液晶表示装置
【課題】IPS方式の液晶表示装置において、アンカリング強度の大きい光配向膜の形成を可能とする。
【解決手段】配向膜113を光配向膜1131と高膜強度配向膜の2層構造とする。光配向膜1131はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、高膜強度配向膜1132はポリアミド酸を前駆体として形成する。紫外線による光配向を行った後、基板を加熱するので、高膜強度配向膜1132の機械的な強度が劣化せず、光配向において、配向膜全体として高いアンカリング強度を実現できる。
【解決手段】配向膜113を光配向膜1131と高膜強度配向膜の2層構造とする。光配向膜1131はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、高膜強度配向膜1132はポリアミド酸を前駆体として形成する。紫外線による光配向を行った後、基板を加熱するので、高膜強度配向膜1132の機械的な強度が劣化せず、光配向において、配向膜全体として高いアンカリング強度を実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置に係り,特に配向膜に光の照射で配向制御能を付与した液晶表示パネルを具備した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
液晶表示装置に使用する配向膜を配向処理すなわち配向制御能を付与する方法として,従来技術としてラビングで処理する方法がある。このラビングによる配向処理は,配向膜を布で擦ることで配向処理を行うものであるが,一方,配向膜に非接触で配向制御能を付与する光配向法という手法がある。IPS方式はプレティルト角が必要無いために、光配向法を適用することが出来る。
【0005】
「特許文献1」には紫外線に代表される光の照射による光分解型の光配向処理が開示されており,光分解型の光配向処理においては(1)画素部の複雑な段差構造に起因する配向乱れを低減し,(2)ラビングによる配向処理における静電気による薄膜トランジスタの破損,ラビング布の毛先の乱れや塵による配向乱れを原因とする表示不良を解決し,均質な配向制御能を得るために要する頻繁なラビング布の交換によるプロセスの煩雑さ,を解決することが記載されている。
【0006】
また、「特許文献2」には、配向膜を2層構造とし、上層に光配向可能な配向膜を形成し、下層に、光配向はできないが、上層よりも体積抵抗の低い配向膜を形成することによって、残像の消失時間を短くした構成が記載されている。「特許文献3」には、光配向において問題となる方位角アンカリング強度の測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−206091号公報
【特許文献2】特願2008−235900号公報
【特許文献3】特開2003−57147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
配向膜への配向制御能の付与という点において,光配向処理はラビング処理と比較すると,一般的には配向安定性が低いということが知られている。配向安定性が低いと,初期配向方向が変動し,表示不良の原因となる。特に,高い配向安定性が要求される横電界方式の液晶表示パネルを用いた液晶表示装置では配向安定性が低いことで残像に象徴される表示不良が発生し易い。
【0009】
光配向処理ではラビング処理のような高分子の主鎖を延伸し,直線状にする工程がLCDプロセス中に存在しない。そのため,光配向処理においては偏光が照射されたポリイミドに代表される合成高分子の配向膜が,当該偏光方向と平行する方向で主鎖が切断されることで、当該偏光方向と直交する方向に一軸異方性が付与される。液晶分子は、切断されずに直線上に伸びて残った長い主鎖方向に沿って配向するが,この主鎖の長さが短くなると,一軸異方性が低下し,液晶との相互作用が弱くなって配向安定性が低下するために,前記した残像が発生し易くなる。
【0010】
従って,配向膜の一軸異方性を向上させ,配向安定性を向上させるためには,配向膜の分子量を大きくすることが必要であるが,これを解決する手法として,ポリアミド酸エステルをイミド化した光配向膜材料を使用することが出来る。これによると,ポリアミド酸エステル材料では,従来のポリアミド酸材料で起こっていたようなイミド化反応時のジアミンと酸無水物への分解反応を伴わず,イミド化後も分子量を大きく保つことができ,ラビング処理並みの配向安定性を得ることができる。
【0011】
また,ポリアミド酸エステル材料においては,その化学構造中にカルボン酸を含有しないため,ポリアミド酸材料と比較してLCDの電圧保持率が上がり,長期信頼性の向上も確保することができる。
【0012】
一方、光配向を用いた液晶表示装置では、長時間動作を行うと、液晶の初期配向の方向が液晶表示装置の製造当初からの方向と、ずれてきてしまい、この原因によって残像が生ずる。これをAC残像と称する。このような残像発生の原因は、配向膜の方位角アンカリング強度が弱いからであることがわかった。したがって、AC残像は非可逆的であり、回復はできない。なお、方位角アンカリング強度は、液晶分子を初期の配向方向から方位角方向にずれにくくさせる強度のことである。
【0013】
一方、配向膜に電荷が蓄積することによって生ずる残像もある。これをDC残像と称している。DC残像は可逆的であり、時間が経過すると消失する。
【0014】
本発明の課題は、光配向方式において、配向膜の方位角アンカリング強度を向上し、いわゆるAC残像を生じさせないことである。また、本発明の目的は、同時に、いわゆるDC残像を生じさせないか、生じても短時間で消失させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、液晶を配向させる配向膜を2層構造とし、液晶と接する上層を光配向膜とし、基板側の下層を高膜強度配向膜とする。上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はポリアミド酸を前駆体として形成する。
【0016】
このような2層となった配向膜を乾燥、焼成した後、偏光紫外線を照射することによって光配向膜を光配向させ、その後、紫外線を照射した基板を加熱することによって配向膜を完成する。
【0017】
光配向膜におけるイミド化率は50%以上である。また、配向膜全体における光配向膜の割合は30%から60%である。上層の光配向膜の体積抵抗率は、下層の高膜強度配向膜の抵抗率よりも大きい。
【0018】
本発明の他の構成としては、上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸を80%以上含むポリアミド酸を前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はシクロブタンを含まないポリアミド酸を前駆体として形成する。製造プロセスは上記と同様である。
【0019】
本発明のさらに他の構成としては、上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はシクロブタンを含まないポリアミド酸エステルを前駆体として形成する。製造プロセスは上記と同様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配向膜を液晶と接する側の光配向膜と基板側の高膜強度配向膜の2層構造としているので、方位角アンカリング強度が強く、長期間動作後においても残像の少ない液晶表示装置を光配向によって実現することが出来る。
【0021】
また、本発明によれば、紫外線によって光配向をさせた後、基板を所定の温度で加熱するので、配向膜の機械的な強度を劣化させることがないので、配向膜のアンカリング強度を大きくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】IPS方式の液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1の画素電極の平面図である。
【図3】本発明による配向膜の構成を示す図である。
【図4】光配向膜の原理を示す図である。
【図5】本発明の配向膜の断面図である。
【図6】シクロブタンを含むポリアミド酸エステルの化学式である。
【図7】シクロブタンを含むポリアミド酸の化学式である。
【図8】光配向の配向膜形成プロセスである。
【図9】方位角アンカリング強度と残像の関係を示すグラフである。
【図10】配向膜の構成と形成プロセスと方位角アンカリング強度の関係を示すグラフである。
【図11】光配向膜のプロセス条件と方位角アンカリング強度の関係を示すグラフである。
【図12】DC残像の評価パターンである。
【図13】DC残像の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。IPS方式の液晶表示装置の電極構造は種々のものが提案され、実用化されている。図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に図1の構造を詳しく説明する。なお、本発明は、図1の構成を例にとって説明するが、図1以外のIPSタイプの液晶表示装置にも適用することが出来る。
【0025】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0026】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はプラズマCVDによって形成される。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。なお、a−Si膜とソース電極104あるいはドレイン電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とソース電極104あるいはドレイン電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0027】
