説明

液晶装置及びプロジェクター

【課題】塵埃等の映り込みを防止しつつ、液晶層の劣化を抑制することによって、耐光性の更なる向上及び長寿命化を可能とした液晶装置を提供する。
【解決手段】素子基板10と対向基板20との間に液晶層30が挟持された液晶装置1において、対向基板20の液晶層30と対向する側とは反対側の面に貼り合わされた防塵基板50を備え、防塵基板50は、短波長側の光をカットする機能を有する。これにより、塵埃等の映り込みを防止しつつ、液晶層30の劣化を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、並びにそのような液晶装置を備えたプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロジェクターに用いられる液晶装置では、その高輝度化に伴って、光による配
向膜の劣化が問題となっている。このため、ポリイミド等の有機材料に比べて、耐光性や
耐熱性に優れた無機配向膜が採用されるようになってきている。
【0003】
無機配向膜としては、斜方蒸着法や、指向性スパッタ法、シロキサン骨格を持つ塗布型
無機材料などを用いたものが提案されている。その中でもプロジェクター用途の液晶表示
装置には、斜方蒸着法が一般的に用いられている。
【0004】
このようなプロジェクター用途の液晶装置では、液晶モードとして垂直配向モードが用
いられている。この垂直配向モードの液晶装置では、電界無印加時に液晶分子に所定のプ
レチルト角を与える一方、電圧印加時に液晶分子を傾斜配向させて複屈折性を得るように
している。
【0005】
ところで、上述した配向膜の劣化に対しては、無機配向膜を用いることにより飛躍的に
耐光性が向上したものの、液晶パネル内にある液晶材料自体の光による劣化が課題として
顕在化してきている。特に、液晶材料は、紫外領域において光吸収性を有するものが多く
、光源から出射される光の中に紫外領域の波長を有する光が含まれていた場合、微弱であ
っても長時間の使用により液晶材料が劣化を引き起こし、表示品位の低下を招くことにな
る。
【0006】
一方、プロジェクター用途の液晶装置では、基板表面に塵埃等が付着した場合に、光源
からの光が基板表面の近傍に集光されるために、これらの影が拡大投影されて表示欠陥と
してスクリーンに映り込んでしまうといった課題がある。
【0007】
このような課題に対しては、基板の外側(液晶層と対向する面とは反対側)の面に防塵
基板を貼り合わせることによって、塵埃等が付着する面と、光源から出射された光が集光
される面とを離し、塵埃等をデフォーカスしながら表示品位に影響を与えないようにする
対策が行われている(例えば、特許文献1,2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−117580号公報
【特許文献2】特開2005−195909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような防塵基板を用いることによって、塵埃等のスクリーンへの映
り込みを抑制できるものの、上述した紫外領域の光による液晶の劣化を抑えることは困難
である。
【0010】
例えば、下記特許文献1には、防塵基板として、熱伝導率が大きい水晶が用いられてお
り、この防塵基板にヒートシンクとしての機能を持たせることが記載されている。しかし
ながら、水晶は、紫外領域の波長を有する光に対して高い透過率(90%程度)を示すこ
とから、上述した紫外領域の光による液晶の劣化を抑えることは困難である。
【0011】
一方、下記特許文献2には、防塵基板にとして、石英又は結晶化ガラスと高熱伝導性ガ
ラスを貼り合わせた複合ガラスが用いられており、これによって高い放熱効果が得られる
ことが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載される防塵基板は、放熱効果を
得ることを目的としたものであり、特許文献1に記載される防塵基板と同様、上述した紫
外領域の光による液晶の劣化を抑えることは困難である。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みて提案されたものであり、塵埃等の映り込みを防止し
つつ、液晶層の劣化を抑制することによって、耐光性の更なる向上及び長寿命化を可能と
した液晶装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような液晶装置を備え
ることによって、良好な表示特性と高い信頼性とを兼ね備えたプロジェクターを提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る液晶装置は、光源と、光源から出射された光
