説明

液注出容器のヒンジキャップ

【課題】ヒンジキャップ、とくにキャップ基体の外筒外周と係合リングとの間に、スリットを設けた分別廃棄タイプのヒンジキャップにおいて、肩壁に立設した係合リング上面に開閉蓋にかかる外力が支えられるようにしたヒンジキャップを提供することを目的とする。
【解決手段】容器口筒部に打栓により嵌着されるキャップ基体と、開閉蓋を具えたヒンジキャップであって、キャップ基体は、外筒と内筒と係合リングを立設した肩壁とからなる嵌合筒部と、注出筒とを具備しており、開閉蓋は、側周壁内周に、閉蓋時に係合リングの上面に係合圧接する複数の突条、または凸部を具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液注出容器のヒンジキャップ、とくにキャップ基体の肩壁にスリットを設けた分別廃棄タイプのヒンジキャップに関する。
【0002】
【従来の技術】
キャップ基体(中蓋9)と、該キャップ基体(9)にヒンジをもって取着された開閉蓋(外蓋20)とを具え、キャップ基体(9)の外筒(外周壁5)に縦弱化線を形成し、肩壁(嵌合上壁6)に周方向弱化線を形成した分別廃棄可能なヒンジキャップであって、閉蓋時には、開閉蓋(20)の側周壁(外周壁15)下端をキャップ基体(9)の肩壁(6)に立設した係合リング(固定筒22)に係合するようにしたヒンジキャップは、従来より知られており、開閉蓋(20)の閉蓋時には、開閉蓋(20)の側周壁(15)下端が、係合リング(22)の外周に係合し、外筒(5)上面に接圧するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、開閉蓋の側周壁の内周に段部を設け、閉蓋時に、段部が係合リング上面全体を押圧するようにした分別廃棄タイプのヒンジキャップも、従来より知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−240101号公報
【特許文献2】
特開平11−49211号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1記載の従来技術は、閉蓋時に、開閉蓋に外力がかかると、外筒上面に押圧力がかかり、弱化線が狭い角度範囲に形成されている場合には問題はないが、180度を越えるような広い角度範囲に形成した場合には、外筒上面にかかる押圧力によって弱化線を損傷するおそれが生じるという問題が派生した。
【0006】
とくに、外筒の外周と係合リング外周との間にスリットを設けた場合には、スリットの外側の外筒の外周壁を拡開するという問題が生じた。
そのため、開閉蓋を閉蓋したヒンジキャップの搬送中や、内容液を充填した液注出容器を積み重ねて函詰め運搬する場合、開閉蓋に予期しない力がかかって、スリットが開き、開閉蓋が破損されるというおそれがあった。
【0007】
外筒の外周にかかる押圧力を少なくするため、特許文献2に記載された従来技術を適用することも考えられるが、開閉蓋の側周壁が通常の倍近くも厚くなり、樹脂材料を無駄に浪費するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決することを課題とし、ヒンジキャップ、とくにキャップ基体の外筒外周と係合リングとの間に、スリットを設けた分別廃棄タイプのヒンジキャップにおいて、肩壁に立設した係合リング上面に開閉蓋にかかる外力が支えられるようにしたヒンジキャップを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するため、液注出容器のヒンジキャップとして、容器口筒部に打栓により嵌着されるキャップ基体と、開閉蓋を具えたヒンジキャップであって、キャップ基体は、外筒と内筒と係合リングを立設した肩壁とからなる嵌合筒部と、注出筒とを具備しており、開閉蓋は、側周壁内周に、閉蓋時に係合リングの上面に係合圧接する複数の突条、または凸部を具備していることを特徴とする構成を採用する。
【0010】
具体的な実施形態として、肩壁の上面に周方向に延び、底面に周方向の引裂きラインを形成したスリットを刻設し、開閉蓋の突条、または凸部を、スリットに対応する範囲に配設したことを付加する。
【0011】
別実施形態として、外筒に上下方向の引裂きラインが形成され、肩壁に周方向の引裂きラインが形成されており、開閉蓋の突条、または凸部を、周方向引裂きラインに対応する範囲に配設したことを特徴とする構成を採用する。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明キャップの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1において、Aは容器、Bは容器の口部に嵌着されたヒンジキャップである。
容器Aは、ガラス、または硬質の合成樹脂によって成形され、口筒部1と胴部2、底部とを具え、口筒部1外周には、上方に傾斜面3aと垂直面3bを有する嵌合突条4と、ネックリング5が設けられている。
【0013】
図1〜3に示すように、ヒンジキャップBは、キャップ基体B1と開閉蓋B2とからなり、開閉蓋B2は、蝶番B3を介してキャップ基体B1に開閉自在に取着されている。
