説明

液滴吐出アクチュエーター、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置

【課題】駆動のためのエネルギーを変えることなく、高速駆動を可能とする液滴吐出アクチュエーター、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】ノズルと、ノズルに連通する加圧液室と、前記加圧液室を構成する面の一つである振動板とを有し、前記振動板上には下部電極層と、圧電材料層と、上部電極層とが積層されて成る膜状の圧電素子が設けられ、前記圧電素子を電気的に駆動することで前記ノズルから液滴を吐出する液滴吐出アクチュエーターであって、前記振動板が変位した場合に、前記振動板或いは前記圧電素子が接触しうる対向壁を有し、前記対向壁には、少なくとも1以上の開口部が設けられ、前記開口部は、前記振動板が変位した場合に、前記開口部のエッジが、前記振動板或いは前記圧電素子と接触しない部分に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出アクチュエーター、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置に関し、特に、駆動のためのエネルギーを変えることなく、高速駆動を可能とする液滴吐出アクチュエーター、液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、マイクロマシンのアクチュエーターの駆動力として、さまざまなものが開発,利用されている。そのうち、最も利用されているものの一つとして、圧電体を用いたアクチュエーターがあり、利用用途は多岐にわたる。一方、マイクロマシンのアクチュエーターに対しては、更なる小型化が求められ続けており、圧電体を用いたアクチュエーターに対しても同様である。
【0003】
ここで、圧電体を用いた圧電素子は歪み量が小さく、歪み量を稼ぐために圧電材料の上下に電極を配した構成が幾つも積層される積層型の圧電体素子が広く用いられている。積層圧電素子をマイクロマシンに利用する場合、バルクの圧電素子をカッティング等して用いることになるが、これは高度な技術を要するため、積層圧電素子は小型化という点で欠点を有している。
【0004】
一方、薄膜PZT(チタン酸ジルコン酸鉛重合体;Lead Zirconate Titanate)は半導体技術を利用して作製することができるため、小型化という点で大きな優位性を有する。また薄膜PZTの形態では、変位主体を別の可変基板(以下、振動板と称す)に委ね、振動板の一方の面を薄膜PZTで伸縮させている。これによりPZT自体の歪み量が小さいながらも、振動板の面外方向の変位量を大きく採ることが出来る。
【0005】
図17(a)〜(c)に薄膜PZTを用いた変位アクチュエーターを液滴吐出アクチュエーターに利用した場合の例を示す。振動板1に薄膜PZT30が積層され、隔壁3で振動板端部が固定された構成となっている。図17(a)は振動板の短辺方向断面図、図17(b)は図17(a)に示した方向Aから見た振動板全体の斜視図、図17(c)は、図17(a)から振動板1が変位した場合の例を示す図である。
【0006】
液滴吐出アクチュエーターを駆動して液滴を吐出すると、流路内に残留圧力振動が生じる。液滴の大きさ,速度を或る値に制御するためには、この残留圧力振動が十分小さくなった時点で次の液滴を吐出する方が良い。従って、通常 高速駆動を行うために採られる方針は、流路内に発生した残留圧力振動を出来るだけ急速に減衰させる、というものである。
【0007】
残留圧力振動を抑制する方法として、例えば特許文献1に開示されるように、流路内に圧力で変形する薄肉部を設けて残留圧力振動を吸収する方法、或いは特許文献2に開示されるように駆動方法を工夫して残留圧力振動を抑制する方法が知られている。しかしながら、特許文献1や特許文献2記載の残留圧力振動の抑制法を用いても、実際には十分に振動を抑制できるまでに多少の時間を要する。
【0008】
一方、液滴吐出アクチュエーターにおいて液滴を吐出する場合、ノズル近傍で圧力が増加するタイミングに合わせて振動板を液室方向に変位させ、ノズル付近の圧力をより高めることでノズルからインクを吐出させるという形態が採られる場合が有る。例えば、特許文献3では、圧力周期に同期してパルスを印加し、液滴を吐出する方法が提案されている。このような場合、流路の共振周期1回の時間において、1液滴を吐出させることが出来る。つまり、共振周期が短かければ同じ時間でも多数の液滴を吐出することが可能であり、高速駆動、高速印字が可能となる。この方法を採った場合に、更に高速な駆動を行うためには、流路の固有振動周期を短くすれば良い。しかしながら、この場合残留圧力振動の大きさにより、吐出特性、すなわち液滴の大きさや速度は変化してしまうが、特許文献3記載のアクチュエーターでは、液滴の大きさ、速度を一定にすることは目的とされていない。
【0009】
さらに、液滴吐出アクチュエーターには、より低消費電力による駆動が成されることが望まれている。いろいろな要因が絡むため単純には言えないが、より少ないエネルギーで液滴を吐出するためには、同じエネルギーで流路内により大きな変位体積が生じるようにすれば良い。そこで、アクチュエーターとして上述した薄膜PZTを用いた場合、振動板の変位量を大きくするためには、振動板の剛性を低くすることが考えられる。
