説明

液晶装置の製造方法及び製造装置

【課題】生産性の低下を抑制し、所望の品質が得られる液晶装置の製造方法を提供する。
【解決手段】無機配向膜を備えた液晶装置は、基板上に無機配向膜を形成する工程と、基板上に帯電する静電気量を測定する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置は、液晶を配向させる配向膜を備えている。配向膜として、ポリイミド等の有機材料からなる高分子膜をラビング処理したものを用いる場合が多いが、近時においては、耐熱性や耐光性の向上等を目的として、窒化珪素等の無機材料からなる配向膜、すなわち無機配向膜を用いることが提案されている。下記特許文献1、2には、無機配向膜を備えた液晶装置に関する技術の一例が開示されている。
【特許文献1】特開平11−160711号公報
【特許文献2】特開2000−47211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、液晶装置の品質は水分により劣化する可能性が高いので、液晶装置の製造工程中においても、無機配向膜など、液晶装置を構成する部材が吸湿したり、その部材に水分が付着することを抑える必要がある。液晶装置の製造工程中において、液晶装置を構成する部材が吸湿した状態、あるいはその部材に水分が付着した状態を放置したままで、その部材を用いた液晶装置の製造を続行すると、製造後の液晶装置の品質は不十分なものとなり、生産性の低下にもつながる。また、水分のみならず、液晶装置を構成する部材の表面が異常な状態を放置したままで、その部材を用いた液晶装置の製造を続行した場合にも、製造後の液晶装置の品質は不十分なものとなり、生産性の低下にもつながる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生産性の低下を抑制し、所望の品質が得られる液晶装置の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、無機配向膜を備えた液晶装置の製造方法において、基板上に前記無機配向膜を形成する工程と、前記基板上に帯電する静電気量を測定する工程とを含む製造方法を提供する。
【0006】
本発明によれば、液晶装置の製造工程中において、液晶装置を構成する部材の状態を把握することができる。例えば、液晶装置を構成する部材の静電気量は、その部材の吸湿状態(水分の付着状態)に応じて変化するので、基板上に帯電する静電気量を測定することにより、その測定結果に基づいて、部材の吸湿状態(水分の付着状態)を把握することができる。また、製造工程中において、部材の表面処理を実行した場合、その表面処理が良好に実行できたかどうかを、静電気量の測定結果に基づいて判別することもできる。また、静電気量の測定結果に基づいて部材の状態を把握するので、部材に影響を与えることなく、簡易な手法で短時間のうちにその部材の状態を把握することができる。そして、静電気量の測定結果に基づいて、例えば液晶装置を構成する部材の状態が異常であると判断された場合には、例えばその部材を用いずに液晶装置の製造を実行したり、あるいはその部材を正常な状態に戻すような処理を実行する等、適切な処置を講ずることができる。したがって、生産性の低下を抑制し、所望の品質が得られる液晶装置を製造することができる。
【0007】
本発明の製造方法において、前記基板上に前記無機配向膜を形成する前に、前記基板の表面の静電気量を測定する構成を採用することができる。これにより、無機配向膜を形成する前に、基板の状態を静電気量の測定結果に基づいて把握することができる。
【0008】
本発明の製造方法において、前記基板上に前記無機配向膜を形成した後に、前記基板上の前記無機配向膜の表面の静電気量を測定する構成を採用することができる。これにより、形成された無機配向膜の状態を静電気量の測定結果に基づいて把握することができる。
【0009】
本発明の製造方法において、前記無機配向膜を形成した後、前記無機配向膜の表面を処理する工程を有し、前記処理された前記無機配向膜上に帯電する静電気量を測定する構成を採用することができる。これにより、製造工程中において、無機配向膜の表面に施した処理が良好に実行できたかどうかを、静電気量の測定結果に基づいて判別することもできる。
【0010】
本発明の製造方法において、前記処理は、前記無機配向膜を撥水性にする処理を含む構成を採用することができる。これにより、無機配向膜が吸湿したり、無機配向膜に水分が付着することを抑えることができ、液晶装置の品質の劣化を抑えることができる。そして、静電気量の測定結果に基づいて、無機配向膜を撥水性にする処理が良好に実行されたかどうかを判別することができる。
【0011】
本発明の製造方法において、前記処理は、所定の材料を前記無機配向膜の表面に供給する処理を含む構成を採用することができる。これにより、無機配向膜に所定の性能を与えることができ、液晶装置の品質の劣化を抑えることができる。そして、静電気量の測定結果に基づいて、所定の材料を供給する処理が良好に実行されたかどうかを判別することができる。
【0012】
本発明の製造方法において、前記材料は、アルコールを含むものであってもよいし、シランカップリング剤を含むものであってもよい。これにより、無機配向膜に所定の性能を与えることができる。
【0013】
また、本発明は、無機配向膜を備えた液晶装置の製造装置において、基板上に前記無機配向膜を形成する形成装置と、前記基板上に帯電する静電気量を測定する測定装置とを備えた製造装置を提供する。
【0014】
本発明によれば、液晶装置の製造工程中において、液晶装置を構成する部材の状態を把握することができる。例えば、液晶装置を構成する部材の静電気量は、その部材の吸湿状態(水分の付着状態)に応じて変化するので、基板上に帯電する静電気量を測定することにより、その測定結果に基づいて、部材の吸湿状態(水分の付着状態)を把握することができる。また、製造工程中において、部材の表面処理を実行した場合、その表面処理が良好に実行できたかどうかを、静電気量の測定結果に基づいて判別することもできる。また、静電気量の測定結果に基づいて部材の状態を把握するので、部材に影響を与えることなく、簡易な手法で短時間のうちにその部材の状態を把握することができる。そして、静電気量の測定結果に基づいて、例えば液晶装置を構成する部材の状態が異常であると判断された場合には、例えばその部材を用いずに液晶装置の製造を実行したり、あるいはその部材を正常な状態に戻すような処理を実行する等、適切な処置を講ずることができる。したがって、生産性の低下を抑制し、所望の品質が得られる液晶装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る液晶装置の製造方法を示すフローチャート図である。図1に示すように、本実施形態に係る製造方法は、無機配向膜を備えた液晶装置の製造方法であって、基板上に無機配向膜を形成する工程(ステップS5)と、基板上に帯電する静電気量を測定する工程(ステップS3、S6、S9)とを含む。また、本実施形態の製造方法は、基板上に無機配向膜を形成する前に、基板の表面の静電気量を測定する工程(ステップS3)と、基板上に無機配向膜を形成した後に、基板上の無機配向膜の表面の静電気量を測定する工程(ステップS6)と有している。また、本実施形態の製造方法は、無機配向膜を形成した後、無機配向膜の表面を処理する工程(ステップS8)と、その処理された無機配向膜上に帯電する静電気量を測定する工程(ステップS9)とを有している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態においては、まず、基板作成工程が行われる(ステップS1)。基板作成工程は、アレイ基板を製造する工程と、対向基板を製造する工程とを含む。
