説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】本発明の目的は、優れた液晶配向能を有しつつ、液晶表示素子の高温使用時における電圧保持率を高め、その電圧保持率の熱劣化を小さくできる液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供することである。
【解決手段】本発明は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する液晶配向剤であって、上記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物を含み、かつ、上記ジアミンが、下記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする液晶配向剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ツイステッドネマチック型液晶表示素子(TNモード)、横電界表示型液晶表示素子(IPSモード)等の液晶表示素子においては、対向配置された一対の基板間に液晶を封入し、電界の印加の有無により、上記液晶配向に変化を生じさせて光を変調する光スイッチング機能により表示を行う。
【0003】
上記液晶は、基板上の液晶配向膜をレーヨン又はコットンといった毛足が長い布で擦り付ける処理、いわゆるラビング処理により、その処理方向に配向させることができる。上記TNモードやIPSモード等の水平配向型液晶表示素子(水平配向モード)においては、上記液晶を基板面及びラビング処理方向に平行に配向させる水平配向技術が必要とされる。
【0004】
現在、上記水平配向技術に好適に用いられる液晶配向膜の形成に、脂環式テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物を用いて合成した脂環式ポリイミドを含有する液晶配向剤を使用する試みが行われている。上記脂環式ポリイミドは、従来の液晶配向剤に用いられる芳香族ポリイミド等と比較して、可視光領域での吸収が少ないことから光劣化が少ない、ラビング処理時の膜劣化が少ない、溶液状態での粘度コントロールが容易である等の利点を有する(特開昭57−128318号公報、特許4052308号公報及び特開2010−156934号公報参照)。
【0005】
一方、近年需要が増大しているカーナビゲーション用パネル、スマートフォン用パネル等の車載用又は屋外使用を前提とした液晶表示素子においては、従来の液晶表示素子よりも広い温度範囲で駆動可能であることが要求される。そのため、液晶表示素子には、高温での表示特性の安定性が要求されるが、上記脂環式ポリイミド等を用いた従来の液晶配向膜を具備した液晶表示素子は、高温使用時の電圧保持率が不十分であり、さらにその電圧保持率の熱劣化が大きいという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−128318号公報
【特許文献2】特許4052308号公報
【特許文献3】特開2010−156934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた液晶配向能を有しつつ、液晶表示素子の高温使用時における電圧保持率を高め、その電圧保持率の熱劣化を小さくできる液晶配向剤、この液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜、及びこの液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する液晶配向剤であって、
上記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物」ともいう)を含み、
かつ、上記ジアミンが、下記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする液晶配向剤である。
【化1】

(式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。X及びXは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基である。m及びnは、それぞれ独立して0又は1である。但し、m及びnの両方が0となる場合はない。)
【0009】
当該液晶配向剤は、ポリアミック酸又はそのイミド化重合体が脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物と上記特定構造のジアミンとを反応させて得られる化合物を含有することで、液晶表示素子の高温使用時における電圧保持率を向上し、またその電圧保持率の熱劣化を小さくすることができる。また、当該液晶配向剤は、ジアミンとして、上記式(1)で表されるようなベンゼン環におけるアミドのオルト位に置換基を有する構造のものを用いることで、ポリアミック酸又はそのイミド化重合体の溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0010】
上記式(1)において、mが1かつnが0であるか、又はmが0かつnが1であるとよい。上記式(1)で表されるジアミンのベンゼン環が、置換基として、X−X−及びX−X−の両方を有する場合と比較して、どちらか片方のみを有する場合には、アンカリング力により優れる。
【0011】
上記脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0012】
上記脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物が、上記特定の化合物であると、当該液晶配向剤は、液晶表示素子の高温使用時における電圧保持率を向上させると共に、その電圧保持率の熱劣化をより小さくすることができる。
【0013】
上記脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0014】
上記脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物が、上記特定の化合物であると、当該液晶配向剤は、液晶表示素子の高温使用時における電圧保持率をさらに向上させると共に、その電圧保持率の熱劣化をより小さくすることができる。
【0015】
上記テトラカルボン酸二無水物は、ピロメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の芳香族化合物をさらに含むことが好ましい。
【0016】
上記テトラカルボン酸二無水物が上記特定の芳香族化合物をさらに含むことで、当該液晶配向剤の配向性を向上することができる。
【0017】
上記テトラカルボン酸二無水物はピロメリット酸無水物をさらに含むことが好ましい。このように、上記テトラカルボン酸二無水物がピロメリット酸無水物をさらに含むことで、当該液晶配向剤の配向性をより向上することができる。
【0018】
本発明は、当該液晶配向剤により形成された液晶配向膜も含む。当該液晶配向膜は、上述の当該液晶配向剤から形成されるため、それを具備する液晶表示素子の高温使用における電圧保持率を向上し、その電圧保持率の熱劣化をより小さくすることができる。
【0019】
本発明は、当該液晶配向膜を具備した液晶表示素子も含む。当該液晶表示素子は、電圧保持率に優れると共に、その電圧保持率の熱劣化も小さいため、カーナビゲーション用パネル、スマートフォン用パネル等のような広い温度範囲での駆動が必要とされる液晶表示素子等として好適に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液晶配向剤及び液晶配向膜は、高温使用時においても高い電圧保持率を示し、その電圧保持率の熱劣化が少ない液晶表示素子を与えることができる。従って、本発明の液晶表示素子は、カーナビゲーション用パネル、スマートフォン用パネル等のような広い温度範囲での駆動が必要とされる液晶表示素子等として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する液晶配向剤であって、上記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物を含み、かつ、上記ジアミンが、上記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。また、当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有していてもよい。以下に、ポリアミック酸、そのイミド重合体、その他の任意成分について詳述する。
