説明

液晶表示装置

【課題】液晶表示装置の表示領域内にタッチパネル等のセンサーを組み込む場合、遮光層としては、第一に十分な遮光性を有することが求められるが、一方では液晶注入を妨げずさらにはギャップムラが発生しにくいように膜厚を薄くすることが望まれる。形成するセンサー特性によっては遮光層の誘電率がある程度高いことが望ましい。また画素間の狭い領域に形成できる加工性を有し、さらに低コストで生産性の高い材料およびプロセスが求められる。
【解決手段】センサー電極上および周囲の遮光層を高誘電率インクによるインクジェット工法で形成することにより、低コストで歩留りが良く、センサー感度の良い液晶表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はセンサーを内蔵した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示領域内にタッチパネル等のセンサーを組み込んだ液晶表示装置があるが、対向基板ではなくアレイ基板上に着色層を形成する場合には、センサー部等配線の隙間からの光漏れが問題となる。このため表示領域外周の額縁部分と同様に配線の隙間には遮光層を形成する必要がある。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−107383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遮光層としては、第一に十分な遮光性を有することが求められるが、一方では液晶注入を妨げずさらにはギャップムラが発生しにくいように膜厚を薄くすることが望まれる。形成するセンサー特性によっては遮光層の誘電率がある程度高いことが望ましい。また画素間の狭い領域に形成できる加工性を有し、さらに低コストで生産性の高い材料およびプロセスが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、アレイ基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と、前記アレイ基板上に設けられた複数の走査線及び信号線と、前記走査線及び信号線の交差部に設けられたスイッチング素子と、前記走査線、前記信号線及び前記スイッチング素子を覆うように前記アレイ基板上に形成され、レジストによりそれぞれ異なる色に着色された第一、第二、及び第三の有機絶縁膜と、前記第一、第二、及び第三の有機絶縁膜上に形成され表示領域を形成する画素電極と、前記アレイ基板上で前記表示領域内に形成されたセンサー電極と、前記アレイ基板と対向基板の間に配置され、両基板間を保持するスペーサと、前記画素電極及び前記センサー電極を遮光する遮光層と、前記遮光層の側面に形成され、前記第一、第二、及び第三の有機絶縁膜により形成されたバンク部と、を備える液晶表示装置であって、
前記遮光層はインクジェット工法により形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法を提供することで上記課題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態による液晶表示装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による液晶表示装置を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態のセンサー部の構造を示す平面図である。
【図5】本発明の実施形態センサー周辺の着色層構造を示す拡大平面図である。
【図6】図5のB−B線に沿う拡大断面図である。
【図7】本発明について説明する簡易図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態による液晶表示装置の実施の形態を、図面を参照し説明する。
【0008】
(実施の形態1)
本発明の実施形態による液晶表示装置の実施の形態1を図1から図4を参照して説明する。また同一部分は同一符号で示す。
【0009】
図1は本発明による液晶表示装置の構成を示す斜視図であり、図2は図1の液晶パネル部分を示す平面図である。また図3は図2の破線部での拡大断面図であり、各着色層24a、24b、24cとスルーホール15の関係を示す。図4はセンサー部の構造を説明する平面図であり、一部の着色層24を省略している。
【0010】
液晶表示装置は表示領域25を有するアレイ基板110と、このアレイ基板110に所定の隙間を保持して対向配置された対向基板120と、を備え、アレイ基板110下面には光源となるLED等からなるバックライトユニット13が配置される。