【0017】
アレイ基板(TFTアレイ基板)を製造する工程では、ガラス基板上に、画素電極、薄膜トランジスタ(TFT)、及び蓄積コンデンサ等を含む画素部分と、画素に電気信号等を供給する配線部分とが、例えばフォトリソグラフィ法、あるいはインクジェット法等の所定の手法を用いて形成される。アレイ基板は、ガラス基板上に形成された種々の金属膜、絶縁膜、半導体層、及び不純物層等を含む。
【0018】
対向基板(カラーフィルタ基板)を製造する工程では、ガラス基板上に、ブラックマトリクス、着色パターン(カラーフィルタ)、保護膜、及び電極等が、例えばフォトリソグラフィ法、あるいはインクジェット法等の所定の手法を用いて形成される。
【0019】
基板作成工程の後、洗浄工程が行われる(ステップS2)。洗浄工程では、ステップS1で形成されたアレイ基板と対向基板とが洗浄される。洗浄工程では、ウエット洗浄処理及びドライ洗浄処理の少なくとも一方が実行される。ウエット洗浄処理は、例えば、洗浄液を用いて基板を洗浄する動作、純水等でリンスする動作、及び超音波等を用いて微粒子を除去する動作を含む。ドライ洗浄処理は、例えば基板に紫外光を照射する動作を含む。
【0020】
洗浄工程が終了した後、基板上に残留している水分を除去するために、乾燥処理が実行される。乾燥処理は、例えばホットプレートを用いて基板を乾燥する動作、及び基板に遠赤外光等を照射してその基板を乾燥する動作等を含む。乾燥処理された後の基板は、温度調整(冷却)される。
【0021】
洗浄工程の後、基板上に帯電する静電気量を測定する工程(第1の静電気量測定工程)が行われる(ステップS3)。第1の静電気量測定工程では、アレイ基板の表面の静電気量を測定する動作、及び対向基板の表面の静電気量を測定する動作のそれぞれが実行される。
【0022】
図2は、アレイ基板1の表面1Aの静電気量を測定する動作を説明するための模式図である。静電気量の測定は、液晶装置を製造する製造装置LSの一部である静電気量測定装置(帯電量測定装置)11によって行われる。静電気量測定装置11を含む製造装置LSの動作は、制御装置10に制御される。また、制御装置10には記憶装置12が接続されている。ここで、アレイ基板1の表面1Aは、無機配向膜が形成される側の面(液晶層が形成される側の面)であり、静電気量測定装置11は、少なくともそのアレイ基板1の表面1Aの静電気量を測定する。なお、静電気量測定装置11は、アレイ基板1の表面1Aと反対側の面(裏面)の静電気量を測定することももちろん可能である。
【0023】
静電気量測定装置11は、アレイ基板1の表面1Aと対向する配置され、そのアレイ基板1の表面1Aの静電気量を測定するプローブを含む。静電気量測定装置11は、アレイ基板1の表面1Aの静電気量を非接触で測定し、その測定結果を制御装置10に出力する。
【0024】
制御装置10は、静電気量の測定結果が正常かどうかを判別する(ステップS4)。ここで、静電気量の測定結果が正常であるとは、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである状態をいう。
【0025】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1の表面1Aの状態が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1の表面1Aの状態が正常であると判断する。ここで、静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1の表面1Aの状態が正常であるとは、製造後における液晶装置が所望レベルの品質を得られる状態をいう。
【0026】
静電気量とアレイ基板1の表面1Aの状態との関係、ひいては静電気量と製造後における液晶装置の品質との関係は、例えば実験等により予め求めることができ、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1の表面1Aの状態を求めることができる。
【0027】
本実施形態においては、静電気量の許容レベルに関する情報が予め記憶装置12に記憶されており、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、静電気量の測定結果が正常かどうか、すなわちアレイ基板1の表面1Aの状態が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、その静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1の表面1Aが正常であると判断する。
【0028】
ここで、アレイ基板1の表面1Aの状態とは、アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)を含む。水(水分)は極性を有しており、アレイ基板1の表面1Aの静電気量は、そのアレイ基板1の表面1Aの水分量に応じて変化するので、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)を把握することができる。
【0029】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1の表面1Aの吸湿状態が正常であると判断する。
【0030】
アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態と、その吸湿状態に対応するアレイ基板1の表面1Aの静電気量との関係は、例えば実験又はシミュレーション等により予め求めることができ、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態を求めることができる。すなわち、本実施形態においては、静電気量測定装置11を含む製造装置LSは、静電気量測定装置11を用いてアレイ基板1の表面1Aの静電気量を測定し、その測定結果に基づいて、アレイ基板1の表面1Aの吸湿状態を求める。
【0031】
アレイ基板1の表面1Aの水分量が少ないほど、製造後の液晶装置の品質を良好にすることができる。したがって、静電気量測定装置11の測定結果、すなわちアレイ基板1の表面1Aの静電気量の値は大きい方が望ましい。本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11の測定結果の値が、予め定められている許容値よりも高い場合に、アレイ基板1の表面1Aの水分量が許容値以下に抑えられている(正常である)と判断する。
【0032】