【特許文献1】特開2007−145014号公報
【特許文献2】特開2004−090542号公報
【特許文献3】特開2002−036553号公報
【特許文献4】特許第4038864号公報
【特許文献5】特開2004−98178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、振動板は流路の一壁面であるため、振動板の変位量を大きくするために振動板の剛性を低くすると、流路全体の共振周期が長くなり、高速駆動が困難になるという課題が生じる。従って、振動板の剛性を変えずに高速駆動を行うためには、後述する図1を用いて説明するように、振動板が接触できる対向壁を設けることが考え得る。
【0011】
ここで、対向壁を設けることで以下の不具合が発生してしまう可能性がある。圧電素子を積層形成した振動板は薄い板であるため、薄い板と対向壁が接触した場合に接触面に僅かな水分が存在すると、振動板が対向壁に固着(スティキング)してしまうという現象が生じ、アクチュエーターとして機能しなくなるという課題が生じる。このような固着現象を回避する対策としては幾つか考えられるが、その一つとして接触面に撥水層を設けることが考えられる。
【0012】
なお、撥水層を設けることで可変する薄い振動板が対向する電極に固着することを防ぐ対策が、静電力を利用したアクチュエーターで提案されている。例えば特許文献4に開示されている静電アクチュエーターは、振動板と対向壁が共に電極を形成し、この両電極に電圧を印加した際、両電極が接触する程に両者の間隔を狭くして、発生する大きな静電力を利用して振動板を対向壁に接触させ、印加電圧OFFにより振動板を元の位置に戻すことで液滴を吐出する。なお撥水材料としては色々な材料が提案できるが、特許文献4では水酸基と反応可能な有機珪素化合物であるとしている。
【0013】
また、特許文献5では同じく静電アクチュエーターに関して説明されており、変形可能な板と対向面に疎水膜を形成する方法が提案されている。
【0014】
しかしながら、上記特許文献4記載の静電アクチュエーターは、振動板と対向壁が共に電極であるため、電極間の充放電により対向部材間にゲル状の異物が発生するという不具合が生じる。従ってこの不具合を解消するためには、電極間にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)濃度が或る値以上のガスを気密封止する必要がある。また、上記特許文献5記載の静電アクチュエーターにおいても、変形可能な板と対向面が成す空間は外部から気密に遮断されている必要がある。
【0015】
上記のように薄い板が一面を成す空間を気密封止する場合、以下の問題が新たに生じる。外気圧が変動すると、外気圧と気密封止された空間内の圧力差が変動し、薄い板はこの圧力差により変位する。つまり、外気圧の変動に応じて薄い板の平衡位置が変化することになる。この平衡位置の変化はアクチュエーターの特性を変動させることになってしまう。
【0016】
従って、液滴吐出アクチュエーターの場合、振動板或いは圧電素子が接触し得る対向壁を付加的に形成することで液滴を吐出するための所要時間が短くして高速駆動を可能に出来ても、上述した振動板の対向壁への固着という不具合が生じてしまう。一方、振動板は薄い板であるため、振動板と対向壁が成す空間を気密にすることも難しい。
【0017】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、駆動のためのエネルギーを変えることなく、高速駆動の可能とし、振動板が対向面にスティキングすることを無くし、信頼性を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る液滴吐出アクチュエーターは、ノズルと、ノズルに連通する加圧液室と、前記加圧液室を構成する面の一つである振動板とを有し、前記振動板上には下部電極層と、圧電材料層と、上部電極層とが積層されて成る膜状の圧電素子が設けられ、前記圧電素子を電気的に駆動することで前記ノズルから液滴を吐出する液滴吐出アクチュエーターであって、前記振動板が変位した場合に、前記振動板或いは前記圧電素子が接触しうる対向壁を有し、前記対向壁には、少なくとも1以上の開口部が設けられ、前記開口部は、前記振動板が変位した場合に、前記開口部のエッジが、前記振動板或いは前記圧電素子と接触しない部分に設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記本発明に係る液滴吐出アクチュエーターが複数集積されたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る液滴吐出装置は、上記本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする。
【0021】
