説明

液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置

【課題】けん濁液を吐出口(ノズル)から吐出させる場合に、けん濁液に含まれる粒子が吐出口に詰まるのを抑制することができる液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置を得る。
【解決手段】捕獲フラップ70は、ノズル16の周壁16Aの吐出側の一端部17Aと液流路14側の他端部17Bとの間に設けられている。これにより、けん濁液に含まれる一粒の粒子72が捕獲される。そして、流路部材12の曲げ方向を逆側に反転させ、流路部材12を液滴吐出方向(図中上)へと急激に変形させると、慣性力で捕獲フラップ70がさらに弾性変形して粒子72が解放され、粒子72を含んだ液滴が吐出される。捕獲フラップ70に捕獲されていた粒子72が、液滴として吐出されると次ぎに吐出される粒子72が捕獲フラップ70に捕獲される。このように、けん濁液に含まれる粒子72がノズル16に詰まるのが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド、及び液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インク滴を噴出するための複数のノズルと、これらのノズルに対応して形成されたインク室とを備えるインクジェットヘッドが記載されている。そして、各インク室には、ダイヤフラムが設けられ、このダイヤフラムの曲げ変形によるインク室の容積変化をインク滴の噴出に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−118114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、粒子を含むけん濁液を吐出口(ノズル)から吐出させる場合に、けん濁液に含まれる粒子が吐出口に詰まるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するための吐出部と、前記吐出部に向けてけん濁液を供給する流路が形成された流路部材と、前記流路部材が接合され、又は前記流路部材を含み、前記吐出部が形成された吐出面が凹となるように曲げ変形した後、吐出面が凸となるように曲げ方向を反転することで、前記吐出部より液滴を吐出させる梁部材と、前記吐出部に設けられ、けん濁液に含まれる粒子を捕獲すると共に、前記吐出部から液滴を吐出させるときに前記粒子を解放する捕獲手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1に記載において、前記捕獲手段は、前記吐出部を構成する周壁から前記吐出部内に突出すると共に、弾性変形可能な弾性片を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る液滴吐出ヘッドは、請求項2に記載において、前記弾性片は、前記周壁の吐出側の端部と流路側の端部との間に設けられることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するための吐出部と、前記吐出部に向けてけん濁液を供給する流路が形成された流路部材と、前記流路部材が接合され、又は前記流路部材を含み、前記吐出部が形成された吐出面が凹となるように曲げ変形した後、吐出面が凸となるように曲げ方向を反転することで、前記吐出部より液滴を吐出させる梁部材と、前記流路部材に形成された流路に設けられ、けん濁液に含まれる粒子を捕獲すると共に、前記吐出部から液滴を吐出させるときに前記粒子を解放する捕獲手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項5に係る液滴吐出装置は、請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドに設けられた前記梁部材の曲げ変形を制御する制御部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1の構成によれば、捕獲手段が設けられない構成と比して、けん濁液に含まれる粒子が吐出部に詰まるのを抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2の構成によれば、弾性片が設けられない構成と比して、けん濁液に含まれる粒子が吐出口に詰まるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項3の構成によれば、弾性片が吐出部を構成する周壁の吐出側又は流路側に設けられる場合と比して、けん濁液に含まれる粒子が吐出口に詰まるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の請求項4の構成によれば、捕獲手段が設けられない構成と比して、けん濁液に含まれる粒子が吐出部に詰まるのを抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項5の構成によれば、請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドが設けられない場合と比して、けん濁液に含まれる粒子が吐出部に詰まるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)(B)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドに採用されたノズル近傍の形状を示した平面図、及び断面図である。
【図2】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドを示した断面図である。
【図3】(A)(B)(C)(D)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズルを成形する工程を示した工程図である。
【図4】(A)(B)(C)(D)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出させる動作を説明した説明図である。
【図5】(A)(B)(C)(D)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出させない動作を説明した説明図である。
【図6】(A)(B)(C)(D)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドを示した側面図、及び斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドが採用された液滴吐出装置を示した斜視図である。
【図8】(A)(B)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル近傍を示した断面図である。
【図9】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドに採用されたメンテナンスシステムを示した斜視図及び断面図である。
【図10】(A)(B)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル近傍を示した斜視図及び断面図である。
【図11】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出させる動作を説明した説明図である。
【図12】(A)(B)(C)本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズルを示した平面図、断面図、底面図である。
【図13】(A)(B)本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ヘッドのノズル近傍の断面図および拡大断面図である。
【図14】(A)(B)本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドの斜視図及び断面図である。
【図15】(A)(B)本発明の第4実施形態に係る液滴吐出ヘッドの断面図及び拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の一例について図1〜図11に従って説明する。
【0017】
(全体構成)
図7に示されるように、液滴吐出装置100には、高粘度(例えば80〜120mPa・s)の液体を被吐出物Pに吐出する液滴吐出ヘッド10と、液滴吐出ヘッド10の駆動を制御する制御部102と、被吐出物Pを搬送する複数個の搬送ロール104が設けられている。
【0018】
図6(A)(B)(C)に示されるように、液滴吐出ヘッド10には、内部に液体が流れる液流路14を備え、長手方向中央部に液流路14を流れる液体を液滴として吐出するための吐出部としてのノズル16が形成された中空チューブ状の流路部材12が設けられている。
【0019】
さらに、流路部材12においてノズル16が形成されない一方の面には、流路部材12を支持する梁部材18が接合され、流路部材12及び梁部材18の両端には、流路部材12及び梁部材18を支持する支持部材20が設けられている。
【0020】
また、梁部材18を挟んで流路部材12の反対方向(図6で示す下方向)には、梁部材18を変位させる圧電素子24がその梁部材18に接合されている。また、圧電素子24には、電圧が印加される電極26が接合され、梁部材18、圧電素子24、及び電極26でアクチュエータ30が構成されている。このアクチュエータ30は、流路部材12のノズル16が形成された吐出面28が凹となるように流路部材12を撓ませるようになっている。
