説明

液晶装置

【課題】簡単な構成且つ確実な方向で表示及びデータ入力を可能とした液晶装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも一方が可撓性である第1基板(11)及び第2基板(16)に挟持された液晶層(17)と、第1及び第2基板に設けられた複数の電極とを備えた液晶セル(10)と、電極に表示用の電圧を印加するための駆動手段と、電極における静電結合方式による容量変化を検出する第1検出手段(40)と、第1又は第2透明基板が押圧されて静電容量の変化を前記電極により検出する第2検出手段(40)、を有することを特徴とする液晶装置(20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置に関し、特に2つの検出手段を有する液晶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用画素電極とデータ入力用電極を有する液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような液晶表示装置では、データ入力用のペンがデータ入力用電極に触れることによって、データ入力用電極からの信号がペンに接続されている信号ケーブルを介して座標決定処理回路等に送られて、ペンが指定した座標を決定することができるように構成されている。
【0003】
しかしながら、データ入力用のために信号ケーブルが備えられたペンを必要とすることから、液晶表示装置を小型化することができないという不具合があった。
【0004】
また、タッチセンサ一体型の液晶表示装置が知られている(例えば、特許文献2)。このような液晶表示装置では、液晶層を挟んで、第1のタッチ電極と第2のタッチ電極を対向する基板上に設け、ユーザが指で基板を押圧することによって、第1及び第2タッチ電極が接触して、押圧位置を特定するように構成されている。
【0005】
一般に、液晶層の厚さを一定に保つためには液晶層内に粒状のスペーサを配置する場合があるが、第1及び第2タッチ電極が接触するために液晶層自体が撓むとスペーサが移動してしまって、スペーサが適切に働かないことから、柱状のスペーサをわざわざ配置して液晶層自体の撓みをある程度許可しながら、液晶層の厚みを一定に保つための工夫を施さなければならないという不具合があった。
【0006】
さらに、表示面側の基板を柔軟性のある材料で形成し、所定の箇所が指等で押圧された場合に、液晶表示器のドライブ信号の波形の変化を検出して液晶表示器の押圧部分のXY座標を検出することができる液晶表示器が知られている(例えば、特許文献3)。
【0007】
しかしながら、ドライブ信号波形の変化を検出するためには、複雑な検出回路を備える必要があった。
【0008】
【特許文献1】特許3358744号公報(図2)
【特許文献2】特開2001−75074号公報(図3)
【特許文献3】特開平6−130360号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図10は、所謂タッチセンサ上の指の動きを示す図である。
【0010】
通常、ユーザがタッチセンサの表示基板2の上で、所定の箇所(例えば、文字「B」の部分)を押そうとする場合、ユーザの指1は、最初所定の箇所近辺をなぞり(図10(a)参照)、その後、位置を決めて所定箇所を押圧する傾向がある(図10(b)参照)。なお、ユーザの指1がなぞるやり方には、所定箇所を往復したり(例えば、図10(a)の矢印A)、円を書いたりする場合がある。
【0011】
しかしながら、タッチセンサが、最初にユーザの指1がタッチセンサ上をなぞっている時に、指1の位置を検出してしまうと、誤検出となってしまう不具合もある。このような不具合は、静電容量タイプのタッチセンサ等において顕著である。
【0012】
そこで、本発明では、上記問題点を解消することが可能な液晶装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明では、2つの検出手段を用いて、簡単な構成且つ確実な方法で表示及びデータ入力を可能とした液晶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る液晶装置は、少なくとも一方が可撓性である第1基板及び第2基板に挟持された液晶層と、前記第1及び第2基板に設けられた複数の電極とを備えた液晶セルと、前記電極に表示用の電圧を印加するための駆動手段と、前記電極における静電結合方式による容量変化を検出する第1検出手段と、前記第1又は第2透明基板が押圧されて静電容量の変化を前記電極により検出する第2検出手段を有することを