説明

液晶配向溶液のリサイクル方法および装置

【課題】液晶配向溶液のリサイクル方法および装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、液晶配向溶液のリサイクル方法を提供する。この方法は、LCDの配向溶液の廃液を提供するステップを包含する。配向溶液の廃液は、少なくとも、(a)ポリイミドまたはその前駆体、(b)第一溶剤、(c)添加剤、および、(d)金属イオンと水の少なくとも一つを含む。第二溶剤を配向溶液に加えて、共沸蒸留し、水分を除去する。その後、配向溶液の廃液は、フィルター材によりろ過される。吸着剤は、高純度酸化アルミニウムまたは高純度アルミナケイ酸塩を含む。さらに、液晶配向溶液をリサイクルする装置も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイの液晶配向溶液のリサイクル方法および装置に関し、特に、液晶配向溶液を高効率でリサイクルする方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配向膜は、液晶ディスプレイ(LCD)の表示品質を制御する重要な材料である。通常、鋸歯状の溝を有する配向膜が、上下電極基板の内側表面に設置されて、液晶分子は、溝の方向にきっちりと配列される。これにより、液晶分子の回転角は電界で制御され、液晶分子はLCDのスイッチとして用いることができる。配向膜は、主に、ポリイミドから形成される。ポリイミドは、ジアミンと二無水物から形成される。通常のプロセスで、イミド単量体を含む配向溶液は、ガラス基板にコートされる。特定角度に設定後、イミド単量体は、光重合または熱重合されて、特定方向に沿って均一に配列されるポリイミドを形成し、液晶分子の回転角の制御が可能な配向膜を形成する。
【0003】
配向溶液は、ポリイミドおよびその前駆体以外の配向溶媒および添加剤も含む。添加剤は、その用途に応じて、様々な材料である。しかし、配向溶液が空気に接触したり、長期間放置されたりする場合には、水分と空気中の金属イオンは配向溶液で溶解し、配向溶液中に存在する水分と金属イオン含量が高すぎて、形成された配向膜は、均一でない厚さ、低い電圧保持率(VHR)、高い残留直流(RDC)、または、高いイオン密度などの欠点を有する。従って、製造されたLCDは、画像スティッキングまたはムラの問題を有する。さらに、現在のLCD工業において、製造ラインにおける約70%以上の配向溶液はリサイクルできず、それらの多くが廃液として廃棄される。
【0004】
近年、長く放置された配向溶液または過剰な配向溶液をリサイクルするいくつかの手段が開発されている(以下、まとめて、配向溶液の廃液と称する)。例えば、特許文献1には、配向材料のリサイクル方法が開示され、ポリイミドまたはその前駆体は、ジエチルエーテルにより固化され、ろ過されて、有機溶剤と分離される。その後、ろ過されたポリイミドまたはその前駆体は、配向溶液の原液と同じ組成の混合溶剤に溶解される。これにより、リサイクルされた配向材料が得られる。別のアプローチでは、特許文献2が類似の方法を開示し、ろ過された有機溶剤がリサイクルできることを除いて、特許文献1の方法と同じである。上述の方法によると、配向溶液の廃液から水分を除去できるが、添加剤も除去され、金属イオン含有量も増加する。これにより、リサイクルされる配向溶液の品質および特性は、原液と明らかに異なる。リサイクルされる配向溶液が再度製造ラインに応用されても、形成された配向膜は本来の品質を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,420,440号明細書
【特許文献2】韓国特許第66749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、LCDの配向溶液をリサイクルする方法および装置を提供し、組成を変化させることなく、配向溶液から、水分および金属イオンを高効率で除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、配向溶液をリサイクルする方法を提供する。この方法は、液晶配向材料の配向溶液を提供するステップを包含する。配向溶液は、少なくとも、(a)ポリイミドまたはその前駆体、(b)第一溶剤、(c)添加剤、および、(d)金属イオンと水分の少なくとも一つを含む。また、この方法は、第二溶剤を配向溶液に加えるステップと、最後に、共沸蒸留により、水分と第二溶剤を除去し、フィルター材により、配向溶液をろ過し、純化された配向溶液を得るステップとを包含する。フィルター材は、吸着剤およびフィルター膜を含み、吸着剤は、高純度酸化アルミニウムまたは高純度アルミナケイ酸塩を含む。