本発明に係るインクジェット記録装置は、インク滴を吐出することのできるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置であって、前記インクジェットヘッドは、上記本発明に係る液滴吐出ヘッドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、駆動のためのエネルギーを変えることなく、高速駆動の可能とし、振動板が対向面にスティキングすることを無くし、信頼性を高くすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
(構成)
本発明の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターは、圧電体を用いた圧電素子であって、歪み量を稼ぐために圧電材料の上下に電極を配した積層型の圧電体素子を用いる。本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの構成を図1に示す。
【0025】
振動板1上には、下部電極4、圧電材料2、上部電極5が積層されて成る圧電素子7が形成されている。振動板1の逆側には加圧液室8の一部を形成する液室隔壁3が配置されている。振動板1或いは圧電素子7に対向して対向壁6が形成される。対向壁6には孔(開口部)14が設けられているが、これについては後述する。
【0026】
ここで、圧電素子7を駆動して液滴を吐出させる駆動方法は大きく2つに分けられる。1つは、圧電素子7へ電圧を印加して振動板1を液室8側へ変位させる力で液滴を吐出する方法Aである。もう一つは、圧電素子7へ電圧を印加して振動板1を対向壁6側へ変位させ、印加電圧時間等を制御して振動板を元の位置に戻す力で液滴を吐出する方法Bである。
【0027】
方法Bを採る場合について説明する。対向壁6と圧電素子7との間隔は、圧電素子7を駆動させた際に振動板1或いは圧電素子7が対向壁6に接する程度とする。例えば仕様上、対向壁6と圧電素子7の間隔は0.05 〜 2μmで設計する。これにより、振動板1を対向壁6側へ変位させた際に、圧電素子7或いは振動板1は対向壁6に接触する。図2は、接触した際の様子を示す図である。接触したとき、振動板1は短辺方向中央部でも固定された状態となる。振動板1の剛性は短辺長の4乗に反比例するため、振動板1或いは圧電素子7が対向壁6に接触することで、振動板1の剛性は16倍以上となる。振動板1は流路の一部を構成しており、流路を構成する壁の中では最も剛性が低い。このような流路全体で最も剛性の低い振動板1の剛性が、対向壁6に接触することにより大きくなるため、流路全体のコンプライアンスが小さくなり、流路の発生する共振周期が短くなる。
【0028】
1滴を吐出する場合では、振動板1を対向壁6側に変位させる際に生じた圧力周期が、振動板1を対向壁6に接触させることで短くなるため、ノズル付近の圧力が上昇するタイミングが早くなり、振動板1を対向壁6に接触させない場合よりもより早く振動板1を元の位置に戻す動作を行える。つまり、1滴を吐出するための駆動時間が短くなり、より高速な駆動を行うことが可能となる。
【0029】
複数滴を吐出する場合では、前の滴を吐出してから、その後、圧電素子7を駆動して振動板1を対向壁6に接した状態にしておけば、液室内の圧力周期が短くなるため、次にノズル付近の圧力が上昇するタイミングが早くなり、次の液滴を吐出できるタイミングを短くでき、より高速な駆動を行うことが可能となる。
【0030】
以上、方法Bを用いる場合について説明したが、方法Aによる吐出においても、液滴吐出に影響しないタイミングにおいて、振動板1或いは圧電素子7を対向壁6に接した状態にすれば、流路の共振周期を短くすることが出来、より高速な駆動を行うことが可能となる。
【0031】
なお、図1及び図2においては面状の対向壁6を用いたが、図3のように突起状の対向壁6'を用いても良い。また、対向壁は液室側に有っても良い。
【0032】
上記実施形態により、対向壁6を設けることで、振動板1が対向壁6に接触している間、振動板1剛性が大きくなり、流路のコンプライアンスが小さくなることで、流路に発生する共振周期が短くなり、1滴を吐出するための所要時間が短くなるため、液滴吐出アクチュエーターの高速駆動が可能となる。しかしながら、上述したように、振動板1と対向壁6が成す空間を気密にすることは望ましくない。
【0033】
そこで、本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターは、図1に示すように、対向壁6に孔14を設けて、振動板1と対向壁6が成す空間密閉しないことを特徴とする。孔14は、孔14のエッジが振動板1或いは圧電素子7と接触しない部分に設けられる。
【0034】
〔実施例1〕
図4に示す対向壁6は、1つの液滴吐出アクチュエーターの振動板1に対応するものであり、振動板1の短辺方向両端部に対応する位置に孔14が形成されている。なお、図4(a)の矢印方向が振動板1短辺方向である。孔14を、例えば図4(a)のように配置することで、孔14のエッジが振動板1或いは圧電素子7と接触せず(図4(b)参照)、振動板1と対向壁6間の空間と外界との気体の出入りがスムーズになり、両空間の圧力差は同じとなるため、後述する比較例1における固着状態等の問題は生じない。
【0035】