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記第1検出手段より出力される信号によって、前記液晶セルにおける位置情報を得ることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記第2検出手段より出力される信号によって、前記液晶セルにおける前記第1基板と前記第2基板との距離情報を得ることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記電極に電圧が印加される期間は、前記表示用の電圧を印加するための表示用駆動期間と、前記第1検出手段により前記電極に電圧が印加される第1検出用駆動期間と、前記第2検出手段より前記電極に電圧が出力される第2検出用駆動期間を含むことが好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記表示用の電圧を印加する前記電極は表示用電極であり、前記第1検出手段より電圧が印加される前記電極はセンサ用電極であり、前記第2検出回路より電圧が印加される前記電極は押圧用電極であり、少なくとも、前記表示用電極と前記センサ用電極とは別に設けられた電極であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記押圧用電極と前記センサ用電極は同じ電極であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記押圧用電極と前記センサ用電極とは別々に設けられた電極であることが好ましい。
【0021】
さらに、本発明に係る液晶装置では、前記第1及び第2検出手段が静電容量の変化を検出した場合にユーザによる入力指示箇所を判別する制御部を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る液晶装置によれば、第1検出手段と第2検出手段によって、表示と入力位置の特定を簡単な構成で確実に実現することが可能となった。なお、液晶装置10では、第1透明電極12及び第2透明電極を接触させるほど、第1及び第2透明基板11及び16を撓ませる必要がないことから、通常のスペーサ18を用いることができ、第1及び第2透明基板11及び16間の厚みの保持について特別な工夫を考慮することが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下図面を参照して、本発明に係る液晶装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0024】
図1は、本発明に係る液晶装置に用いられる液晶セル10の概略断面図である。
【0025】
液晶セル10は、視認側に配置された第1透明基板11、第2透明基板16、シール部材19、第1及び第2透明基板11及び16間の間隔を保持するために複数配置されたスペーサ18、第1及び第2透明基板11及び16とシール部材19間に封入された液晶層17等を有している。また、第1透明基板11上には第1透明電極パターン12及び第1配向膜13が形成され、第2透明基板16上には第2透明電極パターン15及び第2配向膜14が形成されている。なお、説明のために、縮尺が実際と異なる場合がある点に留意されたい。
【0026】
液晶層17には、一般的に用いられているTN(ツイステッドネマティック)液晶等が用いられる。
【0027】
第1及び第2透明基板11及び16は、可撓性であって、厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂によって形成されている。しかしながら、第1及び第2透明基板11及び16は、透明性及び可撓性を有していれば、ポリカーボネイトに限定されるものではなく、変性アクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ノルボルテン樹脂、ガラス等であっても良く、また厚さも50μm〜250μmとすることができる。
【0028】
第1及び第2透明電極パターン12及び15は、第1及び第2透明基板11及び16上に、それぞれスパッタリング法によって厚さ約0.03μmのITOから構成された透明導電膜を蒸着し、その後エッチングによって不要な部分を除去することによってパターン化されている。また、液晶装置10では、第1及び第2透明電極パターン12及び15間に所定の電圧が印加されることによって、液晶層17は透過モードと非透過モードに切換わるように構成されている。
【0029】
図2は、透明電極パターンの一例を示す図である。
【0030】