【0008】
さらに、本発明は、配向溶液をリサイクルする装置も提供する。この装置は、配向溶液の廃液を収容する反応槽と、水分除去システムと、水分除去システムから配向溶液の廃液を受容する金属イオン除去システムとを備える。水分除去システムは、反応槽の温度を制御する温度制御ユニットと、反応槽の圧力を減少させ、配向溶液の廃液から水分を除去する真空ユニットとを含む。金属イオン除去システムは、反応槽の底部に配置されるフィルター膜とフィルター膜上に配置される吸着剤とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明のLCDの配向溶液をリサイクルする方法および装置によれば、組成を変化させることなく、配向溶液から、水分と金属イオンを高効率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一具体例によるLCDの配向溶液をリサイクルする方法のフローチャートである。
【図2】本発明の別の具体例によるLCDの配向溶液をリサイクルする装置の断面図である。
【図3】FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により分析される実施例1の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。
【図4】FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により分析される実施例2の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。
【図5】ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析される実施例1の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。
【図6】ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析される実施例2の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。
【図7】ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析される比較例の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による具体例は、液晶配向材料の配向溶液のリサイクル方法を開示する。この方法は、共沸蒸留により、配向溶液から水分が除去され、フィルター材により、配向溶液から金属イオンが除去される。さらに、原液(つまり、未使用の配向溶液)中の成分(例えば、ポリイミドまたはその前駆体、添加剤、あるいは、他の成分)は分解されず、それらの含有量は保存される。よって、リサイクルされる配向溶液と原液の成分は、実質上、互いに同じであり、リサイクルされる配向溶液と原液から製造される配向膜は、ほぼ同じ品質を有する。さらに、本発明による具体例は、液晶配向材料の配向溶液をリサイクルする装置も開示する。この装置は、反応槽、水分除去システム、および、金属イオン除去システムを包含する。ある具体例では、リサイクル装置は、上述の配向溶液をリサイクルする方法を実行するのに用いられる。
【0012】
図1は、本発明のある具体例による液晶配向材料の配向溶液をリサイクルする方法のフローチャートである。図2は、本発明の別の具体例による液晶配向材料の配向溶液をリサイクルする装置の断面図である。図1を参照すると、ステップS10で、まず、配向溶液の廃液が提供される。例えば、図2に示すように、配向溶液の廃液は、入口202から、リサイクル装置200の反応槽204に加えられる。ある具体例では、配向溶液の廃液は、少なくとも、(a)ポリイミドまたはその前駆体、(b)第一溶剤、(c)添加剤、(d)金属イオンと水の少なくとも一つを含む。注意すべきことは、(d)金属イオンまたは水分は、配向溶液の廃液から除去する必要がある不純物であり、(a)ポリイミドまたはその前駆体、(b)第一溶剤、および、(c)添加剤は、原液のオリジナル成分であることである。ある具体例では、ポリイミドまたはその前駆体は、ジアミンと二無水物から反応させればよい。ポリイミドまたはその前駆体は、ポリイミドまたはポリアミド酸であり、液晶分子の種類、例えば、ねじれネマチック(TN)型または垂直整列(VA)型に基づく。第一溶剤は、配向溶剤であり、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ブチルセロソルブ(BCS)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)またはそれらの組合せである。ある具体例では、添加剤は、必要に応じて、適当な添加成分を含む。例えば、添加剤は、静電気を防止する静電気防止剤、基板の粘着力を増大させるシランカップリング剤またはチタンカップリング剤、あるいは、配向膜のコーティング性能を改善する界面活性剤を含む。
【0013】
次に、ステップS12で、第二溶剤が、配向溶液の廃液に加えられ、共沸蒸留し、水と第二溶剤が、同時に、配向溶液の廃液から除去される。例えば、図2に示すように、第二溶剤は、入口202から、反応槽204に導入され、配向溶液の廃液と十分に混合される。水分除去システム206は、真空ユニット208と温度制御ユニット212を含む。真空ユニット208および温度制御ユニット212は、それぞれ、反応槽204の圧力および温度を制御する。よって、反応槽204中の配向溶液の廃液の水と第二溶剤は共沸点に達し、水は、共沸蒸留により、第二溶剤と一緒に除去される。ある具体例では、第二溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソペンタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンまたはそれらの混合物である。第二溶剤は、配向溶液の廃液の約5wt%〜約50wt%、または、好ましくは、約10wt%〜約20wt%である。本具体例において、共沸蒸留により、水分と第二溶剤を除去するステップは、約30torrより低い圧力下で、かつ、約20℃と約50℃との間の温度、または、好ましくは、約30℃と40℃との間の温度で実行されて、配向溶液の廃液の他の成分が高温により分解するのを防止する。注意すべきことは、第一溶剤の沸点は水分より高いので、第一溶剤にとって、水と共沸混合物を形成するのが困難なことである。
【0014】
ある具体例では、真空ユニット208は、凝縮ユニット210に結合される。真空ユニット208が作動する間、蒸発した水分と第二溶剤は、凝縮ユニット210に凝縮され、蒸発した水分と第二溶剤が、再度、配向溶液の廃液に凝集するのを防止する。別の具体例では、凝縮ユニット210は、直接、真空ユニット208内に配置される。ある具体例では、凝縮ユニット210は、約−10℃より低い温度である。共沸蒸留ステップ後、配向溶液の廃液は、約0.5wt%(配向溶液の廃液の総重量に基づく)より低い、または、好ましくは約0.4wt%より低い含水量を有する。
【0015】
次に、ステップS14で、金属イオンと他の不純物が、フィルター材により除去される。例えば、図2に示すように、水分除去システム206からの低含水量(例えば、約0.4wt%より小さい)配向溶液の廃液は、金属イオン除去システム214により受容される。金属イオン除去システム214では、金属イオンと他の不純物は、フィルター材により除去される。フィルター材は、吸着剤216とフィルター膜218を含む。ある具体例では、吸着剤216は、高純度酸化アルミニウムまたは高純度アルミナケイ酸塩であり、高純度とは、純度が99%より高いことを意味する。好ましい具体例では、酸化アルミニウムまたはアルミナケイ酸塩の純度は、99.5%より高い。酸化アルミニウムは、β位相またはγ位相で形成されており、γ位相で形成されていることが望ましい。別の具体例では、吸着剤216は、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウムまたは二酸化ケイ素であり、それぞれ、99%より高い純度を有する。ある具体例では、吸着剤216は、約60〜約250μmの粒径を有する粒子であり、大きい表面積を有し、かつ、配向溶液の廃液中で均一に分散する。吸着剤216は、配向溶液の廃液の約1wt%〜約20wt%である。特に、約5wt%の吸着剤216が配向溶液の廃液に加えられる場合に、金属イオンの好ましいユニット吸着効率が得られる。
【0016】
フィルター膜218は、反応槽204の底部に配置されて、全懸濁粒子(吸着剤216を含む)と他の固体不純物を遮断する。フィルター膜218は、異なる材料からなり、かつ、異なる孔径を有する複数の膜からなる。例えば、フィルター膜218は、孔径が約0.1〜約0.5mmのステンレス鋼板218aと複数の微小孔膜218bを有する。ステンレス鋼板218aは、フィルター膜218の上部に設置され、配向溶液の廃液中に分散する吸着剤216を遮断し、ステンレス鋼板218a下の微小孔膜218bが、真空ユニット208により生じる圧力差で剥がれ落ちるのを防止する。微小孔膜218bは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ステンレス鋼またはそれらの組合せからなる。微小孔膜218bは、約0.2〜約0.8μm、または、約0.1〜約0.5μm、または、0.05〜0.3μmの孔径を有し、小さいサイズの吸着剤および他の固体不純物をろ過および吸着する。ある具体例では、金属イオン除去システム218により浄化後の配向溶液の廃液は、約500ppbまたは300ppb、あるいは、好ましくは70ppbより少ない金属イオン含有量を有する。