同様に、制御装置10は、対向基板2の表面2Aの静電気量を静電気量測定装置11を用いて測定し、その測定結果が正常かどうか、すなわち対向基板2の表面2Aの状態(水分量)が正常かどうかを判別する。ここで、対向基板2の表面2Aは、無機配向膜が形成される側の面(液晶層が形成される側の面)であり、静電気量測定装置11は、少なくともその対向基板2の表面2Aの静電気量を測定する。なお、静電気量測定装置11は、対向基板2の表面2Aと反対側の面(裏面)の静電気量を測定することももちろん可能である。
【0033】
ステップS4において、アレイ基板1の表面1Aの静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、アレイ基板1の表面1Aの状態が正常である(表面1Aの水分量が許容値以下である)と判断された場合、その正常であると判断されたアレイ基板1上に無機配向膜を形成する工程が実行される(ステップS5)。
【0034】
本実施形態においては、製造装置LSは、例えば特開平11−160711号公報、特開2000−47211号公報等に開示されているような、斜方蒸着法によって、アレイ基板1の表面1Aに無機配向膜を形成する。無機配向膜は、SiO、SiO等の珪素酸化物、Al、ZnO、MgO、及びITO等の金属酸化物等を含む無機材料により形成される。
【0035】
図3は、アレイ基板1の表面1A及び対向基板2の表面2Aのそれぞれに無機配向膜を形成するための無機配向膜形成装置13を示す図、図4は、アレイ基板1の表面1A及び対向基板2の表面2Aに無機配向膜が形成される様子を説明するための模式図、図5は、アレイ基板1の表面1A及び対向基板2の表面2Aに形成された無機配向膜16、22を示す模式図である。
【0036】
図3に示すように、製造装置LSは、蒸着装置を含む無機配向膜形成装置13を備えている。無機配向膜形成装置13を含む製造装置LSの動作は、制御装置10に制御される。本実施形態においては、無機配向膜形成装置13は、アレイ基板1上に無機配向膜を形成するための無機材料の蒸気を発生させる蒸着源14と、アレイ基板1を保持する保持機構15とを備えている。保持機構15は、蒸着源14とアレイ基板1の重心位置とを結ぶ基準線X1とアレイ基板1の表面1Aと垂直に交わる直線X2とのなす角θが所定値となるように、アレイ基板1を保持する。無機配向膜形成装置13は、角度θを変化させることによって、蒸着源14で発生させた無機材料の蒸気の進行方向(図3中、矢印Y1参照)とアレイ基板1の表面1Aとがなす角度θを調整可能である。
【0037】
無機配向膜形成装置13の蒸着源14から発生した無機材料の蒸気は、図4中、矢印Y1で示すように、アレイ基板1の表面1Aに対して略一定の入射角度(傾斜角度)で連続して入射する。
【0038】
これにより、図5の模式図に示すように、アレイ基板1の表面1Aには、無機材料の柱状構造体16Aが形成される。そして、この柱状構造体16Aが多数形成されることによって、アレイ基板1の表面1Aに無機配向膜16が形成される。
【0039】
同様に、ステップS4において、対向基板2の表面2Aの静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、対向基板2の表面2Aの状態が正常である(表面2Aの水分量が許容値以下である)と判断された場合、その正常であると判断された対向基板2上に無機配向膜を形成する工程が実行される。対向基板2の表面2Aには、無機材料の柱状構造体22Aが形成される。そして、この柱状構造体22Aが多数形成されることによって、対向基板2の表面2Aに無機配向膜22が形成される。
【0040】
なおここでは、製造装置LSは、斜方蒸着法によって無機配向膜を形成しているが、例えばイオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等のスパッタ法、蒸着法、ゾルゲル法、自己組織化法等の所定の手法を用いて無機配向膜16、22を形成してもよい。
【0041】
基板上に無機配向膜を形成した後に、基板上の無機配向膜の表面の静電気量を測定する工程(第2の静電気量測定工程)が行われる(ステップS6)。第2の静電気量測定工程では、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定する動作、及び対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量を測定する動作のそれぞれが実行される。
【0042】
アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定は、図2を参照して説明した静電気量測定装置(帯電量測定装置)11によって行われる。静電気量測定装置11は、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定し、その測定結果を制御装置10に出力する。
【0043】
制御装置10は、静電気量の測定結果が正常かどうかを判別する(ステップS7)。ここで、静電気量の測定結果が正常であるとは、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである状態をいう。
【0044】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常であると判断する。ここで、静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常であるとは、製造後における液晶装置が所望レベルの品質を得られる状態をいう。
【0045】
静電気量とアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態との関係、ひいては静電気量と製造後における液晶装置の品質との関係は、例えば実験等により予め求めることができ、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態を求めることができる。
【0046】
本実施形態においては、静電気量の許容レベルに関する情報が予め記憶装置12に記憶されており、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、静電気量の測定結果が正常かどうか、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、その静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面が正常であると判断する。
【0047】
ここで、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態とは、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)を含む。水(水分)は極性を有しており、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量は、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の水分量に応じて変化するので、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)を把握することができる。