【0021】
そして、梁部材18は圧電素子24の共通電極を兼ねており、梁部材18と電極26とで圧電素子24を挟むようになっており、この電極26の端部には、外部端子と電気的に接続される電極パッド34が設けられている。さらに、電極パッド34は、スイッチングIC(図示省略)と電気的に接続されている。
【0022】
この構成により、このスイッチングICからの信号により電極26に電圧が印加されて圧電素子24が駆動して、梁部材18を撓ませるか撓ませないかの制御が行われるようになっている。
【0023】
一方、流路部材12の両端を支持する支持部材20は、連結部材40を介してエンコーダ付の回転部材42に接続されている。つまり、流路部材12から液滴が吐出される方向にオフセットされた位置に回転中心を備える回転部材42によって支持部材20が支持されるようになっている。
【0024】
この構成により、回転部材42が一方又は他方に回転することで、支持部材20を介して梁部材18は両側から押され、あるいは曲げ方向に力が加えられ、流路部材12は、液滴吐出方向(図6で示す上方向)及びその反対方向(図6で示す下方向)に撓むようになっている。
【0025】
そして、流路部材12に形成された液流路14の一端(図6(B)に示す右端)に繋がるように、ノズル16から吐出される液体が貯留される液溜38が設けられており、さらに、液溜38に貯留された液体に背圧を印加する印加部材(図示省略)が設けられている。また、印加部材によって背圧が印加されて液溜38から液流路14へ供給され、ノズル16まで達した液体は、流路部材12の撓みによって生じる慣性力でノズル16から液滴吐出方向に吐出されるようになっている。
【0026】
また、図6(B)に示されるように、ノズル16に対して反対方向の流路部材12、梁部材18、圧電素子24、及び電極26には、開口46が設けられ、液流路14が大気中に開放される構成となっている。そして、液流路14を流れる液体は、開口46の近傍に形成された液溜48に一時的に滞留するようになっている。
【0027】
さらに、流路部材12に形成された液流路14の他端(図6(B)に示す左端)には、液流路14と繋がる液吸引プール50が設けられており、液吸引プール50には、図示せぬ吸引手段によって負圧が印加されている。この構成により、液溜38から液流路14を通って液溜48に滞留する液体は、ノズル16を挟んで液溜38の反対方向に設けられた液流路14を通って液吸引プール50に逐次吸引されるようになっている。
【0028】
また、図6(D)に示されるように、ノズル16に対して液溜38側で、梁部材18を挟んで液流路14の反対方向には、空気が流れる送風路52が形成された流路部材54が設けられている。
【0029】
送風路52は、図示せぬ送風手段と繋がっており、加圧された空気が送風路52を通ってノズル16側に向って供給されるようになっている。
【0030】
以上の構成により、図6(B)に示されるように、流路部材12によって形成された液流路14内へ、背圧が印加された液体が供給され、開口46の近傍で形成される液溜48には、液体が常に供給される。
【0031】
このとき、液溜48では、供給不足とならないように吐出で失われる液量よりも多量の液体が一時的に保持され、余剰分の液体は負圧が印加された液吸引プール50によって吸引されて排出される。
【0032】
これにより、液溜48の液体は自由表面を形成し、ノズル16から吐出される液滴の慣性吐出を阻害する液体の剪断抵抗などは抑制され、ノズル16の反対方向が密閉された構造と比較して、液体が高粘度であっても吐出を阻害しにくいようになっている。
【0033】
そして、このノズル16から液滴を吐出しないように制御する場合には、先ず、図5(A)に示されるように、回転部材42を逆転(流路部材12を引き伸ばす方向へ回転)させ、流路部材12を真っ直ぐに延ばす。なお、流路部材12を引き伸ばす方向の回転を逆転とし、流路部材12の吐出面28を吐出方向に凸とさせる方向の回転を正転とする。
【0034】
次ぎに、図5(B)に示されるように、流路部材12の伸びを緩め、アクチュエータ30(図6(B)参照)を駆動させず、ノズル16が形成された吐出面28を吐出方向に凸となるように撓んだ状態とする。
【0035】
次ぎに、図5(C)、図5(D)に示されるように、回転部材42を正転させ続けると、吐出面28が吐出方向に凸となるように撓んだ状態のまま撓み量が増大するが、吐出面28の曲げ方向が逆側に反転することがないため、ノズル16からの液滴の吐出には至らない。
【0036】
これに対し、ノズル16から液滴を吐出させるように制御する場合には、先ず、図4(A)に示されるように、回転部材42を逆転させ、流路部材12を真っ直ぐに伸ばし、撓みのない状態とする。
【0037】