【0011】
アレイ基板110はガラス等からなる基板10と、この基板10上に形成された着色層24と図示しない配向膜を備えている。基板10上には図3または図4に示す複数本の信号線12及び走査線11が多層薄膜を介して格子状に配置されている。また各走査線11に沿って補助容量16が配列され、補助容量16と信号線12がなすマス目上の画素開口にほぼ対応するようIndium-Tin-Oxide(以下ITOという)等の透明導電材料からなり表示領域25を構成する画素電極30が配設される。
【0012】
走査線11及び信号線12の各交点部分には、画素電極30を制御するためのスイッチング素子14が形成され、スイッチング素子14上に多層薄膜の一部である有機絶縁膜24が皮膜されている。
【0013】
有機絶縁膜24はR、G、Bのうちのいずれかのレジストによって着色され、第一着色層24a、第二着色層24b、第三着色層24cを形成している。
【0014】
また有機絶縁膜24は表示領域25以外の部分(以下非表示領域という)に形成される場合もある。
【0015】
各着色層24a、24b、24c上には画素電極30が配される。画素電極30は各着色層24a、24b、24cに形成されたスルーホール15を介し、スイッチング素子と電気的に接続される。
【0016】
ここで、スイッチング素子はゲート電極14b、ソース電極14a、ドレイン電極14cから構成される薄膜トランジスタ14(以下TFTという)を用いる。ゲート電極14bは走査線11と、またソース電極14aは信号線12と夫々電気的に接続される。
【0017】
走査線11と接続されたゲート電極14bに電圧が印加されると、ソース電極14aとドレイン電極14c間が導通し、TFT14が一定期間オン状態になる。この期間に画像表示に必要な信号が信号線12から供給され所定のタイミングで書き込まれる。
【0018】
ドレイン電極14cは画素電極30と有機絶縁膜24の各着色層24a、24b、24cに形成されたスルーホール15を介し電気的に接続される。
【0019】
一方、表示領域25内にはタッチパネル用センサーが形成されており、センサー電極54は図4に示すように信号線11と平行方向に配置されている。またセンサー制御のためにセンサー用走査線50、センサー読み出し用走査線51、センサー制御回路52、センサー読み出し線53、センサープリチャージ線55が配置されている。センサー電極54にはプリチャージ線55からセンサー制御回路52を通して電圧が印加され、一定の電荷がチャージされる。電圧印加タイミングはセンサー用走査線50によって制御されている。印加された電圧は制御回路中のアンプによって増幅され、センサー読み出し線53によって信号が戻される。読み出しタイミングはセンサー読み出し用走査線51によって制御されている。表示領域50上の対向基板120を指で触った部分では容量が変化し、制御回路52で読み取る電圧に変化が生じる。この電圧変化を検知することにより表示領域25にタッチパネル機能を付加することが可能となる。
【0020】
対向基板120はガラス等からなる透明基板21を有し、アレイ基板110と対向に配置される。また対向基板120は液晶層70側にITOからなる透明電極22と図示しない配向膜を有する。
【0021】
アレイ基板110と対向基板120とは表示領域25の周縁である額縁領域においてシール材26を用いて接合され、アレイ基板110と対向基板120とシール材26とで囲まれた領域に液晶層70が形成されている。
【0022】
シール材26は液晶層70を封止し、シール材26内側にはブラックマトリクス層27(以下BM層27という)が遮光層として配置される。また表示領域25内に形成されたセンサー電極54周囲の光漏れを防止するために、センサー電極54周囲にも遮光層が配置される。
【0023】
アレイ基板110と対向基板120間の距離はスペーサ31によって保持される。スペーサ31は樹脂からなり、所望する距離に合わせて3〜7μm程度の高さで形成されることが多い。
【0024】
さらにアレイ基板110及び対向基板120の夫々液晶層70側と反対に位置する面には図示しない偏光板が夫々配設されている。
【0025】
以下、本実施の形態の特徴的部分であるインクジェット工法によるBM層27形成について図5から図7を参照し詳細に説明する。なお同一部分は同一符号で示す。
【0026】
図5は本発明のセンサー周辺の着色層構造を示す拡大平面図である。また図6は図5のB−B線に沿う拡大断面図である。
【0027】