なお、具体的なパラメータとしては、例えば振動板1の短辺方向端部から5μmの位置に対応する部分に、2×2μmの孔14を20μmピッチで形成する。
【0036】
〔比較例1〕
上記実施例1に対し、図5(a)に示すような孔14の配置であると、以下の不具合が生じる。図5(b)は図5(a)のAA断面図である。孔14のエッジが振動板1或いは圧電素子7と接する構成であると、両者が接触する毎に、振動板1或いは圧電素子7のエッジ対応部分が損傷を受け、いずれアクチュエーターが機能しなくなってしまうという不具合が生じる。また、振動板1が対向壁36に設けられた孔14を塞いでしまうと、振動板1と対向壁36間の空間と、外界との気体の出入りが阻害されることになる。振動板1は剛性の低い板であるため、振動板1が孔14を塞いだ際の振動板1と対向壁36間の空間に残された気体の量が外界よりも密であれば、圧力差により振動板1は対向壁36から離れる方向に移動し、外界よりも粗であれば、振動板1は対向壁36から離れることが出来ず(固着状態の発生)、振動板1の変位量を上手くコントロールできないという不具合が生じる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターによれば、駆動のためのエネルギーを変えることなく、流路の剛性を上げることで、高速駆動を可能に出来、さらに、振動板1が対向面にスティキングすることが無く、長寿命で信頼性を高くすることが出来る。
【0038】
(対向壁6の作製方法)
ここで、本実施形態に係る対向壁6は、例えば半導体プロセスを用いて容易に作製することが出来る。このとき、振動板1或いは圧電素子7と、対向壁6との間の空間は犠牲層12をエッチング(除去)することで形成することが可能であり、上述した孔14を、対向壁6に犠牲層12をエッチングするための除去孔として形成しても良い。
【0039】
振動板1或いは圧電素子7と、対向壁6との間の空間は犠牲層をエッチングすることで形成する場合、空間を形成する表面、すなわち振動板1と圧電素子7と対向壁6との表面を形成する材料と、犠牲層材料とは、エッチング選択比が大きく異なっていなければならない。また、振動板1と圧電素子7と対向壁6との表面を形成する材料は異なる材料でも良いが、或る程度エッチング選択比が近い材料でなければならない。従って、振動板1と圧電素子7と対向壁6との表面を形成する材料は、同一製膜法による同一材料である方が好ましい。
【0040】
対向壁6の作製方法の一例を、図6(a)〜(e)を用いて説明する。まず、短辺長が60μmである振動板1上に圧電素子7が形成された部材を用意する(図6a)。振動板1はシリコン単結晶であり、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いており、厚みは2μmである。ここに、CVD(chemical vapor deposition)により0.1μmのSiO2層11を形成する(図6b)。次に、犠牲層となるPoly-Si層12を0.15μm積層する(図6c)。更に、対向壁6となるSiO2層6を1.2μm積層する(図6d)。その後、SiO2層6の一部をエッチングして、犠牲層12をエッチングするための除去孔(不図示)を形成する。この除去孔を通して、犠牲層12をICP(Inductively Coupled Plasma)によりエッチングして、振動板1或いは圧電素子7と対向壁6の間に空間を形成する(図6e)。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る対向壁6の形成を、半導体プロセスを用いて行うことにより、安価で容易に作製することが出来る。
【0042】
(対向壁6の剛性)
振動板1或いは圧電素子7が接触する対向壁6の剛性が大きければ、接触した際の振動板1の剛性もより大きくなる。従って、液滴吐出アクチュエーターのより高速な駆動が可能となる。対向壁6は剛体であることが望ましいが、実際にはどのような材料を用いても、いわゆる力に応じて歪みが生じる弾性体となる。
【0043】
対向壁6の剛性をより大きくするために、図7に示すように、振動板1の変位に影響しない部位、つまり振動板1において、液室隔壁3とは逆側の位置に振動板1と対向壁6を繋ぐ隔壁9を形成しても良い。上述したように、板の剛性は短辺長の4乗に反比例するため、特に振動板1短辺方向において隔壁9を形成することで、対向壁6の短辺長は最も短くなり、対向壁6の厚みが同じであれば最もその剛性が大きくなることになる。
【0044】
(対向壁16の作製方法)
次に、図7に示したように、振動板1の変位に影響しない部位、つまり振動板1において、液室隔壁3とは逆側の位置に振動板1と対向壁6を繋ぐ隔壁9を形成する場合の作製方法について図8(a)〜(f)を用いて説明する。
【0045】
まず、短辺長が60μmである振動板1上に圧電素子7が形成された部材を用意する(図8(a))。振動板1はシリコン単結晶であり、SOI基板を用いており、厚みは2μmである。ここに、CVDにより0.1μmのSiO2層11を形成する(図8(b))。次に、犠牲層となるPoly-Si層12を0.15μm積層する(図8(c))。以上までは図6に示す対向壁6の作製方法と同様である。
【0046】
