)を満足する態様では、リア部材散乱量>フロント部材散乱量であり、好ましくは、リア部材散乱量/フロント部材散乱量が、1.4以上であり、より好ましくは、1.6以上であり、さらに好ましくは1.8以上である。現在主流の、フロント側にカラーフィルタを有する態様では、リア部材散乱量/フロント部材散乱量は、0.2〜1.3程度である。効果の観点では、上限値について特に制限はない。この特性を満足する液晶セルの一例は、COA構造の液晶セルである。一般的なCOA構造の液晶セルでは、リア部材散乱量/フロント部材散乱量は、2.0〜50程度となるであろう。「COA」とは、カラーフィルタ・オン・アレイの略であり、アクティブマトリクス基板上にカラーフィルタを形成した構造をCOA構造と言う。なお、本明細書内のCOA構造の液晶表示装置は、ブラックマトリクスを有していてもよく、その位置はフロント側基板上であっても、リア側基板上であってもよいが、高い正面CRを得るためには、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。また、ブラックマトリックスはTFTアレイの遮光層で代用することも可能である。いずれの場合であっても本特許で示された正面コントラスト向上の効果が得られる。COA構造は、当初は、通常のTFT基板にカラーフィルムを形成するだけのものであったが、近年では、表示特性改良のため、画素電極をカラーフィルム上側に形成し、コンタクトホールとよばれる小穴を通じて、画素電極とTFTとを接続する構造が一般的となっている。本発明ではいずれの構造であってもよい。COA構造では、カラーフィルタ層の厚みは、従来型のカラーフィルム層(1〜2μm程度)より厚く、2〜4μm程度が一般的である。これは画素電極の端部と配線の間にできる寄生容量を抑制するためである。本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタ層も2〜4μm程度の厚みが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、COA構造の液晶セルの製造では、カラーフィルタ層上の画素電極をパターニングする必要があり、エッチング液や剥離液への耐性が要求される。この目的で、膜厚を厚めに調整したカラーフィルタ材料(着色感光性組成物)を用いるが、通常のカラーフィルタ材料で形成したカラーフィルタ層+オーバーコート層という2層構成をとることもある。本発明では、いずれの構成であってもよい。
なお、COA構造については、特開2005−99499号公報、特開2005−258004号公報、及び特開2005−3733号公報の他、特開2007−240544号公報、特開2004−163979号公報等にも記載があり、本発明においては、いずれの構成も採用することができる。
【0040】
また、リア側基板にカラーフィルタ層を有する非COA構造の液晶セルであっても、リア部材散乱量>フロント部材散乱量であり、リア部材散乱量/フロント部材散乱量が1.4以上を達成することができる。一例は、カラーフィルタのコントラストが高い態様である。高コントラストのカラーフィルタの例としては、従来のCFに使用される顔料と比較して、より微小な粒径の顔料を使用したカラーフィルタが挙げられる。顔料を使用した高コントラストのカラーフィルタの作製方法の例としては、以下の2つの方法が挙げられる。
(i)顔料粒子をサンドミルやロールミル、ボールミルといった分散機を用いて機械的により細かく粉砕する方法であって、例えば、特開2009−144126号公報等に詳細な記載があり、参照することができる。
(ii)顔料を溶剤に溶解させた後に再析出させることで微細な顔料粒子を調整する方法であって、例えば、特開2009−134178号公報に詳細な記載がある。
また、顔料以外に、染料を利用して高コントラストのカラーフィルタを作製する方法も提案されている。特開2005−173532号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
これらの公報に記載のカラーフィルタを利用することにより、通常の構成であっても、リア部材散乱量>フロント部材散乱量であり、リア部材散乱量/フロント部材散乱量が1.4以上を満足する液晶セルとなる。
【0041】
正面CRのみならず、黒表示時の正面の色味(正面黒色味)も液晶表示装置の表示特性として重要である。本発明者が検討したところ、本態様では、リア側位相差領域のレターデーション(Re及びRth)が、可視光域において、波長が長波長になる程大きくなるという、いわゆる逆波長分散性であると、正面黒色味の特定色への色付きを軽減できることがわかった。この理由は、前述した液晶表示装置の正面方向への光漏れと同様に考えることができる。即ち、リア側位相差領域のレターデーションの逆波長分散性が強いほど、液晶表示装置の光源(バックライト)から斜め入射した光の楕円偏光性の波長依存性を軽減できる結果、波長毎の光漏れ量の差を小さくでき、正面黒色味の特定色への色付きを軽減することができる。
本態様では、リア側位相差領域をフロント側位相差領域と比較して、低位相差とし、且つ逆波長分散性とすることで、正面CRを改善できるとともに、黒表示時の正面色味付きも軽減することができる。
【0042】
より具体的には、本態様では、リア側位相差領域を低位相差で、且つ逆波長分散性にすると、同様にリア側位相差領域が低位相差で、且つ順分散性である態様と比較して、黒表示時の正面色味付きを軽減できる。後者では、若干青味がかった色味付きが観察されるが、前者では青味付きがほとんどない。黒は、u’v’色度図上では、v’が0.375以上である必要がある。黒表示時の青味付きは、u’v’色度図上では、v’の値の低下を意味する。前者の態様では、v’が0.38以上を達成可能である。
【0043】
本態様では、上記式(1)を満足する限り、リア側位相差領域及びフロント側位相差領域の位相差については特に制限はない。併用する液晶セルのモード及び黒表示時の液晶層のΔnd(λ)に応じて、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)を満足するリア側位相差領域及びフロント側位相差領域のRthを決定することができる。本態様では、例えば、波長λ=550nmで上記関係式を満足するとすれば、Rthフロント(550)及びRthリア(550)の差は、10〜590nmであるのが好ましく、50〜550nmであるのがより好ましく、100〜500nmであるのがさらに好ましい。Rthの差が前記範囲未満であると、効果が不十分の場合があり、一方、上記範囲を超えて差を持たせるためには、フィルムの製造時に種々の条件(添加剤の種類、延伸倍率等)の制約が生じ、製造適性の観点で好ましくない場合がある。
【0044】
本態様では、リア側位相差領域及びフロント側位相差領域のそれぞれRth(550)は、下記式を満足する範囲で決定されるのが好ましい。
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
また、本態様では、リア側位相差領域及びフロント側位相差領域のそれぞれのRe(550)は、下記式を満足する範囲で決定されるのが好ましい。
0nm≦Re(550)≦100nm
【0045】
本態様の一例は、VAモード液晶表示装置の例である。本態様のVAモード液晶表示装置では、リア側位相差領域のRthは、下記式(I)を満足していると、正面CRの低下に対する顕著な軽減効果が得られる。
(I): |Rth(550)|≦90nm
リア側位相差領域は、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。単層構造である態様では、当該層が、式(I)を満足するのが好ましく、2層以上の積層体の態様では、積層体が全体として前記式(I)を満足するのが好ましい。
【0046】
フロント側位相差領域も、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。フロント側位相差領域のRthフロント(λ)は、リア側位相差領域のRthリア(λ)とともに、黒表示時の液晶層のΔnd(λ)を補償する値となっている。VAモード液晶セルでは、上記表に示す通り、Δnd(550)は、250nm〜370nmであるが、一般的には、280〜350nm程度である。当該Δnd(λ)を補償するのに適するフロント側位相差領域とリア側位相差領域の組み合わせについては、種々の公報に記載があり、例えば、特許3282986号、第3666666号及び第3556159号等に記載があり、参照することができる。この観点では、フロント側位相差領域は、下記式(III)及び(IV)
(III): 30nm≦Re(550)≦90nm
(IV): 150nm≦Rth(550)≦300nm
を満足するのが好ましい。上記特性を満足するために、フロント側位相差領域は、例えば、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムからなっていてもよいし、1枚もしくは2枚以上の二軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。さらに、フロント側位相差領域22は、1枚もしくは2枚以上の一軸性の高分子フィルムを含んでいてもよい。
【0047】
なお、VA型液晶セルのΔnd(550)は一般的に280〜350nm程度であるが、これは白表示時の透過率をなるべく高くするためである。一方で、Δnd(550)が280nm以下の場合、Δnd(550)の低下に伴い白輝度がわずかに低下するものの、セルの厚みdが小さくなるため、高速応答性に優れる液晶表示装置となる。リア側位相差領域が低レターデーションであれば、正面方向への光漏れが少なくなる結果、高い正面CRが得られるという本態様の特徴は、いずれのΔnd(550)の液晶表示装置においても効果がある。
【0048】
本態様の一例では、前記リア側位相差領域(図1中の18)が、下記式(II)
(II): |Re(550)|≦20nm
を満足する。Reが高い位相差フィルムをリア側に配置しても、Rthが前記式(I)を満足する限り、本態様の効果を得ることができる。一方、Reがある程度ある位相差フィルムをリア側に配置する場合は、リア側偏光子の吸収軸との関係等、他の部材の光学的軸との関係で軸合わせを厳密に行う必要が生じるであろう。前記リア側位相差領域が全体として、Reが低く、前記式(II)を満足していると、リア側位相差領域として利用する1枚又は2枚以上の位相差フィルムを液晶表示装置に組み込む際、軸合わせ等が容易となるので好ましい。
【0049】
さらに、本態様の他の効果として、「サークルムラ」の軽減が挙げられる。「サークルムラ」とは、液晶パネルを高温・高湿の雰囲気下に曝した後、黒表示状態にすると、パネルに環状の光漏れが発生する現象をいう。詳細は、特開2007−187841号公報に記載がある。この原因は、高温・高湿の雰囲気下に曝されることによって、バックライト側の液晶セル基板(即ち図1中ではリア側基板14)に反りが発生することが一因である。本態様では、リア側位相差領域のレターデーションが小さいので、基板に反り等が生じてもレターデーションへの影響が小さい。さらに、COA構造の液晶セルでは、リア側基板にアレイ部材の他、カラーフィルタ層も配置されているので、熱がかかっても反りが生じ難く、その結果、サークルムラもさらに軽減することができる。
【0050】
本態様の一例は、前記リア側位相差領域(図1中の18)が、式(Ia)
(Ia): |Rth(550)|≦20nm
を満足するVA型液晶表示装置である。上記した通り、COA構造を採用することで、サークルムラをある程度軽減することができる。式(Ia)を満足すると、サークルムラをより軽減することができる。