次ぎに、図4(B)に示されるように、流路部材12に吐出を指示する信号が図示しないスイッチングICより送られてアクチュエータ30(図6(C)参照)を駆動させ、ノズル16が形成される吐出面28を吐出方向に凹となるように撓んだ状態とする。
【0038】
さらに、図4(C)に示されるように、回転部材42を正転させ、ノズル16が形成された吐出面28を回転部材42に近い側、すなわち長手方向両端側から次第に吐出方向(図中上)に凸へなるように撓み方向を変化させる。
【0039】
この変化が両端から中央に近付くと、流路部材12(あるいは梁部材18)はある点で曲げ方向が逆側(図中上側)に反転し、図4(D)に示されるように、流路部材12が液滴吐出方向(図中上方向)へ急激に変形する。
【0040】
流路部材12の長手方向中央にはノズル16(図6(B)参照)が設けられているため、液流路14内に供給されてノズル16まで達している液体は、この曲げ方向が逆側に反転(座屈反転)することによる流路部材12の吐出方向への変形に伴い、慣性力を受けてノズル16から液滴として吐出される。
【0041】
さらに、流路部材12の撓み量が最大となり回転部材42を停止させたのち、図4(A)に示されるように、回転部材42を逆転させて流路部材12を平坦にすることで流路部材12を初期位置へ復帰させる。
【0042】
なお、上記実施形態では、特に言及しなかったが、図10(A)(B)に示されるように、送風路52内に、濾過手段としてフィルタ56を設け、給送される空気を濾過してもよい。また、フィルタ56のノズル16側の隣りに、液体を含有可能なスポンジなどの加湿部材58を設け、給送される空気をこの加湿部材58で加湿してもよい。さらに、流路部材54に開口を形成しないで液溜48を大気中に開放しない構成としてもよい。
【0043】
この場合には、矢印Aのように給送された空気の一部は、液溜48で矢印Bのように液流路14へ向かい、矢印Cのように余剰の液Lと共に吸引除去される。そして、液溜48を大気中に開放する構成と比較して、フィルタ56で濾過された空気が液溜48に給送されるため、ゴミや異物の混入が少なく、且つ加湿部材58で加湿された空気が給送されるためノズル16近傍の液体が乾燥しにくい。
【0044】
また、上記実施形態では、回転部材42を流路部材12の両端に設けたが、図11に示されるように、回転部材80を一側の支持部材20に設けて、回転部材80の回転軸を一側の支持部材20に固定し、他側の支持部材20を図示せぬフレーム部材に固定してもよい。
【0045】
この場合には、図11(A)に示されるように、梁部材18の回転部材80側半分を吐出側(図11に示す上側)に凹、他側半分を吐出側に凸とした状態を初期状態とし、梁部材18(流路部材12)の端部より液体を液流路14内を通して、ノズル16へ供給する。
【0046】
次ぎに、図11(B)に示されるように、回転部材80を吐出方向(図11で示す反時計方向)に回転させ、支持部材20によって保持されている梁部材18の一端(回転部材80側の端部)より、吐出方向に凸となるように変形させる。
【0047】
次ぎに、図11(C)に示されるように、ノズル16近傍(長手方向中央付近)の曲げ方向を吐出方向に反転させる。これにより、液流路14に供給された液体がノズル16より液滴として吐出される。
【0048】
(要部構成)
前述した液滴吐出装置100を用いて、けん濁液をノズル16から液滴として吐出させる場合がある。一例として、被吐出物Pとしての基板の上に粒子を均一に塗布する場合には、液滴吐出装置100を用いて、けん濁液をノズル16から基板に吐出することで、けん濁液に含まれる粒子が基板の上に均一に塗布される。
【0049】
なお、けん濁液に含まれる粒子としては、剛体の粒子であってもよく、またゲル状の粒子等であってもよく、固形物であれば粒子に含まれる。
【0050】
このようなけん濁液をノズル16から吐出させる場合に、けん濁液に含まれる粒子を捕獲し、さらに、ノズル16から液滴を吐出する際にこの粒子を解放することで粒子がノズル16に詰まるのを抑制する弾性片の一例としての捕獲フラップ70について説明する。
【0051】
図1(A)(B)に示されるように、ノズル16は平面視で円形状であってその直径は、例えば、25〜40μmとされており、このノズル16の周壁16Aから対向する周壁16A(ノズル16の中心)へ向って突出するように、板状の捕獲フラップ70が、周方向に等間隔で4個設けられている。
【0052】
詳細には、図1(B)に示されるように、捕獲フラップ70は、周壁16Aの吐出側の一端部17Aと液流路14側の他端部17Bとの間に設けられている。さらに、図1(A)に示されるように、4個の捕獲フラップ70は先端側が先細りとなり、各捕獲フラップ70の先端は、互いに離れている。そして、捕獲フラップ70の先端側で、例えば、直径5〜10μmのけん濁液に含まれる粒子72を捕獲するようになっている。
【0053】