次に、振動板1と対向壁16を繋ぐ隔壁を形成する部分13を選択的にエッチングする(図8(d))。更に、対向壁16となるSiO2層16を1.2μm積層する(図6(e))。その後、SiO2層16の一部をエッチングして、犠牲層12をエッチングするための除去孔(不図示)を形成する。この除去孔を通して、犠牲層12をICPによりエッチングして、振動板1或いは圧電素子7と対向壁16の間に空間を形成する(図6(f))。
【0047】
〔実施例2〕
本実施形態に係る対向壁6を設けたアクチュエーターに流路を接合、形成し、液滴吐出アクチュエーターAを作製した。
【0048】
〔比較例2〕
対向壁6を設けないアクチュエーターに流路を接合,形成したものを液滴吐出アクチュエーターBを作製した。
【0049】
(パラメータ)
なお、アクチュエーターA、Bともに振動板1の長辺方向長さは1000μmであり、流路は図9(a)(b)に示すような構成となっている。図9(a)は振動板1長辺方向の流路構成であり、図9(b)は図9(a)におけるBB断面である。振動板1とノズル21は、図9(a)(b)のように構成され、部位22は流路が絞り込まれる部分である。流路の寸法はLcx=60μm,Lcy=1000μm,Lcz=90μm,Lry=200μm,Lrz=400μmである。
【0050】
(評価方法と結果)
液滴を吐出する評価を行い、その特性を計測した。駆動電圧は図10に示した波形である。ここで、Vp=20V,Tr=0.5μm,Tf=0.5μmに設定した。なお、液滴吐出アクチュエーターでは10V程度の電圧印加で、振動板1或いは圧電素子7が対向壁6に接触することが確認できている。ここで、Twを0μsから0.25μs間隔で長くしながら、吐出される液滴の速度を計測する。縦軸を吐出された液滴速度、横軸をTwとした2次元グラフを描き、Twを大きくしていく際に、液滴速度が最初に極大値を取るTwをTw1、液滴速度が2回目に極大値を取るTwをTw2とし、両者の差Tw2-Tw1=Tcとする。このTcが流路の共振周期の長さに相当する。このTcが短い程、より高速な駆動が可能なアクチュエーターである。
【0051】
上記評価方法による結果は、アクチュエーターAではTc=4.2μs、アクチュエーターBではTc=6.7μs、となり、対向壁6を設けることでTcが短くなることを確認した。従って、共振周期に相当するTcが短いことで、アクチュエーターAはアクチュエーターBよりも高速駆動が可能であることが確認できた。
【0052】
(液滴吐出ヘッド)
図11は、振動板1と圧電素子7と対向壁6で構成された本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターを利用した液滴吐出ヘッドの構成例である。図中、符号3は加圧液室8を形成する部材、23はノズル21を形成する部材である。圧電素子7への電圧印加により、振動板1が面外方向に変位することで、加圧液室8内の容積、圧力が変化し、これによりノズル21から液滴24が吐出し、記録媒体25に付着させるものである。
【0053】
本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターは、振動板1或いは圧電素子7を対向壁6に接触させることで、流路の共振周期が短くなり、その結果として高速駆動の可能な液滴吐出ヘッドとなっている。
【0054】
(インクジェット記録装置)
次に、インクジェット記録装置について説明する。液滴吐出装置に関しても同様である。本実施形態に係るインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置の一例について図12及び図13を参照して説明する。図12は同記録装置の斜視説明図、図13は同記録装置の機構部の側面説明図である。
【0055】
図12に示すように、インクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド94、記録ヘッド94を駆動、制御する駆動装置、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。記録ヘッド94を駆動、制御する駆動装置は、主ガイドロッド91、従ガイドロッド92、主走査モータ97、駆動プーリ98、従動プーリ99、タイミングベルト100から成る。
【0056】
また、図13に示すように、記録装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができる。また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
【0057】