【0048】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態(水分の付着状態、水分の残留状態、水分量)が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態が正常であると判断する。
【0049】
アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態と、その吸湿状態に対応するアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量との関係は、例えば実験又はシミュレーション等により予め求めることができ、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態を求めることができる。すなわち、本実施形態においては、静電気量測定装置11を含む製造装置LSは、静電気量測定装置11を用いてアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定し、その測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の吸湿状態を求める。
【0050】
アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の水分量が少ないほど、製造後の液晶装置の品質を良好にすることができる。したがって、静電気量測定装置11の測定結果、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の値は大きい方が望ましい。本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11の測定結果の値が、予め定められている許容値よりも高い場合に、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の水分量が許容値以下に抑えられている(正常である)と判断する。
【0051】
同様に、制御装置10は、対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量を静電気量測定装置11を用いて測定し、その測定結果が正常かどうか、すなわち対向基板2上の無機配向膜22の表面の状態(水分量)が正常かどうかを判別する。
【0052】
ステップS7において、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常である(無機配向膜16の表面の水分量が許容値以下である)と判断された場合、その正常であると判断されたアレイ基板1上の無機配向膜16の表面を処理する工程(表面処理工程)が実行される(ステップS8)。
【0053】
無機配向膜16の表面処理は、例えば特開平11−160711号公報、特開2000−47211号公報等に開示されているような、その無機配向膜16の表面に、アルコールを供給するアルコール処理を含む。アルコール処理は、直鎖の高級アルコール、例えばオクタデカノールの蒸気中に無機配向膜を晒す処理を含む。また、そのアルコール処理は、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セリルアルコール、及びミリシルアルコール等の高級アルコールを無機配向膜16に吸着させる処理、その高級アルコールで無機配向膜16を化学的に変化させる処理、及びその高級アルコールで無機配向膜16を湿潤させる処理を含む。
【0054】
また、無機配向膜16の表面処理は、例えば特開2006−30646号公報等に開示されているような、フルオロアルコール、イソプロピルアルコール、オクタノール、ヘプタデカノール、ベンジルアルコール、エトキシシラン系材料、及びメトキシシラン系材料を供給する処理を含む。
【0055】
無機配向膜16の表面処理に用いるアルコールとしては、側鎖をもつものであってもよいし、水素原子の一部又は全部をフッ素、窒素等で置換したものであってもよい。また、置換基としては、水素基、フッ素基、窒素基のみならず、その他の置換基であってもよい。
【0056】
そして、これらアルコール類を用いて無機配向膜16を表面処理することにより、無機配向膜16を撥水性にすることができる。すなわち、上述のアルコールを含む撥水性有機材料により、無機配向膜16の表面を撥水性にすることができる。
【0057】
また、無機配向膜16の表面処理として、異なる分子量の複数の撥水性有機材料(アルコール)で疎水化処理(撥水化処理)してもよい。例えば、斜方蒸着法等によって形成された無機配向膜は、その表層に小さな間隙を多数形成される可能性が高いため、例えば大きな分子量の撥水性有機材料によって主に無機配向膜の表面を疎水化(撥水化)し、小さな分子量の撥水性有機材料によって主に無機配向膜の表層の間隙内を疎水化することができる。例えば、炭素数が8のオクチルアルコール(オクタノール;C17OH)と、炭素数が3のイソプロピルアルコール(イソプロパノール;(CHCHOH)とを用い、無機配向膜16を疎水化処理することができる。
【0058】
無機配向膜16の表面にアルコールを供給する手法としては、気相法及び液相法の少なくとも一方を用いることができる。気相法は、例えば密閉容器中に、無機配向膜16を有するアレイ基板1とアルコールとを入れ、必要に応じて加熱する処理を含む。これにより、密閉容器内で蒸発したアルコールが無機配向膜16の表面に供給される。液相法は、液体状のアルコール中に、無機配向膜16を有するアレイ基板1を浸漬する処理を含む。
【0059】
また、無機配向膜16の表面処理は、シランカップリング剤を無機配向膜16の表面に供給する処理を含む。シランカップリング剤を無機配向膜16の表面に供給することによっても、その無機配向膜16の表面を撥液性にすることができる。
【0060】
シランカップリング剤としては、有機官能基としてアルキル基を有するものが好ましい。また、無機配向膜16の表面処理として、異なる分子量の複数のシランカップリング剤を供給するようにしてもよい。分子量が大きい方のシランカップリング剤のアルキル基は、分子量が小さい方のシランカップリング剤のアルキル基より炭素数が多いものとなっているのが好ましい。分子量が大きい方のシランカップリング剤は、そのアルキル基によって良好な撥水性、耐光性を発揮する。一方、分子量が小さい方のシランカップリング剤は、そのアルキル基が短い(炭素数が少ない)ので、分子量が大きい方のシランカップリング剤に対して立体障害を起こすことなく、無機配向膜16の表面に容易に反応し、付着する。
【0061】
分子量の大きい方のシランカップリング剤としては、炭素数が18以上のアルキル基を有機官能基として有したものが好ましい。一方、このシランカップリング剤に対して分子量の小さいものとして、例えば炭素数が8以下のアルキル基を有機官能基として有したものが用いられる。例えば、分子量の大きい方のシランカップリング剤としては、以下のAの化学式に示すもの(アルキル基の炭素数が18のもの)を用いることができ、分子量の小さい方のシランカップリング剤としては、以下のBの化学式に示すもの(アルキル基の炭素数が2のもの)を用いることができる。
A;(C1837)Si(OCH