ソース電極104は映像信号線が兼用し、ドレイン電極105は画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ソース電極104あるいはドレイン電極105はMoCr合金で形成される。ソース電極104あるいはドレイン電極105の電気抵抗を下げたい場合は、例えば、AlNd合金をMoCr合金でサンドイッチした電極構造が用いられる。
【0028】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物401から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。
【0029】
有機パッシベーション膜107には感光性のアクリル樹脂、シリコン樹脂、あるいはポリイミド樹脂等が使用される。有機パッシベーション膜107には、画素電極110とドレイン電極105が接続する部分にスルーホール111を形成する必要があるが、有機パッシベーション膜107は感光性なので、フォトレジストを用いずに、有機パッシベーション膜107自体を露光、現像して、スルーホール111を形成することが出来る。
【0030】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とドレイン電極105を導通するためのスルーホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0031】
対向電極108を覆って上部絶縁膜109がSiNによって形成される。上部絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この上部絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、上部絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたドレイン電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0032】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0033】
図1はこの様子を断面図として説明したものである。櫛歯状の電極と櫛歯状の電極の間は図1に示すスリット112となっている。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。
【0034】
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された対向電極108が配置され、上部絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された画素電極110を配置し、上部絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。
【0035】
画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。本発明においては、配向膜113は、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される高膜強度配向膜1132の2層構造となっている。配向膜の113の構成については、後で詳細に説明する。
【0036】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタ201が形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0037】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。
【0038】
オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。対向基板側の配向膜113もTFT基板側の配向膜113と同様に、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される低抵抗配向膜1132の2層構造となっている。なお、図1はIPSであるから、対向電極108はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。
【0039】
図1に示すように、IPSでは、対向基板200の内側には導電膜が形成されていない。そうすると、対向基板200の電位が不安定になる。また、外部からの電磁ノイズが液晶層300に侵入し、画像に対して影響を与える。このような問題を除去するために、対向基板200の外側に表面導電膜210が形成される。表面導電膜210は、透明導電膜であるITOをスパッタリングすることによって形成される。
【0040】
図3は本発明による配向膜113を示す模式図である。図3(a)は配向膜113の平面透視図、図3(b)は断面斜視図である。本発明の配向膜113は2層構造となっており、液晶層と接する上側は光配向膜1131であり、下側は高膜強度配向膜1132となっている。
【0041】
ポリアミド酸エステルの分子式は化学式(1)によって表される。
【0042】
【化1】
【0043】
化学式(1)において、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ビニル基(−(CH2)m−CH=CH2,m=0,1,2)又はアセチル基(−(CH2)m−C≡CH,m=0,1,2)であり、Arは芳香族化合物である。
【0044】
なお、化学式(1)は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルであるが、シクロブタンを含まないポリアミド酸エステルも存在する。しかし、光配向させることが出来るのは、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルであるので、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルは80%以上である必要がある。
【0045】
図3におけるポリアミド酸の分子式は化学式(2)によって表される。化学式(2)はシクロブタンを含まないポリアミド酸の構造例である。
【0046】
【化2】
【0047】
化学式(2)において、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ビニル基(−(CH2)m−CH=CH2,m=0,1,2)又はアセチル基(−(CH2)m−C≡CH,m=0,1,2)であり、Arは芳香族化合物である。
【0048】
なお、化学式(2)は、化学式(1)と異なり、シクロブタンを含んでいない。高膜強度配向膜は光配向をする必要が無いので、シクロブタンは必要が無い。逆に化学式(2)はシクロブタンが無いので、紫外線の影響を受けにくい。その他に、化学式(1)と化学式(2)が異なる点は、化学式(2)においては、ポリアミド酸エステルを示す化学式(1)において、R1がHに置き換わっている点である。
【0049】
図3(a)は透視図であるから光配向膜における光分解性ポリマー10と高膜強度配向膜における非光分解性ポリマー11が透視して見えている。図3(b)において、配向膜113は図1における画素電極110あるいは有機パッシベーション膜107の上に形成されている。図3(b)では配向膜113は画素電極110の上に形成されるとしている。上側の光配向膜1131の厚さt1は50nm程度、下側の高膜強度配向膜1132の厚さt2は50nm程度である。光配向膜1131と高膜強度配向膜1132の境界は明確ではないので、点線で記載している。
【0050】
図4は光配向膜1131によって液晶を配向させるための原理を示す模式図である。図4において、高膜強度配向膜1132は省略されている。図4(a)は光配向膜1131が塗布された状態を示している。光配向膜1131は光分解性ポリマー10によって形成されている。
【0051】
図4(a)に示す光配向膜1131に対し、横方向に偏光された紫外線を例えば、6J/cm2のエネルギーで照射する。そうすると、光配向膜1131において偏光された紫外線の偏光方向の光分解性ポリマー10は、図4(b)に示すように、紫外線によって破壊される。すなわち、紫外線の偏光方向に沿って紫外線による切断部15が形成される。そうすると、液晶分子は図4(b)における矢印Aの方向に配向されることになる。
【0052】
図4に示すように、光分解性ポリマー10の主鎖が短いと一軸異方性が低下し、液晶との相互作用が弱くなって配向性が低下する。したがって、図4(b)において、光配向後においても、光分解性ポリマー10が矢印Aの方向にできるだけ長く伸びていることが望ましい。つまり、配向膜113の一軸異方性を向上させ、配向安定性を向上させるためには、配向膜113の分子量を大きくする必要がある。
【0053】
配向膜113における分子量としては、数平均分子量によって評価することが出来る。数平均分子量は、配向膜113に種々の分子量のポリマーが存在している場合、その平均的な分子量である。光配向膜1131においては、十分な配向安定性を得るためには、数平均分子量は5000以上であることが必要である。
【0054】
このような、大きな数平均分子量の光配向膜1131を得るためには、ポリアミド酸エステルをイミド化したものを用いることが出来る。ポリアミド酸エステルの構造は、先に示した化学式(1)に示すとおりである。
【0055】
ポリアミド酸エステルの特徴は、化学式(1)におけるR1である。ポリアミド酸エステルにおいては、R1はCnH2n−1であり、nが1以上である。ポリアミド酸エステルを光配向膜1131の前駆体として用いると、従来のポリアミド酸材料で起こっていたようなイミド化反応時のジアミンと酸無水物への分解反応を伴わず、イミド化後も分子量を大きく保つことができ、ラビング処理並みの配向安定性を得ることができる。
【0056】