ヒンジキャップBは、容器Aとは素材の異なる合成樹脂によって成形されている。
【0014】
図2,3に示すように、キャップ基体B1は、外筒6と内筒7、肩壁8と、該肩壁8の上面に立設された係合リング9とからなる嵌着筒部と、前記内筒7に連設された注出筒10とを具えている。
【0015】
外筒6の内周と、内筒7の外周、肩壁8の下面によって、容器の口筒部1に嵌合する嵌合部が形成されており、外筒6は、その内面に嵌合突条4の傾斜面3aに対応する傾斜面11と垂直面3bに対応する垂直面12、その下方に設けられ、垂直面3bの下面に係合する膨出環13とを具えている。
【0016】
図3、4に示すように、外筒6外周の所定個所には、縦方向に延びるほぼ三角形状の切込み14が刻設されており、切込み14と薄肉部15を隔てて肩壁8の上面から係合リング9の外周面と外筒6外周面との間に周方向に延びるスリット16が、少なくとも90度以上、好ましくは180度をこえる角度範囲にわたって穿設されている。
【0017】
切込み14によって、スリット16の底面17より下方では外筒6内周面側に、切断可能な薄肉部18が形成され、下端に薄肉部19が形成されている。
そして、薄肉部15、薄肉部18、薄肉部19によって縦方向の引裂きライン20が形成されている。
【0018】
スリット16の内側面は、係合リング9の外周面21によって形成され、外側面はスリット16を隔てて、外筒6外周に形成された外周壁22内面によって形成されている。
スリット16の底面17は、外筒6内周の傾斜面11の下端位置にほぼ一致しており、係合リング9の外周面21下端とスリット16の底面17内端の間は、傾斜面12に沿って延びるとともに周方向に延びる切裂き可能な連結部23によって接続されている。
【0019】
スリット16の始端部から一定範囲では、前記連結部23は、薄肉の連結部23aとなっており、残りの連結部23は、薄肉の連結部23aよりやや厚肉の連結部23bとなっている。
そして、連結部23によって、周方向の引裂きライン24が形成されている。
【0020】
スリット16始端部の外筒6の外周壁22には、切込み14に近接して摘み片25が立設されており、該摘み片25の後側の外周壁22には、縦方向に延びる薄肉を残した切込み26が刻設されている。
【0021】
図2に示すように、係合リング9上端は平坦にされ、その外周には係止環27が突設され、閉蓋時には、開閉蓋B2を係止するようにされている。
【0022】
内筒7内面には、蝶番B3側を下に傾斜する環状の連結板28が連設されており、内筒7下端には、水平に延びる隔板29が連設されている。
隔板29は、中心をキャップ基体B1の中心と同一とする円板部30と連結部31とからなっており、前記注出筒10は、円板部30の周縁に沿って立設されている。
【0023】
注出筒10の上端周縁には、外方に拡開され、湾曲する注出口唇部32が形成されている。
円板部30の裏面には、所定の形状に沿って薄肉を残してV字状の切断溝33が刻設され、その内側は除去部34となっており、除去部34の上面には、連結片を介して指かけリング35が連設されている。
【0024】
図1、2、3に示すように、開閉蓋B2は、頂壁40と側周壁41とからなっており、側周壁41の外周には、キャップ基体B1の摘み片25に対応する位置に、摘み片25の周端縁と同一形状を有し、閉蓋時に摘み片25を収容する段差を設けた抱持凹部42が設けられている。
【0025】
側周壁41の内周下端には、閉蓋時に係合リング9に係合する係合段部43が形成され、下端部近くには、係合リング9の係止環27に係合する膨出部44が突設されている。
係合段部43の上方には、閉蓋時に係合リング9の上面に接合する縦方向に延びる突条45、または所定巾を有する凸部が突設されている。
突条45、または一定巾の凸部の配設される範囲は、スリット16が形成されている範囲であって、実施例では、突条45は、蝶番B3の反対側の120度の角度内に配設されている。
【0026】
開閉蓋B2の側周壁41下端には、蝶番B3の反対側に位置して、摘み46が設けられている。
【0027】
蝶番B3は、キャップ基体B1の外筒6の上面と、開閉蓋B2の側周壁41の端面を結び、中央部を薄肉とした一定巾の連結片47を有しており、連結片47の両側に位置して山型の弾性押え片48が外筒6と側周壁41との間を接続するよう連設されている。
【0028】
次に、上記構成に基づく作用効果について説明する。
本発明の容器Aには、加熱殺菌された内容液が高温充填され、充填後、打栓によってヒンジキャップBが容器Aの口筒部1に取着される。
液注出容器は、周知のものと同様に使用されるが、使用後には、ヒンジキャップBは、容器口筒部1から取り外され、分別廃棄される。
【0029】
内容液の充填にあたって、開閉蓋と容器が液充填ステーションに搬送されるが、搬送中に、開閉蓋に予期しない外力がかかっても、突条45が、係合リング9上面に圧接され、外筒6の外周上部22には大きな力がかからないので、スリット16が拡開され引裂きライン20,24が切り裂かれることはない。
【0030】