TFT14形成後のアレイ基板110上に第一着色層24a、第二着色層24b、第三着色層24cと順次形成するが、その際にインクジェット塗布領域の両側に第二着色層24bを用いて堤防となる構造を形成する。通常インクジェット工法で使用するインクはインクジェットで飛ばす必要があることから流動性が高く、堤防を乗り越えて流れ出ると不良品となってしまう。このため塗布前に堤防を形成することによりインクあふれで表示領域25内にインクが侵入するのを防ぐことができる。その後、インクジェット工法により遮光性インクを塗布して焼成することによりBM層27が得られる。
【0028】
インクジェットによるBM層形成は、BM層部分のみにインクを塗布すれば良いため材料使用量が非常に少なくて済むため、低コストでの生産が可能である。一方従来のフォトエッチング工法では基板全体に遮光レジストを塗布し、さらにマスクを用いて露光を行い、さらに現像する必要があるため工程が多く、マスクや現像液等の部材も必要となるためコストや歩留まりの面でインクジェットより不利となることが多い。
【0029】
インクには遮光性を持たせるために顔料等を含ませるが、有機顔料だけではなく、例えばカーボンや酸化チタン等の使用も可能である。なおタッチパネルセンサーとして容量変動を検出する場合には、誘電率の高いインク材料を用いることが望ましい。
【0030】
図7に示すように、センサー電極による容量をC1、プリチャージによる電荷をQとした場合、電圧Vは V=Q/C1 となる。一方、センサー電極上にインクジェットにより誘電率の高い材料を塗布して遮光層を形成した場合、遮光層単体の容量をC2とする。仮にC2がC1の2倍の容量とすると、C2=2×C1となる。C1とC2の合成容量をC‘とすると、C’=(2/3)C1となる。プリチャージによる電荷Qが一定の場合、電圧V‘はV’=Q/C=Q/((2/3)C1)=(3/2)Q/C1=(3/2)V となることから、電圧が約1.5倍となる。このことから、誘電率の高い遮光層材料を使用することにより容量変動による電圧変化をより感度良く検出することが可能となる。
【0031】
こうして本発明の実施形態の様にタッチパネル用センサー電極上にインクジェットによる遮光層構造を適用したところ、表示領域内に感度の良いタッチパネルを組み込むことができ、インクジェット工法による遮光性インクが画素に流れ込むことも無く、歩留り良く低コストで液晶表示装置を作製することができた。
【0032】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10…基板
11…走査線
12…信号線
13…バックライト
14…スイッチング素子(薄膜トランジスタ)
15…スルーホール
16…補助容量
21…透明基板
22…透明電極
24…着色層
25…表示領域
26…シール材
27…ブラックマトリクス(BM)層
30…画素電極
31…スペーサ
40…インク用バンク(土手構造)
50…センサー用走査線
51…センサー読み出し用走査線
52…センサー用制御回路
53…センサー読み出し線
54…センサー電極
55…プリチャージ線
70…液晶層
110 … アレイ基板
120 …対向基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板と、
前記アレイ基板に対向して配置された対向基板と、
前記アレイ基板上に設けられた複数の走査線及び信号線と、
前記走査線及び信号線の交差部に設けられたスイッチング素子と、
前記走査線、前記信号線及び前記スイッチング素子を覆うように前記アレイ基板上に形成され、レジストによりそれぞれ異なる色に着色された第一、第二、及び第三の有機絶縁膜と、
前記第一、第二、及び第三の有機絶縁膜上に形成され表示領域を形成する画素電極と、
前記アレイ基板上で前記表示領域内に形成されたセンサー電極と、
前記アレイ基板と対向基板の間に配置され、両基板間を保持するスペーサと、
前記画素電極及び前記センサー電極を遮光する遮光層と、
前記遮光層の側面に形成され、前記第一、第二、及び第三の有機絶縁膜により形成されたバンク部と、を備える液晶表示装置であって、
前記遮光層はインクジェット工法により形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記インクジェット工法は誘電率の高いインク材料を用いることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78480(P2012−78480A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222321(P2010−222321)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】