が入射される第1基板と、第1基板との間に液晶層を挟持して対向配置される第2基板と
、第1基板の光源からの光が入射される側に配置された第3基板と、を備えた液晶装置に
おいて、第3基板は、入射される光の波長帯域うち、短波長とされる所定波長よりも長波
長側の波長帯域の光を液晶層の側に透過させるとともに、短波長とされる所定波長以下の
波長帯域の光を液晶層の側に透過させないことを特徴とする。
【0014】
この構成よれば、第3基板の塵埃等が付着する面と、光源から出射された光が集光され
る面とを離し、塵埃等をデフォーカスしながら表示品位に影響を与えないようにする機能
と共に、第3基板が短波長側の光をカットする機能を有することから、塵埃等の映り込み
を防止しつつ、液晶層の劣化を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、耐光性の更なる向上及び長寿命化を可能とした液晶装置
として、プロジェクター用途に最適な液晶装置を提供することが可能である。
【0015】
また、上記液晶装置において、第3基板は、短波長とされる所定波長以下の波長帯域の
光を液晶層の側に透過させないように厚みが設定された結晶化ガラスからなることが好ま
しい。
この場合、塵埃等の映り込みを防止する機能と、短波長側の光をカットする機能とを両
立させることが可能である。また、斜め方向から入射する光に対しても短波長側の光をカ
ットする機能を持たせることが可能である。
【0016】
また、上記液晶装置において、第3基板は、透明基板の面上に光学多層膜を積層した構
造を有することが好ましい。
この場合、塵埃等の映り込みを防止する機能と、短波長側の光をカットする機能とを両
立させることが可能である。また、光学多層膜の調整によりカットされる光の波長域を任
意に調整することが可能である。
【0017】
また、上記液晶装置において、第3基板は、結晶化ガラスと、光学多層膜が面上に積層
された透明基板とを貼り合わせた構造を有することが好ましい。
この場合、塵埃等の映り込みを防止する機能と、短波長領域の光をカットする機能とを
両立させることが可能である。また、斜め方向から入射する光に対して光学多層膜から短
波長側の光が漏れ出したとしても、この短波長側の光を結晶化ガラスがカットすることが
可能である。さらに、結晶化ガラスのみで短波長側の光をカットする場合よりも、これら
結晶化ガラスと光学多層膜が面上に積層された透明基板との組み合わせによって、薄型化
を図ることが可能である。
【0018】
また、上記液晶装置において、第3基板の短波長とされる所定波長以下の波長帯域は、
350nm以下の波長帯域であることが好ましい。
この場合、液晶層の劣化を抑制することができ、耐光性の向上及び長寿命化を図ること
が可能である。
【0019】
また、上記液晶装置において、第3基板の短波長とされる所定波長以下の波長帯域は、
430nm以下の波長帯域であることが好ましい。
この場合、更に液晶層の劣化を抑制することができ、耐光性の向上及び長寿命化を図る
ことが可能である。
【0020】
また、上記液晶装置においては、第1基板及び第2基板の液晶層と対向する側の面に、
それぞれ液晶層の配向方向を制御する無機配向膜を備えることが好ましい。
この場合、耐熱性及び耐光性に優れた液晶装置として、プロジェクター用途に最適な液
晶装置を提供することが可能である。
【0021】
また、本発明に係るプロジェクターは、上記液晶装置が、光を画像情報に応じて変調し
た画像光を形成するライトバルブとして備えられ、画像光を投射する投射光学系を有する
ことを特徴とする。
この構成によれば、良好な表示特性と高い信頼性とを兼ね備えたプロジェクターを提供
することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る液晶装置の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】防塵基板が取り付けられた液晶装置の一例であって、(a)はその平面図、(b)はそのA−A’断面図である。
【図3】本発明の防塵基板を示す例であり、(a)は結晶化ガラスを用いた場合、(b)は光学多層膜が面上に積層された透明基板を用いた場合、(c)は結晶化ガラスと、光学多層膜が面上に積層された透明基板とを組み合わせた場合の断面図である。
【図4】プロジェクターの構成を示す模式図である。
【図5】実施例1の分光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図6】実施例2の分光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図7】比較例1の分光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【図8】比較例2の分光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の各図
においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材
毎に縮尺を異ならせてある。
【0024】
(液晶装置)
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶装置1の断面構造を模式的に示す図である。
この液晶装置1は、第1基板である素子基板10と、これに対向配置された第2基板で
ある対向基板20との間に、誘電率異方性が負の液晶材料からなる液晶層30が挟持され
ており、初期配向状態が垂直配向となっている。また、この液晶装置1は、スイッチング
素子としてTFT(Thin-Film Transistor)素子を用いたアクティブマトリクス型の反射
型液晶装置である。
【0026】
素子基板10は、基材部14と、基材部14の一方面側に設けられる第1配向膜15と
を含んでいる。第1配向膜15は、液晶分子30aに所定方向へのプレチルト角を付与す
るためのものである。
【0027】
基材部14は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体11を主体として構成されてお
り、この基板本体11の内面には、AlやAg等の反射性の高い導電性材料からなる画素
電極12が形成されている。画素電極12上には、シリコン酸化物としての酸化シリコン
(SiO)からなるパッシベーション膜13が、例えば真空蒸着法やスパッタ法(DC
スパッタ)などのPVD法、又はCVD法などにより成膜されている。なお、パッシベー
ション膜13の形成材料としては、シリコン窒化物としての窒化シリコン(SiN)、
或いはアルミニウム酸化物としての酸化アルミニウム(Al)を用いることもでき
る(x、yは正の整数)。
【0028】
また、素子基板10は、画素電極12への通電制御を行うためのスイッチング素子であ
るTFT素子、画像信号が供給されるデータ線、走査線(何れも図示せず。)等を備えて
いる。なお、データ線や走査線は、遮光膜としての機能を有することもある。
【0029】
一方、対向基板20は、基材部24と、基材部24の一方面側に設けられる第2配向膜
25とを含んでいる。第2配向膜25は、液晶分子30aに所定方向へのプレチルト角を
付与するためのものである。
【0030】
基材部24は、ガラス等の透光性材料からなる基板本体21を主体として構成されてお
り、基板本体21の内面にはITO等の透明導電性材料からなる対向電極22が形成され
ている。対向電極22は、基板本体21上に全面ベタ状に形成されている。対向電極22
上には、パッシベーション膜23が例えばCVD法により形成されている。パッシベーシ
ョン膜23の形成材料としては、上記パッシベーション膜13と同一の材料から構成され
ている。また、基板本体21の外面には偏光板42が形成されている。また、対向基板2
0はカラーフィルタや遮光膜を備えている。
【0031】
素子基板10と対向基板20との間には、第1配向膜15及び第2配向膜25によって
初期配向状態が垂直配向を呈する液晶層30が挟持されている。液晶層30は、液晶分子
30aの初期配向状態(電圧無印加時の配向状態)が垂直配向を呈している。
【0032】
第1配向膜15及び第2配向膜25は、何れも無機配向膜からなり、例えば斜方蒸着法
を用いて無機材料を基板本体11,21上に蒸着させることによって得られる。また、第
1配向膜15及び第2配向膜25は、複数の柱状の積層物を有しており、凹凸を備えたポ
ーラスな表面となっている。複数の柱状積層物は、斜方蒸着時の入射角に対応する表面形
状を有しており、この表面形状によって表面に接する液晶層の液晶分子にプレチルト角(
基板本体11,21の法線方向に対する角度)を付与し、液晶分子30aを駆動させる際
の傾斜方向を規定している。
【0033】
第1配向膜15及び第2配向膜25の材料としては、酸化シリコン(SiO)を用い
ることができる。ここで、酸化シリコンとは、SiO及びSiOの何れか1種類以上の
材料を含む無機材料である。なお、酸化シリコンの他に、SiONやSiNなどの無機材
料を用いることもできる。
【0034】
ところで、上記液晶装置1は、図2(a),(b)に示すように、互いに対向配置され
た素子基板10と対向基板20との間の周縁部が平面視で略矩形枠状を為すシール材31
により封止されると共に、このシール材31を介して素子基板10と対向基板20とが貼
り合わされた構造を有している。液晶層30は、このシール材31の内側にセルギャップ