しかし、光配向膜は紫外線によって、主鎖が特定方向において破壊されるので、膜強度が低下する。配向膜の方位角アンカリング強度の劣化は、配向膜の機械的な強度に関係することが発明者の研究によって明らかになった。そこで、配向膜を2層構造とし、下層に高膜強度配向膜を配置し、上層に光配向膜を配置することによって配向膜全体の膜強度を上げることが配向膜の方位角アンカリング強度向上に効果的である。
【0057】
図5は2層配向膜を形成する方法を示す断面模式図である。2層構造の配向膜113を形成するために、配向膜113形成プロセスを増やすことなく行うことが出来る。すなわち、図5(a)に示すように、光分解性ポリマー10と高膜強度配向膜を形成するポリマー11を混合した材料を基板に塗布すると、レベリング効果によって図5(b)に示すように、基板と馴染みやすい材料が下層に形成され、他の材料が上に形成される、いわゆる相分離を生ずる。
【0058】
本実施例において、基板に相当するのは、画素電極110を形成するITOまたは、有機パッシベーション膜107である。ポリアミド酸はポリアミド酸エステルに比較して極性が高く(表面エネルギーが大きく)ITOあるいは有機パッシベーション膜107と馴染みやすいので、常にポリアミド酸が下層となる。本発明ではポリアミド酸によって形成される高膜強度配向膜の数平均分子量がポリアミド酸エステルによって形成される光配向膜の数平均分子量よりも大きいので、極性または表面エネルギーの効果に加えて、相分離をさらに容易に生ずることが出来る。2層の配向膜のうち、光配向膜1131の占める割合は、配向膜全体の30%以上で、60%以下である。これは、一つには光配向膜を十分に上層に配置させるためと、一つには2層の配向膜を塗布した後に相分離を起こしやすいからである。
【0059】
このようにして形成された樹脂膜に200℃程度の熱を加えてイミド化する。イミド化は下層のポリアミド酸1132、上層のポリアミド酸エステル1131の両者に対して同時に行われる。したがって、1層の配向膜113形成と同じ工程によって2層の配向膜113形成を行うことが出来る。
【0060】
上層の光配向膜1131は配向特性を安定化するために、光分解性ポリマー10の光分解効率を高くする必要があるので、イミド化率は高くする必要がある。これはイミド化していないと光分解反応が起こりにくいからである。一般的に、ポリアミド酸エステルはイミド化しにくいため、イミド化を補助する目的で、イミド化促進剤を添加剤として加えてもよい。光配向膜1131におけるイミド化率は50%以上であり、より好ましくは70%以上である。この残りは、前駆体としてのポリアミド酸エステルが光配向膜1131に存在することになる。
【0061】
一方、下層の高膜強度配向膜1132は液晶の光配向特性とは関係が無いので、イミド化率は特に規定する必要は無い。すなわち、イミド化の条件は、上層のポリアミド酸エステルのイミド化を主眼に設定すればよい。
【0062】
配向膜113の上層と下層の境界は明確ではない。図5ではこの境界を点線で示している。図5(b)において、上層の光配向膜1131はポリアミド酸エステルで構成されているが、図6に示すような、シクロブタンを有するポリアミド酸エステルが全体の80%以上を占める。すなわち、ポリアミド酸エステルにおいて、シクロブタンが偏光紫外線によって分解されることによって光配向特性を生ずるので、シクロブタンを有するポリアミド酸エステルの割合が多くなることは必須である。
【0063】
一方、下層の高膜強度配向膜1132は、ポリアミド酸によって形成されているが、図7に示すシクロブタンを有するポリアミド酸は無いことが望ましい。代わりに化学式(2)で示されるような、シクロブタンを含まないポリアミド酸が使用される。すなわち、光配向後も配向膜全体として機械的な強度を保つためには、下層の高膜強度配向膜は紫外線によって分解されないほうがよいからである。
【0064】
このように、2層の配向膜の特徴は、上層の光配向膜1131がシクロブタンを多く含み、下層の高膜強度配向膜1132はシクロブタンを含まないように形成されていることである。つまり、光配向膜1131の液晶と接する側は多くのシクロブタンを含み、高膜強度配向膜1132の画素電極あるいは有機パッシベーション膜と接する側はシクロブタンをほとんど含まないということになる。
【0065】
以上のように、配向膜113の前駆体として、上層をシクロブタンを多く含むポリアミド酸エステルによって形成し、下層をシクロブタンを含まないポリアミド酸によって形成しても、光配向を行うための後工程によっては、配向膜全体として、機械的な強度が劣化する場合が生ずる。
【0066】
図8は、光配向のプロセスを示すフローチャートである。図8において、配向膜を塗布した後、乾燥させる。乾燥させるまでに、配向膜は、光配向膜1131と高膜強度配向膜1132の2層に相分離する。その後、配向膜を焼成して、イミド化する。その後光配向を行うが、従来は、基板を200℃程度に加熱した状態で直線偏光紫外線を照射して光配向をおこなっていた。しかし、基板を加熱しながら紫外線照射を行うと配向膜の下層である高膜強度配向膜も紫外線によって光分解を生じ、膜硬度が低下してしまう。
【0067】
これに対して、本発明は、図8の右側の点線で囲んだ部分に示すように、基板を加熱せずに、偏光紫外線を照射し、その後、基板を加熱する工程としている。このような工程とすることによって、下層の高膜強度配向膜が紫外線によって光分解をすることを防止することが出来、配向膜全体として必要な膜強度を保つことが出来る。
【0068】
以上のような構成によって、配向膜の初期の方位角アンカリング強度を向上させることが出来る。図9は、方位角アンカリング強度と残像輝度変化率の関係を示すものである。方位角アンカリング強度の測定方法は、「特許文献3」に記載の方法を用いた。図9において、横軸は方位角アンカリング強度であり、単位は10−3J/m2である。縦軸は残像輝度変化率である。残像輝度変化率は、例えば、図12に示すようなチェッカーフラグパターンを12時間表示し、その後、灰色ベタの中間調に戻す。中間調の階調は64/256である。この時、チェッカーフラグパターンの明るい部分と暗い部分の輝度比が残像輝度変化率である。
【0069】
図9において、残像輝度変化率が1%以下であれば、残像が見えないとしてよい。図9において、残像が見えないようにするためには、方位角アンカリング強度が3.5×10−3J/m2以上である必要がある。
【0070】
図10は、配向膜の構成および光配向のプロセスによる方位角アンカリング強度の比較をした結果の表である。図10において、配向膜の構造を従来のように1層構造とした場合と、2層構造にした場合を比較している。また、光配向のプロセスにおいて、基板の加熱と紫外線の照射を同時に行う場合と、紫外線照射の後、基板を加熱する場合とで比較している。
【0071】
図10に示すように、目標値である、方位角アンカリング強度が3.5×10−3J/m2であることを満足する条件は、配向膜が2層構造で、紫外線照射後に基板を加熱するプロセスを用いた場合のみである。すなわち、本発明を用いることによって、光配向方式において、実質的に残像の問題を解決した液晶表示装置を実現することが出来る。
【0072】
このように、光配向のプロセス条件によって残像を対策した配向膜を得ることができる。図11は残像を生じないためのプロセス裕度を評価した結果を示す表である。図11において、紫外線(UV)照射量、紫外線照射後の加熱温度、紫外線照射から基板加熱までの時間をパラメータとして、方位角アンカリング強度を比較している。
【0073】
図11において、紫外線の条件は、波長230〜330nm全ての波長を積算したエネルギーである。また、紫外線は偏光紫外線を用いるが、偏光方向とそれに直角方向の紫外線強度の比(消光比)は波長230〜330nmの範囲において、15:1以上である。
【0074】
図11において、条件Aは、紫外線の照射量は2000〜5000mJ/cm2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、230℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は1時間以内である。条件Bは、紫外線の照射量は1000〜7000mJc/m2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、200℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は24時間以内である。条件Cは、紫外線の照射量は500〜8000mJ/cm2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、150℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は168時間以内である。
【0075】
図11における条件Aが方位角アンカリング強度を最も大きくすることが出来、方位角アンカリング強度は4.2である。次いで条件Bがアンカリング強度4.0で、条件Cが方位角アンカリング強度3.5である。条件Aによって光配向することが望ましいが、製造ラインの要請によって、条件Aによって光配向出来ない場合もあるが、少なくとも、条件Cレベル以上の光配向条件を確保する必要がある。
【0076】
以上の実施例では、上層の光配向膜としてシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを用い、下層の高膜強度配向膜としてシクロブタンを有しないポリアミド酸を用いた配向膜について説明した。しかし、本発明は、これに限らず、上層にシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを用い、下層にシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを用いた配向膜によっても、光配向のプロセスとして、紫外線照射後に基板を加熱することによって、所定の効果を得ることが出来る。
【0077】