また、サークルムラの観点からは、リア側位相差領域(図1中の18)に配置される位相差フィルムの厚みは、薄いほうが好ましくは、具体的には、その厚みは2〜100μm程度が好ましく、2〜60μm程度がより好ましく、2〜40μm程度がさらに好ましい。
【0051】
なお、液晶セル内の部材、例えば、カラーフィルタ層にも厚み方向のレターデーションが発現している場合があるので、リア側基板がカラーフィルタ層を有する場合には、該カラーフィルタ層の厚み方向レターデーションRthCF(550)も、リア側位相差領域のRthリア(550)を決定する際に考慮するのが好ましい。即ち、上記式(I)については、RthCF(550)も考慮して、下記(I’)
(I’) |RthCF(550)+Rthリア(550)|≦90nm
を満足するのがより好ましく、上記式(Ia)についても、RthCFも考慮して、下記(I’a)
(I’a): |RthCF(550)+Rthリア(550)|≦20nm
を満足するのがより好ましい。
なお、カラーフィルタ層のRthCF(550)は、バインダの配向又は顔料の分子パッキングによって発現すると推測される。
【0052】
前述のように、VA型液晶セルのΔnd(550)が280〜350nm程度であれば、白表示時の透過率も高くできる。リア側位相差領域が前記式(Ia)を満足する本態様において、視野角CRをも改善するためには、フロント側位相差領域は、下記式(IIIa)及び(IVa)
(IIIa):30nm≦Re(550)≦90nm
(IVa):180nm≦Rth(550)≦300nm
を満足することが好ましく、VA型液晶セルのΔnd(550)が280〜350nm程度の場合は、下記式(IIIa-1)及び(IVa-1)
(IIIa-1):50nm≦Re(550)≦75nm
(IVa-1):200nm≦Rth(550)≦300nm
を満足することがより好ましく、下記式(IIIa-2)及び(Iva-2)
(IIIa-2):50nm≦Re(550)≦75nm
(Iva-2):220nm≦Rth(550)≦270nm
を満足することがさらに好ましい。
【0053】
位相差フィルムの製造適性を考慮すると、Rth(550)≦230nmの位相差フィルムを利用する構成が実用上好ましい場合がある。一般的に、高位相差の位相差フィルムを得るためには、延伸倍率の高い延伸処理を行ったりする必要がある。しかしながら、延伸倍率が高くなるとフィルムの切断が起こり易くなるためである。
この観点から、リア側位相差領域が前記式(Ia)を満足する本態様において、視野角CRをも改善するためには、フロント側位相差領域は、下記式(IIIa)及び(IVa)
(IIIa):30nm≦Re(550)≦90nm
(IVa):180nm≦Rth(550)≦300nm
を満足することが好ましく、Δnd(550)が280nm以下のVA型液晶セルの場合は、下記式(IIIa-3)及び(Iva-3)
(IIIa-3):50nm≦Re(550)≦80nm
(Iva-3):180nm≦Rth(550)≦280nm
を満足することがより好ましく、下記式(IIIa-4)及び(Iva-4)
(IIIa-4):50nm≦Re(550)≦80nm
(Iva-4):180nm≦Rth(550)≦230nm
を満足することがさらに好ましい。
【0054】
本態様の他の例は、前記リア側位相差領域(図1中の18)が、下記式(Ib)
(Ib): 20nm<|Rth(550)|≦90nm
を満足するVA型液晶表示装置である。
前記リア側位相差領域が、式(Ib)を満足する本態様では、視野角CRを改善するために必要な位相差がある程度、前記リア側位相差領域によって分担されているので、フロント側位相差領域に、過度に高い位相差を示す位相差フィルムを利用することなく、視野角CRの改善を達成できる。前記リア側位相差領域が、式(Ib)を満足する本態様では、前記本態様の効果が得られるとともに、良好な製造適性で視野角CRの改善をも達成できるという利点がある。
【0055】
リア側位相差領域が前記式(Ib)を満足する本態様において、視野角CRをも改善するためには、フロント側位相差領域は、下記式(IIIb)及び(IVb)
(IIIb):30nm≦Re(550)≦90nm
(IVb):150nm≦Rth(550)≦270nm
を満足することが好ましく、VA型液晶セルのΔnd(550)が280〜350nm程度の場合は、下記式(IIIb-1)及び(IVb-1)
(IIIb-1):50nm≦Re(550)≦80nm
(IVb-1):170nm≦Rth(550)≦270nm
を満足することがより好ましく、下記式(IIIb-2)及び(IVb-2)
(IIIb-2):50nm≦Re(550)≦80nm
(IVb-2):170nm≦Rth(550)≦230nm
を満足することがさらに好ましい。
また、VA型液晶セルのΔnd(550)が280nm以下の場合は、下記式(IIIb-3)及び(IVb-3)
(IIIb-3):60nm≦Re(550)≦90nm
(IVb-3):150nm≦Rth(550)≦250nm
を満足することがより好ましく、下記式(IIIb-4)及び(IVb-4)
(IIIb-4):60nm≦Re(550)≦90nm
(IVb-4):150nm≦Rth(550)≦230nm
を満足することがさらに好ましい。
【0056】
再び図1において、リア側位相差領域18及びフロント側位相差領域16の全部又は一部は、それぞれリア側偏光子22及びフロント側偏光子20の保護フィルムとしても機能していてもよい。また、図1中では省略したが、リア側偏光子22は、そのバックライト24側の表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよく、同様に、フロント側偏光子20は、その表示面側表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよい。
【0057】
ところで、片側に大きな位相差を分担させて光学補償する方式の場合、本態様のように、フロント側に大きな位相差のフィルムを配置した方が、偏光板としての得率が向上すると考えられる。VA型液晶表示装置の場合を例に、その理由を説明する。
大きな位相差のフィルムは、高倍率で延伸する工程が必要であるため、フィルムに多くの添加剤を加えなくとも製造可能な安価フィルムいわゆるプレーンTAC(Reが0〜10nm、Rthが30〜80nmであるトリアセチルセルロースフィルムを意味する)等や、小さな位相差のフィルムに比べて広幅化が困難である。通常の液晶表示装置には、横長の液晶セルが使用され、フロント側偏光子の吸収軸は水平方向(左右方向)に、リア側偏光子の吸収軸は鉛直方向(上下方向)に配置されるのが一般的である。さらに、工業的生産では、偏光子と位相差フィルムとをロール トゥ ロールで貼合するが一般的である。この製法で作製した偏光板を液晶セルに貼合することを考えると、フロント側に大きな位相差のフィルムを配置した方が、偏光板の幅方向を高い効率で使用することができ、即ち、得率が高くなる。本発明のように、リア側に位相差の小さな位相差のフィルムを配置する場合は、かかるフィルムは、広幅フィルムとしての作製が容易であり、広幅偏光子と組み合わせることで、さらに得率を高くできる。その結果、廃棄する偏光板の量を少なくすることができる。
【0058】
ここで、具体的な数字で説明する。一般的には、位相差フィルムの幅は、概ね、1100mm、1300mm、1500mm、2000mm、2500mmであり、フィルムの厚さは、概ね25μm、40μm、80μmである。フィルムを巻いたロールの長さは、概ね2500m、4000mである。一方、VA型液晶表示装置の画面サイズは、仮にテレビ用途だと、画面サイズ20インチ、32インチ、40インチ、42インチ、52インチ、68インチなどである。一例として現在出荷が多い42インチを考えると、42インチ(標準4:3)では、画面幅が853mm(42インチワイド16:9は930mm)、画面高さが640mm(42インチワイドは523mm)である。従来一般的であったリア側に、大きな位相差のフィルムを配置する方式では、例えば、1300mm、1500mm幅の位相差フィルムでは、幅方向に一つの画面用の位相差フィルムしか採れない。本態様では、フロント側に位相差の大きなフィルムを配置するので、例えば、1300mm、1500mm幅の位相差フィルムであっても、画面高さ分を位相差フィルムの幅方向に採れればよく、よって、幅方向に二つの画面用の位相差フィルムを採ることができ、生産性が2倍近くになる。テレビのサイズは年々大型化するが、例えば、65インチ(標準)は画面幅が991mm、画面高さが1321mmであるので、従来一般的であったリア側配置では、広幅化した2000mmフィルムであっても幅方向に一つの画面用の位相差フィルムしか採れないが、本態様のように、フロント側配置では、幅方向に二つの画面用の位相差フィルムが採れる。更に68インチ(ワイド)は画面幅が1505mm、画面高さが846mmであるので、同様に2倍近い生産性が期待できる。
【0059】
また、本発明の液晶表示装置は、フィールドシーケンシャル駆動方式により表示を行う態様であってもよい。フィールドシーケンシャル駆動方式ではカラーフィルタ層はなくてもよい。フィールドシーケンシャル駆動方式については、特開2009−42446号公報、特開2007−322988号公報、及び特許第3996178号公報等に詳細な記載があり、参照することができる。フィールドシーケンシャル駆動では、独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットが利用される。光源としてLEDを備えたバックライトユニットが好ましく、例えば、赤、緑、青の3色を発光するLED素子を光源として備えるバックライトユニットが好ましく利用される。
【0060】
本態様の一例である、VAモード液晶表示装置の場合、VA型液晶表示装置のモードについてはいずれであってもよく、具体的にはMVA(Multi-domain Vertical Alignment)型、PVA(Patterned
Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。なお、光配向型やPSAであれば高い正面コントラストが得られる。本発明で示された効果は、高いコントラストを示すパネルに適用することによって、更に効果を増す。
【0061】
以下、本発明の液晶表示装置に用いられる種々の部材について、詳細に説明する。
1.リア側位相差領域及びフロント側位相差領域
本発明では、リア側偏光子と液晶セルとの間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「リア側位相差領域」という。リア側位相差領域のRth(550)は、下記式
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足するのが好ましく、及び/又はリア側位相差領域のRe(550)は、下記式、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足するのが好ましい。
上記式(1)を満足する態様では、リア側位相差領域は全体で、上記式(I)を満足するのが好ましく、上記式(II)をさらに満足するのが好ましい。
一例では、前記リア側位相差領域は、上記式(Ia)を満足し、より好ましくは、
0nm≦Re(550)≦20nm、且つ|Rth(550)|≦20nm
を満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(550)≦10nm、且つ|Rth(550)|≦10nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(550)≦5nm、且つ|Rth(550)|≦5nm
を満足する。
他の例では、前記リア側位相差領域は、上記式(Ib)を満足し、より好ましくは、