打栓にあたっては、閉蓋したヒンジキャップBの上方から打栓力が加えられ、図5に示すように、キャップ基体B1の肩壁8下面が、容器Aの口筒部1天面に押圧され、外筒6の膨出環13が口筒部1の嵌合突条4下面に係合することによって、容器A内部が密封され、打栓が完了する。
【0031】
その際、開閉蓋B2の側周壁41に設けた突条45が、係合リング9の上面に圧接し、打栓力は、突条45から係合リング9、肩壁8を通じて容器口筒部1天面と傾斜面3aに加えられる。
そして、外筒6の外周壁22には、大きな力はかからないので、スリット16が拡開され、破損することはない。
【0032】
内容液が充填された液注出容器は、函詰めされ、市場に出荷される。
函詰めにあたって、液注出容器が積み重ねられ、開閉蓋に荷重、衝撃が加えられることがあっても、外筒の外周壁22に大きな力がかからないので、スリット16が拡開され引裂きライン20,24が破損されることはない。
【0033】
使用後の分別廃棄にあたっては、摘み片25を掴んで外方に引き出すと、薄肉部15が上端側から切裂かれ、次いで、薄肉部18,19が切裂かれ、外筒6に引裂き面を形成させることができ、次いで、摘み片25と摘み片25下部の外筒6の端部を掴んで引き廻していくと、周方向の連結部23を切断することができる。
連結部23は少なくとも180度を越える角度に設けられているので、連結部23全長が切断されたときには、キャップ基体B1を容器Aの口筒部1から容易に切り離すことができる。
【0034】
前記実施形態では、係合リング9の外周面21下端とスリット16の底面17内端との間に、薄肉の連結部23をスリット16全長にわたって配設したが、スリット16の始端部に切れ目を設けてもよい。
そのことによって、引裂きが一層容易にできるという効果が得られる。
【0035】
また、前記実施形態では、キャップ基体に肩壁にスリットを刻設し、スリットを用いて周方向引裂きラインを形成したヒンジキャップについて説明したが、引裂きラインの形状は、それだけに限定されない。
引裂きラインの例として、キャップの外筒に上下に延びる縦弱化ライン、或いは傾斜した縦弱化ラインを設け、縦弱化ラインに続く周方向弱化ラインを肩壁、或いは外筒外周に形成したヒンジキャップは、従来より周知である。
【0036】
本発明の、開閉蓋に、突条、または凸部を設け、係合リングに圧接するようにすることは、弱化ラインの形状に関係なく分別廃棄タイプのヒンジキャップに適用することができる。
【0037】
【発明の効果】
開閉蓋の側周壁に、キャップ基体の係合リングに圧接する突条、または凸部をスリットに対応する範囲に配設したから、開閉蓋に予期しない力がかかっても、スリットを拡開し、破損させたり、引裂きラインを切り開くようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明液注出容器のヒンジキャップの概要説明図である。
【図2】ヒンジキャップの開蓋時の断面正面図である。
【図3】ヒンジキャップの開蓋時の平面図である。
【図4】図3のA−A線における拡大断面図である。
【図5】閉蓋時の要部説明図である。
【符号の説明】
A 容器
B ヒンジキャップ
B1 キャップ基体
B2 開閉蓋
B3 蝶番
1 口筒部
2 胴部
3a 傾斜面
3b 垂直面
4 嵌合突条
6 外筒
7 内筒
8 肩壁
9 係合リング
10 注出筒
11 傾斜面
12 垂直面
13 膨出環
14 切込み
15、18、19 薄肉部
16 スリット
17 底面
20、24 引裂きライン
21 外周面
22 外周壁
23、23a、23b、31 連結部
25 摘み片
26 切込み
27 係止環
28 連結板
29 隔板
30 円板部
40 頂壁
41 側周壁
42 抱持凹部
43 係合段部
44 膨出部
45 突条
46 摘み
47 連結片
48 押え片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口筒部に打栓により嵌着されるキャップ基体と、開閉蓋を具えたヒンジキャップであって、
キャップ基体は、外筒と内筒と係合リングを立設した肩壁とからなる嵌合筒部と、注出筒とを具備しており、
開閉蓋は、側周壁内周に、閉蓋時に係合リングの上面に係合圧接する複数の突条、または凸部を具備していることを特徴とする液注出容器のヒンジキャップ。
【請求項2】
肩壁の上面に周方向に延び、底面に周方向の引裂きラインを形成したスリットを刻設し、
開閉蓋の突条、または凸部を、スリットに対応する範囲に配設したことを特徴とする請求項1記載の液注出容器のヒンジキャップ。
【請求項3】
外筒に上下方向の引裂きラインが形成され、肩壁に周方向の引裂きラインが形成されており、開閉蓋の突条、または凸部を、周方向引裂きラインに対応する範囲に配設したことを特徴とする請求項1記載の液注出容器のヒンジキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2004−210357(P2004−210357A)
【公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−382269(P2002−382269)
【出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】