【0022】
<ポリアミック酸>
本発明の液晶配向剤に含まれるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と、上記式(1)で表されるジアミンとを反応させることにより得ることができる。上記テトラカルボン酸二無水物は、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む。さらに、本発明の効果を損なわない限り、上記ポリアミック酸の合成には、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン以外に、分子量調節剤等のその他の任意成分をさらに用いてもよい。
【0023】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのテトラカルボン酸二無水物は、脂肪族炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「脂肪族テトラカルボン酸二無水物」ともいう)、又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物(以下、「脂環式テトラカルボン酸二無水物」ともいう)を含む。
【0024】
ここで、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂肪族鎖状炭化水素から少なくとも1つの水素原子を除いた構造を主鎖又は側鎖に有し、その鎖状構造部分に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物をいう。但し、鎖状構造のみで構成されている必要はなく、その一部に環状炭化水素の構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0025】
また、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素から少なくとも1つの水素原子を除いた構造を主鎖又は側鎖に有し、その脂環式炭化水素に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物、及び上記脂環式炭化水素の構造と上記鎖状炭化水素の構造とを主鎖又は側鎖に有し、脂環式炭化水素基に結合する2つのカルボキシル基と鎖状炭化水素基部分に結合する2つのカルボキシル基とが分子内脱水することにより得られる酸二無水物をいう。但し、脂環式炭化水素基や鎖状炭化水素基のみで構成されている必要はなく、その一部に芳香環構造を有していてもよい。
【0026】
上記脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。また、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。その他、特開2010−97188号公報に記載の脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び脂環式テトラカルボン酸二無水物であって上記以外のものを用いることができる。
【0027】
脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物がより好ましく、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。なお、上記脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物のみを用いてもよいが、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物に加えて、さらに芳香環を有するテトラカルボン酸二無水物(芳香族テトラカルボン酸二無水物)を組み合わせて用いてもよい。ここで、「芳香族テトラカルボン酸二無水物」とは、主鎖又は側鎖において1つ以上の芳香環を有し、同一の又は異なる芳香環に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸無水物である。
【0029】
上記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、その他、特開2010−97188号に記載の芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのうち、PMDA、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物が好ましく、PMDAがより好ましい。PMDAは、液晶配向性に優れているため、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物と組合せることで、液晶配向膜における配向性を向上できる点で好ましい。一方、脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物を単独で用いた場合には、芳香族テトラカルボン酸二無水物との混合系に比べて、電圧保持率を高くできる点で好ましい。
【0030】
脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用比率は、その合計量が、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜100モル%が好ましく、30〜100モル%がより好ましく、50〜100モル%がさらに好ましく、60〜100モル%が特に好ましい。脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物の使用比率を上記特定範囲とすることで、液晶配向膜としたときに高い電圧保持率を発現できると共にラビング耐性を良好にすることができる。
【0031】
上記テトラカルボン酸二無水物として、脂肪族又は脂環式のテトラカルボン酸二無水物と芳香族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせて用いる場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用率としては、テトラカルボン酸二無水物の全量に対して5〜50モル%であり、10〜45モル%が好ましく、20〜40モル%がより好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物の使用率を上記特定範囲とすることにより、液晶配向膜としたときの電圧保持率を良好にしつつ、液晶配向性を高めることができる。
【0032】
[ジアミン]
本発明において、ポリアミック酸を合成するために使用するジアミンの少なくとも一部は、上記式(1)で表される化合物である。
【0033】
上記式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。X及びXは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基である。m及びnは、それぞれ独立して0又は1である。但し、m及びnの両方が0となる場合はない。
【0034】
上記X及びXで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0035】
及びXとしては、単結合又は−O−が好ましく、単結合がさらに好ましい。
【0036】
上記m及びnとしては、どちらか一方が0である場合、即ち、上記式(1)で表されるジアミンが有するベンゼン環がアミドのオルト位の片方のみに置換基を有している場合が好ましい。このような構造であることで、得られるポリアミック酸の溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0037】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0038】
【化2】

【0039】
上記式(1)で表される化合物としては、これらのうち、上記式(1−1)〜(1−5)で表される化合物が好ましく、上記式(1−1)で表される化合物(4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド)、及び上記式(1−2)で表される化合物(4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)ベンズアミド)がより好ましく、上記式(1−1)で表される化合物(4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド)がさらに好ましい。