0nm≦Re(550)≦20nm、且つ20nm<|Rth(550)|≦90nmを満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(550)≦10nm、且つ30nm≦|Rth(550)|≦90nmを満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(550)≦10nm、且つ40nm≦|Rth(550)|≦80nmを満足する。
【0062】
また、本発明では、フロント側偏光子と液晶セルとの間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「フロント側位相差領域」という。フロント側位相差領域のRth(550)は、下記式
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足するのが好ましく、及び/又はフロント側位相差領域のRe(550)は、下記式、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足するのが好ましい。
上記式(1)を満足する態様では、フロント側位相差領域が、上記式(III)及び(IV)
を満足するのが好ましく、前記リア側位相差領域が、上記式(Ia)を満足する態様では、フロント側位相差領域が、前記式(IIIa)及び(IVa)を満足するのが好ましい。
さらに、VA型液晶セルのΔnd(550)が280〜350nm程度の場合は、前記式(IIIa-1)及び(Iva-2)を満足するのがより好ましく、前記式(IIIa-2)及び(Iva-2)を満足するのがさらに好ましい。VA型液晶セルのΔnd(550)が280nm以下の場合は、前記式(IIIa-3)及び(Iva-3)を満足するのがより好ましく、前記式(IIIa-4)及び(Iva-4)を満足するのがさらに好ましい。また、前記リア側位相差領域が、上記式(Ib)を満足する態様では、フロント側位相差領域は、前記式(IIIb)及び(IVb)を満足するのが好ましく、
VA型液晶セルのΔnd(550)が280〜350nm程度の場合は、前記式(IIIb-1)及び(IVb-1)を満足するのがより好ましく、前記式(IIIb-2)及び(IVb-2)を満足するのがさらに好ましい。VA型液晶セルのΔnd(550)が280nm以下の場合は、前記式(IIIb-3)及び(IVb-3)を満足するのがより好ましく、前記式(IIIb-4)及び(IVb-4)を満足するのがさらに好ましい。但し、VA型液晶セルの態様に限定されないことは、上記した通りである。
【0063】
前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域を構成する各層の材料については特に制限はない。式(I)及び(II)を満足する位相差領域、又は式(III)及び(IV)を満足する位相差領域は、1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することができる。低コスト化の観点から、前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域は、どちらかを1枚のフィルムで構成することが好ましく、どちらも1枚のフィルムで構成することがより好ましい。
【0064】
また、フロント側位相差領域の他の好ましい態様は、前記フロント側位相差領域が2枚のフィルムからなり、該2枚のフィルムを液晶セル側からフィルムA及びフィルムBとし、フィルムAが下記式(4)を満足し、フィルムBが下記式(5)且つ(6)を満足する態様である。本態様は、視野角補償効果に優れている。本態様では、前記フィルムBと前記フロント側偏光子の透過軸とを、直交又は平行にして配置する。なお、ここで、直交又は平行については、本発明の属する技術分野において許容される誤差を含むものとし、具体的には、±3°の誤差は許容される。
(4)|ReフィルムA(550)|≦100nm(より好ましくは|ReフィルムA(550)|≦60nm)
(5)|ReフィルムB(550)|≧50nm(より好ましくは|ReフィルムB(550)|≧100nm)
(6)0.05≦Nz≦3(より好ましくは0.3≦Nz≦1.5)
式(4)中、ReフィルムA(550)は、波長550nmにおけるフィルムAの面内レターデーションを意味し、式(5)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、式(6)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、RthフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの厚み方向レターデーションを意味し、Nz=RthフィルムB(550)/ReフィルムB(550)+0.5である。
【0065】
なお、式(4)〜(6)中のRe(550)は、2枚のフィルムA及びBの遅相軸とフロント側偏光子の透過軸の関係を表記するため、フロント側偏光子の透過軸方向を正として、フィルムA及びBのRe(550)の正負を決定するものとする。
【0066】
上記いずれの態様においても、前記リア側及びフロント側位相差領域の面内レターデーションReの波長分散は、可視光域において、波長が長波長になる程大きくなるという、いわゆる逆分散性を示すことが好ましい。即ち、Re(450)<Re(550)<Re(630)を満足するのが好ましい。その理由は、位相差領域のReが逆波長分散性であると、可視光域の中心波長550nm程度で、光学特性を最適化すれば、可視光全域にわたって、最適化される傾向がある。
なお、リア側位相差領域が逆波長分散性であることによる効果は、上記した通り、正面黒味の改善効果(黒表示時の正面青味付きの軽減効果)であり、一方、フロント側位相差領域が逆波長分散性であることによる効果は、視野角CR改善や、視野角色味付きの改善効果(黒表示時の斜め方向の色味付きの軽減効果)といった視野角特性の改善効果である。
【0067】
より高い正面CRを得るためには、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、位相差フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。位相差フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
【0068】
前記リア側及びフロント側位相差領域を構成する材料について特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し、上記特性を満足する組合せで、リア側及びフロント側位相差領域の作製に利用することができる。
【0069】
単層でもしくは複数層全体として、上記式(I)及び(II)を満足する位相差フィルム、又は上記式(III)及び(IV)を満足する位相差フィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、アクリル系ポリマーフィルム、及び環状オレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。
セルロースアシレート系フィルム:
本明細書では、「セルロースアシレート系フィルム」とは、セルロースアシレートを主成分(全成分の50質量%以上)として含有するフィルムをいう。当該フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子を、アシル基に置換したものである。前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明において使用されるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸および/または炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
【0070】
前記セルロースアシレートの置換度については特に限定されないが、セルロースのアシル置換度が2.30〜3.00であることが望ましい。なお、前記セルロースアシレート系フィルムの逆分散性は、置換度やレターデーション発現剤等で調整することができ、特開2009-63983等に詳細な記載がある。
前記セルロースアシレートは、セルロースアセテートであることが好ましいが、アセチル基に代えて、又はアセチル基とともに、アセチル基以外のアシル基で置換されていてもよい。中でも、アセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、及びアセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも二種のアシル基を有するセルロースアシレートがより好ましい。さらに、アセチル基と、プロピオニル及び/又はブチリル基とを有するセルロースアシレートが好ましく、アセチル基の置換度が1.0〜2.97で、プロピオニル及び/又はブチリル基の置換度が0.2〜2.5のセルロースアシレートがより好ましい。
【0071】
また、前記セルロースアシレートは、200〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、250〜550の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0072】
また、前記式(Ia)を満足するフィルムの作製に利用可能なセルロースアシレートの例には、特開2006−184640号公報の[0019]〜[0025]に詳細な記載があるセルロースアシレートが含まれる。
【0073】
前記セルロースアシレート系フィルムは、溶液キャスト法により製造することが好ましい。この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。上記添加剤を使用する場合は、添加剤はドープ調製のいずれのタイミングで添加してもよい。
【0074】
フロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムの作製には、レターデーション発現剤を添加剤として利用することが好ましく、リア側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムの作製には、レターデーション発現剤を使用してもよい。使用可能なレターデーション発現剤としては、円盤状化合物または棒状、正の複屈折性化合物からなるものを挙げることができる。前記円盤状化合物または棒状としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。前記棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。前記円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
前記円盤状化合物はRthレターデーション発現性において前記棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0075】
前記レターデーション発現剤の例には、以下の(1)〜(3)の化合物が含まれる。
(1)円盤状化合物
前記円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。本発明に用いることができる前記円盤状化合物としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0038]〜[0046]に記載される化合物を挙げることができる。
【0076】
前記円盤状化合物の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
【0077】
【化1】