また、上層にシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を用い、下層にシクロブタンを有しないポリアミド酸を用いた配向膜によっても、光配向のプロセスとして、紫外線照射後に基板を加熱することによって、所定の効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0078】
実施例1においては、配向膜の構成と光配向のプロセスについて、主としていわゆるAC残像に対する効果について説明した。本発明の構成は、AC残像に限らず、いわゆるDC残像に対しても効果を上げることが出来る。
【0079】
DC残像は、配向膜の特定の場所に電荷が蓄積することによって生ずる現象である。したがって、電荷が消失すると残像も消失するので、可逆的な現象である。DC残像が生じないようにするには、配向膜に蓄積した電荷を速やかに消失させる構成とすること、または、そもそも配向膜に電荷が蓄積しない構成とすることが考えられる。
【0080】
まず、蓄積した電荷が速やかに消失する構成について説明する。DC残像は次のようにして評価した。すなわち、図12に示すような白黒による8×8のチェッカーフラグパターンを12時間表示し、その後、灰色ベタの中間調に戻す。中間調の階調は、64/256である。中間調に戻してから10分後、チェッカーフラグパターンが認識出来ればNGであり、認識できなければOKである。
【0081】
本発明の配向膜は、実施例1で説明したように、上層の光配向膜と下層の高膜強度配向膜とから構成されている。本実施例においては、高膜強度配向膜に対して、体積抵抗を1014Ωcm以下、好ましくは1013Ωcm以下とする。すなわち、上層の光配向膜の体積抵抗よりも1桁以上小さくする。この体積抵抗値は、配向膜にバックライトの光が照射されている状態で得られる体積抵抗値であってもよい。これによって、配向膜にチャージした電荷を速やかに放出させる。
【0082】
図13はこのような2層構造の配向膜と、従来の1層の配向膜の場合とで、DC残像を比較した場合の評価結果である。図13において、横軸は、灰色ベタの中間調に戻したあとの時間である。縦軸は、残像のレベルである。縦軸において、RRは中間調に戻したときに、チェッカーフラグパターンが良く見える状態であり、NGである。Rは中間調い戻した時にチェッカーフラグパターンが薄いが見える状態である。
【0083】
図13において、曲線Aが本発明による配向膜を使用した場合のDC残像特性である。また、曲線Bが配向膜として光配向膜1層のみを使用した場合のDC残像特性の例である。
【0084】
中間調に戻したときに、残像のレベルがRであっても、これが短時間に消失すれば、実用上は問題ないといえる。光配向膜1層の場合は、中間調に戻したときのレベルRが長時間続くので、実用上問題が残る。一方、本発明による2層構造の配向膜113では、DC残像が急激に減少し、中間調に戻したあと、17分程度で、DC残像は完全に消滅する。
【0085】
このように、光配向膜1層の場合と本発明の配向膜の場合の大きな違いは、光配向膜1層の場合は、DC残像が長く続くのに対して、本発明の配向膜を使用すると、DC残像が急激に減少するということである。図13において、本発明によれば、DC残像は中間調に戻してから10分後にはDC残像は25%以下になるのに対して、光配向膜1層の場合は、同じ時間のDC残像は90%以上である。
【0086】
DC残像を対策する他の方法は、一定のパターンを長時間表示しても配向膜に電荷蓄積しない構成とすることである。これは、配向膜の体積抵抗を極端に大きくすることによって実現することが出来る。本発明では、これを実現するために、配向膜を2層構造として、上層に光配向膜を形成し、下層に高膜強度配向膜を形成し、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも大きくする構成とする。上層の光配向膜は光配向特性の制約があって、体積抵抗を変化させる自由度は小さい。これに対して下層の高膜強度配向膜は体積抵抗を変化させる自由度を大きくすることが出来る。
【0087】
高膜強度配向膜の体積抵抗を1015Ωcmよりも大きくすると、配向膜全体として電気抵抗が大きくなり、配向膜やパッシベ−ション膜上に電荷が蓄積しにくくなる。光配向膜としてのポリアミド酸エステルの体積抵抗は1015オームcm程度と大きいので、下層の高膜強度配向膜の体積抵抗を1015オームcmよりも大きくすることによって、さらに配向膜上に電荷が蓄積しにくくなる。
【0088】
実施例1および実施例2で説明した2層配向膜の構成をまとめると次のようになる。上層を光配向膜とし、下層を高膜強度配向膜とする構成として、上層にポリアミド酸エステルを用い、下層にポリアミド酸を用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸エステルの含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を小さくするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも小さくする。
【0089】
他の2層配向膜の構成例としては、上層にポリアミド酸を用い、下層にポリアミド酸を用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸の含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を小さくするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも小さくする。
【0090】
さらに他の2層配向膜の構成例としては、上層にポリアミド酸エステルを用い、下層にポリアミド酸エステルを用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸エステルの含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を生じないようにするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも大きくする。
【0091】
以上の説明は、TFT基板100側の配向膜113について説明したが、対向基板200側の配向膜113についても同様である。対向基板200側の配向膜113は、オーバーコート膜203の上に形成されるが、この場合も、高膜強度配向膜1132を形成する非光分解性ポリマー11がオーバーコート膜203と馴染みが強いために、レベリングによって高膜強度配向膜1132がオーバーコート膜203側に形成され、その上に光配向膜1131が形成されることになる。さらに、高膜強度配向膜の数平均分子量が光配向膜よりも大きいので、相分離がより生じやすい。
【符号の説明】
【0092】
10…光分解性ポリマー、 11…非光分解性ポリマー、 15…紫外線による切断部、 100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…上部絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…表面導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1131…光配向膜、 1132…高膜強度配向膜
【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置に係り,特に配向膜に光の照射で配向制御能を付与した液晶表示パネルを具備した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が設置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、TV等の大型表示装置から、携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等、色々な分野で用途が広がっている。一方、液晶表示装置では視野角特性が問題である。視野角特性は、画面を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合に、輝度が変化したり、色度が変化したりする現象である。視野角特性は、液晶分子を水平方向の電界によって動作させるIPS(In Plane Switching)方式が優れた特性を有している。
【0004】
液晶表示装置に使用する配向膜を配向処理すなわち配向制御能を付与する方法として,従来技術としてラビングで処理する方法がある。このラビングによる配向処理は,配向膜を布で擦ることで配向処理を行うものであるが,一方,配向膜に非接触で配向制御能を付与する光配向法という手法がある。IPS方式はプレティルト角が必要無いために、光配向法を適用することが出来る。
【0005】
「特許文献1」には紫外線に代表される光の照射による光分解型の光配向処理が開示されており,光分解型の光配向処理においては(1)画素部の複雑な段差構造に起因する配向乱れを低減し,(2)ラビングによる配向処理における静電気による薄膜トランジスタの破損,ラビング布の毛先の乱れや塵による配向乱れを原因とする表示不良を解決し,均質な配向制御能を得るために要する頻繁なラビング布の交換によるプロセスの煩雑さ,を解決することが記載されている。
【0006】
また、「特許文献2」には、配向膜を2層構造とし、上層に光配向可能な配向膜を形成し、下層に、光配向はできないが、上層よりも体積抵抗の低い配向膜を形成することによって、残像の消失時間を短くした構成が記載されている。「特許文献3」には、光配向において問題となる方位角アンカリング強度の測定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−206091号公報
【特許文献2】特願2008−235900号公報
【特許文献3】特開2003−57147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