【0017】
次に、ステップS16で、純化された配向溶液が収集される。例えば、図2に示すように、純化された配向溶液は、排出口220から回収容器222に流入する。ある具体例では、純化された配向溶液は、約0.4wt%より低い含水量と500ppbより少ない金属イオン含有量を有する。さらに、原液の成分(例えば、添加剤)とそれらの含有量は、純化された配向溶液中で保持される。よって、純化された配向溶液は、リサイクルされて、製造ラインに再度適用される。形成された配向膜は、実質上、原液から製造された配向膜と同じ品質と特性を有する。
【0018】
この他、ある具体例では、ステップS18が任意で実行される。ステップS18で、追加の第一溶剤が、リサイクルされる配向溶液に加えられる。これにより、水分除去システム206における第一溶剤の損失が補償される。ある具体例では、10wt%より少ない、または、好ましくは1wt%の追加の第一溶剤(純化された配向溶液の総重量に基づく)を、純化された配向溶液に加える必要がある。これにより、一部の第一溶剤が水分除去システム中で損失しても、リサイクルされる配向溶液は、各成分の濃度を原液と同じに維持することができる。この他、配向溶液は、約90%より高い、好ましくは95%より高いリサイクル効率を有する。
【0019】
要約すれば、本発明の具体例によると、配向溶液の廃液の水分および/または金属イオンが高効率で除去される。成分(例えば、ポリイミドまたはその前駆体、添加剤、あるいは、他の成分)と原液中のそれらの含有量は、リサイクルされる配向溶液中で保持される。さらに、複雑なプロセス、例えば、凝固、分離または真空乾燥プロセスが必要な従来公知の方法と比較すると、本発明の方法は、費用効率および時間効率が高い。よって、長期間放置されるか、あるいは、空気と接触する配向溶液を純化し、リサイクルすることができる。一方、リサイクルされる配向溶液により製造される配向膜の品質は、原液により製造される配向膜とほぼ同じで、LCDの配向膜の製造コストが大幅に減少する。
【0020】
実施例1
配向溶液の廃液(VA型液晶に適用される)を、図2に示すリサイクル装置に提供した。リサイクル装置の反応槽の底部には、0.5mmの孔径を有するステンレス鋼板と0.1〜0.8μmの孔径を有する複数のポリフッ化ビニリデン膜が配置されていた。配向溶液の廃液は、6wt%のポリイミド、93wt%の配向溶液、および、1wt%のシランカップリング剤から形成され、固体含有量が6.8wt%、粘性が22.3、含水量が3.9wt%、金属イオン含有量が515ppbであった。その後、20wt%のイソプロパノール(配向溶液の廃液の総重量に基づく)を反応槽に加えた。反応槽を36℃に加熱し、反応槽中の配向溶液のイソプロパノールと水分を真空凝縮装置により除去した。次に、純度が99%の5wt%の酸化アルミニウム(配向溶液の廃液の総重量に基づく)を反応槽に加えた。最後に、配向溶液の廃液をステンレス鋼板と複数のポリビニリデンフルオライド膜によりろ過し、その後、排出口から、回収容器に流入させた。純化された配向溶液が得られた。その分析結果を表1に示す。
【0021】
実施例2
配向溶液の廃液(TN型液晶に適用される)が、6wt%のポリアミド酸、93wt%の配向溶液、および、1wt%のシランカップリング剤から形成され、かつ、固体含有量が6.0wt%、粘度が20、含水量が3.84wt%、および、金属イオン含有量が93.1ppbであることを除いて、実施例1と同じ手順を実施例2で繰り返した。さらに、10wt%のイソプロパノールだけを反応槽に加えた。純化された配向溶液が得られた。その分析結果を表2に示す。
【0022】
実施例3
10wt%のアセトンを、イソプロパノールに代えて、反応槽に加えたことを除いて、実施例2と同じ手順を実施例3で繰り返した。約0.29wt%の含水量の純化された配向溶液が得られた。
【0023】
比較例
特許文献1に開示されるリサイクル方法を実行した。実施例2の配向溶液の廃液を提供した。エチルエーテルを配向溶液の廃液に加え、ポリイミドを凝固させた。その後、固体ポリイミドをろ過し、乾燥させた。最後に、乾燥した固体ポリイミドを原液と同じ有機溶剤中に溶解し、純化された配向溶液を得た。
【0024】