【0078】
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素
環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル
基、アリール基又は複素環基である。
【0079】
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0080】
【化2】

【0081】
【化3】

【0082】
【化4】

【0083】
【化5】

【0084】
【化6】

【0085】
【化7】

【0086】
【化8】

【0087】
【化9】

【0088】
【化10】

【0089】
【化11】

【0090】
【化12】

【0091】
【化13】

【0092】
【化14】

【0093】
(2)棒状化合物
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。本発明に用いることができる前記棒状化合物としては、例えば、特開2007−268898号公報の[0053]〜[0095]に記載される化合物を挙げることができる。
【0094】
(3)正の複屈折性化合物
正の複屈折性化合物とは、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなるポリマーをいう。
このような正の複屈折性化合物としては、特に制限ないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等の固有複屈折値が正のポリマーを挙げることができ、ポリエーテルケトンおよびポリエステル系ポリマー等が好ましく、ポリエステル系ポリマーがより好ましい。
【0095】
前記ポリエステル系ポリマーは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
【0096】
好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0097】
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
【0098】
前述の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。
【0099】
前記正の複屈折性化合物に利用されるジオールまたは芳香族環含有ジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
【0100】
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0101】
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
【0102】
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics)レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
【0103】
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
【0104】
前記正の複屈折性化合物は、末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記正の複屈折性化合物の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
【0105】
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
【0106】
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
【0107】
前記正の複屈折性化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤
その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下に、前記正の複屈折性化合物の具体例を記すが、本発明で用いることができる正の複屈折性化合物はこれらに限定されるものではない。
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表2および表3中、PAはフタル酸を、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を、2,8−NPAは2,8−ナフタレンジカルボン酸を、1,5−NPAは1,5−ナフタレンジカルボン酸を、1,4−NPAは1,4−ナフタレンジカルボン酸を、1,8−NPAは1,8−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ示している。
【0111】
このような前記正の複屈折性化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、4〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
【0112】
前記リア側及びフロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、前記レターデーション発現剤とともに、又はそれに代えて、その他の添加剤を添加していてもよい。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、可塑剤、波長分散調整剤、微粒子、光学特性調整剤などをあげることができ、いずれも公知の添加剤を用いることができる。
【0113】
前記リア側及びフロント側位相差領域用のセルロースアシレート系フィルムには、得られるフィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。本発明に用いることができる前記可塑剤としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0067]に記載される化合物を挙げることができる。
【0114】
前記式(Ia)を満足するセルロースアシレート系フィルムの作製には、特開2006−184640号公報の[0026]〜[0218]に詳細な記載がある種々の添加剤を利用することもできる。また添加量の好ましい範囲についても、当該欄に記載されている好ましい範囲と同様である。
【0115】
アクリル系ポリマーフィルム:
アクリル系ポリマーフィルムは、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種から誘導される繰り返し単位を有するアクリル系ポリマーを主成分とするフィルムである。当該アクリル系ポリマーフィルムの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位とともに、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーである。このアクリル系ポリマーについては、一例として、特開2008−231234号公報や特開2008−9378号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0116】
なお該アクリル系ポリマーフィルムには、アクリル系重合体以外の重合体として、セルロース系重合体を加えると、アクリル系とセルロース系の物性が相補的に作用して、所望の特性の材料となるので好ましい。セルロース系重合体の添加量は、5〜40質量%(重合体全体に対する割合)程度が好ましい。例えばアクリル系ポリマーフィルムは、透湿度が低いため、偏光板加工後の残留水分が抜けにくいが、セルロース系重合体を加えることで、適度な透湿度を与えることができる。具体的な例として、セルロースアシレート(表4記載のCTA)を10質量%加えたフィルム、及びセルロースアシレートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製))を30質量%加えたフィルムが挙げられる。
【0117】
環状オレフィン系ポリマーフィルム:
環状オレフィン系ポリマーフィルムの原料及びその製造方法、並びに該原料を用いたフィルムの製造方法については、特開2006−293342号公報の[0098]〜[0193]に詳細な記載があり、本発明において参照することができる。リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムとして利用可能な環状オレフィン系ポリマーフィルムの例には、ノルボルネン系ポリマーフィルムが含まれ、市販のポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)などを用いることができる。
【0118】
リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして用いられる種々のポリマーフィルムは、種々の方法で製造することができる。例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好ましい。また、リア側及びフロント側位相差領域用の位相差フィルムとして利用される種々のポリマーフィルムは、成形された後、延伸処理を経て製造されたフィルムであってもよい。フィルムの延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。同時あるいは逐次2軸延伸処理を行うのが好ましい。大きな光学異方性を達成するためにはフィルムを高い延伸倍率で延伸することが必要である。例えば、フィルムの幅方向、及びフィルムの縦方向(流れ方向)に延伸することが好ましい。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
【0119】
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層は、液晶組成物を所望の配向状態とした後、その配向状態を固定して形成された層であってもよいし、又は当該層とともに、当該層を支持するポリマーフィルムを有する積層体であってもよい。後者の態様では、当該ポリマーフィルムを偏光子の保護フィルムとして利用することもできる。フロント側位相差領域を構成する位相差層の作製に利用可能な液晶の例には、棒状液晶、円盤状液晶、コレステリック液晶等、種々の液晶が含まれる。
【0120】
前記溶液キャスト法として、共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法も用いることができる。共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
【0121】
また、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差層の厚みは、薄いほうが好ましいが、コーナームラ抑制のためには、位相差フィルムにかかる応力による位相差フィルムの変形を小さくする必要がある。リア側位相差フィルムの膜厚は20μm以上、200μm以下とすることがコーナームラの抑制および製造適性の観点で好ましい。なお、コーナームラについては特開2009−69720に詳細な記載がある。
【0122】
2. 偏光子
フロント側及びリア側に配置される偏光子については特に制限はない。通常用いられている直線偏光膜を利用することができる。直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。直線偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
【0123】
3. 保護フィルム
フロント側偏光子及びリア側偏光子のそれぞれの両面には、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。但し、液晶セル側に配置される保護フィルムは、それぞれリア側位相差領域及びフロント側位相差領域の一部を構成するものとし、前者については、上記式(I)を満足することが要求される。後者についても、フロント側位相差領域の一部を構成し、態様によっては、視野角CRの改善に寄与する光学特性を単独でまたは他の層とともに示すことが要求される。
【0124】
フロント側偏光子及びリア側偏光子の外側に配置される保護フィルムについては、特に制限はない。種々のポリマーフィルムを使用することができる。上記フロント側位相差領域を構成可能なポリマーフィルムの例と同様である。例えば、セルロースアシレート類(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のフィルム)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー、ポリプロピレン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリスルホンを主成分とするフィルム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。市販のポリマーフィルム(セルロースアシレート類では、「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)、ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)も使用することができる。
【0125】
本発明は、フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶セル、該液晶セルとフロント側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域、及び該液晶セルとリア側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域を有する液晶表示装置の製造方法であって、
液晶層と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板及びリア側基板とを有し、前記フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足する液晶セルを準備する第1の工程、
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
第1の工程で準備した液晶セルのフロント部材散乱量と、リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)とを比較する第2の工程、
第1の工程で準備した液晶セルの黒表示時のΔnd(λ)の補償に必要な、波長λにおける厚み方向レターデーションRth0(λ)を決定する第3の工程、及び
第2の工程で得られたリア部材散乱量及びフロント部材散乱量の大小関係に基づいて、液晶セルの黒表示時の視野角補償に必要なRth0(λ)を、フロント側位相差領域及び
リア側位相差領域それぞれの厚み方向レターデーション、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)に割り当てる第4の工程、
を含む液晶表示装置の製造方法に関する。
フロント部材散乱量及びリア部材散乱量の算出方法については、上記した通りである。また、波長λは、可視光域の波長であればいずれであってもよいが、一般的には、中心波長550nmであるのが好ましい。
【0126】
本発明の方法によれば、適切な視野角補償を達成しつつ、正面CRが改善された液晶表示装置を提供することができる。従来、液晶セル内の散乱に基づいて、視野角補償用の位相差フィルムのレターデーションを決定するという技術的思想は知られて、本発明者が知る限り、全く知られていない。
【0127】
第2の工程では、下記関係式(1)及び(2)
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量
のいずれを満足するかを決定し、その結果に応じて、第4の工程で、
関係式(1)を満足する場合には、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)の関係で割り当て、及び
関係式(2)を満足する場合には、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ)の関係で割り当てる。
具体的には、第4の工程は、第2の工程で決定した結果に基づいて、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)又はRthフロント(λ)<Rthリア(λ)を満足する様に、一枚の位相差フィルムを単独でもしくは複数枚を組合せて、リア側位相差領域またはフロント側位相差領域として、配置する工程である。
リア側位相差領域またはフロント側位相差領域を構成する一枚又は複数枚の位相差フィルムは、市販品から選択してもよいし、また上記方法で製造してもよい。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
1.各フィルムの作製方法
(1)フィルム1の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「Z−TAC」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム1として利用した。
【0129】
(2)フィルム2の作製
特開2007−127893号公報の[0223]〜[0226]の記載に従って、延伸フィルム(保護フィルムA)を作製した。この保護フィルムAの表面に、同公報の[0232]の記載に従って、易接着層コーティング組成物P−2を調製し、当該組成物を、同公報の[0246]に記載の方法に従って、前記延伸フィルムの表面に塗布して、易接着層を形成した。このフィルムをフィルム2として用いた。
【0130】
(3)フィルム3の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−060」((株)オプテス製)の表面に、ソリッドステートコロナ処理機6KVA(ピラー(株)製)によりコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム3として使用した。このフィルムの厚みは、60μmであった。
【0131】
(4)フィルム4の作製
市販のシクロオレフィン系ポリマーフィルム「ARTON FLZR50」(JSR(株)製)の表面に、フィルム11と同様の方法でコロナ放電処理を行った。このフィルムをフィルム4として使用した。このフィルムの厚みは、50μmであった。
【0132】
(5)フィルム5の準備
市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を準備し、フィルム5として利用した。
【0133】
(6)フィルム6の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 19.0質量部
メチレンクロライド 367.1質量部
メタノール 54.8質量部
【0134】
前記レターデーション発現剤(2)の組成を、下記表に示す。なお、下記表中、EGはエチレングリコールを、PGはプロピレングリコールを、BGはブチレングリコールを、TPAはテレフタル酸を、PAはフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸をそれぞれ示している。なお、前記レターデーション発現剤(2)は、非リン酸系エステル系化合物であり、かつ、レターデーション発現剤でもある。前記レターデーション発現剤(2)の末端はアセチル基で封止されている。
【0135】
【表4】