また、この捕獲フラップ70は、弾性変形可能な材料で成形されており、けん濁液に慣性力を付与してノズル16から液滴として吐出させる際には、弾性変形して捕獲した粒子72をさらに弾性変形して解放して液滴と一緒に吐出させるようにその形状及び厚さ等が決められている。
【0054】
一方、この液滴吐出装置100には、ノズル16にけん濁液の粒子が詰まってしまった場合に、この詰まった粒子を除去するメンテナンスシステム131が設けられている。
【0055】
図9(A)に示されるように、このメンテナンスシステム131には、液滴吐出動作が休止中に、ノズル16に対して相対移動してノズル16と対向してノズル16に空気を吹き掛けるエアブロー部材132が設けられている。さらに、エアブロー部材132と液滴吐出ヘッド10を挟んで反対方向には、エアブロー部材132によって空気が吹き掛けられてノズル16とは反対方向に開口46を通って飛散した液体及び粒子72を捕獲する吸引ダクト134が設けられている。
【0056】
また、図9(B)(C)に示されるように、エアブロー部材132は、図示せぬ駆動部材によって矢印D方向へ移動して、隣りのノズル16に順次空気を吹き掛けるようになっている。さらに、流路部材12の一端部に設けられた支持部材136には、流路部材12のノズル16が設けられる吐出面28に付着した液体を吸引する吸引口136Aが設けられている。
【0057】
以上の構成により、図8(A)(B)に示されるように、ノズル16の周壁16Aに形成された捕獲フラップ70にけん濁液の粒子72が詰まってしまった場合には、エアブロー部材132がノズル16に対して相対移動し、ノズル16に対して対向する位置に配置される。そして、エアブロー部材132から空気がノズル16に向って吹き掛けられ、ノズル16に詰まった粒子72が液体と共にノズル16の反対方向(図8に示す下方)に吹き飛ばされ、吸引ダクト134(図9参照)によって吸引される。
【0058】
このように、メンテナンスシステム131を設けることで、万が一、ノズル16に粒子72が詰まった場合でもノズル16に詰まった粒子72が除去される。
【0059】
ここで、この捕獲フラップ70を含むノズル16の成形手順の一例について説明する。
【0060】
先ず、図3(A)に示されるように、厚さ20μmの感光性エポキシ層74Aと厚さ2μmのポリイミド層74Bと厚さ20μmの感光性エポキシ層74Cの積層体74を用意する。
【0061】
次ぎに、図3(B)に示されるように、液流路14(図1(B)参照)側の感光性エポキシ層74Cをエッチングにて加工して、周壁16Aの一部を形成する。ポリイミド層74Bは、エッチング時のストッパ層として作用する。
【0062】
次ぎに、図3(C)に示されるように、ポリイミド層74Bをレーザ等で加工することで、捕獲フラップ70の外形形状をパターニングする。
【0063】
次ぎに、図3(D)に示されるように、吐出側の感光性エポキシ層74Aをエッチングにて加工して、ノズル16の周壁16Aの一部を形成する。ポリイミド層74Bは、エッチング時のストッパ層として作用する。
【0064】
なお、複数個の捕獲フラップ70は、捕獲手段の一例であり、この例では、ノズル16の周壁16Aから突出する弾性片である。つまり、捕獲フラップ70は、けん濁液に含まれる粒子72を捕獲し、液滴を吐出させる際には、弾性変形して粒子72を解放するものである。即ち、捕獲手段(弾性片)は、粒子72を捕獲し弾性変形して解放するものであればよい。
【0065】
(作用)
次ぎに、粒子72を含むけん濁液をノズル16から液滴として吐出させる動作について説明する。
【0066】
図1(B)、図2(A)に示されるように、液流路14を流れるけん濁液は、ノズル16内に流れ、けん濁液に含まれる一粒の粒子72は、弾性変形した捕獲フラップ70に捕獲される。
【0067】
ここで、捕獲フラップ70は、ノズル16の周壁16Aの吐出側の一端部17Aと液流路14側の他端部17Bとの間に設けられている。つまり、周壁16Aにおけるけん濁液の流れの途中に捕獲フラップ70が配置されており、これにより、けん濁液に含まれる一粒の粒子72が捕獲される。
【0068】
さらに、流路部材12(あるいは梁部材18)の曲げ方向を逆側に反転させ、流路部材12を液滴吐出方向(図中上)へと急激に変形させると、図2(B)(C)に示されるように、慣性力で捕獲フラップ70がさらに弾性変形して粒子72が解放され、粒子72を含んだ液滴が吐出される。捕獲フラップ70に捕獲されていた粒子72が、液滴として吐出されると次ぎに吐出される粒子72が捕獲フラップ70に捕獲される。このように、けん濁液に含まれる粒子72がノズル16に詰まるのを抑制される。