【0040】
本発明におけるポリアミック酸を合成するためのジアミンとしては、上記式(1)で表される化合物のみを使用してもよいし、上記式(1)で表される化合物と共にその他のジアミンを併用してもよい。
【0041】
ここで使用することのできるその他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0042】
上記脂肪族ジアミンとしては、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
上記脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0044】
上記ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0045】
上記芳香族ジアミンとしては、例えばo−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、1−(2,4−ジアミノフェニル)ピペラジン−4−カルボン酸、4−(モルホリン−4−イル)ベンゼン−1,3−ジアミン、1,3−ビス(N−(4−アミノフェニル)ピペリジニル)プロパン、α−アミノ−ω−アミノフェニルアルキレン、及び下記式(A−1)で表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化3】

【0047】
上記式(A−1)中、R及びRは、それぞれ、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−である。Rは、単結合、メチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基である。pは、0又は1である。qは、0〜2の整数である。rは、1〜20の整数である。但し、p及びqの両方が0になることはない。また、R〜Rの全てが単結合となることはない。
【0048】
上記式(A−1)における−R−R−R−で表される2価の基としては、メチレン基、炭素数2若しくは3のアルキレン基、−O−、−COO−又は−O−CHCH−O−(但し、「*」はジアミノフェニル基と結合する部位を示す。)が好ましい。基C2r+1−としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等が挙げられる。なお、ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
【0049】
上記式(A−1)で表される化合物としては、例えば下記式(A−1−1)〜(A−1−3)で表される化合物等が挙げられる。
【0050】
【化4】

【0051】
その他のジアミンとしては、上記の化合物以外にも特開2010−97188号公報に記載のジアミンのうち上記以外の化合物等が挙げられる。
【0052】
上記式(1)で表される化合物の使用比率は、ジアミンの全量に対して10〜100モル%であるのが好ましい。上記式(1)で表される化合物の使用比率を上記特定範囲とすることにより、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、優れた液晶配向性を発現することができる。また、上記液晶配向膜を具備した液晶表示素子は、高温使用時の液晶の電圧保持率も高くできる。
【0053】
[分子量調節剤]
ポリアミック酸を合成するに際して、上記テトラカルボン酸二無水物及びジミアンと共に、適当な分子量調節剤を用いて末端修飾型の重合体を合成することとしてもよい。ポリアミック酸を、かかる末端修飾型の重合体とすることにより、本発明の効果を損なうことなく液晶配向剤の塗布性(印刷性)をさらに改善することができる。
【0054】
上記分子量調節剤としては、例えば酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0055】
上記酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物等が;
上記モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン等が;
上記モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等がそれぞれ挙げられる。
【0056】
上記分子量調節剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下とすることがより好ましい。
【0057】
<ポリアミック酸の合成方法>
本発明におけるポリアミック酸は、溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより合成することができる。ポリアミック酸の合成反応に用いられるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.3〜1.2当量となる割合がより好ましい。
【0058】
ポリアミック酸の合成に用いられる溶媒としては、有機溶媒が好ましい。このときの反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。また、反応時間は0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましい。
【0059】
上記有機溶媒としては、例えば、非プロトン性極性溶媒、フェノール及びその誘導体、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等が挙げられる。
【0060】
上記非プロトン性極性溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等が挙げられる。
【0061】
上記フェノール及びその誘導体としては、例えばm−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール等が挙げられる。
【0062】
上記アルコールとしては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0063】
上記ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0064】
上記エステルとしては、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。
【0065】
上記エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0066】
上記ハロゲン化炭化水素としては、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン等が挙げられる。
【0067】
上記炭化水素としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル等が挙げられる。
【0068】
これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒並びにフェノール及びその誘導体からなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は上記第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用することが好ましく、第一群の有機溶媒がより好ましく、非プロトン性極性溶媒がさらに好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。なお、上記第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される一種以上との混合物を使用する場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0069】
有機溶媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量が、反応溶液の全量に対して0.1〜50質量%になるような量とすることが好ましい。
【0070】
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に用いてもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に用いてもよい。あるいは、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に用いてもよい。なお、ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