【0136】
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 19.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 422.0質量部
メタノール 63.0質量部
【0137】
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚51μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度140℃で幅方向に8%、テンターを用いて横延伸した。その後フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた後、延伸温度180℃で幅方向に24%、テンターを用いて更に横延伸し、膜厚55μmのフィルム6を作製した。
【0138】
(7)フィルム7の作製
フィルム6の作製において、コア層の膜厚51μmを52μmに、横延伸するときの延伸温度180℃を176℃に代えた以外は、フィルム6と同一の方法で膜厚56μmのセルロースアシレート系フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム7として用いた。
【0139】
(8)フィルム8の作製
フィルム6の作製において、コア層の膜厚51μmを56μmに、横延伸するときの倍率24%を21%に代えた以外は、フィルム6と同一の方法で膜厚60μmのセルロースアシレート系フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム8として用いた。
【0140】
(9)フィルム9の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 17.0質量部
メチレンクロライド 361.8質量部
メタノール 54.1質量部
【0141】
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
【0142】
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚114μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度170℃でテンター搬送した。その後フィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させた後、延伸温度180℃で幅方向に23%、テンターを用いて更に横延伸し、フィルム9を作製した。
【0143】
フィルム9の製造においては、フィルム12の製造時に発生する問題(乾燥工程等における高温処理時の発煙、揮散した油分等の製造機付着による動作の不具合やフィルム付着による面状故障)が発生しなかった。
これは、フィルム9の作製に、レターデーション発現剤として使用したレターデーション発現剤(2)が可塑剤として機能するため、フィルム12の作製に使用したTPPおよびBDPといった従来の低分子可塑剤を使用しなかったためである。
このように、レターデーション発現剤(2)のような前記正の複屈折性化合物を使用することで、前述の問題を解決することができることから、前記正の複屈折性化合物はフィルム製造の観点から好ましいレターデーション発現剤である。
【0144】
(10)フィルム10の作製
セルロースアシレートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製);アセチル置換度0.2、プロピオニル基置換度2.4)を用意した。これに、可塑剤として、1、4−フェニレン−テトラフェニルリン酸エステルを8質量%、劣化防止剤(酸化防止剤)として、IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)を0.5質量%加え、タンブラー型混合機で30分間混合した。得られた混合物を、除湿熱風式乾燥機((株)松井製作所DMZ2)により熱風温度150℃、露点−36℃で乾燥した。次いで、この混合物をテクノベル(株)製二軸押出し機に供給し、押出し機中間部に設けてある添加剤ホッパーの開口部から、マット剤として、アエロジル(AEROSIL)200V(0.016μmのシリカ微粒子、日本アエロジル社製)を押出し量の0.05%となるように連続式フィーダーにより添加し、紫外線吸収剤として、チヌビン(TINUVIN)360(チバスペシャルティケミカルズ社製)を同開口部から押出し量の0.5%となるように添加して、溶融押出した。溶融押出したフィルムの膜厚は180μmだった。
【0145】
さらにこのフィルムを142℃にて、MD方向に1.1倍、TD方向に2.2倍で二軸延伸を行ってフィルムを作製した。このフィルムを、フィルム10として使用した。このフィルムの膜厚は74μmで、あった。
なお、本実施例ではセルロースアシレートプロピオネート(CAP)を原料とするフィルムは、溶融押出法によって製造したものを使用したが、勿論、溶液流延法でも同様の特性のフィルムを作製することができ、も同様の効果が得られることを確認している(但し、ドープ調製時のCAPの溶解性を考慮して、アセチル置換度1.6、プロピオニル置換度0.9のCAPを原料として用いた)。
【0146】
(11)フィルム11の作製
TOSHIBA社製の液晶パネル「32C7000」に搭載されていたノルボルネン系フィルムを剥がし、フィルム2と同様の方法で、フィルム表面に易接着層を形成した。このフィルムをフィルム11として使用した。なお、このフィルムの膜厚は70μmであった。
【0147】
(12)フィルム12の作製
下記表に記載のアシル基の種類、置換度のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。この時、カルボン酸の種類、量を調整することでアシル基の種類、置換度を調整した。またアシル化後の40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。なお、表中、Acとはアセチル基であり、CTAとは、セルローストリアセテート(アシル基がアセテート基のみからなるセルロースエステル誘導体)を意味する。
【0148】
(セルロースアシレート溶液)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記表中のCTA 100.0質量部
トリフェニルホスフェイト(TPP) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェイト(BDP) 3.9質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0149】
(マット剤分散液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製 2.0質量部
メチレンクロライド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0150】
(添加剤溶液)
次に上記方法で調製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、添加剤溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
添加剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
レターデーション発現剤(1) 20.0質量部
メチレンクロライド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
セルロースアシレート溶液 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0151】
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更にセルロースアシレート系フィルム中のレターデーション発現剤(1)の添加量が10質量部となる量の添加剤溶液を混合し、製膜用ドープを調製した。添加剤の添加割合はセルロースアシレート量を100質量部とした時の質量部で示した。
ここで、表中及び上記の添加剤および可塑剤の略称は下記の通りである。
CTA:セルローストリアセテート、
TPP:トリフェニルホスフェイト、
BDP:ビフェニルジフェニルホスフェイト。
【0152】
【化15】

【0153】
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。下記表に記載の残留溶剤量でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、剥ぎ取りからテンターまでの区間で下記表に記載の延伸倍率で縦方向に延伸し、ついでテンターを用いて下記表に記載の延伸倍率で幅方向に延伸し、横延伸直後に、下記表に記載の倍率で幅方向に収縮(緩和)させた後にフィルムをテンターから離脱し、セルロースアシレート系フィルムを製膜した。テンター離脱時のフィルムの残留溶剤量は、下記表に記載のとおりであった。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。下記表に、延伸倍率を示してある。
【0154】
【表5】