B;(C)Si(OCH
【0062】
無機配向膜16の表面にシランカップリング剤を供給する手法としては、気相法及び液相法の少なくとも一方を用いることができる。気相法は、例えばCVD装置に、無機配向膜16を有するアレイ基板1を入れ、シランカップリング剤を蒸気として導入する処理を含む。液相法は、シランカップリング剤を適当な溶媒に溶解して溶液を生成し、その溶液中に、無機配向膜16を有するアレイ基板1を浸漬する処理を含む。
【0063】
なお、図6には、大きい分子量の撥水性有機材料(アルコール又はシランカップリング剤)Aによって主に無機配向膜16の表面が疎水化され、小さい分子量の撥水性有機材料(アルコール又はシランカップリング剤)Bによって主に無機配向膜16の表層の間隙内が疎水化されている状態が模式的に示されている。
【0064】
液晶装置の品質は水分により劣化する可能性が高いが、アルコールやシランカップリング剤等の撥液性を有する材料を無機配向膜16の表面に供給することによって、その無機配向膜16の表面を撥水性にすることにより、耐湿性を高め、液晶装置の品質の劣化を抑制することができる。
【0065】
同様に、ステップS7において、対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、対向基板2上の無機配向膜22の表面の状態が正常である(無機配向膜22の表面の水分量が許容値以下である)と判断された場合、その正常であると判断された対向基板2上の無機配向膜22の表面を処理する工程(表面処理工程)が実行される。
【0066】
無機配向膜の表面を処理した後、その処理された無機配向膜上に帯電する静電気量を測定する工程(第3の静電気量測定工程)が行われる(ステップS9)。第3の静電気量測定工程では、ステップS8における表面処理後のアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定する動作、及びステップS8における表面処理後の対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量を測定する動作のそれぞれが実行される。
【0067】
アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定は、図2を参照して説明した静電気量測定装置(帯電量測定装置)11によって行われる。静電気量測定装置11は、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定し、その測定結果を制御装置10に出力する。
【0068】
制御装置10は、静電気量の測定結果が正常かどうかを判別する(ステップS10)。ここで、静電気量の測定結果が正常であるとは、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである状態をいう。
【0069】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、表面処理後のアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常かどうか、すなわち無機配向膜16が所望状態で表面処理されているかどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常である、すなわち無機配向膜16が所望状態で表面処理されていると判断する。ここで、静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常であるとは、無機配向膜16が所望状態で表面処理されて十分な疎水性(耐湿性)を有し、製造後における液晶装置が所望レベルの品質を得られる状態をいう。
【0070】
静電気量とアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態との関係、ひいては静電気量と製造後における液晶装置の品質との関係は、例えば実験等により予め求めることができ、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態(表面処理の状態)を求めることができる。
【0071】
本実施形態においては、静電気量の許容レベルに関する情報が予め記憶装置12に記憶されており、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、静電気量の測定結果が正常かどうか、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常かどうか(所望状態で表面処理されたかどうか)を判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、その静電気量の測定結果が正常である、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面が正常である(所望状態で表面処理されている)と判断する。
【0072】
ここで、表面処理後におけるアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態とは、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)を含む。上述のように、本実施形態においては、ステップS8における表面処理は、無機配向膜16を撥水性にする処理を含み、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量は、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)に応じて変化するので、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)を把握することができ、ステップS8において所望状態で表面処理できたかどうか(良好に疎水性に処理されたかどうか)を把握することができる。また、制御装置10は、静電気量測定装置11を用いて、無機配向膜16のうち表面処理が十分にできていない領域の特定、すなわち無機配向膜16の表面処理の分布の導出を行うこともできる。
【0073】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の疎水性の度合い(水に対する接触角)が正常かどうかを判別する。制御装置10は、静電気量測定装置11で測定された静電気量が予め定められている許容レベルである場合、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)が正常であると判断する。
【0074】
記憶装置12には、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)と、その疎水性の度合い(水に対する接触角)に対応するアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量との関係が、例えば実験又はシミュレーション等により予め求められており、記憶装置12に記憶されている。制御装置10は、静電気量測定装置11による静電気量の測定結果と、記憶装置12の記憶情報とに基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)を求めることができる。すなわち、本実施形態においては、静電気量測定装置11を含む製造装置LSは、静電気量測定装置11を用いてアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量を測定し、その測定結果に基づいて、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)を求める。