図2(a)は、第1透明電極パターン12の一例を示している。図2(a)の例では、第1透明電極パターン12は、「A」の文字型をした第1セグメント電極101、「B」の文字型をした第2セグメント電極102、「C」の文字型をした第3セグメント電極103、第1セグメント電極への配線111、第2セグメント電極への配線112、第3セグメント電極への配線113、第1セグメント電極の周囲に設けられた第1センサ用電極121、第2セグメント電極の周囲に設けられた第2センサ用電極122、第3セグメント電極の周囲に設けられた第3センサ用電極123、第1センサ用電極への配線131、第2センサ用電極への配線132、及び第3センサ用電極への配線133等を有している。
【0031】
また、第1センサ用電極121は、第1セグメント電極101の周囲に配置され、第1セグメント電極の面積より大きな面積を有するように構成されている。同様に、第2センサ用電極122は、第2セグメント電極102の周囲に配置され、第2セグメント電極の面積より大きな面積を有するように構成されている。さらに、第3センサ用電極123は、第3セグメント電極103の周囲に配置され、第3セグメント電極の面積より大きな面積を有するように構成されている。
【0032】
図2(b)は、第2透明電極パターン15の一例を示している。図2(b)の例では、第2透明電極パターン15は、第1セグメント電極101に対向した位置に配置された第1対向電極201、第2セグメント電極102に対向した位置に配置された第2対向電極202、第3セグメント電極103に対向した位置に配置された第3対向電極203、及び各対向電極を接続する配線211、第1センサ用電極121に対向した位置に配置された第1センサ対向電極221、第2センサ用電極122に対向した位置に配置された第2センサ対向電極222、第3センサ用電極123に対向した位置に配置された第3センサ対向電極223、第1センサ対向電極221への配線231、第2センサ対向電極223への配線233、第3センサ対向電極223への配線233等を有するように構成されている。
【0033】
第1対向電極201、第2対向電極202、第3対向電極203及び配線210には全て同一電位が印加され、コモン電極として機能している。
【0034】
なお、図2に示すセグメント電極及び対向電極の個数、種類及び形状、センサ用電極及びセンサ対向電極の個数及び形状等は、一例であって、これに限定されるものでは無い。
【0035】
図3は、図2に示すセンサ用電極及びセンサ対向電極と、指との間の静電容量を示す図である。
【0036】
図3(a)は、ユーザの指1が、液晶装置10の視認側に配置された第1透明基板11上を軽くなぞっている状態を示している。図示されるように、ユーザの指1が、例えば、第1透明電極121の近傍に配置されると、ユーザの指1と第1センサ用電極121との間に静電容量Chが発生する。また、第1センサ用電極121と第1センサ対向電極221との間には静電容量CLが存在している。このような状態で、静電容量Chを検出することによって、ユーザの指1が置かれている第1透明基板11上の位置を検出することもできるが、ユーザの指1が第1透明基板11上をなぞっている場合には、ユーザの指1の軌跡の近傍に配置されるセンサ用電極にそって、次々と検出を行ってしまい、本当にユーザが選択したい箇所のみを正確に検出することが出来ない場合が生じてしまう。
【0037】
図3(b)は、ユーザの指1が第1センサ用電極上を押圧した状態を示している。図示されるように、ユーザの指1が第1センサ用電極上を押圧した場合、ユーザの指1と第1センサ用電極121との間に静電容量Chが発生し、且つ可撓性の第1透明基板11が撓むことによって、第1センサ用電極121及び第1センサ対向電極221間の距離が変化し、その間の静電容量がCLからCL´に変化する。ここで、静電容量は電極間の距離に反比例することから、CL´>CLとなる。
【0038】
本発明に係る液晶装置では、ユーザの指1が接近することによって誘導された静電容量Chの検出だけではなく、ユーザの指1が可撓性の第1透明基板11を押圧することによる静電容量の変化(CL→CL´)を検出して初めて、ユーザによる入力指示があったものと判別して、ユーザの指1が置かれた箇所を検出するように構成している。よって、単に、ユーザの指1が、第1透明基板11上をなぞっていても、誤検出することが無い。
【0039】
図4は、本発明に係る液晶装置20の概略構成を示す図である。
【0040】