【0155】
上記の通り作製したセルロースアシレート系フィルムを、フィルム12として用いた。
【0156】
(13)フィルム13の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(1) 4.0質量部
レターデーション発現剤(2) 10.0質量部
メチレンクロライド 351.5質量部
メタノール 52.5質量部
【0157】
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
【0158】
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を、膜厚82μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層及びスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、クリップに挟み、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、延伸温度180℃で幅方向に18%、テンターを用いて横延伸した。その後にフィルムからクリップを外して130℃で20分間乾燥させ、フィルム13を作製した。
【0159】
(14)フィルム14の作製
<環状ポリオレフィン重合体P−1の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25mol%(対モノマー)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた環状ポリオレフィン重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
【0160】
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーエミションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は79,000、重量平均分子量は205,000であった。得られた重合体をアッベの屈折計で測定した屈折率は1.52であった。
【0161】
(ポリオレフィンドープD−1)
環状ポリオレフィン重合体P−1 150質量部
添加剤:ポリメチルアクリレート(綜研化学製「アクトフローUMM1001」、
重量平均分子量Mw≒1000) 7.5質量部
劣化防止剤:チバスペシャリティケミカルズ製「IRGANOX1010」
0.45質量部
ジクロロメタン 620質量部
【0162】
上記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過し、環状ポリオレフィンドープD−1を調製した。ドープをバンド流延機にて流延した。残留溶剤量が約30質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをテンターにより140℃の熱風を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。これをフィルム14として使用した。なお、このフィルム膜厚は80μmであった。
【0163】
(15)フィルム15の作製
特開2008−95027号公報記載の比較用化合物C-3の合成法において、
中間体2に使用した4-メトキシ桂皮酸クロリドをベンゾイルクロリドに変更した
以外は同様の方法により、セルロースアセテートベンゾエート15Aを合成した。
【0164】
<セルロースアシレート溶液の調製>
下記の原料をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、セルロースアシレート溶液を有する溶液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテートベンゾエート15A 100.0質量部
メチレンクロライド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0165】
上記の調製したセルロースアシレート溶液を速やかにバンド流延機にて流延した。残留溶剤量が約30質量%のフィルムを、テンターにより160℃の熱風を当てて乾燥した。
【0166】
さらにこのフィルムを、温度160℃にて1.5倍で固定端一軸延伸を行ってフィルム15を作製した。なお、このフィルムの膜厚は55μmであった。
【0167】
(16)フィルム16の作製
特開2009-63983号公報記載のフィルム試料201と同様の方法で、膜厚34
μmのフィルムを作製し、フィルム16として用いた。
【0168】
(17)フィルム17の作製
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14−100」((株)オプテス製)を、温度153℃にてMD方向に1.5倍、TD方向に1.5倍で固定端二軸延伸を行った後、表面にコロナ放電処理を行った。このフィルムを、フィルム17として使用した。このフィルムの厚みは、45μmであった。
【0169】
(18)フィルム18の作製
(低置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して各成分を溶解し、低置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.43のセルロースアセテート 100質量部
レターデーション発現剤(2) 18.5質量部
メチレンクロライド 365.5質量部
メタノール 54.6質量部
【0170】
(高置換度層用セルロースアシレート溶液)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、高置換度層用セルロースアシレート溶液を調製した。
置換度2.79のセルロースアセテート 100.0質量部
レターデーション発現剤(2) 11.0質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 0.15質量部
メチレンクロライド 395.0質量部
メタノール 59.0質量部
【0171】
(セルロースアシレート試料の作製)
前記低置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚38μmのコア層になるように、前記高置換度層用セルロースアシレート溶液を膜厚2μmのスキンA層およびスキンB層になるように、それぞれ流延した。得られたフィルムをバンドから剥離し、フィルム全体の質量に対する残留溶媒量が20%の状態の時に、温度200℃で30分間乾燥した後、130℃で20分間乾燥させ、フィルム18を作製した。
【0172】
(19)フィルム19の作製
フィルム6の作製において、コア層の膜厚51μmを59μmに、横延伸するときの倍率24%を21%に代えた以外は、フィルム6と同一の方法で膜厚63μmのセルロースアシレート系フィルムを作製した。このフィルムを、フィルム19として用いた。
【0173】
(20)フィルム20の作製
特開2008-138015号公報記載のフィルム試料225の作製において、延伸倍率を20%に代えた以外は、フィルム試料225と同一の方法で、フィルム20を作製した。
【0174】
(21)フィルム21の作製
特開2007-197508号公報記載のフィルム試料204を延伸倍率30%で延伸し、フィルム21を作製した。
【0175】
(22)フィルム22の作製
特開2008-266559号公報記載のフィルム試料S−5の作製において、延伸倍率を35%に代えた以外は、フィルム試料S−5と同一の方法で、フィルム22を作製した。
【0176】
(23)フィルム23の作製
特開2009-298950号公報記載のフィルム試料SA−3と同様の方法で、フィルム23を作製した。
【0177】
(24)フィルム24の作製
特開2008-138015号公報記載のフィルム試料230の作製において、延伸倍率を20%に代えた以外は、フィルム試料230と同一の方法で、フィルム24を作製した。
【0178】
(25)フィルム25の作製
特開2008-189732号公報記載のフィルム試料009と同様の方法で、フィルム25を作製した。
【0179】
(26)フィルム26の作製
フィルム9の作製において、コア層の膜厚が110μmになるように流延し、延伸温度を175℃、延伸倍率を26%に代えた以外は、フィルム9と同一の方法でセルロースアシレート系フィルムを作製し、このフィルムをフィルム26として用いた。
【0180】
(27)フィルム27の作製
フィルム9の作製において、コア層の膜厚が170μmになるように流延し、延伸温度を165℃に代えた以外は、フィルム9と同一の方法でセルロースアシレート系フィルムを作製し、このフィルムをフィルム27として用いた。
【0181】
(28)フィルム28の作製
特開2008-266559号公報記載のフィルム試料S−32と同様の方法で、フィルム28を作製した。
【0182】
(29)フィルム29の作製
フィルム9の作製において、コア層の膜厚を165μmになるように流延し、延伸温度を160℃、延伸倍率を26%に代えた以外は、フィルム9と同一の方法でセルロースアシレート系フィルムを作製し、このフィルムをフィルム29として用いた。
【0183】
(30)フィルム30の作製
フィルム14の作製において、搬送方向に6%、横方向に12%延伸した以外は、フィルム14と同一の方法でフィルム30を作製した。
【0184】
2.各フィルムの特性
作製したフィルム1〜30の特性を、下記表にまとめた。なお、各フィルムのRe(550)及びRth(550)は、試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、KOBRA21ADH(王子計測機器(株)製)において波長550nmで測定し、フィルム1、5〜10、12、13、15、16及び18〜30については、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。また、それ以外のフィルムの場合は平均屈折率の仮定値として、フィルム2については1.50を、フィルム3、11及び17については1.53を、フィルム4及び14については1.52を用いた。
【0185】
【表6】

【0186】
また、同様の方法により、下記表中のフィルムについて、波長450nm、550nm、630nmにおけるRe及びRthをそれぞれ求めた。
【0187】
【表7】

*1 逆:逆波長分散性、フラット:波長によらず同一、順:順波長分散性
【0188】
3. 偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
上記表に示すフィルムのうちセルロースアシレート類を含むフィルムについては、1.5モル/リットルで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/リットルで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
各フィルム(フィルム1〜18)のいずれか2枚で、偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合せ、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板をそれぞれ作製した。なお、セルロースアシレート系フィルムについてはポリビニル系粘着剤を用い、それ以外のフィルムについてはアクリル系粘着剤を用いて偏光子と貼合した。組合せについては下記表に示す。
なお下記表中、「*1」を付したフィルムは、偏光膜よりさらに表示面側外側に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、「*2」を付したフィルムは、液晶セルと偏光膜との間に配置される偏光板保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味し、及び「*3」を付したフィルムは、偏光膜よりさらにバックライト側外側に配置される偏光保護フィルムとして用いられた位相差フィルムを意味する。下記のいずれの表でも同義である。
なお、フィルム6〜15については、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と平行にして貼り合せた。フィルム1〜5および16〜18については、その面内遅相軸を、偏光子の透過軸と直交にして貼り合せた。また、易接着層を有するフィルムについては、易接着層を偏光子の表面側にして貼り合せた。
また、積層された2枚のフィルムを偏光板保護フィルムとして有する偏光板は、フィルム1〜30のいずれか2枚のフィルムを粘着剤で貼り合せたフィルムと、もう1枚別のフィルムとで、偏光膜を挟んで、粘着剤を用いて貼り合わせて作製した。使用した粘着剤は上記した通りである。組合せ、及び各フィルムの遅相軸と偏光子の透過軸の関係は下記表に示す。
【0189】
4. VA型液晶表示装置の作製及び評価
(1)VA型液晶セル1〜6の準備
本実施例において、TFT上にカラーフィルタを形成する場合は、有機系現像液CD2000(富士フイルムエレクトロマテリアルズ社製)を用いた。
(1)−1 VA型液晶セル1の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成し、アレイ基板を作製した。
着色感光性組成物に特開2009−203462号公報中に記載の実施例14、22及び25に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、並びに特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ基板を作製した。
上記作製したカラーフィルタ基板上に、ITOの透明電極をスパッタリングにより形成し、次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
前記作製したアレイ基板及びカラーフィルタ基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、アレイ基板と貼り合わせ、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が300nmであるものを選別し、液晶セル1として使用した。
液晶セル1の光源には、前記LC−32GH5に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0190】
(1)−2 VA型液晶セル2の準備
SHARP社製の液晶パネル「LC−32DE5」の液晶セルを準備した。この液晶セルは、本発明者が検討した結果、製品の中で最も高い正面コントラスト性能を有するVA型液晶セルである。これを液晶セル2として使用した。
液晶セル2のΔndをAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定したところ、Δnd(550)は300nmであった。
液晶セル2の光源には、前記LC−32GH5に使用されていたバックライトを使用し、TFTアレイが形成された基板側に光源を配置した。
【0191】
(1)−3 VA型液晶セル3の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成し、アレイ基板を作製した。
着色感光性組成物に特開2009−203462号公報中に記載の実施例14、22及び27に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、並びに特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ基板を作製した。
上記作製したカラーフィルタ基板上に、ITOの透明電極をスパッタリングにより形成し、次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
前記作製したアレイ基板及びカラーフィルタ基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、アレイ基板と貼り合わせ、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が300nmであるものを選別し、液晶セル3として使用した。
液晶セル3の光源には、前記LC−32GH5に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0192】
(1)−4 VA型液晶セル4の準備
アレイ基板のTFT素子構造を変更した以外は、液晶セル1と同様の方法で液晶セル6を作製した。
作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が300nmであるものを選別し、液晶セル4として使用した。
液晶セル4の光源には、前記LC−32GH5に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0193】
(1)−5 VA型液晶セル5の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341号公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。
続いて、前記保護膜上に、着色感光性組成物に特開2009−203462号公報中に記載の実施例14、22及び25に記載の通り調製した組成物をそれぞれ用い、並びに特表2008−516262号公報の[0099]〜[0103]中に記載の実施例9aに記載のプロセスに従い、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板を作製した。但し、各画素の着色感光性樹脂組成物における顔料の濃度は半分にし、さらに塗布量を調整し、ブラック画素が4.2μmに、レッド・グリーン・ブルー画素がいずれも3.5μmになるようにした。さらに、カラーフィルタにコンタクトホールを形成した後、上記カラーフィルタ上に、TFT素子と電気的に接続したITO(Indium Tin Oxide)の透明画素電極を形成した。次いで、特開2006−64921号公報の実施例1に従い、このITO膜上の隔壁(ブラックマトリックス)上部に相当する部分にスペーサを形成した。
別途、対向基板として、ITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、COA基板及び対向基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
その後、カラーフィルタのRGB画素群を取り囲むように周囲に設けられたブラックマトリクス外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が300nmであるものを選別し、液晶セル5として使用した。
液晶セル5の光源には、前記LC−32GH5に使用されていたバックライトを使用し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0194】
(1)−6 VA型液晶セル6の準備
ガラス基板上に、特開2009−141341公報中に記載の実施例20に従い、TFT素子を作製し、さらにTFT素子上に保護膜を形成した。続いて、前記保護膜にコンタクトホールを形成した後、上記保護膜上に、TFT素子と電気的に接続したITOの透明電極を形成した。次いで、ITO膜の上に直径16μm、平均高さ3.7μmの透明な柱状スペーサーパターンを形成し、アレイ基板を作製した。
別途、対向基板として、ITOの透明電極を形成したガラス基板を用意し、アレイ基板及び対向基板の透明電極にそれぞれPVAモード用にパターニングを施し、その上に更に垂直ポリイミドよりなる配向膜を設けた。
前記アレイ基板の柱上スペーサの上に、液晶セル5と同様のパターンで紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、PVAモード用液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射した後、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして液晶セルを作製した。
続いて、作製した液晶セルのΔnd(550)をAXOMETRICS社製のAXOSCANと付属のソフトを使用して測定し、Δnd(550)が300nmであるものを選別し、液晶セル6として使用した。
液晶セル6の光源には、BGR3色のLEDが180Hzで交互に発光するように駆動制御されたバックライトユニットを用意し、アレイ基板側に光源を配置した。
【0195】
(2)各液晶セルのリア部材散乱量及びフロント部材散乱量の測定
測定のために、下記の偏光板1及び2を準備した。偏光板1は、上記方法と同様にして、フィルム1とフィルム5で偏光膜を挟んで作製した。偏光板2は、上記方法と同様にして、フィルム5とフィルム12で偏光膜を挟んで作製した。
測定用の光源には、SHARP社製の液晶パネル「LC−32GH5」のバックライトを用いた。なお、「LC−32GH5」のバックライトは、正面輝度を1としたときの極角40度、及び方位角0度、45度、又は90度の3方向における輝度が、いずれも0.55〜0.65であった。
【0196】
上記で作製した各液晶セルを分解して測定用のリア側及びフロント側基板を得た。なお、各基板面に、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材(TFTアレイ等)、基板上の突起部、共通電極、スリット等の部材が形成されている場合は、該部材除去することなく、測定用の部材として用いた。
光源上に、偏光板1又は2のいずれかを配置し、上記の通り準備した各液晶セルのフロント側基板又はリア側基板を、回転ステージ(SGSP−120YAW、シグマ光機製)に取り付けて光源上の偏光板と2mm間隔で平行に配置した。この時、基板上にあるTFTアレイの配線及びブラックマトリックスの格子パターンが、偏光板の偏光軸と一致するように配置した。さらにその上に、回転ステージに取り付けた偏光板(HLC2−2518、サンリッツ社製)を、偏光板間の距離が52mmになるように配置し、測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラストA(白輝度/黒輝度)を算出した。ここで、偏光板を回転させたときに、最も輝度値が低くなるときを黒表示の輝度値とし、さらに偏光板を90度回転させた場合の輝度値を白表示の輝度値とした。
次に、上記の条件で、但し、フロント側基板またはリア側基板を取り外して、偏光板のみの黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラストBを算出した。
正面コントラストAにおける、偏光板の正面コントラストBの影響を排除するため、次の式で部材コントラストを算出した。
部材コントラスト=1/(1/正面コントラストA−1/正面コントラストB)
ここで、偏光板1を用いて測定したときのフロント側及びリア側基板部材のコントラストを、それぞれ部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、並びに、偏光板2を用いて測定したときのフロント側及びリア側基板部材のコントラストを、それぞれ部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)とし、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量をそれぞれ下記の式から算出した。
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
測定結果を下記表に示す。
【0197】
【表8】