【0071】
<イミド化重合体>
本発明におけるイミド化重合体(ポリイミド)は、上記合成したポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。この場合、ポリアミック酸を溶解してなる上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で脱水閉環反応に供してもよい。又は単離したポリアミック酸を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
【0072】
本発明におけるポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。本発明におけるポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、65〜99%であることがさらに好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
【0073】
ポリアミック酸の脱水閉環は、ポリアミック酸を加熱する方法、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解しこの溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われることが好ましく、後者の方法によることが好ましい。
【0074】
上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量としては、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0℃〜180℃であり、より好ましくは10℃〜150℃である。反応時間は好ましくは1.0時間〜120時間であり、より好ましくは2.0時間〜30時間である。
【0075】
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。
【0076】
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる本発明におけるポリアミック酸又はイミド化重合体(以下、特定重合体ともいう)は、これを濃度10質量%の溶液としたときに、20mPa・s〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30mPa・s〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。ここで、上記特定重合体の溶液粘度(mPa・s)は、N−メチル−2−ピロリドンを用いて調製した特定重合体の濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値とする。
【0077】
<その他の任意成分>
本発明の液晶配向剤は特定重合体を含有するが、必要に応じてその他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えば、有機溶媒、上記の特定重合体以外のその他の重合体、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物等が挙げられる。
【0078】
[有機溶媒]
本発明の液晶配向剤は、通常、特定重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の任意成分が、有機溶媒中に溶解、含有されて構成される。
【0079】
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、非プロトン性極性溶媒が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンより好ましく、N−メチル−2−ピロリドンがさらに好ましい。これらは単独で使用することができ、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0080】
[その他の重合体]
上記その他の重合体は、溶液特性及び電気特性の改善のために使用することができる。その他の重合体は、特定重合体以外の重合体であり、例えば式(1)で表される化合物を含まないジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られるポリアミック酸及び芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「他のポリアミック酸」ともいう。)、他のポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「他のポリイミド」ともいう。)、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0081】
これらのうち、他のポリアミック酸又は他のポリイミドが好ましく、他のポリアミック酸がより好ましい。なお、他のポリアミック酸又は他のポリイミドを合成するために用いるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンとしては、上記特性重合体を合成するために用いられる化合物等が挙げられる。
【0082】
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中の全重合体量に対して50質量%以下が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.1〜30質量%がさらに好ましい。
【0083】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、液晶配向膜における機械的強度の向上のために使用することができる。これにより、ラビング処理に際し膜の剥離等を抑制することができ(ラビング耐性を向上でき)、ひいては、液晶表示素子における表示不良を抑制できる。また、エポキシ化合物は、液晶配向膜と基材との接着性向上を目的として使用することもできる。
【0084】
上記エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン、及びN,N−ジグリシジル−シクロヘキシルアミンが好ましい。
【0085】
これらエポキシ化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して40質量部以下が好ましく、0.1質量部〜30質量部がより好ましい。
【0086】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノナン酸メチル、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2―グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0087】
これら官能性シラン化合物を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、重合体の合計100質量部に対して2質量部以下が好ましく、0.02〜0.2質量部がより好ましい。
【0088】
<液晶配向剤の調製>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体及び必要に応じて任意的に配合されるその他の添加剤を、上記有機溶媒中に溶解含有されて調整される。
【0089】
当該液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%の範囲である。すなわち、本発明の液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成されるが、このとき、固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得にくい。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るおそれがある。
【0090】