【0075】
アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の疎水性が高いほど、耐湿性が向上され、製造後の液晶装置の品質を良好にすることができる。したがって、静電気量測定装置11の測定結果、すなわちアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の値は大きい方が望ましい。
【0076】
本実施形態においては、制御装置10は、静電気量測定装置11の測定結果の値が、予め定められている許容値よりも高い場合に、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面が所望状態で疎水性に処理されていると判断する。
【0077】
同様に、制御装置10は、対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量を静電気量測定装置11を用いて測定し、その測定結果が正常かどうか、すなわち対向基板2上の無機配向膜22の表面の疎水性の度合い(水に対する接触角)が正常かどうか(所望状態で表面処理されたかどうか)を判別する。
【0078】
静電気量の測定結果の一例として、クリーンルーム内大気中(温度約20度、湿度50〜60%)における、表面処理前(疎水化処理前)におけるアレイ基板1上の無機配向膜16の静電気量の測定値が、−0.01〜−0.07kVであったものが表面処理後(疎水化処理後)においては、−0.15kV程度となり、その絶対値は上昇する。更に、ドライエアを噴霧して乾燥させることにより、無機配向膜16の静電気量の測定値は、+0.30kV程度となる。また、表面処理前(疎水化処理前)における対向基板2上の無機配向膜22の静電気量の測定値が、−0.03〜−0.05kVであったものが表面処理後(疎水化処理後)においては、−0.15kV程度となり、その絶対値は上昇する。更に、ドライエアを噴霧して乾燥させることにより、無機配向膜22の静電気量の測定値は、+0.30kV程度となる。このように、無機配向膜16、22に表面処理(疎水化処理)を行う前と後とでは、静電気量は、2〜10倍程度変化(上昇)する。なお、表面処理(疎水化処理)を行う前における無機配向膜16、22の水に対する接触角は、5〜15度程度であったが、表面処理(疎水化処理)を行った後においては、接触角は、70〜90度程度となった。
【0079】
ステップS10において、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常である(無機配向膜16の表面の処理が良好に行われている)と判断された場合、その正常であると判断されたアレイ基板1を用いて、次の工程である組み立て工程が実行される。同様に、ステップS10において、対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量の測定結果が正常であると判断された場合、すなわち、対向基板2上の無機配向膜22の表面の状態が正常である(無機配向膜22の表面の処理が良好に行われている)と判断された場合、その正常であると判断された対向基板2を用いて、次の工程である組み立て工程が実行される(ステップS11)。
【0080】
組み立て工程は、アレイ基板1と対向基板2との貼り合わせ工程、貼り合わせた基板どうしを所望の大きさに切断する工程等を含む。貼り合わせ工程は、貼り合わせた後のアレイ基板1と対向基板2とのギャップを規定するためのスペーサ部材を配置する工程と、アレイ基板1と対向基板2とのギャップからの液晶の流出を防止するためのシール材を配置する工程とを含む。
【0081】
例えば、図7の模式図に示すように、アレイ基板1上及び対向基板2上の少なくとも一方に、スペーサ部材18と、シール部材17とが配置され、アレイ基板1と対向基板2とが貼り合わせられる。アレイ基板1と対向基板2とは、アレイ基板1の表面1Aに形成された無機配向膜16と、対向基板2の表面2Aに形成された無機配向膜22とが対向するように、貼り合わせられる。
【0082】
次に、液晶注入工程が実行される(ステップS12)。図8の模式図に示すように、注入口19より、アレイ基板1と対向基板2とのギャップに液晶20が注入される。ギャップに液晶20が注入された後、注入口19が封止される。そして、図9の模式図に示すように、アレイ基板1の裏面に偏光板21Aが設けられるとともに、対向基板2の裏面に偏光板21Bが設けられ、液晶装置60が形成される。
【0083】
なお、ステップS8の表面処理工程とステップS11の組み立て工程との間において、必要に応じて、基板の洗浄処理が行われる。また、ステップS11の組み立て工程とステップS12の液晶注入工程との間において、必要に応じて、基板の乾燥処理が実行される。
【0084】
ステップS4において、アレイ基板1の表面1Aの静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、アレイ基板1の表面1Aの状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、そのアレイ基板1上に無機配向膜16を形成する動作を実行せず、所定の処理(第1の処理)を実行する(ステップS13)。第1の処理としては、その異常と判断されたアレイ基板1を正常な状態に戻すような処理、例えばその異常と判断されたアレイ基板1の表面1Aの洗浄及び乾燥処理を再度実行する処理が挙げられる。また、第1の処理としては、その異常と判断されたアレイ基板1を廃棄する処理が挙げられる。
【0085】
同様に、ステップS4において、対向基板2の表面2Aの静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、対向基板2の表面2Aの状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、その対向基板2上に無機配向膜22を形成する動作を実行せず、所定の処理(第1の処理)を実行する(ステップS13)。すなわち、制御装置10は、その異常と判断した対向基板2を正常な状態に戻すような処理、例えばその異常と判断した対向基板2の表面2Aの洗浄及び乾燥処理を再度実行する処理、あるいは、その異常と判断した対向基板2を廃棄する処理等を実行する。
【0086】
ステップS7において、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、アレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、そのアレイ基板1上の無機配向膜16の表面を処理する動作を実行せず、所定の処理(第2の処理)を実行する(ステップS14)。第2の処理としては、その異常と判断された無機配向膜16を有するアレイ基板1を廃棄する処理が挙げられる。また、無機配向膜16をアレイ基板1上に再度形成することが可能であるならば、異常と判断された無機配向膜16を除去し、アレイ基板1上に無機配向膜16を再度形成するようにしてもよい。