液晶装置20は、液晶セル10、第1電源電圧VDD1、第1定電流電源21、液晶セル10に配置された第1センサ用電極121と指1との間に発生する静電容量Ch、静電容量Chと並列に配置された第1固定静電容量Cs1、第2電源電圧VDD2、第2定電流電源22、液晶セル10に配置された第1センサ用電極121と第1センサ対向電極221との間に発生する静電容量CL(CL´)、静電容量CLと並列に配置された第2固定静電容量Cs2、検出部40(増幅回路23、切替回路24、スイッチSW25、比較回路26、PWMユニット27、タイマユニット28、タイマユニット用の発振器29、及びCPU等を含んで構成される制御部30を含む)、及び各セグメント電極によって表示を行うための駆動回路(不図示)等から構成されている。
【0041】
液晶装置20では、静電容量結合方式による容量変化によって第1センサ用電極121上にユーザ指1が置かれたか否かの検出(第1の検出)、及び第1センサ用電極121上をユーザの指1が押圧したか否かの検出(第2の検出)を行う。また、VDD1及びVDD2は、液晶層17に印加される電位差Vthに比べで十分に小さいことが、液晶の表示に影響を及ぼさないことから好ましい。さらに、図4に示した第1の検出及び第2の検出を行うための検出回路(40)と、表示を行うための駆動回路とは、別々のICとしても良いし、1つのICの内に組み込むように構成しても良い。
【0042】
制御部30は、切替回路24を制御して、静電容量Chの検出と、静電容量CLからCL´への変化の検出を、それぞれ繰り返し行う。制御部30は、静電容量Chが検出された後に、静電容量CLからCL´に変化した場合に、ユーザが第1センサ用電極に対応するセグメントの入力指示(選択)を行ったものと判別する。
【0043】
静電容量Chを検出する場合(第1の検出)、制御部30による制御信号に基づいて、切替回路24は、増幅回路23の出力と比較回路26とを接続する。第1センサ用電極121に対応する第1透明基板11上にユーザの指1が置かれない場合には、第1定電流源21で充電する合計の静電容量は第1固定静電容量Cs1のみであるが、ユーザの指1が置かれた場合には、前述した静電容量Chが存在することとなり、定電流源21で充電する合計の静電容量は、Cs+Chとなる。
【0044】
最初SW25はOFFしており、第1固定静電容量Cs1の端子電圧はOVであって、比較回路26の出力はLOWである。すると、第1定電流源21によって第1固定静電容量Cs1が充電されて、Cs1の端子電圧Viが上昇する。端子電圧Viは基準電圧Vrefと比較回路26において常時比較されており、端子電圧Viが基準電圧Vref以上となると、比較回路26の出力はHIGHとなる。比較回路26の出力がHIGHとなることによって、SW25がONされるので、第1固定静電容量Cs1に充電された電荷はSW25を介して放電し、第1固定静電容量Cs1の端子電圧Viは0Vに復帰する。したがって、比較回路26の出力は直にLOWに戻ることとなる。即ち、比較回路26は所定のタイミングで、LOWとHIGの出力を繰り返し行うこととなる。
【0045】
PWMユニット27は、比較回路26の出力がLOWからHIGHに変化するまでの間隔に対応した幅のパルス幅を有する信号を出力する。タイマユニット28は、発振器29からの発振パルスに基づいて、PWMユニット27が出力する信号のパルス幅に対応したパルス数を計測して、計測結果を制御部30へ出力する。制御部30では、計測結果に基づいて、第1センサ用電極121に対応する第1透明基板11上にユーザの指が配置されたか否かの判断を行う。
【0046】
図5は、Csの端子電圧Viの一例を示す図である。
【0047】
図5(a)はユーザの指1が置かれ、合計の静電容量がCh分だけ大きい場合を示し、図5(b)はユーザの指1が置かれず、合計の静電容量が小さい場合を示している。図5(a)及び(b)において、縦軸はCsの端子電圧Viを示し、横軸は時間Tを示している。
【0048】
図に示すように、ユーザの指1が置かれた場合には、合計の静電容量が大きいため、比較回路26の出力がLOWからHIGHへ切り替わる期間T1が、ユーザの指1が置かれなかった場合の期間T2より長くなる。したがって、制御部30は、タイマユニット28からの計測結果に基づいて、ユーザの指1が第1センサ用電極121上に置かれたか否かを判別することが可能となる。
【0049】
静電容量の変化(CL→CL´)を検出する場合(第2の検出)、制御部30による制御信号に基づいて、切替回路24は、第2固定静電容量Cs2の第2定電流電源22側の端子を比較回路26と接続する。第1センサ用電極121に対応する第1透明基板11上をユーザの指1が押圧していない場合には、第2定電流源22で充電する合計の静電容量はCL+Cs2であるが、ユーザの指1が押圧した場合には、第2定電流源22で充電する合計の静電容量は、CL´+Cs2となる。ここで、静電容量は電極間の距離に反比例することから、CL´>CLとなるので、CL´+Cs2>CL+Cs2となる。