配向膜への配向制御能の付与という点において,光配向処理はラビング処理と比較すると,一般的には配向安定性が低いということが知られている。配向安定性が低いと,初期配向方向が変動し,表示不良の原因となる。特に,高い配向安定性が要求される横電界方式の液晶表示パネルを用いた液晶表示装置では配向安定性が低いことで残像に象徴される表示不良が発生し易い。
【0009】
光配向処理ではラビング処理のような高分子の主鎖を延伸し,直線状にする工程がLCDプロセス中に存在しない。そのため,光配向処理においては偏光が照射されたポリイミドに代表される合成高分子の配向膜が,当該偏光方向と平行する方向で主鎖が切断されることで、当該偏光方向と直交する方向に一軸異方性が付与される。液晶分子は、切断されずに直線上に伸びて残った長い主鎖方向に沿って配向するが,この主鎖の長さが短くなると,一軸異方性が低下し,液晶との相互作用が弱くなって配向安定性が低下するために,前記した残像が発生し易くなる。
【0010】
従って,配向膜の一軸異方性を向上させ,配向安定性を向上させるためには,配向膜の分子量を大きくすることが必要であるが,これを解決する手法として,ポリアミド酸エステルをイミド化した光配向膜材料を使用することが出来る。これによると,ポリアミド酸エステル材料では,従来のポリアミド酸材料で起こっていたようなイミド化反応時のジアミンと酸無水物への分解反応を伴わず,イミド化後も分子量を大きく保つことができ,ラビング処理並みの配向安定性を得ることができる。
【0011】
また,ポリアミド酸エステル材料においては,その化学構造中にカルボン酸を含有しないため,ポリアミド酸材料と比較してLCDの電圧保持率が上がり,長期信頼性の向上も確保することができる。
【0012】
一方、光配向を用いた液晶表示装置では、長時間動作を行うと、液晶の初期配向の方向が液晶表示装置の製造当初からの方向と、ずれてきてしまい、この原因によって残像が生ずる。これをAC残像と称する。このような残像発生の原因は、配向膜の方位角アンカリング強度が弱いからであることがわかった。したがって、AC残像は非可逆的であり、回復はできない。なお、方位角アンカリング強度は、液晶分子を初期の配向方向から方位角方向にずれにくくさせる強度のことである。
【0013】
一方、配向膜に電荷が蓄積することによって生ずる残像もある。これをDC残像と称している。DC残像は可逆的であり、時間が経過すると消失する。
【0014】
本発明の課題は、光配向方式において、配向膜の方位角アンカリング強度を向上し、いわゆるAC残像を生じさせないことである。また、本発明の目的は、同時に、いわゆるDC残像を生じさせないか、生じても短時間で消失させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、液晶を配向させる配向膜を2層構造とし、液晶と接する上層を光配向膜とし、基板側の下層を高膜強度配向膜とする。上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はポリアミド酸を前駆体として形成する。
【0016】
このような2層となった配向膜を乾燥、焼成した後、偏光紫外線を照射することによって光配向膜を光配向させ、その後、紫外線を照射した基板を加熱することによって配向膜を完成する。
【0017】
光配向膜におけるイミド化率は50%以上である。また、配向膜全体における光配向膜の割合は30%から60%である。上層の光配向膜の体積抵抗率は、下層の高膜強度配向膜の抵抗率よりも大きい。
【0018】
本発明の他の構成としては、上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸を80%以上含むポリアミド酸を前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はシクロブタンを含まないポリアミド酸を前駆体として形成する。製造プロセスは上記と同様である。
【0019】
本発明のさらに他の構成としては、上層の光配向膜は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルを80%以上含むポリアミド酸エステルを前駆体として形成し、下層の高膜強度配向膜はシクロブタンを含まないポリアミド酸エステルを前駆体として形成する。製造プロセスは上記と同様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配向膜を液晶と接する側の光配向膜と基板側の高膜強度配向膜の2層構造としているので、方位角アンカリング強度が強く、長期間動作後においても残像の少ない液晶表示装置を光配向によって実現することが出来る。
【0021】
また、本発明によれば、紫外線によって光配向をさせた後、基板を所定の温度で加熱するので、配向膜の機械的な強度を劣化させることがないので、配向膜のアンカリング強度を大きくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】IPS方式の液晶表示装置の断面図である。
【図2】図1の画素電極の平面図である。
【図3】本発明による配向膜の構成を示す図である。
【図4】光配向膜の原理を示す図である。
【図5】本発明の配向膜の断面図である。
【図6】シクロブタンを含むポリアミド酸エステルの化学式である。
【図7】シクロブタンを含むポリアミド酸の化学式である。
【図8】光配向の配向膜形成プロセスである。
【図9】方位角アンカリング強度と残像の関係を示すグラフである。
【図10】配向膜の構成と形成プロセスと方位角アンカリング強度の関係を示すグラフである。
【図11】光配向膜のプロセス条件と方位角アンカリング強度の関係を示すグラフである。
【図12】DC残像の評価パターンである。
【図13】DC残像の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の実施例により本発明の内容を詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はIPS方式の液晶表示装置の表示領域における構造を示す断面図である。IPS方式の液晶表示装置の電極構造は種々のものが提案され、実用化されている。図1の構造は、現在広く使用されている構造であって、簡単に言えば、平面ベタで形成された対向電極108の上に絶縁膜を挟んで櫛歯状の画素電極110が形成されている。そして、画素電極110と対向電極108の間の電圧によって液晶分子301を回転させることによって画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより画像を形成するものである。以下に図1の構造を詳しく説明する。なお、本発明は、図1の構成を例にとって説明するが、図1以外のIPSタイプの液晶表示装置にも適用することが出来る。
【0025】
図1において、ガラスで形成されるTFT基板100の上に、ゲート電極101が形成されている。ゲート電極101は走査線と同層で形成されている。ゲート電極101はAlNd合金の上にMoCr合金が積層されている。
【0026】
ゲート電極101を覆ってゲート絶縁膜102がSiNによって形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に半導体層103がa−Si膜によって形成されている。a−Si膜はプラズマCVDによって形成される。a−Si膜はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んでa−Si膜上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。なお、a−Si膜とソース電極104あるいはドレイン電極105との間には図示しないn+Si層が形成される。半導体層とソース電極104あるいはドレイン電極105とのオーミックコンタクトを取るためである。
【0027】
ソース電極104は映像信号線が兼用し、ドレイン電極105は画素電極110と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。本実施例では、ソース電極104あるいはドレイン電極105はMoCr合金で形成される。ソース電極104あるいはドレイン電極105の電気抵抗を下げたい場合は、例えば、AlNd合金をMoCr合金でサンドイッチした電極構造が用いられる。
【0028】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106がSiNによって形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物401から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。厚さは1μmから4μmである。
【0029】
有機パッシベーション膜107には感光性のアクリル樹脂、シリコン樹脂、あるいはポリイミド樹脂等が使用される。有機パッシベーション膜107には、画素電極110とドレイン電極105が接続する部分にスルーホール111を形成する必要があるが、有機パッシベーション膜107は感光性なので、フォトレジストを用いずに、有機パッシベーション膜107自体を露光、現像して、スルーホール111を形成することが出来る。
【0030】
有機パッシベーション膜107の上には対向電極108が形成される。対向電極108は透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)を表示領域全体にスパッタリングすることによって形成される。すなわち、対向電極108は面状に形成される。対向電極108を全面にスパッタリングによって形成した後、画素電極110とドレイン電極105を導通するためのスルーホール111部だけは対向電極108をエッチングによって除去する。
【0031】