給紙カセット84から排紙トレイ86までの経路には、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102、用紙83を案内するガイド部材103、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104、搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106が設けられている。搬送ローラ104は、副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。また、搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109、印写受け部材109の用紙搬送方向下流側に、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙方向へ送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とが配設されている。キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117が配置されている。
【0058】
以上の構成から成るインクジェット記録装置は、記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号、又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
【0059】
本実施形態に係るインクジェット記録装置は、本実施形態に係る液滴吐出ヘッドを搭載していることを特徴とし、高速駆動が可能である。
【0060】
(撥水層15)
次に、撥水層15を備える液滴吐出アクチュエーターについて説明する。上述したように、対向壁6を設けることで、振動板1が対向壁6に接触している間、振動板1剛性が大きくなり、流路のコンプライアンスが小さくなる。これにより流路に発生する共振周期が短くなり、1滴を吐出するための所要時間が短くなるため、液滴吐出アクチュエーターの高速駆動が可能となる。しかしながら、対向壁6を設けた場合は、水分が振動板1或いは圧電素子7と対向壁6との接触面に存在した場合に剛性の低い振動板1が対向壁6に固着してしまうことがある。そこで、接触面の少なくとも一方に撥水層15を設けることが考え得る。これにより、振動板1の対向壁6への固着が防止され、信頼性の高いアクチュエーターを実現できる。撥水層15は、接触面の少なくとも一方に形成されていれば良い。なお、本構成では特許文献4や特許文献5記載の静電アクチュエーターとは異なり、振動板1と対向壁6は電極ではないため、振動板1と対向壁6の少なくとも一方の表面のみに撥水層15が形成されていれば十分な効果を得ることができる。
【0061】
(構成)
撥水層15が形成された液滴吐出アクチュエーターの一例について図14を用いて説明する。図14は、本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの振動板1短辺方向断面図である。本実施形態では、一例として、撥水層15が対向壁26側に形成されている。
【0062】
振動板1上には、下部電極4、圧電材料2、上部電極5が積層されて成る圧電素子7が形成されている。振動板1の逆側には加圧液室8の一部を形成する液室隔壁3が配置されている。振動板1或いは圧電素子7に対向して対向壁26が形成され、対向壁26の表面には撥水層15が形成されている。なお、対向壁26には、図1を用いて説明した実施形態と同様に孔14が設けられている。孔14の配置は、振動版1或いは圧電素子7が対向壁26と接触しても孔14のエッジが接触面に接触しない部分に設けられている(図15参照)。
【0063】
撥水層15は有機珪素化合物を処理して形成される層である。後述するように、本実施形態に係る対向壁26は、半導体プロセスを用いて作製することが出来る。この場合、振動板1或いは圧電素子7と、対向壁26との間の空間を犠牲層で形成する方法が考えられ、犠牲層のエッチングを行う際のエッチストップ層を、製法が多彩なSiO2とすることも考えられる。なお、製法が多彩であるため、処理温度、膜質を選択することが出来、振動板1、圧電素子7の材料に応じてその上に形成するSiO2膜の製法を選択することが出来る。
【0064】
エッチストップ層がSiO2の場合、振動板1、圧電素子7、対向壁26の接触する面はSiO2層となる。ここで、SiO2表面を有機珪素化合物で処理すると、SiO2表面のOH基のHが有機珪素で置換され、撥水性の層となる。例えば、クロロトリメチルシラン(CH3)3-SiClで処理するとOH基のHは (CH3)3-Si- で置換される。
【0065】
なお、処理方法としては、有機珪素化合物をガス化してSiO2表面を晒す方法、或いは有機珪素化合物の中にサンプルを浸漬してSiO2表面を濡らし、その後、表面を乾燥させる方法が考えられる。
【0066】
また、利用できる有機珪素化合物は、R(a)−Si−X(4−a) (但し、a=0〜3)の形を有するものである。ここで、Rはアルキル基、フェニル基を有する有機基であり、従ってヘキシル基、ベンジル基をも含んでいる。これらの有機基が撥水性を有するものである。また、Xはアルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基を含む加水分解性基である。その他、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)が利用できる。
【0067】