に応じた厚みで形成されている。
【0035】
そして、上記液晶装置1は、対向基板20の液晶層30と対向する側とは反対側の面に
貼り合わされた第3基板である防塵基板50を備えている。この防塵基板50は、塵埃等
が付着する面と、光源から出射された光が集光される面とを離し、塵埃等をデフォーカス
しながら表示品位に影響を与えないようにする機能を有する。
【0036】
また、この防塵基板50は、短波長側の光をカットする機能、すなわち、入射される光
の波長帯域うち、短波長とされる所定波長よりも長波長側の波長帯域の光を液晶層30の
側に透過させるとともに、短波長とされる所定波長以下の波長帯域の光を液晶層30の側
に透過させない機能を有する。
【0037】
ここで、短波長側の光とは、液晶層30が吸収することによって、この液晶層30の劣
化を招く波長領域の光のことを言い、液晶材料は紫外領域において光吸収性を有するもの
が多いことから、このような紫外領域の波長を有する光、具体的には350nm以下の波
長を有する光、更には430nm以下の波長を有する光のことを言う。なお、本発明では
、このような350nm以下や430nm以下といった波長の光をカットするのみならず
、これらの波長の光をカットすることに加えて該波長よりも長波長側の光の一部をカット
する場合も含み、これによって液晶層30の劣化を抑制することが可能である。
【0038】
このような塵埃等の映り込みを防止する機能と、短波長側の光をカットする機能とを両
立させる防塵基板50としては、例えば図3(a)に示すような結晶化ガラス51を用い
ることができる。この結晶化ガラス51は、例えばネオセラム(日本電気硝子社製)やク
リアセラム(オハラ社製)などからなり、矩形平板状に形成されて対向基板20の液晶層
30と対向する側とは反対側の面に貼り合わされている。
【0039】
また、結晶化ガラス51は、上述した短波長側の光をカットするのに十分な厚みで形成
されている。一方、結晶化ガラス51の厚みが不十分な場合には、塵埃等の映り込みを防
止する機能が得られたとしても、短波長側の光をカットする機能を発揮することは困難で
ある。したがって、結晶化ガラス51の厚みについては、特に規定しないものの、上述し
た短波長側の光をカットするのに十分な厚みで、なお且つ、不要に厚みが厚くならない範
囲で設定することが望ましい。
【0040】
一方、防塵基板50としては、例えば図3(b)に示すような透明基板52の面上に光
学多層膜53を積層した構造を有するものであってもよい。透明基板52は、例えば石英
ガラスなどからなり、矩形平板状に形成されて対向基板20の液晶層30と対向する側と
は反対側の面に貼り合わされている。光学多層膜53は、この透明基板52の面上に、例
えばTiOやSiOなどの材質の異なる誘電体膜53a,53bを交互に積層したも
のからなり、これら誘電体膜53a,53bの組み合わせや膜厚、積層数等を調整するこ
とによって、カットされる光の波長域を任意に調整することが可能となっている。すなわ
ち、この光学多層膜53は、上述した短波長側の光をカットするように調整されたものか
らなっている。なお、光学多層膜53は、透明基板52の対向基板20と貼り合わされる
側の面に積層することも可能である。
【0041】
一方、防塵基板50としては、例えば図3(c)に示すような上記結晶化ガラス51と
、上記光学多層膜53が面上に積層された透明基板52とを貼り合わせた構造を有するも
のであってもよい。
【0042】
この場合、斜め方向から入射する光に対して光学多層膜53から短波長側の光が漏れ出
したとしても、この短波長側の光を結晶化ガラス51がカットすることが可能である。さ
らに、結晶化ガラス51のみで短波長側の光をカットする場合よりも、これら結晶化ガラ
ス51と光学多層膜53が面上に積層された透明基板52との組み合わせによって、薄型
化を図ることが可能である。
【0043】
なお、図3に示す防塵基板50は、対向基板20の液晶層30と対向する側とは反対側
の面に、透明基板52、光学多層膜53及び防塵基板51の順で積層された構造となって
いるが、このような構造に限らず、光学多層膜53、透明基板52及び防塵基板51の順
、若しくは、防塵基板51、光学多層膜53及び透明基板52の順、若しくは、防塵基板
51、透明基板52及び光学多層膜53の順で積層された構造とすることも可能である。
【0044】
以上のように、上記液晶装置1では、塵埃等の映り込みを防止しつつ、液晶層30の劣
化を抑制することができる。したがって、本発明によれば、耐光性の更なる向上及び長寿
命化を可能とした液晶装置1として、プロジェクター用途に最適な液晶装置1を提供する
ことが可能である。
【0045】
(プロジェクター)