対向電極108を覆って上部絶縁膜109がSiNによって形成される。上部絶縁膜109が形成された後、エッチングによってスルーホール111を形成する。この上部絶縁膜109をレジストにして無機パッシベーション膜106をエッチングしてスルーホール111を形成する。その後、上部絶縁膜109およびスルーホール111を覆って画素電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして画素電極110を形成する。画素電極110となるITOはスルーホール111にも被着される。スルーホール111において、TFTから延在してきたドレイン電極105と画素電極110が導通し、映像信号が画素電極110に供給されることになる。
【0032】
図2に画素電極110の1例を示す。画素電極110は、櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。画素電極110の下方には、平面状の対向電極108が形成されている。画素電極110に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極108との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
【0033】
図1はこの様子を断面図として説明したものである。櫛歯状の電極と櫛歯状の電極の間は図1に示すスリット112となっている。対向電極108には一定電圧が印加され、画素電極110には映像信号による電圧が印加される。画素電極110に電圧が印加されると図1に示すように、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。
【0034】
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された対向電極108が配置され、上部絶縁膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された画素電極110を配置し、上部絶縁膜109の上に櫛歯状の対向電極108が配置される場合もある。
【0035】
画素電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。本発明においては、配向膜113は、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される高膜強度配向膜1132の2層構造となっている。配向膜の113の構成については、後で詳細に説明する。
【0036】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタ201が形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0037】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。
【0038】
オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。対向基板側の配向膜113もTFT基板側の配向膜113と同様に、液晶層300と接する光配向膜1131と、光配向膜1131の下層に形成される低抵抗配向膜1132の2層構造となっている。なお、図1はIPSであるから、対向電極108はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。
【0039】
図1に示すように、IPSでは、対向基板200の内側には導電膜が形成されていない。そうすると、対向基板200の電位が不安定になる。また、外部からの電磁ノイズが液晶層300に侵入し、画像に対して影響を与える。このような問題を除去するために、対向基板200の外側に表面導電膜210が形成される。表面導電膜210は、透明導電膜であるITOをスパッタリングすることによって形成される。
【0040】
図3は本発明による配向膜113を示す模式図である。図3(a)は配向膜113の平面透視図、図3(b)は断面斜視図である。本発明の配向膜113は2層構造となっており、液晶層と接する上側は光配向膜1131であり、下側は高膜強度配向膜1132となっている。
【0041】
ポリアミド酸エステルの分子式は化学式(1)によって表される。
【0042】
【化1】
【0043】
化学式(1)において、R1は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ビニル基(−(CH2)m−CH=CH2,m=0,1,2)又はアセチル基(−(CH2)m−C≡CH,m=0,1,2)であり、Arは芳香族化合物である。
【0044】
なお、化学式(1)は、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルであるが、シクロブタンを含まないポリアミド酸エステルも存在する。しかし、光配向させることが出来るのは、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルであるので、シクロブタンを含むポリアミド酸エステルは80%以上である必要がある。
【0045】
図3におけるポリアミド酸の分子式は化学式(2)によって表される。化学式(2)はシクロブタンを含まないポリアミド酸の構造例である。
【0046】
【化2】
【0047】
化学式(2)において、R2は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ビニル基(−(CH2)m−CH=CH2,m=0,1,2)又はアセチル基(−(CH2)m−C≡CH,m=0,1,2)であり、Arは芳香族化合物である。
【0048】
なお、化学式(2)は、化学式(1)と異なり、シクロブタンを含んでいない。高膜強度配向膜は光配向をする必要が無いので、シクロブタンは必要が無い。逆に化学式(2)はシクロブタンが無いので、紫外線の影響を受けにくい。その他に、化学式(1)と化学式(2)が異なる点は、化学式(2)においては、ポリアミド酸エステルを示す化学式(1)において、R1がHに置き換わっている点である。
【0049】
図3(a)は透視図であるから光配向膜における光分解性ポリマー10と高膜強度配向膜における非光分解性ポリマー11が透視して見えている。図3(b)において、配向膜113は図1における画素電極110あるいは有機パッシベーション膜107の上に形成されている。図3(b)では配向膜113は画素電極110の上に形成されるとしている。上側の光配向膜1131の厚さt1は50nm程度、下側の高膜強度配向膜1132の厚さt2は50nm程度である。光配向膜1131と高膜強度配向膜1132の境界は明確ではないので、点線で記載している。
【0050】
図4は光配向膜1131によって液晶を配向させるための原理を示す模式図である。図4において、高膜強度配向膜1132は省略されている。図4(a)は光配向膜1131が塗布された状態を示している。光配向膜1131は光分解性ポリマー10によって形成されている。
【0051】
図4(a)に示す光配向膜1131に対し、横方向に偏光された紫外線を例えば、6J/cm2のエネルギーで照射する。そうすると、光配向膜1131において偏光された紫外線の偏光方向の光分解性ポリマー10は、図4(b)に示すように、紫外線によって破壊される。すなわち、紫外線の偏光方向に沿って紫外線による切断部15が形成される。そうすると、液晶分子は図4(b)における矢印Aの方向に配向されることになる。
【0052】
図4に示すように、光分解性ポリマー10の主鎖が短いと一軸異方性が低下し、液晶との相互作用が弱くなって配向性が低下する。したがって、図4(b)において、光配向後においても、光分解性ポリマー10が矢印Aの方向にできるだけ長く伸びていることが望ましい。つまり、配向膜113の一軸異方性を向上させ、配向安定性を向上させるためには、配向膜113の分子量を大きくする必要がある。
【0053】
配向膜113における分子量としては、数平均分子量によって評価することが出来る。数平均分子量は、配向膜113に種々の分子量のポリマーが存在している場合、その平均的な分子量である。光配向膜1131においては、十分な配向安定性を得るためには、数平均分子量は5000以上であることが必要である。
【0054】
このような、大きな数平均分子量の光配向膜1131を得るためには、ポリアミド酸エステルをイミド化したものを用いることが出来る。ポリアミド酸エステルの構造は、先に示した化学式(1)に示すとおりである。
【0055】
ポリアミド酸エステルの特徴は、化学式(1)におけるR1である。ポリアミド酸エステルにおいては、R1はCnH2n−1であり、nが1以上である。ポリアミド酸エステルを光配向膜1131の前駆体として用いると、従来のポリアミド酸材料で起こっていたようなイミド化反応時のジアミンと酸無水物への分解反応を伴わず、イミド化後も分子量を大きく保つことができ、ラビング処理並みの配向安定性を得ることができる。
【0056】
しかし、光配向膜は紫外線によって、主鎖が特定方向において破壊されるので、膜強度が低下する。配向膜の方位角アンカリング強度の劣化は、配向膜の機械的な強度に関係することが発明者の研究によって明らかになった。そこで、配向膜を2層構造とし、下層に高膜強度配向膜を配置し、上層に光配向膜を配置することによって配向膜全体の膜強度を上げることが配向膜の方位角アンカリング強度向上に効果的である。
【0057】
図5は2層配向膜を形成する方法を示す断面模式図である。2層構造の配向膜113を形成するために、配向膜113形成プロセスを増やすことなく行うことが出来る。すなわち、図5(a)に示すように、光分解性ポリマー10と高膜強度配向膜を形成するポリマー11を混合した材料を基板に塗布すると、レベリング効果によって図5(b)に示すように、基板と馴染みやすい材料が下層に形成され、他の材料が上に形成される、いわゆる相分離を生ずる。
【0058】