【0198】
(3) VA型液晶表示装置の作製
上記作製したいずれかの液晶セルと、上記で作製した偏光板のいずれか2枚とを、下記表に示す通り組合せ、液晶表示装置をそれぞれ作製した。
【0199】
(4)VA型液晶表示装置の評価
作製した各液晶表示装置について、以下の評価を行った。
(4)−1 正面コントラスト比の測定
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、パネル法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出した。
このとき、測定器とパネル間の距離は700mmに設定した。
続いて、正面コントラスト比を、基準形態での正面コントラスト比を基に、次の式で算出した。
正面コントラスト比=実施形態での正面コントラスト/基準形態での正面コントラストなお、基準形態は、フィルム7をフロント側とリア側にそれぞれ1枚ずつ配置した液晶表示装置とした。本実施例で使用した液晶セルのように、Δnd(550)が300nmの場合、フロント側とリア側に同じフィルムを1枚ずつ配置する2枚型補償方式では、位相差フィルムのRe(550)が55nm、Rth(550)が115nm程度であれば、良好な光学補償が可能となり、視野角コントラストは最大となった。よって、この形態を基準形態とした。
各液晶セルの基準形態は、液晶セル1を使用した液晶表示装置では液晶表示装置13とし、液晶セル2を使用した液晶表示装置では液晶表示装置19とし、液晶セル3を使用した液晶表示装置では液晶表示装置23とし、液晶セル4を使用した液晶表示装置では液晶表示装置27とし、液晶セル5を使用した液晶表示装置では液晶表示装置42とし、液晶セル6を使用した液晶表示装置では液晶表示装置49とした。正面コントラストは、液晶表示装置13が4830、液晶表示装置19が4790、液晶表示装置23が4070、液晶表示装置27が6430、液晶表示装置42が3660、液晶表示装置49が5420であった。
【0200】
(4)−2 視野角コントラスト(斜め方向のコントラスト)
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、装置正面からの極角方向60度、及び方位角方向0度、45度、90度の3方向における黒表示および白表示の輝度値を測定し、視野角コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出することで、液晶表示装置の視野角特性を評価した。
○:視野角コントラストがいずれも60以上であり、光漏れが認識できない
△:視野角コントラストの最小値が60未満30以上であり、わずかに光漏れが認識されるが許容できる程度
×:視野角コントラスト最小値が30未満であり、大きな光漏れが認識され許容できない。
下記表中の視野角コントラストの評価結果を示す欄は、上記3方向について、上記基準で評価し、その平均結果を示したものである。なお、「*6」を付した( )内の数値は、極角60度、方位角45度の方向で測定したコントラスト値であり、「*13」を付した( )内の数値は、方位角45度における3方向(極角30度、45度、60度)で測定したコントラストの平均値である。
【0201】
(4)−3 サークルムラ
作製した各液晶表示装置を温度40℃、相対湿度90%の環境下で3日間放置した。処理後、温度36℃、相対湿度30%の環境に移した。
その後、ライトテーブル上に前記パネルを置き、暗室で観察して、以下の基準でサークルムラを評価した。
◎:点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから60時間以内に、光漏れが視認されない
○:光漏れがわずかに視認されるが、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから30時間以内に消失し、その後は光漏れが視認されない
△:光漏れが視認され、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから30時間以内には消失しないが、その後60時間以内に光漏れが消失する
×:光漏れが視認され、点灯させたライトテーブルの上に前記パネルを置いてから60時間では光漏れが消失しない(許容不可)
【0202】
(4)−4 正面黒色味
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、パネル法線方向の黒表示の色味を観察したところ、青い色味付きが目立った。そこで、青味を表すv′の値で正面黒色味を評価した。このとき、測定器とパネル間の距離は700mmに設定した。
○:v′が0.38以上であり、正面青味は視認されない
△:v′が0.375以上0.38未満であり、わずかに正面青味は視認されるが、許容できる程度
×:v′が0.375未満であり、許容できない程度の青色味が認識される
結果を下記表に示す。
【0203】
【表9】

【0204】
【表10】

【0205】
【表11】

【0206】
【表12】

【0207】
【表13】

【0208】
【表14】

【0209】
上記結果から、式(0)を満足するとともに、リア部材散乱量>フロント部材散乱量を満足する液晶セル1、5及び6のいずれかを用いた例(液晶表示装置No.1〜16、及びNo.30〜51、及び54〜62)では、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア(550)がフロント側に配置した位相差フィルムのRthフロント(550)との関係で、Rthリア(550)<Rthフロント(550)であると、正面CRが高くなり、一方、Rthリア(550)>Rthフロント(550)であると、正面CRが低下することが理解できる。この傾向は、視野角CRでも同様であった。
また、式(0)を満足するとともに、リア部材散乱量>フロント部材散乱量を満足する液晶セル1、5及び6のいずれかを用いた例は、式(0)を満足するが、フロント部材散乱量>リア部材散乱量である液晶セル4を用いた例と比較して、正面黒色味が改善されていること、さらに、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア(550)が逆波長分散性を示すと、v′が大きくなることから、正面青味付きが軽減されることがわかる。
【0210】
フロント側位相差領域が2枚のフィルムで構成された液晶表示装置の場合、フロント側位相差領域が式(4)〜(6)を満足する2枚のフィルムA及びBで構成された液晶表示装置No.54〜59は、フロント側位相差領域が2枚のフィルムで構成されているが式(4)〜(6)のいずれかを満足しない液晶表示装置No.60〜62に比べて、視野角CRが優れていた。
【0211】
以下に、本発明の効果をより明確化するために、液晶セル1、5及び6を有する液晶表示装置について、リア側位相差領域及びフロント側位相差領域とを入れ替えた対応する例(Rthリア(550)<Rthフロント(550)である例をA;及びRthリア(550)>Rthフロント(550)である例をB)として、以下の表にまとめる。
【0212】
【表15】

*4:「○」 リア部材散乱量>フロント部材散乱量、「×」 リア部材散乱量<フロント部材散乱量
*5:1/Fは1/フロント部材散乱量であり、「○」は式(0)を満足し、「x」は式(0)を満足していないことを意味する。
【0213】
なお、式(0)を満足するとともに、リア部材散乱量>フロント部材散乱量を満足する液晶セル1及び5をそれぞれ用い、且つRthリア(550)<Rthフロント(550)を満足している液晶表示装置No.52及び53は、正面CRは同様に高いが、Rthリア(550)及びRthフロント(550)の合計が、黒表示時の液晶層のΔnd(550)を補償するのに十分大きな値となっていないため、視野角CRが他の液晶表示装置と比較して劣っていた。
【0214】
一方、式(0)を満足するが、フロント部材散乱量>リア部材散乱量である液晶セル4を用いた例では、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア(550)がフロント側に配置した位相差フィルムのRthフロント(550)との関係で、Rthリア(550)>Rthフロント(550)であると、正面CRが高くなり、一方、Rthリア(550)<Rthフロント(550)であると、正面CRが低下することが理解できる。この傾向は、視野角CRでも同様であった。
以下にこのことをより明確化するために、液晶セル4を有する液晶表示装置について、リア側位相差領域及びフロント側位相差領域とを入れ替えた対応する例(Rthリア<Rthフロントである例をA;及びRthリア>Rthフロントである例をB)として、以下の表にまとめる。
【0215】
【表16】