次に、本発明の実施形態に係る液晶装置1をライトバルブ(光変調手段)として備えた
プロジェクター100の構成について、図4を参照して説明する。なお、図4は、このプ
ロジェクター100の概略構成を示す模式図である。
【0046】
本実施形態のプロジェクター100は、光源部110、レンズアレイ120、反射ミラ
ー160、光学要素130から概略構成される偏光照明装置101を備えている。また、
偏光照明装置101からの光を三色の色光に分離する色分離光学系500と、この色分離
光学系500によって分離された三色の色光のそれぞれを変調する複数のライトバルブ3
00R、300G、300Bと、3つのライトバルブ300R、300G、300Bによ
って変調された光を合成するクロスダイクロイックプリズム550と、クロスダイクロイ
ックプリズム550によって合成された色光を投射面700に投射する投射光学系600
とを備えている。さらに、色分離光学系500によって分離されたそれぞれの色光を反射
させてライトバルブ300R、300G、300Bに到達させると共に、ライトバルブ3
00R、300G、300Gによって変調された光を透過させてクロスダイクロイックプ
リズム550へ到達させる3つの偏光ビームスプリッタ200R、200G、200Bを
備えている。
【0047】
光源部110は、光源ランプ111と、放物面リフレクター112とから大略構成され
ている。光源ランプ111から放射された光は、放物面リフレクター112によって一方
向に反射され、略平行な光束となってレンズアレイ120に入射する。ここで、光源ラン
プ111としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲン
ランプ等が、また、リフレクターとしては本実施形態に挙げた放物面リフレクター112
の他に、楕円リフレクター、球面リフレクター等が使用できる。
【0048】
反射ミラー160は、レンズアレイ120と光学要素130との間に配置されている。
レンズアレイ120を透過した光は反射ミラー160で反射されて光学要素130に入射
する。
【0049】
光学要素130は、集光レンズアレイ131、偏光分離ユニットアレイ141と選択位
相差板147とからなる板状の偏光変換素子140、偏光変換素子140から出射された
中間光束を反射型液晶素子300に重畳させる出射側レンズ150から大略構成される複
合体である。この光学要素130は、中間光束のそれぞれをP偏光光束とS偏光光束とに
分離した後、一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃え、偏光方向
がほぼ揃ったそれぞれの光束を一箇所の被照明領域に導くという機能を有する。
【0050】
偏光照明装置101において、光源部110から出射されたランダムな偏光光束は、レ
ンズアレイ120により複数の中間光束に分割された後、光学要素130により偏光方向
がほぼ揃った一種類の偏光光束(本実施形態ではS偏光光束)に変換される。
【0051】
色分離光学系500は、偏光照明装置101から出射された光を赤色光R、緑色光G、
青色光Bの三色の色光に分離する光学系である。色分離光学系500は、青色光・緑色光
反射ダイクロイックミラー501、赤色光反射ダイクロイックミラー502、緑色光反射
ダイクロイックミラー505、及び、2つの反射ミラー503、504から構成される。
【0052】
偏光照明装置101から出射された光は、色分離光学系500に入射する。偏光照明装
置101から出射された光のうち、赤色光Rの成分は、赤色光反射ダイクロイックミラー
502によって反射ミラー503側へ反射される。このようにして分離された赤色光Rは
、偏光ビームスプリッタ200Rへ入射する。
【0053】
一方、偏光照明装置101から出射された光のうち、緑色光G、および青色光Bの成分
は、緑色光・青色光反射ダイクロイックミラー501によって反射ミラー504側へ反射
される。さらに、反射ミラー504によって反射された緑色光G、青色光Bは、緑色光反
射ダイクロイックミラー505に入射し、ここで緑色光Gの成分のみが反射される。緑色
光反射ダイクロイックミラー505によって反射された緑色光Gは、偏光ビームスプリッ
タ200Gへ入射する。緑色光反射ダイクロイックミラー505を透過した青色光Bは、
偏光ビームスプリッタ200Bへ入射する。
【0054】
偏光ビームスプリッタ200R、200G、200Bに入射したS偏光光束である各色
光は、各偏光ビームスプリッタ200R、200G、200BのS偏光光束反射膜によっ
てそのほとんどが反射されて、反射型液晶素子300R、300G、300Bに到達する
ことになる。
【0055】
ライトバルブ300R、300G、300Bに入射した各色光は、所定の画像情報に基