【0087】
同様に、ステップS7において、対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、対向基板2上の無機配向膜22の表面の状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、その対向基板2上の無機配向膜22の表面を処理する動作を実行せず、所定の処理(第2の処理)を実行する。すなわち、制御装置10は、例えば、その異常と判断した無機配向膜22を有する対向基板2を廃棄する処理等を実行する。
【0088】
ステップS10において、表面処理後のアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、表面処理後のアレイ基板1上の無機配向膜16の表面の状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、そのアレイ基板1を用いた組み立て工程を実行せず、所定の処理(第3の処理)を実行する(ステップS15)。第3の処理としては、その異常と判断された無機配向膜16を正常な状態に戻すような処理、例えば、その異常と判断された無機配向膜16の表面に対して再度、表面処理を行う処理が挙げられる。また、第3の処理としては、そのアレイ基板1を廃棄する処理が挙げられる。
【0089】
同様に、ステップS10において、表面処理後の対向基板2上の無機配向膜22の表面の静電気量の測定結果が正常でない(異常である)と判断された場合、すなわち、表面処理後の対向基板2上の無機配向膜22の表面の状態が正常でない(異常である)と判断された場合、制御装置10は、その対向基板2を用いた組み立て工程を実行せず、所定の処理(第3の処理)を実行する。すなわち、制御装置10は、その異常と判断した無機配向膜22を正常な状態に戻すような処理、例えば、その異常と判断された無機配向膜22の表面に対して再度、表面処理を行う処理を実行する。また、制御装置10は、第3の処理として、その対向基板2を廃棄するようにしてもよい。
【0090】
なお、本実施形態におけるステップS3、S6、S9それぞれの静電気量の測定動作は、ほぼ同一の環境下(温度、湿度、材料)で実行される。
【0091】
以上説明したように、液晶装置60の製造工程中において、液晶装置を構成する部材、本実施形態においては、アレイ基板1、対向基板2、アレイ基板1の表面1Aに形成された無機配向膜16、対向基板2の表面2Aに形成された無機配向膜22、表面処理(撥液性にする処理)された後の無機配向膜16、22の静電気量を測定することによって、その測定結果を用いて、それら各部材の状態を把握することができる。本実施形態においては、それら部材の吸湿状態や、表面処理状態(表面処理(疎水化処理)が良好に行われたかどうか)を把握することができる。また、本実施形態のように、複数の工程(S2、S5、S8など)が終了した毎に、静電気量を測定する工程を実行することにより、各工程毎で静電気量の管理(部材の状態の管理)を実行することができる。
【0092】
そして、静電気量の測定結果に基づいて、その液晶装置を構成する部材の状態が異常であると判断された場合には、例えばその部材を用いずに液晶装置の製造を実行したり、あるいはその部材を正常な状態に戻すような処理を実行する等、適切な処置を講ずることができる。したがって、生産性の低下を抑制し、所望の品質が得られる液晶装置を製造することができる。
【0093】
液晶装置の製造工程においては、経時的、物性的に製造条件が変動する可能性がある。例えば製造中に温度、湿度、汚染状態等の環境条件が変動したり、ロットぶれや経時的な劣化などに起因して、使用する材料や部材の物性が変動したり、あるいは各工程毎に部材が滞留する滞留時間に応じて部材の状態が変動したりする可能性がある。そのため、同じ工程を経た部材であっても、最終的な製品になった場合、その性能にばらつきが生じる可能性がある。本実施形態においては、製造工程中における各部材の状態や、各処理が良好に行われたかどうかを、静電気量を指標として簡易に求めることができる。
【0094】
特に、本実施形態においては、液晶装置を構成する無機配向膜16、22の状態、その無機配向膜16、22に接触する基板1、2の表面1A、2Aの状態、及び無機配向膜16、22を表面処理した後のその無機配向膜16、22の状態を、静電気量の測定結果に用いて求めている。液晶装置の性能は、水分により劣化しやすい可能性が高いが、無機配向膜16、22が吸湿しやすい場合であっても、その無機配向膜16、22や、その無機配向膜16、22に接触する面の状態を静電気量の測定結果に基づいて求めることにより、その求めた結果を用いて、生産性の低下を抑制し、所望の品質を有する液晶装置を製造するための適切な処置を講ずることができる。
【0095】
また、本実施形態においては、静電気量の測定結果に基づいて、液晶装置を構成する部材の状態を把握するので、部材に影響を与えることなく、簡易な手法で短時間のうちにその部材の状態を把握することができる。例えば、製造工程中に、液晶装置を構成する部材を適宜サンプリングして、その部材(ダミーサンプル)を分解(破壊)して、その部材の状態を把握する構成が考えられるが、本実施形態においては、部材を破壊することなく(非破壊で)、簡易な手法で短時間のうちに非接触で部材の状態を把握することができる。また、ダミーサンプルを用意する必要もない。
【0096】
また、静電気量測定装置11の測定結果を用いて、製造条件を調整(再設定)することもできる。すなわち、静電気量測定装置11の測定結果が異常値を示す場合には、異常値を示さないように、製造条件を調整(再設定)することができる。例えば、ステップS10において、静電気量測定装置11の測定結果が異常であると判断され続ける場合には、その静電気量測定装置11の測定結果が正常と判断されるように、ステップS8の表面処理条件を調整(再設定)することができる。
【0097】
なお、本実施形態においては、静電気量の測定の結果から、液晶装置を構成する部材(基板1、2、無機配向膜16、22)の吸湿状態や疎水性の度合いを求めているが、静電気量を指標として、撥液化処理状態のみならず、種々の表面処理状態を把握することができる。すなわち、静電気量測定装置11によって測定される対象の表面に分極性を有する材料(誘電率を有する材料)が存在し、その材料を含む表面(部材)の状態を把握したい場合に、本発明を適用することができる。例えば、部材の表面を窒化処理した場合、フッ化処理した場合、アルキル化処理した場合等において、それら表面処理の状態を、静電気量の測定結果から把握することができる。また、表面処理としては、疎水化処理のみならず、所定の材料をコーティングする処理、保護膜を形成する処理、水以外の液体(例えば油)に対して撥液性(疎油性)を発現させる処理、親水化処理、水以外の液体(例えば油)に対して親液性(親油性)を発現させる処理などが挙げられる。