表1は、未使用の配向溶液(VA型液晶に適用される原液)、配向溶液の廃液(浄化されていない)、純化された配向溶液(実施例1)、および、配向溶液の商業規格の比較を示す。表2は、未使用の配向溶液(TN型液晶に適用される原液)、配向溶液の廃液(浄化されていない)、純化された配向溶液(実施例2)、および、配向溶液の商業規格の比較を示す。表1と表2を参照すると、実施例1と実施例2のリサイクルされた配向溶液の含水量と金属イオン含有量は、配向溶液の廃液より大幅に低く、さらに、実質上、原液と同等であった。さらに、純化された配向溶液の他の特性、例えば、固体含有量と粘度なども、実質上、原液と同等であり、配向溶液の商業規格を満足していた。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
図3と図4は、それぞれ、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)により分析された実施例1と実施例2の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。図3と図4において、実施例1と実施例2の全ピークの波数と相対強度は、実質上、原液と同じである。この他、1728cm−1に位置するピークが存在しなかった。このことは、実施例1と実施例2では、イミド化が形成されていないことを意味する。よって、原液のポリマー成分は、純化された配向溶液で分解しなかったことが分かる。また、純化された配向溶液中のポリマー成分の含有量も、原液と同じに保持されていた。
【0028】
図5と図6は、それぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析された実施例1と実施例2の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。図7は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析された比較例の純化された配向溶液と原液の比較を示す図である。図5と図6において、実施例1と実施例2の純化された配向溶液と原液の停留時間は実質上同じであった。このことは、原液のポリマー成分が実施例1と実施例2の純化された配向溶液中で保持されていることを示している。図5において、停留時間が14分と16分の2つのピークは、それぞれ、ポリイミドとシランカップリング剤を示す。実施例1の純化された配向溶液のポリイミドとシランカップリング剤のピーク強度の比率は、実質上、原液と同じであったことが分かる。図6において、5分と7分の2つの異なるピークは、ポリイミドとシランカップリング剤を示す。ピーク強度の比率も、実質上、原液と同じである。対照的に、図7を参照すると、比較例の純化された配向溶液のシランカップリング剤(約17分で現れる)の含有量は大幅に減少していた。このことは、比較例では、ポリイミドの分離ステップを実行する場合に、シランカップリング剤のほとんどが除去されたことを示す。
【0029】
さらに、表3は、実施例1と実施例2の配向溶液のリサイクル効率を示す。結果は、実施例1と実施例2のリサイクル効率が共に90%より高いことを示している。
【0030】
【表3】

【0031】
上述のように、本発明の具体例による方法または装置を用いてリサイクルされる配向溶液は、実質上、原液と同じ成分と特性を有し、水分および/または金属イオンなどの不純物は高効率で除去されることが分かる。これにより、リサイクルされる配向溶液は、製造ラインに繰り返し用いることができ、LCDの製造コストを大幅に減少させることができる。
【0032】
本発明を実施例および好ましい具体例により説明したが、これらは決して本発明に限定するものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【符号の説明】
【0033】
200 リサイクル装置
202 入口
204 反応槽
206 水分除去システム
208 真空ユニット
210 凝縮ユニット
212 温度制御ユニット
214 金属イオン除去システム
216 吸着剤
218 フィルター膜
218a ステンレス鋼板
218b 微小孔膜
220 排出口
222 回収容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(a)ポリイミドまたはその前駆体、(b)第一溶剤、(c)添加剤、および、(d)金属イオンと水分の少なくとも一つを含む、液晶配向材料の配向溶液を提供するステップと、
第二溶剤を前記配向溶液に加えるステップと、
共沸蒸留により、前記水分および前記第二溶剤を除去するステップと、
フィルター材により前記配向溶液をろ過し、純化された配向溶液を得るステップと、
を包含し、