本実施例において、基板に相当するのは、画素電極110を形成するITOまたは、有機パッシベーション膜107である。ポリアミド酸はポリアミド酸エステルに比較して極性が高く(表面エネルギーが大きく)ITOあるいは有機パッシベーション膜107と馴染みやすいので、常にポリアミド酸が下層となる。本発明ではポリアミド酸によって形成される高膜強度配向膜の数平均分子量がポリアミド酸エステルによって形成される光配向膜の数平均分子量よりも大きいので、極性または表面エネルギーの効果に加えて、相分離をさらに容易に生ずることが出来る。2層の配向膜のうち、光配向膜1131の占める割合は、配向膜全体の30%以上で、60%以下である。これは、一つには光配向膜を十分に上層に配置させるためと、一つには2層の配向膜を塗布した後に相分離を起こしやすいからである。
【0059】
このようにして形成された樹脂膜に200℃程度の熱を加えてイミド化する。イミド化は下層のポリアミド酸1132、上層のポリアミド酸エステル1131の両者に対して同時に行われる。したがって、1層の配向膜113形成と同じ工程によって2層の配向膜113形成を行うことが出来る。
【0060】
上層の光配向膜1131は配向特性を安定化するために、光分解性ポリマー10の光分解効率を高くする必要があるので、イミド化率は高くする必要がある。これはイミド化していないと光分解反応が起こりにくいからである。一般的に、ポリアミド酸エステルはイミド化しにくいため、イミド化を補助する目的で、イミド化促進剤を添加剤として加えてもよい。光配向膜1131におけるイミド化率は50%以上であり、より好ましくは70%以上である。この残りは、前駆体としてのポリアミド酸エステルが光配向膜1131に存在することになる。
【0061】
一方、下層の高膜強度配向膜1132は液晶の光配向特性とは関係が無いので、イミド化率は特に規定する必要は無い。すなわち、イミド化の条件は、上層のポリアミド酸エステルのイミド化を主眼に設定すればよい。
【0062】
配向膜113の上層と下層の境界は明確ではない。図5ではこの境界を点線で示している。図5(b)において、上層の光配向膜1131はポリアミド酸エステルで構成されているが、図6に示すような、シクロブタンを有するポリアミド酸エステルが全体の80%以上を占める。すなわち、ポリアミド酸エステルにおいて、シクロブタンが偏光紫外線によって分解されることによって光配向特性を生ずるので、シクロブタンを有するポリアミド酸エステルの割合が多くなることは必須である。
【0063】
一方、下層の高膜強度配向膜1132は、ポリアミド酸によって形成されているが、図7に示すシクロブタンを有するポリアミド酸は無いことが望ましい。代わりに化学式(2)で示されるような、シクロブタンを含まないポリアミド酸が使用される。すなわち、光配向後も配向膜全体として機械的な強度を保つためには、下層の高膜強度配向膜は紫外線によって分解されないほうがよいからである。
【0064】
このように、2層の配向膜の特徴は、上層の光配向膜1131がシクロブタンを多く含み、下層の高膜強度配向膜1132はシクロブタンを含まないように形成されていることである。つまり、光配向膜1131の液晶と接する側は多くのシクロブタンを含み、高膜強度配向膜1132の画素電極あるいは有機パッシベーション膜と接する側はシクロブタンをほとんど含まないということになる。
【0065】
以上のように、配向膜113の前駆体として、上層をシクロブタンを多く含むポリアミド酸エステルによって形成し、下層をシクロブタンを含まないポリアミド酸によって形成しても、光配向を行うための後工程によっては、配向膜全体として、機械的な強度が劣化する場合が生ずる。
【0066】
図8は、光配向のプロセスを示すフローチャートである。図8において、配向膜を塗布した後、乾燥させる。乾燥させるまでに、配向膜は、光配向膜1131と高膜強度配向膜1132の2層に相分離する。その後、配向膜を焼成して、イミド化する。その後光配向を行うが、従来は、基板を200℃程度に加熱した状態で直線偏光紫外線を照射して光配向をおこなっていた。しかし、基板を加熱しながら紫外線照射を行うと配向膜の下層である高膜強度配向膜も紫外線によって光分解を生じ、膜硬度が低下してしまう。
【0067】
これに対して、本発明は、図8の右側の点線で囲んだ部分に示すように、基板を加熱せずに、偏光紫外線を照射し、その後、基板を加熱する工程としている。このような工程とすることによって、下層の高膜強度配向膜が紫外線によって光分解をすることを防止することが出来、配向膜全体として必要な膜強度を保つことが出来る。
【0068】
以上のような構成によって、配向膜の初期の方位角アンカリング強度を向上させることが出来る。図9は、方位角アンカリング強度と残像輝度変化率の関係を示すものである。方位角アンカリング強度の測定方法は、「特許文献3」に記載の方法を用いた。図9において、横軸は方位角アンカリング強度であり、単位は10−3J/m2である。縦軸は残像輝度変化率である。残像輝度変化率は、例えば、図12に示すようなチェッカーフラグパターンを12時間表示し、その後、灰色ベタの中間調に戻す。中間調の階調は64/256である。この時、チェッカーフラグパターンの明るい部分と暗い部分の輝度比が残像輝度変化率である。
【0069】
図9において、残像輝度変化率が1%以下であれば、残像が見えないとしてよい。図9において、残像が見えないようにするためには、方位角アンカリング強度が3.5×10−3J/m2以上である必要がある。
【0070】
図10は、配向膜の構成および光配向のプロセスによる方位角アンカリング強度の比較をした結果の表である。図10において、配向膜の構造を従来のように1層構造とした場合と、2層構造にした場合を比較している。また、光配向のプロセスにおいて、基板の加熱と紫外線の照射を同時に行う場合と、紫外線照射の後、基板を加熱する場合とで比較している。
【0071】
図10に示すように、目標値である、方位角アンカリング強度が3.5×10−3J/m2であることを満足する条件は、配向膜が2層構造で、紫外線照射後に基板を加熱するプロセスを用いた場合のみである。すなわち、本発明を用いることによって、光配向方式において、実質的に残像の問題を解決した液晶表示装置を実現することが出来る。
【0072】
このように、光配向のプロセス条件によって残像を対策した配向膜を得ることができる。図11は残像を生じないためのプロセス裕度を評価した結果を示す表である。図11において、紫外線(UV)照射量、紫外線照射後の加熱温度、紫外線照射から基板加熱までの時間をパラメータとして、方位角アンカリング強度を比較している。
【0073】
図11において、紫外線の条件は、波長230〜330nm全ての波長を積算したエネルギーである。また、紫外線は偏光紫外線を用いるが、偏光方向とそれに直角方向の紫外線強度の比(消光比)は波長230〜330nmの範囲において、15:1以上である。
【0074】
図11において、条件Aは、紫外線の照射量は2000〜5000mJ/cm2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、230℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は1時間以内である。条件Bは、紫外線の照射量は1000〜7000mJc/m2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、200℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は24時間以内である。条件Cは、紫外線の照射量は500〜8000mJ/cm2であり、紫外線照射後に基板を加熱する温度は、150℃以上であり、紫外線照射後、基板を加熱するまでの時間は168時間以内である。
【0075】
図11における条件Aが方位角アンカリング強度を最も大きくすることが出来、方位角アンカリング強度は4.2である。次いで条件Bがアンカリング強度4.0で、条件Cが方位角アンカリング強度3.5である。条件Aによって光配向することが望ましいが、製造ラインの要請によって、条件Aによって光配向出来ない場合もあるが、少なくとも、条件Cレベル以上の光配向条件を確保する必要がある。
【0076】
以上の実施例では、上層の光配向膜としてシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを用い、下層の高膜強度配向膜としてシクロブタンを有しないポリアミド酸を用いた配向膜について説明した。しかし、本発明は、これに限らず、上層にシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを用い、下層にシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを用いた配向膜によっても、光配向のプロセスとして、紫外線照射後に基板を加熱することによって、所定の効果を得ることが出来る。
【0077】
また、上層にシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を用い、下層にシクロブタンを有しないポリアミド酸を用いた配向膜によっても、光配向のプロセスとして、紫外線照射後に基板を加熱することによって、所定の効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0078】
実施例1においては、配向膜の構成と光配向のプロセスについて、主としていわゆるAC残像に対する効果について説明した。本発明の構成は、AC残像に限らず、いわゆるDC残像に対しても効果を上げることが出来る。
【0079】
DC残像は、配向膜の特定の場所に電荷が蓄積することによって生ずる現象である。したがって、電荷が消失すると残像も消失するので、可逆的な現象である。DC残像が生じないようにするには、配向膜に蓄積した電荷を速やかに消失させる構成とすること、または、そもそも配向膜に電荷が蓄積しない構成とすることが考えられる。
【0080】
まず、蓄積した電荷が速やかに消失する構成について説明する。DC残像は次のようにして評価した。すなわち、図12に示すような白黒による8×8のチェッカーフラグパターンを12時間表示し、その後、灰色ベタの中間調に戻す。中間調の階調は、64/256である。中間調に戻してから10分後、チェッカーフラグパターンが認識出来ればNGであり、認識できなければOKである。