【0050】
上述したように、ユーザの指1が押圧した場合には、合計の静電容量が大きいため(CL´+Cs2)、比較回路26の出力がLOWからHIGHへ切り替わる期間T1が、ユーザの指1が押圧しなかった場合(CL+Cs2)の期間T2より長くなる。したがって、制御部30は、タイマユニット28からの計測結果に基づいて、ユーザの指1が第1センサ用電極121上を押圧した否かを判別することが可能となる。
【0051】
図4では、静電容量の変化(Cs1→Cs1+Ch;CL+Cs2→CL´+Cs2)の検出を同じ検出部(スイッチ25、比較回路26、PWMユニット27、タイマユニット28、発振器29及び制御部30)により行っている。しかしながら、静電容量Chに比べて静電容量の変化(CL→CL´)が大きいため、増幅回路23を用いている。
【0052】
図6は、検出タイミングと液晶の駆動タイミングの一例を示す図である。
【0053】
図6において、縦軸は、第1セグメント101と第1対向電極201(コモン電極)間に印加される電圧(V)を示し、横軸は時間(T)を示している。図6は、第1セグメント(文字「A」)の部分を透過状態とする場合を示している。
【0054】
第1の期間T10では、最初に第1の検出として静電容量Chを検出する期間T11が設けられ、次に第2の検出として静電容量の変化(CL→CL´)を検出する期間T12が設けられ、次に液晶を駆動するための期間T13が設けられている。期間T13では、第1セグメント電極101にOFFレベルの電圧が印加され、第1対向電極201にONレベルの電圧が印加されている。期間T11及びT12では、微小な静電容量の変化を検出するため、第1センサ用電極121及び第1センサ対向電極221の近傍に配置される第1セグメント電極101及び第1対向電極201には共にOFFレベルの電圧を印加するように構成した。例えば、第1の期間T10及び第2の期間T20を16.6mS、期間T11、T12、T21及びT22を2mSと設定することができる。
【0055】
第2の期間T20では、液晶を駆動する期間T23において、第1セグメント電極101にONレベルの電圧が印加され、第1対向電極201にOFFレベルの電圧が印加、即ち、第1セグメント電極101と第1対向電極201との間に交番電界が印加されるように構成されている。以下、第1の期間T10と第2の期間T20が繰り返し、実行される。ONレベルの電圧とOFFレベルの電圧との差が液晶層17に印加される電位差Vthとなる。
【0056】
制御部30は、期間T11及びT21において、切替回路24を制御して、静電容量Chの検出を行い、機関T12及び22において、切替回路24を制御して、静電容量の変化(CL→CL´)の検出を行い、静電容量Chの検出及び静電容量の変化(CL→CL´)の検出が共になされた場合に、第1センサ用電極121に対応した第1透明基板11上にユーザの指1がある、即ちユーザが第1セグメントを選択したと判別する。
【0057】
なお、図4に示す液晶装置20では、ユーザによる第1セグメントの選択の検出を行うための部分についてのみを示しているが、実際には全てのセグメントに対して同様の検出が行われる。また、図4に示す液晶装置20における第1の検出及び第2の検出の方法は一例であって、他の検出方法・検出回路を採用することも可能である。
【0058】
上述したように、液晶装置20では、例えば、所望のセグメント電極とコモン電極間に所定の交番電圧を印加して、電極間の液晶層の透過・非透過を制御することによってセグメントの表示を行い(パッシブ駆動)、セグメントが表示されている箇所をユーザが選択した場合には、第1の検出及び第2の検出によってユーザによる入力位置の特定を行うことが可能となった。このように、液晶装置20では、液晶表示用の透明電極パターンにセンサ用電極を組み込むことによって、表示と入力位置の特定を簡単な構成で実現することが可能となった。なお、液晶装置20では、第1透明電極12及び第2透明電極を接触させるほど、第1及び第2透明基板11及び16を撓ませる必要がないことから、通常のスペーサ18を用いることができ、第1及び第2透明基板11及び16間の厚みの保持について特別な工夫を考慮することが無い。
【0059】
また、液晶装置20では、第1基板11及び第2基板16を可撓性を有する材料で構成したが、必ずしも両方の基板を可撓性とする必要はなく、何れか一方のみであっても良い。
【0060】
さらに、液晶装置20において、表示を行うためにセグメント電極等に印加する印加電圧レベルと、第1及び第2の検出のために検出用の電極に印加する印加電圧レベルを同じにすれば、回路設計が容易となる。なお、その場合、第1及び第2の検出の時に、液晶が反転等する可能性があるが、後述する様に第1及び第2の検出期間は表示の為の駆動期間に比べて十分に短いので大きな問題とはならない。