撥水層15を形成するための有機珪素化合物として、HMDSを用いることも可能である。HMDSは半導体プロセスにおいて、シリコンウェーハーへのフォトレジストの密着性を向上させるために用いられ、量産されているために他の有機珪素化合物に対して材料コストが非常に低い。また、沸点も126℃程度であり、沸点が58℃であるクロロトリメチルシランなどと比べて扱い易く、蒸気圧が低く揮発性も高い。また、浸透性も高く、本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターを構成する対向壁26に設けられる孔14からも、振動板1と対向壁26の間に浸透しやすいという多くの利点を有する。
【0068】
(作製方法)
対向壁26と撥水層15の作製方法について説明する。本実施形態に係る対向壁26と撥水層15の形成には、例えば半導体プロセスを用いることが出来る。犠牲層12をエッチングして、振動板1或いは圧電素子7と、対向壁26との間に空間を形成するまでの手順は、上記図6や図8に示した方法と同様である。なお、本実施形態では、対向壁6の剛性をより大きくするために、振動板1の変位に影響しない部位、つまり振動板1において液室隔壁3とは逆側の位置に振動板1と対向壁26を繋ぐ隔壁を形成する場合について説明する。
【0069】
図16(a)に示す図は、図8(f)と同様である。図示していないが、犠牲層12をエッチングするための除去孔14が、SiO2層6(対向壁6)の一部をエッチングして形成されている点も同様である。除去孔14の配置は、図4を用いて説明したように、孔のエッジが振動板1或いは圧電素子7と接触しない部分に設けられる。例えば、振動板1の短辺方向端部から5μmの位置に対応する部分に2×2μmの孔を20μmピッチで形成する。
【0070】
最後に、アクチュエーター全体をヘキサメチルジシラザン(HMDS)の中に浸漬させ、犠牲層除去孔14からHMDSを振動板1と対向壁6の間に浸透させ20分間置いておき、HMDSの中からアクチュエーター全体を取り出し、アクチュエーター全体をエアブローした後すぐに150℃に設定したホットプレートの上に1分間積載することで、SiO2表面に撥水層 −Si−(CH3)3 形成する(図16(b))。
【0071】
〔実施例3〕
撥水層15を形成した液滴吐出アクチュエーターAを作製した。
【0072】
〔比較例3〕
撥水層15を形成しない液滴吐出アクチュエーターBを作製した。
【0073】
(評価方法と結果)
撥水層15の効果を示すための評価方法は、温度32℃、湿度85%に設定した環境試験室にて、振動板或いは圧電素子が対向壁に接触する駆動電圧(20V;但し、接触する最小電圧は10V程度)で連続駆動を行い、振動板が対向壁に固着するまでの駆動回数を計測することで行った。このとき、固着しているかどうかは、レーザードップラー振動計を用いて、振動板の変位量を観測することで判定した。レーザードップラー振動計から得られる変位量が0になれば、振動板は対向壁に固着したと判定し、その後再確認のためにノマルスキー顕微鏡で固着状態を確認した。
【0074】
アクチュエーターBは駆動回数1.0E+9回に至るまでに、振動板が対向壁に固着したが、アクチュエーターAは2.0E+10回駆動しても固着は生じなかった。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターは、対向壁を有することで高速駆動を可能とし、振動板が対向壁にスティキングすることの無い、長寿命で、信頼性の高い液滴吐出アクチュエーターである。また、半導体プロセスを用いて作製することが出来、安価で容易に作製することが出来る。
【0076】
(液滴吐出ヘッド)
本実施形態に係る撥水層15が形成された液滴吐出アクチュエーターは、液滴吐出ヘッドに用いることも可能である。本実施形態に係る液滴吐出ヘッドは、振動板1或いは圧電素子7を対向壁6に接触させた際に、撥水層の効果により振動板が対向壁に固着することのない液滴吐出ヘッドとなっている。
【0077】
(インクジェット記録装置)
また、上記液滴吐出ヘッドは、インクジェット記録装置に用いることも可能である。本実施形態に係るインクジェット記録装置は、振動板が対向壁に固着することのない信頼性の高いインクジェット記録装置となっている。
【0078】
以上、本発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る振動版或いは圧電素子7が対向壁6に接触した際の様子を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る孔14の配置を説明するための図である。
【図5】比較例1の対向壁36における孔14の配置を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る対向壁6の作製方法の一例を説明する図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの構成図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る対向壁16の作製方法の一例を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係るアクチュエーターの流路構成図である。