【0069】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、捕獲フラップ70に捕獲される粒子72が1粒の場合について説明したが、特に1個に限定されるものではなく、2個以上であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、捕獲フラップ70の断面形状を先細り形状としたが、特に先細り形状に限定されるものではなく、解放時に先端側が弾性変形して粒子を解放するようになっていればよく、例えば、段差を設けたり、切欠きを設けたりして先端部を弾性変形させてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、流路部材12に梁部材18が接合される構成について説明したが、流路部材と梁部材を一つの部材で形成してもよい。
【0072】
次ぎに、本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の一例について図12〜図13に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図13(A)(B)に示されるように、本第2実施形態では、第1実施形態とは違い、ノズル16を挟んで、液流路14の反対方向には、流路部材84が設けられ、流路部材84には、図示せぬ送風手段と接続されて加圧された空気が矢印方向に供給される送風路86が形成されている。
【0074】
さらに、加圧された空気が送風される送風路86の送風方向の下流側には、図示せぬ負圧手段が接続されており、この負圧手段が、送風路86に負圧を印加し、送風路86に供給された空気を吸引するようになっている。
【0075】
また、流路部材84には、吐出方向より見てノズル16よりも大きい開口88が設けられ、ノズル16から吐出される液滴を阻害しないようになっている。さらに、送風路86内にも濾過手段としてフィルタ90が設けられ、給送される空気を濾過するようになっている。さらに、送風路86内において、フィルタ90のノズル16側の隣りには、液体を含有可能なスポンジなどの加湿部材92が設けられ、ノズル16側に給送される空気を加湿部材92に含まれる液体成分で加湿するようになっている。
【0076】
この構成により、ノズル16から液滴吐出側に溢れた液体は、送風路86を通って吸引除去されるようになっている。また、フィルタ90で濾過された空気がノズル16側に給送されるため、ゴミや異物の混入が少なく、且つ加湿部材92で加湿された空気が給送されるためノズル16近傍の液体が乾燥しにくい。
【0077】
一方、図12(A)(B)(C)に示されるように、ノズル16の周壁16Aから突出する捕獲フラップ94は周方向に等間隔で6個とされており、この6個の捕獲フラップ94でけん濁液の粒子を捕獲し、液滴吐出時には解放するようになっている。
【0078】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、6個の捕獲フラップ94を設けて粒子を捕獲、解放したが、7個以上の又は5個以下の捕獲フラップで粒子を捕獲、解放してもよい。
【0079】
また、繊維状の部材をノズル16の周壁16Aから突出させ、この繊維状の部材で粒子を捕獲し、繊維状の部材を弾性変形させて粒子を解放してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、このノズル16の周壁16Aから対向する周壁16A(ノズル16の中心)へ向って突出するように、板状の捕獲フラップ70を設けたが、特にノズル16の中心に向わなくてもよく、中心からずれた点に向うように突出させてもよい。
【0081】
次ぎに、本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の一例について図14に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図14(A)(B)に示されるように、第3実施形態では、第1実施形態と違い、ノズル16へ至るまでの液流路は、分割壁116によってノズル16側に設けられた第1液流路112と、梁部材18側に設けられた第2液流路114に分割されている。
【0083】
そして、第1液流路112には、粒子72を含むけん濁液が供給され、第2液流路114には、粒子72を含まない液体が供給されるようになっている。
【0084】
さらに、図14(B)に示されるように、分割壁116のノズル16側の端部には、捕獲手段の一例としての捕獲部118が形成されている。捕獲部118は、湾曲して第1液流路112側に張り出すように構成されており、けん濁液に含まれる粒子72を第1液流路112の壁面との間で捕獲すると共に、ノズル16から液滴を吐出させる際には弾性変形してこの粒子72を解放するようになっている。
【0085】
このように、分割壁116の端部に捕獲部118を設けることで、ノズル16の周壁16Aに捕獲フラップを設けることなく、粒子72を含むけん濁液がノズル16から吐出されるようになっている。