【0098】
なお、本実施形態においては、液晶装置を構成する部材の静電気量を測定しているが、例えば有機EL装置を構成する部材などの静電気量を測定するようにしてもよい。
【0099】
図10は、本実施形態に係る製造方法を用いて製造された液晶装置60を備えたプロジェクタを示す図である。図10に示すプロジェクタPJは、上述の実施形態に係る液晶装置を光変調手段として備えたものである。
【0100】
図10において、プロジェクタPJは、光源810と、ダイクロイックミラー813、814と、反射ミラー815、816、817と、入射レンズ818と、リレーレンズ819と、射出レンズ820と、液晶装置60からなる光変調手段822、823、824と、クロスダイクロイックプリズム825と、投射レンズ826とを備えている。光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とを含む。
【0101】
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射して、赤色光用光変調手段822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射した緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射し、緑色光用光変調手段823に入射する。さらに、ダイクロイックミラー813で反射した青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および射出レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用光変調手段824に入射される。
【0102】
各光変調手段822、823、824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、スクリーン827上に画像を形成する。
【0103】
上述の構成を有するプロジェクタPJは、上述の製造方法で製造された液晶装置60を光変調手段として備えている。液晶装置60の無機配向膜16、22は、耐光性および耐熱性に優れており、光源810から照射される強い光や熱による劣化が抑えられる。また、プロジェクタPJは、吸湿に起因する品質の劣化が抑制された液晶装置60を備えているので、そのプロジェクタPJ自体の吸湿に起因する品質の劣化も抑制される。
【0104】
なお、本発明の技術的範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。例えば、上述の実施形態においては、スイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。また、液晶装置としては、透過型液晶装置であってもよいし、反射型液晶装置であってもよい。
【0105】
また、液晶装置としては、TN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置であってもよいし、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置であってもよい。また、上述の実施形態においては、3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置であってもよい。
【0106】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、携帯電話を挙げることができる。この携帯電話は、上述の実施形態、またはその変形例に係る液晶装置を表示部に備えたものである。また、その他の電子機器としては、例えばICカード、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、DSP装置、PDA、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態に係る液晶装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本実施形態に係る静電気量測定装置を示す図である。
【図3】本実施形態に係る無機配向膜形成装置を示す図である。
【図4】基板の表面に無機配向膜が形成される様子を説明するための模式図である。
【図5】基板の表面に形成された無機配向膜を示す模式図である。
【図6】表面処理された後の無機配向膜を示す模式図である。
【図7】本実施形態に係る製造方法を説明するための模式図である。
【図8】本実施形態に係る製造方法を説明するための模式図である。
【図9】本実施形態に係る製造方法を説明するための模式図である。
【図10】プロジェクタの要部を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0108】
1…アレイ基板、2…対向基板、11…静電気量測定装置、13…無機配向膜形成装置、16…無機配向膜、22…無機配向膜、20…液晶、60…液晶装置、LS…製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機配向膜を備えた液晶装置の製造方法において、
基板上に前記無機配向膜を形成する工程と、
前記基板上に帯電する静電気量を測定する工程とを含む製造方法。
【請求項2】
前記基板上に前記無機配向膜を形成する前に、前記基板の表面の静電気量を測定する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記基板上に前記無機配向膜を形成した後に、前記基板上の前記無機配向膜の表面の静電気量を測定する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機配向膜を形成した後、前記無機配向膜の表面を処理する工程を有し、
前記処理された前記無機配向膜上に帯電する静電気量を測定する請求項1〜3のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項5】
前記処理は、前記無機配向膜を撥水性にする処理を含む請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記処理は、所定の材料を前記無機配向膜の表面に供給する処理を含む請求項4又は5記載の製造方法。
【請求項7】
前記材料は、アルコールを含む請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
前記材料は、シランカップリング剤を含む請求項6記載の製造方法。
【請求項9】
無機配向膜を備えた液晶装置の製造装置において、
基板上に前記無機配向膜を形成する形成装置と、
前記基板上に帯電する静電気量を測定する測定装置とを備えた製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−279087(P2007−279087A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101569(P2006−101569)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】