【図10】本発明の実施形態に係るアクチュエーターの駆動電圧を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構成図である。
【図12】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の斜視説明図である。
【図13】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の機構部の側面説明図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの振動板1短辺方向断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る液滴吐出アクチュエーターの振動板1或いは圧電素子7が対向壁26と接触した際の様子を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る対向壁26の作製方法の一例を説明する図である。
【図17】従来の薄膜PZT30を用いた液滴吐出アクチュエーターを示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 振動板
2 圧電材料
3 加圧液室8を形成する部材(液室隔壁)
4 下部電極
5 上部電極
6、6'、16、26、36 対向壁
7 圧電素子
8 加圧液室
9 隔壁
11 SiO2層
12 犠牲層(Poly-Si層)
14 孔
15 撥水層
21 ノズル
23 ノズル21を形成する部材
25 記録媒体
30 薄膜PZT
81 記録装置本体
82 印字機構部
83 用紙
84 給紙カセット
85 手差しトレイ
86 排紙トレイ
91 主ガイドロッド
92 従ガイドロッド
93 キャリッジ
94 記録ヘッド
95 インクカートリッジ
97 主走査モータ
98 駆動プーリ
99 従動プーリ
100 タイミングベルト
101 給紙ローラ
102 フリクションパッド
103 ガイド部材
104 搬送ローラ
105、111 搬送コロ
106 先端コロ
107 副走査モータ
109 印写受け部材
112、114 拍車
113 排紙ローラ
115、116 ガイド部材
117 回復装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルと、ノズルに連通する加圧液室と、前記加圧液室を構成する面の一つである振動板とを有し、前記振動板上には下部電極層と、圧電材料層と、上部電極層とが積層されて成る膜状の圧電素子が設けられ、前記圧電素子を電気的に駆動することで前記ノズルから液滴を吐出する液滴吐出アクチュエーターであって、
前記振動板が変位した場合に、前記振動板或いは前記圧電素子が接触しうる対向壁を有し、
前記対向壁には、少なくとも1以上の開口部が設けられ、
前記開口部は、前記振動板が変位した場合に、前記開口部のエッジが、前記振動板或いは前記圧電素子と接触しない部分に設けられていることを特徴とする液滴吐出アクチュエーター。
【請求項2】
前記対向壁は、半導体プロセスを用いて作製され、
前記振動板或いは前記圧電素子と、前記対向壁との間の空間は、犠牲層を除去することにより形成されることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出アクチュエーター。
【請求項3】
前記対向壁と、前記振動版との間を繋ぐ隔壁を有し、
前記隔壁が設けられる位置は、前記加圧液室を構成する面であって、かつ前記振動版を固定する液室隔壁と、前記振動板を挟んで対向する位置であることを特徴とする請求項1又は2記載の滴吐出アクチュエーター。
【請求項4】
前記振動板或いは圧電素子と、前記対向壁とが接触する面の少なくとも一方に、撥水層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の液滴吐出アクチュエーター。
【請求項5】
前記撥水層が形成される面は、SiO2であることを特徴とする請求項4記載の液滴吐出アクチュエーター。
【請求項6】
前記撥水層は、ヘキサメチルジシラザンを用いて形成された層であることを特徴とする請求項4又は5記載の液滴吐出アクチュエーター。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載の液滴吐出アクチュエーターが複数集積されたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項7記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
インク滴を吐出することのできるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置であって、
前記インクジェットヘッドは、請求項7記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−143005(P2010−143005A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320885(P2008−320885)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】