前記フィルター材が吸着剤およびフィルター膜を含み、前記吸着剤が高純度酸化アルミニウムまたは高純度アルミナケイ酸塩を含むことを特徴とする配向溶液のリサイクル方法。
【請求項2】
前記第一溶剤が、N−メチルピロリドン(NMP)、ブチルセロソルブ(BCS)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)またはそれらの混合物である請求項1に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項3】
前記添加剤が、静電気防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、界面活性剤またはそれらの組合せである請求項1または2に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項4】
前記第二溶剤が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソペンタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、メチルイソブチルケトンまたはそれらの混合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項5】
前記高純度酸化アルミニウムおよび前記高純度アルミナケイ酸塩が99%より高い純度を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項6】
前記フィルター膜が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ステンレス鋼またはそれらの組合せからなり、かつ、孔径が0.1μm〜0.5mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項7】
純化された前記配向溶液の含水量が0.4wt%より低く、金属イオン含有量が500ppbより少ない請求項1〜6のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項8】
共沸蒸留により、前記水分と前記第二溶剤を除去する前記ステップが、30torrより低い圧力下で、かつ、20℃と50℃との間の温度で実行される請求項1〜7のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項9】
前記配向溶液と純化された前記配向溶液が、実質上、前記ポリイミドまたはその前駆体および前記添加剤と同じ含有量を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項10】
さらに、10wt%より少ない前記第一溶剤を、純化された前記配向溶液に加えるステップを包含する請求項1〜9のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項11】
前記配向溶液のリサイクル効率が90%より高い請求項1〜10のいずれか1項に記載の配向溶液のリサイクル方法。
【請求項12】
配向溶液を収容する反応槽と、
前記反応槽の温度を制御する温度制御ユニット、および、前記反応槽の圧力を減少させ、前記配向溶液の廃液から水分を除去する真空ユニット、を含む水分除去システムと、
前記水分除去システムから前記配向溶液の廃液を受容する金属イオン除去システムと、
を備え、
前記金属イオン除去システムが前記反応槽の底部に配置されるフィルター膜と前記フィルター膜上に配置される吸着剤とを含むことを特徴とする配向溶液のリサイクル装置。
【請求項13】
前記吸着剤が99%より高い純度を有する酸化アルミニウムまたは99%より高い純度を有するアルミナケイ酸塩を含むことを特徴とする請求項12に記載の配向溶液のリサイクル装置。
【請求項14】
前記反応槽中の圧力が30torrより低く、かつ、温度が20℃と50℃との間である請求項12または13に記載の配向溶液のリサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128392(P2012−128392A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152081(P2011−152081)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(390023582)財団法人工業技術研究院 (524)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】195 Chung Hsing Rd.,Sec.4,Chutung,Hsin−Chu,Taiwan R.O.C
【Fターム(参考)】