【0061】
図7は、透明電極パターンの他の例を示す図である。
【0062】
図7(a)は液晶装置20の第1透明電極パターン12の代わりに利用することができる他の第1透明電極パターン12´の一例を示し、図7(b)は液晶装置20の第2透明電極パターン15の代わりに利用することができる他の第2透明電極パターン15´の一例を示している。なお、図7(a)及び(b)において、図2と同じ構成には同じ番号を付している。
【0063】
図7(a)及び(b)において、図2(a)及び(b)と異なる点は、各センサ用電極121、122及び123にそれぞれ対向したセンサ対向電極を第2透明電極パターン15´が有しておらず、代わりに、第1透明電極パターン12´が第1押圧検出用電極140とそのための配線141を有し、第2透明電極パターン15´が第2押圧検出用電極240とそのための配線241を有している点である。
【0064】
前述したように、本発明に係る液晶装置20では、ユーザの指1が第1透明基板11上に置れたことによって誘導される静電容量Chの検出(第1の検出)と、ユーザの指1が第1透明基板11を押圧したことによって変化する静電容量(CL→CL´)を検出(第2の検出)を行う。しかしながら、第1透明基板11上のいずれかを押圧すると、第1基板11全体が撓むので、複数のセンサ対向基板221、222及び223等を設けなくても、最低1組の押圧検出用の電極対があれば良い。そこで、図7の例では、第1押圧検出用電極140及び第2押圧検出用電極240を、図4に示す第1センサ用電極121と第1センサ対向電極221の代わりに利用して、ユーザの指1が第1透明基板11を押圧したことによって変化する静電容量(CL→CL´)を検出するものである。
【0065】
したがって、図2の例では、センサ対向電極をセグメント毎に配置する必要があったが、図7の例では、液晶装置20全体で、第1押圧検出用電極140及び第2押圧検出用電極240を1つ設ければよいので、コストを低減させることが可能となる。なお、図7の例では、第1押圧検出用電極140及び第2押圧検出用電極240を1対だけ配置するようにしたが、セグメントが配置される表示領域の大小に応じて、第1押圧検出用電極140及び第2押圧検出用電極240を複数対、適当な位置に配置することも可能である。
【0066】
図6の例では、第1の検出を行う期間T11と第2の検出を行う期間T12とを別々の期間としたが(タイムシェア)、図7に示すように、第1の検出を行うための電極(第1センサ電極121等)と第2の検出を行うための電極(第1押圧検出用電極140及び第2押圧用検出電極240)が異なる場合には、第1の検出及び第2の検出を行う期間をタイムシェアすることなく、同じ期間とすることが可能となる。
【0067】
図8は、透明電極パターンの更に他の例を示す図である。
【0068】
図8は液晶装置20の第1透明パターン12の代わりに利用することができる更に他の第1透明電極パターン12´´を示している。また、図8に示す第1透明電極パターン12´´に対応した第2透明電極パターン15´´は、単にベタ電極であるので、図示していない。
【0069】
図8に示す第1透明電極パターン12´´と上述の第2透明電極パターン15´´の例では、センサ用電極の代わりにセグメント用の電極(第1セグメント電極101等)を利用して前述した第1の検出を行い、センサ用電極とセンサ対向電極の代わりにセグメント電極(第1セグメント電極101等)と対向するベタ電極を利用して前述した第2の検出を行うものである。
【0070】
図6に示すように、第1の検出を行い期間T11と第2の検出を行う期間T12とは別々の期間とされているので(タイムシェア)、別々の電極としなくても、検出を行うことが可能である。図8の例では、別個に、センサ電極とセンサ対向電極を設ける必要がなく、従前の効果に加えて、コストを下げることが可能となる。
【0071】
図9は、透明電極パターンの更に他の例を示す図である。
【0072】
図9(a)は液晶装置20の第1透明パターン12の代わりに利用することができる更に他の第1透明電極パターン12´´´を示しており、図9(b)は液晶装置20の第2透明パターン15の代わりに利用することができる更に他の第2透明電極パターン15´´´を示している。
【0073】
図6で説明したように、第1の検出を行う期間T11、第2の検出を行う期間T12、及び液晶を駆動するための期間T13を別々とした場合には、図8に示す様に、全ての電極を1つで兼用することが可能となる。そこで、図9の例では、第1の透明電極パターン12´´´に複数の走査電極を設け、第2の透明電極パターン15´´´に複数の信号電極を設けて、液晶をマトリックス駆動する場合に、本発明を適用したものである。