づいた変調を受け、偏光ビームスプリッタ200R、200G、200B側へ出射され、
各々のS偏光光束反射膜を透過した光のみがクロスダイクロイックプリズム550側へ出
射される。
【0056】
クロスダイクロイックプリズム550は、XZ平面における断面形状が二等辺三角形の
4つの三角柱状プリズムで構成されている。4つの三角柱状プリズムは、その側面同士が
互いに接着されており、その接着面に沿って、2種類のダイクロイック膜551、552
が形成されている。ダイクロイック膜551の波長選択特性は、赤色光Rを反射し、緑色
光Gと青色光Bとを透過させるように設定されている。また、ダイクロイック膜552の
波長選択特性は、青色光Bを反射し、赤色光Rと緑色光Gとを透過させるように設定され
ている。したがって、クロスダイクロイックプリズム550に入射した光は、2種類のダ
イクロイック膜551、552の波長選択特性に基づいて合成され、投射光学系600を
介して投射面700上に投射される。
【0057】
以上のように、本発明によれば、ライトバルブ300R、300G、300Bとして、
上述した耐光性の更なる向上及び長寿命化を可能とした液晶装置1を備えているので、良
好な表示特性と高い信頼性とを兼ね備えたプロジェクター100を提供することが可能で
ある。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、
本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。
【0059】
具体的に、上記実施形態では、反射型の液晶装置1について例示したが、透過型の液晶
装置、並びにそのような透過型液晶装置をライトバルブに用いたプロジェクターに本発明
を適用することも可能である。この場合、防塵基板50は、一般的に、透過型においては
、光の入射側の基板の外側(光入射側)、又は、入射側及び出射側の両方の基板の外側に
配置される。一方、上述した反射型においては、(光の入射及び出射が同じ側になるので
)光が入射及び出射される一方の基板の外側に配置される。
【0060】
また、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、
本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。例え
ば、画素電極9及び共通電極21として、ITOに代えてIZO(インジウム亜鉛酸化物
)を用いるようにしてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の
実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施するこ
とができる。
【0062】
(実施例1)
実施例1では、防塵基板として、板厚2.3mmの結晶化ガラス(ネオセラム)、光源
として高圧水銀灯を用いて、光源から出射した光が防塵基板を透過した後の分光スペクト
ルを測定した。その測定結果を図5に示す。
図5に示すように、実施例1の防塵基板では、波長350nm以下の光をカットする機
能を有することがわかる。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、防塵基板として、板厚1.0mmの石英基板の面上に光学多層膜として
TiOとSiOとを交互に積層したものを用いた以外は、実施例1と同様にして、光
源から出射した光が防塵基板を透過した後の分光スペクトルを測定した。その測定結果を
図6に示す。
図6に示すように、実施例2の防塵基板では、波長430nm以下の光をカットする機
能を有することがわかる。
【0064】
(比較例1)
比較例1では、防塵基板として、板厚2.3mmの石英基板を用いた以外は、実施例1
と同様にして、光源から出射した光が防塵基板を透過した後の分光スペクトルを測定した
。その測定結果を図7に示す。
図7に示すように、比較例1の防塵基板では、特定波長の光をカットする機能を有して
いないことがわかる。
【0065】
(比較例2)
比較例2では、防塵基板として、板厚1.1mmの結晶化ガラス(ネオセラム)を用い
た以外は、実施例1と同様にして、光源から出射した光が防塵基板を透過した後の分光ス
ペクトルを測定した。その測定結果を図8に示す。
図8に示すように、比較例2の防塵基板では、波長350nm以下の光をカットする機
能を有するものの、実施例1に比べて波長430nm以下の光をカットする機能が不十分
であることがわかる。
【0066】
これは、防塵基板を構成する結晶ガラスの厚み(1.1mm)が、実施例1の結晶化ガ
ラスの厚み(2.3mm)よりも薄く、波長430nm以下の光を十分にカットできない