特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度1.5質量%〜4.5質量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3質量%〜9質量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12(mPa・s)〜50(mPa・s)の範囲とすることが好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3(mPa・s)〜15(mPa・s)の範囲とすることが好ましい。本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10℃〜50℃であり、より好ましくは20℃〜30℃である。
【0091】
<液晶配向膜及び液晶表示素子>
本発明の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤により形成される。また、本発明の液晶表示素子は、当該液晶配向膜を具備するものである。当該液晶配向膜は、IPS型やTN型、STN型といった水平配向型の液晶表示素子に適用してもよいし、VA型のような垂直配向型の液晶表示素子に適用してもよいが、水平配向型に適用するのが好ましく、IPS型に適用するのがより好ましい。
【0092】
以下に、本発明の液晶表示素子の製造方法を説明すると共に、その説明の中で本発明の液晶配向膜の製造方法についても説明する。本発明の液晶表示素子は、例えば以下(1)〜(3)の工程により製造することができる。工程(1)は、所望の動作モード毎に使用基板が異なる。工程(2)及び(3)は各動作モードに共通である。
【0093】
[工程(1):塗膜の形成]
先ず基板上に当該液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。
【0094】
(1−1)TN型、STN型又はVA型液晶表示素子を製造する場合;
パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、本発明の液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布し、次いで、各塗布面を加熱(好ましくは予備加熱(プレベーク)及び焼成(ポストベーク)からなる二段階加熱)することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜等を用いることができ、パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後フォト・エッチングによりパターンを形成する方法、透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法等によることができる。当該液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成するべき面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物等を予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
【0095】
当該液晶配向剤塗布後の塗布面を、次いで予備加熱(プレベーク)し、さらに焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0096】
(1−2)IPS型液晶表示素子を製造する場合;
櫛歯型にパターニングされた透明導電膜が設けられている基板の導電膜形成面と、導電膜が設けられていない対向基板の一面とに、本発明の液晶配向剤をそれぞれ塗布し、次いで各塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜のパターニング方法、基板の前処理ならびに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。
【0097】
なお、上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に当該液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、本発明の液晶配向剤に含有される重合体が、ポリアミック酸であるか、又はイミド環構造とアミック酸構造とを有するイミド化重合体である場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。
【0098】
[工程(2):ラビング処理]
TN型、STN型又はIPS型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜に、例えばナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を施す。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0099】
さらに、上記の液晶配向膜に対し、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにすることによって得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0100】
なお、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記のようにして形成された塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、上記のラビング処理を施してもよい。
【0101】
[工程(3):液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された一対の基板につき、二枚の基板の液晶配向膜のラビング方向が直交又は逆平行となるように間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、二枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面に、偏光板を、その偏光方向が各基板に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致又は直交するように貼り合わせることにより、当該液晶表示素子を得ることができる。
【0102】
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
【0103】
液晶としては、ネマチック型液晶及びスメクチック型液晶を挙げることができ、その中でもネマチック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等を用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック型液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を添加して使用してもよい。
【0104】
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、例えばポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0105】
本発明の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に用いることができる。特に、当該液晶表示素子は、高温使用時においても高い電圧保持率を示し、その電圧保持率の熱劣化が少ないことから、カーナビゲーション用パネル、スマートフォン用パネル等のような広い温度範囲での駆動が必要とされる液晶表示素子等に好適に用いられる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、下記の合成例において、4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド及び4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)ベンズアミドは、それぞれ日本純良薬品の市販品「MDABAN」及び「MODABAN」をそのまま使用した。また、各合成例における重合体の溶液粘度は、いずれもE型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0107】
<ポリアミック酸の合成>
[合成例1〜6]