【0074】
図9の例では、走査電極140−1〜140−7と信号電極240−1〜240−7を利用して、文字「A」の表示を行う場合を示している。図6で説明したように、第1の検出を行う期間T11、第2の検出を行う期間T12、及び液晶を駆動するための期間T13を別々に設けた場合には、走査電極及び信号電極を用いて前述した第1の検出及び第2の検出を行い、例えば、文字「A」を表示した部分にユーザの指が置かれたか否かの検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る液晶装置20に用いられる液晶セル10の概略断面図である。
【図2】透明電極パターンの一例を示す図である。
【図3】センサ用電極及びセンサ対向電極と指間の静電容量を示す図である。
【図4】本発明に係る液晶装置20の概略構成を示す図である。
【図5】Csの端子電圧Viの一例を示す図である。
【図6】検出タイミングと液晶の駆動タイミングの一例を示す図である。
【図7】透明電極パターンの他の例を示す図である。
【図8】透明電極パターンの更に他の例を示す図である。
【図9】透明電極パターンの更に他の例を示す図である。
【図10】透明基板上の指の動きの例を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10 液晶セル
11 第1透明基板
12、12´、12´´、12´´´ 第1透明電極パターン
15、15´、15´´、15´´´ 第2透明電極パターン
16 第2透明基板
20 液晶装置
101、102、103 セグメント電極
121、122、123 センサ用電極
140 第1押圧検出用電極
201、202、203 対向電極
221、222、223 センサ対向電極
240 第2押圧検出用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が可撓性である第1基板及び第2基板に挟持された液晶層と、前記第1及び第2基板に設けられた複数の電極とを備えた液晶セルと、
前記電極に表示用の電圧を印加するための駆動手段と、
前記電極における静電結合方式による容量変化を検出する第1検出手段と、
前記第1又は第2透明基板が押圧されて静電容量の変化を前記電極により検出する第2検出手段と、
を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記第1検出手段より出力される信号によって、前記液晶セルにおける位置情報を得る、請求項1に記載の液晶装置。
【請求項3】
前記第2検出手段より出力される信号によって、前記液晶セルにおける前記第1基板と前記第2基板との距離情報を得る、請求項1又は2に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記電極に電圧が印加される期間は、前記表示用の電圧を印加するための表示用駆動期間と、前記第1検出手段により前記電極に電圧が印加される第1検出用駆動期間と、前記第2検出手段より前記電極に電圧が出力される第2検出用駆動期間とを含む請求項1〜3の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記表示用の電圧を印加する前記電極は表示用電極であり、前記第1検出手段より電圧が印加される前記電極はセンサ用電極であり、前記第2検出回路より電圧が印加される前記電極は押圧用電極であり、少なくとも、前記表示用電極と前記センサ用電極とは別に設けられた電極である、請求項1〜4の何れか一項に記載の液晶装置。
【請求項6】
前記押圧用電極と前記センサ用電極は同じ電極である、請求項5に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記押圧用電極と前記センサ用電極とは別々に設けられた電極である、請求項5に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記第1及び第2検出手段が静電容量の変化を検出した場合に、ユーザによる入力指示箇所を判別する制御部、を更に有する、請求項1〜7の何れか一項に記載の液晶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−204981(P2009−204981A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48314(P2008−48314)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】