ためである。一方、実施例1の防塵基板は、結晶ガラスの厚みが波長430nm以下の光
をカットするのに十分な厚みに設定されている。
【0067】
次に、防塵ガラスとして、表1に示すように、板厚2.3mmの石英基板(合成石英)
(試料1)と、板厚1.1mmの結晶化ガラス(ネオセラム)(試料2)、板厚2.3m
mの結晶化ガラス(ネオセラム)(試料3)と、板厚1.0mmの石英基板上に光学多層
膜を積層したもの(試料4)、板厚1.1mmの結晶化ガラスと板厚1.0mmの石英基
板上に光学多層膜を積層したものを貼り合わせたもの(試料5)について、それぞれ波長
335nmの光を正面から入射させた場合の透過率と、正面に対して25°の角度で斜め
に入射させた場合の透過率を測定した。その結果をまとめたものを表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1に示すように、本発明の条件を満足する試料3〜5の防塵ガラスは、試料1,2に
比べて335nmの光を十分にカットしていることがわかる。特に、防塵ガラスとして、
結晶化ガラスを用いた試料3,5では、斜め方向から入射する光に対しても優れたカット
機能を有することがわかる。また、試料5では、結晶化ガラスと石英基板上に光学多層膜
を積層したもの組み合わせることによって、薄型化を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…液晶装置 10…素子基板 15…第1配向膜 20…対向基板 25…第2配向
膜 30…液晶層 50…防塵基板 51…結晶化ガラス 52…透明基板 53…光学
多層膜 53a,53b…誘電体膜 100…プロジェクター 110…光源部 330
R,300G,300B…ライトバルブ 600…投射光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射された光が入射される第1基板と、前記第1基板との間に液
晶層を挟持して対向配置される第2基板と、前記第1基板の前記光源からの光が入射され
る側に配置された第3基板と、を備えた液晶装置において、
前記第3基板は、入射される光の波長帯域うち、短波長とされる所定波長よりも長波長
側の波長帯域の光を前記液晶層の側に透過させるとともに、前記短波長とされる前記所定
波長以下の波長帯域の光を前記液晶層の側に透過させないことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第3基板は、前記短波長とされる前記所定波長以下の波長帯域の光を前記液晶層の
側に透過させないように厚みが設定された結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項
1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第3基板は、透明基板の面上に光学多層膜を積層した構造を有することを特徴とす
る請求項1に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記第3基板は、結晶化ガラスと、光学多層膜が面上に積層された透明基板とを貼り合
わせた構造を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記第3基板は、前記短波長とされる前記所定波長以下の波長帯域は、350nm以下
の波長帯域であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記第3基板は、前記短波長とされる前記所定波長以下の波長帯域は、430nm以下
の波長帯域であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記第1基板及び前記第2基板の前記液晶層と対向する側の面に、それぞれ前記液晶層
の配向方向を制御する無機配向膜を備えることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に
記載の液晶装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶装置が、前記光を画像情報に応じて変調した
画像光を形成するライトバルブとして備えられ、前記画像光を投射する投射光学系を有す
ることを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220810(P2012−220810A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87979(P2011−87979)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】