【0086】
なお、捕獲部118は、捕獲手段の一例であり、この例では、分割壁116の端部から第1液流路112側に張り出す部材である。
【0087】
次ぎに、本発明の第4実施形態に係る液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置の一例について図15に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図15(A)(B)に示されるように、第4実施形態では、第1実施形態と違い、ノズル16へ至るまでの液流路は、分割壁122及び分割壁124によってノズル16側に設けられた第1液流路126と、梁部材18に設けられた第2液流路128と、第1液流路126と第2液流路128との間に設けられた第3液流路130とに分割されている。
【0089】
そして、第1液流路126と第2液流路128には、粒子72を含まない液体が供給され、第3液流路130には、粒子72を含むけん濁液が供給されるようになっている。
【0090】
さらに、図15(B)に示されるように、分割壁122及び分割壁124のノズル16側の端部には、捕獲手段の一例としての捕獲部129が形成されている。捕獲部129は、湾曲して第3液流路130側に張り出すように構成されており、けん濁液に含まれる粒子72を捕獲すると共に、ノズル16から液滴を吐出させる際には弾性変形してこの粒子72を解放するようになっている。
【0091】
このように、分割壁122及び分割壁124の端部に捕獲部129を設けることで、ノズル16の周壁16Aに捕獲フラップを設けることなく、粒子72を含むけん濁液がノズル16から吐出するようになっている。
【0092】
つまり、捕獲部129は、けん濁液に含まれる粒子72を捕獲し、液滴を吐出させる際に、弾性変形して粒子72を解放するものである。即ち、粒子72を捕獲し弾性変形して粒子を解放するものであればよく、例えば、液流路を構成する壁面から液流路側に突出する弾性変形可能な突出片であってもよく、また、弾性変形可能な繊維状の部材等であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 液滴吐出ヘッド
12 流路部材
14 液流路(流路の一例)
16 ノズル(吐出部)
16A 周壁
18 梁部材
28 吐出面
70 捕獲フラップ(弾性片の一例)
94 捕獲フラップ(弾性片の一例)
100 液滴吐出装置
102 制御部
118 捕獲部(捕獲手段の一例)
129 捕獲部(捕獲手段の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するための吐出部と、
前記吐出部に向けてけん濁液を供給する流路が形成された流路部材と、
前記流路部材が接合され、又は前記流路部材を含み、前記吐出部が形成された吐出面が凹となるように曲げ変形した後、吐出面が凸となるように曲げ方向を反転することで、前記吐出部より液滴を吐出させる梁部材と、
前記吐出部に設けられ、けん濁液に含まれる粒子を捕獲すると共に、前記吐出部から液滴を吐出させるときに前記粒子を解放する捕獲手段と、
を備える液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記捕獲手段は、前記吐出部を構成する周壁から前記吐出部内に突出すると共に、弾性変形可能な弾性片を含む請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記弾性片は、前記周壁の吐出側の端部と流路側の端部との間に設けられる請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
液滴を吐出するための吐出部と、
前記吐出部に向けてけん濁液を供給する流路が形成された流路部材と、
前記流路部材が接合され、又は前記流路部材を含み、前記吐出部が形成された吐出面が凹となるように曲げ変形した後、吐出面が凸となるように曲げ方向を反転することで、前記吐出部より液滴を吐出させる梁部材と、
前記流路部材に形成された流路に設けられ、けん濁液に含まれる粒子を捕獲すると共に、前記吐出部から液滴を吐出させるときに前記粒子を解放する捕獲手段と、
を備える液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに設けられた前記梁部材の曲げ変形を制御する制御部材と、
を備える液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−20101(P2011−20101A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169521(P2009−169521)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】