【0081】
本発明の配向膜は、実施例1で説明したように、上層の光配向膜と下層の高膜強度配向膜とから構成されている。本実施例においては、高膜強度配向膜に対して、体積抵抗を1014Ωcm以下、好ましくは1013Ωcm以下とする。すなわち、上層の光配向膜の体積抵抗よりも1桁以上小さくする。この体積抵抗値は、配向膜にバックライトの光が照射されている状態で得られる体積抵抗値であってもよい。これによって、配向膜にチャージした電荷を速やかに放出させる。
【0082】
図13はこのような2層構造の配向膜と、従来の1層の配向膜の場合とで、DC残像を比較した場合の評価結果である。図13において、横軸は、灰色ベタの中間調に戻したあとの時間である。縦軸は、残像のレベルである。縦軸において、RRは中間調に戻したときに、チェッカーフラグパターンが良く見える状態であり、NGである。Rは中間調い戻した時にチェッカーフラグパターンが薄いが見える状態である。
【0083】
図13において、曲線Aが本発明による配向膜を使用した場合のDC残像特性である。また、曲線Bが配向膜として光配向膜1層のみを使用した場合のDC残像特性の例である。
【0084】
中間調に戻したときに、残像のレベルがRであっても、これが短時間に消失すれば、実用上は問題ないといえる。光配向膜1層の場合は、中間調に戻したときのレベルRが長時間続くので、実用上問題が残る。一方、本発明による2層構造の配向膜113では、DC残像が急激に減少し、中間調に戻したあと、17分程度で、DC残像は完全に消滅する。
【0085】
このように、光配向膜1層の場合と本発明の配向膜の場合の大きな違いは、光配向膜1層の場合は、DC残像が長く続くのに対して、本発明の配向膜を使用すると、DC残像が急激に減少するということである。図13において、本発明によれば、DC残像は中間調に戻してから10分後にはDC残像は25%以下になるのに対して、光配向膜1層の場合は、同じ時間のDC残像は90%以上である。
【0086】
DC残像を対策する他の方法は、一定のパターンを長時間表示しても配向膜に電荷蓄積しない構成とすることである。これは、配向膜の体積抵抗を極端に大きくすることによって実現することが出来る。本発明では、これを実現するために、配向膜を2層構造として、上層に光配向膜を形成し、下層に高膜強度配向膜を形成し、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも大きくする構成とする。上層の光配向膜は光配向特性の制約があって、体積抵抗を変化させる自由度は小さい。これに対して下層の高膜強度配向膜は体積抵抗を変化させる自由度を大きくすることが出来る。
【0087】
高膜強度配向膜の体積抵抗を1015Ωcmよりも大きくすると、配向膜全体として電気抵抗が大きくなり、配向膜やパッシベ−ション膜上に電荷が蓄積しにくくなる。光配向膜としてのポリアミド酸エステルの体積抵抗は1015オームcm程度と大きいので、下層の高膜強度配向膜の体積抵抗を1015オームcmよりも大きくすることによって、さらに配向膜上に電荷が蓄積しにくくなる。
【0088】
実施例1および実施例2で説明した2層配向膜の構成をまとめると次のようになる。上層を光配向膜とし、下層を高膜強度配向膜とする構成として、上層にポリアミド酸エステルを用い、下層にポリアミド酸を用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸エステルの含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を小さくするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも小さくする。
【0089】
他の2層配向膜の構成例としては、上層にポリアミド酸を用い、下層にポリアミド酸を用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸の含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を小さくするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも小さくする。
【0090】
さらに他の2層配向膜の構成例としては、上層にポリアミド酸エステルを用い、下層にポリアミド酸エステルを用い、上層におけるシクロブタンを含むポリアミド酸エステルの含有量を80%以上とする。上層のイミド化率が50%以上である。このような構成において、DC残像を生じないようにするために、下層の体積抵抗率を上層の体積抵抗率よりも大きくする。
【0091】
以上の説明は、TFT基板100側の配向膜113について説明したが、対向基板200側の配向膜113についても同様である。対向基板200側の配向膜113は、オーバーコート膜203の上に形成されるが、この場合も、高膜強度配向膜1132を形成する非光分解性ポリマー11がオーバーコート膜203と馴染みが強いために、レベリングによって高膜強度配向膜1132がオーバーコート膜203側に形成され、その上に光配向膜1131が形成されることになる。さらに、高膜強度配向膜の数平均分子量が光配向膜よりも大きいので、相分離がより生じやすい。
【符号の説明】
【0092】
10…光分解性ポリマー、 11…非光分解性ポリマー、 15…紫外線による切断部、 100…TFT基板、 101…ゲート電極、 102…ゲート絶縁膜、 103…半導体層、 104…ソース電極、 105…ドレイン電極、 106…無機パッシベーション膜、 107…有機パッシベーション膜、 108…対向電極、 109…上部絶縁膜、 110…画素電極、 111…スルーホール、 112…スリット、 113…配向膜、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…表面導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 1131…光配向膜、 1132…高膜強度配向膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくとも一方の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第2の配向膜の体積抵抗率は、前記第1の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくとも一方の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第2の配向膜の体積抵抗率は、前記第1の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項1】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくとも一方の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
画素電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成され、前記液晶層と接しない第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第2の配向膜の体積抵抗率は、前記第1の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくとも一方の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸が80%以上であるポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸を前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第1の配向膜の体積抵抗率は、前記第2の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
画素電極と対向電極とTFTを有する画素の上に配向膜が形成されたTFT基板と、前記TFT基板に対向し、カラーフィルタの上に配向膜が形成された対向基板と、前記TFT基板の配向膜と前記対向基板の配向膜の間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、
前記少なくともTFT基板の配向膜は液晶層と接する第1の配向膜と、前記第1の配向膜の下層に形成された第2の配向膜によって構成され、
前記第1の配向膜はシクロブタンを有するポリアミド酸エステルが80%以上であるポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記第2の配向膜はシクロブタンを有しないポリアミド酸エステルを前駆体として形成され、
前記配向膜における前記第1の配向膜の割合は、30%〜60%であり、
第1の配向膜のイミド化率は、50%以上であり、
前記第2の配向膜の体積抵抗率は、前記第1の配向膜の体積抵抗率よりも大きく、
前記第1の配向膜は光配向処理されていることを特徴とする液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−54373(P2013−54373A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237524(P2012−237524)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2010−32443(P2010−32443)の分割
【原出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2010−32443(P2010−32443)の分割
【原出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】
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