N−メチル−2−ピロリドンに、下記表1に示す量のジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を、この順で加えて、モノマー濃度15質量%の溶液とした。その後、室温において6時間の反応を行って、各ポリアミック酸((PA−1)、(PA−2)、(PAR−1)〜(PAR−4))を含有する溶液をそれぞれ得た。各溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加え、ポリアミック酸濃度10質量%の溶液とした。その溶液粘度を測定した結果を下記表1に合わせて示す。
【0108】
表1中、ジアミン及びテトラカルボン酸無水物の略称は、それぞれ以下の意味である。
【0109】
<ジアミン>
d−1:4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メチルフェニル)ベンズアミド
d−2:4−アミノ−N−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)ベンズアミド
d−3:4,4−ジアミノジフェニルアミン
d−4:ジアミノジフェニルエーテル
d−5:ジアミノジフェニルメチレン
d−6:4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート
【0110】
<テトラカルボン酸二無水物>
t−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CB)
【0111】
【表1】

【0112】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1〜2及び比較例1〜4]
上記合成例で得られた各ポリアミック酸((PA−1)、(PA−2)、(PAR−1)〜(PAR−4))をそれぞれ含有する溶液に、γ−ブチロラクトン(BL)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらにエポキシ化合物として、N,N,N,N−テトラグリシジル−4,4−ジアミノジフェニルメタンを、重合体の合計100質量部に対して2質量部加え、溶媒組成がBL:NMP:BC=30:50:20(質量比)、固形分濃度6質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、各液晶配向剤を調製した。
【0113】
<液晶セル(液晶表示素子)の製造>
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、各液晶配向剤をスピンナーにより塗布し、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、膜厚約800Åの塗膜を形成した。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1,000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥することにより、櫛歯状のクロム電極を有する面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板A」とする。
これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして各液晶配向剤の塗膜を形成し、ラビング処理を行い、洗浄、乾燥して、片面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板B」とする。
続いて基板のラビング処理された液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、各液晶配向膜におけるラビング方向が逆平行となるように2枚の基板A,Bを間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接して圧着して接着剤を硬化した。次いで、一対の基板間に、液晶注入口よりネマチック型液晶(メルク社製、MLC−2042)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、IPS型液晶セルを製造した。
【0114】
<評価>
上記製造した各液晶セルについて、下記評価を行った。
【0115】
[電圧保持率(%)]
上記で製造した液晶セルにつき、100℃において1Vの電圧を30秒印加し、印加解除後の電圧保持率(%)を,100℃においてフレーム周期167msecにて測定した。電圧保持率が90%を超える場合を「良好(A)」、80%を超え、90%以下の場合を「やや良好(B)」、80%以下の場合を「不良(C)」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0116】
[熱信頼性(%)]
上記で製造した液晶セルにつき、100℃において電圧保持率をフレーム周期167msecにて測定した後に、100℃、30時間熱ストレスを印加した後に、再度、100℃において電圧保持率をフレーム周期167msecにて測定した。ストレス印加前の電圧保持率(%)からストレス印加後の電圧保持率(%)を引いた値を電圧保持率の熱劣化相当分とし、その値が3%未満の場合を熱信頼性が「良好(A)」、3%以上8%未満の場合を「やや良好(B)」、8%以上の場合を「不良(C)」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0117】
【表2】

【0118】
実施例1及び2の液晶配向剤を用いて製造した液晶配向膜を具備する液晶セルは、比較例1〜4と比較して、電圧保持率が高いことがわかった。また、実施例1及び2の液晶セルは、その電圧保持率の熱劣化が小さく、熱信頼性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の液晶配向剤及び液晶配向膜は、高温使用時においても高い電圧保持率を示し、その電圧保持率の熱劣化が少ない液晶表示素子を与えることができる。従って、本発明の液晶表示素子は、カーナビゲーション用パネル、スマートフォン用パネル等のような広い温度範囲での駆動が必要とされる液晶表示素子等として好適に用いられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸及びそのイミド化重合体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含有する液晶配向剤であって、
上記テトラカルボン酸二無水物が、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物を含み、
かつ、上記ジアミンが、下記式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。X及びXは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基である。m及びnは、それぞれ独立して0又は1である。但し、m及びnの両方が0となる場合はない。)
【請求項2】
上記式(1)において、mが1かつnが0であるか、又はmが0かつnが1である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するテトラカルボン酸二無水物が、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、及び2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項3に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
上記テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種の芳香族化合物をさらに含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
上記テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸無水物をさらに含む請求項5に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶配向剤により形成された液晶配向膜。
【請求項8】
請求項7に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。

【公開番号】特開2013−88753(P2013−88753A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231599(P2011−231599)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】