*4:「○」 リア部材散乱量>フロント部材散乱量、「×」 リア部材散乱量<フロント部材散乱量
*5:1/Fは1/フロント部材散乱量であり、「○」は式(0)を満足し、「x」は式(0)を満足していないことを意味する。
【0216】
リア部材散乱量>フロント部材散乱量を満足していても、式(0)を満足していない液晶セル2及び3では、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア(550)及びフロント側に配置した位相差フィルムのRthフロント(550)の大小関係は、正面CRにほとんど影響していないことが理解できる。即ち、従来の液晶セルでは正面CRが低く、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア(550)及びフロント側に配置した位相差フィルムのRthフロント(550)の大小関係による正面CRに与える影響は無視できる程度であったが、式(0)を満足する液晶セルを用いた液晶表示装置では、正面CRが元々高いので、リア側に配置した位相差フィルムのRthリア及びフロント側に配置した位相差フィルムのRthフロントの大小関係が、正面CRに大きく影響することが理解できる。
【0217】
(4)−5 光源を代えた時の正面コントラストの評価
続いて、光源を代えた時の正面コントラストを評価した。光源には、次の3種類の液晶パネル
(i)SHARP社製の液晶パネル「LC−32GH5」、
(ii)SHARP社製の液晶パネル「LC−37GX3W」、
(iii)SHARP社製の液晶パネル「LC−32DE5」、
に使用されていたバックライトを使用した。なお、光源(i)にはプリズムシートが使用されておらず、拡散シートが2枚使用されていた。光源(iii)にはプリズムシートが2枚使用されていた。光源(ii)には拡散板と貼合されたレンズアレイシート1枚が使用されており、レンズアレイシートの反対側の平坦面にはレンズの非集光面領域に光線を反射する光反射層が形成されていた。
評価には、下記の実施例2と実施例5に示した2つの液晶表示装置を使用し、光源を代えた時の正面コントラスト比を測定し、下記式により、正面コントラスト向上率を求めた。
【0218】
【数2】

【0219】
【表17】

【0220】
上記結果から、指向性の高い光源を用いたほうが、本発明の効果がより顕著になることが理解できる。
【符号の説明】
【0221】
10 液晶層
12 フロント側基板
14 リア側基板
16 フロント側位相差領域
18 リア側位相差領域
20 フロント側偏光子
22 リア側偏光子
24 バックライトユニット
LC 液晶セル
PL1 リア側偏光板
PL2 フロント側偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶セル、該液晶セルとフロント側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域、及び該液晶セルとリア側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域を有する液晶表示装置であって、
前記液晶セルが、液晶層と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板及びリア側基板とを有し、前記リア側位相差領域の可視光域波長λnmにおける厚み方向レターデーションRthリア(λ)及び前記フロント側位相差領域の波長λにおける厚み方向レターデーションRthフロント(λ)は、その合計が、液晶層の黒表示時のΔnd(λ)(但し、dは前記液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は前記液晶層の波長λnmにおける屈折率異方性であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdとの積を意味する)を補償可能な範囲であり、
前記フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足するとともに、
前記フロント部材散乱量、及び前記リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)と、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)とが、下記の関係(1)又は(2)を満足する液晶表示装置:
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量、且つ、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ);
式(0)〜(2)中、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、各基板及び該基板上に形成された部材全体について、高位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板2を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)、のそれぞれの逆数と、低位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板1を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、それぞれの逆数との差であって、下記式
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
からそれぞれ求められる値である。
【請求項2】
式(1)を満足する請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
下記関係式(3)をさらに満足する請求項2に記載の液晶表示装置;
(3) リア部材散乱量/フロント部材散乱量≧1.4 。
【請求項4】
前記リア側基板が、カラーフィルタ層を有する請求項2又は3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶セルが、前記リア側基板として、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板、及び前記フロント側基板として、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板を有する請求項2〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記リア側位相差領域の波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)が、
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足する請求項2〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記リア側位相差領域の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足する請求項2〜6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記フロント側位相差領域の波長550nmにおける厚み方向レターデーションRth(550)が、
0nm≦|Rth(550)|≦300nm
を満足する請求項2〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記フロント側位相差領域の波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、
0nm≦Re(550)≦100nm
を満足する請求項2〜8のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記フロント側位相差領域が2枚のフィルムからなり、該2枚のフィルムを液晶セル側からフィルムA及びフィルムBとし、フィルムAが下記式(4)を満足し、フィルムBが下記式(5)且つ(6)を満足し、及びフロント側偏光子の透過軸とフィルムBの遅相軸が直交又は平行であることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載の液晶表示装置:
(4)|ReフィルムA(550)|≦100nm
(5)|ReフィルムB(550)|≧50nm
(6)0.05≦Nz≦3;
式(4)中、ReフィルムA(550)は、波長550nmにおけるフィルムAの面内レターデーションを意味し、式(5)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、式(6)中、ReフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの面内レターデーションを意味し、RthフィルムB(550)は、波長550nmにおけるフィルムBの厚み方向レターデーションを意味し、Nz=RthフィルムB(550)/ReフィルムB(550)+0.5である。
【請求項11】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域のRthが、可視光域において、逆波長分散性又は波長によらず同一である請求項2〜10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記カラーフィルタ層がRthを有し、該Rthが、可視光域において、逆波長分散性又は波長によらず同一である請求項2〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、セルロースアシレート系フィルムからなる又はセルロースアシレート系フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、アクリル系ポリマーフィルムからなる又はアクリル系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含有するアクリル系ポリマーフィルムからなる又は当該アクリル系ポリマーフィルムを含有する請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、環状オレフィン系ポリマーフィルムからなる又は環状オレフィン系ポリマーフィルムを含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、1枚の二軸性の高分子フィルムからなる又は1枚の二軸性高分子フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項18】
前記リア側位相差領域及び/又は前記フロント側位相差領域が、1枚の一軸性の高分子フィルムを含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項19】
前記カラーフィルタ層の厚み方向レターデーションRthCF(550)と、リア側位相差領域の厚み方向レターデーションRthリア(550)が、下記式
|RthCF(550)+Rthリア(550)|≦90nm
を満足する請求項4又は5に記載の液晶表示装置。
【請求項20】
VA型液晶表示装置であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項21】
独立した3原色光が順次発光するバックライトユニットを含み、フィールドシーケンシャル駆動方式で駆動される請求項1〜20のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項22】
フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶セル、該液晶セルとフロント側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるフロント側位相差領域、及び該液晶セルとリア側偏光子との間に配置される1層又は2層以上の位相差層からなるリア側位相差領域を有する液晶表示装置の製造方法であって、
液晶層と、該液晶層を挟持する一対のフロント側基板及びリア側基板とを有し、前記フロント側基板及び該基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「フロント部材散乱量」という)が下記式(0)を満足する液晶セルを準備する第1の工程、
(0)フロント部材散乱量 ≦1/38000
第1の工程で準備した液晶セルのフロント部材散乱量と、リア側基板及び該リア側基板上に形成された部材全体による散乱量(以下「リア部材散乱量」という)とを比較する第2の工程、
第1の工程で準備した液晶セルの黒表示時のΔnd(λ)(但し、dは前記液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は前記液晶層の可視光域波長λnmにおける屈折率異方性であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdとの積を意味する)の補償に必要な、波長λにおける厚み方向レターデーションRth0(λ)を決定する第3の工程、及び
第2の工程で得られたリア部材散乱量及びフロント部材散乱量の大小関係に基づいて、液晶セルの黒表示時の視野角補償に必要なRth0(λ)を、フロント側位相差領域及び
リア側位相差領域それぞれの波長λにおける厚み方向レターデーション、Rthフロント(λ)及びRthリア(λ)、に割り当てる第4の工程、
を含む液晶表示装置の製造方法:
但し、フロント部材散乱量及びリア部材散乱量はそれぞれ、各基板及び該基板上に形成された部材全体について、高位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板2を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント2)及び部材CR(リア2)、それぞれの逆数と、低位相差フィルムと偏光子とを組み合わせた偏光板1を用いて測定されたコントラスト、部材CR(フロント1)及び部材CR(リア1)、それぞれの逆数との差であって、下記式
フロント部材散乱量=1/部材CR(フロント2)−1/部材CR(フロント1)
リア部材散乱量=1/部材CR(リア2)−1/部材CR(リア1)
からそれぞれ求められる値である。
【請求項23】
第2の工程で、下記関係式(1)及び(2)
(1)リア部材散乱量>フロント部材散乱量
(2)リア部材散乱量<フロント部材散乱量
のいずれを満足するかを決定し;
第4の工程で、
関係式(1)を満足する場合には、Rthフロント(λ)>Rthリア(λ)の関係で割り当て、及び
関係式(2)を満足する場合には、Rthフロント(λ)<Rthリア(λ)の関係で割り当てる、
請求項22に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−133846(P2011−133846A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180138(P2010−180138)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】